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スキー狂化書
Part 2 クロスオーバー Rev. 3.0
2016
本間 彰
Akira Homma (Ph.D.)
夢にまで見たクロスオーバーのターン.
奇跡はそれを信じる者のみに訪れる!
(著者)
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-もくじ-
1 はじめに
2 クロスオーバーによる切りかえの運動局面
3 スキー板に生じる複合的な力
4 クロスオーバーによる切りかえの例
5 リバウンドの強さとクロスオーバー
6 リバウンドを得るための基本運動
7 おわりに
8 おれい
9 補足および参考資料
本テキスト内の写真及び文章の無断転載使用を固く禁止致します. Using photographs and texts without permission is strictly prohibited.
COPYRIGHT (C) 2009 Akira Homma. .
1
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1 はじめに
スキー狂化書 Part 1 では切りかえの運動局面の重要さについて述べた.
引き続いてこの Part 2 ではクロスオーバーによる切りかえについて説明を
試みたい.
多くのスキーヤーは立ち上がり動作(伸身)と脚の曲げ動作、あるいは
これと対称に脚の曲げ動作(屈伸)と脚の伸展動作の組み合わせにより切り
かえをおこなっている.1
クロスオーバーによるエッジの切りかえ*1はこれらの方法とは異なり
“スキーの軌道とスキーヤーの重心の軌道の入れ換え”、すなわち次のターン
内側へのスキーヤーの能動的な重心移動によって行われる.この運動局面が
クロスオーバー(Cross over)と呼ばれるのはスキー板の上をスキーヤーが横
切って行くように見えるからであり、スキーヤー自身もスキー板を超えて斜
面下方向へと落ち込んでゆく感覚を体感するからである.
このテキストではスキー板に生じる複合力とその解放が重心の移動を誘
導し、クロスオーバーを可能にするものとして説明を試みる.学術性のある
厳密な論理思考に基づいた考えではなく単にスキーヤー(著者自身)の運動
感覚とスキー板の特性をリンクさせた考えであることをお断りしておく.
以下、スキー板のトレースが斜面
下方向-フォールライン (Fall Line 以下 F.L.) に向けて、 “ ) ” また
は、“ ( ”のように弧を描いて移動
する局面をターン(turn)と定義する.2 ふたつのターンを接続する運動局面は
切りかえの運動局面 (Transition phase )と呼ばれスキー滑走において
極めて重要であり、本テキストのテー
マである.図 1.参照.
Right turn
Transition phase
↓
Left turn
Fall Line (F.L.)
図 1.スキーの滑走は右ターン(Right turn)と左ターン (Left turn)によって構成され
る.これらは切りかえと呼ばれる運動局面
(Transition phase)によって接続される.
*1
文中クロスオーバーの切りかえ、単にクロス
オーバーと記述することがあるが同一である.
2
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2 クロスオーバーによる切りかえの運動局面
クロスオーバーによる切りかえの運動局面を下の写真 1 に載せる.
前のターン後半②から次のターン前半④へとスキー板に
対するスキーヤーの重心位置の入れかえ、すなわち
重心移動によりエッジが切りかわる.
図 2 に切りかえの前後における重心(黒丸)
の移動とエッジングの変化の様子を単純化し模式的
に描いた.山まわり後半(a)のエッジングを開放し、
(b)の平面に垂直なポジションと(c)の斜面に垂直な
ポジションをへて谷まわりのエッジング(d)が開始
される.(a)から(d)までの過程は脚部の運動によって
誘導されるのではなく次のターン内側への能動的
(積極的)な重心の移動によって行われる. この例において斜度は15°山まわり後半(a)にお
けるスキーヤーの山側への傾きα 、および谷まわり
(d)における雪面に対するスキー板の角度β はともに
15°として描いた.従って山まわり後半(a)から谷ま
わり(d)までのスキーヤーの傾きの変化は45°である.
写真 1. 切りかえの運動局面. ②-③は次のターン内側へと積
極的に移動する運動意識による滑り.スキーヤーがスキー板の上
を横断することによりエッジが切りかわる.
①
② F.L.
③
④
⑤
スキー板トップ
雪面
図 2. 切かえにおけるスキー
ヤーの傾きとエッジングの変
化. 黒丸はスキーヤーの重心
を表す
(a)
(b)
(c)
(d)
雪面
α
β
15°
15°
α+β +15°
3
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3 スキー板に生じる複合的な力
スキー板には次に説明する複合的な力が生じるものと考え、定性的では
あるがクロスオーバーのメカニズムについて説明を試みよう.
トップとテールを支点にブーツセンター付近に力を加えると、スキー板
は弓なりに撓(たわ)む.もうひとつは下図 3 のようにトップとテールを捩
(ね)じったときに拮抗する力である.この力の強さは捩じれに対する剛性
( torsional stiffness )を現す.簡単には捩れによるスキー板の変形のしやす
さ(捩れやすいかどうか)と考えて差し支えないだろう.単に“トーション
( torsion )”と呼ばれている.スキー板の柔軟性はこれら二つの特性、撓と捩
じれの特性によって支配される.
滑走によってエッジングが開始するとトップとテールの雪面グリップに
よりスキー板は図 4 のようにブーツセンターに対して逆方向に捩じれ始める.
変形したスキー板はもとの形状に戻ろうとするためブーツセンターに対して
図 4 の矢印向きの力が生じる.この力を重心移動の引き金にしてクロスオー
バーを行う.
図 3. スキー板のトップとテールを図のように逆方向に捩じってみる.ブーツセンター付
近を中心に変形し、元に戻ろうとする逆向きの力(矢印)を確認できる.
図 4. 滑走中のスキー板の“捩じれと撓み”による変形. エッジングが始まるとブーツ
センターに対してトップ及びテールは逆方向に捩れはじめる.同時にトップとテールを支
点にスキー板は弓なりに撓む.矢印はスキー板がもとの形状に戻ろうとする力を表す.
インエッジ
アウトエッジ
雪面
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下の写真 2 の左側は F.L.を通過しスキー板が雪面から圧を受けた局面を
捉えたものである.写真 2 右のスキー板トップの拡大図を見てみよう.スキ
ー板はブーツセンター付近に対しトップ(及びテール)は逆向きに捩じれて
いる.捩れが解放されスキー板がもとの形状に戻ろうとする力(矢印②)は
雪面に対してスキー板をフラットに戻そうと働く.図 3 参照.
②
①
写真 2. ブーツセンター付近に対しトップ(及びテール)は逆向きに捩じれている。この捩
じれ、そして撓みが戻るときの力を利用してクロスオーバーによる重心の移動を行う.図中
①の矢印はスキーヤーに働く力をイメージする補助として描いたものである.
先にのべたスキー板全体の撓みが戻る力はスキーヤー自身の方向へと働
く.この力と捩れが戻る力(矢印②)の複合力によってスキーヤーは矢印①
のように持ち上げられそして斜面下方向へとスキー板を横断することが可能
となる.すなわち、スキー板とスキーヤーの位置関係の入れ替えにより、ク
ロスオーバーを行うことが可能となる.
同時にこの力をスキー板の推進力の大きさ (スピードの速さ) に合わ
せ(調和させ)て解放することができるとスキーヤーは
下から持ち上げられ、スキー板を横切って落下しスキー板が生き物のように
体の下を走り抜ける 非日常的な感覚を体感することができるのである.
このようにスキー板が元の形状に戻るときスキーヤーに働く複合的な力
は一般にリバウンド( Rebound )と呼ばれている.ブレーキ要素の強いスキー
操作ではスキー板全体の撓みが戻る力は自分の方向に感じるものである.こ
の力も一般にリバウンドと呼ばれているがこれと異なりここで述べたリバウ
ンドは切り替えの瞬間 “落下及びスキー板の走りと抜け” の感覚を伴う.
その違いの理解には特に注意が必要である.
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4 クロスオーバーによる切りかえの例
写真 3 にクロスオーバーによる切りかえの例を載せる.
写真
3. クロスオーバーによる切りかえ.スキー板に蓄積された力を解放することに
よりスキー板とスキーヤーの位置関係を入れ替える.これに伴ってエッジが切り換わ
(6 コマ/秒) る.
既に述べたようにクロスオーバーによる切りかえはあたかもスキー板の
上をスキーヤーが横切って行く感覚がある.写真 1. も参照.
実際の滑走ではF.L.から次のF.L.に向かう感覚、別の表現をすると一つ
のターンから抜け出し次のターンに入る感覚が強い.この感覚はF.L.方向あ
るいはターン内側に向かう落下の感覚とスキー板が体の下を走り抜ける感
覚を伴う.
写真 3 のGIFアニメーションはサイト内の「クロスオーバー」に掲載し
てあるのでそちらをごらん頂きたい.スキーヤーとスキー板が入れ替わる様
子を見ることができる.スキー板が螺旋(らせん)状に動きエッジが山まわ
りから谷まわりと変化する.
ストックの動き、目線の動きにも注目していただきたい.特にストック
操作はスキーヤーの重心を次のターン前方内側へと導き、スキー板に蓄積さ
れた複合力を開放する引き金の作用をするためきわめて重要である.参考資
料をぜひご覧頂きたい.*2
クロスオーバーによる切りかえによって導かれるターン(クロスオー
バーによるターン)は、荷重、回旋、角付け等の運動によって弧を描こう
とする積極的な舵取りの運動意識から導かれるターンとは異なるので理解
には特に注意が必要である.
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写真 4 はスキー狂化書 Part 1 にも一部掲載したクロスオーバーによ
るターン*2 である.常に斜面下方向へと運動意識が働いた滑りである.斜
面を滑り降りている(動いている)スキー板の上にあって、さらにスキー
板を乗り越え斜面の下方向へ移動(①-③)するためには“スキー板に蓄
積された力の助け”がないことには不可能であろう.
とはいえ、ターンサイズ、斜度、スピードに対応した身体能力が要求さ
れ、それを超えるとスキーヤーは切りかえの局面でスキー板に“置いて行か
れる”ことになる. 実際、写真 4 の滑り②において早い段階からエッジの
切りかえが行われているが斜面状況に対応しきれず(スピードに追従できず)
外側の脚を絞り、角付けを行いエッジングを補っている(③、④).スキー狂
化書 Part1、図 2 参照.
①
②
④ ③
⑤
写真 4. 積極的に斜面下方向への運動を意識した滑り.
目線が常に F.L.方向を向いている. ②において既にエ
ッジが切り替わり、谷まわりが始まっていることに着
目.(3 コマ/秒)
身体能力を超えた滑りとなったのは残念である.もし余裕を持って滑走
を楽しむのであれば谷まわりからスキー板の面を有効に活用する運動意識
でターンを行うと良い. これによって身体能力の範囲内にスピードを維持
して滑走を楽しむこともまた容易である.これもクロスオーバーによるター
ンの大きな特徴とメリットといえよう.
*2
クロスオーバーによる切りかえのターンを簡略化して表現.
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5 リバウンドの強さとクロスオーバー
スキー板に蓄積された複合力の解放がもたらすリバウンドの強さが切り
かえ時の運動動作にどのように反映するか、以下の二つの滑りを見てみよう.
下の写真 5 は緩斜面での滑走である.スキー板の変形は穏やかであり、リバ
ウンドの量も小さい.下から働きかけてくる力に拮抗するように脚の伸展を
行い(踵からつま先へ圧が移動するように)ターン内側へと重心を移動して
いる.立ち上がり動作を先行させた切りかえではエッジングの解放のあと脚
部を曲げて谷まわりのエッジングを求めるが、クロスオーバーによる切りか
えではターン内側への重心移動に伴い自然に谷まわりへと導かれる.
写真 5. 緩斜面の滑走例.リバウンドによりゆるやかに内側へ重心を移動する
ことで切りかえを行っている.動きを誇張して滑走.(6 コマ/秒)
写真 6 は写真 5 に比べ、スピードに対応した切りかえである.リバウン
ドの量も大きく、スキーの抜けも早くなる.(5-7 コマ)山側のポールと上腕
に注意.リバウンドが大きくなるとバランス維持の結果このようなシルエッ
トが生じる.これに対して写真 5 の切りかえでは大きなバランス維持を必要
としないため山側のポールの動きは極めて少ない.写真 2 も合わせて参照.
写真 6. 写真 5. に比べ斜度があり、スピードも大きい。春の重い雪質に身体能
力が伴わず、山周りから抜け出すタイミングが遅れてしまった滑りとなっている
(3-4 コマ).しかし、落下の醍醐味を十分楽しむことができる.(6 コマ/秒)
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6 リバウンドを得るための基本運動
繰り返して述べたように、リバウンドはスキー板の撓みと捻じれが戻る
力の開放がもたらすものである.この力をスキー板に発生させるための基本
の運動としては「常にスキー板と一体になり斜面下方向へと運動することが
できる腰の位置」、「外足を踏める腰の位置」を常に維持して滑走を行うこと
が重要である.
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
写真 7. 斜面下方向へ向かって
駆け下りるような運動の意識
による滑り.当然外足が主体と
なる. (3 コマ/秒)
③から⑦への動きは常にF.L.から次のF.L.と駆け下りる運動意識、ある
いは前のターン②-⑤から抜け出して次のターン⑦に飛び込むと言った運動
意識でもある.いずれにしてもスキーヤーはスキー板の動きに逆らってスキ
ーを回しこんだり、角付けをしたり、ひねったり、曲げたり?する必要はな
い.ターンは自動化された感覚を伴い循環運動を楽しむことができる.
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写真 8 は積極的に内足を持ち上げ、スピードに乗って滑った例である.
基本は写真 7 の滑りと変わらないがより正確なバランスの維持が求められる.
スキー運動の基準である腰の位置を学ぶ.
⑧
⑦
②
④
⑤
③
写真 8. 極端に斜面方向に腰
の位置をキープして谷回りを
行った。常に斜面下方向へ移動
する意識が主体となる。適切な
ストックの連動を行わないと
困難である.(6 コマ/秒).
①
切りかえと同時に内足を
解放(①)、斜面下方向に移
動しながら外足に乗り込ん
でゆく(②)運動意識が主
体となる.外見上は外足一
本で谷まわりを行うことに
なる.
理想的には(理屈の上で
は)F.L.付近において 大の
撓みと捻じれが発生すると
考えられるが実際には重力
に拮抗するため、雪面状況
との兼ね合いで F.L.より下
になることが多い.
⑥-⑧と山回りを引きず
らないで次のターンへ向け
て抜け出すようにF.L.に向
け運動を開始する.この運
動は既にF.L.近傍で生じた
撓みと捻じれの複合力の解
放によって導かれるのであ
る.ストックの動きに注目
して頂きたい
⑥
リバウンドを用いた切りかえの練習にはグリュニゲンターンなど内足か
ら切りかえる練習が定番メニューであるが、切りかえの局面だけを練習して
も効果は薄い.リバウンドに活用する撓みと捻じれの力を生じせしめるため
には腰の位置が常にスキー板の上にあり、ターン内側方向へ重心の移動を意
識した滑走を行う必要がある.
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7 おわりに
如何でしょうか? スキー板に生じる複合力によりターン内側への能動
的な重心移動が可能であると仮定し、クロスオーバーによるエッジの同時切
りかえについて説明を試みました.スキーヤー(著者)の感覚とスキー板の
特性をリンクさせた後付の発想であり、いわゆる科学的思考に基づいたもの
ではありません.しかし、この考えに従いトレーニングを重ねることで新し
い運動感覚の世界に導かれることは事実なのです.
既に述べましたがクロスオーバーによって導かれるターンは積極的な舵
取りの運動意識によって導かれるターンとはまったく異なります.ターンは
切りかえの時の初期条件(斜面状況、スキー板の性能、スピード、スキーヤ
ーの運動等)によってほぼ一意的に決定されるからです.
「何もしないスキー」といったら極端ですが、それくらい自分の意志で
スキー板を動かす意識-舵取りの意識-は希薄なのです.私はつい「自分か
らターンをしないでください」などといったりしますが、教わっている側か
らすると「理解困難」なことと思われます. しかし、クロスオーバーによる
ターンを体得したスキーヤーは、「自分からターンをしない」といった表現に
矛盾を感じないことを証明してくれます.
クロスオーバーによるターンは特段、高い身体能力や優れた才能を要求
されるわけではなく、順を追った練習を踏むことで年齢性別等に関係なく誰
でも楽しむことが可能です.切りかえの局面運動を良く理解し(これが一番
重要ですが)、練習を積み重ねるだけで良いのです.もちろん用具の性能に依
存するためその選択等も重要です.
クロスオーバーによる切りかえによって次のターン内側方向への落下
と体の下をスキー板が走り抜け、次のターンに流れるように導かれる非日常
的な感覚を体感したならば食を粗にし、着るものを薄くしてもスキーに注ぎ
込み、死ぬまでスキーを続けたいと思うようになるでしょう.グルーミング
されたゲレンデにおいてスキーでなければ味あうことのできない 高の楽し
みと言っても過言ではありません.
もちろん身体能力に応じ滑走の技術レベルが向上するのも大きな魅力で
す.自分の能力の限界がまだ先にあることを知ったスキーヤーはやがて GS
の板に乗り、広大なゲレンデを縦横に楽しむようになります.還暦を超えて
も尚新しいスキーの世界が広がるのです.
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このテキストに使用した写真は全て著者自
身によるものです.若さのかけらも無い年齢にも
めげず、拙い滑りを晒してテキストを執筆するわ
けは一人でも多くのスキーヤーに「クロスオーバ
ーの切りかえ」によるスキーを楽しんで頂きたい
との強い想いからであり、懲りずに引き続いて
「スキー狂化書 Part 2」としたのはこのような理
由によるものです.私の想いが皆様へ伝われば幸
いです. 春の日差しを浴び北海道余市岳
北東の斜面を登る著者.
8 おれい
今回もまたお世話になりました研究会のメンバーには紙面をかりて感謝
申し上げます.
後になりましたが縁あってこれを読んで頂いた方々に心より感謝申し
上げます. 切りかえ運動に関する実践面を踏まえた解説記事は初めてかもし
れません.おもわぬ間違等を危惧するものです.ご指摘等頂ければ幸いです.
ありがとうございました.
2009 年 12 月
Rev. 1.0 改訂によせて.
今回、若干の加筆と構成および表現のわかりにくいところを改めまし
た. 忌憚のないご意見等頂ければ幸いです 2016 年 1 月
Rev. 3.0
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補足および参考資料
1 伸身・屈伸の動作によりスキー板への
圧を軽減しエッジングの解放と切りかえを
行う方法は抜重動作として知られている.
しかし、立ち上がりの始めから脚が伸びき
ったところ、あるいは屈伸の開始から脚を
曲げきったところまでスキー板に加わる力
の変化は複雑であり単純に抜重動作と考え
ることには疑問が残る.故にこのテキスト
では抜重という言葉の使用を控えた.伸
身・屈伸の動作によりスキー板に作用する
力がどのようなものであるか.体重計の上
で立ち上がり動作をした場合の目盛りの変
化を見てみるのも面白いとおもわれる.
屈伸系の切換え.波をイメージして
滑る.(写真合成 北海道石狩市の
海)息抜きのジョークとしてご覧頂
ければ幸いである.
2 ターン(Turn )と舵取り(Steering )は混同して用いられる場合がある
ので注意が必要である.既に述べたようにこのテキストではスキー板のト
レースが斜面下方向-F.L. に向けて、“ ) ” または、“ ( ” のよ
うに弧を描いて移動する局面をターンと定義した.「右ターン」、「左タ
ーン」、「ターンの内側方向」「ワンターン」「シングルターン」などと
表現される通常の使用方法と同じである. これに対して舵取りはターンを行うため荷重移動や脚の伸展(荷重)、
雪面に対しエッジを立てる動作(角付け)、スキー板の進行に方向性を持
たせるための脚部の動作(回旋)等を要素としたスキーヤーの複合運動を
示す.舵取りは整地・不整地等幅広くスキーを楽しむための重要な技術要
素であり、ターン弧を描くためのスキーヤーの運動意識と運動そのものを
言い表した表現と捉えることができよう. 3 スキー滑走におけるストックの重要性はどんなに強調しても強調し
すぎるということはない.特にダブルストックを活用した練習はクロスオ
ーバーによる切りかえを学ぶために重要である.ストックの活用の重要性
を説いた Web サイトを検索してみることをお勧めしたい.ストックワー
クは和製語なので英語の Pole Plant をキーワードにすると検索可能であ
る. 2015 年 12 月現在、以下の Web サイトにおいて Greg Gurshmanの優れた解説記事を読むことができる.
13
hGreg Gurshman, “The Pole Plant in Modern Technique”. ttp://youcanski.com/en/coaching/pole_plant.htm