人心の開発救済 ① · 2018. 8. 8. · つまり「人心の開発」とは、知 ち 情...

25 24 れいろう. 平成30年9月 姿姿人心の開発救済 廣池千九郎エピソード 〜救済と救済事業の違い 皆さまの学習計画にお役立てください。テキ ストをお持ちでなくても、お楽しみいただける 誌面を心がけてまいります。 (本誌編集人) 10月号は「慈悲心を養う」をテーマに、モラ ロジーの基本テキストをもとに「人心の開発救 済」を特集します。 今後の 予定 10月号11・12月号「人心の開発救済」 道徳実行の因果律「れい でモ ジーを 学びま ? 「れいろう」でモラロジーを 学びませんか?

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Page 1: 人心の開発救済 ① · 2018. 8. 8. · つまり「人心の開発」とは、知 ち 情 のそれぞれの方面から人間をい き出すこと、といえます。傾きがちな心を改め、道徳心を引根本的に啓発して、自己中心的に

25 24れいろう. 平成30年9月

 

ここで大切なのは、いくら相手

の悩みや問題を解決したところで、

「よいことをした」と自己満足を得

ているだけでは、品性完成には近

づかないということです。その過

程や結果から何を気づき、学ぶの

か。廣ひ

池いけ

千ち

九く

郎ろう

は、モラロジーを

学ぶ人がその点を取り違え、人生

を誤らないよう数々の教訓を与え

ています。

それは事業で

救済ではない

 

高こう

弟てい

の中な

田た

中氏にかかわるエピ

ソードです。廣池の講話に感銘を

受け、ぜひモラロジーの普及を手

伝いたいと奔ほ

走そう

していた中田氏。

ようやく会員数や、研究費の支援

を申し出る人が増えたことを廣池

に報告したところ、思いがけず、

こんな指摘を受けました。

「あなたのやっていることは救済

じゃない。救済事業というもので

ある。私は人と金を集める仕事は

しておらん。人と金を集めるので

あったならば、最高道徳とかモラ

ロジーとか難しいことを言わなく

とも、映画とか芝し

居い

とか浪な

花わ

節ぶし

やれば、たくさん人も金も集まっ

てくる。あなたのやっていること

は事業というもので、それは救済

ではない」。そういうことをしない

で、「あなたが慈悲になりなさい」

というお話でした。

 

なぜ自分のやっていることは「救

済事業」であり「救済」ではないの

か。それから何日も何日も中田氏

は考えつづけます。そこで得た気

づきを次のように語っています。

「教育事業というものは、例えば

学校の先生が、家を出るときに親

子喧げ

嘩か

や夫婦喧嘩をして、教壇に

立って『父母に孝に、兄け

弟てい

に友ゆ

に、

夫婦相あ

和わ

し』と言っても生徒にそ

の心が伝わりません。自分が実行

しなくても、それを生徒にやらせ

ようとするのが教育事業です。救

済もそのとおりで、やりもしない

で人にしゃべっているのを救済事

業と言います」(参考:『廣池千九郎エ

ピソード第2集 慈悲の心を伝える』モ

ラロジー研究所刊)

 

道徳の大切さを人に伝えようと

どれだけ努力したところで、肝か

心じん

のあなた自身が、道徳を実行し、

その喜びを実感していなければ意

味がない。事業的にやっても本人

の品性は向上せず、幸せにもなれ

ない。そう廣池は説いたのです。

 

相手の心に変化と成長が生じる

ことを祈り、粘ね

り強く働きかける。

その過程が幸福への歩みになるこ

とを廣池は教えています。

(本誌編集人/富田裕之)

みつる

開発そして救済

「人心の開発救済」は、品性完成

をめざす学問「モラロジー」を構

成する五大原理の一つであり、他

の四つの原理を踏まえたうえで、

最後に学習する項目になります。

「人心」とは人間の心のことであ

り、自分の心だけでなく、相手や

第三者の精神をも含みます。

「開発」という言葉には「①森林

や荒れ地を切り開く」という意味

のほか「②知識などを開き導くこ

と」という意味(『日本国語大辞典』)

があり、ここでは②の意味合いで

用いられます。

 

つまり「人心の開発」とは、知ち

情意い

のそれぞれの方面から人間を

根本的に啓発して、自己中心的に

傾きがちな心を改め、道徳心を引

き出すこと、といえます。

 

一方、「人心の救済」とは、開発

によって引き出された道徳心を、

公平無私な慈悲心のレベルにまで

人格を磨き、高めていくことを意

味します。

 

開発から救済へと人格を根本的

に立て替えて、私たちの精神が慈

悲心で満たされたとき、何事も感

謝の心で受け止める姿勢ができる

ようになります。

なぜ品性向上に

つながるのか

 

ではなぜ、品性完成には「人心の

開発救済」が必要なのでしょうか。

 

そこには、品性や道徳心は他者

とのかかわり合いにより、互いの

精神が作用しあってこそ高まるも

のという前提があります。

 

中でも、最も自身の成長を得ら

れるのが、相手を「助けたい」「幸

せになってもらいたい」と心から

願い、自分の全人格で相手と向き

合うような、かかわり方です。

 

本気で相手とかかわるからこそ、

普段は持ちえないような知恵や勇

気を得たり、自み

ずからの働きかけ方や

あり方を真し

摯し

に反省し、向上しよ

うという意欲もわくものです。

 

そのような姿勢でさまざまな人

へ働きかけていくことによって、

実際に他者を助け、救う力が養わ

れるとともに、次への自信と活力

がもたらされます。そうした経験

の積み重ねが、品性向上につなが

るのです。

じょう

人心の開発救済①廣池千九郎エピソード

〜救済と救済事業の違い〜

特 集 誌 上ゼ ミ ナ ー ル

 皆さまの学習計画にお役立てください。テキストをお持ちでなくても、お楽しみいただける誌面を心がけてまいります。 (本誌編集人)

 10月号は「慈悲心を養う」をテーマに、モラロジーの基本テキストをもとに「人心の開発救済」を特集します。

今後の予定

●10月号●

●11・12月号●

「人心の開発救済」「道徳実行の因果律」

「れいろう」でモラロジーを学びませんか?

「れいろう」でモラロジーを学びませんか?