見て,さわって,感じる 他者との関係性を築く - 兵...

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見て,さわって,感じる 他者との関係性を築く かかわりの発達心理学 第5回 58赤ちゃんは何ができるのか? Question 3‐1 次の中で,生後半年の赤ちゃんができ ることは何だろう? a)お母さんの顔と他の女性の顔の区別 b)小さな数(例えば,「2」と「3」の区別) c)援助的行為と妨害的行為の区別 全部YES

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  • 見て,さわって,感じる+

    他者との関係性を築く

    かかわりの発達心理学第5回 5月8日

    赤ちゃんは何ができるのか?

    •Question 3‐1•次の中で,生後半年の赤ちゃんができることは何だろう?• (a)お母さんの顔と他の女性の顔の区別• (b)小さな数(例えば,「2」と「3」の区別)• (c)援助的行為と妨害的行為の区別

    •全部YES!

  • 赤ちゃんの得意技

    • 人とつながること• かわいい顔,豊かな表情• 刺激の好み(人の顔,高めの抑揚のある声)• 社会性の理解

    • 生きる上で(世界を理解する上で)基礎的で核となる知識(コア・ノレッジ)を早くに理解する• 物理的知識:支えるものがないと物は落下する,物は接触しなければ作用しない,物はかたまりのまま動く

    • 数の理解(サビタイジング)

    おさらい(胎内の発達)

    • 1.感覚器官を発達させて生まれてくる• 開始時期と完成時期で…微妙

    • 2.それは,出生後の学習に寄与する• 出生前から学習している(記憶)

    • →赤ちゃんは白紙では生まれない(遺伝的個人差があるという意味を超えて)

    • すでにヒトとしての知性,および,学習による成果を有している

  • クイズ

    • 次のもののうち,赤ちゃんがもっとも好むのはどれでしょう?

    • 1.お経• 2.狂言• 3.落語• 4.ラップ

    • 顔に対する好み

    • 声に対する好み

    • 言葉に対する好み

  • 「理解」のしくみ

    「世界を理解する」?

    •私たちの世界の理解の仕方•言葉を用いて理解することが多い

    •乳児の世界の理解の仕方•身体,運動を用いて理解する

    これらはつながっている

  • ピアジェの理論(『知能の誕生』)

    • 誕生後すぐからすでに空吸いが観察される。唇が衝動的に動いて,前に突き出たり,舌が移動したりする。同時に,腕が無秩序ではあるが多少リズミックに動き,頭は横にゆれる。自分の手が唇に売れると即座に吸啜反射がおこる。たとえば,一瞬のあいだ指を吸ったりする。しかし,もちろん,指を口の中にじっと入れておくことも,それを唇で追うこともできない。ルシアンヌは生後15分,ローランは生後30分ですでに自分の手を吸った。ルシアンヌの場合は,身体の位置の関係で手が静止したために10分以上も指を吸いつづけた……。

    ピアジェの考え方

    • 知能の獲得=生物学的適応の過程

    • 知能は,精神発達のある時期に突然,先行のものとまったく異なる完備したメカニズムとして登場するのではない。

    • 知能は,習慣的連合に属する獲得的過程,あるいは反射に属する生得的過程とさえ著しい連続性をもっている。

    • 適応的な生体の変化=知能の獲得

  • 乳児期の知能の発達

    • 乳児期は,ピアジェのいう感覚や運動動作によって直観的に対象を認識する時期(感覚運動期)であり,外界の認識には,特定の刺激に対して身体の一部が即応する反射(reflex)が重要な役割を果たす。

    • 特に,吸てつ反射(口に入ったものをリズミカルに数),歩行反射(脇の下を支えると,歩くように足を交互に踏み出す),把握反射(手のひらに触れたものを握ろうとする)などが見られる。

    • 発達とともに,徐々に動く人や物の追試が明確になり,目と手の協応(視覚的にとらえた対象へ手をのばすこと)が成立する。

    • さらに目の前の対象に手を伸ばすリーチングが発達することで,意図的な把握行動が可能になる。

    ピアジェの説明の仕方

    •シェム/シェマ:主体内に形づくられる,繰り返しの行動を可能にする基礎的な構造・枠組みを表す単位。• シェム(schéme)行為や操作が繰り返し行われ,分化や協応によって一般化された認知の作用的(opératif)側面を言う。• 時間的流れがある

    • シェマ(schéma)イメージ,知覚,記憶など,その形象的(figuratif)側面を指す。

  • • 同化:主体がすでにもっているシェム/シェマに,外的な対象を取り込み構造化するはたらき。• 主体が外的刺激を感じうるのはすでに構成された構造にその刺激を同化しうるかぎりにおいてのみだからであり,またそのかぎりで刺激は,新しく同化されるにつれて,すでに構成済みの構造を修正し,豊かにしていく。

    • 調節:主体がすでにもっているシェム/シェマに,外的な対象を取り込めなくなったとき,逆に既存のシェム/シェマを変形してその対象に適合させていくはたらき。

    • 均衡化:同化と調節のバランスをとる作用。環境内で新しい要素に直面した主体は,外的な対象を取り込みつつ(同化),同時に自分のシェムを修正させていく(調節)。

    • ピアジェは認識発達を,この「均衡化」が漸進的に生じる過程としてとらえ,感覚運動期の各段階でもその過程が見いだせると考えた。

  • ピアジェ

    • 子どもが色々なことをできるようになる仕組みとは?

    • →認知機能の発達に着目• 世界や物事を知覚したり,記憶したり,学習したり,思考したりするやり方

    • 認識の枠組みである“シェマ”の変容により,“操作”が発達する。• “シェマ”:物事を認識するうえでの行動や思考の枠組み

    • “操作”:行為が内化して表象されたもの

    「操作」の質的変化

    • 操作:行為が内在化されたもののこと。実際の動作的な行為が表象(イメージ)として内化され,実際の動作を伴わずに実行可能となること。• ある行為を,頭の中でその行為をイメージとして思い描き,それを再生してその行為の結果がどのようになるかを想像できるようになること。

    • 実際に身体感覚を通して外界を認識する段階• 表象(イメージ)を用いて外界を認識する段階

  • 4つの発達段階

    • 「操作」(行為が内化されて表象されたもの)の水準をもとに

    • 「感覚運動期」(0~2歳頃)• 「前操作期」(2~7歳頃)• 「具体的操作期」(7~11歳頃)• 「形式的操作期」(11~15歳頃)

    感覚運動的段階

    表象的思考段階

    • 表象を用いた思考が可能となるおよそ2歳ごろからの段階

    • 前操作段階,具体的操作段階,形式的操作段階 を含む

    感覚-運動期の発達

    • 第1段階(0‐1ヶ月)• 反射

    • 第2段階(1‐3ヶ月)• 第1次循環反応

    • 第3段階(3‐8ヶ月)• 第2次循環反応

    • 第4段階(8‐12ヶ月)• 2次的シェマの協応と新しい状況への適応。目的的,意図的な行為が増加する。

    • 第5段階(12‐18ヶ月)• 第3次循環反応

    • 第6段階(18‐24ヶ月)• 新しい手段の発明

    6ヶ月ごろから,リーチングが出現

    =対象操作の発達

    10ヶ月ごろ,物の永続性が成立

    =表象形成の萌芽

  • 表象の獲得

    • 感覚・運動を通して,次第に,表象の獲得が見られるようになる。

    • 表象:現前しないものを心内にイメージすること。• 感覚運動期の第6段階であり1歳後半以降に発生するとされる。大人からの言葉かけによって見通しをもって行動できるようになるなど,表象の発生は子どもの行動に大きな変化をもたらす。

    • モノの永続性

    • 因果性

    対象の永続性の成立:いないいないばあ• 段階1(4‐6ヶ月):大人があやしてくれること自体が楽しい時期

    • 段階2(7‐9ヶ月):対象の永続性が成立• 人の顔が完全に隠れても再現されることが期待でき,その通りに顔が出てくることを楽しめる

    • 段階3(10ヶ月以後):遊びのルールが分かり,乳児自身が行うようになる• 交替遊びの成立

  • Question 3‐3

    • 表象が十分に発達していない世界を考えてみよう。もし,表象能力がなければ,どうやって世の中を理解できるだろうか。

    • 今,楽しめていることで楽しめないことはどんなこと?

    • 今,当たり前のように前提となっているのに成り立たなくなるのはどんなこと?

    • それがなくてもできることはどんなこと?

    前概念的思考段階(4歳以前)

    •個と類が未分化• 個別事例で1つの類が表される• (2:7) 散歩の途中でなめくじを見る。さらに10mほど歩いて別のなめくじを見つけたとき「あのなめくじがいる」

    • 「ワンワン」という言葉が,犬に似た動物や,最初に犬を見た場所から見えるものすべて(車や動物や人)に適用される

    • 転導推理• 個別事例を他の個別事例に直接移行させる• カテゴリー的な思考が不十分

  • クイズ

    •オーダーメイドの洋服は,既製服よりどうして高いのか?

    •5月のイチゴと12月のイチゴではどうして値段が違うのか?

    自己中心性の段階

    • 自己以外の視点に立って話したり考えたりすることができない様子• 対象の目立つ1つの特徴だけに注目…“中心化”• 事物が見る方向によって見え方が変わる際に,どの方向からの見えを尋ねても,自分の視点からの見えを答えてしまう

    • 「3つの山問題」や「保存課題」に間違える傾向

    • 幼児の思考や概念,世界観や言語などにはまとわりつく心性• 発達の過程で克服されるべきもの…“脱中心化”

  • • 3つの山問題• 自分の見えと他者の見栄を区別できない

    • 保存課題• 対象の一番目立つ特徴によって判断を誤りやすい• 保存:対象のみかけがかわっても対象の性質は変化しないという概念のこと

    • Cf. 自己性の認識によって子どもは自己を理解する事ができるようになると,今度は,自分の心についての理解が,他者の心を理解するためのモデルになる。• 「他人も同じように感じるのではないかと想像しはじめるのは,彼がどのように感じるかの発見を通してである。彼の『私』は他人の中の『私』を知るためのモデルとなるのである」(Humphrey, 1986, p.184)

  • 脱中心化

    • 発達のメカニズムの重要な1つ• 自分の視点を離れて他者の視点からものごとを考えることができるようになること

    • 他者の視点に立ち,また第三者の視点に立って,科学的な客観性に到達できる

    • あるいは相手の視点に立つことで,相互的な社会関係をもてるようになる。

    • その後の段階でもそれぞれの自己中心性があり,それを乗り越え脱中心化していく

    (3)具体的操作期(7,8歳から11歳頃)

    • 直接的な対象に基づいて行う論理的思考• 表象が自在になり,具体性をもつ概念的なシェマが発達

    • ①第1段階(7,8歳)• 保存概念の獲得:数,体積,重さ• 系列化:短い順に組織的に並べる• クラス化:サクラソウは花など

    • ②第2段階(9,10歳)• 高度なクラス化:乗法的分類(「丸い形」かつ「色は黒」など)が可能になる

    • 対象全体に対する観点の共応• 3つの山問題の通過:いくつかの山や建物からなる模型を別の角度から

    見た時の見え方を推理する

    • 全体と部分の関係の理解• 「話の不合理」課題:子どもに文章を読ませて,「どこが」「どうして」「どの

    ように」おかしいかを尋ねる…単に文章を読むだけでなく,全体の意味の論理的整合性や一貫性を考える必要

  • 発達の質的転換期:10歳頃

    • 「具体的事象,事象に関連しながら,しかも具体物からは直接的には導かれない,より高いレベルでの一般化,概念化された思考」が獲得される

  • • たとえば,鈴木ビネー検査における図形記憶課題で,複雑な図形を「2つの四角を線でつないでいる」のように一般化,法則化して記憶することや,玉探し課題(草の生えた広い運動場を連想させて,そこに落としたボールを探す方法を考える課題)で,計画性をもった探し方ができるようになります。

    • 異なる視点からの見えを関連づけたり,遠近画法を用いて描いたりすることに代表されるような空間の構造化も,この質的転換期に関わっているといえる。

    • 絵画:知的リアリズムから視覚的リアリズムへ• 具体的操作は最高の水準に達するが,一方で,物体の運動や力学に関する事柄については,加速度,圧力,密度などの潜在的な要因を扱えないという点で,具体的操作の限界も認識され初めて,次の形式的操作へと移行することになる。

    話の不合理課題

    • 次の文章にはそれぞれおかしいところがあります。どこが,どうして,どのようにおかしいか考えてください。• ①ある日のことわたしは,1人の男の人が,両手をポケットに入れて,杖を振りながら歩いて行くのをみました。

    • ②ある子どもがこんな話をしました。「私は兄さんよりも7つ年下ですが,10 年たてば兄さんよりも年が多くなります。」

    • ③ある人がこんな話をしました。「私の家から町まで1本の道があります。その道は,待ちまでずっと下り坂ですが,家に帰るにも,やはり下り坂ばかりです。」

  • 小学校中学年以降の教科内容• 言葉による抽象的思考を要する内容が多く含まれる• 国語:「ことばのことば化」

    • ことばの内容や意味を別のことばで説明する• 算数:「記号の記号化」

    • 分数や比例のように2つの記号(数)の間の関係を別の記号(数)として表現する

    • →それらの抽象化の内容を明確にしたうえで低学年の教科内容とのつなぎを確実にする必要性

    • Cf. 「9歳の壁」• 小学中学年頃に学力の個人差が拡大し,その学年に期待される学力を身につけていない子ども(学習遅滞児)の数が増加する現象

    • 1960年代半ば,聴覚障害児に対する教育「9歳レベルの峠」• 1970年代後半,障害をもたない小学生でも中学年でつまずきが増加する傾向

  • ただし,具体的操作にとどまる

    • エディスはスザンヌよりも髪の色が明るい(金髪)です。エディスはリリーよりも髪の色が濃い(褐色)です。3人のうちで誰の髪の色が一番濃いでしょう?

  • 形式的操作期

    • 児童期の終わり頃から青年期にかけての時期• 具体物に縛られることなく,問題全体の中でさまざまな可能性を考え,仮説的・抽象的な状況においても論理的な思考が可能になる• 組み合わせや比例といった複雑な形式的操作が可能になる。

    • 形式的操作期が15歳頃までとされているのは,ピアジェはこの年齢頃に人間の思考が完成すると考えたからである

    •論証の形式と内容を分け,事実についてだけでなく,純然たる可能性の問題について議論したり,仮説検証的な推理を行ったりすることが可能になる

    •論理的思考,仮説的思考,命題操作etc.•形式的操作をめぐるさまざまな議論

    • 領域一般性vs固有性の問題• 達成vs能力の違いの問題

  • シェマ

  • 前操作期(2~6歳)

    • 自己中心的な直感的思考• →自分の見えている世界が中心になる

    • アニミズム:無生物を生物として捉える

    • 保存の概念が不十分• →一部の目立った特徴だけみてしまう

    具体的操作期(7~11歳)

    • 保存概念が成立:保存課題に正答する

    • クラス概念の形成が可能になる• 加法的分類:生物=動物+植物• 乗法的分類:「丸い形」かつ「色は黒」

    • 脱中心的な思考が可能になる(脱中心化)• 他者の視点が分かる,三つ山課題ができる

  • 対象の永続性

    • ピアジェ…感覚運動期を通じて発達し,1歳頃から可能になるとかんがえた

    • しかしその後の研究ではもっと早い時期から可能であることがしてきされている

    • →図3.2

    早くから獲得されている知識

    • 物体に対する知識(図3.3)

    • 数についての知識(図3.4)

    • 社会性についての知識(図3.6)

  • 社会性の萌芽

    • 早期の認識は物理的世界だけにとどまらない。• 赤ちゃんの頃からすでに社会的な刺激に敏感であり,人間が積極的に関わることが子どもの発達にとって重要であることが明らかになっている。

    • 赤ちゃんは,発達のかなり初期から人間の顔を好んで長く注視する。

    • 音素の聞き分けができる• アイマス:音素の聴き取りを検討• 音素のカテゴリー知覚能力は,生後6ヵ月頃までは,どんな言語圈に生まれた乳児でも普遍

    例:言葉に対する敏感さ

    • 話しかけられるとよく反応する• コンドン & サンダー:生後12時間の新生児を対象に,音に対する腕の上下運動の観察

    • 母語の英語のみならず,中国語でも同様• 人工的に合成した母音,物理音:運動なし

    • 言葉かそうでないかを区別できる• メレール:新生児(生後1か月以内)を対象に,フランス語を聞かせ,あきたところで• ①フランス語だが,別の文を読んでいるもの• ②フランス語の音声を逆回しにして,フランス語と物理的には似ているがフランス語に聞こえない音

    • ③ホワイトノイズ• もとのフランス語と①は区別できない• もとのフランス語と②の区別,③の区別はできる• ロシア語の場合も同じ結果

  • Question 3‐4

    • 赤ちゃんの時期に社会性の萌芽が見られる意義を考えてみよう。

  • おさらい

    • 1.身体発達は非常に未熟で,原始反射のみ,だが表情は豊か

    • かわいい顔• 2.それは,出生後の社会性の獲得に寄与する

    • 養育を引き出す

    Question 4‐1

    • まるまるとしていて,目が大きな赤ちゃん。• 赤ちゃんを見たとき,あなたはどう感じるだろうか。• 赤ちゃんに泣かれたら,どう感じ,何をしようとするだろうか。

    • 赤ちゃんにほほえみかけられたら,どう感じ,何をするだろうか。

  • 赤ちゃん

    • ヒトの乳児には,他者から養育や保護を引き出し,他者との関係をつくっていくためのさまざまな生物学的基盤が備わっている。

    • すぐれた感覚能力• 未熟な運動能力• 多様な表情• 赤ちゃんの好み:顔(とくに目),声,言葉• 共鳴動作• かわいい顔

    赤ちゃんはなぜかわいいのか?

    かわいい顔はかわいい

    ベビースキーマ

  • なぜ?

    • ヒトは他の動物に比して生育期間が長く,他者からの世話なしには生きのびることができない

    • 他者から養育や保護を引き出し,他者との関係をつくっていくためのさまざまな生物学的基盤• 見た目のかわいらしさ• 人に対する敏感さ:

    • 人の顔が好きでじっと見つめる傾向がある• 人の言葉に特に関心を向ける,人の声による言葉が好きで,話しかけられるとよく反応する

    • 共鳴動作:他者の顔の動きを無意識に模倣する

  • しがみつきたい,一緒にいたい

    • 愛着

    • 母子間において愛着関係が成立したことは,たとえば,6~7か月頃,母親を追い求め,母親との接近・接触を強く求めるようになることなどに指摘することができる。

    • また,5~7か月頃に始まる「人見知り」なども,自分にとって安心できる相手とそうでない相手とを区別できるだけの関係が成立していることを示している。

    愛着とは

    • 特定の他者との「近接」の確保,その機能としての「保護」• 「個体がある危機的に状況に接し,あるいはまた,そうした危機を予知し,恐れや不安の情動が強く喚起された時に,特定の他個体を通して,主観的な安全の感覚を回復・維持しようとする傾性」

    • 人間は,自らに対する保護を確実にするために,他者とつながる能力(泣き,微笑,喃語,etc)を生得的にもってうまれる• それによってかき立てられる大人の側の行動も,基本的本性からもたらされる

    • そのような大人と子どもとの相互作用を通して愛着は形成される

  • 直感的育児

    • 一方,養育者の側にも,特別な学習経験や意識的な関与がなくても,状況や乳児の状態から適切な応答をする構えが備わっている。

    • このような構えは,直感的育児(Papousek & Papousek,1987)と呼ばれている。

    そのような関係を結ぶ他者とは?• ボウルビイ(1969/1982)が示したアタッチメントという言葉の本意は,特定の他者との「近接」の確保,その機能としての「保護」にある• 「個体がある危機的に状況に接し,あるいはまた,そうした危機を予知し,恐れや不安の情動が強く喚起された時に,特定の他個体を通して,主観的な安全の感覚を回復・維持しようとする傾性」をアタッチメントと呼んだ(数井・遠藤, 2005)。

    • attachmentの原義は,文字通り,生物個体が他の個体にくっつこうとする(アタッチしようとする)ことに他ならなかった。