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内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) 香川県立中央病院 消化器内科 稲葉知己 臨床研修指定病院であり, 約10名の初期研修医+後期研修医 ESD適応病変 EMRの適応の原則: 1)リンパ節転移の可能性がほとんどない 2)腫瘍が一括切除できる大きさと部位にある 具体的な適応条件: ①分化型腺癌である ②肉眼的に粘膜内癌 ③肉眼型に関わらず腫瘍径2cm以下 ④ 陥凹型では潰瘍を伴わない UL-)、分化型m癌、腫瘍径は問わない UL-)、分化型sm1癌(500μm未満)、30mmUL+)、分化型m癌、30mm以下 UL-)、低分化(混在含む)型m癌、20mm以下 ESD適応 未分化癌は、検討症例数も少なく、最終病理診断による 完全切除の判定も困難な症例も存在しうることより 原則、適応とはしていない。 早期胃癌 進行胃癌 粘膜癌 粘膜下層癌 内視鏡的粘膜切除術 (EMR)あるいはESD ②腹腔鏡下手術 ③開腹手術 ESD 腹腔鏡下手術 開腹手術 ①開腹手術 ②化学療法(抗がん剤) 早期胃癌切除例の半数以上がESD施行例となっている

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Page 1: EMR - chp-kagawa.jp · 2)腫瘍が一括切除できる大きさと部位にある 具体的な適応条件: ... Tub1 Tub2 ~por 切除病理標本(拡大像) 切除病理標本(拡大像)

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

香川県立中央病院 消化器内科稲葉知己

臨床研修指定病院であり,約10名の初期研修医+後期研修医

ESD適応病変

EMRの適応の原則:1)リンパ節転移の可能性がほとんどない2)腫瘍が一括切除できる大きさと部位にある

具体的な適応条件:①分化型腺癌である②肉眼的に粘膜内癌③肉眼型に関わらず腫瘍径2cm以下④ 陥凹型では潰瘍を伴わない

①UL(-)、分化型m癌、腫瘍径は問わない②UL(-)、分化型sm1癌(500μm未満)、30mm以

下③UL(+)、分化型m癌、30mm以下④UL(-)、低分化(混在含む)型m癌、20mm以下

ESD適応

未分化癌は、検討症例数も少なく、最終病理診断による完全切除の判定も困難な症例も存在しうることより原則、適応とはしていない。

早期胃癌

進行胃癌

粘膜癌

粘膜下層癌

①内視鏡的粘膜切除術(EMR)あるいはESD

②腹腔鏡下手術③開腹手術

ESD腹腔鏡下手術開腹手術

①開腹手術②化学療法(抗がん剤)

早期胃癌切除例の半数以上がESD施行例となっている

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ESDの実際 病変を確認事前の陰性生検にニードルナイフにてマーキング(VIO: swift coag 3, 30 W)

色素内視鏡による病変の詳細な観察

逆は可

ニードルナイフにて全周にマーキング

色素を洗い落としてマークを明瞭化

マークの外を粘膜筋板が切れる程度の深さで切開し,トリミングを加え、まず,筋層を把握する.

筋肉の層の直上を剥離します.十分な粘膜下層が得られ、正確な組織診断にも有用。筋層直上は筋層を貫通する血管がよく認識でき,効率よいプレコアグレーションが可能。

病変切除終了

後出血の危険性のある血管の凝固処置

リン酸緩衝液(pH 7.4)10mlで洗浄し,PTM( polaprezinc/thrombin mixture)を散布して終了

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トロンビンと付着型の粘膜防御製剤であるポラプレジンク(亜鉛とカルノシンの

錯体)混合液

内視鏡下局所撒布と経口投与における

止血効果ならびに安全性

PTM( polaprezinc/thrombin mixture)

(稲葉知己,他。新薬と臨床,2000)切除標本の詳細な観察と切り出し方向の決定

1週後 2ヵ月後

偶発症

ESD後2日目 吐血 Hb 11.6→10.0後出血

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血管

十分な切除面の観察後出血への対応が可能な体制下で行うこと

穿孔は、従来は緊急外科手術が必要と考えられてきたが、ESDの場合の穿孔はピンポイントである場合が多く、速やかなクリップ閉鎖術後に、絶食、N-Gtubeによる胃内の減圧、PPIと抗生剤の経静脈投与により大半は2ないし3日にて改善する。

穿孔

切開の際の局注の時点から粘膜下層の強い繊維化が確認された

What ?ではなくて,

さあ処置 穿孔部

腹痛弱く。一日,胃液吸引。絶食,PPI,抗生剤投与。4日目より食事開始。11日で退院。

Group Ⅴ poorly differntiated adenocarcinoma 17mm, m Ul(-) VM(-) LM(-) ly0 v0 根治度EB(低分化)

切片;35mm ×37mm 0-Ⅱc

ESD前診断と切除技術の向上

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ESD前診断

金比羅歌舞伎

ESD術前診断(ESD施行 1週間前)

高解像度内視鏡による通常観察(プロナーゼ+ガスコン水による出血をさせずに丁寧に洗浄)

NBI併用拡大内視鏡

薄めのインジゴカルミン( 0.2%)を使用するか酢酸加インジゴカルミンを(0.6%酢酸+0.4%インジゴカルミン)使用するかは、NBIを施行した時点でのVilliあるいはpitの見え方によって決定している。酢酸による変化で、明瞭となるかは癌の粘液形質の違いとの報告もあるが、臨床上は、粘液層の状態で異なる。

原則4点生検を施行も、境界診断困難例は追加で生検を行う。

1

2

3

4

内視鏡写真(通常観察) AIM:aceticacid‐indigocarmine mixture

散布直後

NBI:narrow band imaging

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陰性生検 ESD施行

どうしても 胃体部で炎症が強くて、範囲診断困難症例は、H.pylori 除菌治療を先行することもある。除菌成功後に浮腫が減少するため、高低差がなくなるため、もともと高低差がなく、色調変化が捕らえにくい病変には有効。

前庭部では必ずしも有効でない。ただし、前庭部は範囲診断困難例は少ない。

初回内視鏡

除菌治療3ヶ月

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何でもかんでもESDすればよいわけではないが

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頭部側

切除病理標本(肉眼像)

基部側頭部側 Well differentiated tubular adenocarcinomam, INFβ, ly0, v0, LM(-), VM(-), EA

癌の基部境界

粘膜筋板

切除病理標本(ルーペ像)

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Tub1 Tub2~por

切除病理標本(拡大像) 切除病理標本(拡大像)

粘膜筋板

Polypectomy LM(+) VMX

EMR LM1(+)VM(- )

ESD LM0(-) VM(-)

ESD技術向上

栗林(りつりん)公

ESDは、すべての内視鏡処置技術が求められるため、技術の習得は容易ではない

ESD施行時間の短縮には出血のコントロールが必要

Water jet付内視鏡自作注水装置出血のコントロールにはいずれかが必要

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穿刺針23GOLYMPUS 先端アタッチメント

自作注水装置

2 mm

4 mm

1

1

√2(4 mm)

(2.8 mm)

(2.8 mm)

粘膜に対して45度を基準に切開を進める

鎮静状態を把握

BIS monitorプロポフォールの予測血中濃度と予測脳内濃度による安定した麻酔深度

デュプリフューザーTCI(Target Controlled Infusion)

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テルフュージョンTCI

VIO

BIS (Bispectral Index) モニター

生体監視装置

体圧分散マット

食道癌のESD病変に接戦方向になれる利点がある。

大きな病変は、まず、中心にトンネルを造る。そこから、両サイドに剥離を。

脊椎側病変は太い血管があるので 要注意。

胃の剥離層より、ひと皮浅めに剥離(大腸も)。

使用ナイフで 剥離モード「一踏み」で、切れる粘膜下層の量を把握「ボクシングのジャブ」

CO2 送気で

57歳 男性スクリーニング喫煙(+),飲酒(+)

全処置時間 32分

Squamous cell carcinomaMt, m2, ly0,v0

大腸癌のESD上項結腸では、予想外に粘膜下の繊維化がある

体位変換

デバイスは、巨大病変ではフックナイフをどこかで使用することを前提に

深部大腸は、スコープのコントロールができる工夫(ダブルバルーン等々)を

無理しない

CO2 送気で 大腸癌のESD

スネア使用OK