イネの風邪薬の開発の提案イネの風邪薬の開発の提案 骨子:...
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イネの風邪薬の開発の提案
龍谷大学 農学部
上野 宜久
イネの風邪薬の開発の提案
骨子: 開発(探索)方法の提案
注意: まだ開発(発見)したわけではありません
対象: 一緒に開発(探索)するパートナー候補またはそのお知り合い将来利用や販売を検討される方による青田刈り(?)や面白半分の息抜きでご来聴の方も歓迎
肩の力を抜いて20分間おつきあいくださいませ~
150
200
250
300
350
400
450
500
550
600
10 aあたりの水稲の収量(kg) 1983−2012
kg/10 a
2003年 宮城県古川市
Photo by 林 長生
いもち病はイネの最大病害の一つである
1993年と2003年は、いもち病被害により全国の水陸稲収量の4−7%が失われたと見積もられている。
8,439,000 トン(2014年) → 337,560~590,730 トン
20万円/トン(2014年) → 670~1180億円
異常気象(特に冷害)になるといもち病が大発生することが知られている。
しかし、なぜだかはわかっていなかった。
サリチル酸(SA) アセチルサリチル酸(アスピリン)
植物活性化剤
ベンゾチアジアゾール(BTH): SAの代わりとなって作用するプロベナゾール(PBZ): SAの生合成を活性化する
イネは自力でいもち病に抵抗する能力を持っており、それは自身で合成したサリチル酸(SA)によって発動する。
WRKY45
遺伝子1
遺伝子2
遺伝子3
WRKY45
WRKY45 WRKY45 WRKY45
タンパク質1
タンパク質2
タンパク質3
抗菌物質産生
抗菌作用がある
他の遺伝子を活性化
SABTH
???
イネの細胞
どうしてサリチル酸(SA)やBTHを受容するとイネは病気に対して強くなるの?
?
?
耐病性
SA/BTH
BTH(SAの代役)を投与するとイネはいもち病に対して抵抗性を示す!
0.001
0.01
0.1
1
10
BTH - + + + +
AB
A
低温
塩水
イネ葉で増殖したいもち病菌の相対量
弱い
強い
?
?
耐病性
SA/BTH
?
低温高塩濃度
しかし、、、低温などの環境ストレスを受けるとBTH(SA)の効果が打ち消されてしまう。
→あたかも風邪をひくかのよう
0.001
0.01
0.1
1
10
BTH - + + + +
AB
A
低温
塩水処理
イネ葉で増殖したいもち病菌の相対量
弱い
強い
環境ストレス耐性
生物的ストレスに抵抗する
非生物的ストレスに耐える
ABA(アブシジン酸)
BTH(SAの代役)を投与するとイネはいもち病に対して抵抗性を示す!
SA (BTH)
WRKY45
耐病性
OsNPR1
ABA
環境ストレス(低温、高塩濃度、乾燥 等)
環境ストレス耐性
OsMPK6
T Y
OsMPK6
T Y
OsMKK10-2
S SWRKY45
S S
PP
PP
OsMPK6
T YP
OsPTP1/2
不活性型
WRKY45
活性型
活性型不活性型
不活性型
私たちの研究でわかったこと
0.001
0.01
0.1
1
10
BTH - + + + +
AB
A
低温
塩水
野生型(普通の)イネ(日本晴)
0.001
0.01
0.1
1
10
- + + + +
AB
A
低温
塩水
- + + + +
AB
A
低温
塩水
OsPTP1/2遺伝子をノックダウンしたイネ(独立した二系統の実験)
#3 #11
イネ葉で増殖したいもち病菌の相対量
弱い
強い
処理
OsPTP1/2の遺伝子をノックダウンすると、低温等の環境ストレスに曝されてもBTHを投与するといもち病に対して抵抗性を示す!
OsPTP1/2の遺伝子をノックダウンすると、低温等の環境ストレスに曝されてもBTHを投与するといもち病に対して抵抗性を示す!
OsPTP1/2の働きを抑制する化合物を見いだせば、イネの風邪薬の有力候補になる!
OsPTP1/2の活性化を(間接的にモニターすることで)阻害する化合物を探索する系を準備した。
0 30 100ABA (µM)
SA (mM)
0
1
レポーター遺伝子を導入したイネを作出済み
まとめ
いもち病は冷夏に被害が拡大する傾向にある。
イネは自力でいもち病に抵抗する能力を持っており、それはSAによって発動する。(生物的ストレスに抵抗する)BTHはSAの代わりにイネにいもち病抵抗性を付与する植物活性化剤である。
一方で、イネは低温等の環境ストレスを受けるとそれに耐えるために順応する。(非生物的ストレスに耐える)このような環境ストレスを受けるとSA/BTHによるいもち病抵抗性が抑圧される。(風邪をひく)
これは、非生物的ストレス耐性機構から生物的ストレス耐性機構への干渉の一つと考えられる。
OsPTP1/2はこの現象を司る。OsPTP1/2の遺伝子機能を抑制すると、低温等のストレス条件下でもいもち病抵抗性を示す。
OsPTP1/2の活性化を阻害する化合物が風邪薬となりうる。そのような化合物を実験室レベルで探索する系を準備した。