fate / the beelzebub comes.(魔王来たりて)

Fate / the beelzebub comes.(魔王来たりて) 猿々しい猿 暁~小説投稿サイト~ By 肥前のポチ http://www.akatsuki-novels.com/

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Fate / the beelzebub comes.(魔王来たりて)猿々しい猿

暁~小説投稿サイト~ By 肥前のポチ

http://www.akatsuki-novels.com/

-1-

注意事項

このPDFファイルは「

暁~

小説投稿サイト~

で掲載中の小説

を「

暁~

小説投稿サイト~

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ものです。

この小説の著作権は小説の作者にあります。

そのため、

作者また

は「

暁~

小説投稿サイト~

」を運営する肥前のポチに無断でこのP

DFファイル及び小説を、

引用の範囲を超える形で転載、

改変、

配布、

販売することを一切禁止致します。

小説の紹介や個人用途で

の印刷および保存はご自由にどうぞ。

小説タイトル】

Fate

the

beelzebub

comes.(

魔王

来たりて)

作者名】

猿々しい猿

あらすじ】

スレイヤー

ズの世界から、

ある人間がFateの世界へとやって来

た。彼はある老人にこの世界でのある儀式に介入する事を依頼される。

彼は、

この世界で何をしようというのか・・・・

-2-

ってな訳で、

にじふぁん閉鎖に伴いこちらへと引越ししてきました。

自HP「八咫烏と猿」

にも掲載していますが、

できるだけ多くの感想を聞きたいが為に投稿します。

-3-

プロロー

グ「

・・・・」

生きとし生ける者が、

ことごとく死に絶え荒廃した平原に、

赤い髪を背中まで伸ばした一人の男が、

静かに・・・佇んでいた―

――

――

――

赤髪の男サイド)

-4-

「ふう~

・・・」

俺ことシリウス=

インバー

ス=

ガヴリエフは、

適当な岩に腰掛けな

がら、

現状に至った経緯を思い返していた。

周りを見渡せば、

多種多様の屍が転がっている。

どこぞの騎士風の人間だったモノや両腕を斬り飛ばされた魔道師風

の男、

戦いに駆り出された農民風の男の姿もある。

魔族や神族は死ねば死体も残らず消滅してしまうから、

この場には

両族の死体はないが、

両族も大半が死んだし俺自身かなりの数を殺した。

結論から言えば、

ダイナストの阿保と火竜王の正義馬鹿の抗争に巻

き込まれたのだ。

覇王は俺の中に存在する魔王のかけらを解放する為に・・・

火竜王は俺という存在を全否定し、

俺ごと魔王のかけらを抹消する

為に・・・

双方は、

無関係な人間まで巻き込んで俺に接触、

交戦してきた。

-5-

あいつらのお陰で、

俺は今や双方の陣営とこの王国他、

数あまた多

の人間

から追われる事になったのだ。

ひじょ~

~~

~に迷惑な話だ。

さ~

て・・・これからどうしようか・・・・」

俺は今後の進退方針を、

早急に決めなければならなくなった訳だが

・・・

俺の父親も母親も遥か昔に老衰で亡くなっているし、

アメリアおば

さんやシルフィー

ルおばさんの子孫達とも、

疎遠になってしまった

・・・

知り合いと言えばゼロスとかの長寿な連中ばかりだ・・・

かといって特に親しい訳ではない。

せいぜい、

お互いに顔と名前を知っていると言った程度だ。

まぁ・・魔族の連中は、

俺が魔王の力に覚醒してから、

親しく・・

というか敬う様に接してくるが。

-6-

どちらにしろ、

親しい間柄とは呼べない。

・・・正直な所、

俺自身この世界には未練は無い。

・・・いっその事、

異世界にでも召喚されんかね・・・」

流石にそれは無い・・・か。

・・・本と・・・か・・》

・・・ん?

・・今言った事は本当かの?》

!?

何者かが空間を渡って来る!?

・・・誰だ?」

俺は次元を渡ってくる存在の方向を見定め・・・

具現化した魔ル

ビー

アイ・ブレー

王剣を構える。

-7-

ホッホッホッ!・・・そう殺気を向けんでくれんかの、

この老体

には堪えるわい。

数瞬後・・・少ししゃがれた声の老人が、

空間に穴を空けて出てき

た。

・・・じー

さん、

その魔力量で普通の老人装おうってのは、

無理

だと思うぞ?

第一、

普通の老人ってのは次元移動など出来んよ。

・・・・やっぱり・・・そうかの?」

普通はな。

間髪入れずに即答したら、

じー

さんはその場で膝を着いて、

落ち込

んでいる様子だった。

その仕種は甚だ胡散臭かったが(

汗)

まぁ、

じー

さんから敵意を感じなかったので、

俺はとりあえず構え

を解いた。

・・・で?じー

さんは何の用で、

この世界に来たんだ?」

ホッホッ、

話が早くて助かるの。

わしの名はキシュア=

ゼルレッ

-8-

チ=

シュバインオー

グと言う。

実はの、

異界の魔王であるお主に依頼したい事があっての。

・・・依頼?」

そう・・・今、

わしの出身世界で【

聖杯戦争】

というのが行われ

ていての・・・」

俺は暫し、

じー

さんの説明に耳を傾ける事にした。

ゼルレッチサイド)

・・・という訳での、

お主には60年というサイクルをねじ曲げ

た奴を、

ぶっ潰して貰いたいんじゃ。

-9-

「・・・・報酬は?」

ふむ・・流石にただでは引き受けてくれんか。

では・・・・依頼達成の後は、

その世界で好きに生きて良いとい

うのはどうじゃ?」

訳も無く暴れる様な奴には見えんし、

構わんじゃろ・・・

いざとなれば、

わしやあやつらで止めればいいしの。

異界の魔王との戦いも面白いかもしれんて・・・

・・・・じー

さん、

今何か変な事考えてなかったか?」

おっとイカンイカン、

顔に出とったかの?

・・オホン、

それよりもどうするんじゃ?行くのか、

行かないの

か?」

そんな白い眼で見るでない、

ちょっと考えただけじゃ考えただけ!

・・・・一つ聞くが、

その世界は平和なのか?」

何じゃ、

魔王らしからぬ台詞じゃの~

?」

-10-

魔王なんていう位じゃから、「

ニンゲン沢山殺せるのか、

ゲヘヘ~

!」ぐらい言うかと思っとったんじゃが。

・・ここ百年位ずっと戦い続けだったからな、

たまにはのんびり

と過ごしたい。

・・・お主、

本当にこの世界の魔王かの?(

汗)

まぁ、

良いわい。

この世界よりは平和・・・かの?

表の世界は・・・と条件は付くがの。

・・・まぁ、

多くは望まん。

・・良いだろう、

その依頼引き受け

た。

そうか、

引き受けてくれるか。

よし、

善は急げじゃ、

早速転送

するぞ?」

随分と急だな・・・まぁ、

良い・・・やってくれ。

シリウスは身体の力を抜き、

わしに先を促す。

ではな、

よろしく頼むぞ。

わしは懐から出した【

宝石剣】

をシリウスに向かって振りかざす。

わしが魔力を込めると、【

宝石剣】

が閃光を放ち、

シリウスをあの

世界へと誘った。

-11-

せいぜい派手に暴れて来い!

TO

BE

CONECTED

-12-

第1話

来訪

冬木市、

市外の森上空―

――

――

――

今にも雨がこぼれ落ちそうな空模様の中、

明らかに自然の物とは思えない―

――

カカッ!!

赤黒い・・・雷い

かづちが

雲海を断ち、

耳をつんざく様な破砕音と共に、

木市内の湖へと降り注いだ―

――

――

そして、

着水と同時に、

赤く・・・・巨大な魔法陣が水面に形成さ

れた。

-13-

シリウスサイド)

今、

俺はじー

さんに別の世界に転送されている最中だ。

転送されている間、

俺は迂闊に動けない訳だが・・・

まだ着かないのか?

いい加減、

この目に悪そうなマー

ブル状の景色も見飽きたんだが・

・・

・・・ん?

やっと出口の様だな、

前方に光が見えてき―

――

俺は出口らしき光に包まれたと思った瞬間、

た――

~~

!?」

水面ギリギリの空中に放り出された。

-14-

「ぬおお!?レビテー

・・・」

ドッポ―

――

ン!!

ガボガボボッ!?」

当然レビテー

ションを唱え様とするも、

水面から距離が全く無かっ

た事が災いした。

盛大な水しぶきを上げて、

頭から湖に突っ込む羽目になってしまっ

た。ザパァ!

・・プハッ!」

俺は急いで水面に顔を出し、

周りを伺う様に見渡す。

どー

やら着いた様だが・・・何で出現場所が湖の上なんだ!?

おまけに水が冷てえ!?

ヒラ・・・

ん?

・・何だ・・・・紙?

俺は頭上から落ちてきた紙を手に取り、

そしてそれに文字が書いて

-15-

ある事に気付いた。

何々・・・《

これを読んでいる頃には目標の世界に着いているじ

ゃろう。

》」

・・・じー

さんからの手紙・・・か?

しかも、

律義に俺の世界の言葉で書いてあるし・・・

・・出現箇所は絞ったつもりじゃが、

多少の誤差が出る。

我慢し

てくれい!

・・・後、

お主には水難の相が出ておる様じゃからの、

気をつけ

る事じゃ(

笑)》

・・・あんのタヌキジジイ・・・んな事言いながら、

手紙はしっか

り耐水性の紙に、

滲まないインクを使っているじゃないか!?

おまけに笑いマー

クまで付けてるし・・・初めっからこの場所に転

送する心算だったな!

・・・次に会った時に仕返ししてやる・・・覚えとれよ!

《―

――

追伸、

ん?

続きがあるのか・・

-16-

《この世界の情報を詰め込んだ宝石をお主のポケットに放り込んで

おいたから、

後で読み取ると良かろう

・・・最後になったが、

存分にその世界を満喫するんじゃな、

いぜい有意義な日々を過ごす事じゃ。

・・・それではな、

また会える日を楽しみにしておるぞ。

キシュア・ゼ

ルレッチ・シュバインオー

グ》

・・・・・・・・・何か・・・気が削がれたな。

クク・・・たいしたじー

さんだよ、

全く。

・・俺も、

何時かまた会える日を・・・楽しみに待っておくぞ、

じー

さん?」

俺の脳内に、

小憎らしく笑うじー

さんの顔が浮かんでくる。

だが、

以外に悪い気はしないかった。

-17-

――

――

さて、

いー

かげんこのままだと冷えるからな・・・『

浮レビテー

ショ

呪文によって浮力を得た俺は、

岸に向かって飛翔した。

そして数分程飛行した後、

手近な岸に降り立つと、

「『

乾ドライ燥』

今だにびしょ濡れな状態だった服を呪文で乾かした。

ちなみにこの呪文は俺の母親のオリジナルで、

若い頃に何かとびし

ょ濡れになる時期があって、

一々乾かすのが面倒で開発したらしい。

面倒の一言でこんな呪文を開発したっていうのが、

あの母親らしい

と言えばらしいが・・・

まぁ、

今の状況にとっては非常に助かった訳だが・・・

・・・そー

言えば・・あのじー

さん、

この世界の情報が入った宝石

をくれたって言ってたな・・・

じー

さんの言葉を思い出し、

俺はおもむろにポケットに入っていた、

不思議な光を放つ宝石を取り出す。

-18-

フ~

ン・・?

これがこの世界の情報入りの宝石・・か?

一見には鈍い輝きを放つ、

只の赤い宝石にしか見えない。

しかし、

言語関連を一々覚え直さなくていいというのは非常に助か

る。大体の構成を把握した俺は、

宝石に魔力を流し込み体内へと吸収し

た。情報量としたら結構なモノだったが、

この世界についての情報は大

体取り込む事が出来た。

「―

さてと、

情報の吸収も終わったし、

そろそろ周辺を探索にで

も行くか・・・ん?」

これは魔力反応?・・・魔道士が近くにいるの・・か?

・・・酷く弱っている様だな、

今にも魔力反応が消えてしまいそう

な位に衰弱している。

・・・・・・・・・・・・・・。

見に行ってみるか・・・ここで気付いたのも何かの縁かもしれん

しな。

翔レイ・ウイング

封界』

!」

-19-

翔レイ・ウイング

封界によって浮力を得た俺は、

僅かに感じられる魔力反応を頼り

に現場に急行した。

そして、

現場に到着した俺は―

――

――

紫色のロー

ブを纏った女が、

階段の手前で倒れているのを発見した

のだった。

???サイド)

-20-

・・う・・・・ん・・・?

私は目の前に光を感じ、

ゆっくりと開いた。

赤い・・・?

開いた瞳に最初に写った物は、

宵闇の中でも映える光沢のある赤い

髪だった。

・・・ん、

目が覚めたか?」

そして、

自分を呼び掛ける声で、

漸く目の前にいる存在が赤い髪を

した男だと気付いた。

・・・貴方は・・・誰なの?」

あの時・・・前マスター

を裏切り、

この手で殺した・・・その後、

私は唯一の魔力の供給ラインを失い、

夜の森をさ迷った揚げ句・・

・消滅する筈だった・・・

・・・しかし、

今こうして私は存在している。

それどころか、

かつて無い程に・・力強い魔力がこの身体に溢れて

いる・・・

――

状況から判断すれば、

目の前にいるこの男が私に魔力を供給し

たと、

そう考える事が自然でしょうけど・・・

-21-

「・・・・もう一度聞くわ、

貴方は何者なの?」

・・・そう興奮するな、

無断で魔力供給した事については謝る。

あのままでは、

意識を失ったまま消えてしまいそうだったんでな。

赤髪の男は両手を上げて、

敵意が無いといった態度を見せる。

どうやら、

私の予想は当たっていた様だけど・・・

本当に何者なのかしら・・・静かに佇むその姿からは、

想像出来な

い程の強大な魔力を内包しているのを感じる。

でも、

それはこうして間近に居るからこそ分かる事・・・目の前に

いなければ、

何なんぴと人

も気付きもしないでしょうね。

それほどまでに見事な穏行・・・それはその強大な魔力を己が物に

し、

コントロー

ル出来ているという証拠。

こんなとてつもない存在が、

只の人間である筈が無い。

・・・・俺が何者か・・か?・・・まぁ、

説明するのは良いが―

――

口で説明しても信用しないだろうし・・・

それに、

長いし面倒臭いからな、

手っ取り早く行くぞ?」

赤髪の男は、

おもむろに赤い光が灯った指先を私の額へと向ける。

!?・・・何をするつもり・・・!?」

-22-

私は咄嗟に距離をとり、

魔術を放とうと腕を振り上げ・・・!?

話の腰を折るなよ、

まだ説明の途中だ。

いつの間に!?

・・気付けば、

私の腕は目の前の男に掴まれていた。

クッ・・・!?」

なんて膂力・・・ビクともしない・・・!?

そう暴れるな、

お前の脳に直接俺の記憶の一部を投影するだけだ、

害は無い。

・・・記憶の転写?」

そうだ。

私は首を縦に振る男の真意を計るべく、

まじまじと凝視する。

・・・・・・・どうやら嘘はついていない様ね。

・・・・・・・・・。

-23-

・・・・そうね・・どうせ、

あのままでは消えていた訳だし。

私は一旦精神を落ち着け、

改めて男を観察する。

それに、

抑えていてこの魔力量だ・・・ただの人間で有るはずが無

い。その正体を見ておくのも悪くはないわね。

分かったわ、

やってちょうだい。

そうか、

分かった。

・・・少し身体の力を抜いていてくれ。

男は改めて、

私の額に指先を翳し、

煌々と輝く赤い光を触れさせた。

・・・!?・・・これ・・は・・・?」

彼の言った通り、

私の頭の中に様々な映像が流れ込んできた。

――

――

男の禍々しく強大な魔力を行使する姿、

数多の異形共と殺

し合う姿、

魔王としての覚醒・・・・・そして人間達の裏切り・・

・・・・そう・・・・彼も裏切らたのね・・・信じていたモノに・・

・その後も様々な映像が脳裏を流れていく。

-24-

・・・最後にかの魔法使い―

――

キシュア・ゼルレッチ・シュバ

インオーグとの会話の場面が映つり、

そこで映像が終了した。

・・・ソレが俺が此処に来た理由と、

俺自身の正体だ。

・・・・・・・・・まさか、

これほどの存在とは思わなかったわ・

・・

存在としての格が違う・・・私が逆立ちしても敵う相手では無い・

・・・・

・・・でも、

信用に足る人物ではある様だ。

仮に味方に引き込めれば、

聖杯戦争においてこれ以上頼もしい存在

もいないだろう。

それに・・彼と契約出来れば、

私は魔力制限の枷から解き放たれる

・・・魔力の枯渇を気にせずに魔術を行使出来る・・・

何より、

魔女のマスター

が魔王なんて、

洒落が効いていているじゃ

ない。(

思考時間1.

03秒)

もう一度だけ人を・・・目の前の男を信じてみる気になった私は、

何時になく高速思考が可能な頭の中で、

今後のシミュレー

トを一瞬にして完了させたのだった。

-25-

シリウスサイド)

記憶の投影が終了してから数秒間程、

女は黙っていたかと思うと、

今の映像からすると・・・シリウス様は今回の聖杯戦争に参加す

るという事で良いのでしょうか?」

ずずいとこちらに詰め寄って来た。

しかも、

何故か話方が敬語の上、

名前の後に様付けになっている。

名前自体は記憶の中で知ったんだろうが・・・

-26-

「あ、

あぁ・・・まー

その方が動き易いだろうしな・・・しかし、

何故様付けなんだ?」

俺は額に汗がタラリと流れるのを感じた。

まぁ、

私なりのけじめという物ですわ。

・・後、

私の事はキャスター

とお呼び下さいな。

どういう意味なのか、

サッパリ分からんな・・・

それにしても、

唱キャ

スターえ

る者とは・・・まぁ、

格好からしてらしいとい

えば、

らしい名前だが・・・

本当の名前を教える気は無いという事か?

・・・・・・まぁ、

良いか・・・

・・今更だが、

俺の名前はシリウス・インバー

ス・ガブリエフだ。

記憶を見せた際に俺の名前は既に承知だろうが、

俺は改めて自身の

名前を名乗った。

ではシリウス様・・・今から私と契約して下さいな。

・・・・・・・・・・・・・・・何?

-27-

「・・・それは、

俺のサー

ヴァントとして、

聖杯戦争を戦うという

事か?」

勿論、

そのつもりで申し上げましたわ。

キャスター

は全くの澱みもなく言い切った。

・・・俺の目的は、

聖杯戦争で勝ち残る事では無いんだぞ?」

俺はキャスター

の真意を計りかねていた。

勿論承知していますわ、

その事も理解しての事ですわ。

む、

むう・・・まぁ、

協力してくれるのなら・・・それで良いの

・・・か?」

その時は、

裏切られたとしても対応出来るからと、

その場で了承し

た。だが・・・俺は全く気付いてなかったのだ。

キャスター

が獲物を見付けた時の猛獣の様な・・・ある意味危険な

視線を俺に向けていた事に・・・

-28-

遠坂凛サイド)

その日の夜は、

今にも雨が降ってきそうな空模様だった・・・

空気に湿り気が帯びていて、

汗が頬を伝う。

だが、

この汗はそういう意味でかいた訳ではなかった。

先程、

一瞬ながらも感じ取る事が出来た、

強大なる魔力・・・

それに気付いてしまったが為に、

冷や汗をかいたのだ。

アレが敵に回るかと思うと、

正直勝てる気がしなかった。

たとえどんなサー

ヴァントを呼び寄せたとしても・・・ね。

-29-

この時ばかりは、

アレに気付いてしまった自分の優秀さが恨めしか

った。

・・・でも、

気付いてしまった以上、

勝つための対策は講じなけれ

ばならない。

その為にも先ずは最良のサーヴァントを呼び寄せなければ!

私は胸元にしまっていた父親の形見である赤い宝石を握り締めた。

お父さん・・・お父さんからの遺伝したうっかりは今日は無しで、

お願い!

今夜ばかりは失敗出来ないの!!

今夜サー

ヴァントを召喚する事を心に決めた私は、

天国にいるであ

ろう父親に、

うっかりの回避を真剣に願うのだった。

-30-

TO

BE

CONECTED

-31-

第2話

槍の騎士(

ランサー

)互いの状況を話し合った後―

――

いつまでもこんな場所に居るのもなんだという事で、

シリウスとキャスター

の二人は、

鬱蒼とした森を抜けるべく小川に

沿って歩を進めていた。

シリウスサイド)

-32-

「―

――

――

それで、

これからどうなさいますか?」

・・・先ずは何処か街に出て、

拠点を確保し「

ギュウ~

ゴゴゴ

ゴゴ~

!!」

・・・・・・の前に腹拵えが必要だな//////」

・・・我が腹ながら、

なんてタイミングで鳴るんだ・・・

・・・もしかして、

今の音は?」

みなまで言うな//////」

流石に今のは恥ずかしかったぞ//////

・・・(

ジュルリ)

・・・・・・何故そこで舌なめずりをする?」

今、

別の意味で物凄い身の危険を感じたんだが・・・?

っ!?・・・それよりも、

どうやって食料を確保なさるのですか?」

あ・・今、

あからさまに話を逸らしたな。

・・・・・。

分かった分かった、

見てなかった事にするからそんなに睨むな!」

物凄く怖いぞ!

-33-

「・・・え~

どうやって食料を確保するかだったな?」

何とか話を逸らした後、

俺は体内に所持している異空間から、

特殊

な魔法処理を施してある釣り針を取り出す。

それは・・?」

釣り針だ。

今からこれを使って魚釣って食べるんだよ。

取り出した釣り針を自分の髪の毛を数本抜いて編んだ釣り糸に括り

付ける。

後は竿の代わりになる物を―

――

ああ、

あれが調度良いな。

俺は道端に自生していた細い樹(

吸収した知識では竹と言うらしい)

を切り、

竿の代わりにする。

じゃあ始めるか。

俺は手近な小川に釣り糸を垂らした。

・・・餌を付けないのですか?

それに、

あまり時間が掛かり過ぎると敵に捕捉される可能性が・

・・」

ああ、

敵の事なら心配いらん。

今の所半径2キロメー

トル内に魔

力反応はない。

それに周囲に魔力阻害の魔法を掛けているから、

遠距離から居場

所を察知される事もない。

-34-

後、

この釣り針には【

入れ食い】

の魔法を・・ああ、

こっちでは

魔術だったな。

・・を施しあるからな、

直ぐに釣れる。っと、

早速来たな!」

早速掛かった川魚を吊り上げ、

小川の脇に置く。

そして再び小川に釣り糸を垂らす度に釣れ続ける。

・・・・・・入れ食いの魔術・・・ですか?」

キャスター

が盛大に脱力感襲われているな。

ま、

ぶっちゃけ俺も母親からこの魔法を教わった時は、

今のキャス

ター

と似た様な反応をしたもんだが。

本当は情緒もヘッタクレも無いしんで、

あんまりこれは使いたく

無かったんだが、

今は非常時って事でな。

食料確保が最優先だ。

セイッ!」

次々と釣り上げて、

程なく俺の隣にこんもりと川魚の山が出来上が

っていた。

・・・シリウス様、

その位にしておいた方がよろしいのでは?」

いや、

もう少し要る。

・・・調度お客さんも来た事だしな。

えっ!?」

俺が視線を向けた先には、

深紅の槍を持ち鋭い殺気をこちらに向け

-35-

る蒼い獣が立っていた。

ランサー

サイド)

出て来いよ、

そこに居るのは分かっているんだ。

・・・チッ!」

桁違いの魔力を感じたってんで偵察に来て見りゃ、

着いて早々に見

つかっちまうなんてな・・・

これじゃマスター

に何言われるか分かんねぇぜ。

俺は陰から様子を伺うのを諦め、

樹の陰から月明かりが当たる場所

-36-

へと移動する。

マバゼッ

トスターに知らせなきゃなんねぇんだが・・・魔ジ

ミング

力阻害でも掛かっ

てやがんのか、

上手く念話が繋がらねぇ。

あの、

いかにも魔術師風な女がやってやがるのか・・?

テメェ・・・何のサー

ヴァントだ・・・剣セ

イバー士

か?弓アー

チャー兵

か?」

・・・さて、

どうかな?剣士か弓兵か・・・或いは魔キ

スター術

師かもし

れんぞ?」

チッ・・・ま、

流石にまともに応える訳は無えわな。

だが、

ある程度は予測は可能だ。

こんなに存在感のある奴が暗ア

サシン殺

者とは思えねえし、

理性のある事か

ら狂バー

サー

カー

戦士の線も無い。

そう言うお前は槍ラ

ンサー兵

か・・・分かりやすいな?」

フン・・・ぬかせ!この愛槍を見れば一目瞭然だからな、

その程

度じゃ驚きゃしないぜ?」

俺は愛槍ゲイボルグを構え、

臨戦態勢を取る。

クク・・・」

ッ!?

-37-

「テメェ・・・何でコッチを向きやがらねぇ!?俺を馬鹿にしてや

がるのか!?」

別にそんなつもりは無かったんだがな・・・ヨッと!」

って言うか、

いい加減釣りを止めやがれ!どう見ても釣り過ぎだ

ろ、

そりゃ!?」

俺にとってはこれ位が適量なんだが。

・・・・・・・・・・・・な、

何だと!?

奴は俺を横目(

無視した訳では無いみたいだが)

にしながら、

釣り

を続けている。

何でサー

ヴァントのテメェが飯食いやがんだよ・・・・・あ~

クソ!何か気が削がれちまったぜ。

真面目にやってんのが馬鹿らしくなってきやがった。

そんな事よりお前も一緒に飯喰わないか?・・・少し聞きたい事

もあるしな。

・・・・・・っ!?何だと!?

ウッ・・クソ・・・駄目だ、

殺意が勝手に霧散しちまう・・・・何

でこんな時に"

誓ゲッ

シュ約

"が発動しちまうんだよ!?

-38-

発動条件は満たしてねえ筈だぞ!?

原因はどうあれ、

発動してしまった以上誓約に逆らう事が出来る筈

もなく、

俺は大人しく槍を納める事になっちまった。

・・・まぁ、

元から逆らえる様な生易しいモンじゃねぇんだがな。

・・・・。

――

数分後、

俺は敵である筈の連中と焚火を囲む羽目になってい

た。ジュ~

・・・ジュ~

・・・

・・・クソ、

良い匂いがしやがる!

・・・・・・そういえば、

英霊になってこの方、

まともな飯を食っ

た覚えがねぇな・・・

バゼットは料理なんて出来ねえし・・・ま、

生前もまともな食い物

を食ってた訳じゃねぇがな。

・・・後は此処に天日塩を振り掛ければ出来上がりだ。

ホイッ!」

おっと!」

受け取った川魚は、

ジュ~

ジュ~

と美味そうな音を立て、

香ばしい

香りを立ち昇らせている。

-39-

「・・・ま、

折角だから熱い内に戴―

――

――

ゾクリ!

っ!?・・・な、

何だ今の悪寒は!?

背後から、

かつて感じた事の無い程の濃密な殺気が・・・

ランサー

・・・こんな所で何をやっているのですか・・・ア・ナ

・タ・は!?」

ゲェ!?バゼット!?」

振り返れば、

地獄の底から響いてくる様なハスキーボイス―

――

怒れる大魔神、

我がマスター

バゼット・フラガ・マクレミッツが

草むらからゆっくりとお出ましになった。

ヤベェ・・・すっかり忘れちまってたぜ・・・

-40-

バゼットサイド)

急に念話の連絡が取れなくなったと思ったら、

敵の施しを受けて

いたとは・・・・・呆れて物も言えませんね。

・・・さて、

覚悟は出来ていますか、

ランサー?」

パキ・・パキキ・・・

指の関節を鳴らしながら、

私はランサー

に斬り抉る戦神の剣フ

ラガラッ

を見舞

うべくゆっくりと近付いて行く。

ま、

待てバゼット!?話を聞いてくれ!」

弁明は仕置きが終わった後にゆっくりと伺いましょう・・・では

覚悟は出来ましたか?

小便は済ませましたか、

ランサー

?神様にお祈りは?部屋の隅で

ガタガタ震える準備はOK?」

眼光が尋常じゃねえ!?」

-41-

此処から先は言葉は不要・・・

斬フラガラッ

り抉る戦―

――

ちょっと待て。

なっ!?」

振り上げた筈の私の右腕は、

いつの間にか隣に近付いていた紅い男

に掴まれて止められていた。

クッ!?」

私はとっさに腕を払おうと振り上げようとするが―

――

――

ダメだ・・・動かない!?

魔術で強化した私の膂力でもびくともしないとは・・・

お前達に話があるんだ、

ランサー

をボコるのはその後にしてくれ。

って、

オイッ!?助けてくれんじゃないのかよ!?」

マスター

とサー

ヴァントの親睦を深める機会を奪う権利は、

俺に

は無いからな。

フフ・・そうですね、

コミュニケー

ションは大事ですよランサー

・・・連携を取る為にもね。

・・・だ、

駄目だ、

目が笑ってねぇ!?

・・・って、

やっぱり俺がボコられるのは決定事項なのかよ・・

・」

-42-

「クックク、

随分とマスター

の尻に敷かれてるな、

ランサー

?」

ほっとけ!」

情けないですよ、

ランサー

貴方も英霊の端くれならば、

いまわ

の際位潔くしなさい。

ただでさえ今の私はこの右手の鉄拳を振り下ろしたくて、

うずうず

いているのですから。

そんな理不尽な理由でボコられてたまるかよ!?

冗談は色気の無えパンツだけにしとけ―

――

――

って、

あ・・・」

「「

・・・・・・は?」

一瞬ランサー

が口にした言葉の意味が分からなかった・・・が、

の意味を理解した瞬間―

――

ブチブチブチィィ!

・・・フ・・・フフ・・自分のサー

ヴァントが覗き魔だったとは

・・・・ついぞ知りませんでしたよ?」

私の中で、

紐状の何かがブチ切れる音がした気がした。

・・・意味は良く分からんが、

お前が地雷を踏んだのは良く分か

った。

-43-

ランサー

短い付き合いだったが・・・骨は拾ってやるから安ら

かに眠れよ?(

合掌)

って、

手を合わせてんじゃねえ!?「

ガシィ!」

ぬお!?」

おお、

アイアンクロー

じゃあな、

ランサー

サラバだ。

ちょ!?ま―

―「

メキメキメキ!」

グオオオォォオオォォ―

――

!?」

フン!」

ゴキリ!

ドサッ

滅殺完了・・・」

乙女の着替えを覗いた罰です、

永とわ

久に懺悔しなさい。

だ・・・誰が乙女・・・だ・・?」

む・・・まだ息がありましたか。

雉も鳴かねば撃たれまいに、

愚かなりランサー

ナムナム(

再び

合掌)

・・・・」

同感ですね。

-44-

私は倒れ伏すランサー

の腹部にトドメの連撃を打ち込みながら、

リウスの言葉に相槌を打った。

「―

――

漫才はこれくらいにして、

そろそろ本題に入ってもいいか

しら?」

「「

あ・・・」

私達は、

ランサー

の対面に座っていたの女魔術師から降り注ぐ、

寒の視線で我に還ったのだった。

キャスター

サイド)

大幅に逸れていた話を漸く元に戻した私達は、

互いに名乗り合った

-45-

後、

バゼットと名乗った女も焚火の前に座した。

・・・それで、

話というのは何ですか?」

シリウス様と漫才を演じていたとは言え、

警戒の構えは解いていな

い・・・か。

・・・まぁ、

今更体裁ぶってもといった感はあるけれど。

私はシリウス様に目配せをして、

説明してもらえる様に促した。

実際、

さっきの敵との対話する事など、

私も聞いていなかったのだ

から。

じゃあ、

俺から説明しようか。

・・・先ずはバゼットと言ったか?お前はキシュア・ゼルレッチ

・シュバインオー

グって名前に聞き覚えがあるか?」

その名前には聞き覚えがある・・・というよりも世界から与えられ

た情報の中にその人物についての内容が存在していた。

ッ!?・・・かの宝石翁の事を、

私達魔術師の間で知らぬ者は居

ませんよ。

一瞬驚きの表情を見せた後、

直ぐに冷静さを取り戻したバゼットが

語る。

曰く、

次元を旅する第二魔法の使い手・・・魔術を行使する人間全

てが追い求めてやまない極致に到達した偉大なる魔術師。

-46-

そして赤い月を殲滅した強力な人間・・・

しかし、

かの宝石翁がどうしたというのですか?」

・・・その爺さんが俺をこの世界に喚んだんだよ。

・・・この聖

杯戦争を潰す為にな。

ッ!?

なっ!?宝石翁が貴方を召喚したと!?それも、

聖杯戦争を潰す

為にですか!?」

シリウス様は詰め寄るバゼットをあしらいながら、

それを肯定する。

ああ、

本人が言うには聖杯戦争が本来の目的からあまりにもかけ

離れてしまったので、

システム構築に関わった人間としては我慢がならんらしい。

・・・宝石翁が聖杯戦争のシステム構築に携わった事は聞いてい

ましたが・・・まさか本人がシステムの破棄を望んでいたとは・・

・協会がこの話を聞いたら卒倒する事でしょうね。

動揺を隠す様にバゼットは懐から煙草を取り出し、

火を着け様とす

るが―

――

――

・・・しっかり動揺しとるな。

ライター

を持つ手が定まらず、

一向に火が着かない。

-47-

「まあいい・・で、

だ――

――

お前達も別に聖杯自体を望んでる訳

じゃなさそうだし、

俺達と同盟を組まないか?」

そんな彼女に精神の立て直しを許さず、

シリウス様は追撃を敢行す

る。

「「

・・・・・・・・・・・・は?」

」」

「「

っ!?―

――

何|(

ですって)

だと)

!?」

」」

ランサー

組の2人は勿論、

そんな事は全く予想していなかった私も、

その発言に暫く思考が停止せざるを負えなくなっていた。

TO

BE

CONECTED

-48-

-49-

第3話

拠点探索

「「

っ!?―

――

――

何だで

すっ

てと!?」

」」

星瞬く夜空に、

三人の男女の絶叫が木霊した―

――

――

シリウスサイド)

・・・何故、

その様な話になるのですか?」

いち早くキャスター

が立ち直り、

冷静に質問してきた。

そんなに驚く様な事か?一応、

利害は一致してるだろう?」

-50-

「・・・普通は、

初見の敵勢力と同盟を結ぼう等とは考えない物で

すわ。そ

れは、

例え利害が一致していたとしても同じ事。

ふむ・・・そんな物か?

しかし、

聖杯を破壊するという目的がある以上、

彼等以外の魔術

師と同盟を組める可能性は低い。

・・・それに、

コイツらは―

――

――

特にランサー

は信用に足る

と思うぞ?」

・・・その根拠は何かしら?」

おや、

キャスター

の口調が段々冷たいモノになっていってるな・・

・・すっごく怖いぞ(

汗)

どうやら、

ランサー

は条件付きの制約を受けているみたいだから

な。ランサー

・・お前さん、

人に食事に誘われたりすると断れない制

約か何か受けてるだろ?」

殺気の収まり方が不自然だったし、

魔力流動にピントを合わせて凝

視すると、

何種類かの加護系の魔法と制約の術式が見てとれたからな。

なっ!?何でテメエがそれを―

――

――

ハッ!?しまっ「

何でアッサリ引っ掛かりますか、

貴方は―

――

!?」

-51-

グフゥ!?」

アッサリと俺の誘導尋問に引っかかったランサー

の鳩尾に、

バゼッ

トによる怒りのボディブロー

が深々と突き刺さった。

あれは・・・・凄く効くだろうな・・・(

汗)

・・・・・・。

ランサー

は物言わぬ屍と化し―

――

いや、

胸が上下している所を見

ると、

辛うじてまだ息が有る様だ。

岸に打ち上げられた魚の様に、

ピクピクと痙攣して、

如何にも瀕死

の状態といった感じだが。

どちらにしても復活には暫し時間が掛かりそうだ。

・・・とまあ、

言質も取った事だし、

同盟を組む事を前提に話を

進めて良いか?」

・・・仕方ありませんね、

ランサー

がこの状態では私達に勝ち目

はありませんし・・・

同盟の条件を話し合いましょう。

いや、

ランサー

を行動不能にしたのはお前さんなんだが・・・・」

・・・・・・・・・・・。

分かった・・・・分かったからその振り上げた右拳を下ろせ、

っくりとだぞ(

汗)」

-52-

俺はただ事実を指摘しただけだというのに・・・・理不尽極まりな

い。・・・とは思っても口にはしない。

言えば、

途端にランサー

と同じ運命を辿る事になるのは目に見えて

いるからだ。

・・・そういえば、

同盟を組むに従って、

先ずはお前達の拠点を

聞いておきたかったんだが・・・

連絡を取るにしても必要だしな。

・・で、

お前達の拠点は何処に

あるんだ?」

連絡用に使い魔を放つにしても、

場所が分からなければ大分時間が

掛かってしまうからな。

ん?・・・そういえば、

俺達の拠点は今から確保しなければならな

いんだったか。

まぁ、

見つからなかったら見つからなかったで、

位相空間に居を構

えれば良いのだから別に構わないのだが・・・

ただ、

これだとキャスター

が自由に行動出来ないんだよな。

それに、

今後の事を考えれば、

日常生活に必要な衣食住は、

現実世

界で確保して置きたい。

ま・・・ひとまずは街の偵察から始めないといかんな。

-53-

話すべきか、

悩んでいるバゼットを脇目に、

俺は今後の方針を思案

していた。

バゼットサイド)

・・・本来ならば、

魔術師が自らの拠点を教えるなどタブー

なの

ですが・・・・・背に腹は代えられませんね。

私達は街の外れにある、

エー

デルフェルト家所有の洋館を拠点と

して使用しています。

龍脈の上に位置していますし、

ベー

スとするには最適場所ですか

らね。

-54-

気付けば、

私は何時の間にか彼らの問に逐一答えてしまっていた。

・・・まさか、

精神操作の魔術を使われた・・?

いや、

そんな素振りは全く見せなかった。

・・・彼の・・眼前に座るこの紅い男の持つ独特の雰囲気がそうさ

せたとでもいうのだろうか?

確かに敵同士という認識は、

随分と薄れてしまっているが・・・

ふむ・・・お前は既に拠点をキー

プしているのか・・・まぁ、

然と言えば当然か。

?・・・その様子からすると、

まだ拠点が決まっていないのです

か?」

私は思わず対面に座っている、

赤毛の男を見つめていた。

当然だろう、

殺し合いをしようとしているのだ、

準備を万端にして

臨むのが当たり前なのだから。

ああ、

俺は今日こっちに来たばかりだし、

キャスター

もとある理

由で前マスター

を排除したばかりだ。

当然、

拠点なぞある筈も無い。

な!?前マスター

を排除したですって!?」

ま、

それはこっちの事情だ。

ただ一言だけ言えば―

――

――

その

-55-

前マスター

ってのが外道だったって事だけだ。

それは・・・・」

俺とキャスターの表情から事情をある程度察したのだろう。

バゼットがそれ以上言及してくる事はなかった。

・・・ま、

こっちは拠点が決まり次第知らせるとして・・だ、

り敢えずコレを渡しておく。

俺は懐から探知・連絡用の魔方陣を封入した魔石を取り出し、

バゼ

ットの投げ渡した。

・・これは?」

俺が作った連絡用の魔石だ。

例え結界の中や違う空間に居たとし

ても繋がる用にしてある。

何か用がある時はそれで連絡をくれ。

魔力を流せば起動する様に

なっている。

・・・凄い技術ですね。

早速魔力を流し、

起動させた様だ。

俺の持つもう片方の魔石が起動していた。

・・これで分かったと思うが、

片方が起動すれば、

もう片方も起

動する様に出来ている。

では、

俺達は拠点を探しに行く。

-56-

「分かりました。

また会いましょう。

」俺達は定期的に連絡を入れる事を約束し、

それぞれの方向へと別れ

た。

キャスター

サイド)

私とマスター

はランサー

組と別れた後、

漸く市街地へと辿り着いた。

結構時間が掛かってしまいましたわね・・・」

既に東の空が明るくなってきている。

-57-

流石に早朝は冷え込むわね・・・

・・・それで、

本拠地の件はどうなさいますの?」

取り敢えず目立たない手頃な建物を探すとしよう。

この際、

地脈

の事はあまり気にせんでいい。

いざとなれば俺が位相空間を創つ

造って、

そこに居住スペー

スを作

るからな。

・・・位相空間・・ですか?」

聞いたことの無い単語ね・・・彼独自の魔術かしら?

分かってないって顔だな?位相空間とはこの世界とは少しズレた

似て否なる空間・・・

言わば、

この世界で言う所の【

固リアリティ

マー

ブル

有結界】

の様な物だ。

なっ!?【

固リアリティ

マー

ブル

有結界】

ですって!?」

とは言っても、

あくまでみたいな物であって、

本物みたいに何で

も有りって訳じゃないがな。

・・っ!・・・・」

私の口から漏れた声は言葉に成らず、

金魚の様に口を開閉する事し

か出来なかった。

・・・だが、

さしあたって位相空間に居住スペー

スを作るにして

も、

メリットとデメリットがあってな。

-58-

「・・・メリットとデメリットですか?」

メリットは絶対に敵に発見されない事と、

この中では周りの被害

や監視の目を気にしないでいい事だ。

・・・成る程、

そもそも世界そのものが違うのだから見つかる事

は無いと言う事ですわね。

確かに、

それならば戦術的にかなりのアドバンテー

ジを得る事が出

来る。

で、

デメリットだが・・俺の魔力で空間を維持している性格上、

展開している間常に魔力を消費する事だ。

出来ない訳じゃないが、

流石に疲れるし面倒くさい。

そしてもう一つは、

門ゲー

ト用の寄り代が必要になる事なんだよな。

門ゲー

トというと・・・位相空間と現実世界とを結ぶ門という事でしょ

うか?」

理解が早くて助かる。

その門を繋いでおかないと、

位相空間が中

々安定しなくてな。

それで、

両世界を繋ぐ道標としての触媒が必要という訳ですわね?」

そういう事だ。

確かに敵性勢力に絶対に知覚されないというアドバンテー

ジは大き

-59-

い。しかし、

マスター

が魔力枯渇で行動不能では意味が無い。

・・・あの自分より遥かに強大な魔力が、

枯渇するとは到底思えな

いけれど・・・

聖杯戦争中、

何が起こるか分からない以上、

魔力を温存しておく事

にこしたことはないわね。

ま・・・取り敢えずはこの街の地形を調べてからだな。

――

我が内に眠りし、

我が影生まれ出でし子らよ、

偽りの楔を

解き放ち、

今こそ我が下へ来たらん―

――

シリウス様が呪文を唱え終わると、

彼の影が膨張し、

無数の魔法陣

が浮かび上がる。

一体何を―

――

私がシリウス様に声を掛けようとした瞬間―

――

――

バサバサバササ!

浮かび上がった魔法陣から、

凄い勢いで飛び出して来た黒い影が、

月明かりが照らす夜空へと舞い上がっていった。

「「

「「

カァ―

――

――

!!」

」」

」」

・・・か、

鴉!?

-60-

いや、

違う・・・鴉にしては内包している魔力が大き過ぎる。

例え、

使い魔だと考慮したとしても・・だ。

それにあの紅い眼・・・

ゾクリ―

――

・・・洒落にならないわね。

その闇夜に浮かぶ無数の紅い双眸に、

私は背筋に冷い汗が伝うのを

感じていた。

-61-

(シリウスサイド)

キャスターが目を見開き、

周囲の枝に停まっているカラスもどき達

を見回している。

・・・。

・・・若干引き気味なのは気のせいか?

周りの眷族達を見回す。

闇夜に浮かぶ無数の双眸・・・確かに不気味ではあるが・・・

コイツらは鴉の姿ナ

をしているが、

下レッ

サー

デーモン

級魔族の一種でな。

以前、

俺が偵察用に生み出した眷族みたいな物だ。

一応鴉の姿をしてはいるが、

当然鳥目ではなく、

逆に暗視能力に加

え、

隠ステルス行

能力を付与して作り出した、

偵察行動に特化した総数1000にも及ぶ鴉の群れだ。

緊急事態にでもなれば、

編隊を組んでの戦闘行為も可能となってい

る。一応、

コイツらにも下フ

イアー

・ボー

ルやフリー

ズ・ブリッ

位魔法位は撃てる様に調整してあるし、

滅多な事ではやられんとは思うが・・・

ま・・・いざとなれば、

アノ特殊能力が発動するから問題ないか。

・・・・本当に、

何でも有りですわね(

汗)」

-62-

「早速、

街を調べさせる事にしようか。

行け!!」

「「

「「

「カァ―

――

!!」

」」

」」

俺の掛け声と共に、

鴉達が暗闇の中へと散っていく。

さて―

――

手頃な場所が見付けられればいいが・・・

???サイド)

-63-

ん・・・?

何だ、

この理由も無く不愉快になる気配は?

・・・あれか?」

窓の外、

電線に泊まっている無数の鴉が我の目に留まる。

・・・気に食わぬな。

鳥類風情の分際で、

我を探る様な視線で見下ろすとは・・・

ニヤリ―

――

――

っ!?貴様・・・鳥類風情が、

我を嘲りおったな―

――

!!」

我は窓を乱暴に開け放ち、

王ゲー

ト・オブ・バビロン

の財宝より射出、

下等種に天誅を下すべく解き放つ。

ククッ・・・下等種風情が、

身の程を知―

――

――

何っ!?」

我が放った宝具の悉こ

とごとく

が交わされただと!?

Bランク程度の宝具とはいえ、

鳥類風情に交わせる代物では無いの

だぞ!!

フ・・・

っ!貴様、

今度は鼻で嗤いおったな―

――

!!」

-64-

今度は必中の概念を宿した宝具を王ゲー

ト・オブ・バビロン

の財宝より取り出し、

射出した。

「「

「ギィィイィィィ!?」

」」

今度は命中し、

電線に泊まっていた鴉を原型の分からぬ程の肉片へ

と変える。

・・・我の貴重な時間を浪費させよって・・・鳥類風情が粋がる

からだ、

馬鹿め!」

「「

「「

カァ―

――

!!」

」」

」」

!?

な、

なんだと・・・?」

再び耳に入ってきた鳥類の嘶き・・・ふと己の周囲を見渡せば、

の数を倍増させた、

先程と同じ灼眼の双眸を煌々と光らせたアノ鴉が我を見下ろしてい

た。その双眸に宿るのは明確なる敵意・・・

フ・・・ハハ・・・ハハハハハ!・・良かろう、

貴様ら下等鳥類

如き・・・我が肉片ひと欠片も残さず消滅させてやる!!」

我は雲霞の様に湧き出てくる下等鳥類共に、

最後の鉄槌を下すべく

――

-65-

――

起きろ―

――

乖エア

離剣―

――

我が愛剣、

乖エア

離剣を呼び起こした。

・・・何をしている?ギルガメッシュ。

・・・ん?

掛けられた声に気付き己に背後を振り向けば、

我が下僕、

言峰綺礼

が怪訝な表情を浮かべ立っていた。

言峰サイド)

-66-

泰山にて至福のマー

ボー

を食し、

堪能した帰り道―

――

――

うん?

妙に教会の前が騒がしい・・・?

それにこの魔力は―

――

ギルガメッシュか・・・?一体何をやっているのだ?」

私が教会の敷地に入ると、

怒り心頭なギルガメッシュが、

乖エア

離剣を

取り出していた。

・・・何をしている?ギルガメッシュ。

しかも、

既に発射体制に入っている。

何をやっているのだ!?」

私は慌ててギルガメッシュの背後に回り、

羽交い締めにする事で何

とか奴を止める。

離せ言峰!!あの下等鳥類どもを殲滅せねばならん!!離さんか

――

――

――

!!」

下等鳥類だと・・・?何者かの使い魔・・か?」

ギルガメッシュの視線を追って見ると、

不気味な紅眼で此方を見下

ろしている鴉が―

――

-67-

ポン!

ポポン!

コミカルな音を立てながら、

次々に分裂していく所だった。

「「

「「

「「

「「

カアァ―

――

――

――

――

――

!!」

」」

」」

」」

」」

な、

何!?・・・ぞ、

増殖しただと!?」

・・・・・・(

汗)」

私の脳裏に、

何日か前、

ギルガメッシュに無理やり見せた【

ある映

画】

のワンシー

ンが蘇った。

貴様等はグレム○ンか―

――

――

――

――

――

――

――

!!?」

私と同じ事を考えていたのであろう、

己がサー

ヴァントの悲痛な絶

叫が周囲に木霊したのだった。

-68-

TO

BE

CONECTED

-69-

第4話

敵情視察

・・・ん?」

使い魔に拠点の探査を続けさせていたシリウスは、

突如脳内に映った不可解な映像を理解できず、

しきりに首を捻らせ

ていた。

どうなってるんだ・・・・?」

-70-

シリウスサイド)

どうなってるんだ・・・・?」

今、

俺の脳内に使い魔からの映像が流れて来た。

来たのだが・・・

どうなさいましたの?」

・・・いや、

・・・使い魔からの映像が流れてきたのは良いんだ

が・・・」

敵サー

ヴァントを発見したのですか?」

・・・と言うか、

現在進行形で敵陣営を建物ごと殲滅中だな(

汗)」

一羽の視界を共有すると、

同時にその使い魔の感情も流れ込んで来

る。

――

怒憎―

――

殺――

滅――

――

――

――

――

――

――

――

殺アァッテヤルゼ―

――

――

――

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(

汗)

何でやねん。

-71-

・・・・んんっ!・・・奴さん、

相当怒り狂ってるみたいだな(

汗)結構ヤバいかも知れん・・・・・・・・主に敵が。

・・・一体何が起きているのですか?」

実はさっき放った使い魔の奴らに何かあったらしいんだが・・・

アイツらの感情が高ぶってて混線してるから、

ちょっと状況が分からんのだよな。

ま、

詳細はアイツらが帰って

来てから聞く事にしよう。

まだまだ、

確認していない地域もある事だしな。

アイツらが殺られる心配は、

まず無い。

何故なら俺の魔力供給の許す限り、

奴らは再生・分裂するからだ。

因みに、

アイツらの好物はフライドチキンだ。

本来なら魔力供給さえあれば、

食事は必要無い筈なんだが・・・・

こと、

フライドチキンを目の前にすると文字通り目の色が変わる。

餌をやる俺が一瞬でも命の危険を感じた程だ(

汗)

後、

真夜中―

――

午前0時以降に物を食べさせる事も駄目だ。

ある変化が現れて手が着けられなくなる。

何?どんな変化だと?

言っておくが・・・間違っても試そうなどとは考えるなよ?

・・・命の保証が要らないならば話は別だが・・・・まぁ、

骨まで

-72-

残らず綺麗に啄つ

いばま

れる事になるだろうな。

・・・分かりましたわ、

シリウス様。

この件に関してはもう何も

言いません。

・・・そうして貰えると助かる。

脱力感に苛まれた俺を、

キャスター

が生暖かい視線で見詰めていた。

取り敢えず、

金ピカなサー

ヴァント相手に殲滅戦をやらかしている

奴ら以外を、

他の地脈か魔力溜まりが出来ている地域へと向かう様指示し、

一旦

アストラル回線を閉じた。

そして、

10分程経った後、

各使い魔達が竜脈又は魔力溜まりが起

きている場所に到着した所で、

その地点を中心に周囲を探索させた。

カー

カー

遠くの方で奴らの戦慄きが聞こえるな・・・

さて、

他の場所には何があるのかね?」

-73-

遠坂凛サイド)

――

AM

7:00―

――

ん・・・」

眩し・・・い・・・

もう・・・朝・・なの?

私は閉じた瞼に感じた強い光に、

強制的に目を開かされた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

-74-

・・・・・・・昨夜何かあった気がするんだけど・・・・何だった

かしら?

ダメね・・・兎に角、

何か冷たい物でも飲まないと、

思考が纏まら

ない・・・

確か、

冷蔵庫の中に牛乳があったハズ・・・

私はリビングのドアを半ば蹴飛ばす様に開けた。

・・・ん?マスター

か?

漸くお目覚めか・・全く・・・聖杯戦争中だという自覚が、

少々

不足しているのではないかね?」

・・・・・・・・・・・・。

・・・アンタ誰?」

私が突然掛けられた声に振り向くと、

ゆうに180半ばはありそう

な背の高い男が、

キッチンの前で悠然と立ち横目で此方を見下ろしていた。

・・・まだ寝ぼけているのかね?マスター

それに、

顔が女性にあるまじき凄まじい事になっているぞ?さっ

さと顔を洗って来たまえ。

-75-

白髪の赤い男はこちらに背中を向けたまま、

洗面所を指差した。

・・・・・・。

特に反論する思考が浮かばなかった私は素直に洗面所に向かい、

だハッキリしない顔に冷水を浴びせる。

バシャ!バシャ!

――

っ冷た!?・・・流石に、

この季節の水は冷たいわね。

・・・でも、

これで目は醒めたわ。

同時にキッチンに居た男の事も思い出した。

彼は私が昨夜召喚した弓アー

チャー兵

のサー

ヴァント―

――

聖杯戦争を勝ち抜

く為の私のパー

トナー

タオルで顔をふき取り、

私は再びリビングへと戻った。

・・・で、

アンタは何をしてんのよ?」

見て分からんかね?

朝食の準備をしているのだが。

それは見れば分かるわ。

私は、

何故朝食の準備をしているのかを

聞いているのよ!」

-76-

「いけないのかね?マスター

の命令で先ほどまで部屋の片付けして

いたのだ。

これ位の自由は許される物と思ったのだが・・・ヤレヤレ、

私に

はそれすらも許されないと見える。

アー

チャー

は肩を諫め、

首を左右に振るジェスチャー

をする。

・・・何かムカつくわね、

その仕草。

それよりも・・だ。

マスター

君は昨夜の―

――

と言っても、

んの二時間程前だが―

――

その時の魔力反応は感知したかね?」

・・・・・・・え?

どうやら、

その様子ではやはり気付いていなかったか・・・まぁ、

召喚を行ったばかりで疲労していた事もあるのだろうが。

一体どういう事!?魔力反応って、

どこからなのよ!!」

落ち着きたまえ、

マスター

反応があった地域は、

此処から十キ

ロ程度離れた丘にある教会だ。

遠距離からではあるが、

私が確認しておいた。

言峰教会・・・?なんでそんな所で・・・それに、

何故遠くから

なの?」

マスター

からあまり離れる訳にも行くまい。

-77-

それにアレの周辺には妙な結界が張ってあってな、

迂闊には近寄

れなかったのだ。

そう・・・で、

何があったの?」

筆舌には尽くしがたいのだが・・・一言で言えば、

とても非常識

な光景だったな。

・・・非常識って?」

英霊である私から見ても、

常識外れな光景だったと言う事だ。

・・・・・・・・・(

汗)」

一瞬、

太陽神アポロー

ンの鴉か八咫の烏でも召喚されたのかと、

本気で思ってしまった位だからな・・・」

神話クラスの神獣!?全く持って笑えないわね(

汗)

・・・でも、

聖杯戦争のシステム上、

神霊クラスの存在なんて召喚出来る筈もな

いわ。

そう、

だから他のマスター

或いはサー

ヴァントの使い魔だと判断

した。

どちらにせよ、

厄介な相手のようね・・・・・・勝利が一気に遠

のいた気がしたわ。

-78-

「・・兎も角、

遠目でしか確認できなかったが、

恐らく魔術師の使

い魔の類だろう―

――

ソレがサー

ヴァントらしき者を

襲撃していたのを確認した。

生憎、

使役者の姿は確認出来なかっ

たがね。

アー

チャー

が疲れた様に溜め息を吐いた。

襲われたサー

ヴァントの方もかなりの力を持っていた様だが、

いように弄ばれていたよ。

・・・そんなにヤバい相手なの?」

正直、

今の段階では勝機を得る事は出来まい。

あの使い魔のマスター

を見つけない限りは・・な。

・・・ひょっとしたら、

昨日の魔力反応も関係しているのかしら

・・?」

む・・それは初耳だが、

私が召喚される前の話かね?」

ええ・・・あの異常な程の魔力―

――

本来、

遠距離の魔力探知

なんて高等技術を使えるのはキャスター

位な筈なのに、

私にも感知

出来る程巨大な魔力だったわ。

・・・だとするのならば、

先ずはその魔力とあの使い魔のマスタ

とが同一の物であるかも確認すべ―

――

む・・?」

アー

チャー

が突如、

会話を切り窓を・・いや、

窓の外を睨み付けて

いた。

-79-

「っ!!セット―

――

その尋常ならざる様子に、

私は敵が現れたのかと、

気を引き締め―

――

右手にガンドを構える。

あれは・・・

・・鴉?」

――

――

そう、

姿形は紛れもなく鴉。

しかし、

只の鴉があれほどの魔力を内包している筈が無い!

一羽一羽の魔力反応が、

下手な宝具以上だなんて―

――

なんて出

鱈目なのよ!?

・・・マスター

アレが先程言った例の使い魔だ。

アー

チャー

は視線を逸らす事無く、

赤い目を不気味に光らせる、

数の鴉達を睨み付けていた。

-80-

衛宮士郎サイド)

・・・ンパイ?」

・・・う・・ん?

・・・先輩!起きてください、

先輩!」

んあっ?・・・何だ、

桜か・・・もう朝か?」

俺が目を瞬きつつ声のする方へ顔を向けると、

見慣れた顔が心配げ

な表情を浮かべてこちらを覗き込んでいた。

彼女の名は間桐桜。

俺の一年後輩の女の子で、

時折こうやって俺を

起こしにきてくれる妹みたいな存在だ。

もう日が上っている所を見ると、

どうやら、

今日は朝練は休みみた

いだな。

-81-

「先輩、

またこんな所で寝て・・・風邪を引きますよ?」

ああ、

すまん・・・コイツの修理してたら何時の間にか寝ちまっ

てた。

俺は傍らにあったストー

ブに手を置き、

改めて中を―

――

特に修理

した箇所を確認する。

・・・良し、

ちゃんと直ってるな。

・・・先輩?」

・・・っと、

イカンイカン。

集中し過ぎてたか。

それよりも、

朝食にしよう。

・・・・・あんまり待たせるとトラ

が目覚めそうだからな。

フフ・・・そうですね。

トラって呼ぶなぁぁぁ――

――

――

――

!!」

ガオオオオオオォォォォォォォン!!

・・・・ちょっと、

遅かったか(

汗)

その後、

俺達は猛りまくった藤ねぇを宥めつつ、

早々に朝食を食べ

終えて学校に向かった。

-82-

カー

カー

・・・今日はヤケにカラスが多いな。

何か不吉な予感がするんだが・・・

・・・。

?・・・どうした、

桜?」

・・・え!?せ、

先輩・・どうかしましたか?」

いや、

今、

桜が凄い怖い顔してたからさ。

どうしたのかな・・っ

てな。

・・・私、

そんなに怖い顔・・してましたか?」

ああ、

こー

んな顔してな。

自身の目と眉毛を指で釣り上げる。

・・・フフ、

それじゃあ私はさしずめ口裂け女ですか?」

漸く桜の表情が軟らかいものへと変わった。

どうやら、

少しは気が晴れたらしい。

・・・原因は分からないけど、

桜にはあんな顔はして欲しくはない

からな。

-83-

キーンコー

ンカー

ンコー

ン・・・

あ、

予鈴が鳴ってますよ!先輩、

急がないと!」

ああ、

走るぞ!桜!!」

ハイッ!」

俺達は急いで校門を潜り抜け、

それぞれ自分達の教室に駆けていっ

た。

シリウスサイド)

-84-

「・・・これである程度の地理は把握出来たな。

使い魔とのアストラル・リンクを再び遮断し、

俺の視界は現実に復

帰した。

・・・どうでしたか、

シリウス様?良い物件はございましたか?」

ああ、

候補は何カ所かあったな。

ついでに敵勢力の本拠地も大体

把握出来た。

・・・あの不気味―

――

と言うか気色の悪い纏わり付くような気配

の漂う教会・・・確か言峰教会と言ったか?あそこは・・・一応気

を付けておいた方が良いかもしれんな。

あと、

同じく嫌な気配を振り撒いていた洋館・・・あの虫臭い家も

念入りにチェックしておくか。

そういえば、

あの赤髪の青年と一緒に居た少女も、

少し同じ気配が

していたな。

こちらの索敵にも気付いた風だったし。

あの娘にも見

張りを貼り付けておくか?

シリウス様?どうかなさいましたか?」

・・・いや、

何でもない。

まあ、

どちらにせよ暫くは様子を見るしかないか。

取り敢えず、

候補は3ヶ所だ。

一つはあの小山にある寺院。

もう

-85-

一つは一般人が1人で住んでいるらしい武家屋敷。

最後のは西の山

頂にある古びた祠だな。

手元に立ビ

ジョ

ン体的な映像を投影しながら、

候補を上げていく。

理想的な地は、

シリウス様としては何処なのでしょうか?」

俺としては無理に絞る必要は無いと思ってるんだ。

どういう事ですの?」

3つの内、

1つをメインに残りの2つをサブにまわす。

そして、

それら全ての地点を"

道"

で繋ぐ。

・・・成る程。

いざという時の脱出ルー

トと本拠地を破棄した際

の替わりの拠点を同時に確保出来る訳ですのね。

それに、

敵側の目をカモフラー

ジュで誤魔化す事も出来るしな。

ですが、

一つの拠点から他の拠点が逆探知される可能性がありま

せんか?」

その点は心配いらん。

コッチの魔術とは構成からして根本的に違

うからな。

もし、

万が一入り込めたとしても、

俺特製の迷宮空間から出られ

なくなるだけだ。

死角は無し、

という訳ですわね。

-86-

「・・・いや、

穴が無い訳ではないからな。

用心の為に保険はかけ

ておくが。

俺は懐から数個のアミュレットを取り出す。

保険・・・ですか?」

もし俺か、

キャスター

又は俺達が認知した者以外が"

道"

を使用

しようとした場合、

ソイツらを強制的に別の位相空間に強制転移させる。

・・・俺の

所有する魔獣共が跋扈するあの"庭園"

にな。

もしそうなった場合、

アイツら思う存分暴れるだろうな。

最近丁度いい生贄も居なくて、

鬱憤溜まってたみたいだったしな。

全く・・・シリウス様が私のマスター

で良かったですわ(汗)

ハハ・・・ま、

キャスター

は運が良かったって事だな。

・・・フフフ、

そうですわね。

キャスター

が柔らかい笑みを浮かべながら、

俺に抱きついてきた。

お、

おい?」

フフ、

まずは山頂の祠から行きましょう!」

まったく・・・」

-87-

そのままキャスター

に腕を組まれたまま、

俺は候補地の一つ山頂の

祠に向かったのだった。

TO

BE

CONECTED

-88-

第5話

魔城構築

・・・・・・・。

神代の魔女―

――

そう呼ばれていた事もあったキャスター

ことメデ

ィアは、

目の前に広がるあまりに非常識な光景に、

半ば呆然と立ち尽くしていた。

-89-

キャスター

サイド)

今、

私の眼前には自身が立っている山頂の祠を中心に、

悪意あるモ

ノの侵入を拒む強固な結界が展開している。

この山はかのクノッソスの迷宮の様に、

堅牢かつ脱出不可能な魔城

と化していた。

この山に入ったが最後、

もはやソレが生きてこの山を出る事は無い

だろう。

まあ、

一般人は立ち入れない様に、

人払いの魔術も施してあるから、

侵入してくるのは間違い無く敵の魔術師かサー

ヴァントという事に

なる。

つまりは全く問題は無い・・・のだけれど、

違う意味で問題があっ

た。

問題は、

コレをたったの1日で創造り上げたという事なのよね・

・・。

正確には半日なのだけれど。

そのせいで、

神代でも上位の魔術師である筈の私のプライドはズタ

ズタよ。

というよりも、

彼にとって私は必要なのかしら・・・?

-90-

私はもう一度、

現在のマスター

の事を脳内で振り返る。

――

―桁違いの魔力を保有し、

それを使いこなす確かなセンスと魔

術の熟練度。

そして、

彼の操る未知の魔術の数々・・・

更には最速のサー

ヴァントであるランサー

を弄んだ体術と話術、

渉術。

それらは、

マスター

の外見からは予測は出来ないだろう。

どう見ても、

マスター

は二十歳前後にしか見えないものね・・・

結論から言えば、

聖杯戦争においての勝利はほぼ揺るぎないという

事。それは、

飽く迄も私の主観ではあるけれど。

拠点候補の3つの内1つ―

――

山頂の祠とマスター

が有り余る程の

膨大な魔力と、

虚空から取り出した数々の魔道具―

――

中には宝具級の代物もあっ

た――

を山中にバラまき、

アッと言う間に山中を要塞化してしまったのだ。

そして、

3つの内のもう1つ―

――

街の端にある小高い山の中腹に

立つ寺院。

こちらの方は私が中の人間に暗示を掛けて、

私達が住職の遠い親戚

であり、

兄妹という設定で居候している事にした。

-91-

だが、

この寺院の人間には、

私達が居候していると認識させている

だけであって、

実際には此処には住んではいない。

何故なら、

寺院内には人間の数が予想以上に多く、

皆魔術に関わり

の全く無い一般人ばかりだったからだ。

マスター

の意向で、

予備的な拠点でダミー

として以外は使用しない

事に決めた。

・・・で、

後は、

この武家屋敷を拠点に出来れば、

まず負けはあり得ません

わね、

マスター

?」

そういう事だ。

後はこの屋敷の家主の少年と交渉して、

屋敷内に

ゲー

トを作らせてもらえば上出来だ。

その事ですが、

本当に私が催眠の魔術を施さなくてもよろしいの

ですの?

その方が簡単ですのに・・・あの寺院の場合でもそうなさいまし

たのに。

ああ、

飽くまでも交渉で話を進める。

第一、

あの寺院とこの屋敷では事情が異なる。

あそこは人数が多

かったし、

殆どが一般人だったからな。

出来るだけ面倒事は避けたかった。

それに此処には少年1人しか

いないし、

屋敷の周囲に張ってある探知結界から魔術にも関係があ

るみたいだしな。

確かにマスター

の言う通り、

この屋敷の周囲には結界の様な魔術が

-92-

施されたいる。

・・・本当に微弱な物だけれど。

それに・・・」

それに?」

この街に来てからの知り合いが、

魔術で作った関係の人間しか居

ないってのは、

正直味気が無さ過ぎる。

・・・・・・フ、

フフフ。

笑う事は無いと思うがな。

いえ、

マスター

があまりに人間臭い事を仰るものですから・・・」

・・・少なからずの期間この街に居る事になるんだ。

ライフライ

ンは多く構築しておくに越した事は無い。

ま、

理由としてはまだあ

るんだがな。

ピンポー

ン!

マスター

は偵察の時にも見掛けたという赤毛の少年と交渉すべく、

玄関先のベルを鳴らすのだった。

-93-

シリウスサイド)

ピンポー

ン!

結構大きな家―

――

こっちでは武家屋敷って言うのか?その玄関前

に立った俺は、

玄関脇にあった使い古された様子の呼び鈴を押す。

・・・・・。

・・・?反応が無いな。

ピンポー

ン!

念の為、

もう一度呼び鈴を鳴らす。

はー

い。

今出ます。

-94-

漸く中から返事が返ってきた。

そして、

ドタドタと走ってくる足音が聞こえてきた。

ガラララ・・

どちら様です―

――

か?」

スライド式の玄関が開くと、

中から如何にも純朴そうな顔をした赤

髪の少年―

――

確かエミヤと呼ばれてたな―

――

が出てきた。

その時―

――

俺は何故か目の前の少年を無性にからかいたくなった。

何故かと問われれば、

魔が差した・・・としか言い様がなかったん

だが。

・・・・・どうかしましたか?」

Hello―

――

Mr.

Emiya?」

――

で、

結局俺は誘惑には勝てず、

この世界でいう英語―

―いわ

ゆる外国語で話し掛けてみた訳だ。

・・・・・・・・・・・・・・は?」

効果はテキメン、

エミヤはまるでどこぞの宇宙人にあってしまった

一般人の様に固まってしまっていた。

いや、

あのその・・・・・・ア、

アイキャンノット・・スピー

・・・イングリッシュ?」

「「

・・・・・。

」」

-95-

俺はその様子に思わず、

吹き出しそうになって顔を逸らした。

キャスター

の方は、

からかった俺を呆れた様子で見ていたがな。

ち、

違ったのか・・?でも、

俺英語苦手だしな・・・え、

えー

・・・」

オー

ケー

冗談だ、

冗談だから。

俺達は日本語喋れるから。

ただ、

からかっただけだ。

とりあえず落ち着け。

取り敢えず、

これを飲んで気を落ち着けろ。

俺は懐からある果物の果汁を水で割った物を注いだコップを差し出

した。

あ、

ああ・・・有難うございます。

――

――

って、

ウマ!?何だ、

この飲み物!?」

エミヤは夢中でその薄く黄色く色付けされた飲み物を、

貪るように

飲み干していた。

マスター

さっきから全く話が進んでいないのですが?」

スマン。

まさかここまでからかいがいのある奴だとは思わなかっ

たんだ。

取り敢えず、

コイツが落ち着くまで待とう。

5分後―

――

・・・・・・・・・(

うっとり)

・・・・・・・・・・・(

イラ)

-96-

15分後―

――

・・・・・・・・・(

うっとり)

「―

――

――

――

―永過ぎるわ!!?」

スパ―

――

――

――

ン!!

あっちょんぶりけ―

――

――

――

――

!?」

ドガアァァァン!!

俺は思わず懐のスリッパで、

思いっきり突っ込んでしまった。

その勢いで、

エミヤは玄関を突き破って家の中に頭から突っ込んで

行ってしまったぞ。

マスター

・・・流石に今のはやり過ぎなのでは?」

だよな・・・・嘗てないほどにイイ感触だったからな(

汗)」

ギャグ補正で大丈夫だったと思いたいが・・・・思いっ切り全力だ

ったからな・・・

最悪、

頭蓋骨骨折位しとるかもしれん。

あいてて・・・・一体何が・・?」

おお、

無事だったか。

兎に角、

話があるので家の中に入って良い

か?」

-97-

「ああ、

じゃあ上がってくれ―

――

――

――

って、

違うだろ!?

玄関が崩壊してるし、

それにあんた、

今俺の頭殴ったよな!?」

まあまあ、

兎に角中に入ろう。

ちょっ!?ま、

待って―

――

!?」

俺は有無を言わさず、

エミヤを家の中に連れ込んだ。

正直な所、

騒ぎを聞き付けた周りの住人が集まりだしてて、

後始末

が面倒な事になりそうだったしな。

士郎サイド)

-98-

「―

――

要するに、

あんた達は魔術師と契約したサー

ヴァントで、

聖杯戦争とかいうのを終わらせようと、

日本に来た・・・って事か?」

ま、

概ねそんな所だ。

俺達には聖杯に望む事なんてないし、

あっ

ても逆に災いの種になるだけだろうしな。

じー

さんの依頼もかねて、

聖杯戦争のシステムそのものをぶっ壊

すつもりだ(

ボリボリ)

赤髪の外国人―

シリウスというらしい―

――

が、

ちゃぶ台の上に

あった煎餅を齧りながら、

大まかに説明してくれた。

本当なら違和感ありまくりなんだろうけど、

不思議と緑茶をしばい

ているのが良く似合っている。

で、

この家を拠点として使いたいって?」

そういう事だ。

勿論、

見返りは十分に用意するし、

この家が被害

に合わないように対処させて貰う。

――

――

――

それで、

返事は?」

いいぞ?俺にはあんた達が悪い人間には見えないし、

飽く迄も聖

杯を悪用するつもりは無いんだろ?」

そのつもりだ。

-99-

「ならいいさ、

俺は構わない。

それに見返りもいらない。

・・何?見返りがいらないってのは、

どういう事だ?」

それは・・・俺の気持ち的な物なんだよ。

俺は困っている人を助

けたいだけだし、

見返りを貰うのは納得出来ないんだよ。

まるで俺が報酬目当てで

あんた達助けてるみたいじゃないか!」

・・・・だが、

見たところお前は学生みたいだし、

アルバイトを

している様子も無い。

食費などの生活費位は必要になるんじゃないのか?」

うっ!?・・・でも・・・」

でももかかしもあるか。

俺達とてこの歳になってニー

トだなんて

嫌に決まっているだろう。

報酬は2人分の家賃+食費として払う。

これは決定事項だ、

異論

は認めんぞ!」

しかしなぁ・・・・」

それとも何か?お前は困っている人間の嫌がる事をやろうっての

か?」

うう・・・」

正論だけに反論のしようが無い・・・

-100-

「シリウス様、

彼を虐めるのはそれくらいにしておいた方がよろし

いですよ?」

今まで沈黙を守っていたキャスター

が、

何故か俺を庇ってくれた。

・・・というか、

ただ単に会話に割り込むタイミングが取れなかっ

ただけって感じもするけど。

借りにも、

彼は家主になるわけですし。

ま、

飽く迄も借りにもだがな。

何か酷くない!?」

え~~

では、

部屋割りを決めようか?」

あっさり流された上に、

話が勝手に進んでる!?」

人間諦めが肝心よ?シリウス様のペー

スに嵌ったら、

一昼夜は抜

け出せないでしょうからね。

怖っ!?・・・・・わ、

分かった割り切る様にする。

その方が精

神衛生上良いみたいだし・・・・」

つ、

疲れる・・・精神的にも肉体的にも。

兎に角、

シリウスは俺の隣の部屋、

キャスター

はシリウスの部屋の

更に隣の部屋と決まり、

-101-

それぞれが各々の部屋の整理に勤しんだ。

・・・・それにしても、

シリウスのあのタンスや机は何処から持っ

て来たんだろうか・・?

シリウスサイド)

この家の家主―

シロウ(

エミヤだと他人行儀で嫌だから、

名前で

呼んでくれと言われた)

の許しを得て、

俺はこの屋敷の周囲に探知・防御・迎撃の順に結界を張っていく。

わざわざ結界別にしていくのは、

結界の修復速度を早める為だ。

勿論、

結界の強度は最高クラスの物を施したが・・・万が一の場合

-102-

に備えて、

それぞれ別々の地脈に施した術式から魔力を吸い上げ、

結界が破損

・崩壊した場合自動で復元する様にしたのだ。

これならば、

もし俺やキャスター

が此処から離れている時に結界が

破壊されても、

自動的に復元し結界内に侵入した敵を、

結界外に転送、

または捕縛

出来る。

そして、

その中で魔法を使おうとすれば、

強制的に俺が所有する"

例アイツらの巣

の庭園"

に転移してもらう事になる。

最近、

アイツらも暇を持て余しているだろうし、

丁度いい運動にな

るだろう。

話を戻すが―

――

ここの家主であるシロウは魔術の事は多少知って

はいる様だが、

いかんせん色んな意味でヘッポコだ。

目出度く、

本専門家家

からもド三流の称号を承っていた。

で、

キャスター

曰く、

シロウの魔術に対する知識は極端に偏ってお

り、

基本の時点で赤点状態なのだそうな。

そんなシロウに敵魔術師の迎撃は困難だし、

ましてやサー

ヴァント

の迎撃なんぞ出来るはずもない。

瞬殺されてしまうだろう。

-103-

そういう訳で、

シロウには特別に俺の特製アミュレットを貸してや

る事にした。

そう、

飽く迄も貸しだ。

やる訳じゃあない。

というか、

くれてやるって言っても首を縦に振らなかったから、

出すって事で漸く納得させたのだ。

まったく、

面倒臭い奴だな・・・すっげえ頑固だし。

このアミュレットは俺の血を媒介にして、

持ち主の周囲に防御結界

を張ると同時に結界の外数メー

トルの範囲を地面ごと吹き飛ばす。

言わば、

爆メガ・ブランド

裂陣と防御結界の効果を足した様なものだ。

当然、

威力はサー

ヴァントを殺傷できる位には強化してある。

一先ずこれでシロウの身の安全は確保出来るだろう。

「―

――

で、

腹が減ったから、

今現在キッチンを借りて料理を作っ

ている訳だが・・・

シロウ、

お前中々料理が上手いじゃないか?」

俺はサラダとご飯位しか作って無いけどな。

それに、

ものの数分でこれだけ料理を作った人間には言われても、

嫌味に

しか聞こえないぞ?」

素直に賞賛してるんだがな。

俺の場合は必要に迫られての結果だ。

-104-

あの2人は食べる専門だったし、

料理に関してはからっきしだった

からな・・・

一応弟も居たんだが当時はまだ小さかったし、

必然的に俺が作る羽

目になった訳だ。

それにあの2人は食べるスピー

ドが半端なく速かったし、

親父は兎も角お袋は味にも五月蝿かったからな・・・

調理のスピー

ドも早くしなければならないし、

味にも気を配らなけ

ればならなかった。

最初の頃は相当苦労したぞ・・・

まあ、

俺の方も爺さんが料理・・というか、

家事全般がからっき

し人だったから、

自然に身に付いたんだ。

・・・・そうか。

ガシッ!

俺達は無言のまま、

互いに硬い握手を交わした。

・・・お互い苦労するよな。

」「

ああ・・・」

俺達は今までの苦労を思い出し、

暫しの間感傷に耽って立ち尽くし

ていたのだった。

-105-

TO

BE

CONECTED

-106-

第6話

暗中飛躍

それじゃ食事にしようか?」

テー

ブル一杯に広げられた料理の数々を目の前に、

シリウスは嬉々として手を合わせた。

シリウスサイド)

-107-

バクバクバク!ガツガツガツ!モギュモギュモギュ!

俺はテーブル上にある料理を片っ端から口の中へと入れていった。

時折、

自前の料理の味を批評して見たりしながらも、

口と手は休め

ない。

・・・・よく食うな(汗)

そうね・・・シリウス様は健啖家でもあるみたいで、

昼間も山の

様な川魚を食していたわ。

・・・・エンゲル係数が物凄い事になりそうだな。

これで冷蔵庫にあった食材全部使いきっちまったし・・・また買

出しに行かないといけないな・・・」

んぐんぐ―

――

ちょっと待てシロウ。

食材の貯蔵ならまだまだ

あるから安心していいぞ?」

俺は所持する位相空間―

おれは"

蔵"

と呼んでいる―

から向こ

うの世界の食材―

――

肉や魚、

野菜などをテー

ブル横に並べていく。

実は先程も少し"

蔵"

から食材を出して、

料理に使っていた。

この"

蔵"

の中は時間という概念が無いから、

生ものでも腐らないし、

いつも新鮮そのものの状態を保っている。

だから、

何かと便利で重宝しているのだ。

・・・この食料は何処から出したんだ?黒い穴から突然出てきた

-108-

ように見えたけど?」

ま、

俺の固有魔術だとでも思ってくれれば良い。

細かく説明する

のは面倒臭いし、

基礎理論も知らないお前が理解出来るとも思えん。

・・・悪かったな、

勉強不足で。

――

分かった。

とりあえず、

シリウスは大きな冷蔵庫を持ち歩

いてるって認識しとく。

・・・・その例えもどうかと思うけどな?フ~

食った食った―

――

さて、

後はデザー

トか。

って、

早っ!?あれだけの量をもう食い終わったのか!?

更にこれからデザー

トまで食うつもりなのかよ!?どんだけ!!」

何だ、

シロウはいらないのか?折角の俺特製林檎の砂糖漬けを使

ったアップルパイなのに・・・

キャスター

は食べるよな?自慢じゃないが、

かなり美味いぞ。

人にも評判だったしな。

じゃ、

じゃあ・・戴きますわ。

え・・・・ちょ、

ちょっと待ってくれ。

食べないとは言ってない

ぞ?」

分かった分かった。

ちゃんと切り分けてやるから、

そんなに物欲

-109-

しそうな顔をするな。

ホレッ!」

八つに切り分けた内のひと切れを乗せた皿を、

シロウの目の前に置

いてやる。

すると、

最初の一口はゆっくりと咀嚼し、

次第に食べるスピー

ドが

速くなり、

直ぐに食べ終えてしまった。

う、

美味い・・・かなりの甘さなのにサッパリとした後味で、

う一個食いたい位だ・・・・」

気に入って貰えて何よりだ。

これは結構自信作だったからな。

・・・・・・・・(

モクモクモク)

妙に静かだったキャスター

の方に目を向けると、

こちらもすでに食

べ終えている所だった。

その後、

シロウにレモンティー

なる飲み物を煎れて貰い、

オレ達人

は食後をゆったりと過ごした。

-110-

遠坂凛サイド)

「―

――

それで、

アーチャー

・・・他の魔術師やサー

ヴァントの情

報は集まったのかしら?」

今現在は午後6時・・・私はアーチャー

の煎れた紅茶の香りを楽し

みながら、

昼間偵察に出していた彼からの報告を受けていた。

いや・・・これと言って敵に関する情報に進展は無いな。

となると、

今現状で分かっている敵サー

ヴァントは言峰教会の金

ピカ位か・・・

まだ聖杯戦争が始まっていないとはいえ、

手持ちの情報が少な過

ぎるわね。

これじゃ迂闊に動けないじゃない!」

宝石も無限にある訳じゃないし、

無駄遣いは出来ないものね。

それにしても、

例の言峰教会の神父と凛が知り合いだったとはな

・・・」

そうね・・・私もあの腐れ神父とは関わり合いになりたくは無か

ったんだけど・・・

アイツの教会にサー

ヴァントが居る以上、

アイツも関わりがある

-111-

のは明白だもの。

・・・・監督役の癖に何考えてんだか。

下手すりゃ、

聖堂教会の埋葬機関から代行者が派遣されて抹消され

兼ねないってのに・・・・

当然そうなったら、

こっちにもそれ相応のダメー

ジが来る。

オー

ナー

の監督不届きだってね・・・魔術協会にどんな要求される

か分かったもんじゃないわ・・・

全く、

アイツは厄災しか振り撒かないわね、

本当に。

取り敢えず、

今日も偵察には出てみるが、

"

例の鴉"

が未だに町

内を彷徨いているので、

あまり身動きは取れないからな、

新しい情報を得るにはもう少し

かかるかもしれん。

それはしょうが無いわ。

出来るだけアレとの接触を避けてちょう

だい。ア

レの攻略法が見つかっていない今の段階では、

あまりに不利だ

もの。・

・・それよりも、

まだ記憶が戻る気配は無いの?アー

チャー

?」

ああ・・・今だその兆候すら無いな。

そう・・・」

敵の情報が集まっていないのも不味いのだけれど、

ある意味こっち

-112-

の方がもっと深刻なのよね。

自分のサー

ヴァントの宝具が分からないんじゃ、

戦術の組み立てよ

うが無いし、

何より敵サーヴァントとの相性も判断出来ない。

こんな状態では、

聖杯戦争最後まで勝ち残るのも難しくなる。

不安材料満載ね・・・いっその事、

何れかの陣営と同盟を結んだ

方が良いのかもしれないわね。

しかし、

凛。

素性も知れぬ魔術師との同盟など、

荒唐無稽もいい

所だぞ?」

ま、

それは相手の正確次第ね。

・・・まあ、

どちらにせよもう少し情報が集まらないと話になら

ないけどね。

では、

今暫くの間は情報収集に徹するという事でいいのだな。

凛?」

当面はね・・・あ、

それと偵察は龍脈が集中している場所を中心

にして頂戴。

敵が拠点を張る場合、

魔力供給の関係上その方が確率が高いから。

了解した。

アー

チャー

は短い返事を返した後、

霊体化して再び偵察の為、

屋敷

の外へと出ていった。

-113-

「さー

て、

と・・・時期に全てのサー

ヴァントも出揃うだろうし、

それまでにどれだけ情報を集められるかね・・・」

その結果次第ではかなり消極的な作戦を取らざるを負えない。

"

常に優雅たれ"

の家訓にそぐわない作戦なんて、

取りたくもない

けれど・・・背に腹は変えられない。

私は、

聖杯戦争に勝利する為のシミュレー

トを、

時間が許す限り脳

内で何度も繰り返していた。

ランサー

サイド)

俺とバゼットはシリウス達と別れた後、

この街においての拠点であ

る古びた洋館で一晩を明かした。

流石に前々回の聖杯戦争で魔術師の拠点になっていただけはあり、

-114-

魔術に対する防御力は中々のもんだ。

拠点としては十分だろ・・・・だが―

――

――

バゼットよー・・・」

何ですか、

ランサー?」

何が何でも、

この扱いは酷くね?」

俺はバゼットによって、

魔術が施されたロー

プでグルグル巻にされ

た上に、

ロビー

に逆さ吊りにされていた。

貴方が犯した罪に対しての正当な対処であると思いますが?

あの時キャスター

もこうした方が良いと助言を戴きましたし・・

私はそれを実行したまでです。

バゼットは本を読みながら、

俺に目を合わせる事無く吐き捨てる様

に言う。

あの事、

まだ根に持ってやがったのかよ!?

っていうか、

キャスター

の奴何時の間にそんな余計な事言いやが

ったんだ!?」

・・・・・。

バゼットが無言のまま、

ゆっくりと此方を振り向―

――

っい!?」

-115-

「・・・・私は、

あの失言をまだ許した訳では無いと、

そう覚えて

置いて貰いましょうか。

オイオイ・・・バゼットの奴、

目が反転してやがる!?

バゼットの視線が、

絶対零度の冷たさを持って俺に突き刺さったぜ。

ヤ、

ヤベエ・・・・今だかつて、

これ程までに戦慄を覚えた事は無

かったぞ!?

話はそれだけですか?」

身を斬り刻むような殺気を俺に叩きつけた後、

バゼットはこれで話

は終りとばかりに手元の本に視線を戻した。

ダメだ・・・・取り付く島も無え・・・・

もう少し時間を置かねえと、

話どころか顔すら合せられねえぞ!

・・・・(

ムグムグ)

バゼットは不機嫌さを隠す事なく、

携帯用の食料を口に詰め込み、

ペットボトルの水で嚥下している。

飯を食す必要の無い俺が言うのも何だが・・・バゼットの奴は食事

・家事・全てに置いてズボラだ。

脱いだ服は脱ぎっ放しだし、

服も下着以外は毎日同じ物を着ている

しな。

-116-

お淑やかになれとは言わねー

が、

少しは己の私生活という物を鑑み

て貰いたいもんだぜ。

・・・・普段はあまりそんな事気にしねー

俺に心配されている時点

で、

すでに手遅れの様な気がしないでもねー

けどな(

汗)

・・・ん?

何か嫌な気配が、

この家に近付いてきやがる。

だが・・・この気配は一体何だ・・コレが人間の気配かよ?

コンコン・・・

私だ。

バゼット・フラガ・マクレミッツ・・・言峰綺礼だ。

おい、

バゼット。

分かっています。

この声には聞き覚えがあります。

ですが、

此処には近づく事がない様にしていた筈ですが、

監督役

の彼がこんな時間に何の様だか・・・・」

邪魔をするぞ?」

まだ何の断りも返してなかったのですがね、

言峰綺礼?」

ふむ・・・別にお取り込み中だったという訳でもあるまい?

その位は気を利かしたつもりだったが・・・何か不都合な話でも

していたのか?」

-117-

「そういう意味では無いのですが・・・」

・・・・・。

俺は黙って訪問者―

――

言峰の奴の顔を無言のまま観察していた。

相変わらず何を考えてんのか、

分かんねー

野郎だ。

その仕草、

表情、

言葉―

――

全てから胡散臭さが滲み出てやがる。

俺の結論―

――

コイツは信用ならねー

・・戦場で背中を見せちゃ

あいけねえ奴って事だ。

こんな奴が監督役なんて、

この聖杯戦争自体かなり怪しくねえか?

コイツが真面に監視するなんて、

到底信用出来ねー

んだがな。

それで、

用件は何なんですか?」

実はな―

――

――

――

お前の左腕を貰いに来たのだよ。

・・何!?ガッ!?」

一瞬の出来事だった。

俺の眼前で、

マスター

の――

――

バゼットの左腕が、

言峰綺礼の手にした直剣によって跳ね飛ばされていた。

てめえ!!何しやがる!!」

俺の"

刺ゲイ・ボルク

し穿つ死棘の槍"

が神父野郎の喉元を穿つ。

ククク・・・」

-118-

「何!?俺の突きを逸らしやがっただと!?」

だが、

俺が放った一撃は、

奴の首横の薄皮一枚を傷付ける事しか出

来なかった。

言峰の持つ直剣によって逸らされたのだ。

テメェ・・・本当に人間か?」

クク・・・お痛も其処までにしてもらうぞ、

ランサー

よ。

マ・・・・ス

の鞍替えに賛同して貰おうか。

何だと!?・・グッ!?テメェ・・・!!」

令呪の強制力だと!?

飛ばされたバゼットの左腕の令呪が、

赤い光を放っている。

魔術回路を強制的に乗っ取りやがったのか!!

ウグゥ・・・・・クソ・・・・!

さて、

それではランサー

よ。

早速だが、

他のサー

ヴァントの偵察

を命ずる。

先ずは、

敵サー

ヴァント全員と戦い情報を得ろ。

だが倒す事は許

されない。

そして、

一度目の相手からは必ず生還しろ。

・・・・・・どういう意味だ、

そりゃ・・・・俺に全力を出すな

-119-

って事かよ?」

お前が理由を知る必要は無い。

チッ!・・・・テメェなんぞサッサとくたばっちまえ―

――

ソマスター

!!」

これ以上胸糞悪い野郎の顔なんぞ見てたくもねえ!

俺はサッサと窓から外へと飛び出した。

・・・・・。

更に跳躍する際、

俺は一度だけバゼットの姿を振り返る。

遠目から見ても、

バゼットはその場に倒れ伏したまま、

身動きを取

る様子はなかった。

そして、

腐れ神父の姿も既に無かった。

・・・すまねぇな、

バゼット・・・今の俺はお前の仇討ちすら出来

そうにねぇ。

今生こそは全力を振り絞った良い戦いが出来ると、

昂ぶっていたん

だが・・・

ままならねぇもんだな―

――

――

クソッタレ!!

-120-

シリウスサイド)

む・・・?」

ランサー

達に渡したアミュレットの反応が消えた―

――

ランサー

に何かあったのか?

どうかなさったのですか?」

いや、

ランサー

達に"

門ゲー

ト"

用のアミュレットを渡したろう。

あれの反応が途絶えてしまってな・・・アイツ等に何かあったの

かもしれんな。

彼等は主従共にかなりの力を有していましたが・・・その彼等が

こうもアッサリと敗退してしまうとは考え難いですが・・・」

-121-

「確かにな・・・・だが、

反応が消えてしまったのは事実だ。

・・・・一応、

アイツ等のアジトにもう一度偵察を向かわせるか。

その方が良いでしょうね。

私も別ルー

トで偵察を向かわせる事に

しますわ。

分かった。

俺とキャスター

はそれぞれ己の使い魔である例の鴉と

魔力で操った数羽の鳥を魔力反応が消えた地点へと転移させた。

そして、

俺は無言のままおもむろに襖を開く。

あ・・・・」

で?そこな少年は何を覗き見しているのかな?」

い、

いや・・急に魔力の反応があったから見に来たんだけど・・

・凄い光景を見ちまったからな・・・」

こっちでの基準はどうか知らんが・・・あれがレベルが高い術だ

とは思わないんだがな?」

それだけ、

彼がヘッポコだって事ですわ・・・シリウス様。

そういう事か。

-122-

「何でさ!?・・・そんな事で納得されるなんて嫌だぞ!?」

なら、

魔術に付いてしっかり勉強しろ。

お前、

基礎以前の問題だ

って事を忘れるなよ?」

ぐ・・・・」

まぁ、

それはそうと明日はコレを持ってけ、

シロウ。

俺は、

"

蔵"

から取り出したある物を、

シロウに向けて放った。

ソレは綺麗な放物線を描いて、

シロウの手元に収まった。

っと、

コレは―

――

弁当箱?・・って言うか、

重箱かよ(

汗)」

ソレは俺がさっき拵えた弁当だ。

こっちの世界の料理を覚えるつ

いでに作ってみたんだが、

良かったら感想でも聞かせてくれ。

え?コレってシリウスが作ってくれたのか?・・・でも、

何時の

間に・・・台所使ってなかったよな?」

ああ、

亜空間にキッチンを備え付けてある場所があってな、

そっ

ちで作ったんだよ。

シリウスって、

本当に何でもありだよな・・・(

汗)」

まあ、

シリウス様ですし・・・」

-123-

どういう意味だ、

それは?

それにしても、

量が多すぎないかコレ?軽く3~

4人分はあるぞ?」

お前はもっと食を太くする努力をしろ!鍛錬をするにしろ、

頑強

な身体を作るには大食漢である事は必須だ。

身体に込められるエネルギーが違うからな。

ま、

こっちの世界のレシピを習得するのが楽し過ぎて、

思わず作り

過ぎたってのもあるんだがな。

・・・・。

納得してないって面だな?魔力で能力を強化するにしても、

元々

の能力を高めて置くのは必要な事だし、

魔力を効率良く流すにも血液の循環が良いってのは重要なんだよ。

ま、

騙されたと思ってやってみるんだんな。

まあ、

今は魔術の基礎云々は置いといて、

そろそろ睡眠を摂りま

せんか?

サー

ヴァントである私や、

マスター

は兎も角、

坊やは明日に響く

わよ?」

・・・そうだな。

時計を見れば、

既に23時を回っていた。

取り敢えずは明日からという事で、

今日はゆっくりと寝るとする

-124-

か・・・」

久し振りの暖かい寝床だからな、

じっくりと堪能するとしよう。

俺は自室へと戻り、

その柔らかさを堪能しながら、

布団へと潜り込

んだ。

TO

BE

CONECTED

-125-

第7話

赤色交差

ふぅ~

・・・やはり、

縁側で緑茶を啜るのは良いな。

新たな拠点の1つとなった―

――

衞宮の武家屋敷の縁側で、

シリウスはほのぼのと渋めの緑茶を啜り、

固めに焼き上げられた煎餅をかじりながら寛いでいた。

-126-

(シリウスサイド)

今の時刻は午前11時―

――

シロウが学校に行った後、

俺はずっと家の縁側で日向ぼっこをして

いた。

この家は住み心地が良いな。

南側に縁側があるし・・・寛げる。

マスター

・・・結界が万全な状態とは言え、

流石に警戒を緩め過

ぎではありませんか?」

まあ、

久し振りの寛ぎ時間だからな。

少しは見逃してくれ。

おお!?茶柱が立っとる!今日は縁起が良いなw」

シリウス様・・・やけにこの国の事柄に詳しいですね?」

ん?・・ああ、

ゼルレッチのじー

さんに貰った記憶媒体の中に、

かなり日本の事柄についての

デー

タがあってな。

そのおかげで、

かなり日本の事には詳しくな

ったんだよ。

成る程・・・しかし、

それにしても・・・」

案外、

あのじー

さんも日本通だったりするんじゃないか?」

イメー

ジ出来ませんわ・・・」

-127-

「ま・・要するに、

気にするなって事だろうな。

俺もあのじー

さんが日本通だったなんて、

全然知らなかったしな。

・・・・分かりました。

宝石翁に関しては気にしない事にします。

それが良いだろうな。

あのじー

さんに関しては一々気にしてたら

キリが無い。

あの"

じー

さんだから"

って認識でいいだろ。

一旦会話を区切り、

脇に置いてあった煎餅に齧り付く。

ポー

ン・・

ポー

ン・・・

ん?・・・もう昼か。

居間の時計に目を向けると、

時計の針が12時を指した所だった。

しかし、

のんびり出来る環境を楽しむのも良いが、

流石に丸一日こ

うしてるのも何だな・・・

よし!昼飯を食ったら、

シロウの通ってる学校とやらに偵察がて

ら行ってみるか?」

・・・突然ですわね(

汗)」

そこに他のマスター

が通っている可能性もある訳だし、

シロウの

対人関係を知っておくのも良いかもしれん。

-128-

何より、

丁度良い暇潰しにもなるしな。

・・・一番最後のが本音臭いですわよ。

そうと決まったら、

とりあえず飯にしよう。

実は昨日の晩からし込んでいた良い物があるんだよ。

そろそろ良

い頃合だろ。

ふう・・・分かりました。

私はシリウス様に付いて行くだけです。

キャスター

は半ば呆れた様な、

諦めた様な、

それでいて何処か楽し

そうな顔で、

キッチンに向かう俺に付いて来たのだった。

士郎サイド)

-129-

ドン!

俺は重量感たっぷりの重箱を自分の机の上に置いた。

なんだ、

衛宮・・・そのドでかいお重は?今から大食い大会でも

開くというのか?」

一成・・・流石にこの量を一人で食べきるのは無理に決まってる

だろ?

って言うか、

何時からソコにいた?」

親友に向かって酷い事を言う・・・チャイムが鳴って直ぐに来た

だけの事だ。

それにしても、

お前が料理に失敗するとは考えられんし・・・・

誰か他の人物が作ったのか?」

桜の事言ってるのか?だったら違うぞ。

これは昨日から居候して

る人が作ってくれたんだよ。

どう見ても、

一人分の量ではないようだが?」

そいつが言うには俺はもっと食を太くしないといけないらしい。

頑強な身体を造るにはコレ位食べろってさ・・・・」

ふむ・・・確かに衛宮は食が細い感はあるが・・・それでも限度

があると思うのだが?」

-130-

「まあ、

俺も最初からコレを全部食べきれるとは思ってないよ。

何なら一成も食べてみるか?悔しいけど、

味は俺のより上だから

な。

美味いぞ?」

ほう、

ならばご相伴に預かるとしよう。

一成は俺の前の席の椅子を借りて、

俺と相対する形で座る。

む・・・箸が3膳入ってるな。

と言う事は・・・」

最初から1人で食べられないって事は分かっていたみたいだな。

ん?こんな所に紙切れが・・・って、

何か書いてあるな。

シロウへ―

――

このメモ紙を見付けたって事は、

今頃弁当箱を広げている所だろ。

ま、

今回は少し多く造り過ぎたとは思ってたから、

周りの人間に

分けてやると良い。

箸も一応3膳つけて置いたしな。

だが、

少しずつでも食を太く努力はしとけよ?

何事も積み重ねが大切だからな。

-131-

後、

帰ったら感想を聞かせてくれ。

明日以降の参考にしてみるか

らな。

シリウスより』

・・・・。

どうやら、

良い様にからかわれた様だな、

衛宮よ。

何でさ―

――

――

――

!?」

昼の校舎に、

俺の絶叫が木霊した・・・

-132-

凛サイド)

何でさ―

――

――

――

!?」

!?

今の悲鳴は・・・隣のクラスから?

ひょっとして・・・今のは、

衛宮君かしら?

悲鳴上げるなんて、

一体何やってるんだか。

どうせ碌でもない事なんだろうけど。

私は今朝買ってきたパンを口に運びながら、

隣のクラスに耳を傾ける。

しかし、

それ以降は昼休み特有のざわついた喧騒が聞こえるだけで、

詳しい状況は全く分からなかった。

全く・・・昼休み位、

少しは静かに出来ないものかしら?

って、

無理か・・・この学校じゃあね~

・・・

凛、

今少し良いか?急ぎ報告したい事があるのだが。

っ!?・・・・ちょっと、

アー

チャー

・・学校では余り念波での

会話は控える様に言った筈よ?』

-133-

今驚いちゃって、

ちょっと変な顔になっちゃったじゃない・・・

心なしか、

クラスメー

トの生暖かい視線が、

私に集まっている気が

するわ・・・(

汗)

緊急事態だ。

他のサー

ヴァントらしき魔力が此方に近付いてきて

いる。傍

にマスター

らしき人物の姿も確認した。

っ!?

それ、

本当なの!?』

ああ、

遠距離からだが確認した。

剣士風の男と魔術師風の女だ。

どちらかがサー

ヴァントであると思われる・・・流石にこの距離

では、

どちらかは判別が出来なかったがね。

・・・貴方から見て、

どんな感じなの?勝算はありそう?』

両者共にサー

ヴァント並の魔力を保有している様だ。

正直な所、

片方は押さえる事が出来ても、

もう片方は君に押さえ

て貰わなければならない。

私次第って事ね・・・』

そういう事だな。

ま、

相手の出方しだいで対応していくしかないわね。

相手も私が

-134-

マスター

だとは気付いてないかもしれないし・・・

アーチャー

摂りあえず私は屋上に向かうわ。

そこで合流しまし

ょう。

了解した。

私は相席していたクラスメー

トと別れ、

足早に屋上へと向かった。

アー

チャー

サイド)

屋上―

――

私が敵サー

ヴァントを監視しつつ屋上に到着した頃には、

凛が既に

待機していた。

-135-

「それでアー

チャー

状況に変化はあった?」

・・・いや、

奴等は校庭に侵入してからは敷地の四方をうろつい

ているばかりで、

此方に気付いている様子は無いな。

そう・・・何をしているのかしら・・・・まさか、

ここの生徒を

襲うつもりなんじゃ・・?」

いや、

それは無いな。

・・・なんで断言出来るのよ?」

先程から奴等の行動を観察していたが、

この学校の人間には全く

と言っていいほど接触していないからだ。

魔術の行使も認識の疎外以外の行っていなかった。

・・いや、

るいは態・

・・・・・・・・・

と我々に気付かせたのか?」

――

――

よく気が付いたな―

――

――

っ!?

突如背後から発せられた声に、

私と凛は咄嗟にその場から飛び退い

た。そして、

即座に戦闘体勢を取り背後を振り返る。

-136-

振り返った私達の眼前には、

全身が赤色な様相の長髪の男と、

フードを深く被った魔術師風の女の姿があった。

・・・行き成り背後から声を掛けるとは、

些か作法に欠けると思

うのだが?」

それは済まなかったな。

生憎、

俺は作法や礼儀と言った物に縁遠

くてな・・・気が付かなかった。

・・・・。

私の皮肉にも、

全く意に介した様子も無く、

赤い長髪の男――

らくは他の6人のマスター

・・・いやサー

ヴァントか?

そして、

背後の寄り添っている女が、

マスター

どちらとも人間の持ち得る魔力量ではないな・・・

これでは、

どちらがマスター

か、

サー

ヴァントか判断が出来ん・・

・それに・・・赤髪の男には隙が全く無い。

これは難敵だぞ・・・

さて・・・折角、

他のマスター

と遭遇したんだ。

少しはそれらし

い事でもするか?」

赤髪の男は虚空から赤い長剣を抜き放ち、

無行の位のまま一歩此方

の踏み出した。

・・・その前に一つ聞きたい事があるわ。

-137-

私の背後で先頭体勢を維持したままの凛が、

魔術用の宝石を構えつ

つ赤髪の男を睨み付けた。

ふむ・・・何だ?」

貴方達・・・どっちがマスター

なのよ?」

「「

・・・・・・・・・・。

」」

・・・凛、

流石にそれはストレート過ぎるのではないかね?」

相手も流石にその質問は予想外だったのか、

目が点になってしまっ

ている。

しょうがないじゃない!私は交渉術は苦手だし、

聞くだけならタ

ダでしょ!

勿論、

相手が正直に答えてくれるなんて、

流石に私も思ってはい

ないわよ。

・・・・成る程、

凛なりの相手のペー

スを乱す算段だったのか。

それに、

少しでも会話を長引かせて、

相手の情報を引き出そうとし

ていた様だ。

凛も苦手という割には、

なかなかやる物だな。

しかし、

もう少しやり様があったと思うのだがな・・・」

う・・!?」

-138-

「プ!?・・・プククク・・・ハハハハハハハハ!!良い!良いな、

お前等!プフ!!

・・ココに来る前も含めて、

久し振りに腹の底から笑ったわせて

貰ったぞ!!ゴホッゴホッ!」

・・・・//////」

凛・・・顔が耳まで真っ赤になっているぞ?」

誰のせいよ・・・」

あ~~

~~

腹が痛え・・・・面白い芸も披露してもらったし、

別に教えてやるよ。

・・・何?」

俺達のどっちがマスター

か教えてやるって言ってるんだよ。

因みに俺がマスター

でシリウス・インバー

ス・ガヴリエフと言う。

そして、

こいつがサー

ヴァントのキャスター

だ。

ちょっ!?何でそんな重要な情報をばらしてるのよ!?」

ん?・・ああ、

気にするな。

俺達にとって、

どっちがマスター

か、

サー

ヴァントかなんて事を

知られても、

大して関係無いんだよ。

-139-

「どういう意味なのよ!」

凛、

感情的になるな!冷静になれ!」

お前等、

サーヴァントの方が押さえ役なのかよ?・・・まあ良い、

俺は前衛、

キャスターは後衛。

基本的にはそんな所だが、

俺は大概はオー

ルマイティー

にこなせ

るからな。

大抵の相手なぞ、

相手にもならんしな。

なっ!?」

・・・・言ってくれるな。

赤髪の男―

――

シリウスからは自信が感じられた。

それも、

こちらがサー

ヴァントだと分かった上で―

――

それでも尚、

揺ぎ無い程の圧倒的な。

さて―

――

そろそろ始めようか?」

っ!?」

突然、

シリウスから尋常ならざる殺気が迸る。

私はソレに反応して咄嗟に凛を庇う様に、

構える干将・莫耶を構え

遅いな・・」

――

何!?

気付けば私の鼻先に、

紅い直剣の切っ先が突き付けられていた。

-140-

「!?アー

チャー

!?」

意識の切り替えが遅いな。

そんな事ではこの戦争・・生き残れん

ぞ?少なくとも俺の前ではな。

敵である君に心配される云われは無い・・な!!」

ギイィィン!!

左手の干将で切っ先を弾き落とす。

っと、

双剣か・・・面白い構造してるみたいだな、

ソレは?」

そんな事を一々敵に答える馬鹿が居るとでも思っているのかね?」

違いない。

私と敵のマスター

――

シリウス・インバー

ス・ガヴリエフは互いの

切っ先を交差し―

剣戟を再開した。

-141-

シリウスサイド)

ギギギギギ・・・

ほ~

・・防御主体のカウンター

狙いがお前の基本スタイルか?」

俺は剣戟を交えつつ、

相手の―

アー

チャーの戦闘能力を分析する。

戦闘の最中に考え事とは、

余裕だな!」

左右からの連撃―

――

これは、

スウェー

で交わす。

何、

余裕を持って相手をしているからな。

何より、

本気になって

いない奴を相手取るのに、

本気を出す必要も無いだろう?」

ぬかせ・・・余り油断していると、

足元を掬われる事になるぞ?」

油断・・?違うな、

コレは圧倒的優位から来る確信に満ちた自信

だ。何より、

お前からは微塵も脅威を感じない・・・少しは本気をだ

せ。

これでは話にならん。

-142-

それとも、

本気になれない理由でも有ると言うのか?」

言ってくれるな!」

再び双剣での時間差を付けた連撃―

――

今度は、

剣の腹で受け、

り返し様にアーチャー

の手首を切り払う。

クッ!?・・凛!」

分かったわ!」

アー

チャー

が少し後退して、

マスター

――

確かリンと言ったか?

ソイツが何やら呪文を唱える。

・・!成る程、

魔術による治癒か。

アー

チャー

の手傷が見る見る内に塞がっていく。

となれば、

一撃ないし回復の間を与えず屠るしかない訳だが・・・

・・様子見の段階で倒してしまうのは、

ちと面白くないな。

・・・何?」

やめだやめ!」

俺は剣を"

蔵"

へと仕舞い、

戦闘態勢を解いた。

・・・何のつもりだ?」

アー

チャー

が先ほどよりも剣呑な視線で、

俺を睨み付けてくる。

-143-

「何、

このまま決着を付けるのは勿体無いと思ってな。

今日は様子

見のつもりだったし・・

今日はここいらで引き上げる事にする。

私がみすみす逃すとでも思っているのかね?」

・・別に、

離脱中に攻撃して来ても構わん・・・捕らえきれれば、

な!」

――

――

明ライティ

ング

り――

――

俺の放った閃光で、

一瞬屋上が白く染まる。

その一瞬を突いて、

俺はキャスター

を回収―

――

そのままシロウの

屋敷へと転移したのだった。

ま、

この世界に来てからまだ日も浅いし、

もう少しノンビリと楽し

ませて貰わないとな。

-144-

TO

BE

CONECTED

-145-

この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。http://www.akatsuki-novels.com/stories/index/novel_id~73

Fate / the beelzebub comes.(魔王

来たりて)

2012年07月24日 00時00分発行