工業力学補足スライド -...
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第4回:トラス・重心とその応用
機械システム工学科 井上 康介
日立キャンパス 棟 号室
工業力学 補足スライドIndustrial Mechanics
宿題を教室前方の机に提出してください.
配布物:解答用紙 (小テスト用) 1枚,ノート 3枚
(p.25~36),宿題用解答用紙 2枚
前回のおさらい
大きさを持つ物体がつりあっている状態の力学 (静力学) を扱う.
このとき注目すべき箇所は,物体間の接触点 および 物体と物体をつなぐ支点
接触点において,摩擦がないなめらかな接触 では,物体が受ける反力 は必ず 接触面に垂直 である.
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摩擦あり
摩擦なし
※ 均一な棒にかかる重力は中点 (重心)を通る
摩擦力
垂直抗力
前回のおさらい
物体間をつなぐ支点 には以下の 3種類がある.
◼ 移動支点:1方向の力のみ受ける (移動方向の力と力のモーメントは逃がす)
◼ 回転支点:2方向の力を受ける (モーメントを逃がす)
◼ 固定支点:2方向の力とモーメントを受ける
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移動支点 回転支点 固定支点
反力は移動方向に垂直,その作用線は回転中心を通る
反力の作用線は回転中心を通る
反力だけでなく,反モーメントも生じる
着力点の異なる力のつりあい
異なる点に作用する力のつりあい:力がつりあうだけでなく,力のモーメントもつりあわなくてはならない.
◼ 力のつりあい:垂直な 2方向についてのつりあい式
◼ モーメントのつりあい:任意の点まわりのモーメントのつりあい式
これらを連立させて解く.
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𝑹1
𝑹2
𝑚𝒈
𝑅1𝑥 − 𝑅2 = 0
𝑅1𝑦 −𝑚𝑔 = 0
𝑅2𝑙 sin 𝜃 − 𝑚𝑔1
2𝑙 cos 𝜃 = 0
力 (水平):
力 (鉛直):
モーメント (床接触点まわり):
トラス (truss)
骨組み構造:棒状の 部材 (member) を 節点 (joint) において連結して作った構造.
トラス (truss):節点で回転自由なピンにより結合され,かつ相対運動できない骨組み構造.
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トラス (truss)
部材の質量を無視すると,部材が受ける力 (部材力) は両端の節点からのみ.
◼ 部材は加速しない → 𝑭1 + 𝑭2 = 𝟎
◼ 部材は回転しない → 𝑭1,𝑭2 は軸方向
引張力を受ける部材:引張材 / 圧縮力を受ける部材:圧縮材
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F1
F2
F1
F1F2
※ この図は「部材がピンから受ける力」を描いている
トラス (truss)
トラスの解析では,「ピンが部材から受ける力」を求めることで,各部材の部材力を導出する (さっきと逆).
トラス全体は移動支点または固定支点により環境に固定され,ここで反力を受ける.
さらに,外力が加わる.
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R1
R2
F1
F2
トラス (truss)
解析の第一歩では,これらの外力をすべて同定する.
トラスの内部構造をいったん無視し,トラス全体を一つの剛体と見立てて,その剛体のつりあい式を解く.
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R1
R2
F1
F2
トラス (truss)
解析の第一歩では,これらの外力をすべて同定する.
トラスの内部構造をいったん無視し,トラス全体を一つの剛体と見立てて,その剛体のつりあい式を解く.
こうして外力がすべて求まったら,いよいよ内力 (部材力) の同定を開始するが,その方法は二つある.
◼ 節点法:各節点が部材から受ける力がつりあっていることを利用して,節点ごとにすべての部材力 を求める.
◼ 切断法:トラス内の特定部位だけの部材力を求めるため,トラスをある切断面で仮想的に「切断」し,切断された断片を一つの剛体と見立て,つりあい条件からその部位だけの部材力 を求める.
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(1) まずトラス全体が釣り合っていることを利用して,トラスが受ける外力を求める.
トラス全体を1つの剛体と見立てると,力の釣り合いとモーメントの釣り合いを用いて外力を求められる.
節点法
F
R1
A B
DC
→
R2
σ𝐹𝑖𝑥 = 0,σ𝐹𝑖𝑦 = 0,σ𝐹𝑖𝑧 = 0.
R2
(2) 受けている未知力の数が 2 以下の節点から順番に,一つ一つの節点が受けている力の合計が 0 であることを利用して,部材力を求めていく (ただし,節点にかかっている未知の力が3つ以上ある場合は解けない).
部材力は引張力であると仮定して変数を定義.圧縮力の場合は値がマイナス. この統一性は重要
節点法
R1
A B
DC
FAD
FDA
FAB FBA
FAC
FCA
FDC FCD
FBC
FCB
FAB:節点A が B 方向に引っ張られる力
ここに描かれている力は全て,「部材が受ける力」ではなく,「節点が受ける力」であることに注意!
F
R2
節点法
さて,どの節点から始めるか…?
未知力が3つ以上作用している節点は解けない→ とりあえず解けるのは B または D.
例えば B について,𝑭が (Fx, Fy )T と求まっているとする
R1
A B
DC
FAD
FDA
FAB FBA
FAC
FCA
FDC FCD
FBC
FCB
F𝑥方向のつりあい:
0x BAF F BA xF F
𝑦方向のつりあい:
0y BCF F BC yF F
→
→
節点 A, C も解ける状態に→ あとは順次解いていく
特定の部材に働く内力をピンポイントに知りたい場合は,節点法のように絨毯爆撃的にすべての部材力を求めようとするのは非効率
切断法では,求めようとする部材を横切る切断面でトラスを仮想的に切断
→ 切断された両側の構造をそれぞれ剛体と見なし,つりあい条件を解く (→ 切断する部材は 3本まで!)
節点法と同様,第一ステップで,まずはトラス全体を剛体とみなして外力を全て求める
切断法
切断法
問題の図式は「2つの剛体とその間をつなぐ 3本の部材」となり,これらの部材力を求めれば良い.
そこで次に切断面の両側のいずれかの剛体についてつりあい条件を解く → この例では,左の三角形の方が計算が楽
切断された部材の部材力を変数化
→ このとき,節点法と同様に部材力は引張力と想定する
あとは 𝑥, 𝑦方向のつりあい式,モーメントのつりあい式という 3つの条件をいつもどおり使えば良い(カルマン法)
HG
EDC
BA
FCD
FGD
FGH
重心の求め方
重心の求め方
下図の物体にかかる重力ベクトルを考える.
微小部分 (位置𝒙𝑖,質量𝑚𝑖) に作用する重力は 𝑚𝑖𝒈.
そしてその合力 が重心 (位置 𝒙G) にかかる𝑚𝒈である.ただし 𝑚 = σ𝑚𝑖.
𝑚𝑖 i
ii
x
yx
𝑥
𝑦
𝑚𝑖𝒈
𝑚𝒈
COG
𝒙G
→ 物体の並進・回転に対する影響が等価
16
重心の求め方
物体の各部分 𝑖にかかる重力𝑚𝑖𝒈によって生じる原点周りの力のモーメントを合計すると,重心にかかる合力𝑚𝒈による原点周りのモーメントに等しい.
例えば重力方向を図のように𝑦軸 負の方向として,原点周りのモーメントの方程式を立てると…
𝑚𝑖 i
ii
x
yx
𝑥
𝑦
𝑚𝑖𝒈
𝑚𝒈
COG
𝒙G
17
重心の求め方
𝑚𝑔 ∙ 𝑥G = σ𝑚𝑖𝑔 ∙ 𝑥𝑖 同様に,重力方向を x 軸に平行にして考えれば,
𝑚𝑔 ∙ 𝑦G = σ𝑚𝑖𝑔 ∙ 𝑦𝑖 両辺に𝑔があるのでこれをとってベクトル表記すると…
𝑚𝑖 i
ii
x
yx
𝑥
𝑦
𝑚𝑖𝒈
𝑚𝒈
COG
𝒙G
𝑚𝑖𝒈𝑚𝒈
18
重心の求め方
𝑚𝒙G = σ𝑚𝑖𝒙𝑖 連続体においては,加算の演算が積分となって,
𝑚𝑖 i
ii
x
yx
𝑥
𝑦
𝑚𝑖𝒈
𝑚𝒈
COG
𝒙G
19
𝑚𝒙𝐺 = න 𝒙 𝑑𝑚物体全体
重心の求め方
この式の要点は以下の通り:
(全質量)・(重心位置) =
{(部分の質量)・(部分の位置)}の合算
これを理解すればよい!
教科書p.35以降の例題ではすべてこの計算をやっている.
Gm dmx x物体全体
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結合物体の重心
図のように質量 𝑚1 の物体1 と質量 𝑚2 の物体 2 が結合しているとき, 総質量は 𝑚1 +𝑚2 である.物体 1, 2 の重心をそれぞれ 𝒙1,𝒙2 とし, 結合体全体の重心を𝒙G とする.
物体 1 について ,物体 2については.
m1g
m2g
(m1+m2)g
𝑚𝑖𝒈
𝑚𝑗𝒈
物体1 物体2
𝒙1 𝒙2𝒙G
1 1 i im mx x物体1
2 2 j jm mx x物体2
21
結合物体の重心
.
物体全体の重心について,
つまり,
m1g
m2g
(m1+m2)g
物体1 物体2
1 2 G( ) k km m mx x物体1+物体2 i i j jm mx x
物体1 物体2
1 1 2 2m mx x
1 1 2 2,i i j jm m m mx x x x物体1 物体2
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𝑚𝑖𝒈
𝑚𝑗𝒈𝒙1 𝒙2𝒙G
(全質量)・(全体の重心)
=S (各部位の質量)・(部位の重心)
微小部位が大きさを持つ場合
微小部位が大きさを持つ場合も,その重心が求まるなら同様に計算して良い.
微小部位の重心が 𝒙,微小部位の質量が 𝑑𝑚 なら,全体
の重心は 𝒙𝐺 = ൗ𝒙𝑑𝑚 𝑑𝑚 (同じ式).
23
例題 3.1
上下に対象なので,重心は対象軸上.
三角形の重心は頂点から 2/3 下りたところ.長方形の重心は真ん中である.
あとは結合体の重心の式を適用:
12 [cm] 16 [cm]
10
[cm
]
G1 G G2
O 𝑥
𝑦
8 [cm] 8 [cm]
1 1 2 2
G1 2
A x A xx
A A
24
例題 3.2
物体の一部を抜いた場合,抜く前の質量・重心をmT,xT,抜いた部分の質量・重心をmD,xD ,抜いた後の重心を xG
とすると,
15
10
5
T T D DG
T D
m m
m m
x xx
25
例題 3.2
分母を移項して整理すると,
物体の一部を抜いた場合,抜く前の質量をmT,xT,抜いた部分の質量・重心をmD,xD ,抜いた後の重心をxGとすると,
T T D DG
T D
m m
m m
x xx
T T T D G D D( )m m m mx x x
あわせた質量とあわせた重心の積
抜いた残りの部分と抜いた部分の質量・重心の積の合算
→ 合体した物体の式と同じ
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例題 3.2
抜く前の面積・重心が150, 7.5で,抜いた部分の面積・重心が4𝜋, 10.これを当てはめて,
G
150 7.5 4 107.27
150 4x
15
105
27
例題 3.3
積分で求める例.この場合,微小部分をどのように設定するかがキモだが,微小部分の位置と質量が簡単な式となっていて,積分が可能であることが重要
例えば上の例の場合,𝑥軸や 𝑦軸に沿ってスライスするようなやり方もあり得るが,角度𝜃で切るのが簡単
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例題 3.3
図のように微小部分 (長さ𝑑𝐿 (= 𝑟𝑑𝜃), 点Oからの角度𝜃) を考えると,その 𝑥座標は 𝑟 cos 𝜃である.
あとは,教科書 p.35 の通り,以下の計算をすればよい:
( )( )( )
( )
微小部位の位置 微小部位の長さ重心位置
微小部位の長さ29
例題 3.4
この例では,図形を縦に細く切り出した幅𝑑𝑥の短冊を微小部分としている.
短冊の上の端には直角三角形のような形の部分がくっついている.斜辺は厳密には曲線だが,微小幅なので直線と見なすと,その傾きは𝑓′(𝑥).三角形の底辺は𝑑𝑥で高さは𝑓′(𝑥) ∙ 𝑑𝑥となり,面積は Τ𝑓′(𝑥)𝑑𝑥2 2.
→ 微小幅𝑑𝑥の2乗がかかる ので,無視.
よって微小部位の面積は 𝑑𝐴 = 2𝑥2𝑑𝑥.
短冊の重心の 𝑥座標は 𝑥であり,𝑦座標は下側の長方形の中心だから, Τ𝑓(𝑥) 2 = 𝑥2.
あとは 𝑥, 𝑦座標それぞれについて,例の積分:
𝑑𝑥
𝑓′ (𝑥)𝑑𝑥
𝑓 (𝑥)
G G,x dA dA
x yA A
y
30
微小量の2乗は無視してよい
例題 3.4
補足として,短冊重心の 𝑥座標を 𝑥としてよいとしたが,厳密には中央だから 𝑥 + 𝑑𝑥/2となる.しかし,この部分は無視して良い.
12
G0
1 13 2
0 0
1 1 1 12
2 21 1
2 2
x x dx dA x dx x dx
dx dx
A A
x dx xA A
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𝑑𝑥
𝑓′ (𝑥)𝑑𝑥
𝑓 (𝑥)
a
例題 3.5
例題3 と同様に qに基づく微小部分を考える.
微小部分は微小な中心角 dqをもつ扇形であり,これは二等辺三角形とみなして良い.すると重心は中心から (2/3)rいったところ.角度は qだから,重心位置が求まる.
微小部分の面積は2 等辺三角形の面積であり,底辺が r dqで高さが r
q
dq
2cos
3r
Ox
y
→ dA= (1/2) r 2dq32
例題 3.6
図のように,yz 平面から距離 x の位置を薄さ dx でスライスした板を微小部位と考える.
この板の側面は厳密には傾きを持っているが,これにより生じる体積の大きさには dx 2がかかるため,無視する.
すると微小部位は半径 r,厚み dx の円板と考えることができる → dV=pr2dx =(pR2/h2)x2dx
あとは x・dV (= (pR2/h2)x3dx)を積分.
x
y
xx+dx
h
xr Rh
R
33
まとめ
物体全体の構成要素として微小部位を考え,その位置と質量 (または 長さ,面積,体積) を求める.
あとは以下の通りやればよい.
微小部位が大きさを持っている場合,下記の通り.
( )( )( )
( )
微小部位の位置 微小部位の質量重心位置
微小部位の質量
( )( )( )
( )
微小部位の重心位置 微小部位の質量重心位置
微小部位の質量
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まとめ
結合体の重心は以下の通り.
物体の一部を除去した場合は以下の通り.
35
( ) ( )( )
( )
i i
i
部分 の重心 部分 の質量重心位置
部分 の質量
( )
( ) ( ) ( ( )
(
)
) ( )
重心位置
除去前の重心 除去前の質量 除去部分の重心 除去部分の質量
除去前の質量 除去部分の質量
まとめ
予告:第6章で扱う慣性モーメントも同様にして微小部位を作って積分を行うことで求められる.こちらでは,
を計算する.同じような計算なので混同に注意!
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2( ) ( )微小部位と軸との距離 微小部位の質量