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複数のスピーカーが接続できるハイインピーダンス接続 1台のパワーアンプに複数のスピーカーが接続でき、しかも長距離伝送が行えるハイインピーダンス接続は、多くの設備音響で用 いられています。このページではハイインピーダンス接続の仕組みとそのメリットについてご紹介します。 【ハイインピーダンス接続とは】 スピーカーにトランスを取り付けることでスピーカーのインピーダンスを数百 Ωから数kΩに上げた接続がハイインピーダンス接続です。ハイインピーダン ス接続の場合、アンプ側は100V(または70V)の出力電圧で動作します。 通常のローインピーダンス接続は伝送距離が短い場合に使用されます。この 場合、ケーブルの抵抗分によるロスは無視できますが、非常用放送など伝送距 離が長くなる場合にはケーブルの抵抗が増大します。 たとえば図のようにケーブルの抵抗分が8Ωとなった場合はスピーカーのイン ピーダンスと等しくなり伝送効率は理論値で50%まで悪化します。 【ローインピーダンス接続とは】 ローインピーダンス接続(2~16Ω)は最も一般的な接続方法です。アンプか らスピーカーまで電気信号を伝送する際、短距離の場合はケーブルの抵抗に よるロスが非常に少ないため、トランスを使用しないローインピーダンス接続 が音質的に有利です。 ★ローインピーダンス接続のメリット ・ スピーカートランスを必要としない ・ 音質的に有利 ★ローインピーダンス接続のデメリット ・ 長距離伝送では伝送ロスが多い ・ 複数のスピーカーの接続等に制約がある ハイインピーダンス接続とローインピーダンス接続 パワーアンプ 2~16Ω パワーアンプ 70V/100V 数kΩ 数百Ω スピーカートランスを付加 トランスがない ハイインピーダンス接続のメリット④ ハイインピーダンス接続のメリット① 1台のパワーアンプで 複数のスピーカーを駆動可能 一方8Ωのスピーカーにトランスをつけてハイインピーダンス化(仮に1kΩ)す るとケーブルを長く引き回して抵抗分が8Ωになった場合でもスピーカー側は 1kΩであり、図のようにアンプの出力はほとんどロスなくスピーカーに伝送さ れます。 スピーカーのΩ値=8Ω 50% ケーブル抵抗=8Ω ローインピーダンス 長距離 ほぼ100% ●ローインピーダンスでの長距離伝送 ●ハイインピーダンスでの長距離伝送 ハイインピーダンス 70V/100V スピーカートランス (1kΩ) ケーブル抵抗=8Ω 伝送ロス=       =    = 0.8% 8Ω+1000Ω 8 1008 伝送ロス=       =    = 50% 8Ω+8Ω 8 16 15W 200W/ch 10W 5W 3W (合計W数(×1.2)=200Wまで) ………… XH200 トランス付 トランス付 トランス付 トランス付 トランス付 ハイインピーダンス接続は、駅や劇場、商業システムなど多くの スピーカーを使用する設備音響で、1台のパワーアンプで多数の スピーカーを駆動するために考え出された接続方法です。 ハイインピーダンス接続ではパワーアンプ最大出力時に100V(または70V)の電圧で駆動されるため、 ローインピーダンス接続に比べてはるかに少ない電流でスピーカーを鳴らすことができ、多数のスピーカーを接続できます。 ハイインピーダンス接続のメリット② 容易なインピーダンスマッチング ケーブル抵抗に影響されない長距離伝送が可能 全てのスピーカーを並列接続可能です。 接続するスピーカーの合計W数とパワーアンプの定格出力との間に、以下の関係が成立するようにスピーカーの数やW数を選択します。 パワーアンプの定格出力 ≧ スピーカーの合計W数(×1.2*) 例えば、XH200の片チャンネル(定格出力200W)に対して、10Wのスピーカーなら16台まで、1Wのスピーカーなら166台まで接続できます。 20Wx4台、10Wx4台、5Wx5台、1Wx20台という組合せも可能です。 ハイインピーダンス接続では、このようにインピーダンスマッチングを考慮しなくても、電力数だけで簡単に計算を行うことができます。 *:トランスの1次側インピーダンスの偏差や将来のトランスタップ変更、スピーカーの追加を加味して20%程度のマージンを持つことをお勧めします。 ハイインピーダンス接続のメリット③ 定格入力の異なるスピーカーの混在 ローインピーダンス接続で、3Wのスピーカーと30Wのスピーカーを並列接続す ると、3Wのスピーカーは破損する危険性が非常に高くなりま す。 ハイインピーダンス接続では、異なる定格入力を持つスピーカーを混在して使 用でき、定格入力の小さいスピーカーが破損することはありません。

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Page 1: 複数のスピーカーが接続できるハイインピーダンス …...複数のスピーカーが接続できるハイインピーダンス接続 1台のパワーアンプに複数のスピーカーが接続でき、しかも長距離伝送が行えるハイインピーダンス接続は、多くの設備音響で用

複数のスピーカーが接続できるハイインピーダンス接続1台のパワーアンプに複数のスピーカーが接続でき、しかも長距離伝送が行えるハイインピーダンス接続は、多くの設備音響で用いられています。このページではハイインピーダンス接続の仕組みとそのメリットについてご紹介します。

【ハイインピーダンス接続とは】スピーカーにトランスを取り付けることでスピーカーのインピーダンスを数百Ωから数kΩに上げた接続がハイインピーダンス接続です。ハイインピーダンス接続の場合、アンプ側は100V(または70V)の出力電圧で動作します。

通常のローインピーダンス接続は伝送距離が短い場合に使用されます。この場合、ケーブルの抵抗分によるロスは無視できますが、非常用放送など伝送距離が長くなる場合にはケーブルの抵抗が増大します。たとえば図のようにケーブルの抵抗分が8Ωとなった場合はスピーカーのインピーダンスと等しくなり伝送効率は理論値で50%まで悪化します。

【ローインピーダンス接続とは】ローインピーダンス接続(2~16Ω)は最も一般的な接続方法です。アンプからスピーカーまで電気信号を伝送する際、短距離の場合はケーブルの抵抗によるロスが非常に少ないため、トランスを使用しないローインピーダンス接続が音質的に有利です。

★ローインピーダンス接続のメリット ・ スピーカートランスを必要としない ・ 音質的に有利★ローインピーダンス接続のデメリット ・ 長距離伝送では伝送ロスが多い ・ 複数のスピーカーの接続等に制約がある

ハイインピーダンス接続とローインピーダンス接続

パワーアンプ

2~16Ω

パワーアンプ

70V/100V

数kΩ

数百Ω

スピーカートランスを付加 トランスがない~

ハイインピーダンス接続のメリット④

ハイインピーダンス接続のメリット①1台のパワーアンプで

複数のスピーカーを駆動可能

一方8Ωのスピーカーにトランスをつけてハイインピーダンス化(仮に1kΩ)するとケーブルを長く引き回して抵抗分が8Ωになった場合でもスピーカー側は1kΩであり、図のようにアンプの出力はほとんどロスなくスピーカーに伝送されます。

スピーカーのΩ値=8Ω

50%ケーブル抵抗=8Ω

ローインピーダンス

長距離

ほぼ100%

●ローインピーダンスでの長距離伝送

●ハイインピーダンスでの長距離伝送

ハイインピーダンス

70V/100V

スピーカートランス(1kΩ)

ケーブル抵抗=8Ω

伝送ロス=       =    = 0.8%8Ω

8Ω+1000Ω8

1008

伝送ロス=       =    = 50%8Ω

8Ω+8Ω8

16

15W200W/ch ≧ 10W 5W 3W (合計W数(×1.2)=200Wまで)+ + + …………

XH200

トランス付 トランス付 トランス付 トランス付 トランス付

ハイインピーダンス接続は、駅や劇場、商業システムなど多くのスピーカーを使用する設備音響で、1台のパワーアンプで多数のスピーカーを駆動するために考え出された接続方法です。ハイインピーダンス接続ではパワーアンプ最大出力時に100V(または70V)の電圧で駆動されるため、ローインピーダンス接続に比べてはるかに少ない電流でスピーカーを鳴らすことができ、多数のスピーカーを接続できます。

ハイインピーダンス接続のメリット②

容易なインピーダンスマッチング

ケーブル抵抗に影響されない長距離伝送が可能

全てのスピーカーを並列接続可能です。接続するスピーカーの合計W数とパワーアンプの定格出力との間に、以下の関係が成立するようにスピーカーの数やW数を選択します。

   パワーアンプの定格出力 ≧ スピーカーの合計W数(×1.2*)例えば、XH200の片チャンネル(定格出力200W)に対して、10Wのスピーカーなら16台まで、1Wのスピーカーなら166台まで接続できます。20Wx4台、10Wx4台、5Wx5台、1Wx20台という組合せも可能です。ハイインピーダンス接続では、このようにインピーダンスマッチングを考慮しなくても、電力数だけで簡単に計算を行うことができます。

*:トランスの1次側インピーダンスの偏差や将来のトランスタップ変更、スピーカーの追加を加味して20%程度のマージンを持つことをお勧めします。

ハイインピーダンス接続のメリット③

定格入力の異なるスピーカーの混在

ローインピーダンス接続で、3Wのスピーカーと30Wのスピーカーを並列接続すると、3Wのスピーカーは破損する危険性が非常に高くなりま す。ハイインピーダンス接続では、異なる定格入力を持つスピーカーを混在して使用でき、定格入力の小さいスピーカーが破損することはありません。