映像表現技術の研究成果をさまざまな番組で活用 -...
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技研だより 第145号 2017/4NHK放送技術研究所 〒157-8510 東京都世田谷区砧 1-10-11 Tel: 03-3465-1111(NHK代表)
4月号2017No.145
技研では、より分かりやすく魅力的な映像を効率的に制作するため、最新の映像解析技術やセンサー技術を活用した、新たな映像表現技術の研究開発を進めています。2017年1月30日〜 2月5日に行われたカーリング日本選手権では、氷上にストーンの軌跡を表示する技術を開発し、分かりやすい解説に役立てました。このように制作現場と連携し、最新技術を使って番組作りに貢献しています。
■カーリング中継でのストーン軌跡表示技術 氷上で行われるカーリングは、プレー状況により氷の状態が変化するため、「氷を読む」ことが重要な競技です。カメラの映像だけでは十分に伝えきれない氷の状態や各チームの戦術を、ストーンの軌跡を累積表示することで分かりやすく表現しました。 カーリング中継では、ブラシでのスウィーピング(リンクをブラシで磨くこと)によりストーンが隠れてしまうため、これまではカメラ映像から安定してストーンを検出することが困難でした。そこで逐次型の機械学習手法を導入し、ストーンの見え方を時々刻 と々再学習することで、頑健な追跡を可能としました。
■センサー技術などの活用で広がる映像表現技術 このほかにも、姿勢センサーなどの各種センサー技術や映像解析技術を活用して、さまざまな映像表現技術を開発しています。バーチャルスタジオ*で利用するハンディカメラの“向き”と“位置”を計測できるハイブリッドセンサーや、やり投げ競技やゴルフなどで飛翔体の位置を正確に求めて可視化する飛翔体軌跡表示技術といった研究成果も順次制作現場で活用し、魅力的な番組作りに貢献しています。
今後は2020年の東京オリンピック・パラリンピックでの応用を見据えつつ、スポーツに限らずさまざまな番組で新たな映像表現を実現する技術の研究開発を推進します。* 実写とCGをリアルタイムに合成するシステム
映像表現技術の研究成果をさまざまな番組で活用
カーリング中継でのストーン軌跡表示(第34回 カーリング日本選手権)
飛翔体軌跡表示技術の番組利用例(第49回 織田記念国際陸上でのやり投げ)
ハイブリッドセンサーを搭載したハンディカメラ(着信御礼! ケータイ大喜利 正月SP)
ハイブリッドセンサー
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NHKは、2月12日〜15日にドイツ・ベルリンで開催された、IMZ*主催の音楽コンテンツ国際見本市Avant Premiere Music + Media Market Berlin 2017において、8Kスーパーハイビジョン(8K)シアターでのコンテンツ上映および技術プレゼンテーションを実施しました。放送局や制作プロダクション、劇場、映画の関係者や、国際規格標準化の専門家など、音楽制作にかかわるプロフェッショナルが集まるこの見本市で、193インチスクリーンによる8K映像と、22.2マルチチャンネル音響(22.2ch音響)により、音楽やアートなどさまざまなコンテンツを上映し、その魅力を体感いただきました。また、技術プレゼンテーションでは、8K技術の全体概要、特に22.2ch音響の特長、制作システム、家庭再生技術などについて詳細に紹介しました。来場者からは、「まるで劇場にいるよう」、「22.2ch音響は音楽コンテンツに最適」「ぜひ8K共同制作を」といったコメントをいただき、8K制作の新しい可能性を開きました。今後、世界屈指のコンテンツを8Kと22.2ch音響システムで体感できる機会が増えるよう、8K放送に必要な番組制作技術の研究を進めていきます。
* IMZ (International Music + Media Centre):音楽とダンスの映像化に関わる世界の放送局やプロダクション、歌劇場やオーケストラ団体など150の会員が参加する協会
受賞報告
技研では、放送技術の研究開発に継続的に取り組むとともに、その成果を国内外の学会や論文などで発表し、放送技術の発展に努めています。こうした成果に対し、最近授与された賞についてご紹介します。
■2016年度 高柳健次郎業績賞 −島本洋 上級研究員(テレビ方式研究部)
本賞は、電子科学技術に関する優れた研究により、わが国のこの分野の振興並びに産業の発展に貢献した功績に対して、公益財団法人 高柳健次郎財団から授与される賞です。今回、島本上級研究員が取り組んできた、“8Kスーパーハイビジョン用イメージセンサの開発”の業績が高く評価されました。(写真)■IDW/AD'16 Best Paper Award
−薄井武順 職員ほか(新機能デバイス研究部) 本賞は、ディスプレーの国際会議 IDW/AD(International Display Workshop / Asia Display)において、“有機ELディスプレーの動画質改善とELの長寿命化の両立を目指した駆動方式”に関する講演発表が評価されました。■第32回電気通信普及財団賞 テレコムシステム技術賞奨励賞
−田高礼子 職員ほか(ヒューマンインターフェース研究部) 本賞は、情報通信及びそれに関連する情報処理についての優れた研究論文等に授与されるもので、今回、“気象通報の音声合成と自動放送化”に関する論文が評価されました。
音楽コンテンツの国際見本市で8K映像と22.2ch音響をプロモーション
高柳健次郎業績賞授賞式の様子 (右が島本上級研究員)
技術プレゼンテーションの様子 8Kシアターでのコンテンツ上映の様子
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8Kスーパーハイビジョン(8K)は映像の情報量が膨大なため、記録装置には高速性や大容量が求められます。技研では、8K映像の長期保存に向けた記録装置として、ホログラムメモリーの研究を進めています。
ホログラムメモリーは、光の干渉を記録再生に利用します。記録時には、映像信号を白黒の2次元バーコード状のデータ(ページデータ)に変換して液晶パネルなどの空間光変調器上に表示し、そこにレーザー光を照射します。この空間変調されたレーザー光(信号光)と、何も情報を持たない光(参照光)を交差させると、光の干渉縞(明暗分布)が生じます。これを記録媒体に照射していくのがホログラムメモリーの記録原理です。再生時には、参照光のみをホログラムに照射します。干渉縞によって、記録したページデータの像が回折されるため、この光をカメラで撮影することで元のデータを復元できます
(図1)。
ホログラムメモリーは、2Mビット程度の情報を1回の光照射で一括して記録再生することができるためデータ転送速度が高く、また参照光の角度を変えて数百のホログラムを同じ場所に重ね書きできるので大容量化が可能です。また、フォトポリマー*材料を使用した記録媒体は、劣化の原因となる酸素や水分に耐性があるので、50年以上の保存寿命が期待できます。
ホログラムメモリーでは、記録媒体に微小なひずみが生じていると、データの再生時にエラーとなります。今回、データの再生を安定させるため、ひずみにあわせて参照光の波面を制御する技術(図2)を組み込んだ、ホログラムメモリーのプロトタイプドライブを開発しました(図3)。実際にドライブに装着したディスクに8K映像を記録し、誤りなく再生することに成功しました。
今後、さらなる高速化と高密度化を進め、ホログラムメモリー技術を使用した8Kアーカイブシステムの実現を目指します。* フォトポリマー:感光性樹脂
8Kスーパーハイビジョン映像の長期保存を目指したホログラムメモリー技術
新機能デバイス研究部 片野 祐太郎
記録するデータ01011010 …
再生されたデータ01011010 …
カメラ
空間光変調器
信号光
ページデータ
レーザー光
ホログラム
参照光(裏から)
参照光(表から) 記録媒体 記録媒体
記録 再生
回折光
図1:ホログラムメモリーの記録再生の原理
カメラ再生されたデータ01011010 …
回折光
記録媒体
ひずんだホログラム
波面制御器
参照光(裏から)
図2:参照光の波面制御技術
図3:プロトタイプドライブと記録媒体(ディスク)
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技研だより 第145号 2017/4NHK放送技術研究所 〒157-8510 東京都世田谷区砧 1-10-11 Tel: 03-3465-1111(NHK代表)
4月号2017No.145
インターネット活用技術(全5回)
スマートフォンやタブレットの普及と動画配信技術の進化に伴い、インターネットで多くの動画コンテンツが視聴されるようになりました。放送局もVOD(Video on Demand)サービスや見逃し配信サービスに取り組むなど、インターネットで放送番組を届けることに力を入れるようになっています。 本連載では、さらに進化していくインターネット活用技術を連載で紹介します。インターネットを用いれば、視聴履歴などの情報を活用することで、その人の好みや興味に合わせた便利なサービスを提供することが可能になります。しかし、これらの情報は視聴者のプライバシーに関わるため、適切に保護しながら利活用しなければなりません。そこで連載第2回では、「暗号技術と個人情報保護」について紹介します。 放送とネットを連携させたハイブリッドキャスト対応受信機の普及は、500万台を超えました。これにより、本格的に高品質な動画を一斉に配信する放送と、個人向けのこまやかなネットサービスを組み合わせた新たな動画配信サービス等が検討され始めました。第3回では、「ハイブリッドキャストの進化の現状」について説明します。 ハイブリッドキャストにより、放送受信機であるテレビがインターネットにつながったように、あらゆるものがインターネットにつながるIoT(モノのインターネット)の時代を迎えようとしています。そのような時代は、テレビの前だけでなく、外出先などの様々な生活空間の中で、個人の行動や状況にあわせた話題や情報を提供する便利で役立つサービスが期待できます。第4回は、そのサービスを実現する「行動連携技術」について紹介します。 このように、インターネットを活用することで様々なサービスが付加され、ますます便利になることが期待されます。しかし、その使い方が複雑では、視聴者に利用していただけなくなるため、視聴者が利用しているデバイスやサービスに関わらず、見たい番組を簡単にいつでも視聴できる環境の構築も必要になります。最終回の第5回では、その基盤となる「メディア統合技術」について紹介します。
インターネットは、私たちの生活の中でますます便利で身近になり、放送サービスにおいてもインターネットの活用は不可欠なものとなってきました。この連載では、視聴者のみなさまの生活の中で、便利でかつ安全安心な放送サービスを実現するための「インターネット活用技術」について紹介します。
第1回 インターネット活用技術の概要ネットサービス基盤研究部 上級研究員 藤沢 寛
インターネット活用技術の概要(第1回)
SHOP
テレビで紹介されました!
WWW
第2回 安全な個人データの収集と活用のための「暗号技術と個人情報保護」
第4回 個人の行動や状況にあわせた話題や情報を提供する「行動連携技術」
第5回 適切な配信メディアを自動的に選択する 「メディア統合技術」
第3回 こまやかな動画配信サービスを実現する「ハイブリッドキャスト」
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