新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に...

40
Fig.1 Cyclic Voltammogram of 1 -0.5 0 0.5 1 E / V vs. Fc / Fc + 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に関する研究 (京大院工)○柳生拓也、中野義明、伊藤彰浩、田中一義 緒言 近年、有機高スピン分子を利用し たスイッチ型デバイスが大きな注目 を集めている。本研究では、アミノ 基の窒素原子部位を酸化することで スピン磁気モーメントが変化すると 考えられる分子を新規に合成し、 その磁気物性を調べた。この分子は、そのスピン多重度を酸化還元により意図的に 変化させることができるので、スイッチ型デバイスへの応用のために重要な系である と考えられる。 結果と考察 1 の合成はスキーム 1 に従って行った。1 1mM ベンゾニトリル溶液中でサイク リックボルタンメトリーを実施し、酸化還元電位の測定を行った結果、図 1 のように なった。3 対の可逆な 1 電子酸化還元波が観測され、第 1、第 2 酸化還元波はほぼ重 なっており、その酸化還元電位は 0.37V で、第 3 波の酸化還元電位は 0.86V であっ た。 1) Diphenylamine, CuI, KOBu t , toluene, reflux 2) Imidazole, TFAA, MeCN, reflux 3) Monosulfate of N,N-dihydroxy-2,3-diamino-2,3-dimethyl butane, MeOH, reflux 4) NaIO4, CH2Cl2-MeOH, r.t. 1、 第 2 酸化還元波は非常に接近し ており、参照分子であるトリフェニルア ミンの 3 つのフェニル基のパラ位 1 ヶ所 にメトキシ基を導入した分子やフェニル ニトロニルニトロキシドの酸化還元電位 R N N N O O 2 1 :R= OCH 3 2 :R= N(CH 3 ) 2 I OCH 3 OCH 3 N OHC N OCH 3 N N COCF 3 COCF 3 H OCH 3 N HCl MeCN-H 2 O 2 2 1 1) 2) 3) Scheme 1 4) 2 (47.5%) (28.1%) (4.9%)

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Page 1: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

Fig1 Cyclic Voltammogram of 1

-05 0 05 1E V vs Fc Fc +

新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に関する研究 (京大院工)柳生拓也中野義明伊藤彰浩田中一義

緒言 近年有機高スピン分子を利用し たスイッチ型デバイスが大きな注目 を集めている本研究ではアミノ 基の窒素原子部位を酸化することで スピン磁気モーメントが変化すると 考えられる分子1を新規に合成し その磁気物性を調べたこの分子1はそのスピン多重度を酸化還元により意図的に

変化させることができるのでスイッチ型デバイスへの応用のために重要な系である

と考えられる 結果と考察 1 の合成はスキーム 1 に従って行った1 の 1mM ベンゾニトリル溶液中でサイク

リックボルタンメトリーを実施し酸化還元電位の測定を行った結果図 1 のように

なった3 対の可逆な 1 電子酸化還元波が観測され第 1第 2 酸化還元波はほぼ重

なっておりその酸化還元電位は 037V で第 3 波の酸化還元電位は 086V であっ

た 1) Diphenylamine CuI KOBu t toluene reflux 2) Imidazole TFAA MeCN reflux 3) Monosulfate of NN-dihydroxy-23-diamino-23-dimethyl butane MeOH reflux 4) NaIO4 CH2Cl2-MeOH rt 第1 第 2 酸化還元波は非常に接近し

ており参照分子であるトリフェニルア ミンの 3 つのフェニル基のパラ位 1 ヶ所 にメトキシ基を導入した分子やフェニル ニトロニルニトロキシドの酸化還元電位

RNN

N

O

O 2

1 R= OCH32 R= N(CH3)2

I OCH3

OCH3NOHC

N OCH3N

N

COCF3

COCF3

HOCH3N

HCl

MeCN-H2O

2

2

1

1) 2)

3)

Scheme 1

4)

2(475)

(281)(49)

bukka
4Pp122

と比べても中心アミン部位とニトロニルニトロキシド部位のどちらが先に酸化され

るかは判断できなかった またブチロニトリル溶媒中トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロ

アンチモネートを酸化剤として用い1 のモノカチオン種を発生させ 123 K で ESR測定を行った結果図 2 のようなスペクトルが得られた このスペクトルはフェニルニトロニルニトロキシドの 123K におけるスペクトル

と酷似しておりサイクリックボルタンメトリーの結果と併せて考えると1 は 1 電

子酸化により中心窒素原子部位よりもむしろニトロニルニトロキシド部位が先に酸

化されモノラジカルになることが示唆された以上の結果は1 電子酸化によりア

ミニウムカチオンラジカルを発生させるためには 1 の中心アミン部位のドナー性を

高める必要があることを示している1 のメトキシ基を NN-ジメチル基で置換した

分子 2 では中心アミン部位のドナー性がさらに高まると予想される合成に先立ち

2 の 1 電子酸化体の電子状態を密度汎関数法を用いて調べまた2 の参照分子とし

てトリフェニルアミンのパラ位 1 ヶ所に NN-ジメチル基を導入した分子のサイク

リックボルタンメトリーを実施した結果より2 を 1 電子酸化するとパラフェニレン

ジアミン部位が酸化され高スピン状態が生成する可能性が高いことがわかった 結論 サイクリックボルタンメトリー及び ESR 測定の結果から1 を 1 電子酸化すると

ニトロニルニトロキシド部位が酸化されモノラジカルになることがわかった量子

化学計算より2 は 1 電子酸化することによりアミニウムカチオンラジカルを生じ

分子内で強磁性的相互作用を持つ可能性があることが示唆された2 の合成について

は現在進行中である

参考文献 (1)OelschlagerHPetersHJArchPharm(Weinheim)1987320379

(2)KelkarAAPatilNMChaudhariRVTetrahedonLetter2002437143

(3)UllmanEFOsieckiJHBoocockDGBDarcyRJAmChemSoc1972947049

(4)SakuraiHIzuokaASugawaraTJAmChemSoc20001229723

Fig 2 ESR spectrum of 11+

3205 3280 3355

B G

SS

SS

SS

SS

SSPDT1

PDT2

PDT3

PDT4

図1 本研究で考察した分子ワイヤー

PDT5

ランダウアモデルを用いた分子伝導性の分子長依存性

に関する研究

九大先導研 近藤正一多田朋史吉澤一成

【序】近年単一分子の電気伝導特性が多くのグループにより測定され伝導度に関する理論計算も

多数報告されている分子伝導に関する理論的研究特に第一原理からの理論計算は分子や電極金

属の違いによる伝導度の変化を解析するなど分子ワイヤーの実用化新規ワイヤーの開発などにお

いて重要な示唆を与えられると期待される

通常分子ワイヤーのコンダクタンスはランダウア

の公式

G EF( ) = 2e2

hT EF( ) (1)

を用いて求められるここでT EF( )は(フェルミ準位に

おける)透過係数と呼ばれる以前我々はCaroli ら

の(単一経路)量子輸送モデル[1]およびヒュッケル法

を用いてナノサイズグラファイト分子の透過係数を求

め分子軌道(特に HOMO と LUMO)とコンダクタ

ンスの関係を明らかにした[2]本研究では多経路の量

子輸送モデルと密度汎関数法とを組み合わせることに

より図1に示す5つのジチオール分子ワイヤーの透過係数を求めコンダクタンスの分子長依存性

を調べた

【理論】透過係数は次式

T E( ) = Tr Γ L E( )GR E( )Γ R E( )GA E( )[ ] (2a)

Γ L R E( ) = i ΣL RR E( ) ndash ΣL R

A E( )[ ] (2b)

GR A E( ) = I minus G(0)R A E( )ΣR A E( )[ ] ndash1G(0)R A E( ) (2c)

で与えられるワイヤー部分のゼロ次の先進(遅延)グリーン関数G(0)R A E( )自己エネルギー ΣL RR A E( )

は次式を用いて求める

G(0)R A E( )[ ]αβ=

CmαCmβ

E minus εm plusmn iηmsum (2d)

bukka
4Pp123

ΣL RR A E( ) = τgR Aτ dagger (2e)

ここでCmα εm τ gR Aはそれぞれ軌道係数軌道エネルギー移動積分および電極金属(金)

のグリーン関数である

【計算方法】5つのワイヤーの両端の硫黄原子に金原子を1つ結合させた拡張分子を

B3LYPLANL2DZ レベルで構造最適化したこの拡張分子の軌道係数軌道エネルギーを用いること

によりグリーン関数G(0)R A E( )を求めこのG(0)R A E( )を用いて(2a)ndash(2c)式により透過係数を求めたな

お自己エネルギーを求める際に必要となる移動積分は拡張ヒュッケル法により見積り金のグリーン

関数は Decimation法によりに求めた

【結果】計算により得られた透過係数曲線を図2に示す金電極のフェルミ面(0 eV)における透過

係数はワイヤーの長さとともに減少していることがわかるこの結果は Magoga らによる拡張ヒュッ

ケル法を用いた計算結果[3]と一致している

フェルミ準位近傍における分子ワイヤーのコンダ

クタンスはワイヤー長とともに指数関数的に減少し

ていくと考えられている[3]つまりコンダクタンス

のワイヤー長依存性は次式

G = G0endash γL (3)

で表されると考えられているここで L は分子ワイ

ヤーの長さでありγは減衰因子と呼ばれる量である

本計算で得られたフェルミ準位における透過係数の

値をワイヤー長(両端の硫黄原子間の距離で定義す

る)に対してプロットし(3)式にフィッティングさ

せて減衰因子の大きさを見積もったところ0122 Aringndash1

となりMagoga らにより得られたもの(0281 Aringndash1)[3]と定性的によい一致を示した計算方法の詳

細等は当日発表の予定である

【参考文献】

[1] C Caroli R Combescot P Nozieres and D Saint-James J Phys C 4 916 (1971)

[2] T Tada and K Yoshizawa ChemPhysChem 2002 1035 (2002)

[3] M Magoga and C Joachim Phys Rev B 56 4722 (1997)

0ndash5 510ndash6

10ndash4

10ndash2

1

E ndash EF (eV)

T(E

)

+$PDT(amp-)

環状チアジルラジカル TTTA に対する圧力及びドーピング効果

(名大院理名大物質国際セ北大院理)田中利幸白井貴博藤田渉阿波賀邦夫稲辺保 【序論】 ヘテロ環状チアジルラジカルは分子性導体あるいは磁性体

として新規な物性の発現が期待されているその一種である

135-Trithia-246- triazapentalenyl(TTTA)は室温付近

で常磁性-反磁性転移を示し100K 近い双安定領域を持つこ

とが分っているこれは分子デバイスとしての可能性を示して

おりこのためには双安定の温度領域や磁化率の大きさを制御

することが必要であるまたTTTA 高温相は 1 サイトに 1 電子が局在するモット絶

縁体であるため結晶構造を保持したままキャリアーをドープすることができれば極

めて特異な電気物性を示す可能性がある本研究ではTTTA に対する圧力及効果を

調べるとともにTTTA は CV 測定などからドナーであることが知られているので

ヨウ素ドーピングについても検討した

S

N

N

N

S

S

TTTA

【圧力効果】 圧力をかける際には Be-Cu クランプ式ピストンシリンダーセルを用い静水圧を

かけることで加圧した圧力セルは大きな反磁性磁化率を持っており TTTA の磁化率

を見積もりにくいそのためセルにチタン線を巻くなどして圧力セルの反磁性磁化

率の影響を軽減したその結果比較的小さな圧力で相転移温度が高温側にシフトし

た双安定領域の中心は室温付近に移動し双安定性を制御することができたまた

Tcdarrの方が Tcuarrよりも温度変化が大きく圧力に対し敏感であるといえる転移温度

の圧力依存性を計算したところdTcuarrdp=11 K GPa‐1dTcdarrdp=26 K GPa‐1と

なった仮にクラウジウス-クラペイロンの式を用いて両転移温度の圧力依存性を

4

3

2

1

0

χ x10-4 emu mol-1

400350300250200150100

T K

0GPa 038GPa 075GPa 15GPa

340

320

300

280

260

240

Tc K

1412100806040200

p GPa

Tcuarr Tcdarr

図 1圧力下での磁化率の温度依存 図 2転移温度の圧力依存

bukka
4Pp124
bukka

計算するとdTcuarrdp=68 K GPa‐1dTcdarrdp=50K GPa‐1となりオーダー程度は

【ドーピング効果】 不安定であるため溶媒中でアクセプターと混合する方法では

プルは空気に不安定で装置の減圧をとくと 10 分ほどで伝導度が

1

一致していた常磁性磁化率は圧力とともに減少したしかし圧力セルのバックグ

ラウンドが非常に大きくこれを完全に補正することが出来ているかどうかを現在調

査中である

TTTA は溶液状態で

荷移動錯体を得ることが困難であったそこで本実験では TTTA をヨウ素蒸気にさ

らしてドーピングを行ったヨウ素雰囲気での伝導度変化を測定するために図 4 に示

す装置を製作した端子などの金属部位に耐

ハロゲン性グリースを塗布し保護した昇華

精製により得られる TTTA の高温相ブロッ

ク状結晶をサンプルとし装置内を減圧し電

気伝導度の時間変化を調べた

図 4 に伝導度の時間変化を示すドーピ

図 3ヨウ素ドープ伝導度測定

グ開始直後から徐々に伝導度は上昇し10時間程経過した時点で急激に増加したその

後伝導度は一時的に減少するがさらにドー

プを続けることで再度上昇を開始したこの

ような伝導度の上昇は数日続き最大で 104

倍まで増加したがその後は緩やかに減少し

ドープ後のサン

10 以下に減少してしまった当日は伝導度の温度依存性ESR 及び磁化率の測定

結果さらに共昇華法で合成した TTTAI の物性とあわせて議論する予定である

0

02

04

06

08

1

12

0 20 40 60 80 10

timeh

σtimes105(Ω

cm)-

1

図 4ヨウ素ドープ時の伝導度の時間変化

0

110-phenanthroline配位を有する

新 Mn4核錯体の構造と磁性

( 畿大理工) 井淳宏 田孝義前川雅彦宗像 惠

【序】  年Mn 多核錯体は Mn12 核錯体に代表される単一分子磁性や磁気トンネリング現象の観測などで注目されているMn4核錯体は以前から光合成系モデルとして注目されているが最 では単一分子磁性を示すものも報告されより核数の

多い多核 Mn 錯体の構築素子とも考えられる今回我々はMn12 核錯体と 110-phenanthroline(以下 phen)との反応により新 な Mn4 核錯体の合成及び構造 析に成

功したのでその磁性とあわせて報告する

【方法】 [Mn12O12(OAc)16(H2O)4] (100 mg 00535 mmol)を溶 したアセトニトリル溶

液に phen (424 mg 0214 mmol)を加えて3時間撹拌したこの溶液をエバポレーターで濃縮乾固し沈殿を再びアセトニトリルに溶 しこの操作を 2回繰り した

茶色の沈殿を最少量のアセトニトリルに溶かしガラス管に入れ 3 倍量のジエチルエーテルを上から層を形成するように加えて封入し 置した3日後 色レンガ

状結晶[Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2](1)が得られたAnal Calcd (found) for C36H34O14N4Mn4 C 4474 (4473) H 355 (358) N 580 (596) [scheme]

【結果】 単結晶 X線構造 析

 この結晶は a = 11027 Å b = 13226Å c = 14916 Å α = 72670deg β =67694degγ = 80293degの三斜晶系で空間群は

dagger

P1 であるこの錯体の中心分は 2つのMnIIIイオンが 2つのμ3-

O2-イオンで架橋されさらにそれぞれ

のμ3-O2-イオンにMnIIイオンが結合し

た[Mn4O2]6+から成っており両端の

MnIIには phenが配位し6つの酢酸基によって架橋された構造を形成している各Mnイオンの価数はMn-OあるいはMn-Nの結合 離から判断することが可能でMnII

イオン周りはほぼ等方的であるのに対してMnIIIイオン周りは四 錐型 5配位構造を有しており 方向に伸びた Jahn-Teller変形を こしているこれまでに報告さ

れている2つのμ3-O架橋を有するMn4核錯体のコア構造[Mn4(μ3-O)2]n+には平面

+ 4 phenAcetonitrile Ether

Air RT[Mn12O12(OAc) 16(H2O)4] 1

Mn(1)

Mn(3)

Mn(2)Mn(4)O(1)

O(2)

Fig 1 Structure of [Mn4O2(O2CCH3)6(C12 H8N2)2]

N(1)

N(2)

N(3)

N(4)

bukka
4Pp125

型及びバタフライ型がありMnの酸化数の違いによりMnII

2MnIII2 (n=6) MnIIMnIII

3 (n=7)MnIII

4 (n=8)が知られている1 はMnII2MnIII

2

でありこれまでに報告されている

[Mn4O2(O2CCH3)6(bipy)2]2CHCl3(2)1)とほぼ

同じ構造であった図2に 1 のパッキング図

を示す 接する分子間で両端のMnIIに配位

した phen間にπ-π相互作用があり最も接した ChellipC間の 離は 330 Åである図3には phenの重なりを示した 磁性の 析

 直流磁化率測定は1000 Gの磁場下で 2 - 280 Kの温度範囲でおこなった 料は結晶を粉末にし

た 料と沈殿 料についていずれも eicosane で固定したものを用いた沈殿 料のχMT 値は常温付で 102 cm3Kmol-1でありχMT 値は温度の低下と共に減少して2 Kで 39 cm3Kmol-1となるのに

対して結晶 料では 280 K の 120 cm3Kmol-1か

ら温度低下とともに減少し2 Kで 073 cm3Kmol-1

となった(図 5)沈殿 料のχMT 値の挙動は 2 と似していた

 ここで沈殿 料におけるスピン間相互作用とし

て図4の様に J および J13を考え(1)式の等方的なスピンハミルトニアンを用いゼロ磁場分裂 Dの影 が少ないと考えられる 30 K以上の 温でフィッティングを行ったところg = 169J = -195 KJ13 = -399 Kの時に良い一致が得られた(図 5) H=-2J(S1S2+S2S3+S3S4+S4S1)-2J13S1S3 (1)

しかしながらこれらのパラメータと 2 の文献値と

の比 を行うとゼロ磁場分裂を考慮した 析が必

要なことを示しているさらに磁化率の結果が結

晶と沈殿で異なることからpacking が影 してい

ることが考えられる2 つの 料の D を考慮した析とともにこれらの違いの原因について今後検

討する

(1) J B Vincent et al J Am Chem Soc 1989 1112086-2097

Fig 2 Packing structure of [Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2]

χM

T

cm3

K m

ol -1

N(1) N(2)

N(2) N(1)

Fig 3 Overlap of neighboring two phens

Mn1III

Mn3III

OOMn2II Mn4IIJ13

J J

J J

Fig 4 Diagram showing the definition of atom numbering and magnetic exchange parameters for [Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2]

14

12

10

8

6

4

2

0 300250200150100500T K

Fig 5 c MT-T plot of preciptate sample () crystalline sample () and fitting curve(-) for preciptate sample above 30 K

PROXYL ラジカルを有する TTP ドナーの

カチオンラジカル塩の構造と物性

(分子研 1JST CREST2東大院理 3)藤原秀紀 12崔 亨波 12李 夏珍 1

小林速男 12藤原絵美子 3小林昭子 3

【序】我々はこれまで伝導性と磁性の両方を併せ持つ磁性伝導体の開発に注目し

安定有機ラジカルを結合させた各種π拡張型ドナーを合成しその構造と物性につ

いて報告してきたその中で最 PROXYL ラジカルを有する TTP 誘導体を幾つ

か合成しそれらのカチオンラジカル塩の構造と物性について検討したところ伝

導 子と局在スピンが共存しながら い伝導性を有することが明らかとなった1 今

回PROXYL ラジカルを有する TTP ドナー

(1)の 11の組成を有するFeCl4-塩とGaCl4-

塩の構造と伝導性磁性について検討したの

で報告する

【結果と考察】FeCl4-塩と GaCl4-塩の作

成はクロロベンゼンエタノール(82

vv)中定 圧 気分 により作成した

条件によっては多形が得られ30 V

では組成比が 11 の 色板状晶が15 V で

は組成比が 21 の茶 色板状微結晶が得ら

れた21 塩の方は既に文献 1 で報告済み

のようにFeCl4-塩において室温での 気

伝導度が加圧成型 料ながら 5 S cm-1 程

度と良好で金属に い抵抗の温度依存性

を示し伝導 子と局在スピンが同一分子

内に共存している事を見出しているしか

しながら結晶のサイズが小さいため21

塩の構造 析には至っていない11 塩の

構造 析は FeCl4-塩についてはRigaku AFC-7 MercuryGaCl4-塩についてはX線

集光ミラーを備えた Rigaku AFC-8 Mercury で行った表に結晶学データをまとめ

て示すFeCl4-塩と GaCl4-塩は同形であるので以下FeCl4-塩の構造について

述べる図1のようにユニットセル中に結晶学的に独立な二種 のドナー分子 AB

と二種 のアニオンが存在しているドナー分子 AB の TTP 格はほぼ平面である

がPROXYL ラジカル 位は分子平面に対してほぼ垂直に立っているドナーAB

共に立体障害の大きなラジカル 位を避け合うように head-to-tail 型にダイマーを

形成しているダイマー同士は分子 方向にほぼ TTF 一つ分シフトしながら一

S

SS

S

NOS

S

S

S

S

S

1

Anion FeCl4- GaCl4-

Crystal system Triclinic TriclinicSpace group P-1 P-1

a(Aring) 9755(4) 9787(5)b(Aring) 10262(4) 10265(5)c(Aring) 32275(13) 3233(2)a(deg ) 91661(11) 9157(2)b(deg ) 94715(12) 9469(2)g (deg ) 90185(10) 9030(2)

V (Aring3) 32185(22) 32355(28)Z 2 2R 0064 0061Rw 0047 0063

bukka
4Pp126
bukka

次元のスタックを形成しているそしてアニオンはドナーが 方向にずれて

空いた位置に PROXYL ラジカルと末端の 13-ジチオール環に挟まれるようにして存

在しているそれぞれの一次元スタックは b に沿って配列しドナーAB がそれ

ぞれ別々のドナー層を形成しているダイマー内には短い S-S 接触が数多く見られ

るがダイマー間には短い接触はなくまたアニオンがドナー層内に入り込んだ

ような構造になっているため分

子の side-by-side 方向の相互作用

は弱くなっている結果として

ダイマーが孤立している傾向が強

い構造となっている一方ラジ

カル 位は TTP 格が形成する伝

導層間の空間に層を形成するよう

に位置している

FeCl4-塩は 11 塩である事に加え

二量化の強い一次元スタック構造

を有している事を考えると予想以

上の良導体で単結晶 料を用い

4端子法で測定を行ったところ

室温での 気伝導度は 1 x 10-3 S

cm-1 であり活性化エネルギー

が 013 eV の半導体であった一方FeCl4-塩の磁化率を SQUID によって 1 Tesla

で測定した図2にcT-T プロットを示す室温から 50 K程度までcT 値はほぼ一定

であるが更に温度を下げるとcT 値は減少し60 K 以下のデータを用いた Curie-

Weiss Fitting によるとCurie 定数が 483 emu K

mol-1Weiss 温度が-065 K の弱い反強磁性的な温

度依存性を示したCurie 定数の値は High-spin の鉄

(S = 52 4375 emu K mol-1)と PROXYL ラジカル(S

= 12 0375 emu K mol-1)の和(475 emu K mol-1)

に い値を示したカチオンラジカルモーメントに関

する情報は今後 磁性アニオンを用いた GaCl4-

塩の磁気的性 を測定することにより検討を

行う予定である

【文献】(1) H Fujiwara H-J Lee H Kobayashi EFujiwara A Kobayashi Chem Lett 32 482 (2003)

図 1 FeCl4-塩の結晶構造

図 2 FeCl4-塩のcT-T プロット

単一成分分子から成る TTF 型ジチオラトコバルト

錯体の合成構造と物性

(東大院理 1名大院工 2分子研 3科技団 CREST4) 藤原絵美子 1小林昭子 1

藤城雄一 2西堀英治 2 田昌樹 2坂田誠 2藤原秀紀 34小林速男 34

【序】通常単一成分から成る分子性結晶は構成分子の分子軌道が分子間で重な

ることによって出来るバンドが 子によって完全に満たされているか完全に空で

あるかのいずれかである従ってこのような分子性結晶は構成原子が結晶を形

成する際に自発的に金属バンドの形成と自由 子の発生をもたらす金属結晶とは対

照的で絶縁体の典型であると考えられていた 年極低温まで金属状態が安定

な単一成分 TTF 型ジチオラト金属錯体 [Ni(tmdt)2] が開発されde Haas-van

Alphen 効果の観測により Fermi 面を持つ金属であることが証明されたまた中心

金属に磁性金属を導入した[Cu(dmdt)2]では 80の Cu2+の 12 spin が局在しながら

い伝導性を示す常磁性体であることが判る等単一成分分子から成る金属錯体に

おいて興味深い物性が見出されている今回我々はTTF 型ジチオラト金属錯体

に基づく新 な単一成分分子伝導体の開発を目指し中心金属にコバルト原子を導

入した TTF 型ジチオラト金属錯体[Co(dt)2]2を合成しその構造と物性を調べた

【実験および考察】前駆体であるコバルト錯体(Me4N)2[Co(dt)2]はシアノエチルチ

オ基が置換した TTF を THF 中で 25 wt Me4NmiddotOHMeOH 溶液を用いて加水分した後CoCl2middot6H2OMeOH 溶液と反応させることにより紫色を帯びた灰色粉末として得られたさらにこの錯体を nBu4NmiddotClO4を含む PhCN 溶液中で定 流

法(05 mA)を用いて 酸化することにより[Co(dt)2]2 の微小な 色針状結晶が得

られたSPring-8 の放射光ビームライン BL02B2 を用いて X線粉末回折実験を行い

GA (genetic algorithm)と Rietveld 析により得られた錯体の構造を決定した

Crystal data for [Co(dt)2]2 triclinic P`1 a = 117185 (3) b = 109513 (2) c = 77336(1) Aring a = 79737( 2) b = 96474(2) g = 113973(2)deg V = 89145(7) Aring3 Z = 1 Rwp =0053 RI = 0082 この錯体は二個の Co(dt)2ユニットが 312 Aringの面間 離で分子

および短 方向にそれぞれ 130 そして 165 Aring ずつスライドして face-to-faceで重なり各々のユニットのコバルトと硫 原子間でユニット間配位結合(Co-S =

2425 Aring)を持つ特徴的な構造を示す(Fig 1)分子内の二個の Co(dt)2 位はいす形

に大きく折れ曲がりCo1-S1-S2 面と Co1-S7-S8 面との二面 は 121degであった

bukka
4Pp127

Co(dt)2 ユニット間には幾つかの短い S S 離(lt 37 Aring)が見られた結晶中では各々の[Co(dt)2]2 分子が 347 Aring の面間 離で分子 および短 方向にそれぞ

れ 092 そして 173 Aringずつスライドしながら face-to-face で[0 0 1]方向に積層した構造を持つ(Fig 2a)積層方向には短い分子間 S S 離が一種 だけ見られた

さらに[Co(dt)2]2分子は[1 0 0][1 1 0][2 1 0]方向に位置する六個の分子によっ

て分子短 と 方向を囲まれ[1 0 0][1 1 0]方向に 接する分子との間には数

多くの短い S S 離が確認された(Fig 2b)拡張 Huumlckel 法を用いて重なり積分を算したその結果短い S S 離が数多く存在する[1 0 0][1 1 0]方向の分子

との間で大きな重なり積分値が与えられこの錯体はスタック方向よりもむしろ分

子横方向に相互作用が強いことが判った四端子法を用いて[Co(dt)2]2 の加圧成形

料の 気抵抗を室温から 055 K までの温度領域で調べた(Fig 3)加圧成形 料の測

定であるにも拘わらず[Co(dt)2]2は 19 Smiddotcm-1と比 的大きな室温伝導度を示した

抵抗の温度依存性は冷却に伴って室温から緩やかに上昇するがこの錯体は低温

においても 伝導性[s(055 K)srt ordf 110]を示していることからこの錯体は本

的には低温 まで金属である可能性が示唆

される5 kOe の磁場下[Co(dt)2]2 の多結

晶 料の 磁化率を 19-300 K の温度領域

で調べた[Co(dt)2]2の室温 磁化率は 35 x

10-4 emumiddotmol-1であった 磁化率の温度依

存性は低温 において僅かに上昇するが50-300 K の

温度領域においてほぼ一定の値を示したユニット間

配位結合が存在した特徴的な分子構造を持つためこ

の錯体の磁性に対するコバルトスピンの寄与は殆ど無

いかもしくは 常に小さいことが推測される

21 世紀 COE プログラム「フロンティア基礎化学」研究拠点

形成事業のもとに研究を行った

新規ドナー チオピラニリデン-エチレンジオキシ ジチオール分子の合成とその錯体作成

(京大院理) 添田雅也萩原潤矢持秀起斎藤軍治 【序】BEDO-TTF(BO)分子は 5 員環硫黄原子を用いた分子短軸方向への分子間硫黄hellip硫

黄接触と末端エチレンジオキシ基を用いた積層方向への弱い水素結合形成によって錯体

中で自己凝集構造を構築する能力を持っているこのためBO 錯体は金属状態が低温まで

安定であるしかし錯体中で BO 分子は分子長軸方向における相互作用をほとんど示さな

いそこで対成分との相互作用の向上を目指してBO 分子の部分構造をもちかつチオ

ピラン環をもつ新規ドナーチオピラニリデン-エチレンジオキシジチオール(TP-EDOT)分子を合成した今回この TP-EDOT の合成精製およびその PF6塩の構造と物性につ

いて検討したので報告する 【実験と結果】エチレンジオキシ-13-ジチオール-2-チオン(1)とテトラヒドロ-4H-チオピラン

-4-オン(2)をP(OMe)3 存在下ベンゼン中でクロスカップリングさせ49 の収率で黄白色

針状晶のテトラヒドロ TP-EDOT(3)が得られた3 をキシレン中 DDQ を用いて脱水素し

64 の収率で黄白色粉末の TP-EDOT(分解点 1465 ~ 1493 )が得られた

O

O S

SS

BenzeneO S+

S

SS

O

O P(OMe)3

reflux6h O

O S

SS

DDQ

Xylene

1 2 3 TP-EDOT 3 は比較的安定でありまたこの反応条件下で2 同士のホモカップリング反応が起きな

いことから3 は容易に単離できた一方TP-EDOT はその合成条件下同時に分解反応を

起こすので反応は出来るだけ短時間で行う必要があったTP-EDOT はアセトンクロロ

ホルム酸に対しては不安定でこれらの溶媒中では数分以内に分解した一方エタノ

ールメタノールベンゼンテトラヒドロフランベンゾニトリルアセトニトリル中で

は加熱条件下でも安定であったまたTP-EDOT は一部分解物を含む状態となってもシ

リカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製しなおすことが可能であった TP-EDOT と関連物質の酸化還元電位を表 1 にまとめたTP-EDOT の酸化還元電位の大

きさは TTF や BO に比べて小さくTMTTF と同程度であった TP-EDOT の錯体を( Bu4N )X ( X = PF6SbF6BF4ClO4 )の存在下定

電圧電解法により作成したPF6 塩につ

いて緑色と紫色の 2 種類の生成物が得

られたあまり大きくない電流値(約 05 microΑ)で 1 ヶ月以内に電解を停止すること

により紫色の針状結晶を選択的に得る

表 1 サイクリックボルタメトリー法による酸化還元

電位( vs SCE ) ドナー E121 V E122 V ∆ E V TP-EDOT 027 060 033 TMTTF 029 065 036 TTF 037 076 039 BEDO-TTF 043 069 026 ∆E = E121 - E122

ことができたこれ以上長い期間ある

bukka
4Pp128

いは高い電流値で電解を行うと緑色の結晶が紫色の結晶と混ざって生成することがわか

った 単結晶構造解析によって PF6 塩の紫色結晶の結晶構造を決定した(Crystal Data monoclinic C2m Z = 8 a = 16024(3) b = 23029(3) c = 7005(3) Aring β = 10390(2) deg V = 2509(1) Aring3)組成はドナー アニオン= 2 1 であった拡張ヒュッケル法によりドナー分

子同士の重なり積分を算出すると分子間相互作用は 3 次元的であったしかしどの方向

についても重なり積分の絶対値は小さかったまたドナー分子のチオピラン環にある硫黄

原子同士の分子長軸方向への相互作用も見られた(図 1 の s8 に対応する分子間での ShellipS 接

触)これらの分子間相互作用の結果計算上は 3 次元的なフェルミ面が得られた(図 2) この錯体の分子積層方

向(c 軸方向)の電気伝導

度は室温で 10-4 S cm-1

程度であり8 ~ 50 degC の

範囲で半導体的挙動が

観測された 【考察】PF6 塩はバンド計

算からは3次元的な複雑

なフェルミ面を持つし

かし積層方向の伝導度

は金属的な挙動を示さな

かったバンド幅に比べ

オンサイトクーロン反発

(U)が大きいことがそ

の原因であると考えられ

る 本 錯 体 中 で の

TP-EDOT 分子間の重な

り積分はBO 錯体中での

ドナー分子間重なり積分

の 4 分の 1 程度の大きさ

であるまたU の目安

である∆E はTP-EDOT の方が BO より

007V 大きい

a

bo

s8

s6

s5

s1

s1s1

s1s1

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6s5

s5s5

s5s5

s5

s5s5

s5

s8

s8s8

図 1 PF6塩の c 軸投影図

影をつけたドナー分子は z = 0 の平面上にあり影をつけてないドナ

ー分子は z = 05 の平面上にある重なり積分の値はそれぞれs1 =

403times10-3s5 = -192times10-3s6 = -345times10-3s8 = 396times10-3であ

った

今後はPF6塩については磁化率の測定

等を通じて電子がどのように局在化してい

るかを検討していく同時に積層方向以外

の方向における伝導度測定も試みるまた

他のカチオンラジカル塩の単結晶作成とそ

れらの構造と物性について調べていく

図 2 PF6塩のフェルミ面

クラウンエーテルを用いた超分子化学的結晶設計に基

づくヘテロスピン集合系の磁性 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2)

神崎祐貴 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 【序論】現在まで純粋な有機分子からなるフェリ磁性体の構築は成功しておらずな

お分子磁性研究の長年の課題とされている我々は以前理論的考察から基底 1重項(S = 0)ビラジカルと 2重項(S = 12)ラジカルとの反強磁性的交互 1次元鎖が広義のフェリ磁性的な基底状態を取り得ること(一般化フェリ磁性)を提案した[1]

また1次元鎖全体の基底状態はビラジカル分子内と分子間の相互作用の大小関係を圧力等の外場によって変化させるとフェリ磁性的高スピン状態と非磁性(反磁性)

状態との間で相互変換することも理論計算から予想されている[1] この理論計算の結果を実験的に検証するために図 1に示したモデル分子錯体を合成した結晶設計にはクラウンエーテルが選択的にアルカリ金属を捕獲する錯形成

力を利用した超分子結晶工学アプローチを用いたこれまでの研究でフェノキシド

ビラジカル(1-)と 15-crown-5-ether置換のモノラジカル(2) [2]との錯体[Na2]+1-(図 1)が理論を一部実証する非磁性基底状態を示すことを磁化率の測定より明らかにした[3]

本研究では新たに新奇物質である 18-crown-6-ether置換のモノラジカル(3)を合成し新しいモデル錯体としてフェノキシドビラジカル(1-)との錯体[K3]+1-(図 1)を合成した錯体の構成要素となるモノラジカルの変化によって錯体[Na2]+1-とは異なる分

子間交換相互作用が与えられ上記の理論の予言する高スピン状態(フェリ磁性的基

底状態)が得られる可能性がある 【18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)】

18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)を図 2の方法で合成した閉殻前駆体は1H NMR 13C NMR 元素分析を用いて同定したラジカル(3)の同定は元素分析溶液ESRから行った室温でのジクロロメタン溶液の ESRスペクトルを図 3に示す窒素 14N核の超微細結合定数は aN = 072 mTg値は g = 20056で典型的なニトロニルニトロキシドモノラジカルの値を示したまた常磁性磁化率pの温度依存性を図 4に示す室温でのpT値は 0372 emu K mol-1であり純度は 99であったpは Tmax = 32 Kで極大をとりBonner-Fischerモデルを仮定すると Tmaxと Jとの関係から分子間に 2JkB = -51 Kの反強磁性的な交換相互作用が働いていることになる分子のパッキングに基づく詳細な解析を行うために現在 X線結晶構造解析を行なっている

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

-

NNO

O

O O

OOO

Na

+-

+

O

O

O O

O

O

NNO

O+-

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

- K+

[Na2]+1- [K3]+1-

図 1 モデル錯体

bukka
4Pp129

0

001

002

003

004

005

006

0 50 100 150 200 250 300

p (実測)

(Bonner-Fischerモデル)

p

emu

mol

-1T K

図 4 モノラジカル(3)の磁化率

O O

O

O

O

O

Br O O

O

O

O

O

CHOt-BuLi DMF

THF

O O

O

O

O

ON

NO

ONHOH

NHOHbenzene

+-

NaIO4 H2O CH2Cl2

1)

2)

図 2 18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)の合成

326 327 328 329 330 331 332

B mT 図 3 モノラジカル(3)の ESR スペクトル(ジクロロメタン溶液室温)

【フェノキシドビラジカルの単純塩(K+1-)】 モデル錯体の構成要素の性質を明らかにするためにフェノキシドビラジカルの単

純塩(K+1-)の磁化率を測定したpT 値は温度の低下とともに単調に減少したsinglet-tripletモデル

)exp(312

BB

2B

2A

p TkETkgN

(1)

10 SESEE (2) にフィッティングさせて分子内交換相互作用E(3重項と 1重項の間のエネルギーギャップ)を見積もった結果EkB = -70 Kとなったこの結果は単純塩(K+1-)の凍結溶液 ESR禁制遷移の強度 IESRの温度変化から見積もったEkB -10 K[4]とほぼ対応

しており分子内の交換相互作用が反強磁性的なものであることが確かめられたな

おフェノキシドビラジカルのナトリウム塩(Na+1-)では凍結溶液 ESRの実験からEkB -27 13 Kであることがわかっている[3]ビラジカル分子内の交換相互作用

の大きさの違いが錯体形成後の分子集合系のスピン状態に影響を与えるものと思わ

れる 上記の構成分子を用いて[Na2]+1-と同様の方法で新奇なモデル錯体[K3]+1-を合

成した現在錯体の結晶構造解析ESRスペクトルと磁化率の測定を行なっている[Na2]+1-と[K3]+1-との磁性と構造の相違点を議論する予定である 【参考文献】 [1] D Shiomi K Sato and T Takui J Phys Chem B 105 2932 (2001) [2] M Fettouhi Mol Cryst Liq Cryst 356 365 (2001) [3] Y Kanzaki D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 22 1817(2003) [4] S Hase D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 20 1403(2001)

超分子化学アプローチによる有機フェリ

磁性体の構築と磁気的性質 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2) 早川健一 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 有機フェリ磁性体を構築するための大きな問題点として分晶化がある分晶化を避

け異なるスピン量子数を持つ有機ラジカル(たとえばモノラジカル(S = 12)と

ビラジカル(S = 1))を共結晶化させる方法として超分子化学アプローチがある

これは選択的な分子間引力(水素結合やイオン電荷によるクーロン力)によって異

種成分を連結する方法である(図 1)[1]現在までのところ水素結合やイオン電荷

によるビラジカルとモノラジカルの共結晶化の試みは一部報告例があるが[2]結晶

構造まで確定した成功例はない

N

NN

NN

O

O

N

N

O

O

X

+

_

X = COOH(2) OH(3)

(1)

NN

N

N

N

OO

Me

+

N NO O+ _

Y _

Y = COO- O-

(a)水素結合アプローチ (b)有機塩アプローチ(イオン電荷によるクー

ロン力)

図 1 ビラジカルとモノラジカルの共結晶化

本研究ではピリジンの 26-位にイミノニトロキシドを導入したビラジカル(1)と安

息香酸(2)もしくはフェノール(3)置換のニトロニルニトロキシドモノラジカルを水素

結合によって連結する方法を試みた(図 1a) ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)は対応するジアルデヒドから 3 段

階で合成した(図 2)

N CHOOHC NNN

NN

OHHO

HOOHMeOH

NNOHNNOH SeO2

MeOHNN

NN

N

OHHO PbO2

CH2Cl2NN

NN

N

OO

(1)

図 2 ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)の合成

bukka
4Pp130

ビラジカル 1の磁化率を図 3 に示す分子間の平均場θを取り入れた Singlet-Tripletモデル

)2exp(31

)(2

BB

2B

2A

p TkJTkgN

minus+times

minus=

θmicro

χ (1)

により分子内の交換相互作用は 2JkB = +14 K分子間相互作用はθ = -3 K であるこ

とがわかった分子内の交換相互作用が強

磁性的であることはPVC(ポリ塩化ビニ

ル)による固相希釈系の実験(図 3)から

確かめられたビラジカル(1)は超分子フ

ェリ磁性体の構成要素として用いることが

できることがわかった

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

diluted in PVC(JkB = 7K)

neat(JkB = 7K θ = -3K)

-------

____

obscalc

calcobs

図 3 ビラジカル(1)の磁化率 (χpT-T プロット)

ビラジカル(1)と安息香酸置換モノラジ

カル(2)との共結晶体(分子錯体 1-2)は

エタノール溶液からの再結晶により得られ

た元素分析から組成は 11 であること

がわかった磁化率の測定結果を図 4 に示

す室温(300 K)でのχpT の値は分子錯

体 1 モル(S = 12 スピン 3 モル)の高温極

限の予測値(113 emu K mol-1)を下回って

おり分子間の反強磁性相互作用がかなり

大きいことを示唆するまた20 K 付近で

χpT の減少が一旦鈍って停留値をとってい

るこれらの結果はビラジカル(1)の磁化

率(図 3)とモノラジカル(2)の磁化率[3]の単純な和では説明できない現在X 線結

晶構造解析を行なっている

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

図 4 分子錯体 1-2の磁化率

(χpT-T プロット)

フェノール置換モノラジカル(3)による

水素結合アプローチと有機塩アプローチ

による共結晶化を現在進めている [1] D Shiomi K Ito M Nishizawa S Hase K Sato T Takui Mol Cryst Liq Cryst 334 99(1999) [2] 伊瀬智章石田尚行野上隆第 76 春

季年会 4C538(1999) [3] K Inoue H Iwamura Chem Phys Lett 207 551(1993)

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 2: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

と比べても中心アミン部位とニトロニルニトロキシド部位のどちらが先に酸化され

るかは判断できなかった またブチロニトリル溶媒中トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロ

アンチモネートを酸化剤として用い1 のモノカチオン種を発生させ 123 K で ESR測定を行った結果図 2 のようなスペクトルが得られた このスペクトルはフェニルニトロニルニトロキシドの 123K におけるスペクトル

と酷似しておりサイクリックボルタンメトリーの結果と併せて考えると1 は 1 電

子酸化により中心窒素原子部位よりもむしろニトロニルニトロキシド部位が先に酸

化されモノラジカルになることが示唆された以上の結果は1 電子酸化によりア

ミニウムカチオンラジカルを発生させるためには 1 の中心アミン部位のドナー性を

高める必要があることを示している1 のメトキシ基を NN-ジメチル基で置換した

分子 2 では中心アミン部位のドナー性がさらに高まると予想される合成に先立ち

2 の 1 電子酸化体の電子状態を密度汎関数法を用いて調べまた2 の参照分子とし

てトリフェニルアミンのパラ位 1 ヶ所に NN-ジメチル基を導入した分子のサイク

リックボルタンメトリーを実施した結果より2 を 1 電子酸化するとパラフェニレン

ジアミン部位が酸化され高スピン状態が生成する可能性が高いことがわかった 結論 サイクリックボルタンメトリー及び ESR 測定の結果から1 を 1 電子酸化すると

ニトロニルニトロキシド部位が酸化されモノラジカルになることがわかった量子

化学計算より2 は 1 電子酸化することによりアミニウムカチオンラジカルを生じ

分子内で強磁性的相互作用を持つ可能性があることが示唆された2 の合成について

は現在進行中である

参考文献 (1)OelschlagerHPetersHJArchPharm(Weinheim)1987320379

(2)KelkarAAPatilNMChaudhariRVTetrahedonLetter2002437143

(3)UllmanEFOsieckiJHBoocockDGBDarcyRJAmChemSoc1972947049

(4)SakuraiHIzuokaASugawaraTJAmChemSoc20001229723

Fig 2 ESR spectrum of 11+

3205 3280 3355

B G

SS

SS

SS

SS

SSPDT1

PDT2

PDT3

PDT4

図1 本研究で考察した分子ワイヤー

PDT5

ランダウアモデルを用いた分子伝導性の分子長依存性

に関する研究

九大先導研 近藤正一多田朋史吉澤一成

【序】近年単一分子の電気伝導特性が多くのグループにより測定され伝導度に関する理論計算も

多数報告されている分子伝導に関する理論的研究特に第一原理からの理論計算は分子や電極金

属の違いによる伝導度の変化を解析するなど分子ワイヤーの実用化新規ワイヤーの開発などにお

いて重要な示唆を与えられると期待される

通常分子ワイヤーのコンダクタンスはランダウア

の公式

G EF( ) = 2e2

hT EF( ) (1)

を用いて求められるここでT EF( )は(フェルミ準位に

おける)透過係数と呼ばれる以前我々はCaroli ら

の(単一経路)量子輸送モデル[1]およびヒュッケル法

を用いてナノサイズグラファイト分子の透過係数を求

め分子軌道(特に HOMO と LUMO)とコンダクタ

ンスの関係を明らかにした[2]本研究では多経路の量

子輸送モデルと密度汎関数法とを組み合わせることに

より図1に示す5つのジチオール分子ワイヤーの透過係数を求めコンダクタンスの分子長依存性

を調べた

【理論】透過係数は次式

T E( ) = Tr Γ L E( )GR E( )Γ R E( )GA E( )[ ] (2a)

Γ L R E( ) = i ΣL RR E( ) ndash ΣL R

A E( )[ ] (2b)

GR A E( ) = I minus G(0)R A E( )ΣR A E( )[ ] ndash1G(0)R A E( ) (2c)

で与えられるワイヤー部分のゼロ次の先進(遅延)グリーン関数G(0)R A E( )自己エネルギー ΣL RR A E( )

は次式を用いて求める

G(0)R A E( )[ ]αβ=

CmαCmβ

E minus εm plusmn iηmsum (2d)

bukka
4Pp123

ΣL RR A E( ) = τgR Aτ dagger (2e)

ここでCmα εm τ gR Aはそれぞれ軌道係数軌道エネルギー移動積分および電極金属(金)

のグリーン関数である

【計算方法】5つのワイヤーの両端の硫黄原子に金原子を1つ結合させた拡張分子を

B3LYPLANL2DZ レベルで構造最適化したこの拡張分子の軌道係数軌道エネルギーを用いること

によりグリーン関数G(0)R A E( )を求めこのG(0)R A E( )を用いて(2a)ndash(2c)式により透過係数を求めたな

お自己エネルギーを求める際に必要となる移動積分は拡張ヒュッケル法により見積り金のグリーン

関数は Decimation法によりに求めた

【結果】計算により得られた透過係数曲線を図2に示す金電極のフェルミ面(0 eV)における透過

係数はワイヤーの長さとともに減少していることがわかるこの結果は Magoga らによる拡張ヒュッ

ケル法を用いた計算結果[3]と一致している

フェルミ準位近傍における分子ワイヤーのコンダ

クタンスはワイヤー長とともに指数関数的に減少し

ていくと考えられている[3]つまりコンダクタンス

のワイヤー長依存性は次式

G = G0endash γL (3)

で表されると考えられているここで L は分子ワイ

ヤーの長さでありγは減衰因子と呼ばれる量である

本計算で得られたフェルミ準位における透過係数の

値をワイヤー長(両端の硫黄原子間の距離で定義す

る)に対してプロットし(3)式にフィッティングさ

せて減衰因子の大きさを見積もったところ0122 Aringndash1

となりMagoga らにより得られたもの(0281 Aringndash1)[3]と定性的によい一致を示した計算方法の詳

細等は当日発表の予定である

【参考文献】

[1] C Caroli R Combescot P Nozieres and D Saint-James J Phys C 4 916 (1971)

[2] T Tada and K Yoshizawa ChemPhysChem 2002 1035 (2002)

[3] M Magoga and C Joachim Phys Rev B 56 4722 (1997)

0ndash5 510ndash6

10ndash4

10ndash2

1

E ndash EF (eV)

T(E

)

+$PDT(amp-)

環状チアジルラジカル TTTA に対する圧力及びドーピング効果

(名大院理名大物質国際セ北大院理)田中利幸白井貴博藤田渉阿波賀邦夫稲辺保 【序論】 ヘテロ環状チアジルラジカルは分子性導体あるいは磁性体

として新規な物性の発現が期待されているその一種である

135-Trithia-246- triazapentalenyl(TTTA)は室温付近

で常磁性-反磁性転移を示し100K 近い双安定領域を持つこ

とが分っているこれは分子デバイスとしての可能性を示して

おりこのためには双安定の温度領域や磁化率の大きさを制御

することが必要であるまたTTTA 高温相は 1 サイトに 1 電子が局在するモット絶

縁体であるため結晶構造を保持したままキャリアーをドープすることができれば極

めて特異な電気物性を示す可能性がある本研究ではTTTA に対する圧力及効果を

調べるとともにTTTA は CV 測定などからドナーであることが知られているので

ヨウ素ドーピングについても検討した

S

N

N

N

S

S

TTTA

【圧力効果】 圧力をかける際には Be-Cu クランプ式ピストンシリンダーセルを用い静水圧を

かけることで加圧した圧力セルは大きな反磁性磁化率を持っており TTTA の磁化率

を見積もりにくいそのためセルにチタン線を巻くなどして圧力セルの反磁性磁化

率の影響を軽減したその結果比較的小さな圧力で相転移温度が高温側にシフトし

た双安定領域の中心は室温付近に移動し双安定性を制御することができたまた

Tcdarrの方が Tcuarrよりも温度変化が大きく圧力に対し敏感であるといえる転移温度

の圧力依存性を計算したところdTcuarrdp=11 K GPa‐1dTcdarrdp=26 K GPa‐1と

なった仮にクラウジウス-クラペイロンの式を用いて両転移温度の圧力依存性を

4

3

2

1

0

χ x10-4 emu mol-1

400350300250200150100

T K

0GPa 038GPa 075GPa 15GPa

340

320

300

280

260

240

Tc K

1412100806040200

p GPa

Tcuarr Tcdarr

図 1圧力下での磁化率の温度依存 図 2転移温度の圧力依存

bukka
4Pp124
bukka

計算するとdTcuarrdp=68 K GPa‐1dTcdarrdp=50K GPa‐1となりオーダー程度は

【ドーピング効果】 不安定であるため溶媒中でアクセプターと混合する方法では

プルは空気に不安定で装置の減圧をとくと 10 分ほどで伝導度が

1

一致していた常磁性磁化率は圧力とともに減少したしかし圧力セルのバックグ

ラウンドが非常に大きくこれを完全に補正することが出来ているかどうかを現在調

査中である

TTTA は溶液状態で

荷移動錯体を得ることが困難であったそこで本実験では TTTA をヨウ素蒸気にさ

らしてドーピングを行ったヨウ素雰囲気での伝導度変化を測定するために図 4 に示

す装置を製作した端子などの金属部位に耐

ハロゲン性グリースを塗布し保護した昇華

精製により得られる TTTA の高温相ブロッ

ク状結晶をサンプルとし装置内を減圧し電

気伝導度の時間変化を調べた

図 4 に伝導度の時間変化を示すドーピ

図 3ヨウ素ドープ伝導度測定

グ開始直後から徐々に伝導度は上昇し10時間程経過した時点で急激に増加したその

後伝導度は一時的に減少するがさらにドー

プを続けることで再度上昇を開始したこの

ような伝導度の上昇は数日続き最大で 104

倍まで増加したがその後は緩やかに減少し

ドープ後のサン

10 以下に減少してしまった当日は伝導度の温度依存性ESR 及び磁化率の測定

結果さらに共昇華法で合成した TTTAI の物性とあわせて議論する予定である

0

02

04

06

08

1

12

0 20 40 60 80 10

timeh

σtimes105(Ω

cm)-

1

図 4ヨウ素ドープ時の伝導度の時間変化

0

110-phenanthroline配位を有する

新 Mn4核錯体の構造と磁性

( 畿大理工) 井淳宏 田孝義前川雅彦宗像 惠

【序】  年Mn 多核錯体は Mn12 核錯体に代表される単一分子磁性や磁気トンネリング現象の観測などで注目されているMn4核錯体は以前から光合成系モデルとして注目されているが最 では単一分子磁性を示すものも報告されより核数の

多い多核 Mn 錯体の構築素子とも考えられる今回我々はMn12 核錯体と 110-phenanthroline(以下 phen)との反応により新 な Mn4 核錯体の合成及び構造 析に成

功したのでその磁性とあわせて報告する

【方法】 [Mn12O12(OAc)16(H2O)4] (100 mg 00535 mmol)を溶 したアセトニトリル溶

液に phen (424 mg 0214 mmol)を加えて3時間撹拌したこの溶液をエバポレーターで濃縮乾固し沈殿を再びアセトニトリルに溶 しこの操作を 2回繰り した

茶色の沈殿を最少量のアセトニトリルに溶かしガラス管に入れ 3 倍量のジエチルエーテルを上から層を形成するように加えて封入し 置した3日後 色レンガ

状結晶[Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2](1)が得られたAnal Calcd (found) for C36H34O14N4Mn4 C 4474 (4473) H 355 (358) N 580 (596) [scheme]

【結果】 単結晶 X線構造 析

 この結晶は a = 11027 Å b = 13226Å c = 14916 Å α = 72670deg β =67694degγ = 80293degの三斜晶系で空間群は

dagger

P1 であるこの錯体の中心分は 2つのMnIIIイオンが 2つのμ3-

O2-イオンで架橋されさらにそれぞれ

のμ3-O2-イオンにMnIIイオンが結合し

た[Mn4O2]6+から成っており両端の

MnIIには phenが配位し6つの酢酸基によって架橋された構造を形成している各Mnイオンの価数はMn-OあるいはMn-Nの結合 離から判断することが可能でMnII

イオン周りはほぼ等方的であるのに対してMnIIIイオン周りは四 錐型 5配位構造を有しており 方向に伸びた Jahn-Teller変形を こしているこれまでに報告さ

れている2つのμ3-O架橋を有するMn4核錯体のコア構造[Mn4(μ3-O)2]n+には平面

+ 4 phenAcetonitrile Ether

Air RT[Mn12O12(OAc) 16(H2O)4] 1

Mn(1)

Mn(3)

Mn(2)Mn(4)O(1)

O(2)

Fig 1 Structure of [Mn4O2(O2CCH3)6(C12 H8N2)2]

N(1)

N(2)

N(3)

N(4)

bukka
4Pp125

型及びバタフライ型がありMnの酸化数の違いによりMnII

2MnIII2 (n=6) MnIIMnIII

3 (n=7)MnIII

4 (n=8)が知られている1 はMnII2MnIII

2

でありこれまでに報告されている

[Mn4O2(O2CCH3)6(bipy)2]2CHCl3(2)1)とほぼ

同じ構造であった図2に 1 のパッキング図

を示す 接する分子間で両端のMnIIに配位

した phen間にπ-π相互作用があり最も接した ChellipC間の 離は 330 Åである図3には phenの重なりを示した 磁性の 析

 直流磁化率測定は1000 Gの磁場下で 2 - 280 Kの温度範囲でおこなった 料は結晶を粉末にし

た 料と沈殿 料についていずれも eicosane で固定したものを用いた沈殿 料のχMT 値は常温付で 102 cm3Kmol-1でありχMT 値は温度の低下と共に減少して2 Kで 39 cm3Kmol-1となるのに

対して結晶 料では 280 K の 120 cm3Kmol-1か

ら温度低下とともに減少し2 Kで 073 cm3Kmol-1

となった(図 5)沈殿 料のχMT 値の挙動は 2 と似していた

 ここで沈殿 料におけるスピン間相互作用とし

て図4の様に J および J13を考え(1)式の等方的なスピンハミルトニアンを用いゼロ磁場分裂 Dの影 が少ないと考えられる 30 K以上の 温でフィッティングを行ったところg = 169J = -195 KJ13 = -399 Kの時に良い一致が得られた(図 5) H=-2J(S1S2+S2S3+S3S4+S4S1)-2J13S1S3 (1)

しかしながらこれらのパラメータと 2 の文献値と

の比 を行うとゼロ磁場分裂を考慮した 析が必

要なことを示しているさらに磁化率の結果が結

晶と沈殿で異なることからpacking が影 してい

ることが考えられる2 つの 料の D を考慮した析とともにこれらの違いの原因について今後検

討する

(1) J B Vincent et al J Am Chem Soc 1989 1112086-2097

Fig 2 Packing structure of [Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2]

χM

T

cm3

K m

ol -1

N(1) N(2)

N(2) N(1)

Fig 3 Overlap of neighboring two phens

Mn1III

Mn3III

OOMn2II Mn4IIJ13

J J

J J

Fig 4 Diagram showing the definition of atom numbering and magnetic exchange parameters for [Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2]

14

12

10

8

6

4

2

0 300250200150100500T K

Fig 5 c MT-T plot of preciptate sample () crystalline sample () and fitting curve(-) for preciptate sample above 30 K

PROXYL ラジカルを有する TTP ドナーの

カチオンラジカル塩の構造と物性

(分子研 1JST CREST2東大院理 3)藤原秀紀 12崔 亨波 12李 夏珍 1

小林速男 12藤原絵美子 3小林昭子 3

【序】我々はこれまで伝導性と磁性の両方を併せ持つ磁性伝導体の開発に注目し

安定有機ラジカルを結合させた各種π拡張型ドナーを合成しその構造と物性につ

いて報告してきたその中で最 PROXYL ラジカルを有する TTP 誘導体を幾つ

か合成しそれらのカチオンラジカル塩の構造と物性について検討したところ伝

導 子と局在スピンが共存しながら い伝導性を有することが明らかとなった1 今

回PROXYL ラジカルを有する TTP ドナー

(1)の 11の組成を有するFeCl4-塩とGaCl4-

塩の構造と伝導性磁性について検討したの

で報告する

【結果と考察】FeCl4-塩と GaCl4-塩の作

成はクロロベンゼンエタノール(82

vv)中定 圧 気分 により作成した

条件によっては多形が得られ30 V

では組成比が 11 の 色板状晶が15 V で

は組成比が 21 の茶 色板状微結晶が得ら

れた21 塩の方は既に文献 1 で報告済み

のようにFeCl4-塩において室温での 気

伝導度が加圧成型 料ながら 5 S cm-1 程

度と良好で金属に い抵抗の温度依存性

を示し伝導 子と局在スピンが同一分子

内に共存している事を見出しているしか

しながら結晶のサイズが小さいため21

塩の構造 析には至っていない11 塩の

構造 析は FeCl4-塩についてはRigaku AFC-7 MercuryGaCl4-塩についてはX線

集光ミラーを備えた Rigaku AFC-8 Mercury で行った表に結晶学データをまとめ

て示すFeCl4-塩と GaCl4-塩は同形であるので以下FeCl4-塩の構造について

述べる図1のようにユニットセル中に結晶学的に独立な二種 のドナー分子 AB

と二種 のアニオンが存在しているドナー分子 AB の TTP 格はほぼ平面である

がPROXYL ラジカル 位は分子平面に対してほぼ垂直に立っているドナーAB

共に立体障害の大きなラジカル 位を避け合うように head-to-tail 型にダイマーを

形成しているダイマー同士は分子 方向にほぼ TTF 一つ分シフトしながら一

S

SS

S

NOS

S

S

S

S

S

1

Anion FeCl4- GaCl4-

Crystal system Triclinic TriclinicSpace group P-1 P-1

a(Aring) 9755(4) 9787(5)b(Aring) 10262(4) 10265(5)c(Aring) 32275(13) 3233(2)a(deg ) 91661(11) 9157(2)b(deg ) 94715(12) 9469(2)g (deg ) 90185(10) 9030(2)

V (Aring3) 32185(22) 32355(28)Z 2 2R 0064 0061Rw 0047 0063

bukka
4Pp126
bukka

次元のスタックを形成しているそしてアニオンはドナーが 方向にずれて

空いた位置に PROXYL ラジカルと末端の 13-ジチオール環に挟まれるようにして存

在しているそれぞれの一次元スタックは b に沿って配列しドナーAB がそれ

ぞれ別々のドナー層を形成しているダイマー内には短い S-S 接触が数多く見られ

るがダイマー間には短い接触はなくまたアニオンがドナー層内に入り込んだ

ような構造になっているため分

子の side-by-side 方向の相互作用

は弱くなっている結果として

ダイマーが孤立している傾向が強

い構造となっている一方ラジ

カル 位は TTP 格が形成する伝

導層間の空間に層を形成するよう

に位置している

FeCl4-塩は 11 塩である事に加え

二量化の強い一次元スタック構造

を有している事を考えると予想以

上の良導体で単結晶 料を用い

4端子法で測定を行ったところ

室温での 気伝導度は 1 x 10-3 S

cm-1 であり活性化エネルギー

が 013 eV の半導体であった一方FeCl4-塩の磁化率を SQUID によって 1 Tesla

で測定した図2にcT-T プロットを示す室温から 50 K程度までcT 値はほぼ一定

であるが更に温度を下げるとcT 値は減少し60 K 以下のデータを用いた Curie-

Weiss Fitting によるとCurie 定数が 483 emu K

mol-1Weiss 温度が-065 K の弱い反強磁性的な温

度依存性を示したCurie 定数の値は High-spin の鉄

(S = 52 4375 emu K mol-1)と PROXYL ラジカル(S

= 12 0375 emu K mol-1)の和(475 emu K mol-1)

に い値を示したカチオンラジカルモーメントに関

する情報は今後 磁性アニオンを用いた GaCl4-

塩の磁気的性 を測定することにより検討を

行う予定である

【文献】(1) H Fujiwara H-J Lee H Kobayashi EFujiwara A Kobayashi Chem Lett 32 482 (2003)

図 1 FeCl4-塩の結晶構造

図 2 FeCl4-塩のcT-T プロット

単一成分分子から成る TTF 型ジチオラトコバルト

錯体の合成構造と物性

(東大院理 1名大院工 2分子研 3科技団 CREST4) 藤原絵美子 1小林昭子 1

藤城雄一 2西堀英治 2 田昌樹 2坂田誠 2藤原秀紀 34小林速男 34

【序】通常単一成分から成る分子性結晶は構成分子の分子軌道が分子間で重な

ることによって出来るバンドが 子によって完全に満たされているか完全に空で

あるかのいずれかである従ってこのような分子性結晶は構成原子が結晶を形

成する際に自発的に金属バンドの形成と自由 子の発生をもたらす金属結晶とは対

照的で絶縁体の典型であると考えられていた 年極低温まで金属状態が安定

な単一成分 TTF 型ジチオラト金属錯体 [Ni(tmdt)2] が開発されde Haas-van

Alphen 効果の観測により Fermi 面を持つ金属であることが証明されたまた中心

金属に磁性金属を導入した[Cu(dmdt)2]では 80の Cu2+の 12 spin が局在しながら

い伝導性を示す常磁性体であることが判る等単一成分分子から成る金属錯体に

おいて興味深い物性が見出されている今回我々はTTF 型ジチオラト金属錯体

に基づく新 な単一成分分子伝導体の開発を目指し中心金属にコバルト原子を導

入した TTF 型ジチオラト金属錯体[Co(dt)2]2を合成しその構造と物性を調べた

【実験および考察】前駆体であるコバルト錯体(Me4N)2[Co(dt)2]はシアノエチルチ

オ基が置換した TTF を THF 中で 25 wt Me4NmiddotOHMeOH 溶液を用いて加水分した後CoCl2middot6H2OMeOH 溶液と反応させることにより紫色を帯びた灰色粉末として得られたさらにこの錯体を nBu4NmiddotClO4を含む PhCN 溶液中で定 流

法(05 mA)を用いて 酸化することにより[Co(dt)2]2 の微小な 色針状結晶が得

られたSPring-8 の放射光ビームライン BL02B2 を用いて X線粉末回折実験を行い

GA (genetic algorithm)と Rietveld 析により得られた錯体の構造を決定した

Crystal data for [Co(dt)2]2 triclinic P`1 a = 117185 (3) b = 109513 (2) c = 77336(1) Aring a = 79737( 2) b = 96474(2) g = 113973(2)deg V = 89145(7) Aring3 Z = 1 Rwp =0053 RI = 0082 この錯体は二個の Co(dt)2ユニットが 312 Aringの面間 離で分子

および短 方向にそれぞれ 130 そして 165 Aring ずつスライドして face-to-faceで重なり各々のユニットのコバルトと硫 原子間でユニット間配位結合(Co-S =

2425 Aring)を持つ特徴的な構造を示す(Fig 1)分子内の二個の Co(dt)2 位はいす形

に大きく折れ曲がりCo1-S1-S2 面と Co1-S7-S8 面との二面 は 121degであった

bukka
4Pp127

Co(dt)2 ユニット間には幾つかの短い S S 離(lt 37 Aring)が見られた結晶中では各々の[Co(dt)2]2 分子が 347 Aring の面間 離で分子 および短 方向にそれぞ

れ 092 そして 173 Aringずつスライドしながら face-to-face で[0 0 1]方向に積層した構造を持つ(Fig 2a)積層方向には短い分子間 S S 離が一種 だけ見られた

さらに[Co(dt)2]2分子は[1 0 0][1 1 0][2 1 0]方向に位置する六個の分子によっ

て分子短 と 方向を囲まれ[1 0 0][1 1 0]方向に 接する分子との間には数

多くの短い S S 離が確認された(Fig 2b)拡張 Huumlckel 法を用いて重なり積分を算したその結果短い S S 離が数多く存在する[1 0 0][1 1 0]方向の分子

との間で大きな重なり積分値が与えられこの錯体はスタック方向よりもむしろ分

子横方向に相互作用が強いことが判った四端子法を用いて[Co(dt)2]2 の加圧成形

料の 気抵抗を室温から 055 K までの温度領域で調べた(Fig 3)加圧成形 料の測

定であるにも拘わらず[Co(dt)2]2は 19 Smiddotcm-1と比 的大きな室温伝導度を示した

抵抗の温度依存性は冷却に伴って室温から緩やかに上昇するがこの錯体は低温

においても 伝導性[s(055 K)srt ordf 110]を示していることからこの錯体は本

的には低温 まで金属である可能性が示唆

される5 kOe の磁場下[Co(dt)2]2 の多結

晶 料の 磁化率を 19-300 K の温度領域

で調べた[Co(dt)2]2の室温 磁化率は 35 x

10-4 emumiddotmol-1であった 磁化率の温度依

存性は低温 において僅かに上昇するが50-300 K の

温度領域においてほぼ一定の値を示したユニット間

配位結合が存在した特徴的な分子構造を持つためこ

の錯体の磁性に対するコバルトスピンの寄与は殆ど無

いかもしくは 常に小さいことが推測される

21 世紀 COE プログラム「フロンティア基礎化学」研究拠点

形成事業のもとに研究を行った

新規ドナー チオピラニリデン-エチレンジオキシ ジチオール分子の合成とその錯体作成

(京大院理) 添田雅也萩原潤矢持秀起斎藤軍治 【序】BEDO-TTF(BO)分子は 5 員環硫黄原子を用いた分子短軸方向への分子間硫黄hellip硫

黄接触と末端エチレンジオキシ基を用いた積層方向への弱い水素結合形成によって錯体

中で自己凝集構造を構築する能力を持っているこのためBO 錯体は金属状態が低温まで

安定であるしかし錯体中で BO 分子は分子長軸方向における相互作用をほとんど示さな

いそこで対成分との相互作用の向上を目指してBO 分子の部分構造をもちかつチオ

ピラン環をもつ新規ドナーチオピラニリデン-エチレンジオキシジチオール(TP-EDOT)分子を合成した今回この TP-EDOT の合成精製およびその PF6塩の構造と物性につ

いて検討したので報告する 【実験と結果】エチレンジオキシ-13-ジチオール-2-チオン(1)とテトラヒドロ-4H-チオピラン

-4-オン(2)をP(OMe)3 存在下ベンゼン中でクロスカップリングさせ49 の収率で黄白色

針状晶のテトラヒドロ TP-EDOT(3)が得られた3 をキシレン中 DDQ を用いて脱水素し

64 の収率で黄白色粉末の TP-EDOT(分解点 1465 ~ 1493 )が得られた

O

O S

SS

BenzeneO S+

S

SS

O

O P(OMe)3

reflux6h O

O S

SS

DDQ

Xylene

1 2 3 TP-EDOT 3 は比較的安定でありまたこの反応条件下で2 同士のホモカップリング反応が起きな

いことから3 は容易に単離できた一方TP-EDOT はその合成条件下同時に分解反応を

起こすので反応は出来るだけ短時間で行う必要があったTP-EDOT はアセトンクロロ

ホルム酸に対しては不安定でこれらの溶媒中では数分以内に分解した一方エタノ

ールメタノールベンゼンテトラヒドロフランベンゾニトリルアセトニトリル中で

は加熱条件下でも安定であったまたTP-EDOT は一部分解物を含む状態となってもシ

リカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製しなおすことが可能であった TP-EDOT と関連物質の酸化還元電位を表 1 にまとめたTP-EDOT の酸化還元電位の大

きさは TTF や BO に比べて小さくTMTTF と同程度であった TP-EDOT の錯体を( Bu4N )X ( X = PF6SbF6BF4ClO4 )の存在下定

電圧電解法により作成したPF6 塩につ

いて緑色と紫色の 2 種類の生成物が得

られたあまり大きくない電流値(約 05 microΑ)で 1 ヶ月以内に電解を停止すること

により紫色の針状結晶を選択的に得る

表 1 サイクリックボルタメトリー法による酸化還元

電位( vs SCE ) ドナー E121 V E122 V ∆ E V TP-EDOT 027 060 033 TMTTF 029 065 036 TTF 037 076 039 BEDO-TTF 043 069 026 ∆E = E121 - E122

ことができたこれ以上長い期間ある

bukka
4Pp128

いは高い電流値で電解を行うと緑色の結晶が紫色の結晶と混ざって生成することがわか

った 単結晶構造解析によって PF6 塩の紫色結晶の結晶構造を決定した(Crystal Data monoclinic C2m Z = 8 a = 16024(3) b = 23029(3) c = 7005(3) Aring β = 10390(2) deg V = 2509(1) Aring3)組成はドナー アニオン= 2 1 であった拡張ヒュッケル法によりドナー分

子同士の重なり積分を算出すると分子間相互作用は 3 次元的であったしかしどの方向

についても重なり積分の絶対値は小さかったまたドナー分子のチオピラン環にある硫黄

原子同士の分子長軸方向への相互作用も見られた(図 1 の s8 に対応する分子間での ShellipS 接

触)これらの分子間相互作用の結果計算上は 3 次元的なフェルミ面が得られた(図 2) この錯体の分子積層方

向(c 軸方向)の電気伝導

度は室温で 10-4 S cm-1

程度であり8 ~ 50 degC の

範囲で半導体的挙動が

観測された 【考察】PF6 塩はバンド計

算からは3次元的な複雑

なフェルミ面を持つし

かし積層方向の伝導度

は金属的な挙動を示さな

かったバンド幅に比べ

オンサイトクーロン反発

(U)が大きいことがそ

の原因であると考えられ

る 本 錯 体 中 で の

TP-EDOT 分子間の重な

り積分はBO 錯体中での

ドナー分子間重なり積分

の 4 分の 1 程度の大きさ

であるまたU の目安

である∆E はTP-EDOT の方が BO より

007V 大きい

a

bo

s8

s6

s5

s1

s1s1

s1s1

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6s5

s5s5

s5s5

s5

s5s5

s5

s8

s8s8

図 1 PF6塩の c 軸投影図

影をつけたドナー分子は z = 0 の平面上にあり影をつけてないドナ

ー分子は z = 05 の平面上にある重なり積分の値はそれぞれs1 =

403times10-3s5 = -192times10-3s6 = -345times10-3s8 = 396times10-3であ

った

今後はPF6塩については磁化率の測定

等を通じて電子がどのように局在化してい

るかを検討していく同時に積層方向以外

の方向における伝導度測定も試みるまた

他のカチオンラジカル塩の単結晶作成とそ

れらの構造と物性について調べていく

図 2 PF6塩のフェルミ面

クラウンエーテルを用いた超分子化学的結晶設計に基

づくヘテロスピン集合系の磁性 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2)

神崎祐貴 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 【序論】現在まで純粋な有機分子からなるフェリ磁性体の構築は成功しておらずな

お分子磁性研究の長年の課題とされている我々は以前理論的考察から基底 1重項(S = 0)ビラジカルと 2重項(S = 12)ラジカルとの反強磁性的交互 1次元鎖が広義のフェリ磁性的な基底状態を取り得ること(一般化フェリ磁性)を提案した[1]

また1次元鎖全体の基底状態はビラジカル分子内と分子間の相互作用の大小関係を圧力等の外場によって変化させるとフェリ磁性的高スピン状態と非磁性(反磁性)

状態との間で相互変換することも理論計算から予想されている[1] この理論計算の結果を実験的に検証するために図 1に示したモデル分子錯体を合成した結晶設計にはクラウンエーテルが選択的にアルカリ金属を捕獲する錯形成

力を利用した超分子結晶工学アプローチを用いたこれまでの研究でフェノキシド

ビラジカル(1-)と 15-crown-5-ether置換のモノラジカル(2) [2]との錯体[Na2]+1-(図 1)が理論を一部実証する非磁性基底状態を示すことを磁化率の測定より明らかにした[3]

本研究では新たに新奇物質である 18-crown-6-ether置換のモノラジカル(3)を合成し新しいモデル錯体としてフェノキシドビラジカル(1-)との錯体[K3]+1-(図 1)を合成した錯体の構成要素となるモノラジカルの変化によって錯体[Na2]+1-とは異なる分

子間交換相互作用が与えられ上記の理論の予言する高スピン状態(フェリ磁性的基

底状態)が得られる可能性がある 【18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)】

18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)を図 2の方法で合成した閉殻前駆体は1H NMR 13C NMR 元素分析を用いて同定したラジカル(3)の同定は元素分析溶液ESRから行った室温でのジクロロメタン溶液の ESRスペクトルを図 3に示す窒素 14N核の超微細結合定数は aN = 072 mTg値は g = 20056で典型的なニトロニルニトロキシドモノラジカルの値を示したまた常磁性磁化率pの温度依存性を図 4に示す室温でのpT値は 0372 emu K mol-1であり純度は 99であったpは Tmax = 32 Kで極大をとりBonner-Fischerモデルを仮定すると Tmaxと Jとの関係から分子間に 2JkB = -51 Kの反強磁性的な交換相互作用が働いていることになる分子のパッキングに基づく詳細な解析を行うために現在 X線結晶構造解析を行なっている

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

-

NNO

O

O O

OOO

Na

+-

+

O

O

O O

O

O

NNO

O+-

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

- K+

[Na2]+1- [K3]+1-

図 1 モデル錯体

bukka
4Pp129

0

001

002

003

004

005

006

0 50 100 150 200 250 300

p (実測)

(Bonner-Fischerモデル)

p

emu

mol

-1T K

図 4 モノラジカル(3)の磁化率

O O

O

O

O

O

Br O O

O

O

O

O

CHOt-BuLi DMF

THF

O O

O

O

O

ON

NO

ONHOH

NHOHbenzene

+-

NaIO4 H2O CH2Cl2

1)

2)

図 2 18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)の合成

326 327 328 329 330 331 332

B mT 図 3 モノラジカル(3)の ESR スペクトル(ジクロロメタン溶液室温)

【フェノキシドビラジカルの単純塩(K+1-)】 モデル錯体の構成要素の性質を明らかにするためにフェノキシドビラジカルの単

純塩(K+1-)の磁化率を測定したpT 値は温度の低下とともに単調に減少したsinglet-tripletモデル

)exp(312

BB

2B

2A

p TkETkgN

(1)

10 SESEE (2) にフィッティングさせて分子内交換相互作用E(3重項と 1重項の間のエネルギーギャップ)を見積もった結果EkB = -70 Kとなったこの結果は単純塩(K+1-)の凍結溶液 ESR禁制遷移の強度 IESRの温度変化から見積もったEkB -10 K[4]とほぼ対応

しており分子内の交換相互作用が反強磁性的なものであることが確かめられたな

おフェノキシドビラジカルのナトリウム塩(Na+1-)では凍結溶液 ESRの実験からEkB -27 13 Kであることがわかっている[3]ビラジカル分子内の交換相互作用

の大きさの違いが錯体形成後の分子集合系のスピン状態に影響を与えるものと思わ

れる 上記の構成分子を用いて[Na2]+1-と同様の方法で新奇なモデル錯体[K3]+1-を合

成した現在錯体の結晶構造解析ESRスペクトルと磁化率の測定を行なっている[Na2]+1-と[K3]+1-との磁性と構造の相違点を議論する予定である 【参考文献】 [1] D Shiomi K Sato and T Takui J Phys Chem B 105 2932 (2001) [2] M Fettouhi Mol Cryst Liq Cryst 356 365 (2001) [3] Y Kanzaki D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 22 1817(2003) [4] S Hase D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 20 1403(2001)

超分子化学アプローチによる有機フェリ

磁性体の構築と磁気的性質 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2) 早川健一 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 有機フェリ磁性体を構築するための大きな問題点として分晶化がある分晶化を避

け異なるスピン量子数を持つ有機ラジカル(たとえばモノラジカル(S = 12)と

ビラジカル(S = 1))を共結晶化させる方法として超分子化学アプローチがある

これは選択的な分子間引力(水素結合やイオン電荷によるクーロン力)によって異

種成分を連結する方法である(図 1)[1]現在までのところ水素結合やイオン電荷

によるビラジカルとモノラジカルの共結晶化の試みは一部報告例があるが[2]結晶

構造まで確定した成功例はない

N

NN

NN

O

O

N

N

O

O

X

+

_

X = COOH(2) OH(3)

(1)

NN

N

N

N

OO

Me

+

N NO O+ _

Y _

Y = COO- O-

(a)水素結合アプローチ (b)有機塩アプローチ(イオン電荷によるクー

ロン力)

図 1 ビラジカルとモノラジカルの共結晶化

本研究ではピリジンの 26-位にイミノニトロキシドを導入したビラジカル(1)と安

息香酸(2)もしくはフェノール(3)置換のニトロニルニトロキシドモノラジカルを水素

結合によって連結する方法を試みた(図 1a) ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)は対応するジアルデヒドから 3 段

階で合成した(図 2)

N CHOOHC NNN

NN

OHHO

HOOHMeOH

NNOHNNOH SeO2

MeOHNN

NN

N

OHHO PbO2

CH2Cl2NN

NN

N

OO

(1)

図 2 ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)の合成

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4Pp130

ビラジカル 1の磁化率を図 3 に示す分子間の平均場θを取り入れた Singlet-Tripletモデル

)2exp(31

)(2

BB

2B

2A

p TkJTkgN

minus+times

minus=

θmicro

χ (1)

により分子内の交換相互作用は 2JkB = +14 K分子間相互作用はθ = -3 K であるこ

とがわかった分子内の交換相互作用が強

磁性的であることはPVC(ポリ塩化ビニ

ル)による固相希釈系の実験(図 3)から

確かめられたビラジカル(1)は超分子フ

ェリ磁性体の構成要素として用いることが

できることがわかった

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

diluted in PVC(JkB = 7K)

neat(JkB = 7K θ = -3K)

-------

____

obscalc

calcobs

図 3 ビラジカル(1)の磁化率 (χpT-T プロット)

ビラジカル(1)と安息香酸置換モノラジ

カル(2)との共結晶体(分子錯体 1-2)は

エタノール溶液からの再結晶により得られ

た元素分析から組成は 11 であること

がわかった磁化率の測定結果を図 4 に示

す室温(300 K)でのχpT の値は分子錯

体 1 モル(S = 12 スピン 3 モル)の高温極

限の予測値(113 emu K mol-1)を下回って

おり分子間の反強磁性相互作用がかなり

大きいことを示唆するまた20 K 付近で

χpT の減少が一旦鈍って停留値をとってい

るこれらの結果はビラジカル(1)の磁化

率(図 3)とモノラジカル(2)の磁化率[3]の単純な和では説明できない現在X 線結

晶構造解析を行なっている

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

図 4 分子錯体 1-2の磁化率

(χpT-T プロット)

フェノール置換モノラジカル(3)による

水素結合アプローチと有機塩アプローチ

による共結晶化を現在進めている [1] D Shiomi K Ito M Nishizawa S Hase K Sato T Takui Mol Cryst Liq Cryst 334 99(1999) [2] 伊瀬智章石田尚行野上隆第 76 春

季年会 4C538(1999) [3] K Inoue H Iwamura Chem Phys Lett 207 551(1993)

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

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    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 3: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

SS

SS

SS

SS

SSPDT1

PDT2

PDT3

PDT4

図1 本研究で考察した分子ワイヤー

PDT5

ランダウアモデルを用いた分子伝導性の分子長依存性

に関する研究

九大先導研 近藤正一多田朋史吉澤一成

【序】近年単一分子の電気伝導特性が多くのグループにより測定され伝導度に関する理論計算も

多数報告されている分子伝導に関する理論的研究特に第一原理からの理論計算は分子や電極金

属の違いによる伝導度の変化を解析するなど分子ワイヤーの実用化新規ワイヤーの開発などにお

いて重要な示唆を与えられると期待される

通常分子ワイヤーのコンダクタンスはランダウア

の公式

G EF( ) = 2e2

hT EF( ) (1)

を用いて求められるここでT EF( )は(フェルミ準位に

おける)透過係数と呼ばれる以前我々はCaroli ら

の(単一経路)量子輸送モデル[1]およびヒュッケル法

を用いてナノサイズグラファイト分子の透過係数を求

め分子軌道(特に HOMO と LUMO)とコンダクタ

ンスの関係を明らかにした[2]本研究では多経路の量

子輸送モデルと密度汎関数法とを組み合わせることに

より図1に示す5つのジチオール分子ワイヤーの透過係数を求めコンダクタンスの分子長依存性

を調べた

【理論】透過係数は次式

T E( ) = Tr Γ L E( )GR E( )Γ R E( )GA E( )[ ] (2a)

Γ L R E( ) = i ΣL RR E( ) ndash ΣL R

A E( )[ ] (2b)

GR A E( ) = I minus G(0)R A E( )ΣR A E( )[ ] ndash1G(0)R A E( ) (2c)

で与えられるワイヤー部分のゼロ次の先進(遅延)グリーン関数G(0)R A E( )自己エネルギー ΣL RR A E( )

は次式を用いて求める

G(0)R A E( )[ ]αβ=

CmαCmβ

E minus εm plusmn iηmsum (2d)

bukka
4Pp123

ΣL RR A E( ) = τgR Aτ dagger (2e)

ここでCmα εm τ gR Aはそれぞれ軌道係数軌道エネルギー移動積分および電極金属(金)

のグリーン関数である

【計算方法】5つのワイヤーの両端の硫黄原子に金原子を1つ結合させた拡張分子を

B3LYPLANL2DZ レベルで構造最適化したこの拡張分子の軌道係数軌道エネルギーを用いること

によりグリーン関数G(0)R A E( )を求めこのG(0)R A E( )を用いて(2a)ndash(2c)式により透過係数を求めたな

お自己エネルギーを求める際に必要となる移動積分は拡張ヒュッケル法により見積り金のグリーン

関数は Decimation法によりに求めた

【結果】計算により得られた透過係数曲線を図2に示す金電極のフェルミ面(0 eV)における透過

係数はワイヤーの長さとともに減少していることがわかるこの結果は Magoga らによる拡張ヒュッ

ケル法を用いた計算結果[3]と一致している

フェルミ準位近傍における分子ワイヤーのコンダ

クタンスはワイヤー長とともに指数関数的に減少し

ていくと考えられている[3]つまりコンダクタンス

のワイヤー長依存性は次式

G = G0endash γL (3)

で表されると考えられているここで L は分子ワイ

ヤーの長さでありγは減衰因子と呼ばれる量である

本計算で得られたフェルミ準位における透過係数の

値をワイヤー長(両端の硫黄原子間の距離で定義す

る)に対してプロットし(3)式にフィッティングさ

せて減衰因子の大きさを見積もったところ0122 Aringndash1

となりMagoga らにより得られたもの(0281 Aringndash1)[3]と定性的によい一致を示した計算方法の詳

細等は当日発表の予定である

【参考文献】

[1] C Caroli R Combescot P Nozieres and D Saint-James J Phys C 4 916 (1971)

[2] T Tada and K Yoshizawa ChemPhysChem 2002 1035 (2002)

[3] M Magoga and C Joachim Phys Rev B 56 4722 (1997)

0ndash5 510ndash6

10ndash4

10ndash2

1

E ndash EF (eV)

T(E

)

+$PDT(amp-)

環状チアジルラジカル TTTA に対する圧力及びドーピング効果

(名大院理名大物質国際セ北大院理)田中利幸白井貴博藤田渉阿波賀邦夫稲辺保 【序論】 ヘテロ環状チアジルラジカルは分子性導体あるいは磁性体

として新規な物性の発現が期待されているその一種である

135-Trithia-246- triazapentalenyl(TTTA)は室温付近

で常磁性-反磁性転移を示し100K 近い双安定領域を持つこ

とが分っているこれは分子デバイスとしての可能性を示して

おりこのためには双安定の温度領域や磁化率の大きさを制御

することが必要であるまたTTTA 高温相は 1 サイトに 1 電子が局在するモット絶

縁体であるため結晶構造を保持したままキャリアーをドープすることができれば極

めて特異な電気物性を示す可能性がある本研究ではTTTA に対する圧力及効果を

調べるとともにTTTA は CV 測定などからドナーであることが知られているので

ヨウ素ドーピングについても検討した

S

N

N

N

S

S

TTTA

【圧力効果】 圧力をかける際には Be-Cu クランプ式ピストンシリンダーセルを用い静水圧を

かけることで加圧した圧力セルは大きな反磁性磁化率を持っており TTTA の磁化率

を見積もりにくいそのためセルにチタン線を巻くなどして圧力セルの反磁性磁化

率の影響を軽減したその結果比較的小さな圧力で相転移温度が高温側にシフトし

た双安定領域の中心は室温付近に移動し双安定性を制御することができたまた

Tcdarrの方が Tcuarrよりも温度変化が大きく圧力に対し敏感であるといえる転移温度

の圧力依存性を計算したところdTcuarrdp=11 K GPa‐1dTcdarrdp=26 K GPa‐1と

なった仮にクラウジウス-クラペイロンの式を用いて両転移温度の圧力依存性を

4

3

2

1

0

χ x10-4 emu mol-1

400350300250200150100

T K

0GPa 038GPa 075GPa 15GPa

340

320

300

280

260

240

Tc K

1412100806040200

p GPa

Tcuarr Tcdarr

図 1圧力下での磁化率の温度依存 図 2転移温度の圧力依存

bukka
4Pp124
bukka

計算するとdTcuarrdp=68 K GPa‐1dTcdarrdp=50K GPa‐1となりオーダー程度は

【ドーピング効果】 不安定であるため溶媒中でアクセプターと混合する方法では

プルは空気に不安定で装置の減圧をとくと 10 分ほどで伝導度が

1

一致していた常磁性磁化率は圧力とともに減少したしかし圧力セルのバックグ

ラウンドが非常に大きくこれを完全に補正することが出来ているかどうかを現在調

査中である

TTTA は溶液状態で

荷移動錯体を得ることが困難であったそこで本実験では TTTA をヨウ素蒸気にさ

らしてドーピングを行ったヨウ素雰囲気での伝導度変化を測定するために図 4 に示

す装置を製作した端子などの金属部位に耐

ハロゲン性グリースを塗布し保護した昇華

精製により得られる TTTA の高温相ブロッ

ク状結晶をサンプルとし装置内を減圧し電

気伝導度の時間変化を調べた

図 4 に伝導度の時間変化を示すドーピ

図 3ヨウ素ドープ伝導度測定

グ開始直後から徐々に伝導度は上昇し10時間程経過した時点で急激に増加したその

後伝導度は一時的に減少するがさらにドー

プを続けることで再度上昇を開始したこの

ような伝導度の上昇は数日続き最大で 104

倍まで増加したがその後は緩やかに減少し

ドープ後のサン

10 以下に減少してしまった当日は伝導度の温度依存性ESR 及び磁化率の測定

結果さらに共昇華法で合成した TTTAI の物性とあわせて議論する予定である

0

02

04

06

08

1

12

0 20 40 60 80 10

timeh

σtimes105(Ω

cm)-

1

図 4ヨウ素ドープ時の伝導度の時間変化

0

110-phenanthroline配位を有する

新 Mn4核錯体の構造と磁性

( 畿大理工) 井淳宏 田孝義前川雅彦宗像 惠

【序】  年Mn 多核錯体は Mn12 核錯体に代表される単一分子磁性や磁気トンネリング現象の観測などで注目されているMn4核錯体は以前から光合成系モデルとして注目されているが最 では単一分子磁性を示すものも報告されより核数の

多い多核 Mn 錯体の構築素子とも考えられる今回我々はMn12 核錯体と 110-phenanthroline(以下 phen)との反応により新 な Mn4 核錯体の合成及び構造 析に成

功したのでその磁性とあわせて報告する

【方法】 [Mn12O12(OAc)16(H2O)4] (100 mg 00535 mmol)を溶 したアセトニトリル溶

液に phen (424 mg 0214 mmol)を加えて3時間撹拌したこの溶液をエバポレーターで濃縮乾固し沈殿を再びアセトニトリルに溶 しこの操作を 2回繰り した

茶色の沈殿を最少量のアセトニトリルに溶かしガラス管に入れ 3 倍量のジエチルエーテルを上から層を形成するように加えて封入し 置した3日後 色レンガ

状結晶[Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2](1)が得られたAnal Calcd (found) for C36H34O14N4Mn4 C 4474 (4473) H 355 (358) N 580 (596) [scheme]

【結果】 単結晶 X線構造 析

 この結晶は a = 11027 Å b = 13226Å c = 14916 Å α = 72670deg β =67694degγ = 80293degの三斜晶系で空間群は

dagger

P1 であるこの錯体の中心分は 2つのMnIIIイオンが 2つのμ3-

O2-イオンで架橋されさらにそれぞれ

のμ3-O2-イオンにMnIIイオンが結合し

た[Mn4O2]6+から成っており両端の

MnIIには phenが配位し6つの酢酸基によって架橋された構造を形成している各Mnイオンの価数はMn-OあるいはMn-Nの結合 離から判断することが可能でMnII

イオン周りはほぼ等方的であるのに対してMnIIIイオン周りは四 錐型 5配位構造を有しており 方向に伸びた Jahn-Teller変形を こしているこれまでに報告さ

れている2つのμ3-O架橋を有するMn4核錯体のコア構造[Mn4(μ3-O)2]n+には平面

+ 4 phenAcetonitrile Ether

Air RT[Mn12O12(OAc) 16(H2O)4] 1

Mn(1)

Mn(3)

Mn(2)Mn(4)O(1)

O(2)

Fig 1 Structure of [Mn4O2(O2CCH3)6(C12 H8N2)2]

N(1)

N(2)

N(3)

N(4)

bukka
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型及びバタフライ型がありMnの酸化数の違いによりMnII

2MnIII2 (n=6) MnIIMnIII

3 (n=7)MnIII

4 (n=8)が知られている1 はMnII2MnIII

2

でありこれまでに報告されている

[Mn4O2(O2CCH3)6(bipy)2]2CHCl3(2)1)とほぼ

同じ構造であった図2に 1 のパッキング図

を示す 接する分子間で両端のMnIIに配位

した phen間にπ-π相互作用があり最も接した ChellipC間の 離は 330 Åである図3には phenの重なりを示した 磁性の 析

 直流磁化率測定は1000 Gの磁場下で 2 - 280 Kの温度範囲でおこなった 料は結晶を粉末にし

た 料と沈殿 料についていずれも eicosane で固定したものを用いた沈殿 料のχMT 値は常温付で 102 cm3Kmol-1でありχMT 値は温度の低下と共に減少して2 Kで 39 cm3Kmol-1となるのに

対して結晶 料では 280 K の 120 cm3Kmol-1か

ら温度低下とともに減少し2 Kで 073 cm3Kmol-1

となった(図 5)沈殿 料のχMT 値の挙動は 2 と似していた

 ここで沈殿 料におけるスピン間相互作用とし

て図4の様に J および J13を考え(1)式の等方的なスピンハミルトニアンを用いゼロ磁場分裂 Dの影 が少ないと考えられる 30 K以上の 温でフィッティングを行ったところg = 169J = -195 KJ13 = -399 Kの時に良い一致が得られた(図 5) H=-2J(S1S2+S2S3+S3S4+S4S1)-2J13S1S3 (1)

しかしながらこれらのパラメータと 2 の文献値と

の比 を行うとゼロ磁場分裂を考慮した 析が必

要なことを示しているさらに磁化率の結果が結

晶と沈殿で異なることからpacking が影 してい

ることが考えられる2 つの 料の D を考慮した析とともにこれらの違いの原因について今後検

討する

(1) J B Vincent et al J Am Chem Soc 1989 1112086-2097

Fig 2 Packing structure of [Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2]

χM

T

cm3

K m

ol -1

N(1) N(2)

N(2) N(1)

Fig 3 Overlap of neighboring two phens

Mn1III

Mn3III

OOMn2II Mn4IIJ13

J J

J J

Fig 4 Diagram showing the definition of atom numbering and magnetic exchange parameters for [Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2]

14

12

10

8

6

4

2

0 300250200150100500T K

Fig 5 c MT-T plot of preciptate sample () crystalline sample () and fitting curve(-) for preciptate sample above 30 K

PROXYL ラジカルを有する TTP ドナーの

カチオンラジカル塩の構造と物性

(分子研 1JST CREST2東大院理 3)藤原秀紀 12崔 亨波 12李 夏珍 1

小林速男 12藤原絵美子 3小林昭子 3

【序】我々はこれまで伝導性と磁性の両方を併せ持つ磁性伝導体の開発に注目し

安定有機ラジカルを結合させた各種π拡張型ドナーを合成しその構造と物性につ

いて報告してきたその中で最 PROXYL ラジカルを有する TTP 誘導体を幾つ

か合成しそれらのカチオンラジカル塩の構造と物性について検討したところ伝

導 子と局在スピンが共存しながら い伝導性を有することが明らかとなった1 今

回PROXYL ラジカルを有する TTP ドナー

(1)の 11の組成を有するFeCl4-塩とGaCl4-

塩の構造と伝導性磁性について検討したの

で報告する

【結果と考察】FeCl4-塩と GaCl4-塩の作

成はクロロベンゼンエタノール(82

vv)中定 圧 気分 により作成した

条件によっては多形が得られ30 V

では組成比が 11 の 色板状晶が15 V で

は組成比が 21 の茶 色板状微結晶が得ら

れた21 塩の方は既に文献 1 で報告済み

のようにFeCl4-塩において室温での 気

伝導度が加圧成型 料ながら 5 S cm-1 程

度と良好で金属に い抵抗の温度依存性

を示し伝導 子と局在スピンが同一分子

内に共存している事を見出しているしか

しながら結晶のサイズが小さいため21

塩の構造 析には至っていない11 塩の

構造 析は FeCl4-塩についてはRigaku AFC-7 MercuryGaCl4-塩についてはX線

集光ミラーを備えた Rigaku AFC-8 Mercury で行った表に結晶学データをまとめ

て示すFeCl4-塩と GaCl4-塩は同形であるので以下FeCl4-塩の構造について

述べる図1のようにユニットセル中に結晶学的に独立な二種 のドナー分子 AB

と二種 のアニオンが存在しているドナー分子 AB の TTP 格はほぼ平面である

がPROXYL ラジカル 位は分子平面に対してほぼ垂直に立っているドナーAB

共に立体障害の大きなラジカル 位を避け合うように head-to-tail 型にダイマーを

形成しているダイマー同士は分子 方向にほぼ TTF 一つ分シフトしながら一

S

SS

S

NOS

S

S

S

S

S

1

Anion FeCl4- GaCl4-

Crystal system Triclinic TriclinicSpace group P-1 P-1

a(Aring) 9755(4) 9787(5)b(Aring) 10262(4) 10265(5)c(Aring) 32275(13) 3233(2)a(deg ) 91661(11) 9157(2)b(deg ) 94715(12) 9469(2)g (deg ) 90185(10) 9030(2)

V (Aring3) 32185(22) 32355(28)Z 2 2R 0064 0061Rw 0047 0063

bukka
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bukka

次元のスタックを形成しているそしてアニオンはドナーが 方向にずれて

空いた位置に PROXYL ラジカルと末端の 13-ジチオール環に挟まれるようにして存

在しているそれぞれの一次元スタックは b に沿って配列しドナーAB がそれ

ぞれ別々のドナー層を形成しているダイマー内には短い S-S 接触が数多く見られ

るがダイマー間には短い接触はなくまたアニオンがドナー層内に入り込んだ

ような構造になっているため分

子の side-by-side 方向の相互作用

は弱くなっている結果として

ダイマーが孤立している傾向が強

い構造となっている一方ラジ

カル 位は TTP 格が形成する伝

導層間の空間に層を形成するよう

に位置している

FeCl4-塩は 11 塩である事に加え

二量化の強い一次元スタック構造

を有している事を考えると予想以

上の良導体で単結晶 料を用い

4端子法で測定を行ったところ

室温での 気伝導度は 1 x 10-3 S

cm-1 であり活性化エネルギー

が 013 eV の半導体であった一方FeCl4-塩の磁化率を SQUID によって 1 Tesla

で測定した図2にcT-T プロットを示す室温から 50 K程度までcT 値はほぼ一定

であるが更に温度を下げるとcT 値は減少し60 K 以下のデータを用いた Curie-

Weiss Fitting によるとCurie 定数が 483 emu K

mol-1Weiss 温度が-065 K の弱い反強磁性的な温

度依存性を示したCurie 定数の値は High-spin の鉄

(S = 52 4375 emu K mol-1)と PROXYL ラジカル(S

= 12 0375 emu K mol-1)の和(475 emu K mol-1)

に い値を示したカチオンラジカルモーメントに関

する情報は今後 磁性アニオンを用いた GaCl4-

塩の磁気的性 を測定することにより検討を

行う予定である

【文献】(1) H Fujiwara H-J Lee H Kobayashi EFujiwara A Kobayashi Chem Lett 32 482 (2003)

図 1 FeCl4-塩の結晶構造

図 2 FeCl4-塩のcT-T プロット

単一成分分子から成る TTF 型ジチオラトコバルト

錯体の合成構造と物性

(東大院理 1名大院工 2分子研 3科技団 CREST4) 藤原絵美子 1小林昭子 1

藤城雄一 2西堀英治 2 田昌樹 2坂田誠 2藤原秀紀 34小林速男 34

【序】通常単一成分から成る分子性結晶は構成分子の分子軌道が分子間で重な

ることによって出来るバンドが 子によって完全に満たされているか完全に空で

あるかのいずれかである従ってこのような分子性結晶は構成原子が結晶を形

成する際に自発的に金属バンドの形成と自由 子の発生をもたらす金属結晶とは対

照的で絶縁体の典型であると考えられていた 年極低温まで金属状態が安定

な単一成分 TTF 型ジチオラト金属錯体 [Ni(tmdt)2] が開発されde Haas-van

Alphen 効果の観測により Fermi 面を持つ金属であることが証明されたまた中心

金属に磁性金属を導入した[Cu(dmdt)2]では 80の Cu2+の 12 spin が局在しながら

い伝導性を示す常磁性体であることが判る等単一成分分子から成る金属錯体に

おいて興味深い物性が見出されている今回我々はTTF 型ジチオラト金属錯体

に基づく新 な単一成分分子伝導体の開発を目指し中心金属にコバルト原子を導

入した TTF 型ジチオラト金属錯体[Co(dt)2]2を合成しその構造と物性を調べた

【実験および考察】前駆体であるコバルト錯体(Me4N)2[Co(dt)2]はシアノエチルチ

オ基が置換した TTF を THF 中で 25 wt Me4NmiddotOHMeOH 溶液を用いて加水分した後CoCl2middot6H2OMeOH 溶液と反応させることにより紫色を帯びた灰色粉末として得られたさらにこの錯体を nBu4NmiddotClO4を含む PhCN 溶液中で定 流

法(05 mA)を用いて 酸化することにより[Co(dt)2]2 の微小な 色針状結晶が得

られたSPring-8 の放射光ビームライン BL02B2 を用いて X線粉末回折実験を行い

GA (genetic algorithm)と Rietveld 析により得られた錯体の構造を決定した

Crystal data for [Co(dt)2]2 triclinic P`1 a = 117185 (3) b = 109513 (2) c = 77336(1) Aring a = 79737( 2) b = 96474(2) g = 113973(2)deg V = 89145(7) Aring3 Z = 1 Rwp =0053 RI = 0082 この錯体は二個の Co(dt)2ユニットが 312 Aringの面間 離で分子

および短 方向にそれぞれ 130 そして 165 Aring ずつスライドして face-to-faceで重なり各々のユニットのコバルトと硫 原子間でユニット間配位結合(Co-S =

2425 Aring)を持つ特徴的な構造を示す(Fig 1)分子内の二個の Co(dt)2 位はいす形

に大きく折れ曲がりCo1-S1-S2 面と Co1-S7-S8 面との二面 は 121degであった

bukka
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Co(dt)2 ユニット間には幾つかの短い S S 離(lt 37 Aring)が見られた結晶中では各々の[Co(dt)2]2 分子が 347 Aring の面間 離で分子 および短 方向にそれぞ

れ 092 そして 173 Aringずつスライドしながら face-to-face で[0 0 1]方向に積層した構造を持つ(Fig 2a)積層方向には短い分子間 S S 離が一種 だけ見られた

さらに[Co(dt)2]2分子は[1 0 0][1 1 0][2 1 0]方向に位置する六個の分子によっ

て分子短 と 方向を囲まれ[1 0 0][1 1 0]方向に 接する分子との間には数

多くの短い S S 離が確認された(Fig 2b)拡張 Huumlckel 法を用いて重なり積分を算したその結果短い S S 離が数多く存在する[1 0 0][1 1 0]方向の分子

との間で大きな重なり積分値が与えられこの錯体はスタック方向よりもむしろ分

子横方向に相互作用が強いことが判った四端子法を用いて[Co(dt)2]2 の加圧成形

料の 気抵抗を室温から 055 K までの温度領域で調べた(Fig 3)加圧成形 料の測

定であるにも拘わらず[Co(dt)2]2は 19 Smiddotcm-1と比 的大きな室温伝導度を示した

抵抗の温度依存性は冷却に伴って室温から緩やかに上昇するがこの錯体は低温

においても 伝導性[s(055 K)srt ordf 110]を示していることからこの錯体は本

的には低温 まで金属である可能性が示唆

される5 kOe の磁場下[Co(dt)2]2 の多結

晶 料の 磁化率を 19-300 K の温度領域

で調べた[Co(dt)2]2の室温 磁化率は 35 x

10-4 emumiddotmol-1であった 磁化率の温度依

存性は低温 において僅かに上昇するが50-300 K の

温度領域においてほぼ一定の値を示したユニット間

配位結合が存在した特徴的な分子構造を持つためこ

の錯体の磁性に対するコバルトスピンの寄与は殆ど無

いかもしくは 常に小さいことが推測される

21 世紀 COE プログラム「フロンティア基礎化学」研究拠点

形成事業のもとに研究を行った

新規ドナー チオピラニリデン-エチレンジオキシ ジチオール分子の合成とその錯体作成

(京大院理) 添田雅也萩原潤矢持秀起斎藤軍治 【序】BEDO-TTF(BO)分子は 5 員環硫黄原子を用いた分子短軸方向への分子間硫黄hellip硫

黄接触と末端エチレンジオキシ基を用いた積層方向への弱い水素結合形成によって錯体

中で自己凝集構造を構築する能力を持っているこのためBO 錯体は金属状態が低温まで

安定であるしかし錯体中で BO 分子は分子長軸方向における相互作用をほとんど示さな

いそこで対成分との相互作用の向上を目指してBO 分子の部分構造をもちかつチオ

ピラン環をもつ新規ドナーチオピラニリデン-エチレンジオキシジチオール(TP-EDOT)分子を合成した今回この TP-EDOT の合成精製およびその PF6塩の構造と物性につ

いて検討したので報告する 【実験と結果】エチレンジオキシ-13-ジチオール-2-チオン(1)とテトラヒドロ-4H-チオピラン

-4-オン(2)をP(OMe)3 存在下ベンゼン中でクロスカップリングさせ49 の収率で黄白色

針状晶のテトラヒドロ TP-EDOT(3)が得られた3 をキシレン中 DDQ を用いて脱水素し

64 の収率で黄白色粉末の TP-EDOT(分解点 1465 ~ 1493 )が得られた

O

O S

SS

BenzeneO S+

S

SS

O

O P(OMe)3

reflux6h O

O S

SS

DDQ

Xylene

1 2 3 TP-EDOT 3 は比較的安定でありまたこの反応条件下で2 同士のホモカップリング反応が起きな

いことから3 は容易に単離できた一方TP-EDOT はその合成条件下同時に分解反応を

起こすので反応は出来るだけ短時間で行う必要があったTP-EDOT はアセトンクロロ

ホルム酸に対しては不安定でこれらの溶媒中では数分以内に分解した一方エタノ

ールメタノールベンゼンテトラヒドロフランベンゾニトリルアセトニトリル中で

は加熱条件下でも安定であったまたTP-EDOT は一部分解物を含む状態となってもシ

リカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製しなおすことが可能であった TP-EDOT と関連物質の酸化還元電位を表 1 にまとめたTP-EDOT の酸化還元電位の大

きさは TTF や BO に比べて小さくTMTTF と同程度であった TP-EDOT の錯体を( Bu4N )X ( X = PF6SbF6BF4ClO4 )の存在下定

電圧電解法により作成したPF6 塩につ

いて緑色と紫色の 2 種類の生成物が得

られたあまり大きくない電流値(約 05 microΑ)で 1 ヶ月以内に電解を停止すること

により紫色の針状結晶を選択的に得る

表 1 サイクリックボルタメトリー法による酸化還元

電位( vs SCE ) ドナー E121 V E122 V ∆ E V TP-EDOT 027 060 033 TMTTF 029 065 036 TTF 037 076 039 BEDO-TTF 043 069 026 ∆E = E121 - E122

ことができたこれ以上長い期間ある

bukka
4Pp128

いは高い電流値で電解を行うと緑色の結晶が紫色の結晶と混ざって生成することがわか

った 単結晶構造解析によって PF6 塩の紫色結晶の結晶構造を決定した(Crystal Data monoclinic C2m Z = 8 a = 16024(3) b = 23029(3) c = 7005(3) Aring β = 10390(2) deg V = 2509(1) Aring3)組成はドナー アニオン= 2 1 であった拡張ヒュッケル法によりドナー分

子同士の重なり積分を算出すると分子間相互作用は 3 次元的であったしかしどの方向

についても重なり積分の絶対値は小さかったまたドナー分子のチオピラン環にある硫黄

原子同士の分子長軸方向への相互作用も見られた(図 1 の s8 に対応する分子間での ShellipS 接

触)これらの分子間相互作用の結果計算上は 3 次元的なフェルミ面が得られた(図 2) この錯体の分子積層方

向(c 軸方向)の電気伝導

度は室温で 10-4 S cm-1

程度であり8 ~ 50 degC の

範囲で半導体的挙動が

観測された 【考察】PF6 塩はバンド計

算からは3次元的な複雑

なフェルミ面を持つし

かし積層方向の伝導度

は金属的な挙動を示さな

かったバンド幅に比べ

オンサイトクーロン反発

(U)が大きいことがそ

の原因であると考えられ

る 本 錯 体 中 で の

TP-EDOT 分子間の重な

り積分はBO 錯体中での

ドナー分子間重なり積分

の 4 分の 1 程度の大きさ

であるまたU の目安

である∆E はTP-EDOT の方が BO より

007V 大きい

a

bo

s8

s6

s5

s1

s1s1

s1s1

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6s5

s5s5

s5s5

s5

s5s5

s5

s8

s8s8

図 1 PF6塩の c 軸投影図

影をつけたドナー分子は z = 0 の平面上にあり影をつけてないドナ

ー分子は z = 05 の平面上にある重なり積分の値はそれぞれs1 =

403times10-3s5 = -192times10-3s6 = -345times10-3s8 = 396times10-3であ

った

今後はPF6塩については磁化率の測定

等を通じて電子がどのように局在化してい

るかを検討していく同時に積層方向以外

の方向における伝導度測定も試みるまた

他のカチオンラジカル塩の単結晶作成とそ

れらの構造と物性について調べていく

図 2 PF6塩のフェルミ面

クラウンエーテルを用いた超分子化学的結晶設計に基

づくヘテロスピン集合系の磁性 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2)

神崎祐貴 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 【序論】現在まで純粋な有機分子からなるフェリ磁性体の構築は成功しておらずな

お分子磁性研究の長年の課題とされている我々は以前理論的考察から基底 1重項(S = 0)ビラジカルと 2重項(S = 12)ラジカルとの反強磁性的交互 1次元鎖が広義のフェリ磁性的な基底状態を取り得ること(一般化フェリ磁性)を提案した[1]

また1次元鎖全体の基底状態はビラジカル分子内と分子間の相互作用の大小関係を圧力等の外場によって変化させるとフェリ磁性的高スピン状態と非磁性(反磁性)

状態との間で相互変換することも理論計算から予想されている[1] この理論計算の結果を実験的に検証するために図 1に示したモデル分子錯体を合成した結晶設計にはクラウンエーテルが選択的にアルカリ金属を捕獲する錯形成

力を利用した超分子結晶工学アプローチを用いたこれまでの研究でフェノキシド

ビラジカル(1-)と 15-crown-5-ether置換のモノラジカル(2) [2]との錯体[Na2]+1-(図 1)が理論を一部実証する非磁性基底状態を示すことを磁化率の測定より明らかにした[3]

本研究では新たに新奇物質である 18-crown-6-ether置換のモノラジカル(3)を合成し新しいモデル錯体としてフェノキシドビラジカル(1-)との錯体[K3]+1-(図 1)を合成した錯体の構成要素となるモノラジカルの変化によって錯体[Na2]+1-とは異なる分

子間交換相互作用が与えられ上記の理論の予言する高スピン状態(フェリ磁性的基

底状態)が得られる可能性がある 【18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)】

18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)を図 2の方法で合成した閉殻前駆体は1H NMR 13C NMR 元素分析を用いて同定したラジカル(3)の同定は元素分析溶液ESRから行った室温でのジクロロメタン溶液の ESRスペクトルを図 3に示す窒素 14N核の超微細結合定数は aN = 072 mTg値は g = 20056で典型的なニトロニルニトロキシドモノラジカルの値を示したまた常磁性磁化率pの温度依存性を図 4に示す室温でのpT値は 0372 emu K mol-1であり純度は 99であったpは Tmax = 32 Kで極大をとりBonner-Fischerモデルを仮定すると Tmaxと Jとの関係から分子間に 2JkB = -51 Kの反強磁性的な交換相互作用が働いていることになる分子のパッキングに基づく詳細な解析を行うために現在 X線結晶構造解析を行なっている

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

-

NNO

O

O O

OOO

Na

+-

+

O

O

O O

O

O

NNO

O+-

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

- K+

[Na2]+1- [K3]+1-

図 1 モデル錯体

bukka
4Pp129

0

001

002

003

004

005

006

0 50 100 150 200 250 300

p (実測)

(Bonner-Fischerモデル)

p

emu

mol

-1T K

図 4 モノラジカル(3)の磁化率

O O

O

O

O

O

Br O O

O

O

O

O

CHOt-BuLi DMF

THF

O O

O

O

O

ON

NO

ONHOH

NHOHbenzene

+-

NaIO4 H2O CH2Cl2

1)

2)

図 2 18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)の合成

326 327 328 329 330 331 332

B mT 図 3 モノラジカル(3)の ESR スペクトル(ジクロロメタン溶液室温)

【フェノキシドビラジカルの単純塩(K+1-)】 モデル錯体の構成要素の性質を明らかにするためにフェノキシドビラジカルの単

純塩(K+1-)の磁化率を測定したpT 値は温度の低下とともに単調に減少したsinglet-tripletモデル

)exp(312

BB

2B

2A

p TkETkgN

(1)

10 SESEE (2) にフィッティングさせて分子内交換相互作用E(3重項と 1重項の間のエネルギーギャップ)を見積もった結果EkB = -70 Kとなったこの結果は単純塩(K+1-)の凍結溶液 ESR禁制遷移の強度 IESRの温度変化から見積もったEkB -10 K[4]とほぼ対応

しており分子内の交換相互作用が反強磁性的なものであることが確かめられたな

おフェノキシドビラジカルのナトリウム塩(Na+1-)では凍結溶液 ESRの実験からEkB -27 13 Kであることがわかっている[3]ビラジカル分子内の交換相互作用

の大きさの違いが錯体形成後の分子集合系のスピン状態に影響を与えるものと思わ

れる 上記の構成分子を用いて[Na2]+1-と同様の方法で新奇なモデル錯体[K3]+1-を合

成した現在錯体の結晶構造解析ESRスペクトルと磁化率の測定を行なっている[Na2]+1-と[K3]+1-との磁性と構造の相違点を議論する予定である 【参考文献】 [1] D Shiomi K Sato and T Takui J Phys Chem B 105 2932 (2001) [2] M Fettouhi Mol Cryst Liq Cryst 356 365 (2001) [3] Y Kanzaki D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 22 1817(2003) [4] S Hase D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 20 1403(2001)

超分子化学アプローチによる有機フェリ

磁性体の構築と磁気的性質 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2) 早川健一 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 有機フェリ磁性体を構築するための大きな問題点として分晶化がある分晶化を避

け異なるスピン量子数を持つ有機ラジカル(たとえばモノラジカル(S = 12)と

ビラジカル(S = 1))を共結晶化させる方法として超分子化学アプローチがある

これは選択的な分子間引力(水素結合やイオン電荷によるクーロン力)によって異

種成分を連結する方法である(図 1)[1]現在までのところ水素結合やイオン電荷

によるビラジカルとモノラジカルの共結晶化の試みは一部報告例があるが[2]結晶

構造まで確定した成功例はない

N

NN

NN

O

O

N

N

O

O

X

+

_

X = COOH(2) OH(3)

(1)

NN

N

N

N

OO

Me

+

N NO O+ _

Y _

Y = COO- O-

(a)水素結合アプローチ (b)有機塩アプローチ(イオン電荷によるクー

ロン力)

図 1 ビラジカルとモノラジカルの共結晶化

本研究ではピリジンの 26-位にイミノニトロキシドを導入したビラジカル(1)と安

息香酸(2)もしくはフェノール(3)置換のニトロニルニトロキシドモノラジカルを水素

結合によって連結する方法を試みた(図 1a) ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)は対応するジアルデヒドから 3 段

階で合成した(図 2)

N CHOOHC NNN

NN

OHHO

HOOHMeOH

NNOHNNOH SeO2

MeOHNN

NN

N

OHHO PbO2

CH2Cl2NN

NN

N

OO

(1)

図 2 ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)の合成

bukka
4Pp130

ビラジカル 1の磁化率を図 3 に示す分子間の平均場θを取り入れた Singlet-Tripletモデル

)2exp(31

)(2

BB

2B

2A

p TkJTkgN

minus+times

minus=

θmicro

χ (1)

により分子内の交換相互作用は 2JkB = +14 K分子間相互作用はθ = -3 K であるこ

とがわかった分子内の交換相互作用が強

磁性的であることはPVC(ポリ塩化ビニ

ル)による固相希釈系の実験(図 3)から

確かめられたビラジカル(1)は超分子フ

ェリ磁性体の構成要素として用いることが

できることがわかった

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

diluted in PVC(JkB = 7K)

neat(JkB = 7K θ = -3K)

-------

____

obscalc

calcobs

図 3 ビラジカル(1)の磁化率 (χpT-T プロット)

ビラジカル(1)と安息香酸置換モノラジ

カル(2)との共結晶体(分子錯体 1-2)は

エタノール溶液からの再結晶により得られ

た元素分析から組成は 11 であること

がわかった磁化率の測定結果を図 4 に示

す室温(300 K)でのχpT の値は分子錯

体 1 モル(S = 12 スピン 3 モル)の高温極

限の予測値(113 emu K mol-1)を下回って

おり分子間の反強磁性相互作用がかなり

大きいことを示唆するまた20 K 付近で

χpT の減少が一旦鈍って停留値をとってい

るこれらの結果はビラジカル(1)の磁化

率(図 3)とモノラジカル(2)の磁化率[3]の単純な和では説明できない現在X 線結

晶構造解析を行なっている

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

図 4 分子錯体 1-2の磁化率

(χpT-T プロット)

フェノール置換モノラジカル(3)による

水素結合アプローチと有機塩アプローチ

による共結晶化を現在進めている [1] D Shiomi K Ito M Nishizawa S Hase K Sato T Takui Mol Cryst Liq Cryst 334 99(1999) [2] 伊瀬智章石田尚行野上隆第 76 春

季年会 4C538(1999) [3] K Inoue H Iwamura Chem Phys Lett 207 551(1993)

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 4: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

ΣL RR A E( ) = τgR Aτ dagger (2e)

ここでCmα εm τ gR Aはそれぞれ軌道係数軌道エネルギー移動積分および電極金属(金)

のグリーン関数である

【計算方法】5つのワイヤーの両端の硫黄原子に金原子を1つ結合させた拡張分子を

B3LYPLANL2DZ レベルで構造最適化したこの拡張分子の軌道係数軌道エネルギーを用いること

によりグリーン関数G(0)R A E( )を求めこのG(0)R A E( )を用いて(2a)ndash(2c)式により透過係数を求めたな

お自己エネルギーを求める際に必要となる移動積分は拡張ヒュッケル法により見積り金のグリーン

関数は Decimation法によりに求めた

【結果】計算により得られた透過係数曲線を図2に示す金電極のフェルミ面(0 eV)における透過

係数はワイヤーの長さとともに減少していることがわかるこの結果は Magoga らによる拡張ヒュッ

ケル法を用いた計算結果[3]と一致している

フェルミ準位近傍における分子ワイヤーのコンダ

クタンスはワイヤー長とともに指数関数的に減少し

ていくと考えられている[3]つまりコンダクタンス

のワイヤー長依存性は次式

G = G0endash γL (3)

で表されると考えられているここで L は分子ワイ

ヤーの長さでありγは減衰因子と呼ばれる量である

本計算で得られたフェルミ準位における透過係数の

値をワイヤー長(両端の硫黄原子間の距離で定義す

る)に対してプロットし(3)式にフィッティングさ

せて減衰因子の大きさを見積もったところ0122 Aringndash1

となりMagoga らにより得られたもの(0281 Aringndash1)[3]と定性的によい一致を示した計算方法の詳

細等は当日発表の予定である

【参考文献】

[1] C Caroli R Combescot P Nozieres and D Saint-James J Phys C 4 916 (1971)

[2] T Tada and K Yoshizawa ChemPhysChem 2002 1035 (2002)

[3] M Magoga and C Joachim Phys Rev B 56 4722 (1997)

0ndash5 510ndash6

10ndash4

10ndash2

1

E ndash EF (eV)

T(E

)

+$PDT(amp-)

環状チアジルラジカル TTTA に対する圧力及びドーピング効果

(名大院理名大物質国際セ北大院理)田中利幸白井貴博藤田渉阿波賀邦夫稲辺保 【序論】 ヘテロ環状チアジルラジカルは分子性導体あるいは磁性体

として新規な物性の発現が期待されているその一種である

135-Trithia-246- triazapentalenyl(TTTA)は室温付近

で常磁性-反磁性転移を示し100K 近い双安定領域を持つこ

とが分っているこれは分子デバイスとしての可能性を示して

おりこのためには双安定の温度領域や磁化率の大きさを制御

することが必要であるまたTTTA 高温相は 1 サイトに 1 電子が局在するモット絶

縁体であるため結晶構造を保持したままキャリアーをドープすることができれば極

めて特異な電気物性を示す可能性がある本研究ではTTTA に対する圧力及効果を

調べるとともにTTTA は CV 測定などからドナーであることが知られているので

ヨウ素ドーピングについても検討した

S

N

N

N

S

S

TTTA

【圧力効果】 圧力をかける際には Be-Cu クランプ式ピストンシリンダーセルを用い静水圧を

かけることで加圧した圧力セルは大きな反磁性磁化率を持っており TTTA の磁化率

を見積もりにくいそのためセルにチタン線を巻くなどして圧力セルの反磁性磁化

率の影響を軽減したその結果比較的小さな圧力で相転移温度が高温側にシフトし

た双安定領域の中心は室温付近に移動し双安定性を制御することができたまた

Tcdarrの方が Tcuarrよりも温度変化が大きく圧力に対し敏感であるといえる転移温度

の圧力依存性を計算したところdTcuarrdp=11 K GPa‐1dTcdarrdp=26 K GPa‐1と

なった仮にクラウジウス-クラペイロンの式を用いて両転移温度の圧力依存性を

4

3

2

1

0

χ x10-4 emu mol-1

400350300250200150100

T K

0GPa 038GPa 075GPa 15GPa

340

320

300

280

260

240

Tc K

1412100806040200

p GPa

Tcuarr Tcdarr

図 1圧力下での磁化率の温度依存 図 2転移温度の圧力依存

bukka
4Pp124
bukka

計算するとdTcuarrdp=68 K GPa‐1dTcdarrdp=50K GPa‐1となりオーダー程度は

【ドーピング効果】 不安定であるため溶媒中でアクセプターと混合する方法では

プルは空気に不安定で装置の減圧をとくと 10 分ほどで伝導度が

1

一致していた常磁性磁化率は圧力とともに減少したしかし圧力セルのバックグ

ラウンドが非常に大きくこれを完全に補正することが出来ているかどうかを現在調

査中である

TTTA は溶液状態で

荷移動錯体を得ることが困難であったそこで本実験では TTTA をヨウ素蒸気にさ

らしてドーピングを行ったヨウ素雰囲気での伝導度変化を測定するために図 4 に示

す装置を製作した端子などの金属部位に耐

ハロゲン性グリースを塗布し保護した昇華

精製により得られる TTTA の高温相ブロッ

ク状結晶をサンプルとし装置内を減圧し電

気伝導度の時間変化を調べた

図 4 に伝導度の時間変化を示すドーピ

図 3ヨウ素ドープ伝導度測定

グ開始直後から徐々に伝導度は上昇し10時間程経過した時点で急激に増加したその

後伝導度は一時的に減少するがさらにドー

プを続けることで再度上昇を開始したこの

ような伝導度の上昇は数日続き最大で 104

倍まで増加したがその後は緩やかに減少し

ドープ後のサン

10 以下に減少してしまった当日は伝導度の温度依存性ESR 及び磁化率の測定

結果さらに共昇華法で合成した TTTAI の物性とあわせて議論する予定である

0

02

04

06

08

1

12

0 20 40 60 80 10

timeh

σtimes105(Ω

cm)-

1

図 4ヨウ素ドープ時の伝導度の時間変化

0

110-phenanthroline配位を有する

新 Mn4核錯体の構造と磁性

( 畿大理工) 井淳宏 田孝義前川雅彦宗像 惠

【序】  年Mn 多核錯体は Mn12 核錯体に代表される単一分子磁性や磁気トンネリング現象の観測などで注目されているMn4核錯体は以前から光合成系モデルとして注目されているが最 では単一分子磁性を示すものも報告されより核数の

多い多核 Mn 錯体の構築素子とも考えられる今回我々はMn12 核錯体と 110-phenanthroline(以下 phen)との反応により新 な Mn4 核錯体の合成及び構造 析に成

功したのでその磁性とあわせて報告する

【方法】 [Mn12O12(OAc)16(H2O)4] (100 mg 00535 mmol)を溶 したアセトニトリル溶

液に phen (424 mg 0214 mmol)を加えて3時間撹拌したこの溶液をエバポレーターで濃縮乾固し沈殿を再びアセトニトリルに溶 しこの操作を 2回繰り した

茶色の沈殿を最少量のアセトニトリルに溶かしガラス管に入れ 3 倍量のジエチルエーテルを上から層を形成するように加えて封入し 置した3日後 色レンガ

状結晶[Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2](1)が得られたAnal Calcd (found) for C36H34O14N4Mn4 C 4474 (4473) H 355 (358) N 580 (596) [scheme]

【結果】 単結晶 X線構造 析

 この結晶は a = 11027 Å b = 13226Å c = 14916 Å α = 72670deg β =67694degγ = 80293degの三斜晶系で空間群は

dagger

P1 であるこの錯体の中心分は 2つのMnIIIイオンが 2つのμ3-

O2-イオンで架橋されさらにそれぞれ

のμ3-O2-イオンにMnIIイオンが結合し

た[Mn4O2]6+から成っており両端の

MnIIには phenが配位し6つの酢酸基によって架橋された構造を形成している各Mnイオンの価数はMn-OあるいはMn-Nの結合 離から判断することが可能でMnII

イオン周りはほぼ等方的であるのに対してMnIIIイオン周りは四 錐型 5配位構造を有しており 方向に伸びた Jahn-Teller変形を こしているこれまでに報告さ

れている2つのμ3-O架橋を有するMn4核錯体のコア構造[Mn4(μ3-O)2]n+には平面

+ 4 phenAcetonitrile Ether

Air RT[Mn12O12(OAc) 16(H2O)4] 1

Mn(1)

Mn(3)

Mn(2)Mn(4)O(1)

O(2)

Fig 1 Structure of [Mn4O2(O2CCH3)6(C12 H8N2)2]

N(1)

N(2)

N(3)

N(4)

bukka
4Pp125

型及びバタフライ型がありMnの酸化数の違いによりMnII

2MnIII2 (n=6) MnIIMnIII

3 (n=7)MnIII

4 (n=8)が知られている1 はMnII2MnIII

2

でありこれまでに報告されている

[Mn4O2(O2CCH3)6(bipy)2]2CHCl3(2)1)とほぼ

同じ構造であった図2に 1 のパッキング図

を示す 接する分子間で両端のMnIIに配位

した phen間にπ-π相互作用があり最も接した ChellipC間の 離は 330 Åである図3には phenの重なりを示した 磁性の 析

 直流磁化率測定は1000 Gの磁場下で 2 - 280 Kの温度範囲でおこなった 料は結晶を粉末にし

た 料と沈殿 料についていずれも eicosane で固定したものを用いた沈殿 料のχMT 値は常温付で 102 cm3Kmol-1でありχMT 値は温度の低下と共に減少して2 Kで 39 cm3Kmol-1となるのに

対して結晶 料では 280 K の 120 cm3Kmol-1か

ら温度低下とともに減少し2 Kで 073 cm3Kmol-1

となった(図 5)沈殿 料のχMT 値の挙動は 2 と似していた

 ここで沈殿 料におけるスピン間相互作用とし

て図4の様に J および J13を考え(1)式の等方的なスピンハミルトニアンを用いゼロ磁場分裂 Dの影 が少ないと考えられる 30 K以上の 温でフィッティングを行ったところg = 169J = -195 KJ13 = -399 Kの時に良い一致が得られた(図 5) H=-2J(S1S2+S2S3+S3S4+S4S1)-2J13S1S3 (1)

しかしながらこれらのパラメータと 2 の文献値と

の比 を行うとゼロ磁場分裂を考慮した 析が必

要なことを示しているさらに磁化率の結果が結

晶と沈殿で異なることからpacking が影 してい

ることが考えられる2 つの 料の D を考慮した析とともにこれらの違いの原因について今後検

討する

(1) J B Vincent et al J Am Chem Soc 1989 1112086-2097

Fig 2 Packing structure of [Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2]

χM

T

cm3

K m

ol -1

N(1) N(2)

N(2) N(1)

Fig 3 Overlap of neighboring two phens

Mn1III

Mn3III

OOMn2II Mn4IIJ13

J J

J J

Fig 4 Diagram showing the definition of atom numbering and magnetic exchange parameters for [Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2]

14

12

10

8

6

4

2

0 300250200150100500T K

Fig 5 c MT-T plot of preciptate sample () crystalline sample () and fitting curve(-) for preciptate sample above 30 K

PROXYL ラジカルを有する TTP ドナーの

カチオンラジカル塩の構造と物性

(分子研 1JST CREST2東大院理 3)藤原秀紀 12崔 亨波 12李 夏珍 1

小林速男 12藤原絵美子 3小林昭子 3

【序】我々はこれまで伝導性と磁性の両方を併せ持つ磁性伝導体の開発に注目し

安定有機ラジカルを結合させた各種π拡張型ドナーを合成しその構造と物性につ

いて報告してきたその中で最 PROXYL ラジカルを有する TTP 誘導体を幾つ

か合成しそれらのカチオンラジカル塩の構造と物性について検討したところ伝

導 子と局在スピンが共存しながら い伝導性を有することが明らかとなった1 今

回PROXYL ラジカルを有する TTP ドナー

(1)の 11の組成を有するFeCl4-塩とGaCl4-

塩の構造と伝導性磁性について検討したの

で報告する

【結果と考察】FeCl4-塩と GaCl4-塩の作

成はクロロベンゼンエタノール(82

vv)中定 圧 気分 により作成した

条件によっては多形が得られ30 V

では組成比が 11 の 色板状晶が15 V で

は組成比が 21 の茶 色板状微結晶が得ら

れた21 塩の方は既に文献 1 で報告済み

のようにFeCl4-塩において室温での 気

伝導度が加圧成型 料ながら 5 S cm-1 程

度と良好で金属に い抵抗の温度依存性

を示し伝導 子と局在スピンが同一分子

内に共存している事を見出しているしか

しながら結晶のサイズが小さいため21

塩の構造 析には至っていない11 塩の

構造 析は FeCl4-塩についてはRigaku AFC-7 MercuryGaCl4-塩についてはX線

集光ミラーを備えた Rigaku AFC-8 Mercury で行った表に結晶学データをまとめ

て示すFeCl4-塩と GaCl4-塩は同形であるので以下FeCl4-塩の構造について

述べる図1のようにユニットセル中に結晶学的に独立な二種 のドナー分子 AB

と二種 のアニオンが存在しているドナー分子 AB の TTP 格はほぼ平面である

がPROXYL ラジカル 位は分子平面に対してほぼ垂直に立っているドナーAB

共に立体障害の大きなラジカル 位を避け合うように head-to-tail 型にダイマーを

形成しているダイマー同士は分子 方向にほぼ TTF 一つ分シフトしながら一

S

SS

S

NOS

S

S

S

S

S

1

Anion FeCl4- GaCl4-

Crystal system Triclinic TriclinicSpace group P-1 P-1

a(Aring) 9755(4) 9787(5)b(Aring) 10262(4) 10265(5)c(Aring) 32275(13) 3233(2)a(deg ) 91661(11) 9157(2)b(deg ) 94715(12) 9469(2)g (deg ) 90185(10) 9030(2)

V (Aring3) 32185(22) 32355(28)Z 2 2R 0064 0061Rw 0047 0063

bukka
4Pp126
bukka

次元のスタックを形成しているそしてアニオンはドナーが 方向にずれて

空いた位置に PROXYL ラジカルと末端の 13-ジチオール環に挟まれるようにして存

在しているそれぞれの一次元スタックは b に沿って配列しドナーAB がそれ

ぞれ別々のドナー層を形成しているダイマー内には短い S-S 接触が数多く見られ

るがダイマー間には短い接触はなくまたアニオンがドナー層内に入り込んだ

ような構造になっているため分

子の side-by-side 方向の相互作用

は弱くなっている結果として

ダイマーが孤立している傾向が強

い構造となっている一方ラジ

カル 位は TTP 格が形成する伝

導層間の空間に層を形成するよう

に位置している

FeCl4-塩は 11 塩である事に加え

二量化の強い一次元スタック構造

を有している事を考えると予想以

上の良導体で単結晶 料を用い

4端子法で測定を行ったところ

室温での 気伝導度は 1 x 10-3 S

cm-1 であり活性化エネルギー

が 013 eV の半導体であった一方FeCl4-塩の磁化率を SQUID によって 1 Tesla

で測定した図2にcT-T プロットを示す室温から 50 K程度までcT 値はほぼ一定

であるが更に温度を下げるとcT 値は減少し60 K 以下のデータを用いた Curie-

Weiss Fitting によるとCurie 定数が 483 emu K

mol-1Weiss 温度が-065 K の弱い反強磁性的な温

度依存性を示したCurie 定数の値は High-spin の鉄

(S = 52 4375 emu K mol-1)と PROXYL ラジカル(S

= 12 0375 emu K mol-1)の和(475 emu K mol-1)

に い値を示したカチオンラジカルモーメントに関

する情報は今後 磁性アニオンを用いた GaCl4-

塩の磁気的性 を測定することにより検討を

行う予定である

【文献】(1) H Fujiwara H-J Lee H Kobayashi EFujiwara A Kobayashi Chem Lett 32 482 (2003)

図 1 FeCl4-塩の結晶構造

図 2 FeCl4-塩のcT-T プロット

単一成分分子から成る TTF 型ジチオラトコバルト

錯体の合成構造と物性

(東大院理 1名大院工 2分子研 3科技団 CREST4) 藤原絵美子 1小林昭子 1

藤城雄一 2西堀英治 2 田昌樹 2坂田誠 2藤原秀紀 34小林速男 34

【序】通常単一成分から成る分子性結晶は構成分子の分子軌道が分子間で重な

ることによって出来るバンドが 子によって完全に満たされているか完全に空で

あるかのいずれかである従ってこのような分子性結晶は構成原子が結晶を形

成する際に自発的に金属バンドの形成と自由 子の発生をもたらす金属結晶とは対

照的で絶縁体の典型であると考えられていた 年極低温まで金属状態が安定

な単一成分 TTF 型ジチオラト金属錯体 [Ni(tmdt)2] が開発されde Haas-van

Alphen 効果の観測により Fermi 面を持つ金属であることが証明されたまた中心

金属に磁性金属を導入した[Cu(dmdt)2]では 80の Cu2+の 12 spin が局在しながら

い伝導性を示す常磁性体であることが判る等単一成分分子から成る金属錯体に

おいて興味深い物性が見出されている今回我々はTTF 型ジチオラト金属錯体

に基づく新 な単一成分分子伝導体の開発を目指し中心金属にコバルト原子を導

入した TTF 型ジチオラト金属錯体[Co(dt)2]2を合成しその構造と物性を調べた

【実験および考察】前駆体であるコバルト錯体(Me4N)2[Co(dt)2]はシアノエチルチ

オ基が置換した TTF を THF 中で 25 wt Me4NmiddotOHMeOH 溶液を用いて加水分した後CoCl2middot6H2OMeOH 溶液と反応させることにより紫色を帯びた灰色粉末として得られたさらにこの錯体を nBu4NmiddotClO4を含む PhCN 溶液中で定 流

法(05 mA)を用いて 酸化することにより[Co(dt)2]2 の微小な 色針状結晶が得

られたSPring-8 の放射光ビームライン BL02B2 を用いて X線粉末回折実験を行い

GA (genetic algorithm)と Rietveld 析により得られた錯体の構造を決定した

Crystal data for [Co(dt)2]2 triclinic P`1 a = 117185 (3) b = 109513 (2) c = 77336(1) Aring a = 79737( 2) b = 96474(2) g = 113973(2)deg V = 89145(7) Aring3 Z = 1 Rwp =0053 RI = 0082 この錯体は二個の Co(dt)2ユニットが 312 Aringの面間 離で分子

および短 方向にそれぞれ 130 そして 165 Aring ずつスライドして face-to-faceで重なり各々のユニットのコバルトと硫 原子間でユニット間配位結合(Co-S =

2425 Aring)を持つ特徴的な構造を示す(Fig 1)分子内の二個の Co(dt)2 位はいす形

に大きく折れ曲がりCo1-S1-S2 面と Co1-S7-S8 面との二面 は 121degであった

bukka
4Pp127

Co(dt)2 ユニット間には幾つかの短い S S 離(lt 37 Aring)が見られた結晶中では各々の[Co(dt)2]2 分子が 347 Aring の面間 離で分子 および短 方向にそれぞ

れ 092 そして 173 Aringずつスライドしながら face-to-face で[0 0 1]方向に積層した構造を持つ(Fig 2a)積層方向には短い分子間 S S 離が一種 だけ見られた

さらに[Co(dt)2]2分子は[1 0 0][1 1 0][2 1 0]方向に位置する六個の分子によっ

て分子短 と 方向を囲まれ[1 0 0][1 1 0]方向に 接する分子との間には数

多くの短い S S 離が確認された(Fig 2b)拡張 Huumlckel 法を用いて重なり積分を算したその結果短い S S 離が数多く存在する[1 0 0][1 1 0]方向の分子

との間で大きな重なり積分値が与えられこの錯体はスタック方向よりもむしろ分

子横方向に相互作用が強いことが判った四端子法を用いて[Co(dt)2]2 の加圧成形

料の 気抵抗を室温から 055 K までの温度領域で調べた(Fig 3)加圧成形 料の測

定であるにも拘わらず[Co(dt)2]2は 19 Smiddotcm-1と比 的大きな室温伝導度を示した

抵抗の温度依存性は冷却に伴って室温から緩やかに上昇するがこの錯体は低温

においても 伝導性[s(055 K)srt ordf 110]を示していることからこの錯体は本

的には低温 まで金属である可能性が示唆

される5 kOe の磁場下[Co(dt)2]2 の多結

晶 料の 磁化率を 19-300 K の温度領域

で調べた[Co(dt)2]2の室温 磁化率は 35 x

10-4 emumiddotmol-1であった 磁化率の温度依

存性は低温 において僅かに上昇するが50-300 K の

温度領域においてほぼ一定の値を示したユニット間

配位結合が存在した特徴的な分子構造を持つためこ

の錯体の磁性に対するコバルトスピンの寄与は殆ど無

いかもしくは 常に小さいことが推測される

21 世紀 COE プログラム「フロンティア基礎化学」研究拠点

形成事業のもとに研究を行った

新規ドナー チオピラニリデン-エチレンジオキシ ジチオール分子の合成とその錯体作成

(京大院理) 添田雅也萩原潤矢持秀起斎藤軍治 【序】BEDO-TTF(BO)分子は 5 員環硫黄原子を用いた分子短軸方向への分子間硫黄hellip硫

黄接触と末端エチレンジオキシ基を用いた積層方向への弱い水素結合形成によって錯体

中で自己凝集構造を構築する能力を持っているこのためBO 錯体は金属状態が低温まで

安定であるしかし錯体中で BO 分子は分子長軸方向における相互作用をほとんど示さな

いそこで対成分との相互作用の向上を目指してBO 分子の部分構造をもちかつチオ

ピラン環をもつ新規ドナーチオピラニリデン-エチレンジオキシジチオール(TP-EDOT)分子を合成した今回この TP-EDOT の合成精製およびその PF6塩の構造と物性につ

いて検討したので報告する 【実験と結果】エチレンジオキシ-13-ジチオール-2-チオン(1)とテトラヒドロ-4H-チオピラン

-4-オン(2)をP(OMe)3 存在下ベンゼン中でクロスカップリングさせ49 の収率で黄白色

針状晶のテトラヒドロ TP-EDOT(3)が得られた3 をキシレン中 DDQ を用いて脱水素し

64 の収率で黄白色粉末の TP-EDOT(分解点 1465 ~ 1493 )が得られた

O

O S

SS

BenzeneO S+

S

SS

O

O P(OMe)3

reflux6h O

O S

SS

DDQ

Xylene

1 2 3 TP-EDOT 3 は比較的安定でありまたこの反応条件下で2 同士のホモカップリング反応が起きな

いことから3 は容易に単離できた一方TP-EDOT はその合成条件下同時に分解反応を

起こすので反応は出来るだけ短時間で行う必要があったTP-EDOT はアセトンクロロ

ホルム酸に対しては不安定でこれらの溶媒中では数分以内に分解した一方エタノ

ールメタノールベンゼンテトラヒドロフランベンゾニトリルアセトニトリル中で

は加熱条件下でも安定であったまたTP-EDOT は一部分解物を含む状態となってもシ

リカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製しなおすことが可能であった TP-EDOT と関連物質の酸化還元電位を表 1 にまとめたTP-EDOT の酸化還元電位の大

きさは TTF や BO に比べて小さくTMTTF と同程度であった TP-EDOT の錯体を( Bu4N )X ( X = PF6SbF6BF4ClO4 )の存在下定

電圧電解法により作成したPF6 塩につ

いて緑色と紫色の 2 種類の生成物が得

られたあまり大きくない電流値(約 05 microΑ)で 1 ヶ月以内に電解を停止すること

により紫色の針状結晶を選択的に得る

表 1 サイクリックボルタメトリー法による酸化還元

電位( vs SCE ) ドナー E121 V E122 V ∆ E V TP-EDOT 027 060 033 TMTTF 029 065 036 TTF 037 076 039 BEDO-TTF 043 069 026 ∆E = E121 - E122

ことができたこれ以上長い期間ある

bukka
4Pp128

いは高い電流値で電解を行うと緑色の結晶が紫色の結晶と混ざって生成することがわか

った 単結晶構造解析によって PF6 塩の紫色結晶の結晶構造を決定した(Crystal Data monoclinic C2m Z = 8 a = 16024(3) b = 23029(3) c = 7005(3) Aring β = 10390(2) deg V = 2509(1) Aring3)組成はドナー アニオン= 2 1 であった拡張ヒュッケル法によりドナー分

子同士の重なり積分を算出すると分子間相互作用は 3 次元的であったしかしどの方向

についても重なり積分の絶対値は小さかったまたドナー分子のチオピラン環にある硫黄

原子同士の分子長軸方向への相互作用も見られた(図 1 の s8 に対応する分子間での ShellipS 接

触)これらの分子間相互作用の結果計算上は 3 次元的なフェルミ面が得られた(図 2) この錯体の分子積層方

向(c 軸方向)の電気伝導

度は室温で 10-4 S cm-1

程度であり8 ~ 50 degC の

範囲で半導体的挙動が

観測された 【考察】PF6 塩はバンド計

算からは3次元的な複雑

なフェルミ面を持つし

かし積層方向の伝導度

は金属的な挙動を示さな

かったバンド幅に比べ

オンサイトクーロン反発

(U)が大きいことがそ

の原因であると考えられ

る 本 錯 体 中 で の

TP-EDOT 分子間の重な

り積分はBO 錯体中での

ドナー分子間重なり積分

の 4 分の 1 程度の大きさ

であるまたU の目安

である∆E はTP-EDOT の方が BO より

007V 大きい

a

bo

s8

s6

s5

s1

s1s1

s1s1

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6s5

s5s5

s5s5

s5

s5s5

s5

s8

s8s8

図 1 PF6塩の c 軸投影図

影をつけたドナー分子は z = 0 の平面上にあり影をつけてないドナ

ー分子は z = 05 の平面上にある重なり積分の値はそれぞれs1 =

403times10-3s5 = -192times10-3s6 = -345times10-3s8 = 396times10-3であ

った

今後はPF6塩については磁化率の測定

等を通じて電子がどのように局在化してい

るかを検討していく同時に積層方向以外

の方向における伝導度測定も試みるまた

他のカチオンラジカル塩の単結晶作成とそ

れらの構造と物性について調べていく

図 2 PF6塩のフェルミ面

クラウンエーテルを用いた超分子化学的結晶設計に基

づくヘテロスピン集合系の磁性 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2)

神崎祐貴 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 【序論】現在まで純粋な有機分子からなるフェリ磁性体の構築は成功しておらずな

お分子磁性研究の長年の課題とされている我々は以前理論的考察から基底 1重項(S = 0)ビラジカルと 2重項(S = 12)ラジカルとの反強磁性的交互 1次元鎖が広義のフェリ磁性的な基底状態を取り得ること(一般化フェリ磁性)を提案した[1]

また1次元鎖全体の基底状態はビラジカル分子内と分子間の相互作用の大小関係を圧力等の外場によって変化させるとフェリ磁性的高スピン状態と非磁性(反磁性)

状態との間で相互変換することも理論計算から予想されている[1] この理論計算の結果を実験的に検証するために図 1に示したモデル分子錯体を合成した結晶設計にはクラウンエーテルが選択的にアルカリ金属を捕獲する錯形成

力を利用した超分子結晶工学アプローチを用いたこれまでの研究でフェノキシド

ビラジカル(1-)と 15-crown-5-ether置換のモノラジカル(2) [2]との錯体[Na2]+1-(図 1)が理論を一部実証する非磁性基底状態を示すことを磁化率の測定より明らかにした[3]

本研究では新たに新奇物質である 18-crown-6-ether置換のモノラジカル(3)を合成し新しいモデル錯体としてフェノキシドビラジカル(1-)との錯体[K3]+1-(図 1)を合成した錯体の構成要素となるモノラジカルの変化によって錯体[Na2]+1-とは異なる分

子間交換相互作用が与えられ上記の理論の予言する高スピン状態(フェリ磁性的基

底状態)が得られる可能性がある 【18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)】

18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)を図 2の方法で合成した閉殻前駆体は1H NMR 13C NMR 元素分析を用いて同定したラジカル(3)の同定は元素分析溶液ESRから行った室温でのジクロロメタン溶液の ESRスペクトルを図 3に示す窒素 14N核の超微細結合定数は aN = 072 mTg値は g = 20056で典型的なニトロニルニトロキシドモノラジカルの値を示したまた常磁性磁化率pの温度依存性を図 4に示す室温でのpT値は 0372 emu K mol-1であり純度は 99であったpは Tmax = 32 Kで極大をとりBonner-Fischerモデルを仮定すると Tmaxと Jとの関係から分子間に 2JkB = -51 Kの反強磁性的な交換相互作用が働いていることになる分子のパッキングに基づく詳細な解析を行うために現在 X線結晶構造解析を行なっている

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

-

NNO

O

O O

OOO

Na

+-

+

O

O

O O

O

O

NNO

O+-

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

- K+

[Na2]+1- [K3]+1-

図 1 モデル錯体

bukka
4Pp129

0

001

002

003

004

005

006

0 50 100 150 200 250 300

p (実測)

(Bonner-Fischerモデル)

p

emu

mol

-1T K

図 4 モノラジカル(3)の磁化率

O O

O

O

O

O

Br O O

O

O

O

O

CHOt-BuLi DMF

THF

O O

O

O

O

ON

NO

ONHOH

NHOHbenzene

+-

NaIO4 H2O CH2Cl2

1)

2)

図 2 18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)の合成

326 327 328 329 330 331 332

B mT 図 3 モノラジカル(3)の ESR スペクトル(ジクロロメタン溶液室温)

【フェノキシドビラジカルの単純塩(K+1-)】 モデル錯体の構成要素の性質を明らかにするためにフェノキシドビラジカルの単

純塩(K+1-)の磁化率を測定したpT 値は温度の低下とともに単調に減少したsinglet-tripletモデル

)exp(312

BB

2B

2A

p TkETkgN

(1)

10 SESEE (2) にフィッティングさせて分子内交換相互作用E(3重項と 1重項の間のエネルギーギャップ)を見積もった結果EkB = -70 Kとなったこの結果は単純塩(K+1-)の凍結溶液 ESR禁制遷移の強度 IESRの温度変化から見積もったEkB -10 K[4]とほぼ対応

しており分子内の交換相互作用が反強磁性的なものであることが確かめられたな

おフェノキシドビラジカルのナトリウム塩(Na+1-)では凍結溶液 ESRの実験からEkB -27 13 Kであることがわかっている[3]ビラジカル分子内の交換相互作用

の大きさの違いが錯体形成後の分子集合系のスピン状態に影響を与えるものと思わ

れる 上記の構成分子を用いて[Na2]+1-と同様の方法で新奇なモデル錯体[K3]+1-を合

成した現在錯体の結晶構造解析ESRスペクトルと磁化率の測定を行なっている[Na2]+1-と[K3]+1-との磁性と構造の相違点を議論する予定である 【参考文献】 [1] D Shiomi K Sato and T Takui J Phys Chem B 105 2932 (2001) [2] M Fettouhi Mol Cryst Liq Cryst 356 365 (2001) [3] Y Kanzaki D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 22 1817(2003) [4] S Hase D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 20 1403(2001)

超分子化学アプローチによる有機フェリ

磁性体の構築と磁気的性質 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2) 早川健一 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 有機フェリ磁性体を構築するための大きな問題点として分晶化がある分晶化を避

け異なるスピン量子数を持つ有機ラジカル(たとえばモノラジカル(S = 12)と

ビラジカル(S = 1))を共結晶化させる方法として超分子化学アプローチがある

これは選択的な分子間引力(水素結合やイオン電荷によるクーロン力)によって異

種成分を連結する方法である(図 1)[1]現在までのところ水素結合やイオン電荷

によるビラジカルとモノラジカルの共結晶化の試みは一部報告例があるが[2]結晶

構造まで確定した成功例はない

N

NN

NN

O

O

N

N

O

O

X

+

_

X = COOH(2) OH(3)

(1)

NN

N

N

N

OO

Me

+

N NO O+ _

Y _

Y = COO- O-

(a)水素結合アプローチ (b)有機塩アプローチ(イオン電荷によるクー

ロン力)

図 1 ビラジカルとモノラジカルの共結晶化

本研究ではピリジンの 26-位にイミノニトロキシドを導入したビラジカル(1)と安

息香酸(2)もしくはフェノール(3)置換のニトロニルニトロキシドモノラジカルを水素

結合によって連結する方法を試みた(図 1a) ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)は対応するジアルデヒドから 3 段

階で合成した(図 2)

N CHOOHC NNN

NN

OHHO

HOOHMeOH

NNOHNNOH SeO2

MeOHNN

NN

N

OHHO PbO2

CH2Cl2NN

NN

N

OO

(1)

図 2 ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)の合成

bukka
4Pp130

ビラジカル 1の磁化率を図 3 に示す分子間の平均場θを取り入れた Singlet-Tripletモデル

)2exp(31

)(2

BB

2B

2A

p TkJTkgN

minus+times

minus=

θmicro

χ (1)

により分子内の交換相互作用は 2JkB = +14 K分子間相互作用はθ = -3 K であるこ

とがわかった分子内の交換相互作用が強

磁性的であることはPVC(ポリ塩化ビニ

ル)による固相希釈系の実験(図 3)から

確かめられたビラジカル(1)は超分子フ

ェリ磁性体の構成要素として用いることが

できることがわかった

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

diluted in PVC(JkB = 7K)

neat(JkB = 7K θ = -3K)

-------

____

obscalc

calcobs

図 3 ビラジカル(1)の磁化率 (χpT-T プロット)

ビラジカル(1)と安息香酸置換モノラジ

カル(2)との共結晶体(分子錯体 1-2)は

エタノール溶液からの再結晶により得られ

た元素分析から組成は 11 であること

がわかった磁化率の測定結果を図 4 に示

す室温(300 K)でのχpT の値は分子錯

体 1 モル(S = 12 スピン 3 モル)の高温極

限の予測値(113 emu K mol-1)を下回って

おり分子間の反強磁性相互作用がかなり

大きいことを示唆するまた20 K 付近で

χpT の減少が一旦鈍って停留値をとってい

るこれらの結果はビラジカル(1)の磁化

率(図 3)とモノラジカル(2)の磁化率[3]の単純な和では説明できない現在X 線結

晶構造解析を行なっている

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

図 4 分子錯体 1-2の磁化率

(χpT-T プロット)

フェノール置換モノラジカル(3)による

水素結合アプローチと有機塩アプローチ

による共結晶化を現在進めている [1] D Shiomi K Ito M Nishizawa S Hase K Sato T Takui Mol Cryst Liq Cryst 334 99(1999) [2] 伊瀬智章石田尚行野上隆第 76 春

季年会 4C538(1999) [3] K Inoue H Iwamura Chem Phys Lett 207 551(1993)

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

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CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 5: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

環状チアジルラジカル TTTA に対する圧力及びドーピング効果

(名大院理名大物質国際セ北大院理)田中利幸白井貴博藤田渉阿波賀邦夫稲辺保 【序論】 ヘテロ環状チアジルラジカルは分子性導体あるいは磁性体

として新規な物性の発現が期待されているその一種である

135-Trithia-246- triazapentalenyl(TTTA)は室温付近

で常磁性-反磁性転移を示し100K 近い双安定領域を持つこ

とが分っているこれは分子デバイスとしての可能性を示して

おりこのためには双安定の温度領域や磁化率の大きさを制御

することが必要であるまたTTTA 高温相は 1 サイトに 1 電子が局在するモット絶

縁体であるため結晶構造を保持したままキャリアーをドープすることができれば極

めて特異な電気物性を示す可能性がある本研究ではTTTA に対する圧力及効果を

調べるとともにTTTA は CV 測定などからドナーであることが知られているので

ヨウ素ドーピングについても検討した

S

N

N

N

S

S

TTTA

【圧力効果】 圧力をかける際には Be-Cu クランプ式ピストンシリンダーセルを用い静水圧を

かけることで加圧した圧力セルは大きな反磁性磁化率を持っており TTTA の磁化率

を見積もりにくいそのためセルにチタン線を巻くなどして圧力セルの反磁性磁化

率の影響を軽減したその結果比較的小さな圧力で相転移温度が高温側にシフトし

た双安定領域の中心は室温付近に移動し双安定性を制御することができたまた

Tcdarrの方が Tcuarrよりも温度変化が大きく圧力に対し敏感であるといえる転移温度

の圧力依存性を計算したところdTcuarrdp=11 K GPa‐1dTcdarrdp=26 K GPa‐1と

なった仮にクラウジウス-クラペイロンの式を用いて両転移温度の圧力依存性を

4

3

2

1

0

χ x10-4 emu mol-1

400350300250200150100

T K

0GPa 038GPa 075GPa 15GPa

340

320

300

280

260

240

Tc K

1412100806040200

p GPa

Tcuarr Tcdarr

図 1圧力下での磁化率の温度依存 図 2転移温度の圧力依存

bukka
4Pp124
bukka

計算するとdTcuarrdp=68 K GPa‐1dTcdarrdp=50K GPa‐1となりオーダー程度は

【ドーピング効果】 不安定であるため溶媒中でアクセプターと混合する方法では

プルは空気に不安定で装置の減圧をとくと 10 分ほどで伝導度が

1

一致していた常磁性磁化率は圧力とともに減少したしかし圧力セルのバックグ

ラウンドが非常に大きくこれを完全に補正することが出来ているかどうかを現在調

査中である

TTTA は溶液状態で

荷移動錯体を得ることが困難であったそこで本実験では TTTA をヨウ素蒸気にさ

らしてドーピングを行ったヨウ素雰囲気での伝導度変化を測定するために図 4 に示

す装置を製作した端子などの金属部位に耐

ハロゲン性グリースを塗布し保護した昇華

精製により得られる TTTA の高温相ブロッ

ク状結晶をサンプルとし装置内を減圧し電

気伝導度の時間変化を調べた

図 4 に伝導度の時間変化を示すドーピ

図 3ヨウ素ドープ伝導度測定

グ開始直後から徐々に伝導度は上昇し10時間程経過した時点で急激に増加したその

後伝導度は一時的に減少するがさらにドー

プを続けることで再度上昇を開始したこの

ような伝導度の上昇は数日続き最大で 104

倍まで増加したがその後は緩やかに減少し

ドープ後のサン

10 以下に減少してしまった当日は伝導度の温度依存性ESR 及び磁化率の測定

結果さらに共昇華法で合成した TTTAI の物性とあわせて議論する予定である

0

02

04

06

08

1

12

0 20 40 60 80 10

timeh

σtimes105(Ω

cm)-

1

図 4ヨウ素ドープ時の伝導度の時間変化

0

110-phenanthroline配位を有する

新 Mn4核錯体の構造と磁性

( 畿大理工) 井淳宏 田孝義前川雅彦宗像 惠

【序】  年Mn 多核錯体は Mn12 核錯体に代表される単一分子磁性や磁気トンネリング現象の観測などで注目されているMn4核錯体は以前から光合成系モデルとして注目されているが最 では単一分子磁性を示すものも報告されより核数の

多い多核 Mn 錯体の構築素子とも考えられる今回我々はMn12 核錯体と 110-phenanthroline(以下 phen)との反応により新 な Mn4 核錯体の合成及び構造 析に成

功したのでその磁性とあわせて報告する

【方法】 [Mn12O12(OAc)16(H2O)4] (100 mg 00535 mmol)を溶 したアセトニトリル溶

液に phen (424 mg 0214 mmol)を加えて3時間撹拌したこの溶液をエバポレーターで濃縮乾固し沈殿を再びアセトニトリルに溶 しこの操作を 2回繰り した

茶色の沈殿を最少量のアセトニトリルに溶かしガラス管に入れ 3 倍量のジエチルエーテルを上から層を形成するように加えて封入し 置した3日後 色レンガ

状結晶[Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2](1)が得られたAnal Calcd (found) for C36H34O14N4Mn4 C 4474 (4473) H 355 (358) N 580 (596) [scheme]

【結果】 単結晶 X線構造 析

 この結晶は a = 11027 Å b = 13226Å c = 14916 Å α = 72670deg β =67694degγ = 80293degの三斜晶系で空間群は

dagger

P1 であるこの錯体の中心分は 2つのMnIIIイオンが 2つのμ3-

O2-イオンで架橋されさらにそれぞれ

のμ3-O2-イオンにMnIIイオンが結合し

た[Mn4O2]6+から成っており両端の

MnIIには phenが配位し6つの酢酸基によって架橋された構造を形成している各Mnイオンの価数はMn-OあるいはMn-Nの結合 離から判断することが可能でMnII

イオン周りはほぼ等方的であるのに対してMnIIIイオン周りは四 錐型 5配位構造を有しており 方向に伸びた Jahn-Teller変形を こしているこれまでに報告さ

れている2つのμ3-O架橋を有するMn4核錯体のコア構造[Mn4(μ3-O)2]n+には平面

+ 4 phenAcetonitrile Ether

Air RT[Mn12O12(OAc) 16(H2O)4] 1

Mn(1)

Mn(3)

Mn(2)Mn(4)O(1)

O(2)

Fig 1 Structure of [Mn4O2(O2CCH3)6(C12 H8N2)2]

N(1)

N(2)

N(3)

N(4)

bukka
4Pp125

型及びバタフライ型がありMnの酸化数の違いによりMnII

2MnIII2 (n=6) MnIIMnIII

3 (n=7)MnIII

4 (n=8)が知られている1 はMnII2MnIII

2

でありこれまでに報告されている

[Mn4O2(O2CCH3)6(bipy)2]2CHCl3(2)1)とほぼ

同じ構造であった図2に 1 のパッキング図

を示す 接する分子間で両端のMnIIに配位

した phen間にπ-π相互作用があり最も接した ChellipC間の 離は 330 Åである図3には phenの重なりを示した 磁性の 析

 直流磁化率測定は1000 Gの磁場下で 2 - 280 Kの温度範囲でおこなった 料は結晶を粉末にし

た 料と沈殿 料についていずれも eicosane で固定したものを用いた沈殿 料のχMT 値は常温付で 102 cm3Kmol-1でありχMT 値は温度の低下と共に減少して2 Kで 39 cm3Kmol-1となるのに

対して結晶 料では 280 K の 120 cm3Kmol-1か

ら温度低下とともに減少し2 Kで 073 cm3Kmol-1

となった(図 5)沈殿 料のχMT 値の挙動は 2 と似していた

 ここで沈殿 料におけるスピン間相互作用とし

て図4の様に J および J13を考え(1)式の等方的なスピンハミルトニアンを用いゼロ磁場分裂 Dの影 が少ないと考えられる 30 K以上の 温でフィッティングを行ったところg = 169J = -195 KJ13 = -399 Kの時に良い一致が得られた(図 5) H=-2J(S1S2+S2S3+S3S4+S4S1)-2J13S1S3 (1)

しかしながらこれらのパラメータと 2 の文献値と

の比 を行うとゼロ磁場分裂を考慮した 析が必

要なことを示しているさらに磁化率の結果が結

晶と沈殿で異なることからpacking が影 してい

ることが考えられる2 つの 料の D を考慮した析とともにこれらの違いの原因について今後検

討する

(1) J B Vincent et al J Am Chem Soc 1989 1112086-2097

Fig 2 Packing structure of [Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2]

χM

T

cm3

K m

ol -1

N(1) N(2)

N(2) N(1)

Fig 3 Overlap of neighboring two phens

Mn1III

Mn3III

OOMn2II Mn4IIJ13

J J

J J

Fig 4 Diagram showing the definition of atom numbering and magnetic exchange parameters for [Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2]

14

12

10

8

6

4

2

0 300250200150100500T K

Fig 5 c MT-T plot of preciptate sample () crystalline sample () and fitting curve(-) for preciptate sample above 30 K

PROXYL ラジカルを有する TTP ドナーの

カチオンラジカル塩の構造と物性

(分子研 1JST CREST2東大院理 3)藤原秀紀 12崔 亨波 12李 夏珍 1

小林速男 12藤原絵美子 3小林昭子 3

【序】我々はこれまで伝導性と磁性の両方を併せ持つ磁性伝導体の開発に注目し

安定有機ラジカルを結合させた各種π拡張型ドナーを合成しその構造と物性につ

いて報告してきたその中で最 PROXYL ラジカルを有する TTP 誘導体を幾つ

か合成しそれらのカチオンラジカル塩の構造と物性について検討したところ伝

導 子と局在スピンが共存しながら い伝導性を有することが明らかとなった1 今

回PROXYL ラジカルを有する TTP ドナー

(1)の 11の組成を有するFeCl4-塩とGaCl4-

塩の構造と伝導性磁性について検討したの

で報告する

【結果と考察】FeCl4-塩と GaCl4-塩の作

成はクロロベンゼンエタノール(82

vv)中定 圧 気分 により作成した

条件によっては多形が得られ30 V

では組成比が 11 の 色板状晶が15 V で

は組成比が 21 の茶 色板状微結晶が得ら

れた21 塩の方は既に文献 1 で報告済み

のようにFeCl4-塩において室温での 気

伝導度が加圧成型 料ながら 5 S cm-1 程

度と良好で金属に い抵抗の温度依存性

を示し伝導 子と局在スピンが同一分子

内に共存している事を見出しているしか

しながら結晶のサイズが小さいため21

塩の構造 析には至っていない11 塩の

構造 析は FeCl4-塩についてはRigaku AFC-7 MercuryGaCl4-塩についてはX線

集光ミラーを備えた Rigaku AFC-8 Mercury で行った表に結晶学データをまとめ

て示すFeCl4-塩と GaCl4-塩は同形であるので以下FeCl4-塩の構造について

述べる図1のようにユニットセル中に結晶学的に独立な二種 のドナー分子 AB

と二種 のアニオンが存在しているドナー分子 AB の TTP 格はほぼ平面である

がPROXYL ラジカル 位は分子平面に対してほぼ垂直に立っているドナーAB

共に立体障害の大きなラジカル 位を避け合うように head-to-tail 型にダイマーを

形成しているダイマー同士は分子 方向にほぼ TTF 一つ分シフトしながら一

S

SS

S

NOS

S

S

S

S

S

1

Anion FeCl4- GaCl4-

Crystal system Triclinic TriclinicSpace group P-1 P-1

a(Aring) 9755(4) 9787(5)b(Aring) 10262(4) 10265(5)c(Aring) 32275(13) 3233(2)a(deg ) 91661(11) 9157(2)b(deg ) 94715(12) 9469(2)g (deg ) 90185(10) 9030(2)

V (Aring3) 32185(22) 32355(28)Z 2 2R 0064 0061Rw 0047 0063

bukka
4Pp126
bukka

次元のスタックを形成しているそしてアニオンはドナーが 方向にずれて

空いた位置に PROXYL ラジカルと末端の 13-ジチオール環に挟まれるようにして存

在しているそれぞれの一次元スタックは b に沿って配列しドナーAB がそれ

ぞれ別々のドナー層を形成しているダイマー内には短い S-S 接触が数多く見られ

るがダイマー間には短い接触はなくまたアニオンがドナー層内に入り込んだ

ような構造になっているため分

子の side-by-side 方向の相互作用

は弱くなっている結果として

ダイマーが孤立している傾向が強

い構造となっている一方ラジ

カル 位は TTP 格が形成する伝

導層間の空間に層を形成するよう

に位置している

FeCl4-塩は 11 塩である事に加え

二量化の強い一次元スタック構造

を有している事を考えると予想以

上の良導体で単結晶 料を用い

4端子法で測定を行ったところ

室温での 気伝導度は 1 x 10-3 S

cm-1 であり活性化エネルギー

が 013 eV の半導体であった一方FeCl4-塩の磁化率を SQUID によって 1 Tesla

で測定した図2にcT-T プロットを示す室温から 50 K程度までcT 値はほぼ一定

であるが更に温度を下げるとcT 値は減少し60 K 以下のデータを用いた Curie-

Weiss Fitting によるとCurie 定数が 483 emu K

mol-1Weiss 温度が-065 K の弱い反強磁性的な温

度依存性を示したCurie 定数の値は High-spin の鉄

(S = 52 4375 emu K mol-1)と PROXYL ラジカル(S

= 12 0375 emu K mol-1)の和(475 emu K mol-1)

に い値を示したカチオンラジカルモーメントに関

する情報は今後 磁性アニオンを用いた GaCl4-

塩の磁気的性 を測定することにより検討を

行う予定である

【文献】(1) H Fujiwara H-J Lee H Kobayashi EFujiwara A Kobayashi Chem Lett 32 482 (2003)

図 1 FeCl4-塩の結晶構造

図 2 FeCl4-塩のcT-T プロット

単一成分分子から成る TTF 型ジチオラトコバルト

錯体の合成構造と物性

(東大院理 1名大院工 2分子研 3科技団 CREST4) 藤原絵美子 1小林昭子 1

藤城雄一 2西堀英治 2 田昌樹 2坂田誠 2藤原秀紀 34小林速男 34

【序】通常単一成分から成る分子性結晶は構成分子の分子軌道が分子間で重な

ることによって出来るバンドが 子によって完全に満たされているか完全に空で

あるかのいずれかである従ってこのような分子性結晶は構成原子が結晶を形

成する際に自発的に金属バンドの形成と自由 子の発生をもたらす金属結晶とは対

照的で絶縁体の典型であると考えられていた 年極低温まで金属状態が安定

な単一成分 TTF 型ジチオラト金属錯体 [Ni(tmdt)2] が開発されde Haas-van

Alphen 効果の観測により Fermi 面を持つ金属であることが証明されたまた中心

金属に磁性金属を導入した[Cu(dmdt)2]では 80の Cu2+の 12 spin が局在しながら

い伝導性を示す常磁性体であることが判る等単一成分分子から成る金属錯体に

おいて興味深い物性が見出されている今回我々はTTF 型ジチオラト金属錯体

に基づく新 な単一成分分子伝導体の開発を目指し中心金属にコバルト原子を導

入した TTF 型ジチオラト金属錯体[Co(dt)2]2を合成しその構造と物性を調べた

【実験および考察】前駆体であるコバルト錯体(Me4N)2[Co(dt)2]はシアノエチルチ

オ基が置換した TTF を THF 中で 25 wt Me4NmiddotOHMeOH 溶液を用いて加水分した後CoCl2middot6H2OMeOH 溶液と反応させることにより紫色を帯びた灰色粉末として得られたさらにこの錯体を nBu4NmiddotClO4を含む PhCN 溶液中で定 流

法(05 mA)を用いて 酸化することにより[Co(dt)2]2 の微小な 色針状結晶が得

られたSPring-8 の放射光ビームライン BL02B2 を用いて X線粉末回折実験を行い

GA (genetic algorithm)と Rietveld 析により得られた錯体の構造を決定した

Crystal data for [Co(dt)2]2 triclinic P`1 a = 117185 (3) b = 109513 (2) c = 77336(1) Aring a = 79737( 2) b = 96474(2) g = 113973(2)deg V = 89145(7) Aring3 Z = 1 Rwp =0053 RI = 0082 この錯体は二個の Co(dt)2ユニットが 312 Aringの面間 離で分子

および短 方向にそれぞれ 130 そして 165 Aring ずつスライドして face-to-faceで重なり各々のユニットのコバルトと硫 原子間でユニット間配位結合(Co-S =

2425 Aring)を持つ特徴的な構造を示す(Fig 1)分子内の二個の Co(dt)2 位はいす形

に大きく折れ曲がりCo1-S1-S2 面と Co1-S7-S8 面との二面 は 121degであった

bukka
4Pp127

Co(dt)2 ユニット間には幾つかの短い S S 離(lt 37 Aring)が見られた結晶中では各々の[Co(dt)2]2 分子が 347 Aring の面間 離で分子 および短 方向にそれぞ

れ 092 そして 173 Aringずつスライドしながら face-to-face で[0 0 1]方向に積層した構造を持つ(Fig 2a)積層方向には短い分子間 S S 離が一種 だけ見られた

さらに[Co(dt)2]2分子は[1 0 0][1 1 0][2 1 0]方向に位置する六個の分子によっ

て分子短 と 方向を囲まれ[1 0 0][1 1 0]方向に 接する分子との間には数

多くの短い S S 離が確認された(Fig 2b)拡張 Huumlckel 法を用いて重なり積分を算したその結果短い S S 離が数多く存在する[1 0 0][1 1 0]方向の分子

との間で大きな重なり積分値が与えられこの錯体はスタック方向よりもむしろ分

子横方向に相互作用が強いことが判った四端子法を用いて[Co(dt)2]2 の加圧成形

料の 気抵抗を室温から 055 K までの温度領域で調べた(Fig 3)加圧成形 料の測

定であるにも拘わらず[Co(dt)2]2は 19 Smiddotcm-1と比 的大きな室温伝導度を示した

抵抗の温度依存性は冷却に伴って室温から緩やかに上昇するがこの錯体は低温

においても 伝導性[s(055 K)srt ordf 110]を示していることからこの錯体は本

的には低温 まで金属である可能性が示唆

される5 kOe の磁場下[Co(dt)2]2 の多結

晶 料の 磁化率を 19-300 K の温度領域

で調べた[Co(dt)2]2の室温 磁化率は 35 x

10-4 emumiddotmol-1であった 磁化率の温度依

存性は低温 において僅かに上昇するが50-300 K の

温度領域においてほぼ一定の値を示したユニット間

配位結合が存在した特徴的な分子構造を持つためこ

の錯体の磁性に対するコバルトスピンの寄与は殆ど無

いかもしくは 常に小さいことが推測される

21 世紀 COE プログラム「フロンティア基礎化学」研究拠点

形成事業のもとに研究を行った

新規ドナー チオピラニリデン-エチレンジオキシ ジチオール分子の合成とその錯体作成

(京大院理) 添田雅也萩原潤矢持秀起斎藤軍治 【序】BEDO-TTF(BO)分子は 5 員環硫黄原子を用いた分子短軸方向への分子間硫黄hellip硫

黄接触と末端エチレンジオキシ基を用いた積層方向への弱い水素結合形成によって錯体

中で自己凝集構造を構築する能力を持っているこのためBO 錯体は金属状態が低温まで

安定であるしかし錯体中で BO 分子は分子長軸方向における相互作用をほとんど示さな

いそこで対成分との相互作用の向上を目指してBO 分子の部分構造をもちかつチオ

ピラン環をもつ新規ドナーチオピラニリデン-エチレンジオキシジチオール(TP-EDOT)分子を合成した今回この TP-EDOT の合成精製およびその PF6塩の構造と物性につ

いて検討したので報告する 【実験と結果】エチレンジオキシ-13-ジチオール-2-チオン(1)とテトラヒドロ-4H-チオピラン

-4-オン(2)をP(OMe)3 存在下ベンゼン中でクロスカップリングさせ49 の収率で黄白色

針状晶のテトラヒドロ TP-EDOT(3)が得られた3 をキシレン中 DDQ を用いて脱水素し

64 の収率で黄白色粉末の TP-EDOT(分解点 1465 ~ 1493 )が得られた

O

O S

SS

BenzeneO S+

S

SS

O

O P(OMe)3

reflux6h O

O S

SS

DDQ

Xylene

1 2 3 TP-EDOT 3 は比較的安定でありまたこの反応条件下で2 同士のホモカップリング反応が起きな

いことから3 は容易に単離できた一方TP-EDOT はその合成条件下同時に分解反応を

起こすので反応は出来るだけ短時間で行う必要があったTP-EDOT はアセトンクロロ

ホルム酸に対しては不安定でこれらの溶媒中では数分以内に分解した一方エタノ

ールメタノールベンゼンテトラヒドロフランベンゾニトリルアセトニトリル中で

は加熱条件下でも安定であったまたTP-EDOT は一部分解物を含む状態となってもシ

リカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製しなおすことが可能であった TP-EDOT と関連物質の酸化還元電位を表 1 にまとめたTP-EDOT の酸化還元電位の大

きさは TTF や BO に比べて小さくTMTTF と同程度であった TP-EDOT の錯体を( Bu4N )X ( X = PF6SbF6BF4ClO4 )の存在下定

電圧電解法により作成したPF6 塩につ

いて緑色と紫色の 2 種類の生成物が得

られたあまり大きくない電流値(約 05 microΑ)で 1 ヶ月以内に電解を停止すること

により紫色の針状結晶を選択的に得る

表 1 サイクリックボルタメトリー法による酸化還元

電位( vs SCE ) ドナー E121 V E122 V ∆ E V TP-EDOT 027 060 033 TMTTF 029 065 036 TTF 037 076 039 BEDO-TTF 043 069 026 ∆E = E121 - E122

ことができたこれ以上長い期間ある

bukka
4Pp128

いは高い電流値で電解を行うと緑色の結晶が紫色の結晶と混ざって生成することがわか

った 単結晶構造解析によって PF6 塩の紫色結晶の結晶構造を決定した(Crystal Data monoclinic C2m Z = 8 a = 16024(3) b = 23029(3) c = 7005(3) Aring β = 10390(2) deg V = 2509(1) Aring3)組成はドナー アニオン= 2 1 であった拡張ヒュッケル法によりドナー分

子同士の重なり積分を算出すると分子間相互作用は 3 次元的であったしかしどの方向

についても重なり積分の絶対値は小さかったまたドナー分子のチオピラン環にある硫黄

原子同士の分子長軸方向への相互作用も見られた(図 1 の s8 に対応する分子間での ShellipS 接

触)これらの分子間相互作用の結果計算上は 3 次元的なフェルミ面が得られた(図 2) この錯体の分子積層方

向(c 軸方向)の電気伝導

度は室温で 10-4 S cm-1

程度であり8 ~ 50 degC の

範囲で半導体的挙動が

観測された 【考察】PF6 塩はバンド計

算からは3次元的な複雑

なフェルミ面を持つし

かし積層方向の伝導度

は金属的な挙動を示さな

かったバンド幅に比べ

オンサイトクーロン反発

(U)が大きいことがそ

の原因であると考えられ

る 本 錯 体 中 で の

TP-EDOT 分子間の重な

り積分はBO 錯体中での

ドナー分子間重なり積分

の 4 分の 1 程度の大きさ

であるまたU の目安

である∆E はTP-EDOT の方が BO より

007V 大きい

a

bo

s8

s6

s5

s1

s1s1

s1s1

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6s5

s5s5

s5s5

s5

s5s5

s5

s8

s8s8

図 1 PF6塩の c 軸投影図

影をつけたドナー分子は z = 0 の平面上にあり影をつけてないドナ

ー分子は z = 05 の平面上にある重なり積分の値はそれぞれs1 =

403times10-3s5 = -192times10-3s6 = -345times10-3s8 = 396times10-3であ

った

今後はPF6塩については磁化率の測定

等を通じて電子がどのように局在化してい

るかを検討していく同時に積層方向以外

の方向における伝導度測定も試みるまた

他のカチオンラジカル塩の単結晶作成とそ

れらの構造と物性について調べていく

図 2 PF6塩のフェルミ面

クラウンエーテルを用いた超分子化学的結晶設計に基

づくヘテロスピン集合系の磁性 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2)

神崎祐貴 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 【序論】現在まで純粋な有機分子からなるフェリ磁性体の構築は成功しておらずな

お分子磁性研究の長年の課題とされている我々は以前理論的考察から基底 1重項(S = 0)ビラジカルと 2重項(S = 12)ラジカルとの反強磁性的交互 1次元鎖が広義のフェリ磁性的な基底状態を取り得ること(一般化フェリ磁性)を提案した[1]

また1次元鎖全体の基底状態はビラジカル分子内と分子間の相互作用の大小関係を圧力等の外場によって変化させるとフェリ磁性的高スピン状態と非磁性(反磁性)

状態との間で相互変換することも理論計算から予想されている[1] この理論計算の結果を実験的に検証するために図 1に示したモデル分子錯体を合成した結晶設計にはクラウンエーテルが選択的にアルカリ金属を捕獲する錯形成

力を利用した超分子結晶工学アプローチを用いたこれまでの研究でフェノキシド

ビラジカル(1-)と 15-crown-5-ether置換のモノラジカル(2) [2]との錯体[Na2]+1-(図 1)が理論を一部実証する非磁性基底状態を示すことを磁化率の測定より明らかにした[3]

本研究では新たに新奇物質である 18-crown-6-ether置換のモノラジカル(3)を合成し新しいモデル錯体としてフェノキシドビラジカル(1-)との錯体[K3]+1-(図 1)を合成した錯体の構成要素となるモノラジカルの変化によって錯体[Na2]+1-とは異なる分

子間交換相互作用が与えられ上記の理論の予言する高スピン状態(フェリ磁性的基

底状態)が得られる可能性がある 【18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)】

18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)を図 2の方法で合成した閉殻前駆体は1H NMR 13C NMR 元素分析を用いて同定したラジカル(3)の同定は元素分析溶液ESRから行った室温でのジクロロメタン溶液の ESRスペクトルを図 3に示す窒素 14N核の超微細結合定数は aN = 072 mTg値は g = 20056で典型的なニトロニルニトロキシドモノラジカルの値を示したまた常磁性磁化率pの温度依存性を図 4に示す室温でのpT値は 0372 emu K mol-1であり純度は 99であったpは Tmax = 32 Kで極大をとりBonner-Fischerモデルを仮定すると Tmaxと Jとの関係から分子間に 2JkB = -51 Kの反強磁性的な交換相互作用が働いていることになる分子のパッキングに基づく詳細な解析を行うために現在 X線結晶構造解析を行なっている

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

-

NNO

O

O O

OOO

Na

+-

+

O

O

O O

O

O

NNO

O+-

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

- K+

[Na2]+1- [K3]+1-

図 1 モデル錯体

bukka
4Pp129

0

001

002

003

004

005

006

0 50 100 150 200 250 300

p (実測)

(Bonner-Fischerモデル)

p

emu

mol

-1T K

図 4 モノラジカル(3)の磁化率

O O

O

O

O

O

Br O O

O

O

O

O

CHOt-BuLi DMF

THF

O O

O

O

O

ON

NO

ONHOH

NHOHbenzene

+-

NaIO4 H2O CH2Cl2

1)

2)

図 2 18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)の合成

326 327 328 329 330 331 332

B mT 図 3 モノラジカル(3)の ESR スペクトル(ジクロロメタン溶液室温)

【フェノキシドビラジカルの単純塩(K+1-)】 モデル錯体の構成要素の性質を明らかにするためにフェノキシドビラジカルの単

純塩(K+1-)の磁化率を測定したpT 値は温度の低下とともに単調に減少したsinglet-tripletモデル

)exp(312

BB

2B

2A

p TkETkgN

(1)

10 SESEE (2) にフィッティングさせて分子内交換相互作用E(3重項と 1重項の間のエネルギーギャップ)を見積もった結果EkB = -70 Kとなったこの結果は単純塩(K+1-)の凍結溶液 ESR禁制遷移の強度 IESRの温度変化から見積もったEkB -10 K[4]とほぼ対応

しており分子内の交換相互作用が反強磁性的なものであることが確かめられたな

おフェノキシドビラジカルのナトリウム塩(Na+1-)では凍結溶液 ESRの実験からEkB -27 13 Kであることがわかっている[3]ビラジカル分子内の交換相互作用

の大きさの違いが錯体形成後の分子集合系のスピン状態に影響を与えるものと思わ

れる 上記の構成分子を用いて[Na2]+1-と同様の方法で新奇なモデル錯体[K3]+1-を合

成した現在錯体の結晶構造解析ESRスペクトルと磁化率の測定を行なっている[Na2]+1-と[K3]+1-との磁性と構造の相違点を議論する予定である 【参考文献】 [1] D Shiomi K Sato and T Takui J Phys Chem B 105 2932 (2001) [2] M Fettouhi Mol Cryst Liq Cryst 356 365 (2001) [3] Y Kanzaki D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 22 1817(2003) [4] S Hase D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 20 1403(2001)

超分子化学アプローチによる有機フェリ

磁性体の構築と磁気的性質 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2) 早川健一 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 有機フェリ磁性体を構築するための大きな問題点として分晶化がある分晶化を避

け異なるスピン量子数を持つ有機ラジカル(たとえばモノラジカル(S = 12)と

ビラジカル(S = 1))を共結晶化させる方法として超分子化学アプローチがある

これは選択的な分子間引力(水素結合やイオン電荷によるクーロン力)によって異

種成分を連結する方法である(図 1)[1]現在までのところ水素結合やイオン電荷

によるビラジカルとモノラジカルの共結晶化の試みは一部報告例があるが[2]結晶

構造まで確定した成功例はない

N

NN

NN

O

O

N

N

O

O

X

+

_

X = COOH(2) OH(3)

(1)

NN

N

N

N

OO

Me

+

N NO O+ _

Y _

Y = COO- O-

(a)水素結合アプローチ (b)有機塩アプローチ(イオン電荷によるクー

ロン力)

図 1 ビラジカルとモノラジカルの共結晶化

本研究ではピリジンの 26-位にイミノニトロキシドを導入したビラジカル(1)と安

息香酸(2)もしくはフェノール(3)置換のニトロニルニトロキシドモノラジカルを水素

結合によって連結する方法を試みた(図 1a) ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)は対応するジアルデヒドから 3 段

階で合成した(図 2)

N CHOOHC NNN

NN

OHHO

HOOHMeOH

NNOHNNOH SeO2

MeOHNN

NN

N

OHHO PbO2

CH2Cl2NN

NN

N

OO

(1)

図 2 ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)の合成

bukka
4Pp130

ビラジカル 1の磁化率を図 3 に示す分子間の平均場θを取り入れた Singlet-Tripletモデル

)2exp(31

)(2

BB

2B

2A

p TkJTkgN

minus+times

minus=

θmicro

χ (1)

により分子内の交換相互作用は 2JkB = +14 K分子間相互作用はθ = -3 K であるこ

とがわかった分子内の交換相互作用が強

磁性的であることはPVC(ポリ塩化ビニ

ル)による固相希釈系の実験(図 3)から

確かめられたビラジカル(1)は超分子フ

ェリ磁性体の構成要素として用いることが

できることがわかった

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

diluted in PVC(JkB = 7K)

neat(JkB = 7K θ = -3K)

-------

____

obscalc

calcobs

図 3 ビラジカル(1)の磁化率 (χpT-T プロット)

ビラジカル(1)と安息香酸置換モノラジ

カル(2)との共結晶体(分子錯体 1-2)は

エタノール溶液からの再結晶により得られ

た元素分析から組成は 11 であること

がわかった磁化率の測定結果を図 4 に示

す室温(300 K)でのχpT の値は分子錯

体 1 モル(S = 12 スピン 3 モル)の高温極

限の予測値(113 emu K mol-1)を下回って

おり分子間の反強磁性相互作用がかなり

大きいことを示唆するまた20 K 付近で

χpT の減少が一旦鈍って停留値をとってい

るこれらの結果はビラジカル(1)の磁化

率(図 3)とモノラジカル(2)の磁化率[3]の単純な和では説明できない現在X 線結

晶構造解析を行なっている

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

図 4 分子錯体 1-2の磁化率

(χpT-T プロット)

フェノール置換モノラジカル(3)による

水素結合アプローチと有機塩アプローチ

による共結晶化を現在進めている [1] D Shiomi K Ito M Nishizawa S Hase K Sato T Takui Mol Cryst Liq Cryst 334 99(1999) [2] 伊瀬智章石田尚行野上隆第 76 春

季年会 4C538(1999) [3] K Inoue H Iwamura Chem Phys Lett 207 551(1993)

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

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2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 6: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

計算するとdTcuarrdp=68 K GPa‐1dTcdarrdp=50K GPa‐1となりオーダー程度は

【ドーピング効果】 不安定であるため溶媒中でアクセプターと混合する方法では

プルは空気に不安定で装置の減圧をとくと 10 分ほどで伝導度が

1

一致していた常磁性磁化率は圧力とともに減少したしかし圧力セルのバックグ

ラウンドが非常に大きくこれを完全に補正することが出来ているかどうかを現在調

査中である

TTTA は溶液状態で

荷移動錯体を得ることが困難であったそこで本実験では TTTA をヨウ素蒸気にさ

らしてドーピングを行ったヨウ素雰囲気での伝導度変化を測定するために図 4 に示

す装置を製作した端子などの金属部位に耐

ハロゲン性グリースを塗布し保護した昇華

精製により得られる TTTA の高温相ブロッ

ク状結晶をサンプルとし装置内を減圧し電

気伝導度の時間変化を調べた

図 4 に伝導度の時間変化を示すドーピ

図 3ヨウ素ドープ伝導度測定

グ開始直後から徐々に伝導度は上昇し10時間程経過した時点で急激に増加したその

後伝導度は一時的に減少するがさらにドー

プを続けることで再度上昇を開始したこの

ような伝導度の上昇は数日続き最大で 104

倍まで増加したがその後は緩やかに減少し

ドープ後のサン

10 以下に減少してしまった当日は伝導度の温度依存性ESR 及び磁化率の測定

結果さらに共昇華法で合成した TTTAI の物性とあわせて議論する予定である

0

02

04

06

08

1

12

0 20 40 60 80 10

timeh

σtimes105(Ω

cm)-

1

図 4ヨウ素ドープ時の伝導度の時間変化

0

110-phenanthroline配位を有する

新 Mn4核錯体の構造と磁性

( 畿大理工) 井淳宏 田孝義前川雅彦宗像 惠

【序】  年Mn 多核錯体は Mn12 核錯体に代表される単一分子磁性や磁気トンネリング現象の観測などで注目されているMn4核錯体は以前から光合成系モデルとして注目されているが最 では単一分子磁性を示すものも報告されより核数の

多い多核 Mn 錯体の構築素子とも考えられる今回我々はMn12 核錯体と 110-phenanthroline(以下 phen)との反応により新 な Mn4 核錯体の合成及び構造 析に成

功したのでその磁性とあわせて報告する

【方法】 [Mn12O12(OAc)16(H2O)4] (100 mg 00535 mmol)を溶 したアセトニトリル溶

液に phen (424 mg 0214 mmol)を加えて3時間撹拌したこの溶液をエバポレーターで濃縮乾固し沈殿を再びアセトニトリルに溶 しこの操作を 2回繰り した

茶色の沈殿を最少量のアセトニトリルに溶かしガラス管に入れ 3 倍量のジエチルエーテルを上から層を形成するように加えて封入し 置した3日後 色レンガ

状結晶[Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2](1)が得られたAnal Calcd (found) for C36H34O14N4Mn4 C 4474 (4473) H 355 (358) N 580 (596) [scheme]

【結果】 単結晶 X線構造 析

 この結晶は a = 11027 Å b = 13226Å c = 14916 Å α = 72670deg β =67694degγ = 80293degの三斜晶系で空間群は

dagger

P1 であるこの錯体の中心分は 2つのMnIIIイオンが 2つのμ3-

O2-イオンで架橋されさらにそれぞれ

のμ3-O2-イオンにMnIIイオンが結合し

た[Mn4O2]6+から成っており両端の

MnIIには phenが配位し6つの酢酸基によって架橋された構造を形成している各Mnイオンの価数はMn-OあるいはMn-Nの結合 離から判断することが可能でMnII

イオン周りはほぼ等方的であるのに対してMnIIIイオン周りは四 錐型 5配位構造を有しており 方向に伸びた Jahn-Teller変形を こしているこれまでに報告さ

れている2つのμ3-O架橋を有するMn4核錯体のコア構造[Mn4(μ3-O)2]n+には平面

+ 4 phenAcetonitrile Ether

Air RT[Mn12O12(OAc) 16(H2O)4] 1

Mn(1)

Mn(3)

Mn(2)Mn(4)O(1)

O(2)

Fig 1 Structure of [Mn4O2(O2CCH3)6(C12 H8N2)2]

N(1)

N(2)

N(3)

N(4)

bukka
4Pp125

型及びバタフライ型がありMnの酸化数の違いによりMnII

2MnIII2 (n=6) MnIIMnIII

3 (n=7)MnIII

4 (n=8)が知られている1 はMnII2MnIII

2

でありこれまでに報告されている

[Mn4O2(O2CCH3)6(bipy)2]2CHCl3(2)1)とほぼ

同じ構造であった図2に 1 のパッキング図

を示す 接する分子間で両端のMnIIに配位

した phen間にπ-π相互作用があり最も接した ChellipC間の 離は 330 Åである図3には phenの重なりを示した 磁性の 析

 直流磁化率測定は1000 Gの磁場下で 2 - 280 Kの温度範囲でおこなった 料は結晶を粉末にし

た 料と沈殿 料についていずれも eicosane で固定したものを用いた沈殿 料のχMT 値は常温付で 102 cm3Kmol-1でありχMT 値は温度の低下と共に減少して2 Kで 39 cm3Kmol-1となるのに

対して結晶 料では 280 K の 120 cm3Kmol-1か

ら温度低下とともに減少し2 Kで 073 cm3Kmol-1

となった(図 5)沈殿 料のχMT 値の挙動は 2 と似していた

 ここで沈殿 料におけるスピン間相互作用とし

て図4の様に J および J13を考え(1)式の等方的なスピンハミルトニアンを用いゼロ磁場分裂 Dの影 が少ないと考えられる 30 K以上の 温でフィッティングを行ったところg = 169J = -195 KJ13 = -399 Kの時に良い一致が得られた(図 5) H=-2J(S1S2+S2S3+S3S4+S4S1)-2J13S1S3 (1)

しかしながらこれらのパラメータと 2 の文献値と

の比 を行うとゼロ磁場分裂を考慮した 析が必

要なことを示しているさらに磁化率の結果が結

晶と沈殿で異なることからpacking が影 してい

ることが考えられる2 つの 料の D を考慮した析とともにこれらの違いの原因について今後検

討する

(1) J B Vincent et al J Am Chem Soc 1989 1112086-2097

Fig 2 Packing structure of [Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2]

χM

T

cm3

K m

ol -1

N(1) N(2)

N(2) N(1)

Fig 3 Overlap of neighboring two phens

Mn1III

Mn3III

OOMn2II Mn4IIJ13

J J

J J

Fig 4 Diagram showing the definition of atom numbering and magnetic exchange parameters for [Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2]

14

12

10

8

6

4

2

0 300250200150100500T K

Fig 5 c MT-T plot of preciptate sample () crystalline sample () and fitting curve(-) for preciptate sample above 30 K

PROXYL ラジカルを有する TTP ドナーの

カチオンラジカル塩の構造と物性

(分子研 1JST CREST2東大院理 3)藤原秀紀 12崔 亨波 12李 夏珍 1

小林速男 12藤原絵美子 3小林昭子 3

【序】我々はこれまで伝導性と磁性の両方を併せ持つ磁性伝導体の開発に注目し

安定有機ラジカルを結合させた各種π拡張型ドナーを合成しその構造と物性につ

いて報告してきたその中で最 PROXYL ラジカルを有する TTP 誘導体を幾つ

か合成しそれらのカチオンラジカル塩の構造と物性について検討したところ伝

導 子と局在スピンが共存しながら い伝導性を有することが明らかとなった1 今

回PROXYL ラジカルを有する TTP ドナー

(1)の 11の組成を有するFeCl4-塩とGaCl4-

塩の構造と伝導性磁性について検討したの

で報告する

【結果と考察】FeCl4-塩と GaCl4-塩の作

成はクロロベンゼンエタノール(82

vv)中定 圧 気分 により作成した

条件によっては多形が得られ30 V

では組成比が 11 の 色板状晶が15 V で

は組成比が 21 の茶 色板状微結晶が得ら

れた21 塩の方は既に文献 1 で報告済み

のようにFeCl4-塩において室温での 気

伝導度が加圧成型 料ながら 5 S cm-1 程

度と良好で金属に い抵抗の温度依存性

を示し伝導 子と局在スピンが同一分子

内に共存している事を見出しているしか

しながら結晶のサイズが小さいため21

塩の構造 析には至っていない11 塩の

構造 析は FeCl4-塩についてはRigaku AFC-7 MercuryGaCl4-塩についてはX線

集光ミラーを備えた Rigaku AFC-8 Mercury で行った表に結晶学データをまとめ

て示すFeCl4-塩と GaCl4-塩は同形であるので以下FeCl4-塩の構造について

述べる図1のようにユニットセル中に結晶学的に独立な二種 のドナー分子 AB

と二種 のアニオンが存在しているドナー分子 AB の TTP 格はほぼ平面である

がPROXYL ラジカル 位は分子平面に対してほぼ垂直に立っているドナーAB

共に立体障害の大きなラジカル 位を避け合うように head-to-tail 型にダイマーを

形成しているダイマー同士は分子 方向にほぼ TTF 一つ分シフトしながら一

S

SS

S

NOS

S

S

S

S

S

1

Anion FeCl4- GaCl4-

Crystal system Triclinic TriclinicSpace group P-1 P-1

a(Aring) 9755(4) 9787(5)b(Aring) 10262(4) 10265(5)c(Aring) 32275(13) 3233(2)a(deg ) 91661(11) 9157(2)b(deg ) 94715(12) 9469(2)g (deg ) 90185(10) 9030(2)

V (Aring3) 32185(22) 32355(28)Z 2 2R 0064 0061Rw 0047 0063

bukka
4Pp126
bukka

次元のスタックを形成しているそしてアニオンはドナーが 方向にずれて

空いた位置に PROXYL ラジカルと末端の 13-ジチオール環に挟まれるようにして存

在しているそれぞれの一次元スタックは b に沿って配列しドナーAB がそれ

ぞれ別々のドナー層を形成しているダイマー内には短い S-S 接触が数多く見られ

るがダイマー間には短い接触はなくまたアニオンがドナー層内に入り込んだ

ような構造になっているため分

子の side-by-side 方向の相互作用

は弱くなっている結果として

ダイマーが孤立している傾向が強

い構造となっている一方ラジ

カル 位は TTP 格が形成する伝

導層間の空間に層を形成するよう

に位置している

FeCl4-塩は 11 塩である事に加え

二量化の強い一次元スタック構造

を有している事を考えると予想以

上の良導体で単結晶 料を用い

4端子法で測定を行ったところ

室温での 気伝導度は 1 x 10-3 S

cm-1 であり活性化エネルギー

が 013 eV の半導体であった一方FeCl4-塩の磁化率を SQUID によって 1 Tesla

で測定した図2にcT-T プロットを示す室温から 50 K程度までcT 値はほぼ一定

であるが更に温度を下げるとcT 値は減少し60 K 以下のデータを用いた Curie-

Weiss Fitting によるとCurie 定数が 483 emu K

mol-1Weiss 温度が-065 K の弱い反強磁性的な温

度依存性を示したCurie 定数の値は High-spin の鉄

(S = 52 4375 emu K mol-1)と PROXYL ラジカル(S

= 12 0375 emu K mol-1)の和(475 emu K mol-1)

に い値を示したカチオンラジカルモーメントに関

する情報は今後 磁性アニオンを用いた GaCl4-

塩の磁気的性 を測定することにより検討を

行う予定である

【文献】(1) H Fujiwara H-J Lee H Kobayashi EFujiwara A Kobayashi Chem Lett 32 482 (2003)

図 1 FeCl4-塩の結晶構造

図 2 FeCl4-塩のcT-T プロット

単一成分分子から成る TTF 型ジチオラトコバルト

錯体の合成構造と物性

(東大院理 1名大院工 2分子研 3科技団 CREST4) 藤原絵美子 1小林昭子 1

藤城雄一 2西堀英治 2 田昌樹 2坂田誠 2藤原秀紀 34小林速男 34

【序】通常単一成分から成る分子性結晶は構成分子の分子軌道が分子間で重な

ることによって出来るバンドが 子によって完全に満たされているか完全に空で

あるかのいずれかである従ってこのような分子性結晶は構成原子が結晶を形

成する際に自発的に金属バンドの形成と自由 子の発生をもたらす金属結晶とは対

照的で絶縁体の典型であると考えられていた 年極低温まで金属状態が安定

な単一成分 TTF 型ジチオラト金属錯体 [Ni(tmdt)2] が開発されde Haas-van

Alphen 効果の観測により Fermi 面を持つ金属であることが証明されたまた中心

金属に磁性金属を導入した[Cu(dmdt)2]では 80の Cu2+の 12 spin が局在しながら

い伝導性を示す常磁性体であることが判る等単一成分分子から成る金属錯体に

おいて興味深い物性が見出されている今回我々はTTF 型ジチオラト金属錯体

に基づく新 な単一成分分子伝導体の開発を目指し中心金属にコバルト原子を導

入した TTF 型ジチオラト金属錯体[Co(dt)2]2を合成しその構造と物性を調べた

【実験および考察】前駆体であるコバルト錯体(Me4N)2[Co(dt)2]はシアノエチルチ

オ基が置換した TTF を THF 中で 25 wt Me4NmiddotOHMeOH 溶液を用いて加水分した後CoCl2middot6H2OMeOH 溶液と反応させることにより紫色を帯びた灰色粉末として得られたさらにこの錯体を nBu4NmiddotClO4を含む PhCN 溶液中で定 流

法(05 mA)を用いて 酸化することにより[Co(dt)2]2 の微小な 色針状結晶が得

られたSPring-8 の放射光ビームライン BL02B2 を用いて X線粉末回折実験を行い

GA (genetic algorithm)と Rietveld 析により得られた錯体の構造を決定した

Crystal data for [Co(dt)2]2 triclinic P`1 a = 117185 (3) b = 109513 (2) c = 77336(1) Aring a = 79737( 2) b = 96474(2) g = 113973(2)deg V = 89145(7) Aring3 Z = 1 Rwp =0053 RI = 0082 この錯体は二個の Co(dt)2ユニットが 312 Aringの面間 離で分子

および短 方向にそれぞれ 130 そして 165 Aring ずつスライドして face-to-faceで重なり各々のユニットのコバルトと硫 原子間でユニット間配位結合(Co-S =

2425 Aring)を持つ特徴的な構造を示す(Fig 1)分子内の二個の Co(dt)2 位はいす形

に大きく折れ曲がりCo1-S1-S2 面と Co1-S7-S8 面との二面 は 121degであった

bukka
4Pp127

Co(dt)2 ユニット間には幾つかの短い S S 離(lt 37 Aring)が見られた結晶中では各々の[Co(dt)2]2 分子が 347 Aring の面間 離で分子 および短 方向にそれぞ

れ 092 そして 173 Aringずつスライドしながら face-to-face で[0 0 1]方向に積層した構造を持つ(Fig 2a)積層方向には短い分子間 S S 離が一種 だけ見られた

さらに[Co(dt)2]2分子は[1 0 0][1 1 0][2 1 0]方向に位置する六個の分子によっ

て分子短 と 方向を囲まれ[1 0 0][1 1 0]方向に 接する分子との間には数

多くの短い S S 離が確認された(Fig 2b)拡張 Huumlckel 法を用いて重なり積分を算したその結果短い S S 離が数多く存在する[1 0 0][1 1 0]方向の分子

との間で大きな重なり積分値が与えられこの錯体はスタック方向よりもむしろ分

子横方向に相互作用が強いことが判った四端子法を用いて[Co(dt)2]2 の加圧成形

料の 気抵抗を室温から 055 K までの温度領域で調べた(Fig 3)加圧成形 料の測

定であるにも拘わらず[Co(dt)2]2は 19 Smiddotcm-1と比 的大きな室温伝導度を示した

抵抗の温度依存性は冷却に伴って室温から緩やかに上昇するがこの錯体は低温

においても 伝導性[s(055 K)srt ordf 110]を示していることからこの錯体は本

的には低温 まで金属である可能性が示唆

される5 kOe の磁場下[Co(dt)2]2 の多結

晶 料の 磁化率を 19-300 K の温度領域

で調べた[Co(dt)2]2の室温 磁化率は 35 x

10-4 emumiddotmol-1であった 磁化率の温度依

存性は低温 において僅かに上昇するが50-300 K の

温度領域においてほぼ一定の値を示したユニット間

配位結合が存在した特徴的な分子構造を持つためこ

の錯体の磁性に対するコバルトスピンの寄与は殆ど無

いかもしくは 常に小さいことが推測される

21 世紀 COE プログラム「フロンティア基礎化学」研究拠点

形成事業のもとに研究を行った

新規ドナー チオピラニリデン-エチレンジオキシ ジチオール分子の合成とその錯体作成

(京大院理) 添田雅也萩原潤矢持秀起斎藤軍治 【序】BEDO-TTF(BO)分子は 5 員環硫黄原子を用いた分子短軸方向への分子間硫黄hellip硫

黄接触と末端エチレンジオキシ基を用いた積層方向への弱い水素結合形成によって錯体

中で自己凝集構造を構築する能力を持っているこのためBO 錯体は金属状態が低温まで

安定であるしかし錯体中で BO 分子は分子長軸方向における相互作用をほとんど示さな

いそこで対成分との相互作用の向上を目指してBO 分子の部分構造をもちかつチオ

ピラン環をもつ新規ドナーチオピラニリデン-エチレンジオキシジチオール(TP-EDOT)分子を合成した今回この TP-EDOT の合成精製およびその PF6塩の構造と物性につ

いて検討したので報告する 【実験と結果】エチレンジオキシ-13-ジチオール-2-チオン(1)とテトラヒドロ-4H-チオピラン

-4-オン(2)をP(OMe)3 存在下ベンゼン中でクロスカップリングさせ49 の収率で黄白色

針状晶のテトラヒドロ TP-EDOT(3)が得られた3 をキシレン中 DDQ を用いて脱水素し

64 の収率で黄白色粉末の TP-EDOT(分解点 1465 ~ 1493 )が得られた

O

O S

SS

BenzeneO S+

S

SS

O

O P(OMe)3

reflux6h O

O S

SS

DDQ

Xylene

1 2 3 TP-EDOT 3 は比較的安定でありまたこの反応条件下で2 同士のホモカップリング反応が起きな

いことから3 は容易に単離できた一方TP-EDOT はその合成条件下同時に分解反応を

起こすので反応は出来るだけ短時間で行う必要があったTP-EDOT はアセトンクロロ

ホルム酸に対しては不安定でこれらの溶媒中では数分以内に分解した一方エタノ

ールメタノールベンゼンテトラヒドロフランベンゾニトリルアセトニトリル中で

は加熱条件下でも安定であったまたTP-EDOT は一部分解物を含む状態となってもシ

リカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製しなおすことが可能であった TP-EDOT と関連物質の酸化還元電位を表 1 にまとめたTP-EDOT の酸化還元電位の大

きさは TTF や BO に比べて小さくTMTTF と同程度であった TP-EDOT の錯体を( Bu4N )X ( X = PF6SbF6BF4ClO4 )の存在下定

電圧電解法により作成したPF6 塩につ

いて緑色と紫色の 2 種類の生成物が得

られたあまり大きくない電流値(約 05 microΑ)で 1 ヶ月以内に電解を停止すること

により紫色の針状結晶を選択的に得る

表 1 サイクリックボルタメトリー法による酸化還元

電位( vs SCE ) ドナー E121 V E122 V ∆ E V TP-EDOT 027 060 033 TMTTF 029 065 036 TTF 037 076 039 BEDO-TTF 043 069 026 ∆E = E121 - E122

ことができたこれ以上長い期間ある

bukka
4Pp128

いは高い電流値で電解を行うと緑色の結晶が紫色の結晶と混ざって生成することがわか

った 単結晶構造解析によって PF6 塩の紫色結晶の結晶構造を決定した(Crystal Data monoclinic C2m Z = 8 a = 16024(3) b = 23029(3) c = 7005(3) Aring β = 10390(2) deg V = 2509(1) Aring3)組成はドナー アニオン= 2 1 であった拡張ヒュッケル法によりドナー分

子同士の重なり積分を算出すると分子間相互作用は 3 次元的であったしかしどの方向

についても重なり積分の絶対値は小さかったまたドナー分子のチオピラン環にある硫黄

原子同士の分子長軸方向への相互作用も見られた(図 1 の s8 に対応する分子間での ShellipS 接

触)これらの分子間相互作用の結果計算上は 3 次元的なフェルミ面が得られた(図 2) この錯体の分子積層方

向(c 軸方向)の電気伝導

度は室温で 10-4 S cm-1

程度であり8 ~ 50 degC の

範囲で半導体的挙動が

観測された 【考察】PF6 塩はバンド計

算からは3次元的な複雑

なフェルミ面を持つし

かし積層方向の伝導度

は金属的な挙動を示さな

かったバンド幅に比べ

オンサイトクーロン反発

(U)が大きいことがそ

の原因であると考えられ

る 本 錯 体 中 で の

TP-EDOT 分子間の重な

り積分はBO 錯体中での

ドナー分子間重なり積分

の 4 分の 1 程度の大きさ

であるまたU の目安

である∆E はTP-EDOT の方が BO より

007V 大きい

a

bo

s8

s6

s5

s1

s1s1

s1s1

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6s5

s5s5

s5s5

s5

s5s5

s5

s8

s8s8

図 1 PF6塩の c 軸投影図

影をつけたドナー分子は z = 0 の平面上にあり影をつけてないドナ

ー分子は z = 05 の平面上にある重なり積分の値はそれぞれs1 =

403times10-3s5 = -192times10-3s6 = -345times10-3s8 = 396times10-3であ

った

今後はPF6塩については磁化率の測定

等を通じて電子がどのように局在化してい

るかを検討していく同時に積層方向以外

の方向における伝導度測定も試みるまた

他のカチオンラジカル塩の単結晶作成とそ

れらの構造と物性について調べていく

図 2 PF6塩のフェルミ面

クラウンエーテルを用いた超分子化学的結晶設計に基

づくヘテロスピン集合系の磁性 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2)

神崎祐貴 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 【序論】現在まで純粋な有機分子からなるフェリ磁性体の構築は成功しておらずな

お分子磁性研究の長年の課題とされている我々は以前理論的考察から基底 1重項(S = 0)ビラジカルと 2重項(S = 12)ラジカルとの反強磁性的交互 1次元鎖が広義のフェリ磁性的な基底状態を取り得ること(一般化フェリ磁性)を提案した[1]

また1次元鎖全体の基底状態はビラジカル分子内と分子間の相互作用の大小関係を圧力等の外場によって変化させるとフェリ磁性的高スピン状態と非磁性(反磁性)

状態との間で相互変換することも理論計算から予想されている[1] この理論計算の結果を実験的に検証するために図 1に示したモデル分子錯体を合成した結晶設計にはクラウンエーテルが選択的にアルカリ金属を捕獲する錯形成

力を利用した超分子結晶工学アプローチを用いたこれまでの研究でフェノキシド

ビラジカル(1-)と 15-crown-5-ether置換のモノラジカル(2) [2]との錯体[Na2]+1-(図 1)が理論を一部実証する非磁性基底状態を示すことを磁化率の測定より明らかにした[3]

本研究では新たに新奇物質である 18-crown-6-ether置換のモノラジカル(3)を合成し新しいモデル錯体としてフェノキシドビラジカル(1-)との錯体[K3]+1-(図 1)を合成した錯体の構成要素となるモノラジカルの変化によって錯体[Na2]+1-とは異なる分

子間交換相互作用が与えられ上記の理論の予言する高スピン状態(フェリ磁性的基

底状態)が得られる可能性がある 【18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)】

18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)を図 2の方法で合成した閉殻前駆体は1H NMR 13C NMR 元素分析を用いて同定したラジカル(3)の同定は元素分析溶液ESRから行った室温でのジクロロメタン溶液の ESRスペクトルを図 3に示す窒素 14N核の超微細結合定数は aN = 072 mTg値は g = 20056で典型的なニトロニルニトロキシドモノラジカルの値を示したまた常磁性磁化率pの温度依存性を図 4に示す室温でのpT値は 0372 emu K mol-1であり純度は 99であったpは Tmax = 32 Kで極大をとりBonner-Fischerモデルを仮定すると Tmaxと Jとの関係から分子間に 2JkB = -51 Kの反強磁性的な交換相互作用が働いていることになる分子のパッキングに基づく詳細な解析を行うために現在 X線結晶構造解析を行なっている

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

-

NNO

O

O O

OOO

Na

+-

+

O

O

O O

O

O

NNO

O+-

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

- K+

[Na2]+1- [K3]+1-

図 1 モデル錯体

bukka
4Pp129

0

001

002

003

004

005

006

0 50 100 150 200 250 300

p (実測)

(Bonner-Fischerモデル)

p

emu

mol

-1T K

図 4 モノラジカル(3)の磁化率

O O

O

O

O

O

Br O O

O

O

O

O

CHOt-BuLi DMF

THF

O O

O

O

O

ON

NO

ONHOH

NHOHbenzene

+-

NaIO4 H2O CH2Cl2

1)

2)

図 2 18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)の合成

326 327 328 329 330 331 332

B mT 図 3 モノラジカル(3)の ESR スペクトル(ジクロロメタン溶液室温)

【フェノキシドビラジカルの単純塩(K+1-)】 モデル錯体の構成要素の性質を明らかにするためにフェノキシドビラジカルの単

純塩(K+1-)の磁化率を測定したpT 値は温度の低下とともに単調に減少したsinglet-tripletモデル

)exp(312

BB

2B

2A

p TkETkgN

(1)

10 SESEE (2) にフィッティングさせて分子内交換相互作用E(3重項と 1重項の間のエネルギーギャップ)を見積もった結果EkB = -70 Kとなったこの結果は単純塩(K+1-)の凍結溶液 ESR禁制遷移の強度 IESRの温度変化から見積もったEkB -10 K[4]とほぼ対応

しており分子内の交換相互作用が反強磁性的なものであることが確かめられたな

おフェノキシドビラジカルのナトリウム塩(Na+1-)では凍結溶液 ESRの実験からEkB -27 13 Kであることがわかっている[3]ビラジカル分子内の交換相互作用

の大きさの違いが錯体形成後の分子集合系のスピン状態に影響を与えるものと思わ

れる 上記の構成分子を用いて[Na2]+1-と同様の方法で新奇なモデル錯体[K3]+1-を合

成した現在錯体の結晶構造解析ESRスペクトルと磁化率の測定を行なっている[Na2]+1-と[K3]+1-との磁性と構造の相違点を議論する予定である 【参考文献】 [1] D Shiomi K Sato and T Takui J Phys Chem B 105 2932 (2001) [2] M Fettouhi Mol Cryst Liq Cryst 356 365 (2001) [3] Y Kanzaki D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 22 1817(2003) [4] S Hase D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 20 1403(2001)

超分子化学アプローチによる有機フェリ

磁性体の構築と磁気的性質 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2) 早川健一 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 有機フェリ磁性体を構築するための大きな問題点として分晶化がある分晶化を避

け異なるスピン量子数を持つ有機ラジカル(たとえばモノラジカル(S = 12)と

ビラジカル(S = 1))を共結晶化させる方法として超分子化学アプローチがある

これは選択的な分子間引力(水素結合やイオン電荷によるクーロン力)によって異

種成分を連結する方法である(図 1)[1]現在までのところ水素結合やイオン電荷

によるビラジカルとモノラジカルの共結晶化の試みは一部報告例があるが[2]結晶

構造まで確定した成功例はない

N

NN

NN

O

O

N

N

O

O

X

+

_

X = COOH(2) OH(3)

(1)

NN

N

N

N

OO

Me

+

N NO O+ _

Y _

Y = COO- O-

(a)水素結合アプローチ (b)有機塩アプローチ(イオン電荷によるクー

ロン力)

図 1 ビラジカルとモノラジカルの共結晶化

本研究ではピリジンの 26-位にイミノニトロキシドを導入したビラジカル(1)と安

息香酸(2)もしくはフェノール(3)置換のニトロニルニトロキシドモノラジカルを水素

結合によって連結する方法を試みた(図 1a) ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)は対応するジアルデヒドから 3 段

階で合成した(図 2)

N CHOOHC NNN

NN

OHHO

HOOHMeOH

NNOHNNOH SeO2

MeOHNN

NN

N

OHHO PbO2

CH2Cl2NN

NN

N

OO

(1)

図 2 ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)の合成

bukka
4Pp130

ビラジカル 1の磁化率を図 3 に示す分子間の平均場θを取り入れた Singlet-Tripletモデル

)2exp(31

)(2

BB

2B

2A

p TkJTkgN

minus+times

minus=

θmicro

χ (1)

により分子内の交換相互作用は 2JkB = +14 K分子間相互作用はθ = -3 K であるこ

とがわかった分子内の交換相互作用が強

磁性的であることはPVC(ポリ塩化ビニ

ル)による固相希釈系の実験(図 3)から

確かめられたビラジカル(1)は超分子フ

ェリ磁性体の構成要素として用いることが

できることがわかった

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

diluted in PVC(JkB = 7K)

neat(JkB = 7K θ = -3K)

-------

____

obscalc

calcobs

図 3 ビラジカル(1)の磁化率 (χpT-T プロット)

ビラジカル(1)と安息香酸置換モノラジ

カル(2)との共結晶体(分子錯体 1-2)は

エタノール溶液からの再結晶により得られ

た元素分析から組成は 11 であること

がわかった磁化率の測定結果を図 4 に示

す室温(300 K)でのχpT の値は分子錯

体 1 モル(S = 12 スピン 3 モル)の高温極

限の予測値(113 emu K mol-1)を下回って

おり分子間の反強磁性相互作用がかなり

大きいことを示唆するまた20 K 付近で

χpT の減少が一旦鈍って停留値をとってい

るこれらの結果はビラジカル(1)の磁化

率(図 3)とモノラジカル(2)の磁化率[3]の単純な和では説明できない現在X 線結

晶構造解析を行なっている

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

図 4 分子錯体 1-2の磁化率

(χpT-T プロット)

フェノール置換モノラジカル(3)による

水素結合アプローチと有機塩アプローチ

による共結晶化を現在進めている [1] D Shiomi K Ito M Nishizawa S Hase K Sato T Takui Mol Cryst Liq Cryst 334 99(1999) [2] 伊瀬智章石田尚行野上隆第 76 春

季年会 4C538(1999) [3] K Inoue H Iwamura Chem Phys Lett 207 551(1993)

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 7: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

110-phenanthroline配位を有する

新 Mn4核錯体の構造と磁性

( 畿大理工) 井淳宏 田孝義前川雅彦宗像 惠

【序】  年Mn 多核錯体は Mn12 核錯体に代表される単一分子磁性や磁気トンネリング現象の観測などで注目されているMn4核錯体は以前から光合成系モデルとして注目されているが最 では単一分子磁性を示すものも報告されより核数の

多い多核 Mn 錯体の構築素子とも考えられる今回我々はMn12 核錯体と 110-phenanthroline(以下 phen)との反応により新 な Mn4 核錯体の合成及び構造 析に成

功したのでその磁性とあわせて報告する

【方法】 [Mn12O12(OAc)16(H2O)4] (100 mg 00535 mmol)を溶 したアセトニトリル溶

液に phen (424 mg 0214 mmol)を加えて3時間撹拌したこの溶液をエバポレーターで濃縮乾固し沈殿を再びアセトニトリルに溶 しこの操作を 2回繰り した

茶色の沈殿を最少量のアセトニトリルに溶かしガラス管に入れ 3 倍量のジエチルエーテルを上から層を形成するように加えて封入し 置した3日後 色レンガ

状結晶[Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2](1)が得られたAnal Calcd (found) for C36H34O14N4Mn4 C 4474 (4473) H 355 (358) N 580 (596) [scheme]

【結果】 単結晶 X線構造 析

 この結晶は a = 11027 Å b = 13226Å c = 14916 Å α = 72670deg β =67694degγ = 80293degの三斜晶系で空間群は

dagger

P1 であるこの錯体の中心分は 2つのMnIIIイオンが 2つのμ3-

O2-イオンで架橋されさらにそれぞれ

のμ3-O2-イオンにMnIIイオンが結合し

た[Mn4O2]6+から成っており両端の

MnIIには phenが配位し6つの酢酸基によって架橋された構造を形成している各Mnイオンの価数はMn-OあるいはMn-Nの結合 離から判断することが可能でMnII

イオン周りはほぼ等方的であるのに対してMnIIIイオン周りは四 錐型 5配位構造を有しており 方向に伸びた Jahn-Teller変形を こしているこれまでに報告さ

れている2つのμ3-O架橋を有するMn4核錯体のコア構造[Mn4(μ3-O)2]n+には平面

+ 4 phenAcetonitrile Ether

Air RT[Mn12O12(OAc) 16(H2O)4] 1

Mn(1)

Mn(3)

Mn(2)Mn(4)O(1)

O(2)

Fig 1 Structure of [Mn4O2(O2CCH3)6(C12 H8N2)2]

N(1)

N(2)

N(3)

N(4)

bukka
4Pp125

型及びバタフライ型がありMnの酸化数の違いによりMnII

2MnIII2 (n=6) MnIIMnIII

3 (n=7)MnIII

4 (n=8)が知られている1 はMnII2MnIII

2

でありこれまでに報告されている

[Mn4O2(O2CCH3)6(bipy)2]2CHCl3(2)1)とほぼ

同じ構造であった図2に 1 のパッキング図

を示す 接する分子間で両端のMnIIに配位

した phen間にπ-π相互作用があり最も接した ChellipC間の 離は 330 Åである図3には phenの重なりを示した 磁性の 析

 直流磁化率測定は1000 Gの磁場下で 2 - 280 Kの温度範囲でおこなった 料は結晶を粉末にし

た 料と沈殿 料についていずれも eicosane で固定したものを用いた沈殿 料のχMT 値は常温付で 102 cm3Kmol-1でありχMT 値は温度の低下と共に減少して2 Kで 39 cm3Kmol-1となるのに

対して結晶 料では 280 K の 120 cm3Kmol-1か

ら温度低下とともに減少し2 Kで 073 cm3Kmol-1

となった(図 5)沈殿 料のχMT 値の挙動は 2 と似していた

 ここで沈殿 料におけるスピン間相互作用とし

て図4の様に J および J13を考え(1)式の等方的なスピンハミルトニアンを用いゼロ磁場分裂 Dの影 が少ないと考えられる 30 K以上の 温でフィッティングを行ったところg = 169J = -195 KJ13 = -399 Kの時に良い一致が得られた(図 5) H=-2J(S1S2+S2S3+S3S4+S4S1)-2J13S1S3 (1)

しかしながらこれらのパラメータと 2 の文献値と

の比 を行うとゼロ磁場分裂を考慮した 析が必

要なことを示しているさらに磁化率の結果が結

晶と沈殿で異なることからpacking が影 してい

ることが考えられる2 つの 料の D を考慮した析とともにこれらの違いの原因について今後検

討する

(1) J B Vincent et al J Am Chem Soc 1989 1112086-2097

Fig 2 Packing structure of [Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2]

χM

T

cm3

K m

ol -1

N(1) N(2)

N(2) N(1)

Fig 3 Overlap of neighboring two phens

Mn1III

Mn3III

OOMn2II Mn4IIJ13

J J

J J

Fig 4 Diagram showing the definition of atom numbering and magnetic exchange parameters for [Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2]

14

12

10

8

6

4

2

0 300250200150100500T K

Fig 5 c MT-T plot of preciptate sample () crystalline sample () and fitting curve(-) for preciptate sample above 30 K

PROXYL ラジカルを有する TTP ドナーの

カチオンラジカル塩の構造と物性

(分子研 1JST CREST2東大院理 3)藤原秀紀 12崔 亨波 12李 夏珍 1

小林速男 12藤原絵美子 3小林昭子 3

【序】我々はこれまで伝導性と磁性の両方を併せ持つ磁性伝導体の開発に注目し

安定有機ラジカルを結合させた各種π拡張型ドナーを合成しその構造と物性につ

いて報告してきたその中で最 PROXYL ラジカルを有する TTP 誘導体を幾つ

か合成しそれらのカチオンラジカル塩の構造と物性について検討したところ伝

導 子と局在スピンが共存しながら い伝導性を有することが明らかとなった1 今

回PROXYL ラジカルを有する TTP ドナー

(1)の 11の組成を有するFeCl4-塩とGaCl4-

塩の構造と伝導性磁性について検討したの

で報告する

【結果と考察】FeCl4-塩と GaCl4-塩の作

成はクロロベンゼンエタノール(82

vv)中定 圧 気分 により作成した

条件によっては多形が得られ30 V

では組成比が 11 の 色板状晶が15 V で

は組成比が 21 の茶 色板状微結晶が得ら

れた21 塩の方は既に文献 1 で報告済み

のようにFeCl4-塩において室温での 気

伝導度が加圧成型 料ながら 5 S cm-1 程

度と良好で金属に い抵抗の温度依存性

を示し伝導 子と局在スピンが同一分子

内に共存している事を見出しているしか

しながら結晶のサイズが小さいため21

塩の構造 析には至っていない11 塩の

構造 析は FeCl4-塩についてはRigaku AFC-7 MercuryGaCl4-塩についてはX線

集光ミラーを備えた Rigaku AFC-8 Mercury で行った表に結晶学データをまとめ

て示すFeCl4-塩と GaCl4-塩は同形であるので以下FeCl4-塩の構造について

述べる図1のようにユニットセル中に結晶学的に独立な二種 のドナー分子 AB

と二種 のアニオンが存在しているドナー分子 AB の TTP 格はほぼ平面である

がPROXYL ラジカル 位は分子平面に対してほぼ垂直に立っているドナーAB

共に立体障害の大きなラジカル 位を避け合うように head-to-tail 型にダイマーを

形成しているダイマー同士は分子 方向にほぼ TTF 一つ分シフトしながら一

S

SS

S

NOS

S

S

S

S

S

1

Anion FeCl4- GaCl4-

Crystal system Triclinic TriclinicSpace group P-1 P-1

a(Aring) 9755(4) 9787(5)b(Aring) 10262(4) 10265(5)c(Aring) 32275(13) 3233(2)a(deg ) 91661(11) 9157(2)b(deg ) 94715(12) 9469(2)g (deg ) 90185(10) 9030(2)

V (Aring3) 32185(22) 32355(28)Z 2 2R 0064 0061Rw 0047 0063

bukka
4Pp126
bukka

次元のスタックを形成しているそしてアニオンはドナーが 方向にずれて

空いた位置に PROXYL ラジカルと末端の 13-ジチオール環に挟まれるようにして存

在しているそれぞれの一次元スタックは b に沿って配列しドナーAB がそれ

ぞれ別々のドナー層を形成しているダイマー内には短い S-S 接触が数多く見られ

るがダイマー間には短い接触はなくまたアニオンがドナー層内に入り込んだ

ような構造になっているため分

子の side-by-side 方向の相互作用

は弱くなっている結果として

ダイマーが孤立している傾向が強

い構造となっている一方ラジ

カル 位は TTP 格が形成する伝

導層間の空間に層を形成するよう

に位置している

FeCl4-塩は 11 塩である事に加え

二量化の強い一次元スタック構造

を有している事を考えると予想以

上の良導体で単結晶 料を用い

4端子法で測定を行ったところ

室温での 気伝導度は 1 x 10-3 S

cm-1 であり活性化エネルギー

が 013 eV の半導体であった一方FeCl4-塩の磁化率を SQUID によって 1 Tesla

で測定した図2にcT-T プロットを示す室温から 50 K程度までcT 値はほぼ一定

であるが更に温度を下げるとcT 値は減少し60 K 以下のデータを用いた Curie-

Weiss Fitting によるとCurie 定数が 483 emu K

mol-1Weiss 温度が-065 K の弱い反強磁性的な温

度依存性を示したCurie 定数の値は High-spin の鉄

(S = 52 4375 emu K mol-1)と PROXYL ラジカル(S

= 12 0375 emu K mol-1)の和(475 emu K mol-1)

に い値を示したカチオンラジカルモーメントに関

する情報は今後 磁性アニオンを用いた GaCl4-

塩の磁気的性 を測定することにより検討を

行う予定である

【文献】(1) H Fujiwara H-J Lee H Kobayashi EFujiwara A Kobayashi Chem Lett 32 482 (2003)

図 1 FeCl4-塩の結晶構造

図 2 FeCl4-塩のcT-T プロット

単一成分分子から成る TTF 型ジチオラトコバルト

錯体の合成構造と物性

(東大院理 1名大院工 2分子研 3科技団 CREST4) 藤原絵美子 1小林昭子 1

藤城雄一 2西堀英治 2 田昌樹 2坂田誠 2藤原秀紀 34小林速男 34

【序】通常単一成分から成る分子性結晶は構成分子の分子軌道が分子間で重な

ることによって出来るバンドが 子によって完全に満たされているか完全に空で

あるかのいずれかである従ってこのような分子性結晶は構成原子が結晶を形

成する際に自発的に金属バンドの形成と自由 子の発生をもたらす金属結晶とは対

照的で絶縁体の典型であると考えられていた 年極低温まで金属状態が安定

な単一成分 TTF 型ジチオラト金属錯体 [Ni(tmdt)2] が開発されde Haas-van

Alphen 効果の観測により Fermi 面を持つ金属であることが証明されたまた中心

金属に磁性金属を導入した[Cu(dmdt)2]では 80の Cu2+の 12 spin が局在しながら

い伝導性を示す常磁性体であることが判る等単一成分分子から成る金属錯体に

おいて興味深い物性が見出されている今回我々はTTF 型ジチオラト金属錯体

に基づく新 な単一成分分子伝導体の開発を目指し中心金属にコバルト原子を導

入した TTF 型ジチオラト金属錯体[Co(dt)2]2を合成しその構造と物性を調べた

【実験および考察】前駆体であるコバルト錯体(Me4N)2[Co(dt)2]はシアノエチルチ

オ基が置換した TTF を THF 中で 25 wt Me4NmiddotOHMeOH 溶液を用いて加水分した後CoCl2middot6H2OMeOH 溶液と反応させることにより紫色を帯びた灰色粉末として得られたさらにこの錯体を nBu4NmiddotClO4を含む PhCN 溶液中で定 流

法(05 mA)を用いて 酸化することにより[Co(dt)2]2 の微小な 色針状結晶が得

られたSPring-8 の放射光ビームライン BL02B2 を用いて X線粉末回折実験を行い

GA (genetic algorithm)と Rietveld 析により得られた錯体の構造を決定した

Crystal data for [Co(dt)2]2 triclinic P`1 a = 117185 (3) b = 109513 (2) c = 77336(1) Aring a = 79737( 2) b = 96474(2) g = 113973(2)deg V = 89145(7) Aring3 Z = 1 Rwp =0053 RI = 0082 この錯体は二個の Co(dt)2ユニットが 312 Aringの面間 離で分子

および短 方向にそれぞれ 130 そして 165 Aring ずつスライドして face-to-faceで重なり各々のユニットのコバルトと硫 原子間でユニット間配位結合(Co-S =

2425 Aring)を持つ特徴的な構造を示す(Fig 1)分子内の二個の Co(dt)2 位はいす形

に大きく折れ曲がりCo1-S1-S2 面と Co1-S7-S8 面との二面 は 121degであった

bukka
4Pp127

Co(dt)2 ユニット間には幾つかの短い S S 離(lt 37 Aring)が見られた結晶中では各々の[Co(dt)2]2 分子が 347 Aring の面間 離で分子 および短 方向にそれぞ

れ 092 そして 173 Aringずつスライドしながら face-to-face で[0 0 1]方向に積層した構造を持つ(Fig 2a)積層方向には短い分子間 S S 離が一種 だけ見られた

さらに[Co(dt)2]2分子は[1 0 0][1 1 0][2 1 0]方向に位置する六個の分子によっ

て分子短 と 方向を囲まれ[1 0 0][1 1 0]方向に 接する分子との間には数

多くの短い S S 離が確認された(Fig 2b)拡張 Huumlckel 法を用いて重なり積分を算したその結果短い S S 離が数多く存在する[1 0 0][1 1 0]方向の分子

との間で大きな重なり積分値が与えられこの錯体はスタック方向よりもむしろ分

子横方向に相互作用が強いことが判った四端子法を用いて[Co(dt)2]2 の加圧成形

料の 気抵抗を室温から 055 K までの温度領域で調べた(Fig 3)加圧成形 料の測

定であるにも拘わらず[Co(dt)2]2は 19 Smiddotcm-1と比 的大きな室温伝導度を示した

抵抗の温度依存性は冷却に伴って室温から緩やかに上昇するがこの錯体は低温

においても 伝導性[s(055 K)srt ordf 110]を示していることからこの錯体は本

的には低温 まで金属である可能性が示唆

される5 kOe の磁場下[Co(dt)2]2 の多結

晶 料の 磁化率を 19-300 K の温度領域

で調べた[Co(dt)2]2の室温 磁化率は 35 x

10-4 emumiddotmol-1であった 磁化率の温度依

存性は低温 において僅かに上昇するが50-300 K の

温度領域においてほぼ一定の値を示したユニット間

配位結合が存在した特徴的な分子構造を持つためこ

の錯体の磁性に対するコバルトスピンの寄与は殆ど無

いかもしくは 常に小さいことが推測される

21 世紀 COE プログラム「フロンティア基礎化学」研究拠点

形成事業のもとに研究を行った

新規ドナー チオピラニリデン-エチレンジオキシ ジチオール分子の合成とその錯体作成

(京大院理) 添田雅也萩原潤矢持秀起斎藤軍治 【序】BEDO-TTF(BO)分子は 5 員環硫黄原子を用いた分子短軸方向への分子間硫黄hellip硫

黄接触と末端エチレンジオキシ基を用いた積層方向への弱い水素結合形成によって錯体

中で自己凝集構造を構築する能力を持っているこのためBO 錯体は金属状態が低温まで

安定であるしかし錯体中で BO 分子は分子長軸方向における相互作用をほとんど示さな

いそこで対成分との相互作用の向上を目指してBO 分子の部分構造をもちかつチオ

ピラン環をもつ新規ドナーチオピラニリデン-エチレンジオキシジチオール(TP-EDOT)分子を合成した今回この TP-EDOT の合成精製およびその PF6塩の構造と物性につ

いて検討したので報告する 【実験と結果】エチレンジオキシ-13-ジチオール-2-チオン(1)とテトラヒドロ-4H-チオピラン

-4-オン(2)をP(OMe)3 存在下ベンゼン中でクロスカップリングさせ49 の収率で黄白色

針状晶のテトラヒドロ TP-EDOT(3)が得られた3 をキシレン中 DDQ を用いて脱水素し

64 の収率で黄白色粉末の TP-EDOT(分解点 1465 ~ 1493 )が得られた

O

O S

SS

BenzeneO S+

S

SS

O

O P(OMe)3

reflux6h O

O S

SS

DDQ

Xylene

1 2 3 TP-EDOT 3 は比較的安定でありまたこの反応条件下で2 同士のホモカップリング反応が起きな

いことから3 は容易に単離できた一方TP-EDOT はその合成条件下同時に分解反応を

起こすので反応は出来るだけ短時間で行う必要があったTP-EDOT はアセトンクロロ

ホルム酸に対しては不安定でこれらの溶媒中では数分以内に分解した一方エタノ

ールメタノールベンゼンテトラヒドロフランベンゾニトリルアセトニトリル中で

は加熱条件下でも安定であったまたTP-EDOT は一部分解物を含む状態となってもシ

リカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製しなおすことが可能であった TP-EDOT と関連物質の酸化還元電位を表 1 にまとめたTP-EDOT の酸化還元電位の大

きさは TTF や BO に比べて小さくTMTTF と同程度であった TP-EDOT の錯体を( Bu4N )X ( X = PF6SbF6BF4ClO4 )の存在下定

電圧電解法により作成したPF6 塩につ

いて緑色と紫色の 2 種類の生成物が得

られたあまり大きくない電流値(約 05 microΑ)で 1 ヶ月以内に電解を停止すること

により紫色の針状結晶を選択的に得る

表 1 サイクリックボルタメトリー法による酸化還元

電位( vs SCE ) ドナー E121 V E122 V ∆ E V TP-EDOT 027 060 033 TMTTF 029 065 036 TTF 037 076 039 BEDO-TTF 043 069 026 ∆E = E121 - E122

ことができたこれ以上長い期間ある

bukka
4Pp128

いは高い電流値で電解を行うと緑色の結晶が紫色の結晶と混ざって生成することがわか

った 単結晶構造解析によって PF6 塩の紫色結晶の結晶構造を決定した(Crystal Data monoclinic C2m Z = 8 a = 16024(3) b = 23029(3) c = 7005(3) Aring β = 10390(2) deg V = 2509(1) Aring3)組成はドナー アニオン= 2 1 であった拡張ヒュッケル法によりドナー分

子同士の重なり積分を算出すると分子間相互作用は 3 次元的であったしかしどの方向

についても重なり積分の絶対値は小さかったまたドナー分子のチオピラン環にある硫黄

原子同士の分子長軸方向への相互作用も見られた(図 1 の s8 に対応する分子間での ShellipS 接

触)これらの分子間相互作用の結果計算上は 3 次元的なフェルミ面が得られた(図 2) この錯体の分子積層方

向(c 軸方向)の電気伝導

度は室温で 10-4 S cm-1

程度であり8 ~ 50 degC の

範囲で半導体的挙動が

観測された 【考察】PF6 塩はバンド計

算からは3次元的な複雑

なフェルミ面を持つし

かし積層方向の伝導度

は金属的な挙動を示さな

かったバンド幅に比べ

オンサイトクーロン反発

(U)が大きいことがそ

の原因であると考えられ

る 本 錯 体 中 で の

TP-EDOT 分子間の重な

り積分はBO 錯体中での

ドナー分子間重なり積分

の 4 分の 1 程度の大きさ

であるまたU の目安

である∆E はTP-EDOT の方が BO より

007V 大きい

a

bo

s8

s6

s5

s1

s1s1

s1s1

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6s5

s5s5

s5s5

s5

s5s5

s5

s8

s8s8

図 1 PF6塩の c 軸投影図

影をつけたドナー分子は z = 0 の平面上にあり影をつけてないドナ

ー分子は z = 05 の平面上にある重なり積分の値はそれぞれs1 =

403times10-3s5 = -192times10-3s6 = -345times10-3s8 = 396times10-3であ

った

今後はPF6塩については磁化率の測定

等を通じて電子がどのように局在化してい

るかを検討していく同時に積層方向以外

の方向における伝導度測定も試みるまた

他のカチオンラジカル塩の単結晶作成とそ

れらの構造と物性について調べていく

図 2 PF6塩のフェルミ面

クラウンエーテルを用いた超分子化学的結晶設計に基

づくヘテロスピン集合系の磁性 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2)

神崎祐貴 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 【序論】現在まで純粋な有機分子からなるフェリ磁性体の構築は成功しておらずな

お分子磁性研究の長年の課題とされている我々は以前理論的考察から基底 1重項(S = 0)ビラジカルと 2重項(S = 12)ラジカルとの反強磁性的交互 1次元鎖が広義のフェリ磁性的な基底状態を取り得ること(一般化フェリ磁性)を提案した[1]

また1次元鎖全体の基底状態はビラジカル分子内と分子間の相互作用の大小関係を圧力等の外場によって変化させるとフェリ磁性的高スピン状態と非磁性(反磁性)

状態との間で相互変換することも理論計算から予想されている[1] この理論計算の結果を実験的に検証するために図 1に示したモデル分子錯体を合成した結晶設計にはクラウンエーテルが選択的にアルカリ金属を捕獲する錯形成

力を利用した超分子結晶工学アプローチを用いたこれまでの研究でフェノキシド

ビラジカル(1-)と 15-crown-5-ether置換のモノラジカル(2) [2]との錯体[Na2]+1-(図 1)が理論を一部実証する非磁性基底状態を示すことを磁化率の測定より明らかにした[3]

本研究では新たに新奇物質である 18-crown-6-ether置換のモノラジカル(3)を合成し新しいモデル錯体としてフェノキシドビラジカル(1-)との錯体[K3]+1-(図 1)を合成した錯体の構成要素となるモノラジカルの変化によって錯体[Na2]+1-とは異なる分

子間交換相互作用が与えられ上記の理論の予言する高スピン状態(フェリ磁性的基

底状態)が得られる可能性がある 【18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)】

18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)を図 2の方法で合成した閉殻前駆体は1H NMR 13C NMR 元素分析を用いて同定したラジカル(3)の同定は元素分析溶液ESRから行った室温でのジクロロメタン溶液の ESRスペクトルを図 3に示す窒素 14N核の超微細結合定数は aN = 072 mTg値は g = 20056で典型的なニトロニルニトロキシドモノラジカルの値を示したまた常磁性磁化率pの温度依存性を図 4に示す室温でのpT値は 0372 emu K mol-1であり純度は 99であったpは Tmax = 32 Kで極大をとりBonner-Fischerモデルを仮定すると Tmaxと Jとの関係から分子間に 2JkB = -51 Kの反強磁性的な交換相互作用が働いていることになる分子のパッキングに基づく詳細な解析を行うために現在 X線結晶構造解析を行なっている

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

-

NNO

O

O O

OOO

Na

+-

+

O

O

O O

O

O

NNO

O+-

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

- K+

[Na2]+1- [K3]+1-

図 1 モデル錯体

bukka
4Pp129

0

001

002

003

004

005

006

0 50 100 150 200 250 300

p (実測)

(Bonner-Fischerモデル)

p

emu

mol

-1T K

図 4 モノラジカル(3)の磁化率

O O

O

O

O

O

Br O O

O

O

O

O

CHOt-BuLi DMF

THF

O O

O

O

O

ON

NO

ONHOH

NHOHbenzene

+-

NaIO4 H2O CH2Cl2

1)

2)

図 2 18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)の合成

326 327 328 329 330 331 332

B mT 図 3 モノラジカル(3)の ESR スペクトル(ジクロロメタン溶液室温)

【フェノキシドビラジカルの単純塩(K+1-)】 モデル錯体の構成要素の性質を明らかにするためにフェノキシドビラジカルの単

純塩(K+1-)の磁化率を測定したpT 値は温度の低下とともに単調に減少したsinglet-tripletモデル

)exp(312

BB

2B

2A

p TkETkgN

(1)

10 SESEE (2) にフィッティングさせて分子内交換相互作用E(3重項と 1重項の間のエネルギーギャップ)を見積もった結果EkB = -70 Kとなったこの結果は単純塩(K+1-)の凍結溶液 ESR禁制遷移の強度 IESRの温度変化から見積もったEkB -10 K[4]とほぼ対応

しており分子内の交換相互作用が反強磁性的なものであることが確かめられたな

おフェノキシドビラジカルのナトリウム塩(Na+1-)では凍結溶液 ESRの実験からEkB -27 13 Kであることがわかっている[3]ビラジカル分子内の交換相互作用

の大きさの違いが錯体形成後の分子集合系のスピン状態に影響を与えるものと思わ

れる 上記の構成分子を用いて[Na2]+1-と同様の方法で新奇なモデル錯体[K3]+1-を合

成した現在錯体の結晶構造解析ESRスペクトルと磁化率の測定を行なっている[Na2]+1-と[K3]+1-との磁性と構造の相違点を議論する予定である 【参考文献】 [1] D Shiomi K Sato and T Takui J Phys Chem B 105 2932 (2001) [2] M Fettouhi Mol Cryst Liq Cryst 356 365 (2001) [3] Y Kanzaki D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 22 1817(2003) [4] S Hase D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 20 1403(2001)

超分子化学アプローチによる有機フェリ

磁性体の構築と磁気的性質 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2) 早川健一 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 有機フェリ磁性体を構築するための大きな問題点として分晶化がある分晶化を避

け異なるスピン量子数を持つ有機ラジカル(たとえばモノラジカル(S = 12)と

ビラジカル(S = 1))を共結晶化させる方法として超分子化学アプローチがある

これは選択的な分子間引力(水素結合やイオン電荷によるクーロン力)によって異

種成分を連結する方法である(図 1)[1]現在までのところ水素結合やイオン電荷

によるビラジカルとモノラジカルの共結晶化の試みは一部報告例があるが[2]結晶

構造まで確定した成功例はない

N

NN

NN

O

O

N

N

O

O

X

+

_

X = COOH(2) OH(3)

(1)

NN

N

N

N

OO

Me

+

N NO O+ _

Y _

Y = COO- O-

(a)水素結合アプローチ (b)有機塩アプローチ(イオン電荷によるクー

ロン力)

図 1 ビラジカルとモノラジカルの共結晶化

本研究ではピリジンの 26-位にイミノニトロキシドを導入したビラジカル(1)と安

息香酸(2)もしくはフェノール(3)置換のニトロニルニトロキシドモノラジカルを水素

結合によって連結する方法を試みた(図 1a) ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)は対応するジアルデヒドから 3 段

階で合成した(図 2)

N CHOOHC NNN

NN

OHHO

HOOHMeOH

NNOHNNOH SeO2

MeOHNN

NN

N

OHHO PbO2

CH2Cl2NN

NN

N

OO

(1)

図 2 ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)の合成

bukka
4Pp130

ビラジカル 1の磁化率を図 3 に示す分子間の平均場θを取り入れた Singlet-Tripletモデル

)2exp(31

)(2

BB

2B

2A

p TkJTkgN

minus+times

minus=

θmicro

χ (1)

により分子内の交換相互作用は 2JkB = +14 K分子間相互作用はθ = -3 K であるこ

とがわかった分子内の交換相互作用が強

磁性的であることはPVC(ポリ塩化ビニ

ル)による固相希釈系の実験(図 3)から

確かめられたビラジカル(1)は超分子フ

ェリ磁性体の構成要素として用いることが

できることがわかった

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

diluted in PVC(JkB = 7K)

neat(JkB = 7K θ = -3K)

-------

____

obscalc

calcobs

図 3 ビラジカル(1)の磁化率 (χpT-T プロット)

ビラジカル(1)と安息香酸置換モノラジ

カル(2)との共結晶体(分子錯体 1-2)は

エタノール溶液からの再結晶により得られ

た元素分析から組成は 11 であること

がわかった磁化率の測定結果を図 4 に示

す室温(300 K)でのχpT の値は分子錯

体 1 モル(S = 12 スピン 3 モル)の高温極

限の予測値(113 emu K mol-1)を下回って

おり分子間の反強磁性相互作用がかなり

大きいことを示唆するまた20 K 付近で

χpT の減少が一旦鈍って停留値をとってい

るこれらの結果はビラジカル(1)の磁化

率(図 3)とモノラジカル(2)の磁化率[3]の単純な和では説明できない現在X 線結

晶構造解析を行なっている

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

図 4 分子錯体 1-2の磁化率

(χpT-T プロット)

フェノール置換モノラジカル(3)による

水素結合アプローチと有機塩アプローチ

による共結晶化を現在進めている [1] D Shiomi K Ito M Nishizawa S Hase K Sato T Takui Mol Cryst Liq Cryst 334 99(1999) [2] 伊瀬智章石田尚行野上隆第 76 春

季年会 4C538(1999) [3] K Inoue H Iwamura Chem Phys Lett 207 551(1993)

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 8: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

型及びバタフライ型がありMnの酸化数の違いによりMnII

2MnIII2 (n=6) MnIIMnIII

3 (n=7)MnIII

4 (n=8)が知られている1 はMnII2MnIII

2

でありこれまでに報告されている

[Mn4O2(O2CCH3)6(bipy)2]2CHCl3(2)1)とほぼ

同じ構造であった図2に 1 のパッキング図

を示す 接する分子間で両端のMnIIに配位

した phen間にπ-π相互作用があり最も接した ChellipC間の 離は 330 Åである図3には phenの重なりを示した 磁性の 析

 直流磁化率測定は1000 Gの磁場下で 2 - 280 Kの温度範囲でおこなった 料は結晶を粉末にし

た 料と沈殿 料についていずれも eicosane で固定したものを用いた沈殿 料のχMT 値は常温付で 102 cm3Kmol-1でありχMT 値は温度の低下と共に減少して2 Kで 39 cm3Kmol-1となるのに

対して結晶 料では 280 K の 120 cm3Kmol-1か

ら温度低下とともに減少し2 Kで 073 cm3Kmol-1

となった(図 5)沈殿 料のχMT 値の挙動は 2 と似していた

 ここで沈殿 料におけるスピン間相互作用とし

て図4の様に J および J13を考え(1)式の等方的なスピンハミルトニアンを用いゼロ磁場分裂 Dの影 が少ないと考えられる 30 K以上の 温でフィッティングを行ったところg = 169J = -195 KJ13 = -399 Kの時に良い一致が得られた(図 5) H=-2J(S1S2+S2S3+S3S4+S4S1)-2J13S1S3 (1)

しかしながらこれらのパラメータと 2 の文献値と

の比 を行うとゼロ磁場分裂を考慮した 析が必

要なことを示しているさらに磁化率の結果が結

晶と沈殿で異なることからpacking が影 してい

ることが考えられる2 つの 料の D を考慮した析とともにこれらの違いの原因について今後検

討する

(1) J B Vincent et al J Am Chem Soc 1989 1112086-2097

Fig 2 Packing structure of [Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2]

χM

T

cm3

K m

ol -1

N(1) N(2)

N(2) N(1)

Fig 3 Overlap of neighboring two phens

Mn1III

Mn3III

OOMn2II Mn4IIJ13

J J

J J

Fig 4 Diagram showing the definition of atom numbering and magnetic exchange parameters for [Mn4O2(O2CCH3)6(C12H8N2)2]

14

12

10

8

6

4

2

0 300250200150100500T K

Fig 5 c MT-T plot of preciptate sample () crystalline sample () and fitting curve(-) for preciptate sample above 30 K

PROXYL ラジカルを有する TTP ドナーの

カチオンラジカル塩の構造と物性

(分子研 1JST CREST2東大院理 3)藤原秀紀 12崔 亨波 12李 夏珍 1

小林速男 12藤原絵美子 3小林昭子 3

【序】我々はこれまで伝導性と磁性の両方を併せ持つ磁性伝導体の開発に注目し

安定有機ラジカルを結合させた各種π拡張型ドナーを合成しその構造と物性につ

いて報告してきたその中で最 PROXYL ラジカルを有する TTP 誘導体を幾つ

か合成しそれらのカチオンラジカル塩の構造と物性について検討したところ伝

導 子と局在スピンが共存しながら い伝導性を有することが明らかとなった1 今

回PROXYL ラジカルを有する TTP ドナー

(1)の 11の組成を有するFeCl4-塩とGaCl4-

塩の構造と伝導性磁性について検討したの

で報告する

【結果と考察】FeCl4-塩と GaCl4-塩の作

成はクロロベンゼンエタノール(82

vv)中定 圧 気分 により作成した

条件によっては多形が得られ30 V

では組成比が 11 の 色板状晶が15 V で

は組成比が 21 の茶 色板状微結晶が得ら

れた21 塩の方は既に文献 1 で報告済み

のようにFeCl4-塩において室温での 気

伝導度が加圧成型 料ながら 5 S cm-1 程

度と良好で金属に い抵抗の温度依存性

を示し伝導 子と局在スピンが同一分子

内に共存している事を見出しているしか

しながら結晶のサイズが小さいため21

塩の構造 析には至っていない11 塩の

構造 析は FeCl4-塩についてはRigaku AFC-7 MercuryGaCl4-塩についてはX線

集光ミラーを備えた Rigaku AFC-8 Mercury で行った表に結晶学データをまとめ

て示すFeCl4-塩と GaCl4-塩は同形であるので以下FeCl4-塩の構造について

述べる図1のようにユニットセル中に結晶学的に独立な二種 のドナー分子 AB

と二種 のアニオンが存在しているドナー分子 AB の TTP 格はほぼ平面である

がPROXYL ラジカル 位は分子平面に対してほぼ垂直に立っているドナーAB

共に立体障害の大きなラジカル 位を避け合うように head-to-tail 型にダイマーを

形成しているダイマー同士は分子 方向にほぼ TTF 一つ分シフトしながら一

S

SS

S

NOS

S

S

S

S

S

1

Anion FeCl4- GaCl4-

Crystal system Triclinic TriclinicSpace group P-1 P-1

a(Aring) 9755(4) 9787(5)b(Aring) 10262(4) 10265(5)c(Aring) 32275(13) 3233(2)a(deg ) 91661(11) 9157(2)b(deg ) 94715(12) 9469(2)g (deg ) 90185(10) 9030(2)

V (Aring3) 32185(22) 32355(28)Z 2 2R 0064 0061Rw 0047 0063

bukka
4Pp126
bukka

次元のスタックを形成しているそしてアニオンはドナーが 方向にずれて

空いた位置に PROXYL ラジカルと末端の 13-ジチオール環に挟まれるようにして存

在しているそれぞれの一次元スタックは b に沿って配列しドナーAB がそれ

ぞれ別々のドナー層を形成しているダイマー内には短い S-S 接触が数多く見られ

るがダイマー間には短い接触はなくまたアニオンがドナー層内に入り込んだ

ような構造になっているため分

子の side-by-side 方向の相互作用

は弱くなっている結果として

ダイマーが孤立している傾向が強

い構造となっている一方ラジ

カル 位は TTP 格が形成する伝

導層間の空間に層を形成するよう

に位置している

FeCl4-塩は 11 塩である事に加え

二量化の強い一次元スタック構造

を有している事を考えると予想以

上の良導体で単結晶 料を用い

4端子法で測定を行ったところ

室温での 気伝導度は 1 x 10-3 S

cm-1 であり活性化エネルギー

が 013 eV の半導体であった一方FeCl4-塩の磁化率を SQUID によって 1 Tesla

で測定した図2にcT-T プロットを示す室温から 50 K程度までcT 値はほぼ一定

であるが更に温度を下げるとcT 値は減少し60 K 以下のデータを用いた Curie-

Weiss Fitting によるとCurie 定数が 483 emu K

mol-1Weiss 温度が-065 K の弱い反強磁性的な温

度依存性を示したCurie 定数の値は High-spin の鉄

(S = 52 4375 emu K mol-1)と PROXYL ラジカル(S

= 12 0375 emu K mol-1)の和(475 emu K mol-1)

に い値を示したカチオンラジカルモーメントに関

する情報は今後 磁性アニオンを用いた GaCl4-

塩の磁気的性 を測定することにより検討を

行う予定である

【文献】(1) H Fujiwara H-J Lee H Kobayashi EFujiwara A Kobayashi Chem Lett 32 482 (2003)

図 1 FeCl4-塩の結晶構造

図 2 FeCl4-塩のcT-T プロット

単一成分分子から成る TTF 型ジチオラトコバルト

錯体の合成構造と物性

(東大院理 1名大院工 2分子研 3科技団 CREST4) 藤原絵美子 1小林昭子 1

藤城雄一 2西堀英治 2 田昌樹 2坂田誠 2藤原秀紀 34小林速男 34

【序】通常単一成分から成る分子性結晶は構成分子の分子軌道が分子間で重な

ることによって出来るバンドが 子によって完全に満たされているか完全に空で

あるかのいずれかである従ってこのような分子性結晶は構成原子が結晶を形

成する際に自発的に金属バンドの形成と自由 子の発生をもたらす金属結晶とは対

照的で絶縁体の典型であると考えられていた 年極低温まで金属状態が安定

な単一成分 TTF 型ジチオラト金属錯体 [Ni(tmdt)2] が開発されde Haas-van

Alphen 効果の観測により Fermi 面を持つ金属であることが証明されたまた中心

金属に磁性金属を導入した[Cu(dmdt)2]では 80の Cu2+の 12 spin が局在しながら

い伝導性を示す常磁性体であることが判る等単一成分分子から成る金属錯体に

おいて興味深い物性が見出されている今回我々はTTF 型ジチオラト金属錯体

に基づく新 な単一成分分子伝導体の開発を目指し中心金属にコバルト原子を導

入した TTF 型ジチオラト金属錯体[Co(dt)2]2を合成しその構造と物性を調べた

【実験および考察】前駆体であるコバルト錯体(Me4N)2[Co(dt)2]はシアノエチルチ

オ基が置換した TTF を THF 中で 25 wt Me4NmiddotOHMeOH 溶液を用いて加水分した後CoCl2middot6H2OMeOH 溶液と反応させることにより紫色を帯びた灰色粉末として得られたさらにこの錯体を nBu4NmiddotClO4を含む PhCN 溶液中で定 流

法(05 mA)を用いて 酸化することにより[Co(dt)2]2 の微小な 色針状結晶が得

られたSPring-8 の放射光ビームライン BL02B2 を用いて X線粉末回折実験を行い

GA (genetic algorithm)と Rietveld 析により得られた錯体の構造を決定した

Crystal data for [Co(dt)2]2 triclinic P`1 a = 117185 (3) b = 109513 (2) c = 77336(1) Aring a = 79737( 2) b = 96474(2) g = 113973(2)deg V = 89145(7) Aring3 Z = 1 Rwp =0053 RI = 0082 この錯体は二個の Co(dt)2ユニットが 312 Aringの面間 離で分子

および短 方向にそれぞれ 130 そして 165 Aring ずつスライドして face-to-faceで重なり各々のユニットのコバルトと硫 原子間でユニット間配位結合(Co-S =

2425 Aring)を持つ特徴的な構造を示す(Fig 1)分子内の二個の Co(dt)2 位はいす形

に大きく折れ曲がりCo1-S1-S2 面と Co1-S7-S8 面との二面 は 121degであった

bukka
4Pp127

Co(dt)2 ユニット間には幾つかの短い S S 離(lt 37 Aring)が見られた結晶中では各々の[Co(dt)2]2 分子が 347 Aring の面間 離で分子 および短 方向にそれぞ

れ 092 そして 173 Aringずつスライドしながら face-to-face で[0 0 1]方向に積層した構造を持つ(Fig 2a)積層方向には短い分子間 S S 離が一種 だけ見られた

さらに[Co(dt)2]2分子は[1 0 0][1 1 0][2 1 0]方向に位置する六個の分子によっ

て分子短 と 方向を囲まれ[1 0 0][1 1 0]方向に 接する分子との間には数

多くの短い S S 離が確認された(Fig 2b)拡張 Huumlckel 法を用いて重なり積分を算したその結果短い S S 離が数多く存在する[1 0 0][1 1 0]方向の分子

との間で大きな重なり積分値が与えられこの錯体はスタック方向よりもむしろ分

子横方向に相互作用が強いことが判った四端子法を用いて[Co(dt)2]2 の加圧成形

料の 気抵抗を室温から 055 K までの温度領域で調べた(Fig 3)加圧成形 料の測

定であるにも拘わらず[Co(dt)2]2は 19 Smiddotcm-1と比 的大きな室温伝導度を示した

抵抗の温度依存性は冷却に伴って室温から緩やかに上昇するがこの錯体は低温

においても 伝導性[s(055 K)srt ordf 110]を示していることからこの錯体は本

的には低温 まで金属である可能性が示唆

される5 kOe の磁場下[Co(dt)2]2 の多結

晶 料の 磁化率を 19-300 K の温度領域

で調べた[Co(dt)2]2の室温 磁化率は 35 x

10-4 emumiddotmol-1であった 磁化率の温度依

存性は低温 において僅かに上昇するが50-300 K の

温度領域においてほぼ一定の値を示したユニット間

配位結合が存在した特徴的な分子構造を持つためこ

の錯体の磁性に対するコバルトスピンの寄与は殆ど無

いかもしくは 常に小さいことが推測される

21 世紀 COE プログラム「フロンティア基礎化学」研究拠点

形成事業のもとに研究を行った

新規ドナー チオピラニリデン-エチレンジオキシ ジチオール分子の合成とその錯体作成

(京大院理) 添田雅也萩原潤矢持秀起斎藤軍治 【序】BEDO-TTF(BO)分子は 5 員環硫黄原子を用いた分子短軸方向への分子間硫黄hellip硫

黄接触と末端エチレンジオキシ基を用いた積層方向への弱い水素結合形成によって錯体

中で自己凝集構造を構築する能力を持っているこのためBO 錯体は金属状態が低温まで

安定であるしかし錯体中で BO 分子は分子長軸方向における相互作用をほとんど示さな

いそこで対成分との相互作用の向上を目指してBO 分子の部分構造をもちかつチオ

ピラン環をもつ新規ドナーチオピラニリデン-エチレンジオキシジチオール(TP-EDOT)分子を合成した今回この TP-EDOT の合成精製およびその PF6塩の構造と物性につ

いて検討したので報告する 【実験と結果】エチレンジオキシ-13-ジチオール-2-チオン(1)とテトラヒドロ-4H-チオピラン

-4-オン(2)をP(OMe)3 存在下ベンゼン中でクロスカップリングさせ49 の収率で黄白色

針状晶のテトラヒドロ TP-EDOT(3)が得られた3 をキシレン中 DDQ を用いて脱水素し

64 の収率で黄白色粉末の TP-EDOT(分解点 1465 ~ 1493 )が得られた

O

O S

SS

BenzeneO S+

S

SS

O

O P(OMe)3

reflux6h O

O S

SS

DDQ

Xylene

1 2 3 TP-EDOT 3 は比較的安定でありまたこの反応条件下で2 同士のホモカップリング反応が起きな

いことから3 は容易に単離できた一方TP-EDOT はその合成条件下同時に分解反応を

起こすので反応は出来るだけ短時間で行う必要があったTP-EDOT はアセトンクロロ

ホルム酸に対しては不安定でこれらの溶媒中では数分以内に分解した一方エタノ

ールメタノールベンゼンテトラヒドロフランベンゾニトリルアセトニトリル中で

は加熱条件下でも安定であったまたTP-EDOT は一部分解物を含む状態となってもシ

リカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製しなおすことが可能であった TP-EDOT と関連物質の酸化還元電位を表 1 にまとめたTP-EDOT の酸化還元電位の大

きさは TTF や BO に比べて小さくTMTTF と同程度であった TP-EDOT の錯体を( Bu4N )X ( X = PF6SbF6BF4ClO4 )の存在下定

電圧電解法により作成したPF6 塩につ

いて緑色と紫色の 2 種類の生成物が得

られたあまり大きくない電流値(約 05 microΑ)で 1 ヶ月以内に電解を停止すること

により紫色の針状結晶を選択的に得る

表 1 サイクリックボルタメトリー法による酸化還元

電位( vs SCE ) ドナー E121 V E122 V ∆ E V TP-EDOT 027 060 033 TMTTF 029 065 036 TTF 037 076 039 BEDO-TTF 043 069 026 ∆E = E121 - E122

ことができたこれ以上長い期間ある

bukka
4Pp128

いは高い電流値で電解を行うと緑色の結晶が紫色の結晶と混ざって生成することがわか

った 単結晶構造解析によって PF6 塩の紫色結晶の結晶構造を決定した(Crystal Data monoclinic C2m Z = 8 a = 16024(3) b = 23029(3) c = 7005(3) Aring β = 10390(2) deg V = 2509(1) Aring3)組成はドナー アニオン= 2 1 であった拡張ヒュッケル法によりドナー分

子同士の重なり積分を算出すると分子間相互作用は 3 次元的であったしかしどの方向

についても重なり積分の絶対値は小さかったまたドナー分子のチオピラン環にある硫黄

原子同士の分子長軸方向への相互作用も見られた(図 1 の s8 に対応する分子間での ShellipS 接

触)これらの分子間相互作用の結果計算上は 3 次元的なフェルミ面が得られた(図 2) この錯体の分子積層方

向(c 軸方向)の電気伝導

度は室温で 10-4 S cm-1

程度であり8 ~ 50 degC の

範囲で半導体的挙動が

観測された 【考察】PF6 塩はバンド計

算からは3次元的な複雑

なフェルミ面を持つし

かし積層方向の伝導度

は金属的な挙動を示さな

かったバンド幅に比べ

オンサイトクーロン反発

(U)が大きいことがそ

の原因であると考えられ

る 本 錯 体 中 で の

TP-EDOT 分子間の重な

り積分はBO 錯体中での

ドナー分子間重なり積分

の 4 分の 1 程度の大きさ

であるまたU の目安

である∆E はTP-EDOT の方が BO より

007V 大きい

a

bo

s8

s6

s5

s1

s1s1

s1s1

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6s5

s5s5

s5s5

s5

s5s5

s5

s8

s8s8

図 1 PF6塩の c 軸投影図

影をつけたドナー分子は z = 0 の平面上にあり影をつけてないドナ

ー分子は z = 05 の平面上にある重なり積分の値はそれぞれs1 =

403times10-3s5 = -192times10-3s6 = -345times10-3s8 = 396times10-3であ

った

今後はPF6塩については磁化率の測定

等を通じて電子がどのように局在化してい

るかを検討していく同時に積層方向以外

の方向における伝導度測定も試みるまた

他のカチオンラジカル塩の単結晶作成とそ

れらの構造と物性について調べていく

図 2 PF6塩のフェルミ面

クラウンエーテルを用いた超分子化学的結晶設計に基

づくヘテロスピン集合系の磁性 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2)

神崎祐貴 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 【序論】現在まで純粋な有機分子からなるフェリ磁性体の構築は成功しておらずな

お分子磁性研究の長年の課題とされている我々は以前理論的考察から基底 1重項(S = 0)ビラジカルと 2重項(S = 12)ラジカルとの反強磁性的交互 1次元鎖が広義のフェリ磁性的な基底状態を取り得ること(一般化フェリ磁性)を提案した[1]

また1次元鎖全体の基底状態はビラジカル分子内と分子間の相互作用の大小関係を圧力等の外場によって変化させるとフェリ磁性的高スピン状態と非磁性(反磁性)

状態との間で相互変換することも理論計算から予想されている[1] この理論計算の結果を実験的に検証するために図 1に示したモデル分子錯体を合成した結晶設計にはクラウンエーテルが選択的にアルカリ金属を捕獲する錯形成

力を利用した超分子結晶工学アプローチを用いたこれまでの研究でフェノキシド

ビラジカル(1-)と 15-crown-5-ether置換のモノラジカル(2) [2]との錯体[Na2]+1-(図 1)が理論を一部実証する非磁性基底状態を示すことを磁化率の測定より明らかにした[3]

本研究では新たに新奇物質である 18-crown-6-ether置換のモノラジカル(3)を合成し新しいモデル錯体としてフェノキシドビラジカル(1-)との錯体[K3]+1-(図 1)を合成した錯体の構成要素となるモノラジカルの変化によって錯体[Na2]+1-とは異なる分

子間交換相互作用が与えられ上記の理論の予言する高スピン状態(フェリ磁性的基

底状態)が得られる可能性がある 【18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)】

18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)を図 2の方法で合成した閉殻前駆体は1H NMR 13C NMR 元素分析を用いて同定したラジカル(3)の同定は元素分析溶液ESRから行った室温でのジクロロメタン溶液の ESRスペクトルを図 3に示す窒素 14N核の超微細結合定数は aN = 072 mTg値は g = 20056で典型的なニトロニルニトロキシドモノラジカルの値を示したまた常磁性磁化率pの温度依存性を図 4に示す室温でのpT値は 0372 emu K mol-1であり純度は 99であったpは Tmax = 32 Kで極大をとりBonner-Fischerモデルを仮定すると Tmaxと Jとの関係から分子間に 2JkB = -51 Kの反強磁性的な交換相互作用が働いていることになる分子のパッキングに基づく詳細な解析を行うために現在 X線結晶構造解析を行なっている

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

-

NNO

O

O O

OOO

Na

+-

+

O

O

O O

O

O

NNO

O+-

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

- K+

[Na2]+1- [K3]+1-

図 1 モデル錯体

bukka
4Pp129

0

001

002

003

004

005

006

0 50 100 150 200 250 300

p (実測)

(Bonner-Fischerモデル)

p

emu

mol

-1T K

図 4 モノラジカル(3)の磁化率

O O

O

O

O

O

Br O O

O

O

O

O

CHOt-BuLi DMF

THF

O O

O

O

O

ON

NO

ONHOH

NHOHbenzene

+-

NaIO4 H2O CH2Cl2

1)

2)

図 2 18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)の合成

326 327 328 329 330 331 332

B mT 図 3 モノラジカル(3)の ESR スペクトル(ジクロロメタン溶液室温)

【フェノキシドビラジカルの単純塩(K+1-)】 モデル錯体の構成要素の性質を明らかにするためにフェノキシドビラジカルの単

純塩(K+1-)の磁化率を測定したpT 値は温度の低下とともに単調に減少したsinglet-tripletモデル

)exp(312

BB

2B

2A

p TkETkgN

(1)

10 SESEE (2) にフィッティングさせて分子内交換相互作用E(3重項と 1重項の間のエネルギーギャップ)を見積もった結果EkB = -70 Kとなったこの結果は単純塩(K+1-)の凍結溶液 ESR禁制遷移の強度 IESRの温度変化から見積もったEkB -10 K[4]とほぼ対応

しており分子内の交換相互作用が反強磁性的なものであることが確かめられたな

おフェノキシドビラジカルのナトリウム塩(Na+1-)では凍結溶液 ESRの実験からEkB -27 13 Kであることがわかっている[3]ビラジカル分子内の交換相互作用

の大きさの違いが錯体形成後の分子集合系のスピン状態に影響を与えるものと思わ

れる 上記の構成分子を用いて[Na2]+1-と同様の方法で新奇なモデル錯体[K3]+1-を合

成した現在錯体の結晶構造解析ESRスペクトルと磁化率の測定を行なっている[Na2]+1-と[K3]+1-との磁性と構造の相違点を議論する予定である 【参考文献】 [1] D Shiomi K Sato and T Takui J Phys Chem B 105 2932 (2001) [2] M Fettouhi Mol Cryst Liq Cryst 356 365 (2001) [3] Y Kanzaki D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 22 1817(2003) [4] S Hase D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 20 1403(2001)

超分子化学アプローチによる有機フェリ

磁性体の構築と磁気的性質 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2) 早川健一 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 有機フェリ磁性体を構築するための大きな問題点として分晶化がある分晶化を避

け異なるスピン量子数を持つ有機ラジカル(たとえばモノラジカル(S = 12)と

ビラジカル(S = 1))を共結晶化させる方法として超分子化学アプローチがある

これは選択的な分子間引力(水素結合やイオン電荷によるクーロン力)によって異

種成分を連結する方法である(図 1)[1]現在までのところ水素結合やイオン電荷

によるビラジカルとモノラジカルの共結晶化の試みは一部報告例があるが[2]結晶

構造まで確定した成功例はない

N

NN

NN

O

O

N

N

O

O

X

+

_

X = COOH(2) OH(3)

(1)

NN

N

N

N

OO

Me

+

N NO O+ _

Y _

Y = COO- O-

(a)水素結合アプローチ (b)有機塩アプローチ(イオン電荷によるクー

ロン力)

図 1 ビラジカルとモノラジカルの共結晶化

本研究ではピリジンの 26-位にイミノニトロキシドを導入したビラジカル(1)と安

息香酸(2)もしくはフェノール(3)置換のニトロニルニトロキシドモノラジカルを水素

結合によって連結する方法を試みた(図 1a) ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)は対応するジアルデヒドから 3 段

階で合成した(図 2)

N CHOOHC NNN

NN

OHHO

HOOHMeOH

NNOHNNOH SeO2

MeOHNN

NN

N

OHHO PbO2

CH2Cl2NN

NN

N

OO

(1)

図 2 ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)の合成

bukka
4Pp130

ビラジカル 1の磁化率を図 3 に示す分子間の平均場θを取り入れた Singlet-Tripletモデル

)2exp(31

)(2

BB

2B

2A

p TkJTkgN

minus+times

minus=

θmicro

χ (1)

により分子内の交換相互作用は 2JkB = +14 K分子間相互作用はθ = -3 K であるこ

とがわかった分子内の交換相互作用が強

磁性的であることはPVC(ポリ塩化ビニ

ル)による固相希釈系の実験(図 3)から

確かめられたビラジカル(1)は超分子フ

ェリ磁性体の構成要素として用いることが

できることがわかった

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

diluted in PVC(JkB = 7K)

neat(JkB = 7K θ = -3K)

-------

____

obscalc

calcobs

図 3 ビラジカル(1)の磁化率 (χpT-T プロット)

ビラジカル(1)と安息香酸置換モノラジ

カル(2)との共結晶体(分子錯体 1-2)は

エタノール溶液からの再結晶により得られ

た元素分析から組成は 11 であること

がわかった磁化率の測定結果を図 4 に示

す室温(300 K)でのχpT の値は分子錯

体 1 モル(S = 12 スピン 3 モル)の高温極

限の予測値(113 emu K mol-1)を下回って

おり分子間の反強磁性相互作用がかなり

大きいことを示唆するまた20 K 付近で

χpT の減少が一旦鈍って停留値をとってい

るこれらの結果はビラジカル(1)の磁化

率(図 3)とモノラジカル(2)の磁化率[3]の単純な和では説明できない現在X 線結

晶構造解析を行なっている

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

図 4 分子錯体 1-2の磁化率

(χpT-T プロット)

フェノール置換モノラジカル(3)による

水素結合アプローチと有機塩アプローチ

による共結晶化を現在進めている [1] D Shiomi K Ito M Nishizawa S Hase K Sato T Takui Mol Cryst Liq Cryst 334 99(1999) [2] 伊瀬智章石田尚行野上隆第 76 春

季年会 4C538(1999) [3] K Inoue H Iwamura Chem Phys Lett 207 551(1993)

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

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2 C )4

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| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 9: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

PROXYL ラジカルを有する TTP ドナーの

カチオンラジカル塩の構造と物性

(分子研 1JST CREST2東大院理 3)藤原秀紀 12崔 亨波 12李 夏珍 1

小林速男 12藤原絵美子 3小林昭子 3

【序】我々はこれまで伝導性と磁性の両方を併せ持つ磁性伝導体の開発に注目し

安定有機ラジカルを結合させた各種π拡張型ドナーを合成しその構造と物性につ

いて報告してきたその中で最 PROXYL ラジカルを有する TTP 誘導体を幾つ

か合成しそれらのカチオンラジカル塩の構造と物性について検討したところ伝

導 子と局在スピンが共存しながら い伝導性を有することが明らかとなった1 今

回PROXYL ラジカルを有する TTP ドナー

(1)の 11の組成を有するFeCl4-塩とGaCl4-

塩の構造と伝導性磁性について検討したの

で報告する

【結果と考察】FeCl4-塩と GaCl4-塩の作

成はクロロベンゼンエタノール(82

vv)中定 圧 気分 により作成した

条件によっては多形が得られ30 V

では組成比が 11 の 色板状晶が15 V で

は組成比が 21 の茶 色板状微結晶が得ら

れた21 塩の方は既に文献 1 で報告済み

のようにFeCl4-塩において室温での 気

伝導度が加圧成型 料ながら 5 S cm-1 程

度と良好で金属に い抵抗の温度依存性

を示し伝導 子と局在スピンが同一分子

内に共存している事を見出しているしか

しながら結晶のサイズが小さいため21

塩の構造 析には至っていない11 塩の

構造 析は FeCl4-塩についてはRigaku AFC-7 MercuryGaCl4-塩についてはX線

集光ミラーを備えた Rigaku AFC-8 Mercury で行った表に結晶学データをまとめ

て示すFeCl4-塩と GaCl4-塩は同形であるので以下FeCl4-塩の構造について

述べる図1のようにユニットセル中に結晶学的に独立な二種 のドナー分子 AB

と二種 のアニオンが存在しているドナー分子 AB の TTP 格はほぼ平面である

がPROXYL ラジカル 位は分子平面に対してほぼ垂直に立っているドナーAB

共に立体障害の大きなラジカル 位を避け合うように head-to-tail 型にダイマーを

形成しているダイマー同士は分子 方向にほぼ TTF 一つ分シフトしながら一

S

SS

S

NOS

S

S

S

S

S

1

Anion FeCl4- GaCl4-

Crystal system Triclinic TriclinicSpace group P-1 P-1

a(Aring) 9755(4) 9787(5)b(Aring) 10262(4) 10265(5)c(Aring) 32275(13) 3233(2)a(deg ) 91661(11) 9157(2)b(deg ) 94715(12) 9469(2)g (deg ) 90185(10) 9030(2)

V (Aring3) 32185(22) 32355(28)Z 2 2R 0064 0061Rw 0047 0063

bukka
4Pp126
bukka

次元のスタックを形成しているそしてアニオンはドナーが 方向にずれて

空いた位置に PROXYL ラジカルと末端の 13-ジチオール環に挟まれるようにして存

在しているそれぞれの一次元スタックは b に沿って配列しドナーAB がそれ

ぞれ別々のドナー層を形成しているダイマー内には短い S-S 接触が数多く見られ

るがダイマー間には短い接触はなくまたアニオンがドナー層内に入り込んだ

ような構造になっているため分

子の side-by-side 方向の相互作用

は弱くなっている結果として

ダイマーが孤立している傾向が強

い構造となっている一方ラジ

カル 位は TTP 格が形成する伝

導層間の空間に層を形成するよう

に位置している

FeCl4-塩は 11 塩である事に加え

二量化の強い一次元スタック構造

を有している事を考えると予想以

上の良導体で単結晶 料を用い

4端子法で測定を行ったところ

室温での 気伝導度は 1 x 10-3 S

cm-1 であり活性化エネルギー

が 013 eV の半導体であった一方FeCl4-塩の磁化率を SQUID によって 1 Tesla

で測定した図2にcT-T プロットを示す室温から 50 K程度までcT 値はほぼ一定

であるが更に温度を下げるとcT 値は減少し60 K 以下のデータを用いた Curie-

Weiss Fitting によるとCurie 定数が 483 emu K

mol-1Weiss 温度が-065 K の弱い反強磁性的な温

度依存性を示したCurie 定数の値は High-spin の鉄

(S = 52 4375 emu K mol-1)と PROXYL ラジカル(S

= 12 0375 emu K mol-1)の和(475 emu K mol-1)

に い値を示したカチオンラジカルモーメントに関

する情報は今後 磁性アニオンを用いた GaCl4-

塩の磁気的性 を測定することにより検討を

行う予定である

【文献】(1) H Fujiwara H-J Lee H Kobayashi EFujiwara A Kobayashi Chem Lett 32 482 (2003)

図 1 FeCl4-塩の結晶構造

図 2 FeCl4-塩のcT-T プロット

単一成分分子から成る TTF 型ジチオラトコバルト

錯体の合成構造と物性

(東大院理 1名大院工 2分子研 3科技団 CREST4) 藤原絵美子 1小林昭子 1

藤城雄一 2西堀英治 2 田昌樹 2坂田誠 2藤原秀紀 34小林速男 34

【序】通常単一成分から成る分子性結晶は構成分子の分子軌道が分子間で重な

ることによって出来るバンドが 子によって完全に満たされているか完全に空で

あるかのいずれかである従ってこのような分子性結晶は構成原子が結晶を形

成する際に自発的に金属バンドの形成と自由 子の発生をもたらす金属結晶とは対

照的で絶縁体の典型であると考えられていた 年極低温まで金属状態が安定

な単一成分 TTF 型ジチオラト金属錯体 [Ni(tmdt)2] が開発されde Haas-van

Alphen 効果の観測により Fermi 面を持つ金属であることが証明されたまた中心

金属に磁性金属を導入した[Cu(dmdt)2]では 80の Cu2+の 12 spin が局在しながら

い伝導性を示す常磁性体であることが判る等単一成分分子から成る金属錯体に

おいて興味深い物性が見出されている今回我々はTTF 型ジチオラト金属錯体

に基づく新 な単一成分分子伝導体の開発を目指し中心金属にコバルト原子を導

入した TTF 型ジチオラト金属錯体[Co(dt)2]2を合成しその構造と物性を調べた

【実験および考察】前駆体であるコバルト錯体(Me4N)2[Co(dt)2]はシアノエチルチ

オ基が置換した TTF を THF 中で 25 wt Me4NmiddotOHMeOH 溶液を用いて加水分した後CoCl2middot6H2OMeOH 溶液と反応させることにより紫色を帯びた灰色粉末として得られたさらにこの錯体を nBu4NmiddotClO4を含む PhCN 溶液中で定 流

法(05 mA)を用いて 酸化することにより[Co(dt)2]2 の微小な 色針状結晶が得

られたSPring-8 の放射光ビームライン BL02B2 を用いて X線粉末回折実験を行い

GA (genetic algorithm)と Rietveld 析により得られた錯体の構造を決定した

Crystal data for [Co(dt)2]2 triclinic P`1 a = 117185 (3) b = 109513 (2) c = 77336(1) Aring a = 79737( 2) b = 96474(2) g = 113973(2)deg V = 89145(7) Aring3 Z = 1 Rwp =0053 RI = 0082 この錯体は二個の Co(dt)2ユニットが 312 Aringの面間 離で分子

および短 方向にそれぞれ 130 そして 165 Aring ずつスライドして face-to-faceで重なり各々のユニットのコバルトと硫 原子間でユニット間配位結合(Co-S =

2425 Aring)を持つ特徴的な構造を示す(Fig 1)分子内の二個の Co(dt)2 位はいす形

に大きく折れ曲がりCo1-S1-S2 面と Co1-S7-S8 面との二面 は 121degであった

bukka
4Pp127

Co(dt)2 ユニット間には幾つかの短い S S 離(lt 37 Aring)が見られた結晶中では各々の[Co(dt)2]2 分子が 347 Aring の面間 離で分子 および短 方向にそれぞ

れ 092 そして 173 Aringずつスライドしながら face-to-face で[0 0 1]方向に積層した構造を持つ(Fig 2a)積層方向には短い分子間 S S 離が一種 だけ見られた

さらに[Co(dt)2]2分子は[1 0 0][1 1 0][2 1 0]方向に位置する六個の分子によっ

て分子短 と 方向を囲まれ[1 0 0][1 1 0]方向に 接する分子との間には数

多くの短い S S 離が確認された(Fig 2b)拡張 Huumlckel 法を用いて重なり積分を算したその結果短い S S 離が数多く存在する[1 0 0][1 1 0]方向の分子

との間で大きな重なり積分値が与えられこの錯体はスタック方向よりもむしろ分

子横方向に相互作用が強いことが判った四端子法を用いて[Co(dt)2]2 の加圧成形

料の 気抵抗を室温から 055 K までの温度領域で調べた(Fig 3)加圧成形 料の測

定であるにも拘わらず[Co(dt)2]2は 19 Smiddotcm-1と比 的大きな室温伝導度を示した

抵抗の温度依存性は冷却に伴って室温から緩やかに上昇するがこの錯体は低温

においても 伝導性[s(055 K)srt ordf 110]を示していることからこの錯体は本

的には低温 まで金属である可能性が示唆

される5 kOe の磁場下[Co(dt)2]2 の多結

晶 料の 磁化率を 19-300 K の温度領域

で調べた[Co(dt)2]2の室温 磁化率は 35 x

10-4 emumiddotmol-1であった 磁化率の温度依

存性は低温 において僅かに上昇するが50-300 K の

温度領域においてほぼ一定の値を示したユニット間

配位結合が存在した特徴的な分子構造を持つためこ

の錯体の磁性に対するコバルトスピンの寄与は殆ど無

いかもしくは 常に小さいことが推測される

21 世紀 COE プログラム「フロンティア基礎化学」研究拠点

形成事業のもとに研究を行った

新規ドナー チオピラニリデン-エチレンジオキシ ジチオール分子の合成とその錯体作成

(京大院理) 添田雅也萩原潤矢持秀起斎藤軍治 【序】BEDO-TTF(BO)分子は 5 員環硫黄原子を用いた分子短軸方向への分子間硫黄hellip硫

黄接触と末端エチレンジオキシ基を用いた積層方向への弱い水素結合形成によって錯体

中で自己凝集構造を構築する能力を持っているこのためBO 錯体は金属状態が低温まで

安定であるしかし錯体中で BO 分子は分子長軸方向における相互作用をほとんど示さな

いそこで対成分との相互作用の向上を目指してBO 分子の部分構造をもちかつチオ

ピラン環をもつ新規ドナーチオピラニリデン-エチレンジオキシジチオール(TP-EDOT)分子を合成した今回この TP-EDOT の合成精製およびその PF6塩の構造と物性につ

いて検討したので報告する 【実験と結果】エチレンジオキシ-13-ジチオール-2-チオン(1)とテトラヒドロ-4H-チオピラン

-4-オン(2)をP(OMe)3 存在下ベンゼン中でクロスカップリングさせ49 の収率で黄白色

針状晶のテトラヒドロ TP-EDOT(3)が得られた3 をキシレン中 DDQ を用いて脱水素し

64 の収率で黄白色粉末の TP-EDOT(分解点 1465 ~ 1493 )が得られた

O

O S

SS

BenzeneO S+

S

SS

O

O P(OMe)3

reflux6h O

O S

SS

DDQ

Xylene

1 2 3 TP-EDOT 3 は比較的安定でありまたこの反応条件下で2 同士のホモカップリング反応が起きな

いことから3 は容易に単離できた一方TP-EDOT はその合成条件下同時に分解反応を

起こすので反応は出来るだけ短時間で行う必要があったTP-EDOT はアセトンクロロ

ホルム酸に対しては不安定でこれらの溶媒中では数分以内に分解した一方エタノ

ールメタノールベンゼンテトラヒドロフランベンゾニトリルアセトニトリル中で

は加熱条件下でも安定であったまたTP-EDOT は一部分解物を含む状態となってもシ

リカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製しなおすことが可能であった TP-EDOT と関連物質の酸化還元電位を表 1 にまとめたTP-EDOT の酸化還元電位の大

きさは TTF や BO に比べて小さくTMTTF と同程度であった TP-EDOT の錯体を( Bu4N )X ( X = PF6SbF6BF4ClO4 )の存在下定

電圧電解法により作成したPF6 塩につ

いて緑色と紫色の 2 種類の生成物が得

られたあまり大きくない電流値(約 05 microΑ)で 1 ヶ月以内に電解を停止すること

により紫色の針状結晶を選択的に得る

表 1 サイクリックボルタメトリー法による酸化還元

電位( vs SCE ) ドナー E121 V E122 V ∆ E V TP-EDOT 027 060 033 TMTTF 029 065 036 TTF 037 076 039 BEDO-TTF 043 069 026 ∆E = E121 - E122

ことができたこれ以上長い期間ある

bukka
4Pp128

いは高い電流値で電解を行うと緑色の結晶が紫色の結晶と混ざって生成することがわか

った 単結晶構造解析によって PF6 塩の紫色結晶の結晶構造を決定した(Crystal Data monoclinic C2m Z = 8 a = 16024(3) b = 23029(3) c = 7005(3) Aring β = 10390(2) deg V = 2509(1) Aring3)組成はドナー アニオン= 2 1 であった拡張ヒュッケル法によりドナー分

子同士の重なり積分を算出すると分子間相互作用は 3 次元的であったしかしどの方向

についても重なり積分の絶対値は小さかったまたドナー分子のチオピラン環にある硫黄

原子同士の分子長軸方向への相互作用も見られた(図 1 の s8 に対応する分子間での ShellipS 接

触)これらの分子間相互作用の結果計算上は 3 次元的なフェルミ面が得られた(図 2) この錯体の分子積層方

向(c 軸方向)の電気伝導

度は室温で 10-4 S cm-1

程度であり8 ~ 50 degC の

範囲で半導体的挙動が

観測された 【考察】PF6 塩はバンド計

算からは3次元的な複雑

なフェルミ面を持つし

かし積層方向の伝導度

は金属的な挙動を示さな

かったバンド幅に比べ

オンサイトクーロン反発

(U)が大きいことがそ

の原因であると考えられ

る 本 錯 体 中 で の

TP-EDOT 分子間の重な

り積分はBO 錯体中での

ドナー分子間重なり積分

の 4 分の 1 程度の大きさ

であるまたU の目安

である∆E はTP-EDOT の方が BO より

007V 大きい

a

bo

s8

s6

s5

s1

s1s1

s1s1

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6s5

s5s5

s5s5

s5

s5s5

s5

s8

s8s8

図 1 PF6塩の c 軸投影図

影をつけたドナー分子は z = 0 の平面上にあり影をつけてないドナ

ー分子は z = 05 の平面上にある重なり積分の値はそれぞれs1 =

403times10-3s5 = -192times10-3s6 = -345times10-3s8 = 396times10-3であ

った

今後はPF6塩については磁化率の測定

等を通じて電子がどのように局在化してい

るかを検討していく同時に積層方向以外

の方向における伝導度測定も試みるまた

他のカチオンラジカル塩の単結晶作成とそ

れらの構造と物性について調べていく

図 2 PF6塩のフェルミ面

クラウンエーテルを用いた超分子化学的結晶設計に基

づくヘテロスピン集合系の磁性 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2)

神崎祐貴 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 【序論】現在まで純粋な有機分子からなるフェリ磁性体の構築は成功しておらずな

お分子磁性研究の長年の課題とされている我々は以前理論的考察から基底 1重項(S = 0)ビラジカルと 2重項(S = 12)ラジカルとの反強磁性的交互 1次元鎖が広義のフェリ磁性的な基底状態を取り得ること(一般化フェリ磁性)を提案した[1]

また1次元鎖全体の基底状態はビラジカル分子内と分子間の相互作用の大小関係を圧力等の外場によって変化させるとフェリ磁性的高スピン状態と非磁性(反磁性)

状態との間で相互変換することも理論計算から予想されている[1] この理論計算の結果を実験的に検証するために図 1に示したモデル分子錯体を合成した結晶設計にはクラウンエーテルが選択的にアルカリ金属を捕獲する錯形成

力を利用した超分子結晶工学アプローチを用いたこれまでの研究でフェノキシド

ビラジカル(1-)と 15-crown-5-ether置換のモノラジカル(2) [2]との錯体[Na2]+1-(図 1)が理論を一部実証する非磁性基底状態を示すことを磁化率の測定より明らかにした[3]

本研究では新たに新奇物質である 18-crown-6-ether置換のモノラジカル(3)を合成し新しいモデル錯体としてフェノキシドビラジカル(1-)との錯体[K3]+1-(図 1)を合成した錯体の構成要素となるモノラジカルの変化によって錯体[Na2]+1-とは異なる分

子間交換相互作用が与えられ上記の理論の予言する高スピン状態(フェリ磁性的基

底状態)が得られる可能性がある 【18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)】

18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)を図 2の方法で合成した閉殻前駆体は1H NMR 13C NMR 元素分析を用いて同定したラジカル(3)の同定は元素分析溶液ESRから行った室温でのジクロロメタン溶液の ESRスペクトルを図 3に示す窒素 14N核の超微細結合定数は aN = 072 mTg値は g = 20056で典型的なニトロニルニトロキシドモノラジカルの値を示したまた常磁性磁化率pの温度依存性を図 4に示す室温でのpT値は 0372 emu K mol-1であり純度は 99であったpは Tmax = 32 Kで極大をとりBonner-Fischerモデルを仮定すると Tmaxと Jとの関係から分子間に 2JkB = -51 Kの反強磁性的な交換相互作用が働いていることになる分子のパッキングに基づく詳細な解析を行うために現在 X線結晶構造解析を行なっている

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

-

NNO

O

O O

OOO

Na

+-

+

O

O

O O

O

O

NNO

O+-

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

- K+

[Na2]+1- [K3]+1-

図 1 モデル錯体

bukka
4Pp129

0

001

002

003

004

005

006

0 50 100 150 200 250 300

p (実測)

(Bonner-Fischerモデル)

p

emu

mol

-1T K

図 4 モノラジカル(3)の磁化率

O O

O

O

O

O

Br O O

O

O

O

O

CHOt-BuLi DMF

THF

O O

O

O

O

ON

NO

ONHOH

NHOHbenzene

+-

NaIO4 H2O CH2Cl2

1)

2)

図 2 18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)の合成

326 327 328 329 330 331 332

B mT 図 3 モノラジカル(3)の ESR スペクトル(ジクロロメタン溶液室温)

【フェノキシドビラジカルの単純塩(K+1-)】 モデル錯体の構成要素の性質を明らかにするためにフェノキシドビラジカルの単

純塩(K+1-)の磁化率を測定したpT 値は温度の低下とともに単調に減少したsinglet-tripletモデル

)exp(312

BB

2B

2A

p TkETkgN

(1)

10 SESEE (2) にフィッティングさせて分子内交換相互作用E(3重項と 1重項の間のエネルギーギャップ)を見積もった結果EkB = -70 Kとなったこの結果は単純塩(K+1-)の凍結溶液 ESR禁制遷移の強度 IESRの温度変化から見積もったEkB -10 K[4]とほぼ対応

しており分子内の交換相互作用が反強磁性的なものであることが確かめられたな

おフェノキシドビラジカルのナトリウム塩(Na+1-)では凍結溶液 ESRの実験からEkB -27 13 Kであることがわかっている[3]ビラジカル分子内の交換相互作用

の大きさの違いが錯体形成後の分子集合系のスピン状態に影響を与えるものと思わ

れる 上記の構成分子を用いて[Na2]+1-と同様の方法で新奇なモデル錯体[K3]+1-を合

成した現在錯体の結晶構造解析ESRスペクトルと磁化率の測定を行なっている[Na2]+1-と[K3]+1-との磁性と構造の相違点を議論する予定である 【参考文献】 [1] D Shiomi K Sato and T Takui J Phys Chem B 105 2932 (2001) [2] M Fettouhi Mol Cryst Liq Cryst 356 365 (2001) [3] Y Kanzaki D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 22 1817(2003) [4] S Hase D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 20 1403(2001)

超分子化学アプローチによる有機フェリ

磁性体の構築と磁気的性質 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2) 早川健一 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 有機フェリ磁性体を構築するための大きな問題点として分晶化がある分晶化を避

け異なるスピン量子数を持つ有機ラジカル(たとえばモノラジカル(S = 12)と

ビラジカル(S = 1))を共結晶化させる方法として超分子化学アプローチがある

これは選択的な分子間引力(水素結合やイオン電荷によるクーロン力)によって異

種成分を連結する方法である(図 1)[1]現在までのところ水素結合やイオン電荷

によるビラジカルとモノラジカルの共結晶化の試みは一部報告例があるが[2]結晶

構造まで確定した成功例はない

N

NN

NN

O

O

N

N

O

O

X

+

_

X = COOH(2) OH(3)

(1)

NN

N

N

N

OO

Me

+

N NO O+ _

Y _

Y = COO- O-

(a)水素結合アプローチ (b)有機塩アプローチ(イオン電荷によるクー

ロン力)

図 1 ビラジカルとモノラジカルの共結晶化

本研究ではピリジンの 26-位にイミノニトロキシドを導入したビラジカル(1)と安

息香酸(2)もしくはフェノール(3)置換のニトロニルニトロキシドモノラジカルを水素

結合によって連結する方法を試みた(図 1a) ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)は対応するジアルデヒドから 3 段

階で合成した(図 2)

N CHOOHC NNN

NN

OHHO

HOOHMeOH

NNOHNNOH SeO2

MeOHNN

NN

N

OHHO PbO2

CH2Cl2NN

NN

N

OO

(1)

図 2 ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)の合成

bukka
4Pp130

ビラジカル 1の磁化率を図 3 に示す分子間の平均場θを取り入れた Singlet-Tripletモデル

)2exp(31

)(2

BB

2B

2A

p TkJTkgN

minus+times

minus=

θmicro

χ (1)

により分子内の交換相互作用は 2JkB = +14 K分子間相互作用はθ = -3 K であるこ

とがわかった分子内の交換相互作用が強

磁性的であることはPVC(ポリ塩化ビニ

ル)による固相希釈系の実験(図 3)から

確かめられたビラジカル(1)は超分子フ

ェリ磁性体の構成要素として用いることが

できることがわかった

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

diluted in PVC(JkB = 7K)

neat(JkB = 7K θ = -3K)

-------

____

obscalc

calcobs

図 3 ビラジカル(1)の磁化率 (χpT-T プロット)

ビラジカル(1)と安息香酸置換モノラジ

カル(2)との共結晶体(分子錯体 1-2)は

エタノール溶液からの再結晶により得られ

た元素分析から組成は 11 であること

がわかった磁化率の測定結果を図 4 に示

す室温(300 K)でのχpT の値は分子錯

体 1 モル(S = 12 スピン 3 モル)の高温極

限の予測値(113 emu K mol-1)を下回って

おり分子間の反強磁性相互作用がかなり

大きいことを示唆するまた20 K 付近で

χpT の減少が一旦鈍って停留値をとってい

るこれらの結果はビラジカル(1)の磁化

率(図 3)とモノラジカル(2)の磁化率[3]の単純な和では説明できない現在X 線結

晶構造解析を行なっている

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

図 4 分子錯体 1-2の磁化率

(χpT-T プロット)

フェノール置換モノラジカル(3)による

水素結合アプローチと有機塩アプローチ

による共結晶化を現在進めている [1] D Shiomi K Ito M Nishizawa S Hase K Sato T Takui Mol Cryst Liq Cryst 334 99(1999) [2] 伊瀬智章石田尚行野上隆第 76 春

季年会 4C538(1999) [3] K Inoue H Iwamura Chem Phys Lett 207 551(1993)

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 10: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

次元のスタックを形成しているそしてアニオンはドナーが 方向にずれて

空いた位置に PROXYL ラジカルと末端の 13-ジチオール環に挟まれるようにして存

在しているそれぞれの一次元スタックは b に沿って配列しドナーAB がそれ

ぞれ別々のドナー層を形成しているダイマー内には短い S-S 接触が数多く見られ

るがダイマー間には短い接触はなくまたアニオンがドナー層内に入り込んだ

ような構造になっているため分

子の side-by-side 方向の相互作用

は弱くなっている結果として

ダイマーが孤立している傾向が強

い構造となっている一方ラジ

カル 位は TTP 格が形成する伝

導層間の空間に層を形成するよう

に位置している

FeCl4-塩は 11 塩である事に加え

二量化の強い一次元スタック構造

を有している事を考えると予想以

上の良導体で単結晶 料を用い

4端子法で測定を行ったところ

室温での 気伝導度は 1 x 10-3 S

cm-1 であり活性化エネルギー

が 013 eV の半導体であった一方FeCl4-塩の磁化率を SQUID によって 1 Tesla

で測定した図2にcT-T プロットを示す室温から 50 K程度までcT 値はほぼ一定

であるが更に温度を下げるとcT 値は減少し60 K 以下のデータを用いた Curie-

Weiss Fitting によるとCurie 定数が 483 emu K

mol-1Weiss 温度が-065 K の弱い反強磁性的な温

度依存性を示したCurie 定数の値は High-spin の鉄

(S = 52 4375 emu K mol-1)と PROXYL ラジカル(S

= 12 0375 emu K mol-1)の和(475 emu K mol-1)

に い値を示したカチオンラジカルモーメントに関

する情報は今後 磁性アニオンを用いた GaCl4-

塩の磁気的性 を測定することにより検討を

行う予定である

【文献】(1) H Fujiwara H-J Lee H Kobayashi EFujiwara A Kobayashi Chem Lett 32 482 (2003)

図 1 FeCl4-塩の結晶構造

図 2 FeCl4-塩のcT-T プロット

単一成分分子から成る TTF 型ジチオラトコバルト

錯体の合成構造と物性

(東大院理 1名大院工 2分子研 3科技団 CREST4) 藤原絵美子 1小林昭子 1

藤城雄一 2西堀英治 2 田昌樹 2坂田誠 2藤原秀紀 34小林速男 34

【序】通常単一成分から成る分子性結晶は構成分子の分子軌道が分子間で重な

ることによって出来るバンドが 子によって完全に満たされているか完全に空で

あるかのいずれかである従ってこのような分子性結晶は構成原子が結晶を形

成する際に自発的に金属バンドの形成と自由 子の発生をもたらす金属結晶とは対

照的で絶縁体の典型であると考えられていた 年極低温まで金属状態が安定

な単一成分 TTF 型ジチオラト金属錯体 [Ni(tmdt)2] が開発されde Haas-van

Alphen 効果の観測により Fermi 面を持つ金属であることが証明されたまた中心

金属に磁性金属を導入した[Cu(dmdt)2]では 80の Cu2+の 12 spin が局在しながら

い伝導性を示す常磁性体であることが判る等単一成分分子から成る金属錯体に

おいて興味深い物性が見出されている今回我々はTTF 型ジチオラト金属錯体

に基づく新 な単一成分分子伝導体の開発を目指し中心金属にコバルト原子を導

入した TTF 型ジチオラト金属錯体[Co(dt)2]2を合成しその構造と物性を調べた

【実験および考察】前駆体であるコバルト錯体(Me4N)2[Co(dt)2]はシアノエチルチ

オ基が置換した TTF を THF 中で 25 wt Me4NmiddotOHMeOH 溶液を用いて加水分した後CoCl2middot6H2OMeOH 溶液と反応させることにより紫色を帯びた灰色粉末として得られたさらにこの錯体を nBu4NmiddotClO4を含む PhCN 溶液中で定 流

法(05 mA)を用いて 酸化することにより[Co(dt)2]2 の微小な 色針状結晶が得

られたSPring-8 の放射光ビームライン BL02B2 を用いて X線粉末回折実験を行い

GA (genetic algorithm)と Rietveld 析により得られた錯体の構造を決定した

Crystal data for [Co(dt)2]2 triclinic P`1 a = 117185 (3) b = 109513 (2) c = 77336(1) Aring a = 79737( 2) b = 96474(2) g = 113973(2)deg V = 89145(7) Aring3 Z = 1 Rwp =0053 RI = 0082 この錯体は二個の Co(dt)2ユニットが 312 Aringの面間 離で分子

および短 方向にそれぞれ 130 そして 165 Aring ずつスライドして face-to-faceで重なり各々のユニットのコバルトと硫 原子間でユニット間配位結合(Co-S =

2425 Aring)を持つ特徴的な構造を示す(Fig 1)分子内の二個の Co(dt)2 位はいす形

に大きく折れ曲がりCo1-S1-S2 面と Co1-S7-S8 面との二面 は 121degであった

bukka
4Pp127

Co(dt)2 ユニット間には幾つかの短い S S 離(lt 37 Aring)が見られた結晶中では各々の[Co(dt)2]2 分子が 347 Aring の面間 離で分子 および短 方向にそれぞ

れ 092 そして 173 Aringずつスライドしながら face-to-face で[0 0 1]方向に積層した構造を持つ(Fig 2a)積層方向には短い分子間 S S 離が一種 だけ見られた

さらに[Co(dt)2]2分子は[1 0 0][1 1 0][2 1 0]方向に位置する六個の分子によっ

て分子短 と 方向を囲まれ[1 0 0][1 1 0]方向に 接する分子との間には数

多くの短い S S 離が確認された(Fig 2b)拡張 Huumlckel 法を用いて重なり積分を算したその結果短い S S 離が数多く存在する[1 0 0][1 1 0]方向の分子

との間で大きな重なり積分値が与えられこの錯体はスタック方向よりもむしろ分

子横方向に相互作用が強いことが判った四端子法を用いて[Co(dt)2]2 の加圧成形

料の 気抵抗を室温から 055 K までの温度領域で調べた(Fig 3)加圧成形 料の測

定であるにも拘わらず[Co(dt)2]2は 19 Smiddotcm-1と比 的大きな室温伝導度を示した

抵抗の温度依存性は冷却に伴って室温から緩やかに上昇するがこの錯体は低温

においても 伝導性[s(055 K)srt ordf 110]を示していることからこの錯体は本

的には低温 まで金属である可能性が示唆

される5 kOe の磁場下[Co(dt)2]2 の多結

晶 料の 磁化率を 19-300 K の温度領域

で調べた[Co(dt)2]2の室温 磁化率は 35 x

10-4 emumiddotmol-1であった 磁化率の温度依

存性は低温 において僅かに上昇するが50-300 K の

温度領域においてほぼ一定の値を示したユニット間

配位結合が存在した特徴的な分子構造を持つためこ

の錯体の磁性に対するコバルトスピンの寄与は殆ど無

いかもしくは 常に小さいことが推測される

21 世紀 COE プログラム「フロンティア基礎化学」研究拠点

形成事業のもとに研究を行った

新規ドナー チオピラニリデン-エチレンジオキシ ジチオール分子の合成とその錯体作成

(京大院理) 添田雅也萩原潤矢持秀起斎藤軍治 【序】BEDO-TTF(BO)分子は 5 員環硫黄原子を用いた分子短軸方向への分子間硫黄hellip硫

黄接触と末端エチレンジオキシ基を用いた積層方向への弱い水素結合形成によって錯体

中で自己凝集構造を構築する能力を持っているこのためBO 錯体は金属状態が低温まで

安定であるしかし錯体中で BO 分子は分子長軸方向における相互作用をほとんど示さな

いそこで対成分との相互作用の向上を目指してBO 分子の部分構造をもちかつチオ

ピラン環をもつ新規ドナーチオピラニリデン-エチレンジオキシジチオール(TP-EDOT)分子を合成した今回この TP-EDOT の合成精製およびその PF6塩の構造と物性につ

いて検討したので報告する 【実験と結果】エチレンジオキシ-13-ジチオール-2-チオン(1)とテトラヒドロ-4H-チオピラン

-4-オン(2)をP(OMe)3 存在下ベンゼン中でクロスカップリングさせ49 の収率で黄白色

針状晶のテトラヒドロ TP-EDOT(3)が得られた3 をキシレン中 DDQ を用いて脱水素し

64 の収率で黄白色粉末の TP-EDOT(分解点 1465 ~ 1493 )が得られた

O

O S

SS

BenzeneO S+

S

SS

O

O P(OMe)3

reflux6h O

O S

SS

DDQ

Xylene

1 2 3 TP-EDOT 3 は比較的安定でありまたこの反応条件下で2 同士のホモカップリング反応が起きな

いことから3 は容易に単離できた一方TP-EDOT はその合成条件下同時に分解反応を

起こすので反応は出来るだけ短時間で行う必要があったTP-EDOT はアセトンクロロ

ホルム酸に対しては不安定でこれらの溶媒中では数分以内に分解した一方エタノ

ールメタノールベンゼンテトラヒドロフランベンゾニトリルアセトニトリル中で

は加熱条件下でも安定であったまたTP-EDOT は一部分解物を含む状態となってもシ

リカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製しなおすことが可能であった TP-EDOT と関連物質の酸化還元電位を表 1 にまとめたTP-EDOT の酸化還元電位の大

きさは TTF や BO に比べて小さくTMTTF と同程度であった TP-EDOT の錯体を( Bu4N )X ( X = PF6SbF6BF4ClO4 )の存在下定

電圧電解法により作成したPF6 塩につ

いて緑色と紫色の 2 種類の生成物が得

られたあまり大きくない電流値(約 05 microΑ)で 1 ヶ月以内に電解を停止すること

により紫色の針状結晶を選択的に得る

表 1 サイクリックボルタメトリー法による酸化還元

電位( vs SCE ) ドナー E121 V E122 V ∆ E V TP-EDOT 027 060 033 TMTTF 029 065 036 TTF 037 076 039 BEDO-TTF 043 069 026 ∆E = E121 - E122

ことができたこれ以上長い期間ある

bukka
4Pp128

いは高い電流値で電解を行うと緑色の結晶が紫色の結晶と混ざって生成することがわか

った 単結晶構造解析によって PF6 塩の紫色結晶の結晶構造を決定した(Crystal Data monoclinic C2m Z = 8 a = 16024(3) b = 23029(3) c = 7005(3) Aring β = 10390(2) deg V = 2509(1) Aring3)組成はドナー アニオン= 2 1 であった拡張ヒュッケル法によりドナー分

子同士の重なり積分を算出すると分子間相互作用は 3 次元的であったしかしどの方向

についても重なり積分の絶対値は小さかったまたドナー分子のチオピラン環にある硫黄

原子同士の分子長軸方向への相互作用も見られた(図 1 の s8 に対応する分子間での ShellipS 接

触)これらの分子間相互作用の結果計算上は 3 次元的なフェルミ面が得られた(図 2) この錯体の分子積層方

向(c 軸方向)の電気伝導

度は室温で 10-4 S cm-1

程度であり8 ~ 50 degC の

範囲で半導体的挙動が

観測された 【考察】PF6 塩はバンド計

算からは3次元的な複雑

なフェルミ面を持つし

かし積層方向の伝導度

は金属的な挙動を示さな

かったバンド幅に比べ

オンサイトクーロン反発

(U)が大きいことがそ

の原因であると考えられ

る 本 錯 体 中 で の

TP-EDOT 分子間の重な

り積分はBO 錯体中での

ドナー分子間重なり積分

の 4 分の 1 程度の大きさ

であるまたU の目安

である∆E はTP-EDOT の方が BO より

007V 大きい

a

bo

s8

s6

s5

s1

s1s1

s1s1

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6s5

s5s5

s5s5

s5

s5s5

s5

s8

s8s8

図 1 PF6塩の c 軸投影図

影をつけたドナー分子は z = 0 の平面上にあり影をつけてないドナ

ー分子は z = 05 の平面上にある重なり積分の値はそれぞれs1 =

403times10-3s5 = -192times10-3s6 = -345times10-3s8 = 396times10-3であ

った

今後はPF6塩については磁化率の測定

等を通じて電子がどのように局在化してい

るかを検討していく同時に積層方向以外

の方向における伝導度測定も試みるまた

他のカチオンラジカル塩の単結晶作成とそ

れらの構造と物性について調べていく

図 2 PF6塩のフェルミ面

クラウンエーテルを用いた超分子化学的結晶設計に基

づくヘテロスピン集合系の磁性 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2)

神崎祐貴 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 【序論】現在まで純粋な有機分子からなるフェリ磁性体の構築は成功しておらずな

お分子磁性研究の長年の課題とされている我々は以前理論的考察から基底 1重項(S = 0)ビラジカルと 2重項(S = 12)ラジカルとの反強磁性的交互 1次元鎖が広義のフェリ磁性的な基底状態を取り得ること(一般化フェリ磁性)を提案した[1]

また1次元鎖全体の基底状態はビラジカル分子内と分子間の相互作用の大小関係を圧力等の外場によって変化させるとフェリ磁性的高スピン状態と非磁性(反磁性)

状態との間で相互変換することも理論計算から予想されている[1] この理論計算の結果を実験的に検証するために図 1に示したモデル分子錯体を合成した結晶設計にはクラウンエーテルが選択的にアルカリ金属を捕獲する錯形成

力を利用した超分子結晶工学アプローチを用いたこれまでの研究でフェノキシド

ビラジカル(1-)と 15-crown-5-ether置換のモノラジカル(2) [2]との錯体[Na2]+1-(図 1)が理論を一部実証する非磁性基底状態を示すことを磁化率の測定より明らかにした[3]

本研究では新たに新奇物質である 18-crown-6-ether置換のモノラジカル(3)を合成し新しいモデル錯体としてフェノキシドビラジカル(1-)との錯体[K3]+1-(図 1)を合成した錯体の構成要素となるモノラジカルの変化によって錯体[Na2]+1-とは異なる分

子間交換相互作用が与えられ上記の理論の予言する高スピン状態(フェリ磁性的基

底状態)が得られる可能性がある 【18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)】

18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)を図 2の方法で合成した閉殻前駆体は1H NMR 13C NMR 元素分析を用いて同定したラジカル(3)の同定は元素分析溶液ESRから行った室温でのジクロロメタン溶液の ESRスペクトルを図 3に示す窒素 14N核の超微細結合定数は aN = 072 mTg値は g = 20056で典型的なニトロニルニトロキシドモノラジカルの値を示したまた常磁性磁化率pの温度依存性を図 4に示す室温でのpT値は 0372 emu K mol-1であり純度は 99であったpは Tmax = 32 Kで極大をとりBonner-Fischerモデルを仮定すると Tmaxと Jとの関係から分子間に 2JkB = -51 Kの反強磁性的な交換相互作用が働いていることになる分子のパッキングに基づく詳細な解析を行うために現在 X線結晶構造解析を行なっている

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

-

NNO

O

O O

OOO

Na

+-

+

O

O

O O

O

O

NNO

O+-

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

- K+

[Na2]+1- [K3]+1-

図 1 モデル錯体

bukka
4Pp129

0

001

002

003

004

005

006

0 50 100 150 200 250 300

p (実測)

(Bonner-Fischerモデル)

p

emu

mol

-1T K

図 4 モノラジカル(3)の磁化率

O O

O

O

O

O

Br O O

O

O

O

O

CHOt-BuLi DMF

THF

O O

O

O

O

ON

NO

ONHOH

NHOHbenzene

+-

NaIO4 H2O CH2Cl2

1)

2)

図 2 18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)の合成

326 327 328 329 330 331 332

B mT 図 3 モノラジカル(3)の ESR スペクトル(ジクロロメタン溶液室温)

【フェノキシドビラジカルの単純塩(K+1-)】 モデル錯体の構成要素の性質を明らかにするためにフェノキシドビラジカルの単

純塩(K+1-)の磁化率を測定したpT 値は温度の低下とともに単調に減少したsinglet-tripletモデル

)exp(312

BB

2B

2A

p TkETkgN

(1)

10 SESEE (2) にフィッティングさせて分子内交換相互作用E(3重項と 1重項の間のエネルギーギャップ)を見積もった結果EkB = -70 Kとなったこの結果は単純塩(K+1-)の凍結溶液 ESR禁制遷移の強度 IESRの温度変化から見積もったEkB -10 K[4]とほぼ対応

しており分子内の交換相互作用が反強磁性的なものであることが確かめられたな

おフェノキシドビラジカルのナトリウム塩(Na+1-)では凍結溶液 ESRの実験からEkB -27 13 Kであることがわかっている[3]ビラジカル分子内の交換相互作用

の大きさの違いが錯体形成後の分子集合系のスピン状態に影響を与えるものと思わ

れる 上記の構成分子を用いて[Na2]+1-と同様の方法で新奇なモデル錯体[K3]+1-を合

成した現在錯体の結晶構造解析ESRスペクトルと磁化率の測定を行なっている[Na2]+1-と[K3]+1-との磁性と構造の相違点を議論する予定である 【参考文献】 [1] D Shiomi K Sato and T Takui J Phys Chem B 105 2932 (2001) [2] M Fettouhi Mol Cryst Liq Cryst 356 365 (2001) [3] Y Kanzaki D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 22 1817(2003) [4] S Hase D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 20 1403(2001)

超分子化学アプローチによる有機フェリ

磁性体の構築と磁気的性質 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2) 早川健一 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 有機フェリ磁性体を構築するための大きな問題点として分晶化がある分晶化を避

け異なるスピン量子数を持つ有機ラジカル(たとえばモノラジカル(S = 12)と

ビラジカル(S = 1))を共結晶化させる方法として超分子化学アプローチがある

これは選択的な分子間引力(水素結合やイオン電荷によるクーロン力)によって異

種成分を連結する方法である(図 1)[1]現在までのところ水素結合やイオン電荷

によるビラジカルとモノラジカルの共結晶化の試みは一部報告例があるが[2]結晶

構造まで確定した成功例はない

N

NN

NN

O

O

N

N

O

O

X

+

_

X = COOH(2) OH(3)

(1)

NN

N

N

N

OO

Me

+

N NO O+ _

Y _

Y = COO- O-

(a)水素結合アプローチ (b)有機塩アプローチ(イオン電荷によるクー

ロン力)

図 1 ビラジカルとモノラジカルの共結晶化

本研究ではピリジンの 26-位にイミノニトロキシドを導入したビラジカル(1)と安

息香酸(2)もしくはフェノール(3)置換のニトロニルニトロキシドモノラジカルを水素

結合によって連結する方法を試みた(図 1a) ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)は対応するジアルデヒドから 3 段

階で合成した(図 2)

N CHOOHC NNN

NN

OHHO

HOOHMeOH

NNOHNNOH SeO2

MeOHNN

NN

N

OHHO PbO2

CH2Cl2NN

NN

N

OO

(1)

図 2 ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)の合成

bukka
4Pp130

ビラジカル 1の磁化率を図 3 に示す分子間の平均場θを取り入れた Singlet-Tripletモデル

)2exp(31

)(2

BB

2B

2A

p TkJTkgN

minus+times

minus=

θmicro

χ (1)

により分子内の交換相互作用は 2JkB = +14 K分子間相互作用はθ = -3 K であるこ

とがわかった分子内の交換相互作用が強

磁性的であることはPVC(ポリ塩化ビニ

ル)による固相希釈系の実験(図 3)から

確かめられたビラジカル(1)は超分子フ

ェリ磁性体の構成要素として用いることが

できることがわかった

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

diluted in PVC(JkB = 7K)

neat(JkB = 7K θ = -3K)

-------

____

obscalc

calcobs

図 3 ビラジカル(1)の磁化率 (χpT-T プロット)

ビラジカル(1)と安息香酸置換モノラジ

カル(2)との共結晶体(分子錯体 1-2)は

エタノール溶液からの再結晶により得られ

た元素分析から組成は 11 であること

がわかった磁化率の測定結果を図 4 に示

す室温(300 K)でのχpT の値は分子錯

体 1 モル(S = 12 スピン 3 モル)の高温極

限の予測値(113 emu K mol-1)を下回って

おり分子間の反強磁性相互作用がかなり

大きいことを示唆するまた20 K 付近で

χpT の減少が一旦鈍って停留値をとってい

るこれらの結果はビラジカル(1)の磁化

率(図 3)とモノラジカル(2)の磁化率[3]の単純な和では説明できない現在X 線結

晶構造解析を行なっている

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

図 4 分子錯体 1-2の磁化率

(χpT-T プロット)

フェノール置換モノラジカル(3)による

水素結合アプローチと有機塩アプローチ

による共結晶化を現在進めている [1] D Shiomi K Ito M Nishizawa S Hase K Sato T Takui Mol Cryst Liq Cryst 334 99(1999) [2] 伊瀬智章石田尚行野上隆第 76 春

季年会 4C538(1999) [3] K Inoue H Iwamura Chem Phys Lett 207 551(1993)

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

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2 C )4

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| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 11: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

単一成分分子から成る TTF 型ジチオラトコバルト

錯体の合成構造と物性

(東大院理 1名大院工 2分子研 3科技団 CREST4) 藤原絵美子 1小林昭子 1

藤城雄一 2西堀英治 2 田昌樹 2坂田誠 2藤原秀紀 34小林速男 34

【序】通常単一成分から成る分子性結晶は構成分子の分子軌道が分子間で重な

ることによって出来るバンドが 子によって完全に満たされているか完全に空で

あるかのいずれかである従ってこのような分子性結晶は構成原子が結晶を形

成する際に自発的に金属バンドの形成と自由 子の発生をもたらす金属結晶とは対

照的で絶縁体の典型であると考えられていた 年極低温まで金属状態が安定

な単一成分 TTF 型ジチオラト金属錯体 [Ni(tmdt)2] が開発されde Haas-van

Alphen 効果の観測により Fermi 面を持つ金属であることが証明されたまた中心

金属に磁性金属を導入した[Cu(dmdt)2]では 80の Cu2+の 12 spin が局在しながら

い伝導性を示す常磁性体であることが判る等単一成分分子から成る金属錯体に

おいて興味深い物性が見出されている今回我々はTTF 型ジチオラト金属錯体

に基づく新 な単一成分分子伝導体の開発を目指し中心金属にコバルト原子を導

入した TTF 型ジチオラト金属錯体[Co(dt)2]2を合成しその構造と物性を調べた

【実験および考察】前駆体であるコバルト錯体(Me4N)2[Co(dt)2]はシアノエチルチ

オ基が置換した TTF を THF 中で 25 wt Me4NmiddotOHMeOH 溶液を用いて加水分した後CoCl2middot6H2OMeOH 溶液と反応させることにより紫色を帯びた灰色粉末として得られたさらにこの錯体を nBu4NmiddotClO4を含む PhCN 溶液中で定 流

法(05 mA)を用いて 酸化することにより[Co(dt)2]2 の微小な 色針状結晶が得

られたSPring-8 の放射光ビームライン BL02B2 を用いて X線粉末回折実験を行い

GA (genetic algorithm)と Rietveld 析により得られた錯体の構造を決定した

Crystal data for [Co(dt)2]2 triclinic P`1 a = 117185 (3) b = 109513 (2) c = 77336(1) Aring a = 79737( 2) b = 96474(2) g = 113973(2)deg V = 89145(7) Aring3 Z = 1 Rwp =0053 RI = 0082 この錯体は二個の Co(dt)2ユニットが 312 Aringの面間 離で分子

および短 方向にそれぞれ 130 そして 165 Aring ずつスライドして face-to-faceで重なり各々のユニットのコバルトと硫 原子間でユニット間配位結合(Co-S =

2425 Aring)を持つ特徴的な構造を示す(Fig 1)分子内の二個の Co(dt)2 位はいす形

に大きく折れ曲がりCo1-S1-S2 面と Co1-S7-S8 面との二面 は 121degであった

bukka
4Pp127

Co(dt)2 ユニット間には幾つかの短い S S 離(lt 37 Aring)が見られた結晶中では各々の[Co(dt)2]2 分子が 347 Aring の面間 離で分子 および短 方向にそれぞ

れ 092 そして 173 Aringずつスライドしながら face-to-face で[0 0 1]方向に積層した構造を持つ(Fig 2a)積層方向には短い分子間 S S 離が一種 だけ見られた

さらに[Co(dt)2]2分子は[1 0 0][1 1 0][2 1 0]方向に位置する六個の分子によっ

て分子短 と 方向を囲まれ[1 0 0][1 1 0]方向に 接する分子との間には数

多くの短い S S 離が確認された(Fig 2b)拡張 Huumlckel 法を用いて重なり積分を算したその結果短い S S 離が数多く存在する[1 0 0][1 1 0]方向の分子

との間で大きな重なり積分値が与えられこの錯体はスタック方向よりもむしろ分

子横方向に相互作用が強いことが判った四端子法を用いて[Co(dt)2]2 の加圧成形

料の 気抵抗を室温から 055 K までの温度領域で調べた(Fig 3)加圧成形 料の測

定であるにも拘わらず[Co(dt)2]2は 19 Smiddotcm-1と比 的大きな室温伝導度を示した

抵抗の温度依存性は冷却に伴って室温から緩やかに上昇するがこの錯体は低温

においても 伝導性[s(055 K)srt ordf 110]を示していることからこの錯体は本

的には低温 まで金属である可能性が示唆

される5 kOe の磁場下[Co(dt)2]2 の多結

晶 料の 磁化率を 19-300 K の温度領域

で調べた[Co(dt)2]2の室温 磁化率は 35 x

10-4 emumiddotmol-1であった 磁化率の温度依

存性は低温 において僅かに上昇するが50-300 K の

温度領域においてほぼ一定の値を示したユニット間

配位結合が存在した特徴的な分子構造を持つためこ

の錯体の磁性に対するコバルトスピンの寄与は殆ど無

いかもしくは 常に小さいことが推測される

21 世紀 COE プログラム「フロンティア基礎化学」研究拠点

形成事業のもとに研究を行った

新規ドナー チオピラニリデン-エチレンジオキシ ジチオール分子の合成とその錯体作成

(京大院理) 添田雅也萩原潤矢持秀起斎藤軍治 【序】BEDO-TTF(BO)分子は 5 員環硫黄原子を用いた分子短軸方向への分子間硫黄hellip硫

黄接触と末端エチレンジオキシ基を用いた積層方向への弱い水素結合形成によって錯体

中で自己凝集構造を構築する能力を持っているこのためBO 錯体は金属状態が低温まで

安定であるしかし錯体中で BO 分子は分子長軸方向における相互作用をほとんど示さな

いそこで対成分との相互作用の向上を目指してBO 分子の部分構造をもちかつチオ

ピラン環をもつ新規ドナーチオピラニリデン-エチレンジオキシジチオール(TP-EDOT)分子を合成した今回この TP-EDOT の合成精製およびその PF6塩の構造と物性につ

いて検討したので報告する 【実験と結果】エチレンジオキシ-13-ジチオール-2-チオン(1)とテトラヒドロ-4H-チオピラン

-4-オン(2)をP(OMe)3 存在下ベンゼン中でクロスカップリングさせ49 の収率で黄白色

針状晶のテトラヒドロ TP-EDOT(3)が得られた3 をキシレン中 DDQ を用いて脱水素し

64 の収率で黄白色粉末の TP-EDOT(分解点 1465 ~ 1493 )が得られた

O

O S

SS

BenzeneO S+

S

SS

O

O P(OMe)3

reflux6h O

O S

SS

DDQ

Xylene

1 2 3 TP-EDOT 3 は比較的安定でありまたこの反応条件下で2 同士のホモカップリング反応が起きな

いことから3 は容易に単離できた一方TP-EDOT はその合成条件下同時に分解反応を

起こすので反応は出来るだけ短時間で行う必要があったTP-EDOT はアセトンクロロ

ホルム酸に対しては不安定でこれらの溶媒中では数分以内に分解した一方エタノ

ールメタノールベンゼンテトラヒドロフランベンゾニトリルアセトニトリル中で

は加熱条件下でも安定であったまたTP-EDOT は一部分解物を含む状態となってもシ

リカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製しなおすことが可能であった TP-EDOT と関連物質の酸化還元電位を表 1 にまとめたTP-EDOT の酸化還元電位の大

きさは TTF や BO に比べて小さくTMTTF と同程度であった TP-EDOT の錯体を( Bu4N )X ( X = PF6SbF6BF4ClO4 )の存在下定

電圧電解法により作成したPF6 塩につ

いて緑色と紫色の 2 種類の生成物が得

られたあまり大きくない電流値(約 05 microΑ)で 1 ヶ月以内に電解を停止すること

により紫色の針状結晶を選択的に得る

表 1 サイクリックボルタメトリー法による酸化還元

電位( vs SCE ) ドナー E121 V E122 V ∆ E V TP-EDOT 027 060 033 TMTTF 029 065 036 TTF 037 076 039 BEDO-TTF 043 069 026 ∆E = E121 - E122

ことができたこれ以上長い期間ある

bukka
4Pp128

いは高い電流値で電解を行うと緑色の結晶が紫色の結晶と混ざって生成することがわか

った 単結晶構造解析によって PF6 塩の紫色結晶の結晶構造を決定した(Crystal Data monoclinic C2m Z = 8 a = 16024(3) b = 23029(3) c = 7005(3) Aring β = 10390(2) deg V = 2509(1) Aring3)組成はドナー アニオン= 2 1 であった拡張ヒュッケル法によりドナー分

子同士の重なり積分を算出すると分子間相互作用は 3 次元的であったしかしどの方向

についても重なり積分の絶対値は小さかったまたドナー分子のチオピラン環にある硫黄

原子同士の分子長軸方向への相互作用も見られた(図 1 の s8 に対応する分子間での ShellipS 接

触)これらの分子間相互作用の結果計算上は 3 次元的なフェルミ面が得られた(図 2) この錯体の分子積層方

向(c 軸方向)の電気伝導

度は室温で 10-4 S cm-1

程度であり8 ~ 50 degC の

範囲で半導体的挙動が

観測された 【考察】PF6 塩はバンド計

算からは3次元的な複雑

なフェルミ面を持つし

かし積層方向の伝導度

は金属的な挙動を示さな

かったバンド幅に比べ

オンサイトクーロン反発

(U)が大きいことがそ

の原因であると考えられ

る 本 錯 体 中 で の

TP-EDOT 分子間の重な

り積分はBO 錯体中での

ドナー分子間重なり積分

の 4 分の 1 程度の大きさ

であるまたU の目安

である∆E はTP-EDOT の方が BO より

007V 大きい

a

bo

s8

s6

s5

s1

s1s1

s1s1

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6s5

s5s5

s5s5

s5

s5s5

s5

s8

s8s8

図 1 PF6塩の c 軸投影図

影をつけたドナー分子は z = 0 の平面上にあり影をつけてないドナ

ー分子は z = 05 の平面上にある重なり積分の値はそれぞれs1 =

403times10-3s5 = -192times10-3s6 = -345times10-3s8 = 396times10-3であ

った

今後はPF6塩については磁化率の測定

等を通じて電子がどのように局在化してい

るかを検討していく同時に積層方向以外

の方向における伝導度測定も試みるまた

他のカチオンラジカル塩の単結晶作成とそ

れらの構造と物性について調べていく

図 2 PF6塩のフェルミ面

クラウンエーテルを用いた超分子化学的結晶設計に基

づくヘテロスピン集合系の磁性 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2)

神崎祐貴 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 【序論】現在まで純粋な有機分子からなるフェリ磁性体の構築は成功しておらずな

お分子磁性研究の長年の課題とされている我々は以前理論的考察から基底 1重項(S = 0)ビラジカルと 2重項(S = 12)ラジカルとの反強磁性的交互 1次元鎖が広義のフェリ磁性的な基底状態を取り得ること(一般化フェリ磁性)を提案した[1]

また1次元鎖全体の基底状態はビラジカル分子内と分子間の相互作用の大小関係を圧力等の外場によって変化させるとフェリ磁性的高スピン状態と非磁性(反磁性)

状態との間で相互変換することも理論計算から予想されている[1] この理論計算の結果を実験的に検証するために図 1に示したモデル分子錯体を合成した結晶設計にはクラウンエーテルが選択的にアルカリ金属を捕獲する錯形成

力を利用した超分子結晶工学アプローチを用いたこれまでの研究でフェノキシド

ビラジカル(1-)と 15-crown-5-ether置換のモノラジカル(2) [2]との錯体[Na2]+1-(図 1)が理論を一部実証する非磁性基底状態を示すことを磁化率の測定より明らかにした[3]

本研究では新たに新奇物質である 18-crown-6-ether置換のモノラジカル(3)を合成し新しいモデル錯体としてフェノキシドビラジカル(1-)との錯体[K3]+1-(図 1)を合成した錯体の構成要素となるモノラジカルの変化によって錯体[Na2]+1-とは異なる分

子間交換相互作用が与えられ上記の理論の予言する高スピン状態(フェリ磁性的基

底状態)が得られる可能性がある 【18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)】

18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)を図 2の方法で合成した閉殻前駆体は1H NMR 13C NMR 元素分析を用いて同定したラジカル(3)の同定は元素分析溶液ESRから行った室温でのジクロロメタン溶液の ESRスペクトルを図 3に示す窒素 14N核の超微細結合定数は aN = 072 mTg値は g = 20056で典型的なニトロニルニトロキシドモノラジカルの値を示したまた常磁性磁化率pの温度依存性を図 4に示す室温でのpT値は 0372 emu K mol-1であり純度は 99であったpは Tmax = 32 Kで極大をとりBonner-Fischerモデルを仮定すると Tmaxと Jとの関係から分子間に 2JkB = -51 Kの反強磁性的な交換相互作用が働いていることになる分子のパッキングに基づく詳細な解析を行うために現在 X線結晶構造解析を行なっている

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

-

NNO

O

O O

OOO

Na

+-

+

O

O

O O

O

O

NNO

O+-

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

- K+

[Na2]+1- [K3]+1-

図 1 モデル錯体

bukka
4Pp129

0

001

002

003

004

005

006

0 50 100 150 200 250 300

p (実測)

(Bonner-Fischerモデル)

p

emu

mol

-1T K

図 4 モノラジカル(3)の磁化率

O O

O

O

O

O

Br O O

O

O

O

O

CHOt-BuLi DMF

THF

O O

O

O

O

ON

NO

ONHOH

NHOHbenzene

+-

NaIO4 H2O CH2Cl2

1)

2)

図 2 18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)の合成

326 327 328 329 330 331 332

B mT 図 3 モノラジカル(3)の ESR スペクトル(ジクロロメタン溶液室温)

【フェノキシドビラジカルの単純塩(K+1-)】 モデル錯体の構成要素の性質を明らかにするためにフェノキシドビラジカルの単

純塩(K+1-)の磁化率を測定したpT 値は温度の低下とともに単調に減少したsinglet-tripletモデル

)exp(312

BB

2B

2A

p TkETkgN

(1)

10 SESEE (2) にフィッティングさせて分子内交換相互作用E(3重項と 1重項の間のエネルギーギャップ)を見積もった結果EkB = -70 Kとなったこの結果は単純塩(K+1-)の凍結溶液 ESR禁制遷移の強度 IESRの温度変化から見積もったEkB -10 K[4]とほぼ対応

しており分子内の交換相互作用が反強磁性的なものであることが確かめられたな

おフェノキシドビラジカルのナトリウム塩(Na+1-)では凍結溶液 ESRの実験からEkB -27 13 Kであることがわかっている[3]ビラジカル分子内の交換相互作用

の大きさの違いが錯体形成後の分子集合系のスピン状態に影響を与えるものと思わ

れる 上記の構成分子を用いて[Na2]+1-と同様の方法で新奇なモデル錯体[K3]+1-を合

成した現在錯体の結晶構造解析ESRスペクトルと磁化率の測定を行なっている[Na2]+1-と[K3]+1-との磁性と構造の相違点を議論する予定である 【参考文献】 [1] D Shiomi K Sato and T Takui J Phys Chem B 105 2932 (2001) [2] M Fettouhi Mol Cryst Liq Cryst 356 365 (2001) [3] Y Kanzaki D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 22 1817(2003) [4] S Hase D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 20 1403(2001)

超分子化学アプローチによる有機フェリ

磁性体の構築と磁気的性質 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2) 早川健一 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 有機フェリ磁性体を構築するための大きな問題点として分晶化がある分晶化を避

け異なるスピン量子数を持つ有機ラジカル(たとえばモノラジカル(S = 12)と

ビラジカル(S = 1))を共結晶化させる方法として超分子化学アプローチがある

これは選択的な分子間引力(水素結合やイオン電荷によるクーロン力)によって異

種成分を連結する方法である(図 1)[1]現在までのところ水素結合やイオン電荷

によるビラジカルとモノラジカルの共結晶化の試みは一部報告例があるが[2]結晶

構造まで確定した成功例はない

N

NN

NN

O

O

N

N

O

O

X

+

_

X = COOH(2) OH(3)

(1)

NN

N

N

N

OO

Me

+

N NO O+ _

Y _

Y = COO- O-

(a)水素結合アプローチ (b)有機塩アプローチ(イオン電荷によるクー

ロン力)

図 1 ビラジカルとモノラジカルの共結晶化

本研究ではピリジンの 26-位にイミノニトロキシドを導入したビラジカル(1)と安

息香酸(2)もしくはフェノール(3)置換のニトロニルニトロキシドモノラジカルを水素

結合によって連結する方法を試みた(図 1a) ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)は対応するジアルデヒドから 3 段

階で合成した(図 2)

N CHOOHC NNN

NN

OHHO

HOOHMeOH

NNOHNNOH SeO2

MeOHNN

NN

N

OHHO PbO2

CH2Cl2NN

NN

N

OO

(1)

図 2 ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)の合成

bukka
4Pp130

ビラジカル 1の磁化率を図 3 に示す分子間の平均場θを取り入れた Singlet-Tripletモデル

)2exp(31

)(2

BB

2B

2A

p TkJTkgN

minus+times

minus=

θmicro

χ (1)

により分子内の交換相互作用は 2JkB = +14 K分子間相互作用はθ = -3 K であるこ

とがわかった分子内の交換相互作用が強

磁性的であることはPVC(ポリ塩化ビニ

ル)による固相希釈系の実験(図 3)から

確かめられたビラジカル(1)は超分子フ

ェリ磁性体の構成要素として用いることが

できることがわかった

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

diluted in PVC(JkB = 7K)

neat(JkB = 7K θ = -3K)

-------

____

obscalc

calcobs

図 3 ビラジカル(1)の磁化率 (χpT-T プロット)

ビラジカル(1)と安息香酸置換モノラジ

カル(2)との共結晶体(分子錯体 1-2)は

エタノール溶液からの再結晶により得られ

た元素分析から組成は 11 であること

がわかった磁化率の測定結果を図 4 に示

す室温(300 K)でのχpT の値は分子錯

体 1 モル(S = 12 スピン 3 モル)の高温極

限の予測値(113 emu K mol-1)を下回って

おり分子間の反強磁性相互作用がかなり

大きいことを示唆するまた20 K 付近で

χpT の減少が一旦鈍って停留値をとってい

るこれらの結果はビラジカル(1)の磁化

率(図 3)とモノラジカル(2)の磁化率[3]の単純な和では説明できない現在X 線結

晶構造解析を行なっている

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

図 4 分子錯体 1-2の磁化率

(χpT-T プロット)

フェノール置換モノラジカル(3)による

水素結合アプローチと有機塩アプローチ

による共結晶化を現在進めている [1] D Shiomi K Ito M Nishizawa S Hase K Sato T Takui Mol Cryst Liq Cryst 334 99(1999) [2] 伊瀬智章石田尚行野上隆第 76 春

季年会 4C538(1999) [3] K Inoue H Iwamura Chem Phys Lett 207 551(1993)

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 12: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

Co(dt)2 ユニット間には幾つかの短い S S 離(lt 37 Aring)が見られた結晶中では各々の[Co(dt)2]2 分子が 347 Aring の面間 離で分子 および短 方向にそれぞ

れ 092 そして 173 Aringずつスライドしながら face-to-face で[0 0 1]方向に積層した構造を持つ(Fig 2a)積層方向には短い分子間 S S 離が一種 だけ見られた

さらに[Co(dt)2]2分子は[1 0 0][1 1 0][2 1 0]方向に位置する六個の分子によっ

て分子短 と 方向を囲まれ[1 0 0][1 1 0]方向に 接する分子との間には数

多くの短い S S 離が確認された(Fig 2b)拡張 Huumlckel 法を用いて重なり積分を算したその結果短い S S 離が数多く存在する[1 0 0][1 1 0]方向の分子

との間で大きな重なり積分値が与えられこの錯体はスタック方向よりもむしろ分

子横方向に相互作用が強いことが判った四端子法を用いて[Co(dt)2]2 の加圧成形

料の 気抵抗を室温から 055 K までの温度領域で調べた(Fig 3)加圧成形 料の測

定であるにも拘わらず[Co(dt)2]2は 19 Smiddotcm-1と比 的大きな室温伝導度を示した

抵抗の温度依存性は冷却に伴って室温から緩やかに上昇するがこの錯体は低温

においても 伝導性[s(055 K)srt ordf 110]を示していることからこの錯体は本

的には低温 まで金属である可能性が示唆

される5 kOe の磁場下[Co(dt)2]2 の多結

晶 料の 磁化率を 19-300 K の温度領域

で調べた[Co(dt)2]2の室温 磁化率は 35 x

10-4 emumiddotmol-1であった 磁化率の温度依

存性は低温 において僅かに上昇するが50-300 K の

温度領域においてほぼ一定の値を示したユニット間

配位結合が存在した特徴的な分子構造を持つためこ

の錯体の磁性に対するコバルトスピンの寄与は殆ど無

いかもしくは 常に小さいことが推測される

21 世紀 COE プログラム「フロンティア基礎化学」研究拠点

形成事業のもとに研究を行った

新規ドナー チオピラニリデン-エチレンジオキシ ジチオール分子の合成とその錯体作成

(京大院理) 添田雅也萩原潤矢持秀起斎藤軍治 【序】BEDO-TTF(BO)分子は 5 員環硫黄原子を用いた分子短軸方向への分子間硫黄hellip硫

黄接触と末端エチレンジオキシ基を用いた積層方向への弱い水素結合形成によって錯体

中で自己凝集構造を構築する能力を持っているこのためBO 錯体は金属状態が低温まで

安定であるしかし錯体中で BO 分子は分子長軸方向における相互作用をほとんど示さな

いそこで対成分との相互作用の向上を目指してBO 分子の部分構造をもちかつチオ

ピラン環をもつ新規ドナーチオピラニリデン-エチレンジオキシジチオール(TP-EDOT)分子を合成した今回この TP-EDOT の合成精製およびその PF6塩の構造と物性につ

いて検討したので報告する 【実験と結果】エチレンジオキシ-13-ジチオール-2-チオン(1)とテトラヒドロ-4H-チオピラン

-4-オン(2)をP(OMe)3 存在下ベンゼン中でクロスカップリングさせ49 の収率で黄白色

針状晶のテトラヒドロ TP-EDOT(3)が得られた3 をキシレン中 DDQ を用いて脱水素し

64 の収率で黄白色粉末の TP-EDOT(分解点 1465 ~ 1493 )が得られた

O

O S

SS

BenzeneO S+

S

SS

O

O P(OMe)3

reflux6h O

O S

SS

DDQ

Xylene

1 2 3 TP-EDOT 3 は比較的安定でありまたこの反応条件下で2 同士のホモカップリング反応が起きな

いことから3 は容易に単離できた一方TP-EDOT はその合成条件下同時に分解反応を

起こすので反応は出来るだけ短時間で行う必要があったTP-EDOT はアセトンクロロ

ホルム酸に対しては不安定でこれらの溶媒中では数分以内に分解した一方エタノ

ールメタノールベンゼンテトラヒドロフランベンゾニトリルアセトニトリル中で

は加熱条件下でも安定であったまたTP-EDOT は一部分解物を含む状態となってもシ

リカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製しなおすことが可能であった TP-EDOT と関連物質の酸化還元電位を表 1 にまとめたTP-EDOT の酸化還元電位の大

きさは TTF や BO に比べて小さくTMTTF と同程度であった TP-EDOT の錯体を( Bu4N )X ( X = PF6SbF6BF4ClO4 )の存在下定

電圧電解法により作成したPF6 塩につ

いて緑色と紫色の 2 種類の生成物が得

られたあまり大きくない電流値(約 05 microΑ)で 1 ヶ月以内に電解を停止すること

により紫色の針状結晶を選択的に得る

表 1 サイクリックボルタメトリー法による酸化還元

電位( vs SCE ) ドナー E121 V E122 V ∆ E V TP-EDOT 027 060 033 TMTTF 029 065 036 TTF 037 076 039 BEDO-TTF 043 069 026 ∆E = E121 - E122

ことができたこれ以上長い期間ある

bukka
4Pp128

いは高い電流値で電解を行うと緑色の結晶が紫色の結晶と混ざって生成することがわか

った 単結晶構造解析によって PF6 塩の紫色結晶の結晶構造を決定した(Crystal Data monoclinic C2m Z = 8 a = 16024(3) b = 23029(3) c = 7005(3) Aring β = 10390(2) deg V = 2509(1) Aring3)組成はドナー アニオン= 2 1 であった拡張ヒュッケル法によりドナー分

子同士の重なり積分を算出すると分子間相互作用は 3 次元的であったしかしどの方向

についても重なり積分の絶対値は小さかったまたドナー分子のチオピラン環にある硫黄

原子同士の分子長軸方向への相互作用も見られた(図 1 の s8 に対応する分子間での ShellipS 接

触)これらの分子間相互作用の結果計算上は 3 次元的なフェルミ面が得られた(図 2) この錯体の分子積層方

向(c 軸方向)の電気伝導

度は室温で 10-4 S cm-1

程度であり8 ~ 50 degC の

範囲で半導体的挙動が

観測された 【考察】PF6 塩はバンド計

算からは3次元的な複雑

なフェルミ面を持つし

かし積層方向の伝導度

は金属的な挙動を示さな

かったバンド幅に比べ

オンサイトクーロン反発

(U)が大きいことがそ

の原因であると考えられ

る 本 錯 体 中 で の

TP-EDOT 分子間の重な

り積分はBO 錯体中での

ドナー分子間重なり積分

の 4 分の 1 程度の大きさ

であるまたU の目安

である∆E はTP-EDOT の方が BO より

007V 大きい

a

bo

s8

s6

s5

s1

s1s1

s1s1

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6s5

s5s5

s5s5

s5

s5s5

s5

s8

s8s8

図 1 PF6塩の c 軸投影図

影をつけたドナー分子は z = 0 の平面上にあり影をつけてないドナ

ー分子は z = 05 の平面上にある重なり積分の値はそれぞれs1 =

403times10-3s5 = -192times10-3s6 = -345times10-3s8 = 396times10-3であ

った

今後はPF6塩については磁化率の測定

等を通じて電子がどのように局在化してい

るかを検討していく同時に積層方向以外

の方向における伝導度測定も試みるまた

他のカチオンラジカル塩の単結晶作成とそ

れらの構造と物性について調べていく

図 2 PF6塩のフェルミ面

クラウンエーテルを用いた超分子化学的結晶設計に基

づくヘテロスピン集合系の磁性 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2)

神崎祐貴 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 【序論】現在まで純粋な有機分子からなるフェリ磁性体の構築は成功しておらずな

お分子磁性研究の長年の課題とされている我々は以前理論的考察から基底 1重項(S = 0)ビラジカルと 2重項(S = 12)ラジカルとの反強磁性的交互 1次元鎖が広義のフェリ磁性的な基底状態を取り得ること(一般化フェリ磁性)を提案した[1]

また1次元鎖全体の基底状態はビラジカル分子内と分子間の相互作用の大小関係を圧力等の外場によって変化させるとフェリ磁性的高スピン状態と非磁性(反磁性)

状態との間で相互変換することも理論計算から予想されている[1] この理論計算の結果を実験的に検証するために図 1に示したモデル分子錯体を合成した結晶設計にはクラウンエーテルが選択的にアルカリ金属を捕獲する錯形成

力を利用した超分子結晶工学アプローチを用いたこれまでの研究でフェノキシド

ビラジカル(1-)と 15-crown-5-ether置換のモノラジカル(2) [2]との錯体[Na2]+1-(図 1)が理論を一部実証する非磁性基底状態を示すことを磁化率の測定より明らかにした[3]

本研究では新たに新奇物質である 18-crown-6-ether置換のモノラジカル(3)を合成し新しいモデル錯体としてフェノキシドビラジカル(1-)との錯体[K3]+1-(図 1)を合成した錯体の構成要素となるモノラジカルの変化によって錯体[Na2]+1-とは異なる分

子間交換相互作用が与えられ上記の理論の予言する高スピン状態(フェリ磁性的基

底状態)が得られる可能性がある 【18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)】

18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)を図 2の方法で合成した閉殻前駆体は1H NMR 13C NMR 元素分析を用いて同定したラジカル(3)の同定は元素分析溶液ESRから行った室温でのジクロロメタン溶液の ESRスペクトルを図 3に示す窒素 14N核の超微細結合定数は aN = 072 mTg値は g = 20056で典型的なニトロニルニトロキシドモノラジカルの値を示したまた常磁性磁化率pの温度依存性を図 4に示す室温でのpT値は 0372 emu K mol-1であり純度は 99であったpは Tmax = 32 Kで極大をとりBonner-Fischerモデルを仮定すると Tmaxと Jとの関係から分子間に 2JkB = -51 Kの反強磁性的な交換相互作用が働いていることになる分子のパッキングに基づく詳細な解析を行うために現在 X線結晶構造解析を行なっている

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

-

NNO

O

O O

OOO

Na

+-

+

O

O

O O

O

O

NNO

O+-

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

- K+

[Na2]+1- [K3]+1-

図 1 モデル錯体

bukka
4Pp129

0

001

002

003

004

005

006

0 50 100 150 200 250 300

p (実測)

(Bonner-Fischerモデル)

p

emu

mol

-1T K

図 4 モノラジカル(3)の磁化率

O O

O

O

O

O

Br O O

O

O

O

O

CHOt-BuLi DMF

THF

O O

O

O

O

ON

NO

ONHOH

NHOHbenzene

+-

NaIO4 H2O CH2Cl2

1)

2)

図 2 18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)の合成

326 327 328 329 330 331 332

B mT 図 3 モノラジカル(3)の ESR スペクトル(ジクロロメタン溶液室温)

【フェノキシドビラジカルの単純塩(K+1-)】 モデル錯体の構成要素の性質を明らかにするためにフェノキシドビラジカルの単

純塩(K+1-)の磁化率を測定したpT 値は温度の低下とともに単調に減少したsinglet-tripletモデル

)exp(312

BB

2B

2A

p TkETkgN

(1)

10 SESEE (2) にフィッティングさせて分子内交換相互作用E(3重項と 1重項の間のエネルギーギャップ)を見積もった結果EkB = -70 Kとなったこの結果は単純塩(K+1-)の凍結溶液 ESR禁制遷移の強度 IESRの温度変化から見積もったEkB -10 K[4]とほぼ対応

しており分子内の交換相互作用が反強磁性的なものであることが確かめられたな

おフェノキシドビラジカルのナトリウム塩(Na+1-)では凍結溶液 ESRの実験からEkB -27 13 Kであることがわかっている[3]ビラジカル分子内の交換相互作用

の大きさの違いが錯体形成後の分子集合系のスピン状態に影響を与えるものと思わ

れる 上記の構成分子を用いて[Na2]+1-と同様の方法で新奇なモデル錯体[K3]+1-を合

成した現在錯体の結晶構造解析ESRスペクトルと磁化率の測定を行なっている[Na2]+1-と[K3]+1-との磁性と構造の相違点を議論する予定である 【参考文献】 [1] D Shiomi K Sato and T Takui J Phys Chem B 105 2932 (2001) [2] M Fettouhi Mol Cryst Liq Cryst 356 365 (2001) [3] Y Kanzaki D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 22 1817(2003) [4] S Hase D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 20 1403(2001)

超分子化学アプローチによる有機フェリ

磁性体の構築と磁気的性質 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2) 早川健一 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 有機フェリ磁性体を構築するための大きな問題点として分晶化がある分晶化を避

け異なるスピン量子数を持つ有機ラジカル(たとえばモノラジカル(S = 12)と

ビラジカル(S = 1))を共結晶化させる方法として超分子化学アプローチがある

これは選択的な分子間引力(水素結合やイオン電荷によるクーロン力)によって異

種成分を連結する方法である(図 1)[1]現在までのところ水素結合やイオン電荷

によるビラジカルとモノラジカルの共結晶化の試みは一部報告例があるが[2]結晶

構造まで確定した成功例はない

N

NN

NN

O

O

N

N

O

O

X

+

_

X = COOH(2) OH(3)

(1)

NN

N

N

N

OO

Me

+

N NO O+ _

Y _

Y = COO- O-

(a)水素結合アプローチ (b)有機塩アプローチ(イオン電荷によるクー

ロン力)

図 1 ビラジカルとモノラジカルの共結晶化

本研究ではピリジンの 26-位にイミノニトロキシドを導入したビラジカル(1)と安

息香酸(2)もしくはフェノール(3)置換のニトロニルニトロキシドモノラジカルを水素

結合によって連結する方法を試みた(図 1a) ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)は対応するジアルデヒドから 3 段

階で合成した(図 2)

N CHOOHC NNN

NN

OHHO

HOOHMeOH

NNOHNNOH SeO2

MeOHNN

NN

N

OHHO PbO2

CH2Cl2NN

NN

N

OO

(1)

図 2 ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)の合成

bukka
4Pp130

ビラジカル 1の磁化率を図 3 に示す分子間の平均場θを取り入れた Singlet-Tripletモデル

)2exp(31

)(2

BB

2B

2A

p TkJTkgN

minus+times

minus=

θmicro

χ (1)

により分子内の交換相互作用は 2JkB = +14 K分子間相互作用はθ = -3 K であるこ

とがわかった分子内の交換相互作用が強

磁性的であることはPVC(ポリ塩化ビニ

ル)による固相希釈系の実験(図 3)から

確かめられたビラジカル(1)は超分子フ

ェリ磁性体の構成要素として用いることが

できることがわかった

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

diluted in PVC(JkB = 7K)

neat(JkB = 7K θ = -3K)

-------

____

obscalc

calcobs

図 3 ビラジカル(1)の磁化率 (χpT-T プロット)

ビラジカル(1)と安息香酸置換モノラジ

カル(2)との共結晶体(分子錯体 1-2)は

エタノール溶液からの再結晶により得られ

た元素分析から組成は 11 であること

がわかった磁化率の測定結果を図 4 に示

す室温(300 K)でのχpT の値は分子錯

体 1 モル(S = 12 スピン 3 モル)の高温極

限の予測値(113 emu K mol-1)を下回って

おり分子間の反強磁性相互作用がかなり

大きいことを示唆するまた20 K 付近で

χpT の減少が一旦鈍って停留値をとってい

るこれらの結果はビラジカル(1)の磁化

率(図 3)とモノラジカル(2)の磁化率[3]の単純な和では説明できない現在X 線結

晶構造解析を行なっている

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

図 4 分子錯体 1-2の磁化率

(χpT-T プロット)

フェノール置換モノラジカル(3)による

水素結合アプローチと有機塩アプローチ

による共結晶化を現在進めている [1] D Shiomi K Ito M Nishizawa S Hase K Sato T Takui Mol Cryst Liq Cryst 334 99(1999) [2] 伊瀬智章石田尚行野上隆第 76 春

季年会 4C538(1999) [3] K Inoue H Iwamura Chem Phys Lett 207 551(1993)

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

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nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 13: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

新規ドナー チオピラニリデン-エチレンジオキシ ジチオール分子の合成とその錯体作成

(京大院理) 添田雅也萩原潤矢持秀起斎藤軍治 【序】BEDO-TTF(BO)分子は 5 員環硫黄原子を用いた分子短軸方向への分子間硫黄hellip硫

黄接触と末端エチレンジオキシ基を用いた積層方向への弱い水素結合形成によって錯体

中で自己凝集構造を構築する能力を持っているこのためBO 錯体は金属状態が低温まで

安定であるしかし錯体中で BO 分子は分子長軸方向における相互作用をほとんど示さな

いそこで対成分との相互作用の向上を目指してBO 分子の部分構造をもちかつチオ

ピラン環をもつ新規ドナーチオピラニリデン-エチレンジオキシジチオール(TP-EDOT)分子を合成した今回この TP-EDOT の合成精製およびその PF6塩の構造と物性につ

いて検討したので報告する 【実験と結果】エチレンジオキシ-13-ジチオール-2-チオン(1)とテトラヒドロ-4H-チオピラン

-4-オン(2)をP(OMe)3 存在下ベンゼン中でクロスカップリングさせ49 の収率で黄白色

針状晶のテトラヒドロ TP-EDOT(3)が得られた3 をキシレン中 DDQ を用いて脱水素し

64 の収率で黄白色粉末の TP-EDOT(分解点 1465 ~ 1493 )が得られた

O

O S

SS

BenzeneO S+

S

SS

O

O P(OMe)3

reflux6h O

O S

SS

DDQ

Xylene

1 2 3 TP-EDOT 3 は比較的安定でありまたこの反応条件下で2 同士のホモカップリング反応が起きな

いことから3 は容易に単離できた一方TP-EDOT はその合成条件下同時に分解反応を

起こすので反応は出来るだけ短時間で行う必要があったTP-EDOT はアセトンクロロ

ホルム酸に対しては不安定でこれらの溶媒中では数分以内に分解した一方エタノ

ールメタノールベンゼンテトラヒドロフランベンゾニトリルアセトニトリル中で

は加熱条件下でも安定であったまたTP-EDOT は一部分解物を含む状態となってもシ

リカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製しなおすことが可能であった TP-EDOT と関連物質の酸化還元電位を表 1 にまとめたTP-EDOT の酸化還元電位の大

きさは TTF や BO に比べて小さくTMTTF と同程度であった TP-EDOT の錯体を( Bu4N )X ( X = PF6SbF6BF4ClO4 )の存在下定

電圧電解法により作成したPF6 塩につ

いて緑色と紫色の 2 種類の生成物が得

られたあまり大きくない電流値(約 05 microΑ)で 1 ヶ月以内に電解を停止すること

により紫色の針状結晶を選択的に得る

表 1 サイクリックボルタメトリー法による酸化還元

電位( vs SCE ) ドナー E121 V E122 V ∆ E V TP-EDOT 027 060 033 TMTTF 029 065 036 TTF 037 076 039 BEDO-TTF 043 069 026 ∆E = E121 - E122

ことができたこれ以上長い期間ある

bukka
4Pp128

いは高い電流値で電解を行うと緑色の結晶が紫色の結晶と混ざって生成することがわか

った 単結晶構造解析によって PF6 塩の紫色結晶の結晶構造を決定した(Crystal Data monoclinic C2m Z = 8 a = 16024(3) b = 23029(3) c = 7005(3) Aring β = 10390(2) deg V = 2509(1) Aring3)組成はドナー アニオン= 2 1 であった拡張ヒュッケル法によりドナー分

子同士の重なり積分を算出すると分子間相互作用は 3 次元的であったしかしどの方向

についても重なり積分の絶対値は小さかったまたドナー分子のチオピラン環にある硫黄

原子同士の分子長軸方向への相互作用も見られた(図 1 の s8 に対応する分子間での ShellipS 接

触)これらの分子間相互作用の結果計算上は 3 次元的なフェルミ面が得られた(図 2) この錯体の分子積層方

向(c 軸方向)の電気伝導

度は室温で 10-4 S cm-1

程度であり8 ~ 50 degC の

範囲で半導体的挙動が

観測された 【考察】PF6 塩はバンド計

算からは3次元的な複雑

なフェルミ面を持つし

かし積層方向の伝導度

は金属的な挙動を示さな

かったバンド幅に比べ

オンサイトクーロン反発

(U)が大きいことがそ

の原因であると考えられ

る 本 錯 体 中 で の

TP-EDOT 分子間の重な

り積分はBO 錯体中での

ドナー分子間重なり積分

の 4 分の 1 程度の大きさ

であるまたU の目安

である∆E はTP-EDOT の方が BO より

007V 大きい

a

bo

s8

s6

s5

s1

s1s1

s1s1

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6s5

s5s5

s5s5

s5

s5s5

s5

s8

s8s8

図 1 PF6塩の c 軸投影図

影をつけたドナー分子は z = 0 の平面上にあり影をつけてないドナ

ー分子は z = 05 の平面上にある重なり積分の値はそれぞれs1 =

403times10-3s5 = -192times10-3s6 = -345times10-3s8 = 396times10-3であ

った

今後はPF6塩については磁化率の測定

等を通じて電子がどのように局在化してい

るかを検討していく同時に積層方向以外

の方向における伝導度測定も試みるまた

他のカチオンラジカル塩の単結晶作成とそ

れらの構造と物性について調べていく

図 2 PF6塩のフェルミ面

クラウンエーテルを用いた超分子化学的結晶設計に基

づくヘテロスピン集合系の磁性 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2)

神崎祐貴 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 【序論】現在まで純粋な有機分子からなるフェリ磁性体の構築は成功しておらずな

お分子磁性研究の長年の課題とされている我々は以前理論的考察から基底 1重項(S = 0)ビラジカルと 2重項(S = 12)ラジカルとの反強磁性的交互 1次元鎖が広義のフェリ磁性的な基底状態を取り得ること(一般化フェリ磁性)を提案した[1]

また1次元鎖全体の基底状態はビラジカル分子内と分子間の相互作用の大小関係を圧力等の外場によって変化させるとフェリ磁性的高スピン状態と非磁性(反磁性)

状態との間で相互変換することも理論計算から予想されている[1] この理論計算の結果を実験的に検証するために図 1に示したモデル分子錯体を合成した結晶設計にはクラウンエーテルが選択的にアルカリ金属を捕獲する錯形成

力を利用した超分子結晶工学アプローチを用いたこれまでの研究でフェノキシド

ビラジカル(1-)と 15-crown-5-ether置換のモノラジカル(2) [2]との錯体[Na2]+1-(図 1)が理論を一部実証する非磁性基底状態を示すことを磁化率の測定より明らかにした[3]

本研究では新たに新奇物質である 18-crown-6-ether置換のモノラジカル(3)を合成し新しいモデル錯体としてフェノキシドビラジカル(1-)との錯体[K3]+1-(図 1)を合成した錯体の構成要素となるモノラジカルの変化によって錯体[Na2]+1-とは異なる分

子間交換相互作用が与えられ上記の理論の予言する高スピン状態(フェリ磁性的基

底状態)が得られる可能性がある 【18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)】

18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)を図 2の方法で合成した閉殻前駆体は1H NMR 13C NMR 元素分析を用いて同定したラジカル(3)の同定は元素分析溶液ESRから行った室温でのジクロロメタン溶液の ESRスペクトルを図 3に示す窒素 14N核の超微細結合定数は aN = 072 mTg値は g = 20056で典型的なニトロニルニトロキシドモノラジカルの値を示したまた常磁性磁化率pの温度依存性を図 4に示す室温でのpT値は 0372 emu K mol-1であり純度は 99であったpは Tmax = 32 Kで極大をとりBonner-Fischerモデルを仮定すると Tmaxと Jとの関係から分子間に 2JkB = -51 Kの反強磁性的な交換相互作用が働いていることになる分子のパッキングに基づく詳細な解析を行うために現在 X線結晶構造解析を行なっている

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

-

NNO

O

O O

OOO

Na

+-

+

O

O

O O

O

O

NNO

O+-

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

- K+

[Na2]+1- [K3]+1-

図 1 モデル錯体

bukka
4Pp129

0

001

002

003

004

005

006

0 50 100 150 200 250 300

p (実測)

(Bonner-Fischerモデル)

p

emu

mol

-1T K

図 4 モノラジカル(3)の磁化率

O O

O

O

O

O

Br O O

O

O

O

O

CHOt-BuLi DMF

THF

O O

O

O

O

ON

NO

ONHOH

NHOHbenzene

+-

NaIO4 H2O CH2Cl2

1)

2)

図 2 18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)の合成

326 327 328 329 330 331 332

B mT 図 3 モノラジカル(3)の ESR スペクトル(ジクロロメタン溶液室温)

【フェノキシドビラジカルの単純塩(K+1-)】 モデル錯体の構成要素の性質を明らかにするためにフェノキシドビラジカルの単

純塩(K+1-)の磁化率を測定したpT 値は温度の低下とともに単調に減少したsinglet-tripletモデル

)exp(312

BB

2B

2A

p TkETkgN

(1)

10 SESEE (2) にフィッティングさせて分子内交換相互作用E(3重項と 1重項の間のエネルギーギャップ)を見積もった結果EkB = -70 Kとなったこの結果は単純塩(K+1-)の凍結溶液 ESR禁制遷移の強度 IESRの温度変化から見積もったEkB -10 K[4]とほぼ対応

しており分子内の交換相互作用が反強磁性的なものであることが確かめられたな

おフェノキシドビラジカルのナトリウム塩(Na+1-)では凍結溶液 ESRの実験からEkB -27 13 Kであることがわかっている[3]ビラジカル分子内の交換相互作用

の大きさの違いが錯体形成後の分子集合系のスピン状態に影響を与えるものと思わ

れる 上記の構成分子を用いて[Na2]+1-と同様の方法で新奇なモデル錯体[K3]+1-を合

成した現在錯体の結晶構造解析ESRスペクトルと磁化率の測定を行なっている[Na2]+1-と[K3]+1-との磁性と構造の相違点を議論する予定である 【参考文献】 [1] D Shiomi K Sato and T Takui J Phys Chem B 105 2932 (2001) [2] M Fettouhi Mol Cryst Liq Cryst 356 365 (2001) [3] Y Kanzaki D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 22 1817(2003) [4] S Hase D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 20 1403(2001)

超分子化学アプローチによる有機フェリ

磁性体の構築と磁気的性質 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2) 早川健一 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 有機フェリ磁性体を構築するための大きな問題点として分晶化がある分晶化を避

け異なるスピン量子数を持つ有機ラジカル(たとえばモノラジカル(S = 12)と

ビラジカル(S = 1))を共結晶化させる方法として超分子化学アプローチがある

これは選択的な分子間引力(水素結合やイオン電荷によるクーロン力)によって異

種成分を連結する方法である(図 1)[1]現在までのところ水素結合やイオン電荷

によるビラジカルとモノラジカルの共結晶化の試みは一部報告例があるが[2]結晶

構造まで確定した成功例はない

N

NN

NN

O

O

N

N

O

O

X

+

_

X = COOH(2) OH(3)

(1)

NN

N

N

N

OO

Me

+

N NO O+ _

Y _

Y = COO- O-

(a)水素結合アプローチ (b)有機塩アプローチ(イオン電荷によるクー

ロン力)

図 1 ビラジカルとモノラジカルの共結晶化

本研究ではピリジンの 26-位にイミノニトロキシドを導入したビラジカル(1)と安

息香酸(2)もしくはフェノール(3)置換のニトロニルニトロキシドモノラジカルを水素

結合によって連結する方法を試みた(図 1a) ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)は対応するジアルデヒドから 3 段

階で合成した(図 2)

N CHOOHC NNN

NN

OHHO

HOOHMeOH

NNOHNNOH SeO2

MeOHNN

NN

N

OHHO PbO2

CH2Cl2NN

NN

N

OO

(1)

図 2 ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)の合成

bukka
4Pp130

ビラジカル 1の磁化率を図 3 に示す分子間の平均場θを取り入れた Singlet-Tripletモデル

)2exp(31

)(2

BB

2B

2A

p TkJTkgN

minus+times

minus=

θmicro

χ (1)

により分子内の交換相互作用は 2JkB = +14 K分子間相互作用はθ = -3 K であるこ

とがわかった分子内の交換相互作用が強

磁性的であることはPVC(ポリ塩化ビニ

ル)による固相希釈系の実験(図 3)から

確かめられたビラジカル(1)は超分子フ

ェリ磁性体の構成要素として用いることが

できることがわかった

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

diluted in PVC(JkB = 7K)

neat(JkB = 7K θ = -3K)

-------

____

obscalc

calcobs

図 3 ビラジカル(1)の磁化率 (χpT-T プロット)

ビラジカル(1)と安息香酸置換モノラジ

カル(2)との共結晶体(分子錯体 1-2)は

エタノール溶液からの再結晶により得られ

た元素分析から組成は 11 であること

がわかった磁化率の測定結果を図 4 に示

す室温(300 K)でのχpT の値は分子錯

体 1 モル(S = 12 スピン 3 モル)の高温極

限の予測値(113 emu K mol-1)を下回って

おり分子間の反強磁性相互作用がかなり

大きいことを示唆するまた20 K 付近で

χpT の減少が一旦鈍って停留値をとってい

るこれらの結果はビラジカル(1)の磁化

率(図 3)とモノラジカル(2)の磁化率[3]の単純な和では説明できない現在X 線結

晶構造解析を行なっている

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

図 4 分子錯体 1-2の磁化率

(χpT-T プロット)

フェノール置換モノラジカル(3)による

水素結合アプローチと有機塩アプローチ

による共結晶化を現在進めている [1] D Shiomi K Ito M Nishizawa S Hase K Sato T Takui Mol Cryst Liq Cryst 334 99(1999) [2] 伊瀬智章石田尚行野上隆第 76 春

季年会 4C538(1999) [3] K Inoue H Iwamura Chem Phys Lett 207 551(1993)

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 14: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

いは高い電流値で電解を行うと緑色の結晶が紫色の結晶と混ざって生成することがわか

った 単結晶構造解析によって PF6 塩の紫色結晶の結晶構造を決定した(Crystal Data monoclinic C2m Z = 8 a = 16024(3) b = 23029(3) c = 7005(3) Aring β = 10390(2) deg V = 2509(1) Aring3)組成はドナー アニオン= 2 1 であった拡張ヒュッケル法によりドナー分

子同士の重なり積分を算出すると分子間相互作用は 3 次元的であったしかしどの方向

についても重なり積分の絶対値は小さかったまたドナー分子のチオピラン環にある硫黄

原子同士の分子長軸方向への相互作用も見られた(図 1 の s8 に対応する分子間での ShellipS 接

触)これらの分子間相互作用の結果計算上は 3 次元的なフェルミ面が得られた(図 2) この錯体の分子積層方

向(c 軸方向)の電気伝導

度は室温で 10-4 S cm-1

程度であり8 ~ 50 degC の

範囲で半導体的挙動が

観測された 【考察】PF6 塩はバンド計

算からは3次元的な複雑

なフェルミ面を持つし

かし積層方向の伝導度

は金属的な挙動を示さな

かったバンド幅に比べ

オンサイトクーロン反発

(U)が大きいことがそ

の原因であると考えられ

る 本 錯 体 中 で の

TP-EDOT 分子間の重な

り積分はBO 錯体中での

ドナー分子間重なり積分

の 4 分の 1 程度の大きさ

であるまたU の目安

である∆E はTP-EDOT の方が BO より

007V 大きい

a

bo

s8

s6

s5

s1

s1s1

s1s1

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6

s6s5

s5s5

s5s5

s5

s5s5

s5

s8

s8s8

図 1 PF6塩の c 軸投影図

影をつけたドナー分子は z = 0 の平面上にあり影をつけてないドナ

ー分子は z = 05 の平面上にある重なり積分の値はそれぞれs1 =

403times10-3s5 = -192times10-3s6 = -345times10-3s8 = 396times10-3であ

った

今後はPF6塩については磁化率の測定

等を通じて電子がどのように局在化してい

るかを検討していく同時に積層方向以外

の方向における伝導度測定も試みるまた

他のカチオンラジカル塩の単結晶作成とそ

れらの構造と物性について調べていく

図 2 PF6塩のフェルミ面

クラウンエーテルを用いた超分子化学的結晶設計に基

づくヘテロスピン集合系の磁性 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2)

神崎祐貴 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 【序論】現在まで純粋な有機分子からなるフェリ磁性体の構築は成功しておらずな

お分子磁性研究の長年の課題とされている我々は以前理論的考察から基底 1重項(S = 0)ビラジカルと 2重項(S = 12)ラジカルとの反強磁性的交互 1次元鎖が広義のフェリ磁性的な基底状態を取り得ること(一般化フェリ磁性)を提案した[1]

また1次元鎖全体の基底状態はビラジカル分子内と分子間の相互作用の大小関係を圧力等の外場によって変化させるとフェリ磁性的高スピン状態と非磁性(反磁性)

状態との間で相互変換することも理論計算から予想されている[1] この理論計算の結果を実験的に検証するために図 1に示したモデル分子錯体を合成した結晶設計にはクラウンエーテルが選択的にアルカリ金属を捕獲する錯形成

力を利用した超分子結晶工学アプローチを用いたこれまでの研究でフェノキシド

ビラジカル(1-)と 15-crown-5-ether置換のモノラジカル(2) [2]との錯体[Na2]+1-(図 1)が理論を一部実証する非磁性基底状態を示すことを磁化率の測定より明らかにした[3]

本研究では新たに新奇物質である 18-crown-6-ether置換のモノラジカル(3)を合成し新しいモデル錯体としてフェノキシドビラジカル(1-)との錯体[K3]+1-(図 1)を合成した錯体の構成要素となるモノラジカルの変化によって錯体[Na2]+1-とは異なる分

子間交換相互作用が与えられ上記の理論の予言する高スピン状態(フェリ磁性的基

底状態)が得られる可能性がある 【18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)】

18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)を図 2の方法で合成した閉殻前駆体は1H NMR 13C NMR 元素分析を用いて同定したラジカル(3)の同定は元素分析溶液ESRから行った室温でのジクロロメタン溶液の ESRスペクトルを図 3に示す窒素 14N核の超微細結合定数は aN = 072 mTg値は g = 20056で典型的なニトロニルニトロキシドモノラジカルの値を示したまた常磁性磁化率pの温度依存性を図 4に示す室温でのpT値は 0372 emu K mol-1であり純度は 99であったpは Tmax = 32 Kで極大をとりBonner-Fischerモデルを仮定すると Tmaxと Jとの関係から分子間に 2JkB = -51 Kの反強磁性的な交換相互作用が働いていることになる分子のパッキングに基づく詳細な解析を行うために現在 X線結晶構造解析を行なっている

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

-

NNO

O

O O

OOO

Na

+-

+

O

O

O O

O

O

NNO

O+-

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

- K+

[Na2]+1- [K3]+1-

図 1 モデル錯体

bukka
4Pp129

0

001

002

003

004

005

006

0 50 100 150 200 250 300

p (実測)

(Bonner-Fischerモデル)

p

emu

mol

-1T K

図 4 モノラジカル(3)の磁化率

O O

O

O

O

O

Br O O

O

O

O

O

CHOt-BuLi DMF

THF

O O

O

O

O

ON

NO

ONHOH

NHOHbenzene

+-

NaIO4 H2O CH2Cl2

1)

2)

図 2 18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)の合成

326 327 328 329 330 331 332

B mT 図 3 モノラジカル(3)の ESR スペクトル(ジクロロメタン溶液室温)

【フェノキシドビラジカルの単純塩(K+1-)】 モデル錯体の構成要素の性質を明らかにするためにフェノキシドビラジカルの単

純塩(K+1-)の磁化率を測定したpT 値は温度の低下とともに単調に減少したsinglet-tripletモデル

)exp(312

BB

2B

2A

p TkETkgN

(1)

10 SESEE (2) にフィッティングさせて分子内交換相互作用E(3重項と 1重項の間のエネルギーギャップ)を見積もった結果EkB = -70 Kとなったこの結果は単純塩(K+1-)の凍結溶液 ESR禁制遷移の強度 IESRの温度変化から見積もったEkB -10 K[4]とほぼ対応

しており分子内の交換相互作用が反強磁性的なものであることが確かめられたな

おフェノキシドビラジカルのナトリウム塩(Na+1-)では凍結溶液 ESRの実験からEkB -27 13 Kであることがわかっている[3]ビラジカル分子内の交換相互作用

の大きさの違いが錯体形成後の分子集合系のスピン状態に影響を与えるものと思わ

れる 上記の構成分子を用いて[Na2]+1-と同様の方法で新奇なモデル錯体[K3]+1-を合

成した現在錯体の結晶構造解析ESRスペクトルと磁化率の測定を行なっている[Na2]+1-と[K3]+1-との磁性と構造の相違点を議論する予定である 【参考文献】 [1] D Shiomi K Sato and T Takui J Phys Chem B 105 2932 (2001) [2] M Fettouhi Mol Cryst Liq Cryst 356 365 (2001) [3] Y Kanzaki D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 22 1817(2003) [4] S Hase D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 20 1403(2001)

超分子化学アプローチによる有機フェリ

磁性体の構築と磁気的性質 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2) 早川健一 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 有機フェリ磁性体を構築するための大きな問題点として分晶化がある分晶化を避

け異なるスピン量子数を持つ有機ラジカル(たとえばモノラジカル(S = 12)と

ビラジカル(S = 1))を共結晶化させる方法として超分子化学アプローチがある

これは選択的な分子間引力(水素結合やイオン電荷によるクーロン力)によって異

種成分を連結する方法である(図 1)[1]現在までのところ水素結合やイオン電荷

によるビラジカルとモノラジカルの共結晶化の試みは一部報告例があるが[2]結晶

構造まで確定した成功例はない

N

NN

NN

O

O

N

N

O

O

X

+

_

X = COOH(2) OH(3)

(1)

NN

N

N

N

OO

Me

+

N NO O+ _

Y _

Y = COO- O-

(a)水素結合アプローチ (b)有機塩アプローチ(イオン電荷によるクー

ロン力)

図 1 ビラジカルとモノラジカルの共結晶化

本研究ではピリジンの 26-位にイミノニトロキシドを導入したビラジカル(1)と安

息香酸(2)もしくはフェノール(3)置換のニトロニルニトロキシドモノラジカルを水素

結合によって連結する方法を試みた(図 1a) ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)は対応するジアルデヒドから 3 段

階で合成した(図 2)

N CHOOHC NNN

NN

OHHO

HOOHMeOH

NNOHNNOH SeO2

MeOHNN

NN

N

OHHO PbO2

CH2Cl2NN

NN

N

OO

(1)

図 2 ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)の合成

bukka
4Pp130

ビラジカル 1の磁化率を図 3 に示す分子間の平均場θを取り入れた Singlet-Tripletモデル

)2exp(31

)(2

BB

2B

2A

p TkJTkgN

minus+times

minus=

θmicro

χ (1)

により分子内の交換相互作用は 2JkB = +14 K分子間相互作用はθ = -3 K であるこ

とがわかった分子内の交換相互作用が強

磁性的であることはPVC(ポリ塩化ビニ

ル)による固相希釈系の実験(図 3)から

確かめられたビラジカル(1)は超分子フ

ェリ磁性体の構成要素として用いることが

できることがわかった

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

diluted in PVC(JkB = 7K)

neat(JkB = 7K θ = -3K)

-------

____

obscalc

calcobs

図 3 ビラジカル(1)の磁化率 (χpT-T プロット)

ビラジカル(1)と安息香酸置換モノラジ

カル(2)との共結晶体(分子錯体 1-2)は

エタノール溶液からの再結晶により得られ

た元素分析から組成は 11 であること

がわかった磁化率の測定結果を図 4 に示

す室温(300 K)でのχpT の値は分子錯

体 1 モル(S = 12 スピン 3 モル)の高温極

限の予測値(113 emu K mol-1)を下回って

おり分子間の反強磁性相互作用がかなり

大きいことを示唆するまた20 K 付近で

χpT の減少が一旦鈍って停留値をとってい

るこれらの結果はビラジカル(1)の磁化

率(図 3)とモノラジカル(2)の磁化率[3]の単純な和では説明できない現在X 線結

晶構造解析を行なっている

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

図 4 分子錯体 1-2の磁化率

(χpT-T プロット)

フェノール置換モノラジカル(3)による

水素結合アプローチと有機塩アプローチ

による共結晶化を現在進めている [1] D Shiomi K Ito M Nishizawa S Hase K Sato T Takui Mol Cryst Liq Cryst 334 99(1999) [2] 伊瀬智章石田尚行野上隆第 76 春

季年会 4C538(1999) [3] K Inoue H Iwamura Chem Phys Lett 207 551(1993)

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 15: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

クラウンエーテルを用いた超分子化学的結晶設計に基

づくヘテロスピン集合系の磁性 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2)

神崎祐貴 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 【序論】現在まで純粋な有機分子からなるフェリ磁性体の構築は成功しておらずな

お分子磁性研究の長年の課題とされている我々は以前理論的考察から基底 1重項(S = 0)ビラジカルと 2重項(S = 12)ラジカルとの反強磁性的交互 1次元鎖が広義のフェリ磁性的な基底状態を取り得ること(一般化フェリ磁性)を提案した[1]

また1次元鎖全体の基底状態はビラジカル分子内と分子間の相互作用の大小関係を圧力等の外場によって変化させるとフェリ磁性的高スピン状態と非磁性(反磁性)

状態との間で相互変換することも理論計算から予想されている[1] この理論計算の結果を実験的に検証するために図 1に示したモデル分子錯体を合成した結晶設計にはクラウンエーテルが選択的にアルカリ金属を捕獲する錯形成

力を利用した超分子結晶工学アプローチを用いたこれまでの研究でフェノキシド

ビラジカル(1-)と 15-crown-5-ether置換のモノラジカル(2) [2]との錯体[Na2]+1-(図 1)が理論を一部実証する非磁性基底状態を示すことを磁化率の測定より明らかにした[3]

本研究では新たに新奇物質である 18-crown-6-ether置換のモノラジカル(3)を合成し新しいモデル錯体としてフェノキシドビラジカル(1-)との錯体[K3]+1-(図 1)を合成した錯体の構成要素となるモノラジカルの変化によって錯体[Na2]+1-とは異なる分

子間交換相互作用が与えられ上記の理論の予言する高スピン状態(フェリ磁性的基

底状態)が得られる可能性がある 【18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)】

18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)を図 2の方法で合成した閉殻前駆体は1H NMR 13C NMR 元素分析を用いて同定したラジカル(3)の同定は元素分析溶液ESRから行った室温でのジクロロメタン溶液の ESRスペクトルを図 3に示す窒素 14N核の超微細結合定数は aN = 072 mTg値は g = 20056で典型的なニトロニルニトロキシドモノラジカルの値を示したまた常磁性磁化率pの温度依存性を図 4に示す室温でのpT値は 0372 emu K mol-1であり純度は 99であったpは Tmax = 32 Kで極大をとりBonner-Fischerモデルを仮定すると Tmaxと Jとの関係から分子間に 2JkB = -51 Kの反強磁性的な交換相互作用が働いていることになる分子のパッキングに基づく詳細な解析を行うために現在 X線結晶構造解析を行なっている

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

-

NNO

O

O O

OOO

Na

+-

+

O

O

O O

O

O

NNO

O+-

NN

O

O

ON

NO

O+

+--

- K+

[Na2]+1- [K3]+1-

図 1 モデル錯体

bukka
4Pp129

0

001

002

003

004

005

006

0 50 100 150 200 250 300

p (実測)

(Bonner-Fischerモデル)

p

emu

mol

-1T K

図 4 モノラジカル(3)の磁化率

O O

O

O

O

O

Br O O

O

O

O

O

CHOt-BuLi DMF

THF

O O

O

O

O

ON

NO

ONHOH

NHOHbenzene

+-

NaIO4 H2O CH2Cl2

1)

2)

図 2 18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)の合成

326 327 328 329 330 331 332

B mT 図 3 モノラジカル(3)の ESR スペクトル(ジクロロメタン溶液室温)

【フェノキシドビラジカルの単純塩(K+1-)】 モデル錯体の構成要素の性質を明らかにするためにフェノキシドビラジカルの単

純塩(K+1-)の磁化率を測定したpT 値は温度の低下とともに単調に減少したsinglet-tripletモデル

)exp(312

BB

2B

2A

p TkETkgN

(1)

10 SESEE (2) にフィッティングさせて分子内交換相互作用E(3重項と 1重項の間のエネルギーギャップ)を見積もった結果EkB = -70 Kとなったこの結果は単純塩(K+1-)の凍結溶液 ESR禁制遷移の強度 IESRの温度変化から見積もったEkB -10 K[4]とほぼ対応

しており分子内の交換相互作用が反強磁性的なものであることが確かめられたな

おフェノキシドビラジカルのナトリウム塩(Na+1-)では凍結溶液 ESRの実験からEkB -27 13 Kであることがわかっている[3]ビラジカル分子内の交換相互作用

の大きさの違いが錯体形成後の分子集合系のスピン状態に影響を与えるものと思わ

れる 上記の構成分子を用いて[Na2]+1-と同様の方法で新奇なモデル錯体[K3]+1-を合

成した現在錯体の結晶構造解析ESRスペクトルと磁化率の測定を行なっている[Na2]+1-と[K3]+1-との磁性と構造の相違点を議論する予定である 【参考文献】 [1] D Shiomi K Sato and T Takui J Phys Chem B 105 2932 (2001) [2] M Fettouhi Mol Cryst Liq Cryst 356 365 (2001) [3] Y Kanzaki D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 22 1817(2003) [4] S Hase D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 20 1403(2001)

超分子化学アプローチによる有機フェリ

磁性体の構築と磁気的性質 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2) 早川健一 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 有機フェリ磁性体を構築するための大きな問題点として分晶化がある分晶化を避

け異なるスピン量子数を持つ有機ラジカル(たとえばモノラジカル(S = 12)と

ビラジカル(S = 1))を共結晶化させる方法として超分子化学アプローチがある

これは選択的な分子間引力(水素結合やイオン電荷によるクーロン力)によって異

種成分を連結する方法である(図 1)[1]現在までのところ水素結合やイオン電荷

によるビラジカルとモノラジカルの共結晶化の試みは一部報告例があるが[2]結晶

構造まで確定した成功例はない

N

NN

NN

O

O

N

N

O

O

X

+

_

X = COOH(2) OH(3)

(1)

NN

N

N

N

OO

Me

+

N NO O+ _

Y _

Y = COO- O-

(a)水素結合アプローチ (b)有機塩アプローチ(イオン電荷によるクー

ロン力)

図 1 ビラジカルとモノラジカルの共結晶化

本研究ではピリジンの 26-位にイミノニトロキシドを導入したビラジカル(1)と安

息香酸(2)もしくはフェノール(3)置換のニトロニルニトロキシドモノラジカルを水素

結合によって連結する方法を試みた(図 1a) ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)は対応するジアルデヒドから 3 段

階で合成した(図 2)

N CHOOHC NNN

NN

OHHO

HOOHMeOH

NNOHNNOH SeO2

MeOHNN

NN

N

OHHO PbO2

CH2Cl2NN

NN

N

OO

(1)

図 2 ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)の合成

bukka
4Pp130

ビラジカル 1の磁化率を図 3 に示す分子間の平均場θを取り入れた Singlet-Tripletモデル

)2exp(31

)(2

BB

2B

2A

p TkJTkgN

minus+times

minus=

θmicro

χ (1)

により分子内の交換相互作用は 2JkB = +14 K分子間相互作用はθ = -3 K であるこ

とがわかった分子内の交換相互作用が強

磁性的であることはPVC(ポリ塩化ビニ

ル)による固相希釈系の実験(図 3)から

確かめられたビラジカル(1)は超分子フ

ェリ磁性体の構成要素として用いることが

できることがわかった

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

diluted in PVC(JkB = 7K)

neat(JkB = 7K θ = -3K)

-------

____

obscalc

calcobs

図 3 ビラジカル(1)の磁化率 (χpT-T プロット)

ビラジカル(1)と安息香酸置換モノラジ

カル(2)との共結晶体(分子錯体 1-2)は

エタノール溶液からの再結晶により得られ

た元素分析から組成は 11 であること

がわかった磁化率の測定結果を図 4 に示

す室温(300 K)でのχpT の値は分子錯

体 1 モル(S = 12 スピン 3 モル)の高温極

限の予測値(113 emu K mol-1)を下回って

おり分子間の反強磁性相互作用がかなり

大きいことを示唆するまた20 K 付近で

χpT の減少が一旦鈍って停留値をとってい

るこれらの結果はビラジカル(1)の磁化

率(図 3)とモノラジカル(2)の磁化率[3]の単純な和では説明できない現在X 線結

晶構造解析を行なっている

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

図 4 分子錯体 1-2の磁化率

(χpT-T プロット)

フェノール置換モノラジカル(3)による

水素結合アプローチと有機塩アプローチ

による共結晶化を現在進めている [1] D Shiomi K Ito M Nishizawa S Hase K Sato T Takui Mol Cryst Liq Cryst 334 99(1999) [2] 伊瀬智章石田尚行野上隆第 76 春

季年会 4C538(1999) [3] K Inoue H Iwamura Chem Phys Lett 207 551(1993)

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 16: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

0

001

002

003

004

005

006

0 50 100 150 200 250 300

p (実測)

(Bonner-Fischerモデル)

p

emu

mol

-1T K

図 4 モノラジカル(3)の磁化率

O O

O

O

O

O

Br O O

O

O

O

O

CHOt-BuLi DMF

THF

O O

O

O

O

ON

NO

ONHOH

NHOHbenzene

+-

NaIO4 H2O CH2Cl2

1)

2)

図 2 18-crown-6-ether置換モノラジカル(3)の合成

326 327 328 329 330 331 332

B mT 図 3 モノラジカル(3)の ESR スペクトル(ジクロロメタン溶液室温)

【フェノキシドビラジカルの単純塩(K+1-)】 モデル錯体の構成要素の性質を明らかにするためにフェノキシドビラジカルの単

純塩(K+1-)の磁化率を測定したpT 値は温度の低下とともに単調に減少したsinglet-tripletモデル

)exp(312

BB

2B

2A

p TkETkgN

(1)

10 SESEE (2) にフィッティングさせて分子内交換相互作用E(3重項と 1重項の間のエネルギーギャップ)を見積もった結果EkB = -70 Kとなったこの結果は単純塩(K+1-)の凍結溶液 ESR禁制遷移の強度 IESRの温度変化から見積もったEkB -10 K[4]とほぼ対応

しており分子内の交換相互作用が反強磁性的なものであることが確かめられたな

おフェノキシドビラジカルのナトリウム塩(Na+1-)では凍結溶液 ESRの実験からEkB -27 13 Kであることがわかっている[3]ビラジカル分子内の交換相互作用

の大きさの違いが錯体形成後の分子集合系のスピン状態に影響を与えるものと思わ

れる 上記の構成分子を用いて[Na2]+1-と同様の方法で新奇なモデル錯体[K3]+1-を合

成した現在錯体の結晶構造解析ESRスペクトルと磁化率の測定を行なっている[Na2]+1-と[K3]+1-との磁性と構造の相違点を議論する予定である 【参考文献】 [1] D Shiomi K Sato and T Takui J Phys Chem B 105 2932 (2001) [2] M Fettouhi Mol Cryst Liq Cryst 356 365 (2001) [3] Y Kanzaki D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 22 1817(2003) [4] S Hase D Shiomi K Sato and T Takui Polyhedron 20 1403(2001)

超分子化学アプローチによる有機フェリ

磁性体の構築と磁気的性質 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2) 早川健一 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 有機フェリ磁性体を構築するための大きな問題点として分晶化がある分晶化を避

け異なるスピン量子数を持つ有機ラジカル(たとえばモノラジカル(S = 12)と

ビラジカル(S = 1))を共結晶化させる方法として超分子化学アプローチがある

これは選択的な分子間引力(水素結合やイオン電荷によるクーロン力)によって異

種成分を連結する方法である(図 1)[1]現在までのところ水素結合やイオン電荷

によるビラジカルとモノラジカルの共結晶化の試みは一部報告例があるが[2]結晶

構造まで確定した成功例はない

N

NN

NN

O

O

N

N

O

O

X

+

_

X = COOH(2) OH(3)

(1)

NN

N

N

N

OO

Me

+

N NO O+ _

Y _

Y = COO- O-

(a)水素結合アプローチ (b)有機塩アプローチ(イオン電荷によるクー

ロン力)

図 1 ビラジカルとモノラジカルの共結晶化

本研究ではピリジンの 26-位にイミノニトロキシドを導入したビラジカル(1)と安

息香酸(2)もしくはフェノール(3)置換のニトロニルニトロキシドモノラジカルを水素

結合によって連結する方法を試みた(図 1a) ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)は対応するジアルデヒドから 3 段

階で合成した(図 2)

N CHOOHC NNN

NN

OHHO

HOOHMeOH

NNOHNNOH SeO2

MeOHNN

NN

N

OHHO PbO2

CH2Cl2NN

NN

N

OO

(1)

図 2 ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)の合成

bukka
4Pp130

ビラジカル 1の磁化率を図 3 に示す分子間の平均場θを取り入れた Singlet-Tripletモデル

)2exp(31

)(2

BB

2B

2A

p TkJTkgN

minus+times

minus=

θmicro

χ (1)

により分子内の交換相互作用は 2JkB = +14 K分子間相互作用はθ = -3 K であるこ

とがわかった分子内の交換相互作用が強

磁性的であることはPVC(ポリ塩化ビニ

ル)による固相希釈系の実験(図 3)から

確かめられたビラジカル(1)は超分子フ

ェリ磁性体の構成要素として用いることが

できることがわかった

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

diluted in PVC(JkB = 7K)

neat(JkB = 7K θ = -3K)

-------

____

obscalc

calcobs

図 3 ビラジカル(1)の磁化率 (χpT-T プロット)

ビラジカル(1)と安息香酸置換モノラジ

カル(2)との共結晶体(分子錯体 1-2)は

エタノール溶液からの再結晶により得られ

た元素分析から組成は 11 であること

がわかった磁化率の測定結果を図 4 に示

す室温(300 K)でのχpT の値は分子錯

体 1 モル(S = 12 スピン 3 モル)の高温極

限の予測値(113 emu K mol-1)を下回って

おり分子間の反強磁性相互作用がかなり

大きいことを示唆するまた20 K 付近で

χpT の減少が一旦鈍って停留値をとってい

るこれらの結果はビラジカル(1)の磁化

率(図 3)とモノラジカル(2)の磁化率[3]の単純な和では説明できない現在X 線結

晶構造解析を行なっている

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

図 4 分子錯体 1-2の磁化率

(χpT-T プロット)

フェノール置換モノラジカル(3)による

水素結合アプローチと有機塩アプローチ

による共結晶化を現在進めている [1] D Shiomi K Ito M Nishizawa S Hase K Sato T Takui Mol Cryst Liq Cryst 334 99(1999) [2] 伊瀬智章石田尚行野上隆第 76 春

季年会 4C538(1999) [3] K Inoue H Iwamura Chem Phys Lett 207 551(1993)

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 17: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

超分子化学アプローチによる有機フェリ

磁性体の構築と磁気的性質 (阪市大院理 1科技団さきがけ 2) 早川健一 1伊瀬智章 12塩見大輔 12佐藤和信 1工位武治 1 有機フェリ磁性体を構築するための大きな問題点として分晶化がある分晶化を避

け異なるスピン量子数を持つ有機ラジカル(たとえばモノラジカル(S = 12)と

ビラジカル(S = 1))を共結晶化させる方法として超分子化学アプローチがある

これは選択的な分子間引力(水素結合やイオン電荷によるクーロン力)によって異

種成分を連結する方法である(図 1)[1]現在までのところ水素結合やイオン電荷

によるビラジカルとモノラジカルの共結晶化の試みは一部報告例があるが[2]結晶

構造まで確定した成功例はない

N

NN

NN

O

O

N

N

O

O

X

+

_

X = COOH(2) OH(3)

(1)

NN

N

N

N

OO

Me

+

N NO O+ _

Y _

Y = COO- O-

(a)水素結合アプローチ (b)有機塩アプローチ(イオン電荷によるクー

ロン力)

図 1 ビラジカルとモノラジカルの共結晶化

本研究ではピリジンの 26-位にイミノニトロキシドを導入したビラジカル(1)と安

息香酸(2)もしくはフェノール(3)置換のニトロニルニトロキシドモノラジカルを水素

結合によって連結する方法を試みた(図 1a) ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)は対応するジアルデヒドから 3 段

階で合成した(図 2)

N CHOOHC NNN

NN

OHHO

HOOHMeOH

NNOHNNOH SeO2

MeOHNN

NN

N

OHHO PbO2

CH2Cl2NN

NN

N

OO

(1)

図 2 ピリジン置換イミノニトロキシドビラジカル(1)の合成

bukka
4Pp130

ビラジカル 1の磁化率を図 3 に示す分子間の平均場θを取り入れた Singlet-Tripletモデル

)2exp(31

)(2

BB

2B

2A

p TkJTkgN

minus+times

minus=

θmicro

χ (1)

により分子内の交換相互作用は 2JkB = +14 K分子間相互作用はθ = -3 K であるこ

とがわかった分子内の交換相互作用が強

磁性的であることはPVC(ポリ塩化ビニ

ル)による固相希釈系の実験(図 3)から

確かめられたビラジカル(1)は超分子フ

ェリ磁性体の構成要素として用いることが

できることがわかった

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

diluted in PVC(JkB = 7K)

neat(JkB = 7K θ = -3K)

-------

____

obscalc

calcobs

図 3 ビラジカル(1)の磁化率 (χpT-T プロット)

ビラジカル(1)と安息香酸置換モノラジ

カル(2)との共結晶体(分子錯体 1-2)は

エタノール溶液からの再結晶により得られ

た元素分析から組成は 11 であること

がわかった磁化率の測定結果を図 4 に示

す室温(300 K)でのχpT の値は分子錯

体 1 モル(S = 12 スピン 3 モル)の高温極

限の予測値(113 emu K mol-1)を下回って

おり分子間の反強磁性相互作用がかなり

大きいことを示唆するまた20 K 付近で

χpT の減少が一旦鈍って停留値をとってい

るこれらの結果はビラジカル(1)の磁化

率(図 3)とモノラジカル(2)の磁化率[3]の単純な和では説明できない現在X 線結

晶構造解析を行なっている

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

図 4 分子錯体 1-2の磁化率

(χpT-T プロット)

フェノール置換モノラジカル(3)による

水素結合アプローチと有機塩アプローチ

による共結晶化を現在進めている [1] D Shiomi K Ito M Nishizawa S Hase K Sato T Takui Mol Cryst Liq Cryst 334 99(1999) [2] 伊瀬智章石田尚行野上隆第 76 春

季年会 4C538(1999) [3] K Inoue H Iwamura Chem Phys Lett 207 551(1993)

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 18: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

ビラジカル 1の磁化率を図 3 に示す分子間の平均場θを取り入れた Singlet-Tripletモデル

)2exp(31

)(2

BB

2B

2A

p TkJTkgN

minus+times

minus=

θmicro

χ (1)

により分子内の交換相互作用は 2JkB = +14 K分子間相互作用はθ = -3 K であるこ

とがわかった分子内の交換相互作用が強

磁性的であることはPVC(ポリ塩化ビニ

ル)による固相希釈系の実験(図 3)から

確かめられたビラジカル(1)は超分子フ

ェリ磁性体の構成要素として用いることが

できることがわかった

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

diluted in PVC(JkB = 7K)

neat(JkB = 7K θ = -3K)

-------

____

obscalc

calcobs

図 3 ビラジカル(1)の磁化率 (χpT-T プロット)

ビラジカル(1)と安息香酸置換モノラジ

カル(2)との共結晶体(分子錯体 1-2)は

エタノール溶液からの再結晶により得られ

た元素分析から組成は 11 であること

がわかった磁化率の測定結果を図 4 に示

す室温(300 K)でのχpT の値は分子錯

体 1 モル(S = 12 スピン 3 モル)の高温極

限の予測値(113 emu K mol-1)を下回って

おり分子間の反強磁性相互作用がかなり

大きいことを示唆するまた20 K 付近で

χpT の減少が一旦鈍って停留値をとってい

るこれらの結果はビラジカル(1)の磁化

率(図 3)とモノラジカル(2)の磁化率[3]の単純な和では説明できない現在X 線結

晶構造解析を行なっている

T K

χ pT

em

u K

mol

-1

図 4 分子錯体 1-2の磁化率

(χpT-T プロット)

フェノール置換モノラジカル(3)による

水素結合アプローチと有機塩アプローチ

による共結晶化を現在進めている [1] D Shiomi K Ito M Nishizawa S Hase K Sato T Takui Mol Cryst Liq Cryst 334 99(1999) [2] 伊瀬智章石田尚行野上隆第 76 春

季年会 4C538(1999) [3] K Inoue H Iwamura Chem Phys Lett 207 551(1993)

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 19: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

有機導電性イオンラジカル結晶における

電流誘起構造物性変調

(東大院総合)松下未知雄菅原 正

【序】我々はこれまでに以下に示す2種のTTF系ドナー分子のイオンラジカル塩の結晶にお

いて電流の印加に対して急激に抵抗が減少したり電流の向きに応じて伝導度が変化するとい

った顕著な非線形性を持った導電性が発現することを見出してきたこのような現象はドナ

ー分子自身が分子内部に高い配座自由度を有していたりドナー層間に多くの溶媒分子を取り込

むなど自由度の高い構造を持つことに起因すると考えられる本研究ではX線結晶構造解析

によりこれらの結晶に見られる非線形的な導電特性の解明を試みた

【シクロファン型ツインドナーイオンラジカル塩】1)

TTF系の交叉シクロファン型ツインドナー1のイオンラジカル塩

1middotBrmiddot(TCE)2(TCE = 112-トリクロロエタン)は電流電圧特性の測定に

おいて電圧の上昇と共に抵抗値が急減する非線形的な導電挙動を示すこ

の電流印加時において現れる低抵抗状態の発現機構を調べるため電流を

印加した状態でのX線結晶構造解析を試みた

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX を用い窒素ガス吹き付け型の

170 Kで測定を行った電解結晶化法により得られた 015times015times30 mm

キャピラリーでゴニオヘッド上にマウントし結晶の両端に金ペーストを用い

1MΩの保護抵抗を直列に接続し480Vの直流電圧を印加した状態で低抵

たこの際の電流密度は約 06 A cm-1であった

表1に電流印加の有無による格子定数の変化を示す電流の印加によって

増加が認められたものの同じ結晶系を保っていることがわかる分子構造を

においては分子内の2つのTTF骨格に明らかな違いが認められ一方は

しもう一方はC-Cの二重結合が伸びると共にC-S単結合が短いカチ

与が大きい構造を持つことがわかったTTFユニットを単位とするとカチ

性の分子が交互に積み重なっていると考えることが出来るところが電流印

両者の構造が互いに近づいていることが明らかになった図1に示すように

りホールがキャリヤーとして移動し平均化されたものと考えられるこれ

の結晶における非線形的な導電挙動は電流の印加が引き金となりより導電

変化するために生じたものと解釈される

表1 結晶学的パラメーターの変化 図1 電流印加の有無による

TetragonalP41

12350(1)29648(3) 45372(7)

400560050

Crystal SystemSpace Group

a = b Aringc Aring

V Aring3

ZRall

RIgt4σ

非通電時 通電時

TetragonalP41

12395(1)29811(5) 45803(11)

400780065

0

+1

0

+1

SS

SS

SS

SS

S SS S

SSSS

1

冷却装置を用いて

の針状結晶をガラス

て金線を接続した

抗状態の測定を行っ

約1の体積の

みると非通電時

中性に近いのに対

オンラジカルの寄

オンラジカルと中

加時においては

大電流の印加によ

らの結果からこ

性の高い構造へと

電子構造の変化

+12

+12

+12

+12

bukka
4Pp131

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

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4Pp134
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wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 20: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

【BEDT-TTF 塩化物塩水和結晶】2)

BEDT-TTFの電解結晶化の際塩化物イオンを対イオン

としハロゲン系溶媒を用いて常に水で飽和される条件で電解

を行うことにより得られる黒色の針状結晶は直流電流の通電方

向の正負を切り替えると図2に示すようにある緩和時間を持

って緩やかに伝導度が変化する特異な導電挙動を示す結晶水の

脱吸着実験からこの現象には結晶に取り込まれた水分子が重要

な役割を果たしていることが明らかになっているそこでX線

結晶構造解析により結晶中における水分子の配列の解明を試みた

R Ω

Time min

+ minus + minus +

X線結晶構造解析には Bruker SMART APEX に 15KW の Cu 管球

を組み合わせて用いた電解結晶化法により得られた 02times02times

30mm の針状結晶を用い液体窒素吹き付け形の冷却装置を用い

て 120Kで測定を行った

構造解析によって得られた分子配列を図3に示す構造解析

(BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4と求められたドナー分子はα型の積層構造を

オンとからなる層をはさんで(110)及び(-110)方向に互

の構造はドナーの積層方向にあたるa軸方向の伝導度が 03 Scm-1で

さんだc軸方向での伝導度が 7times10-4 Scm-1と大きく異なることとも対

軸方向から眺めた図を図 3(b)に示す水分子は塩化物イオンを取り

士に 2 次元的な水素結合のネットワークが形成されていることがわか

異な導電挙動はこのような水素結合ネットワークに電場が印加され

積層に対する対イオン系の電荷分布が変化することにより引き起こさ

在このような構造変化を直接に検証するため電流の印加状態にお

解析を検討している

Oa

b

c

a) b)

O

a

c

図3 (a) (BEDT-TTF)2middotClmiddot(H2O)4 の結晶構造Monoclinic C2c a = 1

34194(1) Aring β = 93810(2)deg V = 131922(8) Aring3 Z = 16 (b) c軸方向

と水分子(赤)の配列

1)松下菅原分子構造討論会2C03(2003)

2)小野泉岡菅原菅原分子構造討論会2P3a41(1996)

図2 抵抗の電流方向依存性

からこの結晶の組成は

とっており水分子と対イ

い違いに積層しているこ

あるのに対し水分子をは

応している水分子層をc

巻くのみならず水分子同

るこの結晶に見られる特

ることによりドナー層の

れるものと解釈される現

けるより詳細な結晶構造

b

2303(1) b = 31429(1) c =

から眺めた塩化物イオン(緑)

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 21: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

(阪大院理阪府大先端研 dagger) 川上貴資谷口岳志北河康隆

松本拓也 dagger鎌田洋輔 dagger杉本豊成 dagger山口兆

金属錯体および有機ラジカルの一次元鎖内での

磁気的相互作用の理論的研究

【序】 分子性の磁性体を理論的に取り扱いその分子間の磁気的相互作用の値を見積ることは

既に十分に可能と成ってきた本講演では磁気的相互作用の次元性に着目して特に一次元

鎖内での磁気的相互作用に関して理論計算を用いて解析する今回対象とする物質系として

は金属錯体および有機ラジカルを考えその両者に最適な分子系を取り上げた具体的には

(1)金属錯体の一次元鎖としてCuBrnの一次元鎖を含む構造を(2)有機ラジカルの

一次元鎖としてカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子クラスターを取り扱っ

【理論計算】 (1) 既に杉本らの実験によりCuBrnの一次元鎖はTTF誘導体ドナー分子か

らなる錯体結晶中に存在しこのCu原子間の磁気的相互作用が特徴的であることが明らかに

成っているこの磁気的性質は構造等に依存して強磁性反強磁性的となるため本研究で

は実在系とモデル系の双方において量子化学計算を実行して有効交換積分値を定量的に算

出し構造との相関等に関して詳細に解析した

 実際の物質系としてTTF誘導体 123とCuBrnとの塩が報告されているそれぞれ形成

されたチャンネル構造内部のCuBr2鎖の形態が特徴的であり今回は特に1CuBr3-CuBr4

2-と

3CuBr42- に関して本研究では取り扱った(図1)まずこれらCuBrn骨格のみに着眼して

量子化学計算に基づいた解析から開始した

 1CuBr3-CuBr4

2-に関してはこの系でのCuBrn鎖は2種類の形態の異なるクラスター又

はチェーンとしてこのチャンネルに入っていることが判明しているこの2種類のCuBrnに

はchain 1 としてCuBr42- 分子のクラスターの並びが見られる (これはdisorder のために

CuBr2 n で表せる一次元鎖と見ることもできる)一方chain 2としてapical方向に一つの

Br原子が配位したCuBr3- nとして表せる一次元鎖も存在するそこでまずそれぞれの系

に関してCuを2つ含む最小構成要素を考えた具体的にはchain 1に関してはBr2-CuII-Br2

Br2-CuII-Br2chain 2に関してはBr2-Cu

IIBr-Br2-CuIIBr-Br2構造であるこれらに関してCu原

子間の有効交換積分値 (Jab) を計算した次にchain 2のこれらのCuを4つ含むように拡大

した系に関しても計算したこれらの結果は図1中に示したとおりである

 同様に 3CuBr42- に関してもCuを2つ含む構造と4つ含む構造に関して計算を行った

これらに関しても図1中に計算値を示した

 次に一般性の高いモデル系を仮定して系統的に構造依存性計算手法依存性を詳細に調

べたこれを実行することで異なる物質での実験が行われた際にも一般性が保たれるそ

のためのモデル構造は図2に示したものでありその結合長 (R)角 (a)二面角 (bc) を

パラメータとした分子を仮定したその結果の一例としては回転角 (c) を 0 (平面) ~90deg

で変化させた時60~75degで各手法とも符号の変化が見られたなおUB3LYPで構造最適化

した結果59327degでエネルギー最安定となりこれはJabの符号変化が起きた領域近傍である

bukka
4Pp132

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 22: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

 以上よりJab値と構造との相関を解析を行い多くの知見が得られたなおCuBrnの一次

元鎖だけではないTTF骨格からの電荷移動といった効果も別に考察した

 (2)有機ラジカルの一次元鎖としてのカルベンやフェニレンビニレンのラジカル分子ク

ラスターを採用して同様に量子化学計算にて取り扱ったここで一次元鎖を分子軌道計算

にて扱うために32量体といった十分に長い鎖や環を計算対象としその基底関数サイズは非

常に大きいものとなった

 先の金属錯体とこの有機ラジカルに関しての量子化学計算から得られた特性は相互作用の

担い手やそのメカニズムを対比するために活用することができる詳細に関しては当日講演

する

Br Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

BrBr

Br

Cu

Br BrBr

Br BrBr

Cu

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr BrBr Br

BrBr BrBr Br

CuCu

BrBr

Br

Br

Br

CuCu

Br

Br

Br

BrBr

Br

Br

Br

CuCu CuCu

Br

Br

Br

Br

Br

2 Cu 4 Cu

chain 1

chain 2

1CuBr3-CuBr42-

3CuBr42-

(UHF) 00 cm-1 (UB3LYP) 35 (UBLYP) 135 (UCCSDT) 02

205 156 ndash588 252 212 129 na na

ndash19 982 na na23 ndash168 na ndash165

Br

BrBr

Cu Cu

BrBr

Br

R

ab

c 00 (plane) - 900

図2 モデル構造とパラメータ

図1 取り扱った構造とその計算結果

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 23: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

強磁性クラスター設計のための量子化学的研究

(広大院理 1科技団 PRESTO2) 柏葉崇 1今井隆浩 1

折本裕一 2青木百合子 12

【序】 近年有機固体に強磁性的な性質をもたせる実験的な試みが盛んに行われている結晶

を構成する分子としてはラジカル源として N-O基を含んだ不対電子スピンを有する有機分子

やドナー分子とアクセプター分子が交互に積層した電荷移動錯体などが考えられるしかし

結晶全体として強磁性になるか反強磁性になるかはスタッキング方向における積層構造の状態

や鎖間相互作用に大きく依存するなるべくスピンを整列させるための条件は1非結合性軌

道(NBMO)縮重系を構築する2NBMO 間に弱い相互作用をもたせることであり結晶系を考

えたときに1と2を同時に満たすような積層構造の持たせ方が重要になるしかし高分子

となったときの全体としての性質や高スピン型が有利となる系におけるスピン整列のメカニズ

ムが明確になっていない場合が多く次の設計に役立てるためにもスピン整列機構を明らかに

していくことは重要な課題である

【方法】 そこで我々は高分子の他分子性クラスターからなる擬一次元系に対し量子化学

的手法によってなるべく系全体が高スピン型をとるような構成分子や分子間の配向を予測して強

磁性高分子の設計を行うための方法を開発しているまず以前に提唱した規則「非結合性軌道

(NBMO)の軌道係数の 0 の部分との部分を結合させるとNBMO 軌道は縮重を保ちつつNBMO 間に

相互作用ができて高スピン型有利になる」を分子間の問題に拡張し分子間の配向にこの規則を

適用することによって強磁性になりうる分子クラスターの設計を行う次に現在開発してい

る UHF-Elongation 法によって効率よく分子クラスターの高スピン型と低スピン型の電子状態を

求め全系としての高スピン型安定性の確認を行う特に電子相関の効果を含めた計算が重要

であるため将来は ab initio UHF-Elongation 法と結び付ける必要があるが現在のところ

MOPAC-UHF-Elongation 法によって確認しているさらにスピン整列のメカニズムを明らかにす

るために別途開発中の ab initio CIMP2 Through SpaceBond 解析によってスピン間相互作

用の詳細な解析を行うこれらを総合して強磁性高分子として可能性のある分子性クラスター

の提唱を行う

一方分子性クラスターの場合の強磁性としての性質を示す尺度としてNBMO 間の交換積分の

一中心部分からの寄与の大きさと対応する項から導かれるMixingを定義した1ユニット中の 番

目の分子軌道は有限周期系においてはヒュッケル解析解を用いて以下のように表わせる

i

(1) )(

1

)(

1)(~)( l

r

m

r

lIr

n

lI iCi χψ sumsum

==

= irlIr C

nlI

niC

1sin12)(~ )(

++=

π

ここでCirは 1 ユニット中の i番目の分子軌道係数mは 1 ユニット中に含まれる AO 数l は

ユニットの番号nは全系に含まれるユニット数I は 1 ユニットにおける 番目の分子軌道が

個のユニット間の相互作用によって分裂したときの軌道準位の番号を示す全系における NBMO 間

の Mixing は1 ユニット中の NBMO(ij )から派生した軌道間(IJ )間の Mixing の和として

i n

bukka
4Pp133

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

60deg a lt60deg he lix

180deg

0deg0deg

D is jo in t60deg he lix6 0deg a lt

A lly l

)()(~)(~ 2

1

)()(

1

)( JIALjCiCL nij

m

r

lJr

lIr

n

l

jiIJ == sumsum

==(2)

(3)

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 24: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

と るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

るため系に含まれるユ

ット数( って は1ユ

なることが導けるここで ( JIAn )は nと整数 JI のみに依存す

n )を決めれば1 ユニットの分子構造や性質によらず一定であるよ

1 ユ

g

は と整数 のみに依存す

)を決めれば1 造や性質によらず一定であるよ

1 111 = ++ + ln nnn

ニニ )( jiIJL

NB

)( jiIJL

NB

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

ニットのみから定義される ijL に比例することがわかり ニットを計算して得られる NBMO 係数

間の Mixin のみを調べれば全系の Mixing が得られるという結論に至る縮重している MO 間の

ユニタリー変換の自由度より実際には

n JI

1 ユ

n

g

ユニットの分子構

0)( =partpart θθijL を満たすθ で変換することにより得られた

irC から定義した

ijL を用いてNBMO 間の Mixing を定義する

【結果】 種々の回転角度でスタックし zyl Diphenylmethyl radical クラスター

UHF-Elongatio 法によって16分子まで計算したあと得られた

た Allyl Ben

を n 17重項状態と1重項状態のエネ

ルギー差∆E(HS-LS)を計算しBenzyl radical Diphenylmethyl radical について表1に示す

Disjoint 型では低スピン状態が安定なのに対して Non-Disjoint 型では高スピン型が安定になる

という明確な違いがでておりNon-Disjoint 型では ijL 値が大きいベンジルラジカルの方がより高

スピン型安定になるつまり Mixing の多い方がよりスピン整列性が高いという予想された結果を

与えている図1には Allyl radical Benzyl radical Diphenylmethyl radical の様々なスタ

ック様式における )( LSHSE minus∆ と ijL の関係をグラフに示すAllyl の Disjoint 型と Benzyl

Diphenylmethyl における0deg(並行かつ垂直にスタック)では低スピン型が安定で ijL 値も小さい

のに対しNon-disj い れも高スピン型安定で大きな ijL 値を与えることがわかる

表1 Benzyl Diphenylmethyl radicals の )( LSHSE minus∆ (eV)の比較()内は Non-disjoint 型 Lij値

oint 型では ず

型 スタック構造 Benzyl radical Diphenylmethyl radical

Disjoint 0deg 0448 0482

120deg(Alternant) 0300 0146

120deg(Helix) 0300 0146

Non-Disjoint 60deg(Alternant) -0300 (0016) -0146 (0003)

60deg(Helix) -0299 (0016) -0146 (0004)

180deg -0298 (0012) -0145 (0004)

2sum=r

jririj CCL22

sinsin2)( sum sdot

=

n lJlIJIA ππ (4)

図1 0 0 5

- 0 5 0 0 0 5 1 0 1 5 2 0

0 0 0

0 0 1

0 0 2

0 0 3

0 0 4

∆E (H S -L S ) (eV )

Lij

0deg

N on-d is jo in t 1 B enzy lD ipheny lm e th y l

N on-d is jo in t 2

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$L)k892CD

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hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

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N

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4Pp134
bukka

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3

B PQRSswraquo

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4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 25: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

13 S = 22

S = 12 $amp()+-0123456)7

189

13

$amp()+-01234567894lt$=

gtAB+CDEF138GH=

-8IJ($K$LMNOPQRSTUV

WXYRZ[]U^_S`abc lt2defghi

jkNl+13mEnopU^_Sqrs

tUop4uvwx$L y=N2 || E y|

13~(2 +J(

$L)k892CD

N13U^_SwH

ENl

01N213 Ciexclcent poundcurren yen$brvbar

sectNjwumlcopyordfSlaquonotsect13wshyregmacrdeg

Hplusmn4 `ab L$sup2osup3sectacutemicro8$para(4middotg

hijkcedil($LEsup1ordm(ltNsup2osup3sectwraquofrac14Jfrac12E$

ghkfrac34iquest13copyordfSlaquonotsectAgrave)AacuteAcircwAtildeordm

AumlL$Osup1Aring4

2

l `ab AumlL$AEligrqSCcedilEgraveEacute13AEligXSRT

2 =EcircE

H = - cent loz - loz + loz( )2 21 2 1 3 2 3J JS S S S S S

Nl4EumlIgraveacuteIacuteIacute Igrave2nIcircIumlKLETHNtildeNl(+OgravemiddoteOacuteOcirc

OtildeOuml2

J E E= -( )21

41 2

EtimesNK |N | y EOslash y 2lt

(Ugrave(UacuteUcircUumlYacuteTHORNEszligYacuteTHORNagrave

copyordfSlaquonotNl

01N2aacuteacircatildeauml`aringaeligacircyccedilegraveNUacuteUcirceacute

reguvecircAcirc4 `ab AumlL$

NO

ltgt PAI

2E2 (neOslash ne)

2E0 ( ne)

2E1 (nene Oslash)

4E1 (nene ne)

N

OJ

Jacute

J

A

S1

S2

S3

=813

bukka
4Pp134
bukka

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 26: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

uml4PQReumlraquofrac14igrave2iacuteicirc EKTUVEXYRZ[

]iumlethntildeograve)Ecirc4

3

B PQRSswraquo

frac14Jfrac124EKoacuteocirc

otildeScopyordfSlaquonotE Igrave Ntildew

ouml4divide(igrave aringicirc

EK2brvbar13

NuvE

EKcopyordfSlaquonotsect

2 C )4

oslashugraveN2uacute($LL

| icirc EOslash y copyordfSlaquo

notucirc |uumlicirc yacutethorn ENK4Igrave Ntilde2oslashugraveoE

nIcircL-regwouml

uvL$ Igrave uumlacircacirc ndashyNl4

N `ab 13 DI

Elt(Ugrave(TUVEXYRZ[]

13nAcirc$L134iumleth) Igrave Ntilde

IumlE13

(

2ig

hw13

$LE

4

4

regJ(4uvwL$copyordfSlaquonotsectE-reg

wUacuteUcirceacuteregHENKgoslashugraveELUcircwIENK4

13fu213)EO(4GJumlw

middot$+lto28 H

1 Y Teki S Miyamoto M Nakatsuji and Y Miura J Am Chem Soc 123 294 (2001)2 T Taniguchi T Kawakami K Yamaguchi Synth Metals 133-134 585 (2003)

2E2

2E0

2E1

4E130 eV(Exp)

DE = 20

0002

C8

N

O

N

O

05~06

02~03014E1 2E1

D82 $

B8amp J$()+DE = Oslash y aelig| icirc

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 27: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

4f ブロック化合物の多重項副準位構造の新しい決定法

(東工大院理工) 石川直人 海津洋行

【序】4f ブロック化合物の多様な物性を量子論的立場から理解するためには多重項の分裂構造に

ついての情報が不可欠であるこれまでは4f-4f 光学遷移が観測されかつ線幅が十分に狭く微

細構造が分離可能なごく限られた系においてのみスペクトル解析により多重項副準位構造の決定

が可能であったしかしほとんどの場合この方法は適用できないもし電子スペクトルを用いない決

定法があれば4f ブロック化合物の多重項副準位構造の知識を基にした研究領域が飛躍的に広が

ることになる 我々はこれまでに基底多重項の副準位構造を f-f 光学遷移のデータを用いずにf8 から f13 電子

系を持つ等骨格構造の錯体について同時に決定する新しい方法によっていくつかの希土類錯体

群の電子構造と磁性について研究を行ってきた本発表ではこの新手法の詳細について述べ用

いる実験データセットの選択によって解の一義性がどのように高められるかという観点から検討する

さらにこの方法によって行うことが可能になった研究例について述べる 【方法 123 と実例】 f8 から f13 電子系の外部磁場下における基底多重項の副準位は次のハミルトニア

ンによって記述できる

sumsumsum===

+++sdot+=6

06

66

4

04

44

2

02

22)2(ˆ

q

qq

q

qq

q

qq rArArAΗ OOOHSL γβαβ

最後の3項は配位子場ポテンシャルの等価演算子表現であるここで各項の定義は ref 4 に従っ

たαβγ は Stevens により定義された定数である係数 Akqlangrkrangが今決定すべきパラメータである

これらのパラメータについて次のように仮定する「各Akqlangrkrangはf電子数の(あるいは原子番号)の一

次関数である」すなわちnをf電子数としてAkqlangrkrang(n) = ak

q + bkq (n ndash n0)n = 8 9 hellip13とあらわ

すn0は任意の定数であるがnの中間値(105)を使うと収束が早いこの制限の下で複数の等骨格

構造とみなせる希土類錯体について次の実験値(1)および(2)と理論値との相対RMS誤差が極小

値をとるような配位子場パラメータakqbk

qを多次元最適化アルゴリズムを用いて決定する(1)配位子上の適当な(ただしFermi接触項が無視できる程度に希土類イオンから離れた)原子核のNMR

常磁性シフト∆δ(2)粉末試料の磁化率χMの温度変化多次元最適化アルゴリズムとしてsimplex法

を用いた 実際の例としてD4d対称性を持つフタロシアニン二層型錯体(Pc2LnndashTBA+ Pc = dianion of

phthalocyanine Ln = TbDyHoErTm or Yb TBA = (C4H9)4N+)について行った計算を示す図は決

Administrator
4Pp135

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 28: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

定した配位子場パラメータ(cmndash1単位)のうちakqを三次元表示したものである図(A)(B)の白丸で

示した点はそれぞれ(1)(2)の相対RMS誤差が35以下であるパラメータであるともにパラメー

タがとり得る範囲をある程度決めることができたこのことは6種類の希土類錯体を同時に扱うことで

overdetermined systemになることを示しているしかしながら解の十分な一義性は達成されていな

い図(C)は二つの相対RMS誤差の和の極小値を与える点を探索した結果である両方の実験デ

ータをそれぞれ35以下の誤差で再現する点を白丸で示した二種類の実験を同時に満足するパ

ラメータを決定することで解の十分な一義性が得られることが示されている直線で結んだ印はそ

れぞれ決定した6つの希土類イオンの配位子場パラメータAkqlangrkrangをあらわしている

これまでにいくつかの積層型希土類錯体についてこの方法でf電子系構造を決定しそれらに基

づいて次のようないくつかの興味深い現象について理論的解析を行い解明することができた (1)初めての「希土類単分子磁石」5

上記の解析によりPc2LnndashTBA+のうちLn = Tbの場合最低副準位のJz値が最大のplusmn6をとりさら

に次の副準位までのエネルギーが数百cmndash1離れていることがわかったこのことは遷移金属クラスタ

ー単分子磁石が磁石として振舞うための要請と同等の条件を満たしさらにはるかに高いスピン反転

potential barrierを持つ磁石として振舞う可能性を示唆している f8からf13電子系の錯体について

AC磁化率を測定したところTbとDyの場合に単分子の性質として磁気緩和速度が極めて長くなる

現象がこれまでにない高温で観測された特にTb錯体では1000Hzの振動磁場下での臨界温度は

40Kに達したなぜこの挙動が見られるのかなぜTbとDyだけなのかTbとDyの臨界温度の差の原

因は何かという疑問に対し上の方法で決定した副準位構造によって説明できた (2)希土類二核錯体におけるf電子系間相互作用の研究36

ポルフィリンおよびフタロシアニンは希土類二核錯体を形成することが知られている二つのf電子

系間の相互作用(f-f相互作用)の性質と起源を明らかにするために以下

の研究を行ったまずそれぞれの希土類イオンにおける配位子パラメータ

を決定するためにヘテロ二核錯体[YLn][LnY](右図)を新規合成した

Ln=TbndashYbの錯体に上の方法を適用し二種類の希土類サイトの配位子

場項パラメータを決定した36次にホモ二核錯体[LnLn]の磁化率の温度依

存性を測定しヘテロ二核錯体からのずれ(∆χMT値)を得たLn=TbDy

Hoで強磁性的Ln=ErTmで反強磁性的な相互作用が観測されLn=Ybでは相互作用が非常に

小さいことがわかった∆χMT値の温度依存性は磁気双極子相互作用項のみを考慮した理論計算で

高い精度で再現されこの項がf-f相互作用の主たる寄与を与えていることが明らかになった6 (3)二層型希土類錯体の単結晶異方性磁化率の温度依存性磁化容易軸の温度による逆転現象 Pc2LnndashTBA+は磁化率の大きな異方性を示す単結晶を生成するそれぞれ特徴的な磁化率の温

度依存性を示しとくにLn=Ybのときに150K付近で磁化容易軸の逆転が観測された粉末試料と

溶液の実験値を用いて上記の方法により決定した配位子場項副準位構造1からこれら単結晶の

異方性磁化率の温度変化を正しく予測することができた References (1) Ishikawa Sugita Tanaka Iino Okubo Kaizu Inorg Chem 2003 42 2440 (2) Ishikawa J Phys Chem A 2003 web release Jul 10 (3) Ishikawa Iino Kaizu J Phys Chem A 2002 106 9543 (4) Abragam Bleany ldquoElectron Paramagnetic Resonancerdquo Clarendon Press Oxford 1970 (5) Ishikawa N Sugita Ishikawa T Koshihara Kaizu J Am Chem Soc 2003 125 8694-8695 (6) Ishikawa Iino Kaizu J Am Chem Soc 2002 124 11440

[Ln Lnrsquo]

OC4H9

OC4H9

OC4H9

H9C4OH9C4O

H9C4O

H9C4O

H9C4O

Ln

N NN

NN

NN

N

N NN

NNN

N

N

N NN

NNN

N

N

Lnrsquo Site 2

Site 1

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 29: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

ポリ(N-ビニルカルバゾール)系におけるホール移動過程の

フェムト秒 ダイナミクス

(阪大院基礎工1極限研究センター2阪大 VBL3 )

カーン サジャドウル ラフマン 123 村上 昌孝 12 宮坂 博 12

Introduction

On the hole transfer (HT) process in poly(N-vinylcarbazole) (PVCz) and other aromatic vinyl polymers we have studied its dynamics and mechanisms by means of picosecond transient absorption spectroscopy and dichroism measurement12 The HT dynamics in PVCz was well described by one-dimensional random walk model along the polymer chain with the HT rate constant kHT of 20 x 109 s-1 in 12-dichloroethane solution It can be mentioned that the hole transfer reaction is endothermic since the increase in the inter-ionic distance reduces the Coulombic attractive interaction in the ion pair The activation energy predicted for the model reaction of the initial hole escape reaction A-D0

+D1rarrA-D0D1+

by the standard theory of ET reaction is gtgt 10kBT and the corresponding rate constant of HT in the order of 105~106 s-1 even in rather polar solution of 12-dichloroethane Therefore experimentally observed such a large hole migration rate constant in the order of 109s-1 could not be accounted for within the framework of usual ET theories assuming very weak interaction in the reactants It has been suggested that the delocalization3 of the cationic state takes an important role in such rapid hole transfer (HT) process Delocalization process decreases the Coulombic attraction in the ion pair and also decreases the reorganization energy of electron transfer which facilitates HT process To clearly elucidate this delocalization process we have studied femtosecond dynamics of PVCz-TCNB (1245-tetracyanobenzene as an electron acceptor) in solution phase On the basis of the present results and previous investigation in picosecond time region the molecular motion leading to the rapid HT and delocalization will be discussed

Experimental Dual OPA femtosecond TiSapphire laser at 490 nm with 150 fs fwhm and ca 5 microJ output power was used for the excitation of the weak charge transfer (CT) complex between Cz and TCNB All the measurements were carried out at 20plusmn10 C Results and Discussion

Figure-1 shows the time profiles of the trdichloroethane solution monitored at 800 nm (Cz+) The absorption intensities monitored with the probe

ansient absorbance of PVCz-TCNB system in 12-

pulse perpendicular (open circles) to the excitation light were higher than those obtained with the parallel (solid circles) probe pulse The CT transition dipole moment is along the direction from the Cz to TCNB molecules while Cz+ absorption dipole moment is in the plane of a Cz moiety Hence the transient absorbance with perpendicular condition is large The time dependence of the

0 20 40 60 80 100

0000

0004

0008

0012

Figure-1 Time profiles of transient absorbance at 800 nm

PVCz-TCNB12-DCE Perpendicular Parallel

∆ Abs

orba

nce

Time ps

Administrator
4Pp136

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 30: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

anisotropy r(t) monitored at 800 nm is shown in figure-2 In the present case the anisotropy value is negative since the absorption intensity with perpendicular polarization is higher The r(t) value for the Cz+ near the time origin is about ndash0065 which is about half of that in the monomer model (N-ethylcarbazole) system The lower anisotropy value in the polymer system can be attributed as for the fast depolarization process due to the interaction (or delocalization) of the cationic species with the neutral moieties In addition the anisotropy

decay of Cz+ is much faster than that of TCNB- About 50 of the initial anisotropy decays with a faster decay component of ca5 ps followed by a slower one as evident from figure-2 The long decay process was due to the hole migration process along the polymer chain since the decay profile was almost the same with that observed in the previous results obtained by picosecond dichroism measurement12 The charge separation occurs almost within the pulse duration (150 fs) and the lower anisotropy with 5 ps time constant can be accounted for the fast delocalization of hole from the parent Cz to the neighboring Czs on the same polymer chain Assuming that the relative geometries and the energy levels of the neighboring Cz moieties are identical and that any correlation between the orientations of transition dipoles of the CT absorption and the Cz+ absorption are lost away when the hole is transferred from the parent Cz The slow decay component of the anisotropy can be attributed as for the separated charge pairs through the equilibrium between the localized and delocalized states The proposed delocalization process can be shown in the following

0 20 40 60 80 100

000

002

004

006

008

Figure-2 Time dependence of the anisotropy signal of Cz+

Sign

al In

tens

ity (-

r)

Time ps

s a consequence the delocalization process suggested to be completed within a much

(1) H Miyasaka T Moriyama and A Itaya J Phys Chem 1996 100 12609 (2) d by FC De

(3) ys Chem A 2002 106 2192

0 1 n A (DDDD) A-DDDDn+

Intermediate Delocalized StatesInitial State Final State

- +A-D +D D A-(DDD)+A-(DD)+

Ashorter time scale indicating the absence of large molecular motions in the polymer chain during this process Integrating the present results with the previous investigations it can be concluded that the rapid delocalization process of the cation state take place in the PVCz system with negligible activation energy which is found to be consistent with the temperature effect on the hole transfer process2 studied previously

H Miyasaka T Moriyama S R Khan A Itaya in ldquoFemtochemistryrdquo ESchryver Wiley-VCH 2001 pp335-344 H Miyasaka S R Khan and A Itaya J Ph

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 31: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

タンパク質の折れ畳み能力と機能の共進化

亜鉛結合タンパク質のシミュレーション

(ACT-JST1神戸大院自然2神戸大理3)

渕上 壮太郎1藤墳 佳見2千見寺 浄慈3高田 彰二123

【序】 タンパク質は 20 種類のアミノ酸が繋がってできた直鎖状高分子でありアミノ酸の並べ方の数だ

け異なるものが存在し得る例えば30 個のアミノ酸からなるタンパク質の場合その種類は 2030≒1039

個という膨大な数になるしかしこれら全てのアミノ酸配列が生体中で何らかの生理的機能を果たせる

タンパク質であるとは限らないむしろそのようなものはごく少数であるなぜならタンパク質が高い機

能を発揮するためには配列によって決まる特定の立体構造へと一意的に折れ畳むことが必要であり

そのためにはアミノ酸配列が適切にデザインされていなくてはならないと考えられているからである

では生物が生きていく上で必要不可欠な機能を提供しているタンパク質は莫大な種類のアミノ酸配

列の中からどのようにして選び出されてきたのだろうか長年に渡る分子進化の末に現在あるようなタ

ンパク質が選択されてきたわけだがその過程においていかなる進化戦略が存在したかは明らかでな

いランダム配列を突然変異によって変化させていきタンパク質らしい配列を選び出すためにはどのよ

うな選択ルールを採用すればよいのだろうか「そのルールは1つだけでよいのか複数必要なの

か」「複数ならばどのように組み合わせればよいのか」「ルールはタンパク質の機能によらずすべて

同じなのかそれとも大きく異なるのか」等々疑問は絶えない

本研究の目的はタンパク質の進化過程において折れ畳み能力の獲得と機能の発現がどのように関

連し合っているかを調べタンパク質の採ったであろうまたは採り得るであろう進化戦略を探ることであ

る本研究では多くの生体内反応において重要な役割を果たしているタンパク質の亜鉛結合能に着目

し分子進化シミュレーションによって新たな知見を得ることを試みる

【方法】 図1に分子進化シミュレーションの流れを示すまず用意した初期配列の突然変異体を作成

する続いて初期配列および突然変異体の構造アンサンブルを求め配列の亜鉛結合能を評価す

る評価が最大となる配列を選んで初期配列とし同様の を

29 としアミノ酸組成を亜鉛結合タンパク質の1つで

ある Zn フィンガーモチーフ(1sp1)のものに固定した

これにより突然変異は2つのアミノ酸を入れ換える

ことによって実現される

立体構造予測法 与えられたアミノ酸配列の立体構

造を予測するには構造の良否を判定するためのエ

ネルギー関数が必要である本研究では藤墳らに

よって開発されたエネルギー関数(SimFold)[1]を

用いたまた構造空間の探索にはリバーシブルフ

ラグメントアセンブリ法[2]を用いアニーリングによ

って立体構造アンサンブルを作成した得られた構

造アンサンブルに対してCαRMSD を距離とし閾値

を 3Åとした最短距離法によってクラスター分析を行

い最大クラスターが占める割合をタンパク質の折れ

操作を繰り返す本研究ではアミノ酸の数

図1 進化シミュレーションの流れ図

Administrator
4Pp137

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 32: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

畳み能力の指標としたまた最大クラスターのクラスター中心が予

測構造となる図2b に Zn フィンガーモチーフ(1sp1)の予測構造

を示す実験で決定された構造(図2a)のトポロジーを再現してい

ることがわかる

亜鉛結合能の評価関数 立体構造が既知である亜鉛結合タンパ

ク質の構造を解析した結果亜鉛と結合するアミノ酸は AspGlu

CysHisの4種類が主であることがわかったこれらのアミノ酸と亜

鉛との距離の分布をもとに亜鉛結合能を評価する関数を作成した

この評価関数はタンパク質の立体構造に対して評価値を返すし

たがってアミノ酸配列の亜鉛結合能は構造アンサンブルによる

単純平均で見積もることにした

【結果】 ランダム配列から進化シミュレーションを開始すると亜

鉛結合能の向上が容易に実現される野生型(1sp1)から出発し

た場合でも同様に機能の向上が見られるところが進化過程に

おけるタンパク質の折れ畳み能力の変化は2つのシミュレーション

で異なる挙動を示した(図3参照)ランダム配列からはじめた場

合タンパク質の折れ畳み易さは系統的な変化を示してないのに

対し野生型からはじめた場合では折れ畳み能力が有意に向上し

ていることが見て取れるしたがってある程度の折れ畳み能力を

獲得した配列を機能が向上するように進化させると同時に折れ

畳み能力も増強されることが示唆される当日は折れ畳み能力

の増強と機能向上の依存関係が進化の段階に応じてどのように変化するのかについても報告する

図2 Zn フィンガーモチーフの

(a)天然構造と(b)予測構造緑

色の球は亜鉛

(b)

(a)

【参考文献】 [1] Y Fujitsuka et al Proteins in press [2] G Chikenji et al J Chem Phys in press

図3 亜鉛結合能の向上と折れ畳み能力の変化

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

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Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 33: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

フラグメント分子軌道法による亜鉛原子を含む

D慮

(原

H基

Aの

タンパク質の計算

(立教大理1国立衛研2) 原田隆範1中野達也2常盤広明1

序】亜鉛原子は生体内において立体構造の安定化や種々の酵素反応に深く関わっている

内受容体のDNA結合ドメイン(DBD)は2組のZinc finger構造を含み1つはDNAとの結合に

与するヘリックスの安定化に寄与しているまたヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は

性中心に存在する亜鉛イオンがリガンドの結合に関与しているこれらのタンパク質の

NAやリガンドとの相互作用を考えるうえで亜鉛原子近傍のみでなくさらに広い領域を考

することは重要である巨大分子の非経験的手法による計算はフラグメント分子軌道法

FMO法)1ndash5)などにより可能となりFMO法を用いてこれまでにエストロゲン受容体(約4000子)6)などについて計算が行われている本研究では金属原子を含む系に対してのFMO法

適用を検討するため核内受容体の1種であるグルココルチコイド受容体のDBD(GR-DBD)よびHDAC-like protein(HDLP)のモデル分子についてFMO計算を行いFMO法を用いない

合の結果と比較したまたさらに大きな系についてもFMO計算を行った 計算】タンパク質の構造はGR-DBDについてはPDBデータ(1GDC)の構造をそのまま用い

HDLPについてはPDBデータ(1C3S)に水素原子を付加し水素原子のみをCHARMm力場

用いて最適化しさらにリガンド周辺のみについて水素結合に関与する水素原子を

F6-31G(d)で部分的に最適化したものを用いたこれらの分子から亜鉛原子周辺にある残

を切り出し数種類のモデル分子を作成したこれらのモデル分子についてFMO法を用

たHF6-31Gによる一点計算を行ったなおフラグメント分割は亜鉛イオンとそれに配

している全ての残基およびリガンドの一部をまとめて1フラグメントとし(図1)その他の

分については2残基(一部1または3残基)で1フラグメントとしたフラグメント間静電ポテ

シャル近似5)は近距離のフラグメント間には用いなかったFMO計算はプログラム

BINITndashMP5)を用いて実行したまた計算結果の比較のためにモデル分子全体について

HF6-31Gによる一点計算をGaussian98を用いて行った

(a) (b)

図1 亜鉛イオンを含むフラグメント(a)GR-DBD (b)HDLP (残基の主鎖とリガンドの一部は省略)

Zn2+

CO

O

NHN

CH2CO

O

NHO

O

His

AspAsp

Ligand

H

H2C

H2C

Zn2+

CH2

SCH2S

CH2

S

Cys

Cys

Cys

Cys

H2CS

Administrator
4Pp138

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

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Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

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PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 34: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

【結果】表1に亜鉛周辺の約20残基からなるモデル分子におけるFMO法の計算精度について

示す全体計算(G98)と比較したときいずれの分子もTotal energyについては数kcalmolの誤

差で亜鉛原子上の電荷については0005以下の誤差で一致したなお亜鉛イオンを含むフ

ラグメントに関してはこれ以外の分割方法ではここまでの一致は見られなかったGR-DBDにおいては表1のモデル分子をDNAとの結合に関与するヘリックス全体を含むN末端側34残基(原子数493)に拡大してもFMO計算は可能であった(表2)なお計算時間はDual Xeon 22GHz 8台(16CPU 1CPUあたりメモリ2GB)のPCクラスタを用いて24時間30分であった

さらにもう1つのZinc finger構造を含むC末端側38残基(原子数618)についても同じPCク

ラスタを用いて64時間で計算が可能であり亜鉛原子を含むタンパク質の計算においても

FMO法が有効な手法であることが示された

表1 FMO法の計算精度 原子数 Total energy (Hartree) FMO minus G98 (kcalmol)

FMO G98

GR-DBD 252 minus9202254894 minus9202264707 616 HDLP 315 minus10150361721 minus10150367673 374

原子数 Mulliken charge on Zn atom FMO minus G98

FMO G98

GR-DBD 252 08469 08506 minus00037 HDLP 315 14589 14635 minus00046

表2 GR-DBDのFMO計算の結果

残基数 原子数 Total energy Mulliken charge on (Hartree) Zn atom

17 252 minus9202254894 08469 34 493 minus15720985648 08430 38 618 minus18644246870 08078

(1) K Kitaura et al Chem Phys Lett 312 319 (1999) (2) K Kitaura et al Chem Phys Lett 313 701 (1999) (3) T Nakano et al Chem Phys Lett 318 614 (2000) (4) K Kitaura et al Chem Phys Lett 336 163 (2001) (5) T Nakano et al Chem Phys Lett 351 475 (2002) (6) K Fukuzawa et al submitted

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
Page 35: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

タンパク質配座の探索アルゴリズムの開発 (豊橋技術科学大学 知識情報工学系)鎌倉 寿行 後藤 仁志

【背景】

タンパク質の機能解明においてフォールディング問題は大きな障害の一つであるフォールディング過程にお

いて多数の経路が考えられることそして例え一つの優位な経路を見つけられるとしてもその通過点として考

慮しなければならない配座があまりにも多いことがこの問題を難しくしていると言える当研究室ではこの

問題に対してポテンシャルエネルギー曲面の極小点である配座異性体特に低エネルギー領域に存在する配座

異性体を徹底的に探索ことから解決を試みている例えば最近では配座空間探索法 CONFLEX を用いてアラニ

ン 8 量体のオリゴペプチド約 1 万個の低エネルギー配座異性体を創出しαヘリックス逆巻きへリックスβ

ストランドなどの特異的な二次構造を有する配座異性体を特定し立体構造の類似性指標からそれらの間の変換

経路を探索することを可能にした 1)

このように現時点では十数残基程度のオリゴペプチドであれば並列分散やグリッド技術を CONFLEX と

組み合わせることによって網羅的な配座探索とそれらの変換経路を予測することは十分可能になっているしか

し徐々に大きなペプチドやタンパク質を扱うようになり新たにいくつかの問題が生じている一つは残基

数が 50を超えるあたりからタンパク質は複数の二次構造を組み合わせた複雑かつ密な構造をとるため小さな

分子に適用してきた配座探索法で扱うことは難しくなるということがあるまた技術的な問題ではあるがProtein

Data Bank(PDB)に登録されているタンパク質のデータには分子計算を行う上で多くの不備が散見されるため

何らかの対処をしなければならないということである

【目的】

そこで本研究では50 残基を超えるタンパク質の配座を網羅的に創出するために新しい配座創出アルゴリズ

ムを構築するまたPDBのタンパク質データ形式(以下「PDBフォーマット」)を読み書きでき分子計算を

行う上で適切な情報を取り出すことのできるプログラムモジュールを作成する

【方法】

PDBに登録されているデータを分子計算に利用する際に問題になる点はおよそ次のとおりである

A) 結晶構造における水素の座標情報の欠落があることまたNMR 構造も含めてたとえ水素の座標情

報があってもそれは解析ソフトが任意に発生した座標である

B) 異常な結合長が一部に含まれること

C) 5価の炭素など不正な価数を示す原子が含まれていること

D) 二重結合S-S結合イオン電荷など様々な化学的付加情報にしばしば不備があること

本研究ではこれらの問題を解決するためにまず PDBフォーマットの全てのレコードに対処できるサブプログ

ラムモジュールを作成したそして上述した問題に対処する構造チェックのルーチンを追加することでPDB

フォーマットで提供されるタンパク質構造データから直接分子計算に利用できる座標情報を容易に取り出すこ

とができるサブプログラムモジュールを完成させたこのサブプログラムモジュールは Fortran90言語に準拠して

作成されており様々な分子計算プログラムでも用意に導入可能になっている

一方今回新たに考案したタンパク質の配座創出アルゴリズムを以下に示す

1) タンパク質を特徴的な二次構造フラグメントに分割する

2) フラグメント毎に CONFLEXを適用し徹底的な配座探索を行いフラグメント配座異性体データベース

Administrator
4Pp139

を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
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を構築する

3) 各データベースからあらかじめ決めておいた基準にしたがってフラグメント配座異性体を抽出しタン

パク質を再構築することで多数の試行(サンプル)構造を創出する

4) 再構築した試行構造の構造やエネルギーを調べ明らかに不備がある例えば原子間距離が近すぎる

場合や結合が絡まっている場合にはあらかじめ取り除く

5) 全ての試行構造に構造最適化を適用し配座チェックを経てタンパク質の配座異性体データベースを構

築する

今回の実験ではPDBに登録されている副甲状腺レセプターの N

末端ペプチドフラグメント(PDB ID1BL1)を用いた1BL1は 3つ

のαヘリックスを持っておりこれらを 2つのループが繋いでいる

そこで今回は5つのフラグメント(3つのαヘリックス2つのル

ープ)に分けてそれぞれの配座異性体データベースを CONFLEX

により作成した(Fig1-a)各配座異性体データベースからエネルギ

ーの低い 5つの配座異性体を抽出し全ての組み合わせでフラグメ

ントを繋ぎ合わせることで3125 個の試行構造を再構築した

(Fig1-b)試行構造の中で非結合原子間が 04Å以下の構造はあらか

じめ排除し(構造群 1)残った 125個の試行構造について構造最適

化を行った(構造群 2)

【結果と考察】

ループ領域のα炭素周りの平均ねじれ角(φψ)を Fig2に示すここでFig2(a)は構造群 1Fig2(b)は構造

群 2についてプロットしたまたそれぞれに元の PDB構造に対応する値を赤い点でプロットしたこの図を見

ると今回のアルゴリズムによる探索が広域な配座空間を網羅していることが解るしかし元の PDB構造近

傍の配座空間は網羅できていないこれはフラグメントの配座異性体を創出する際に溶媒効果を考慮してい

ないため低エネルギー領域にある配座異性体と

元の PDB 構造に隔たりがあるためであるした

がってより広範囲にフラグメント配座異性体を

取り出すかフラグメント配座異性体を創出する

際に溶媒効果を考慮することで元の PDB 構造

に近い配座異性体が低エネルギー領域に存在す

るような配座異性体データベースを構築する必

要があるだろう

【謝辞】

本研究は文部科学省「産官学連携イノベーション創出事業費補助金」の援助を受けて行われましたまた本

研究の一部は本研究は科学技術振興事業団「計算科学技術活用型特定研究開発事業」の援助を受けて行われま

した

【参考文献】

1) H Goto T Takahachi K Ohta U Nagashima Nanotech 2003 Vol 1 pp32-35

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

hellip

Trial Structure Database

REDUCE PROCESS

Conformer Libraries

COMBINE PROCESS

Rebuild Structures

OPTIMIZATION

Protein Conformation Database

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

PDB File

Conformer Libraries

CONFLEX

Fig1 処理の流れ(a) タンパク質をフラグメントに分割し各フラグメントの配座異性体データベースを作成する (b)データベースから抽出した配座異性体を柔軟に繋ぎ合わせタンパク質構造を再構築する

(a) (b)

Trial Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Trial

PDB

(a) Optimized Structure Prot

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

-100 -80 -60 -40 -20 0

Phi Average

Psy

Avera

ge

Opt

PDB

(b)

Fig2 配座空間を示したプロット図(a) 再構築したタンパク質の平均(φψ)角のプロット (b) (a)の構造最適化後のした平均(φψ)角のプロット

西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
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西洋わさびペルオキシダーゼ Compound II の反応機構 (金大理 千葉大薬 a 名古屋市立大 b)

O後藤英貴 加藤信彦 井田朋智 遠藤一央 細谷東一郎 a 塚本喜久雄 b 【序】西洋わさびペルオキシダー

ゼ(HRP)は過酸化水素(H2O2)による Benzhydroxamic acid(BHA)などの基質の酸化を触媒する

HRP はH2O2 により酸化され

Compound I (HRP-I)となる基質

を酸化して Compound II(HRP-II)となりさらに基質を酸化しても

との HRP に戻る(Figure1)

Figure1 HRP の酵素反応経路

磁化率の測定から HRP のスピ

ン量子数は S=32HRP-II は S=1また FeTPP(py)O などのメスバ

ウアー測定値[Fe(OEP)(N-MeIm)O]のプロトン NMR スペクトルとの比較によりヘム鉄の電

子状態は HRP が Fe(III)HRP-II は Fe(IV)と考えられているさらにESR1H NMR スペク

トルからスピン密度は Fe-O に局在化すると報告されている

HRP-II

HOOH H2O

e-

Fe(IV)

HRP-IO

+Fe(III)

HRP

H2O

H+ + e- Fe(IV)

O

Fe(III)

OH

+

本研究では基質のモデルに p-cresol を用いてHRP-II の反応機構(Figure1 の点線で囲んだ部

分)を分子軌道法によって解析した反応系のスピン多重度はtripletquintet の2通りを考慮

しスピン密度はどちらとも反応前はFe-Oに局在化しているものと考えたquintetについては

反応後 p-cresol にラジカルスピン S=12 が生成するものとした 【計算方法】 HRP-OH 及び HRP-II のモデル化合物をそれぞれ[FeP(Im)OH][FeP(Im)O]とし構造最適化はMOPACのAM1で行った(Figure2)非制限 Hartree-Fock 法(UHF)によりHRP-II と p-cresol の水酸基

の Hとの距離を 02ごと変化させそれぞれのエネルギーを計算し

活性化エネルギー(ΔE)を求めたUHF 計算は Gaussian98 を用い

た 【計算結果】

Table 1 HRP-II と HRP-OH の結合次数お

よび結合距離 HRP-II と HRP-OH

をそれぞれ構造最適化

したところTable1 よ

り Fe-O の結合次数が

155 から 106 にさら

に結合距離が 166Åか

ら 183Åに変化した

Figure 2 [FeP(Im)O]とp-cresol のモデル

Bond order (bond distance)

bond HRP-II HRP-OH

Fe-O 155(166) 106(183) Fe-N(Por) 058(205) 064(204) Fe-N(Im) 030(210) 044(190)

Administrator
4Pp140

その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
    • 4Pp136pdf
      • Experimental
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その他の結合次数および結合距離については

目立った変化は見られなかったそこで Fe-Oの結合距離を反応系の自由度として2 次元の

ポテンシャルエネルギー面(PES)を計算した

(Figure3)

Figure 3 Potential energy surface

spin multiplicity is (A)triplet (B)quintet

(B)

22 20 18 16 14 12 10 08 06150

158

166

174

182

190

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375

190 (B)

(A)

-78367--78365

-78369--78367

-78371--78369

-78373--78371

-78375--78373

-78377--78375060810121416182022150

158

166

174

182

【考察】 Table2よりHRP-II から HRP-OH へプロ

トンが移動していくにつれてポルフィリンか

ら Fe へ電子が供給されており供給された電

子はTriplet の場合には酸素に局在化し

Quintetの場合は酸素と Imidazoleに非局在化

したこのようにプロトンを受け取りやすいよ

う電子が移動している様子が見られた Figure3 は両方とも double minimum の

PES になったことからその間に存在する極

大値を各多重度における遷移状態エネルギ-

とした反応系のエネルギーを差し引いてΔEを求めたところ実験値(043eV)との一致はあ

まりよくなかったがQuintet におけるΔE が 比較的小さいと思われる

Table2 各多重度における atomic charge とスピン密度お

atomic charge (s

triplet

HRP-II TS1 HRP-OH

dxy (005) ( -008) (005)dyz ( -031) (024) (092)dzx ( 005) (000) (082)dx2-y2 (076) (000) (011)

Fe

dz2 (010) (026) (033)

Fe 177 (057) 171 (034) 193 (325)O2 037 (036) -027 (130) 010(-091)Por3 -182 (104) -152 (038) -112(-041)Im4 002 (000) 028 (000) 000 (004)p-cresol 030 (000) -020 (006) -091(-002)E (eV) -783747 -783736 -783768 ΔE (eV) 11

1Transition State 2HRP-II 及び HRP-OH の酸素

reference [1] J Sakurada S Masuda T Hosoya JCPE journal

よび全エネルギーと活性化エネルギー

pin density)

quintet

HRP-II TS1 HRP-OH

(057) (053) (075)(036) (068) (095)(088) (029) (097)(041) (049) (074)(066) (043) (088)

182 (324) 178 (253) 199 (444)075 (034) 047 (038) -056 (007)

-195 (101) -097(-018) -063(-053)003 (003) -066 (096) 015 (003)021 (001) 005 (094) -097 (103)-783740 -783733 -783761

07

3Porphyrin 4Imidazole

12 219 (2000)

並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

  • 4Pp136pdf
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      • Experimental
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並列的および逐次的 Elongation法による3本鎖ペプチドの算方法の開発とコラーゲンへの応用

        (広大院理 1科技団 PRESTO2) 滝下英成 1逸見雅弘 1 木百合子 12

【序】 巨大 分子系の 子状態を効率よく 算する方法として現在までに開発してきた逐次的

および並列的 Elongation 法をモデルペプチドにおける局所置換効果の 析に適用するとともに

コラーゲンのような3本鎖からなるペプチドの 子状態を求める手法を開発し 年突然変異と

の関連で構造研究が行われている GlyrarrAla置換体の 子状態 析を みる

【方法】 図1のような3本鎖ペプチドの一 置換体の 算を効率よく行うための方法として

逐次的 Elongation 法と並列的 Elongation 法を応用する方法がある(基本的な 算手法はすでに発

表しているため省略)前者の方法は3本鎖の 子状態を末端から1ユニットずつ(1 本鎖の

ユニットの3倍)を一つのセグメントとして全系を逐次的 Elongation 法により くその際末

端H原子が3個存在するためこれらに含まれるAOを攻撃分子側の結合の関与する原子軌道係

数の初期値に置換ることによって相互作用を 算していく後者の方法はGlyrarrAla 置換 で分

離された二本の 分子鎖の 子状態を接合するそのためにあらかじめ2本鎖それぞれの 子

状態を通常の方法あるいは逐次的 Elongation 法により 算しておく次に 分子鎖間の置換基

の影 が及ぶ領域を含む相互作用行列を 算し予め求めてあった接合 に局在化した Active

LMO を基底とした固有値問題を くこの接合過程では3本鎖それぞれの局在化軌道の基底

から脱離原子のAOをはずして再 格化を行い固有値0を与えるベクトルを取り除いた変換行

列を基底として相互作用の固有値問題を くことになる

【結果】 まず第一段階として図2のようなコラーゲンの一本鎖のみを取り出し並列的およ

び逐次的 Elongation法により 算精度を確かめた並列的 Elongation法では1unit(Pro-Pro-Gly) 2

本から 2unistを合成し2units 2 本rarr4units4units 2本rarr8units と 3段階で合成すると3 段階め

で 1弱の誤差を生じたこれは1unit(Pro-Pro-Gly)が小さすぎるために局在化に無理が生じて

いるためで5units 2 本rarr10units では10-6以内の誤差で精度よく 分子鎖が合成できることが

わかる(表2) 一方逐次的 Elongation法により図2に示した一本鎖を出発クラスター(SC)

を 1unit2units3units として伸 した場合の逐次的 Elongation 法による生成熱と全系をまともに

扱うMOPAC7による生成熱の差を伸 過程の各ステップに対して表2に示す

表表11   並並列列的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

並列的Elongation 全系 算との

逐次 算との差

1unit(SC) -67692043 0 -5E-062units -138931744 -1038199 -10367924units -284484761 -028143 -02746288units -569406308 -5071007 -5050919

5units(SC) -357188577 0 00100210units -719335421 -0006925 002004

1unit Pro-Pro-Gly SCStarting Cluster全系 算との差 全系 (MOPAC7)-並列的 Elongation法逐次 算との差 逐次的 Elongation法(1unit Starting)-並列的 Elongation法

GlyrarrAla

Active LMO

図1

Administrator
4Pp141

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

-30

-25

-20

-15

P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

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      • Experimental
Page 40: 新規ビスニトロニルニトロキシドの合成及び物性に …molsci.center.ims.ac.jp/discussion_past/2003/BK2003/...GE F = 2e 2 h TE F (1) を用いて求められる。ここで

SCの数が多いほど分子軌道の局在化がよくなるため精度は上がるが10units ほど伸 したあと

にはSCの数に依存しないで 10-5程度の誤差に留まっている次に4ユニットめで GlyrarrAla

置換を行い生成熱の各ステップごとの差を置換しない場合との差で図3に示すH を CH3で置

換しただけであるが約4ユニットにわたってエネルギー的な変化をもたらしていることがわか

るこれらの 3本鎖に対しては上記の 算手法で開発中である

表表22   逐逐次次的的 EE ll oonngg aa tt ii oonn 法法とと従従来来のの方方法法のの生生成成熱熱のの差差

((kkcc aa ll mmoo ll))

SC 1unit 2units 3units

1unit 0   

1unit+Pro -0000327   

1unit+2Pro -0000902   

2units -0001407 0 2units+Pro -0002041 -0000508 2units+2Pro -0003056 -0001181 3units -0003874 -0001861 03units+Pro -0004752 -0002619 -00005563units+2Pro -0005881 -0003667 -00011714units -0006802 -0004554 -00018574units+Pro -0007809 -0005473 -00026194units+2Pro -0009013 -0006639 -00036785units -001002 -0007635 -0004625units+Pro -001105 -0008645 -00055195units+2Pro -0012303 -0009875 -00066966units -0013313 -0010881 -00076866units+Pro -0014373 -0011931 -00086996units+2Pro -0015718 -0013206 -0009957units -0016676 -0014203 -00109147units+Pro -0017748 -0015247 -00119667units+2Pro -0019122 -0016534 -00133038units -0020088 -0017466 -00142668units+Pro -0021168 -0018488 -00153398units+2Pro -0022506 -0019726 -00166529units -002352 -0020693 -00176619units+Pro -0024599 -0021744 -00187389units+2Pro -0025948 -0023117 -0020071

10units -0026965 -0024076 -0021083

GlyrarrAla

図2

図3

-40

-35

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P P

1

G P P

2

G P P

3

G P P

4

G

(

P P

5

G P P

6

G P P

7

G P P

8

G P P

9

G

n (unit数)

En-En-1 (kcalmol)

(Pro-Pro-Gly)n (Pro-Pro-Gly)4-(Pro-Pro-Ala)-(Pro-Pro-Gly)5

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