【ダイジェスト版】 川崎病心臓血管後遺症の診断と …circulation journal vol....

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大学 アドバイザー 大学 員  大学 大学 センター 大学第一 員  大学第 員 鮎  大学 大学 大学 大学 垣  大学第 Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 2003 1153 Ⅰ. Ⅱ. 1.冠 234Ⅲ. 11221)安 2)運 3)ホルター 4)そ 31X 2エコー 3)核医学 4)そ 54臓カテーテル 1)冠 234)冠 Ⅳ. 112321)冠 インターベンション 2)冠 バイパス 3)そ 3に対する 4活・運 Ⅴ. Ⅵ. Ⅶ.ま (無断転載を禁ずる) 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(20012002年度合同研究班報告) 【ダイジェスト版】 川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン Guidelines for diagnosis and management of cardiovascular sequelae in Kawasaki disease (JCS 2003) 委員 大学 大学

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班 長 原 田 研 介 日本大学小児科

アドバイザー 加 藤 裕 久 久留米大学循環器病研究所

班 員 赤 木 禎 治 久留米大学小児科

唐 澤 賢 祐 日本大学小児科

北 村 惣一郎 国立循環器病センター

佐 地   勉 東邦大学第一小児科

鈴 木 淳 子 東京逓信病院小児科

馬 場   清 倉敷中央病院小児科

班 員 藤 原 久 義 岐阜大学第二内科

協力員 鮎 沢   衛 日本大学小児科

岡 田 知 雄 日本大学小児科

小 川 俊 一 日本医科大学小児科

荻 野 廣太郎 関西医科大学小児科

西 垣 和 彦 岐阜大学第二内科

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 2003 1153

合同研究班参加学会:日本循環器学会,日本心臓病学会,日本小児科学会,日本小児循環器学会,日本胸部外科学会

Ⅰ.序 文Ⅱ.心臓後遺症の病理・病態と自然歴

1.冠動脈障害2.心筋障害3.弁膜障害4.動脈硬化Ⅲ.診 断

1.血液検査1)心筋梗塞2)動脈硬化

2.生理検査1)安静時心電図2)運動負荷心電図3)ホルター心電図4)その他の生理検査

3.画像診断1)胸部 X 線写真2)心エコー検査3)核医学検査4)その他の画像診断法5)画像診断法の選択

4.心臓カテーテル検査1)冠動脈造影2)心機能検査3)血管内超音波法4)冠動脈狭窄の機能的重症度評価

Ⅳ.治療法1.薬物療法

1)治療方針2)虚血発作の治療3)薬物療法

2.非薬物療法1)冠動脈インターベンション2)冠動脈バイパス手術  3)その他の手術

3.急性心筋梗塞に対する初期(内科的)治療4.生活・運動指導Ⅴ.経過観察Ⅵ.成人期の対応,循環器内科医との連携Ⅶ.まとめ

(無断転載を禁ずる)

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2001-2002年度合同研究班報告)

【ダイジェスト版】

川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドラインGuidelines for diagnosis and management of cardiovascular sequelae in Kawasakidisease (JCS 2003)

目 次

外部評価委員

遠 藤 真 弘 東京女子医科大学日本心臓血圧研究所外科

尾 内 善四郎 島津製作所附属島津診療所内科

中 澤   誠 東京女子医科大学日本心臓血圧研究所循環器小児科

山 口   徹 虎の門病院

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ACC:American College of Cardiology

ACE:angiotensin converting enzyme

AHA:American Heart Association

AN:Aneurysm

ARB:Angiotensin receptor blocker

ATP:adenosine triphosphate

BMIPP:betamethyl-ioophenyl-pentadecanoic acid

CABG:coronary artery bypass grafting

CFR:coronary flow reserve

CK:creatine kinase

CT:computed tomography

EF:ejection fraction

FFRmyo:Myocardial fractional flow reserve

FS:fraction shortening

Ga:Gallium

H-FABP:heart-type fatty acid-binding protein

HDL:high-density lipoprotein

ICT:intracoronary thrombolysis

ISDN:isosorbide dinitrate

IVUS:intravascular ultrasound

LDL:low-density lipoprotein

MIBG:metaiodobenzylguanidine

MLC:myosin light chain

MRA:Magnetic resonance angiography

MRI:Magnetic resonance imaging

PCI:percutaneous coronary intervention

PDE:phosphodiesterase

PET:Positron emission tomography

POBA:plain old balloon angioplasty

SPECT:Single photon emission computed tomography

Tc:Tecnechium

Tl:Thallium

TnT:troponin T

t-PA:tissue plasminogen activator

初めて川崎病が報告された 1967 年から,35 年以上が

経過した.川崎病既往者の多くの症例が内科領域の年齢

に到達している.川崎病は,世界中で多くの研究がされ,

その原因論,心臓血管後遺症に関する多数の報告がある.

原因に関しては残念ながら明らかにされていないが,心

臓血管後遺症に関しては,詳細な研究が行われ,病態,

自然歴,診断,および治療においては,確立されたもの

がある.そこで,日本循環器学会としてガイドラインを

作成することになった.

表 1 に,現在,2002 年に改訂された川崎病診断の手

引きを示す.川崎病急性期はこの診断の手引きで診断す

る.成人例で川崎病既往が不明で,冠動脈瘤の形態から

川崎病が疑われる場合には,病歴からこの診断の手引き

が手がかりになるであろう.今回,川崎病心臓血管後遺

症のガイドラインを作成するにあたって,冠動脈瘤の大

きさの基準および重症度評価を統一した基準で分類する

ことが必要であり,表 2 は過去の分類および専門医の

見解から本ガイドラインとしての基準として合意事項と

した.

冠動脈瘤が後遺症として残存する率は,5.0 % と報告

されている.死亡率は 0.01 % と報告されている.冠動

脈障害の分類は,表 2 および表 3 に示す.

急性期の冠動脈は,心エコーで平均 5.4 病日に冠動脈

のエコー輝度の増強が観察される.組織学的には血管炎

が中膜外層から始まり,内膜に及ぶのが認められる.そ

の後,瘤形成に至るのは平均 11.4 病日に 28.8 % で,そ

の他の例では 30 病日以後の回復期までには正常径にも

どる.最近はガンマグロブリン療法が用いられ,急性期

瘤形成は拡大 12.97 %,瘤 1.96 %,巨大瘤 0.27 %と減少

している.(表 2 および表 3)

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 20031154

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2001-2002年度合同研究班報告)

本ガイドラインで用いられる主な略語

序 文Ⅰ

心臓後遺症の病理・病態と自然歴Ⅱ

冠動脈障害11

冠動脈瘤形成1

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Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 2003 1155

川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン

表 2 川崎病心臓血管病変の重症度分類

(a)急性期冠動脈瘤の分類小動脈瘤(ANs)または拡大(Dil):内径 4 mm 以下の局所性拡大所見を有するもの.年長児(5 歳以上)で周辺冠動脈内径の 1.5 倍未満のもの.中等瘤(ANm):4 mm <内径≦ 8 mm年長児(5歳以上)で周辺冠動脈内径の 1.5 倍から 4 倍のもの.巨大瘤(ANl):8 mm <内径年長児(5 歳以上)で周辺冠動脈内径の 4 倍を越えるもの.

(b)重症度分類心エコー検査,ならびに選択的冠動脈造影検査等で得られた所見に基づいて,以下の 5 群に分類する.Ⅰ.拡大性変化がなかった群:急性期を含め,冠動脈の拡大性変化を認めない症例.Ⅱ.急性期の一過性拡大群:第 30 病日までに正常化する軽度の一過性拡大を認めた症例Ⅲ.Regression 群:第 30 病日においても拡大以上の瘤形成を残した症例で,発症後 1 年までに両側冠動脈所見が完全に正常化し,かつⅤ群に該当しない症例

Ⅳ.冠動脈瘤の残存群:冠動脈造影検査で 1 年以上,片側もしくは両側の冠動脈瘤を認めるが,かつⅤ群に該当しない症例

Ⅴ.冠動脈狭窄性病変群:冠動脈造影検査で冠動脈に狭窄性病変を認める症例.(a)虚血所見のない群:諸検査において虚血所見を認めない症例(b)虚血所見を有する群:諸検査において明らかな虚血所見を有する症例

参考条項:中等度以上の弁膜障害,心不全,重症不整脈などを有する症例については,各重症度分類に付記する.

表 1 川崎病(MCLS,小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群)診断の手引き

本症は,主として 4 歳以下の乳幼児に好発する原因不明の疾患で,その症候は以下の主要症状と参考条項とに分けられる.A 主要症状

1.5 日以上続く発熱(ただし,治療により 5 日未満で解熱した場合も含む)2.両側眼球結膜の充血3.口唇,口腔所見:口唇の紅潮,いちご舌,口腔咽頭粘膜のびまん性発赤4.不定形発疹5.四肢末端の変化:(急性期)手足の硬性浮腫,掌蹠ないしは指趾先端の紅斑☆(回復期)指先からの膜様落屑6.急性期における非化膿性頸部リンパ節腫脹

6 つの主要症状のうち 5 つ以上の症状を伴うものを本症とする.ただし,上記 6 主要症状のうち,4 つの症状しか認められなくても,経過中に断層心エコー法もしくは,心血管造影法で,冠動脈瘤(いわゆる拡大を含む)が確認され,他の疾患が除外されれば本症とする.

B 参考条項以下の症候および所見は,本症の臨床上,留意すべきものである.

1.心血管:聴診所見(心雑音,奔馬調律,微弱心音),心電図の変化(PR・QT の延長,異常 Q 波,低電位差,ST-T の変化,不整脈),胸部 X 線所見(心陰影拡大),断層心エコー図所見(心膜液貯留,冠動脈瘤),狭心症状,末梢動脈瘤(腋窩など)

2.消化器:下痢,嘔吐,腹痛,胆嚢腫大,麻痺性イレウス,軽度の黄疸,血清トランスアミナーゼ値上昇3.血液:核左方移動を伴う白血球増多,血小板増多,赤沈値の促進,CRP 陽性,低アルブミン血症,α2 グロブリンの増加,軽度の貧血

4.尿:蛋白尿,沈査の白血球増多5.皮膚:BCG 接種部位の発赤・痂皮形成,小膿疱,爪の横溝6.呼吸器:咳嗽,鼻汁,肺野の異常陰影7.関節:疼痛,腫脹8.神経:髄液の単核球増多,けいれん,意識障害,顔面神経麻痺,四肢麻痺

備考1.主要症状 A の 5 は,回復期所見が重要視される.2.急性期における非化膿性頸部リンパ節腫脹は他の主要症状に比べて発現頻度が低い(約 65 %)3.本症の性比は,1.3~1.5:1 で男児に多く,年齢分布は 4 歳以下が 80~85 % を占め,致命率は 0.1 % 前後である.4.再発例は 2~3 % に,同胞例は 1~2 % にみられる.5.主要症状を満たさなくても,他の疾患が否定され,本症が疑われる容疑例が約 10 % 存在する.この中には冠動脈瘤(いわゆる拡大を含む)が確認される例がある.

(厚生労働省川崎病研究班作成改訂 5版)

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①瘤の縮小,退縮

急性期に形成された瘤の多くは回復期以後に縮小傾向

を示す.冠動脈造影上,瘤が消失し造影上の正常化する

現象は“退縮(regression)”として報告され,発症から

1~2 年後に起こることが多く,小~中サイズの動脈瘤

でしばしばみられ,冠動脈障害例の 32 % ~ 50 % にみ

られている.その病理学的な機序は平滑筋細胞の内膜へ

の遊走,増殖と血管内皮の再生である.

②瘤の閉塞

中等以上の瘤において発症後比較的早期に血栓により

閉塞するものがみられる.造影により経過観察中の冠動

脈障害例 16 % に閉塞がみられ,その 78 % は発症後 2

年未満の造影で閉塞が確認されている.突然死がある一

方,無症状の閉塞も経過観察の冠動脈造影で出現した閉

塞例の約 2/3を占めている.閉塞後に再疎通血管や側副

血行路が発達し心筋虚血所見の改善を見る場合も多い.

③再疎通(セグメント狭窄)

閉塞後の再疎通像と考えられる新生血管はセグメント

狭窄と名付けられている.冠動脈障害例の 14.8 % に見

られ,その 90 % は右冠動脈であり.右冠動脈は閉塞し

やすく再疎通しやすいといえる.造影上のセグメント狭

窄には 3 種の病変に分類される(図 1).臨床的にもこ

れらの血管では心筋虚血の改善が認められることが多

い.

④局所性狭窄

冠動脈障害例の経過観察において,局所性狭窄は,12

%(鈴木ら),4.7 %(加藤ら)に認められると報告して

いる.局所性狭窄は通常,瘤の流入口部と流出口部の求

心性の内膜肥厚である.また,遠隔期に出現,進行する

局所性狭窄は右冠動脈に比し,著しく左冠動脈,とりわ

け左前下行枝近位部,主幹部に出現頻度が高い.

⑤瘤形成の無い冠動脈

急性期から瘤形成がなかった冠動脈においても,軽度

から中等度の内膜肥厚が認められる例が報告され,川崎

病既往が動脈硬化性病変に進展する要因となる可能性に

ついて論争されている.

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 20031156

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2001-2002年度合同研究班報告)

表 3 冠動脈造影による冠動脈障害の分類

¡拡大性病変:DL(ANl,ANm,ANs または Dil:サイズは心エコー診断の分類:表 2 に準ずる)

¡狭窄性病変:SL¡閉   塞:OC 100%のSL¡セグメント狭窄:SS 〔再疎通血管〕 (図 1 を参照)

A. braid-like lesion:血栓性閉塞冠動脈内新生血管束B. bridging lesion:閉塞瘤の栄養血管の発達C. pericoronary arterial communication:同一冠動脈間の既存血管の連結による順行性血流路

¡局所性狭窄:LS

(昭和58年度厚生省“川崎病に関する研究”班,川崎病による

冠動脈障害診断の基準化に関する小委員会)

予 後2

図 1 セグメント狭窄の細分類

A B C

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心筋障害の種類は大きく 2 つに分けられる.1 つは急

性期に見られる心筋炎や弁膜炎に伴う炎症性心筋障害で

あり,他は冠動脈炎に起因する冠動脈瘤と続発する虚血

性心筋障害である.

炎症性心疾患の代表的なものとしては,間質性心筋炎,

心膜炎である.急性期には Ga-67心筋シンチグラフィで

陽性像を示すごとく心筋炎が存在する.病理学的には単

核球を主とした細胞浸潤が主であり心筋細胞の変性や壊

死は少ない.心筋炎の特徴を表 4 に示す.

冠動脈の強い血管炎の結果としての冠動脈瘤に伴う狭

窄病変に起因する急性心筋梗塞が,発症から 2病週以降

におこる.冠動脈瘤の内径が 6 mm 以上で狭窄性病変へ

進行しやすく,特に 8 mm 以上に多く見られる.急性期

以後の陳旧性心筋梗塞は 7病週以降に多く見られる.

急性期には刺激伝導系の炎症所見も認められ,臨床的

には一過性の房室ブロックや心室性期外収縮,上室性頻

拍,心室頻拍として経験される.

川崎病合併症の弁膜障害として,僧帽弁閉鎖不全,三

尖弁閉鎖不全,肺動脈弁閉鎖不全は急性期にしばしば認

められ,大動脈弁閉鎖不全も稀に出現がみられる.これ

らの病態は急性期の心筋炎,弁膜炎に由来する逆流の他

に遠隔期に出現する弁膜炎後の線維化弁の肥厚,変形に

よる逆流や虚血に原因する乳頭筋不全による逆流がある

(図 2).

川崎病における動脈硬化の問題は,川崎病血管炎,特

に瘤や狭窄病変,瘤の regression では血管内膜肥厚,血

管内皮機能の低下がみられ,成人期に粥状動脈硬化へと

進展する可能性はある.また,病理学的な検討では,動

脈硬化への進行の可能性を示唆している.特に冠動脈障

害を有する例では,動脈硬化性病変の加速進展の可能性

は高くなると予想される.しかし,すべての川崎病患者

が動脈硬化促進性にあるというエビデンスはないため,

川崎病と動脈硬化に直接的な関連があるかは明かではな

い.

川崎病患児,特に急性期において冠動脈障害を強く残

した小児に対しては,動脈硬化を小児の時代から加速す

ることが証明されている肥満,高脂血症,喫煙,等の危

険因子を生涯に渡り避ける様にすべき点が重要である.

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 2003 1157

川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン

心筋障害22

炎症性病変1

虚血性病変2

刺激伝導系病変3

表 4 急性期における心筋炎の特徴

¡多くは一過性である.¡左室駆出率低下は軽度である事が多い¡一過性の心膜液貯留を伴う事が多い¡あらゆる弁に障害がおきるが一過性である.時に僧帽弁閉鎖不全,大動脈弁閉鎖不全は軽度残存する

¡重症化する事は稀である

弁膜障害33

心内膜炎�心筋炎�

房室弁輪拡大�乳頭筋不全 �

一過性房室弁逆流�

逆流消失�

冠動脈瘤�急性期�

回復期�

遠隔期�

弁膜炎�

逆流軽快�  消失�

弁尖変形   �変性治癒   �房室弁腱索断裂�

心不全�

冠動脈閉塞性病変�虚血性乳頭筋不全�

(房室弁,半月弁:大動脈弁)�

図 2 弁膜障害の機序

動脈硬化(特に粥状動脈硬化への進展について)44

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小児期における急性心筋梗塞診断のための確たる血液

生化学マーカーの基準値はない.従って,成人期の基準

値を用いて診断する.表 5 に個々のマーカーの特徴を示

す.極早期の心筋梗塞の迅速診断には H-FABP の全血

迅速判定法が,さらに,発症より 6時間以上経過してい

れば TnT の全血迅速判定法が有用である.心筋梗塞診

断の生化学検査の第一マーカーはCK-MB と TnT である.

動脈硬化の診断には,高脂血症の診断が重要である.

高脂血症の診断で一般的に用いられている脂質指標とし

て総コレステロール,LDL コレステロール,HDL コレ

ステロール,トリグリセリドの 4つがある.また,動脈

硬化の独立した危険因子としてホモシステインが注目さ

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 20031158

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2001-2002年度合同研究班報告)

診 断Ⅲ

血液検査11

心筋梗塞1

動脈硬化2

表 5 急性心筋梗塞診断のための血液生化学マーカー

マーカー 長     所 問  題  点 臨 床 応 用

CK-MB

①迅速で正確な測定が可能②早期の再梗塞を検出可能

①心筋特異性にやや欠ける(骨格筋疾患などがあると特異度が低下する)②発症 6 時間以内の早期では検出率が低下

ほとんどの施設で標準検査法として施行可能.生化学検査の第一マーカーのひとつ

ミオグロビン

①発症 1~2 時間の極早期より検出可能②高感度である③再灌流が検出可能

①心筋特異性に大変欠ける②発症後 1~2 日で正常に復するので,来院が遅くなった場合には検出されない

心筋特異性に欠けるので,これ単独による診断は不可

H-FABP

①発症 1~2 時間の極早期より検出可能②心筋梗塞量の評価が可能③再灌流が検出可能

現在迅速キットが作られており,早期の診断の感度は高いが特異度はやや低い

全国的に迅速診断キットが普及されており早期診断に有用

TnT

①感度および特異度が高い②発症より 8~12 時間の比較的早期の診断が可能③発症より 2 週間までの新たなる心筋梗塞の診断が可能④迅速診断キットによる迅速診断が可能⑤再灌流が検出可能

①発症 6 時間以内の早期診断の感度は低い(その場合には 8~12 時間後に再検査が必要)②後期小再梗塞検出の感度が低い

全国的に迅速診断キットの普及により生化学検査の第一マーカーである

MLC①発症 4~6 時間より検出可能②発症より 2 週間までの新たなる心筋梗塞の診断が可能

①検出感度にやや欠ける②腎排泄のため腎不全患者では異常値を呈する

現在の所迅速診断には対応できていない

CK:creatine kinase,H-FABP:heart-type fatty acid-binding protein,TnT:troponin T,MLC:myosin light chain

表 7 冠動脈疾患の予防,治療の観点からみた日本人成人の高脂血症患者の管理基準

高コレステロール血症総コレステロール ≧220 mg/dL

高 LDL コレステロール血症LDL コレステロール ≧140 mg/dL

低 HDL コレステロール血症HDL コレステロール <40 mg/dL

高トリグリセリド血症トリグリセリド ≧150 mg/dL

表 6 小児期高脂血症の診断基準(血清脂質値:空腹時採血)

総コレステロール(mg/dl)正常値     <190境界値     190~219異常値     ≧220

LDL コレステロール(mg/dl)正常値     <110境界値     110~139異常値     ≧140

HDL コレステロール(mg/dl)カットオフ値  40

トリグリセリド(mg/dl)カットオフ値  140

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れている.ホモシステインが脳梗塞,心筋梗塞などの動

脈硬化性疾患の独立した危険因子であることは現在コン

センサスが得られている.小児の血清脂質基準値を表

6,成人の高脂血症の基準値を表 7 に示す.

遠隔期においては,冠動脈病変,とくに巨大冠動脈瘤

を残した例では,心筋梗塞発症時に,梗塞部位に一致し

た ST-T 変化,異常 Q 波の出現を認める.

ダブルマスター,トリプルマスター二階段負荷心電図

は日常的に幼児期から行われ,就学前 4~6 歳のマスタ

ー二階段法は,酸素消費量から見てトレッドミル運動心

電図と同等の負荷を与えることができたとする報告もあ

るが,運動負荷では重症の虚血でないかぎり異常は検出

されにくい.

胸痛,不快感,動悸などの訴えが頻回に見られる場合

は施行する価値がある.狭窄例や巨大瘤の例では虚血性

の所見が発生しないか,一度は施行しておくことが必要

である.

その他の生理検査として,加算平均心電図,体表面電

位図,心磁図などで,心筋虚血の検出に関する報告があ

る.

①冠動脈瘤における石灰化陰影

冠動脈瘤の石灰化陰影を認めた場合には,巨大瘤や狭

窄性病変の存在,または進展が予測されるため,冠動脈

造影が必要である.

②心筋虚血または弁膜障害による心陰影の拡大

①安静時心エコー図法

安静時心エコー図法は,非侵襲性,簡便性から最も一

般的に行われるものであり,川崎病冠動脈病変の特徴的

所見である冠動脈拡大性病変に対しては経時的に冠動脈

の形態評価を行うことができる.成人例では冠動脈瘤を

描出することによって川崎病の診断をされることがあ

る.また,冠動脈瘤を認める場合には,瘤内血栓の有無

を診断することができる.狭窄性病変の評価は困難なこ

とがあるが,最近,超音波装置の改良によって冠動脈内

の血流をドップラーで計測することで狭窄性病変の診断

を行う報告がある.心筋障害による心機能評価,弁膜障

害の評価には心エコー図法が最も有用である.

②負荷心エコー図法

負荷心エコー図法は,運動またはドブタミン負荷,ジ

ピリダモール負荷を行い,リアルタイムに左室壁運動を

評価するものである.負荷中のエコー像を描出する上で

は薬物負荷の方が有用であり,特に inotropic agent であ

るドブタミンによる負荷心エコー図法は,冠動脈狭窄性

病変の検出および心筋生存性(viability)の評価に関す

る有用な診断法である.ドブタミン負荷心エコー図法は,

5 分毎に 5~10μg/kg/min. づつ増量し最高 30~40μg/

kg/min. まで投与し,各断面の壁運動異常を視覚的に評

価する.

③その他

経食道心エコー図法は,成人で冠動脈瘤が疑われる例

で経胸壁心エコー図法による冠動脈の描出が困難な場合

に有用なことがある.また,冠血流の評価も可能である.

心筋コントラストエコー図法は,経静脈性コントラスト

法の普及,超音波装置の改良によって心筋シンチグラフ

ィと同様の評価が可能になり,簡便性からも今後有用な

画像診断法になることが予想される.

表 8 に心筋血流製剤の比較を示した.川崎病後冠動

脈狭窄性病変の診断法として負荷心筋血流シンチグラフ

ィは重要であり,運動負荷によるものと薬物負荷による

ものが汎用される.

①タリウム心筋血流シンチグラフィ

負荷時に 1 歳未満で 37MBq(1mCi),1 歳から 10 歳ま

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 2003 1159

川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン

生理検査22

安静時 12誘導心電図1

運動負荷心電図2

ホルター心電図3

その他の生理検査4

画像診断33

胸部 X 線写真1

心エコー検査2

核医学検査3

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では 37~56MBq(1~1.5mCi),10 歳以上は 56~74MBq

(1.5~2mCi)の Tl-201 を静脈内投与し,3~4 時間後に

遅延像(再分布像)を撮像する.次に述べるような点に

注意することにより良好な画像が得られる.1)小児が

対象の場合は,撮像時の体位移動に十分注意する,2)

負荷像は Tl-201 に特徴である再分布が始まるため負荷

後早期に撮像を行う,3)Tl-201 投与後は,遅延像まで

摂食を制限する.

②テクネシウム標識心筋血流シンチグラフィ

テクネシウム心筋血流製剤(Tc-99m sestamibi,Tc-99m

tetrofosmin)は,Tl-201 に代わる心筋血流イメージング

として開発されたものである.負荷時に 10MBq/kg を

目安に最高 370MBq(10mCi)のテクネシウム心筋血流

製剤を投与し,2 時間後に初回投与量の 2~3 倍量を目

安に最高 740MBq(20mCi)のテクネシウム心筋血流製

剤を投与する.次に述べるような点に注意することによ

り良好な画像が得られる.1)小児が対象の場合は,撮

像時の体位移動に十分注意する,2)負荷時投与後1分間

は負荷を継続する,3)テクネシウム心筋血流製剤投与

後の卵製品,ミルク,ココアなどの飲食による肝臓,胆

のうからの排泄促進を行う,4)肝集積を洗い出しのた

め,投与後 30分以上開けて撮像する.

③その他の核医学検査

I-123 betamethyl-ioophenyl-pentadecanoic acid(I-123

BMIPP)は,心筋の脂肪酸代謝異常を捉えるため心筋

血流イメージングに比し壁運動異常部位の評価に優れて

いる.川崎病に関する報告は少ないが,重症の冠動脈障

害例における心筋障害の評価法として利用できる.I-

123 metaiodobenzylguanidine(I-123 MIBG)は重度の心

筋虚血および心筋梗塞後に心交感神経機能の障害が認め

られるため,川崎病後の心筋障害の検査としても有用で

ある.

④画像診断における薬物負荷法について

各種負荷法の比較および実際の負荷法について,表 9,

図 3に示した.

MRI,MRA は,心筋障害,冠動脈瘤の検出に関する

報告があり,非侵襲的な画像診断法である.超高速 CT

は,限られた施設に設置された診断法であるが,冠動脈

病変および心筋障害の詳細な評価が低侵襲的に行うこと

ができる.Multi-slice spiral CT は,心拍動の影響,被爆

量が問題になるが,冠動脈造影法の代用として冠動脈障

害のスクリーニングとして有用になる可能性がある.

PET は,糖代謝の評価では梗塞心筋の生存性(viability)

に関する精度の高い評価が可能である.

冠動脈形態の評価には,心エコー図法,MRA および

Multi-slice spiral CT が,心臓カテーテル検査の適応を決

定する上で,有用である.心筋虚血および心筋梗塞に関

する評価には,心筋シンチグラフィおよび心エコー図法

による診断が低侵襲性,客観性および重症度評価の面で

有用である.心機能障害については,心エコー図法によ

る評価が主体になる.心筋虚血の診断は,小児では薬物

負荷,運動が可能な例では運動負荷を行った画像診断法

が重要である.心筋梗塞の診断および心筋生存性

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 20031160

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2001-2002年度合同研究班報告)

その他の画像診断法4

画像診断法の選択5

表 8 各種心筋血流製剤の比較

201TI 99mTc-Tf 99mTc-MIBI

半減期 73 時間 6 時間 6 時間エネルギー 80keV 140keV 140keV実効線量当量 15.7mSv 9.9mSv 13.3mv調整法 なし 室温 15 分 100 ℃ 15 分再分布 あり なし なし抽出比 約 88 % 60~70 % 60~70 %摂 食 禁食 撮像後 OK 撮像後 OK肝,胆嚢集積 + ++ +++撮像開始 直後 15 分以降 30 分以降ファーストパス 困難 可能 可能

99mTc-Tf=99mTc-Tetrofosmin;99mTc-MIBI=99mTc-Sestamibi

表 9 各種負荷法の比較

ジピリダモール ATP ドブタミン 運動

生物学的半減期 24.6 min 非常に短い 2 min -投与量 0.568mg/kg/4min 0.16mg/kg/min x 6min 最高40μg/kg/min -心筋酸素消費量 不変~軽度増加 不変~軽度増加 増加 増加酸素均衡 需要<供給 需要<供給 需要>供給 需要>供給虚血の要因 盗流現象 盗流現象 酸素需要の増加 酸素需要の増加負荷量の調節 困難 可能 可能 可能薬物副作用 喘息発作,低血圧 喘息発作,低血圧 不整脈 -

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(viability)の評価は,安静時心筋シンチグラフィの取り

込み,負荷タリウム心筋シンチグラフィの再分布像,低

用量ドブタミン負荷心エコー図法および心電図同期心筋

SPECT における壁運動評価が有用である.

①適 応

(1)冠動脈障害程度の確認,経過観察

成人における冠動脈造影の適応は心筋虚血所見である

が,川崎病では諸検査において心筋虚血の検出率が低く,

心筋虚血の初発症状として突然死が起きるため,中等度

以上の瘤を形成した場合には回復期に冠動脈造影を行

い,以後局所性狭窄の出現,進行の経過観察に冠動脈造

影を用いることが勧められる.

(2)冠動脈インターベンション(PCI),冠動脈バイパ

ス手術前後

冠動脈造影は冠動脈インターベンションの適応の決定

の術前検査に,安全かつ有効に行うため血管形成術の施

行中に,施行後の効果判定と経過観察に必要とされる.

(3)冠動脈内血栓溶解療法(ICT)

中等度から巨大瘤の心エコーでの経過観察中にしばし

ば瘤内血栓が認められ,血栓溶解のための心臓カテーテ

ル検査,冠動脈造影が行なわれる.

②冠動脈造影の適応となる冠動脈障害

(1)拡大性病変

本ガイドライン心臓血管病変の重症度分類において,

中等瘤以上では回復期早期に冠動脈造影により,冠動脈

障害の形態,範囲を詳細に把握しておくことが,今後の

経過観察の手段,期間,治療法の決定などのために望ま

しい.したがって,冠動脈造影でなくとも,MRA や

Multi-slice spiral CT による冠動脈画像診断に基づく経過

観察の継続が必要である.

(2)局所性狭窄

遠隔期に進行性の局所性狭窄が瘤の流入口,流出口部

に好発する.狭窄の評価には多方向からの造影が必要で

ある.心筋シンチグラフィや運動負荷心電図,冠血流予

備能などの諸検査結果を合わせ,CABG や PCI などの

適応を考慮する.

(3)閉 塞

冠動脈障害例の約 16 % に完全閉塞が認められ,閉塞

の 78 % は発症後 2 年以内の造影で描出されている.閉

塞しても臨床的には無症状で経過観察のルチーンの造影

で初めて明らかにされることも稀ではない.側副血行路

の発達程度,再疎通血管の成長発育には閉塞時期,血栓

性閉塞や内膜肥厚による閉塞などにより個人差があり造

影による経過観察が必要とされる.

心室内圧,心拍出量,心室容積,駆出率などの測定に

より心機能を評価する.

①冠動脈病変の形態評価

内膜肥厚の程度,血栓,石灰化の有無,内腔狭窄程度

の観察に用いられる.強度の内膜肥厚が局所性狭窄部位

のみならず瘤の退縮部位でもみられる.遠隔期の明らか

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 2003 1161

川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン

エルゴメーター�

i.v.Watt1251007550250

40

30

20

10

0

0 3 6 9 12 15 16-17 min

ドブタミン�

i.v.

i.v.

μg/kg/min.

mg/kg/min.0.142

0 2 4 6 min

0 3 6 9 12 15 16-17 min

ジピリダモール�

i.v.μg/kg/min.160

0 2 4 6 min

ATP

図 3 負荷法の実際について

心機能検査2

心臓カテーテル検査44

冠動脈造影1

血管内超音波法(IVUS)3

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な内膜肥厚は,急性期に内径 4 mm を越える瘤に出現し

てくることが観察されている.リスクの高い IVUS によ

る血管内腔の形態観察の適応は血管形成術などの治療に

関連するものに限られてきている.

②冠動脈拡張能

冠動脈壁の硝酸イソソルビド,アセチルコリン注入に

よる拡張能の検討は,川崎病における長期の内膜機能障

害を評価する方法と報告されている.しかし,いずれも

冠動脈スパズムなどの危険性の高い検査であるため個々

の症例において,検査で得られるメリットとリスクを充

分考慮の上で行われることが必要である.

③冠動脈インターベンション(PCI)

狭窄程度,石灰化程度,内膜の状態を精密に知るため

の術前検査を行い,インターベンションのデバイスの選

択をおこなう.安全かつ充分な効果を得るために全行程

に IVUS を用いる.術後の再狭窄の評価にも IVUS が有

用である.

川崎病の冠動脈病変は,造影における狭窄所見の重症

度と心筋虚血所見にはしばしば不一致が見られる.これ

らの問題の解決に狭窄の機能的重症度評価が有用と考え

られる.また,冠動脈バイパス手術,PCI 後の効果判定

にも狭窄の機能的重症度評価が必要とされている.

①圧力センサー付きガイドワイヤーによる冠内圧測定

心外膜側の冠動脈狭窄の機能的重症度評価は,部分心

筋予備血流比(FFRmyo)が優れており,測定部位の冠

動脈形態の影響を受けにくく,側副循環も算入される.

②ドップラーガイドワイヤーによる冠血流量測定

微小循環や冠血流動態評価には冠血流予備能(CFR)

が流速としての変化を捉えやすく,狭窄の無い動脈瘤や

微小冠動脈病変の研究に優れており,川崎病冠動脈病変

の機能障害の解明に役割を果たしている.

以上の診断法に関する本ガイドラインの重症度分類別

の勧告として,表 10 に示す.

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 20031162

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2001-2002年度合同研究班報告)

冠動脈狭窄の機能的重症度評価4

表 10 川崎病冠動脈病変の重症度分類に対する診断法の適応

¡胸部 X 線u ClassⅠ 重症度分類 Ⅲ,Ⅳ,Ⅴu ClassⅡ 重症度分類 Ⅰ,Ⅱu ClassⅢ なし

¡安静時心エコー・12 誘導心電図u ClassⅠ 重症度分類 Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅴu ClassⅡ なし u ClassⅢ なし

¡運動負荷心電図u ClassⅠ 重症度分類 Ⅲ,Ⅳ,Ⅴu ClassⅡ 重症度分類 Ⅰ,Ⅱu ClassⅢ なし

¡ホルター心電図,加算平均心電図u ClassⅠ 重症度分類 Ⅳ,Ⅴu ClassⅡ 重症度分類 Ⅰ,Ⅱ,Ⅲu ClassⅢ なし

¡体表面電位図・薬剤負荷心電図・心磁図u ClassⅠ 重症度分類 Ⅳ,Ⅴu ClassⅡ 重症度分類 Ⅰ,Ⅱ,Ⅲu ClassⅢ なし

¡負荷心エコー,心筋コントラストエコー図法u ClassⅠ 重症度分類 Ⅳ,Ⅴu ClassⅡ 重症度分類 Ⅰ,Ⅱ,Ⅲu ClassⅢ なし

¡心筋血流シンチグラフィu ClassⅠ 重症度分類 Ⅳ,Ⅴu ClassⅡ 重症度分類 Ⅰ,Ⅱ,Ⅲu ClassⅢ なし

¡心筋脂肪酸代謝イメージング・心筋交感神経機能イメージングu ClassⅠ 重症度分類 Ⅴu ClassⅡ 重症度分類 Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳu ClassⅢ なし

¡MRI・Multi-slice spiral CTu ClassⅠ 重症度分類 Ⅳ,Ⅴu ClassⅡ 重症度分類 Ⅰ,Ⅱ,Ⅲu ClassⅢ なし

¡PET(Positron emission tomography)u ClassⅠ 重症度分類 Ⅴ(b)u ClassⅡ 重症度分類 Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅴ(a)u ClassⅢ なし

¡心臓カテーテル検査u ClassⅠ 重症度分類 Ⅳ,Ⅴu ClassⅡ 重症度分類 Ⅲu ClassⅢ 重症度分類 Ⅰ,Ⅱ

Class Ⅰその診断法が有用・有効であることについて見解が広く一致している.

Class Ⅱその診断法の有用性・有効性に関する見解が一致していない場合がある.

Class Ⅲその診断法が有用・有効ではなく,不必要であるとの見解が広く一致している.

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冠動脈障害合併例では遠隔期の死亡例の検討から,冠

動脈の内膜肥厚による狭窄性病変と血栓性閉塞による虚

血性心疾患が死亡の主な原因である事が観察されてい

る.一般的に心筋虚血の治療の基本は,

¡冠血流の増加

¡冠攣縮(スパズム)の予防と軽減

¡血栓形成の抑制

¡心仕事量の減少である.

このことから,血管壁のリモデリングと血栓形成の抑制

が主な治療目的と考えられる.

①発作時の治療

安定狭心症の発作時には硝酸薬としてニトリグリセリ

ン錠(ニトロペン)の舌下投与が一般的である.有効例

では通常 1~2 分で発作は軽快するが,不十分な例では

5~10 分後に追加する必要がある.小児例に対する薬用

量は決定されていないので,成人例から換算して使用す

る.

②狭心症の発症予防

表 11 に冠動脈瘤または拡張を残した症例の慢性期治

療の指針を示した.

③急性心筋梗塞の発症予防(再発も含む)

川崎病冠動脈障害に合併する急性心筋梗塞のうち,63

% が睡眠中または安静時の発症であり,必ずしも運動

や労作に伴ったものが多いわけではない.また,全体の

37 % は無症候性である.以上のことから内膜肥厚によ

る狭窄性病変への進展予防と,血栓形成の阻害,心筋酸

素消費量の低下に加え,冠動脈攣縮の関与の可能性を十

分に考慮して治療薬を選択すべきと考えられる.

①抗血小板薬(表 12)

川崎病では発症直後の急性期に血小板数がやや減少

し,回復期には増加する.血小板凝集能は発症後 3か月

以上,時に数か月~1 年にわたって亢進した状態が持続

する.これにより冠動脈に障害を残さなかった症例にお

いても,概ね 3か月を目安に少量の抗血小板薬を投与す

る事が望ましい.

一方,冠動脈に拡張または瘤を形成した川崎病既往症

例では,虚血性心疾患の予防,血小板の活性化による血

栓形成助長の予防の目的で,抗血小板薬を継続して投与

すべきである.

②抗凝固薬(表 13)

川崎病における抗凝固薬の適応は巨大冠動脈瘤形成

例,急性心筋梗塞発症既往例,冠動脈の急激な拡大に伴

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 2003 1163

川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン

治療法Ⅳ

薬物療法11

治療方針1

虚血発作の治療2

薬物療法3

表 11 冠動脈瘤または拡張を残した症例の慢性期治療の指針

Ⅰ 狭心症なく検査で虚血が認められない症例¡抗血小板薬の併用療法□検査で明らかな虚血がある症例  抗血小板薬+ Ca 拮抗薬

Ⅱ 狭心症のある症例¡抗血小板薬の併用療法に加え□労作時の狭心症   硝酸薬,Ca 拮抗薬の単独叉は併用効果が少ない場合は

β遮断薬の追加□安静時/睡眠時の狭心症 Ca 拮抗薬□夜間の狭心症    Ca 拮抗薬+硝酸薬

または+ K チャネル開口薬(ニコランジル)Ⅲ 心機能低下,弁膜症を合併した症例

¡心機能低下の程度を的確に判断し,β遮断薬,ACE 阻害薬,アンギオテンシン受容体拮抗薬の単独叉は併用療法を抗狭心薬に加えて投与.

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Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 20031164

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2001-2002年度合同研究班報告)

表 12 抗血小板薬と抗凝固薬

薬 品 名 投  与  量 副作用と注意点

(小児での安全性,有効性は確立されていない)

アセチルサリチル酸 急性期は 30~50 mg/kg,分 3 肝機能障害,消化管潰瘍,Reye 症侯群(アスピリン) 解熱以後は 3~5 mg/kg,分 1フラルビプロフェン 3~5 mg/kg,分 3 アスピリン肝障害の強い時に使用,肝機能障害,消化管潰瘍(フロベン)ジピリダモール 2~5 mg/kg,分 3 高度冠動脈狭窄例での狭心症誘発.盗流現象(ペルサンチン,アンギナール)チクロピジン 5~7 mg/kg,分 2 白血球(顆粒球)数減少,血栓性血小板減少性紫斑病(TTT),(パナルジン) 肝障害の発症に注意.

投与初期の 2 か月は 2 週間毎に血液検査が必要.ワルファリン 0.05~0.12 mg/kg,分 1 INR:1.2~1.5,トロンボテスト:25~50 % に調節.(ワーファリン) 出血性副作用に注意.

表 13 抗狭心薬,抗心不全薬,虚血発作治療薬

薬 品 名 投  与  量 副作用と注意点

抗狭心薬ニフェジピン 0.2~0.5 mg/kg/回,1 日 3回 低血圧,めまい,頭痛,心機能低下時注意(アダラート) (5 と 10 mg/カプセル)

成人量 30 mg/日,分 3ニフェジピン徐放剤 0.25~0.5 mg/kg/日,1~2 回/日, 同上(アダラートCR, 最大 3 mg/kg/日アダラートL) (CR 20 mg/錠,L 10 と 20 mg/錠)

成人量 40 mg/kg,分 1(L は分 2)アムロジピン 0.1~0.3 mg/kg/回,1 日 1~2 回 同上(ノルヴァスク) (最大 0.6 mg/kg/日)(2.5 と 5 mg/錠)

成人量 5 mg/日,分 1ジルチアゼム 1.5~2 mg/kg/日,3 回/日 同上(ヘルベッサー) (最大 6 mg/日)(30 mg/錠)

成人量 90 mg/日,分 3抗心不全薬メトプロロール 0.1~0.2 mg/kg/日,分 3~4 から開始, 低血圧,心機能低下,徐脈,低血糖,気管支喘息(セロケン) 1.0 mg/kg/日まで増量

(40 mg/錠)成人量 60~120 mg/日,分 2~3

カルベジロール 開始量 0.08 mg/kg/日, 同上(アーチスト) 平均維持量 0.46 mg/kg/日

成人量 1 日 10~20 mg/日,分 1エナラプリル 0.08 mg/kg/回,1 日 1 回 低血圧,紅斑,蛋白尿,咳漱,高 K 血症,過敏症,浮腫(レニベース) (2.5, と 5 mg/1 錠)

成人量 5~10 mg/日,分 1シラザプリル 0.02~0.06 mg/kg/日,分 1~2(1 mg/錠) 同上(インヒベース) 成人量 0.5 mg/日,分 1 で開始,漸増発作治療薬硝酸イソソルビド 舌下 1/3~1/2 錠/回(5 mg/錠) 低血圧,頭痛,動悸,めまい,紅潮(ニトロール) 経口 0.5 mg/kg/日,分 3~4

成人量 1~2 錠/回(舌下)フランドルテープ S 1/8~1 枚成人量(40 mg/枚)1 枚/回徐放剤(ニトロール R,フランドル錠)0.5~1 mg/kg/回成人量 2 錠/日(20 mg/錠)

硝酸薬 NTG 舌下 1/3~1/2 錠/回 同上ニトログリセリン (0.3 mg/錠),(ニトロペン) 成人量 1~2 錠/回

(小児での安全性,有効性は確立されていないので成人量を参考とする)

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う血栓様エコーの出現,などに限られる.冠動脈瘤内に

血栓が出現した場合には,ワーファリンが投与されるこ

とが多い.巨大冠動脈瘤症例における血栓性閉塞の予防

には,抗血小板薬と抗凝固薬を併用する.過剰投与によ

る出血傾向に十分配慮し調節する.小児領域では個人差

が大きい.

③冠拡張薬と抗狭心薬(表 13)

(1)Ca 拮抗薬

川崎病の心筋梗塞が安静時または睡眠時にも発症して

いることを考えると,冠攣縮を合併していると考えられ

る場合や,心筋梗塞後の狭心症や心筋虚血が認められる

患者に対しても Ca 拮抗薬の併用が考慮されることもあ

る.

(2)β遮断薬

心筋梗塞後の再梗塞や突然死の予防,長期の死亡率の

低下を目的に投与される.但し,冠攣縮が存在すると考

えられる状況では冠動脈攣縮を増悪させる危険性がある.

(3)硝酸薬

川崎病における急性虚血に対する拡張効果は内皮細胞

機能障害の強い病変部ではあまり期待できないが,急性

心筋梗塞発作の際には舌下,経口で投与を試みる.

④抗心不全薬(表 13)

ACE 阻害薬(ACE-I)/アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)

虚血性心疾患による心筋梗塞後の左室機能低下(EF

≦ 40 % )患者に有病率,心事故低下,死亡率低下を目

的に投与することがある.川崎病の長期予後における

ACE-I,ARB の効果は今だ研究成果の発表がない.

川崎病の冠動脈病変は,粥状動脈硬化を主体とする成

人の冠動脈病変とは異なり,高度の石灰化や線維性肥厚

を伴う事が多い.このため,成人領域で用いられている

PCI の適応や手技をそのまま川崎病の病変に用いること

は適当でなく,場合によっては危険である.川崎病の

PCI を施行するにあたっては,小児科医,循環器内科医

それぞれが,本疾患の病態,自然歴,さらに PCI につ

いて充分な理解をもって対応すべきである.

① PCI の適応

(1)患者側からの適応

¡虚血症状を呈するもの

¡虚血症状を有さないが各種の負荷テスト,負荷心筋

シンチグラフィ,ドブタミン負荷心エコー図法など

で虚血所見を有するもの

¡各種の検査で有意な虚血所見は呈さないが,将来的

に重篤な冠動脈虚血へ進行する可能性が示唆される

高度の狭窄病変には,PCI の適応を考慮できる.こ

れらの症例において外科的治療を選択するか,PCI

を選択するかもしくは経過観察を行うかは,個々の

症例に応じて検討する.

¡左心機能が低下している症例では PCI の適応から

除外する.

(2)病変部位としての適応

¡高度の狭窄病変(75 % 以上)

¡局在性の病変であること:多枝病変,対側の冠動脈

に有意狭窄または閉塞がみられる場合は禁忌とする

¡入口部病変でないこと

¡long segmental な病変ではないこと

② PCI の種類とその適応および注意点

(1)冠動脈内血栓溶解療法(ICT)

ウロキナーゼ 10,000単位/kg(成人一日最大投与量 96

万単位)心筋梗塞発症早期(6 時間以内)であればフィ

ブリンに高い親和性をもつ tissue plasminogen activator

(t-PA,チソキナーゼ)を 25,000 単位/kg(成人一日最

大投与量 640 万単位)を用いて ICT を行なう.稀に脳

出血や消化管出血を引き起こすことがあり,慎重に投与

する.ICT 後,12~24 時間はヘパリンを持続点滴し,

血栓の再形成を予防する.t-PA は経静脈的に使用する

ことが可能であるため,川崎病の急性心筋梗塞に対する

初期治療として重要である.

(2)バルーン冠動脈形成術(POBA)

POBA は他のデバイスに比べ細いカテーテル径でのア

クセスが可能であり,屈曲性も高いため,体格が小さく

ステント留置やロータブレーターを施行することが困難

な幼小児例でも施行可能である.また,発症より 6年以

内の冠動脈狭窄病変では石灰化病変が軽度な場合が多く

有効性も高い.しかし,成人領域の POBA に比し,高

率に新生動脈瘤を合併することが報告されている.

POBA においては,バルーン圧は最大 8 atm~10 atm 以

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 2003 1165

川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン

非薬物療法22

冠動脈インターベンション(PCI)1

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下を推奨する.それ以上のバルーン拡張圧が必要と考え

られる場合はロータブレーターや冠動脈バイパス手術な

ど他の方法を考慮する.術後 24 時間はヘパリンを持続

投与し,血栓性閉塞を回避する.

(3)ステント留置術

ステントは,冠動脈病変の石灰化が比較的軽度でステ

ント留置できる年長児において有効である.POBA に比

しより大きな血管径を確保することが可能である.冠動

脈病変の石灰化が高度な病変には,バルーンによる拡張

が充分得られない可能性があるため,ステント留置術は

不適切である.留置術直後にはヘパリンを持続投与し,

血栓性閉塞を回避する.また,留置術後の抗血栓,抗血

小板療法の継続はきわめて重要である.

(4)ロータブレーターによる冠動脈形成術

ロータブレーターはダイヤモンド粒子の付着した円錐

状の burr が超高速で回転することで病変部を削り取り,

狭窄部を拡大する.石灰化が高度な症例においても拡大

が可能であるため,川崎病遠隔期の冠動脈狭窄病変に対

しては,最も適した PCI と考えられる.

(5)血管内超音波法(IVUS)の応用

IVUS は,冠動脈血管壁の構造を詳細に観察すること

ができる.特に,石灰化病変の範囲を正確に把握できる.

さらに PCI による合併症(冠動脈壁解離など)の評価

にも有用である.

③施設およびバックアップ体制

川崎病冠動脈疾患における PCI は, PCI の専門医,

小児循環器科医および冠動脈バイパス手術専門の心臓外

科医が勤務する,総合的な医療施設で行うべきである.

④術後管理および評価,フォローアップ

川崎病における PCI 後の再狭窄の頻度,長期遠隔成

績には充分なデータが得られていない.PCI 術後の経過

が良好であっても,抗血栓,抗血小板療法は継続する必

要があり,患者教育が重要である.

⑤今後の展望:特に冠動脈バイパス手術との関連

川崎病冠動脈疾患におけるカテーテル治療技術の進歩

により,川崎病にともなう虚血性心疾患の発生率低下が

期待される.しかしながら,本法はまだ歴史の浅い治療

法であり,今後長期間の観察が必要である.乳幼児例,

多枝病変症例,心機能低下例では PCI の適応から除外

する.低侵襲バイパス手術と PCI を適切に選択もしく

は組み合わせることで,より低侵襲性で有効性の高い治

療が可能となると考えられる.

川崎病急性期のガンマグロブリン療法により冠動脈障

害を呈する症例は減少傾向にあるが,なお少数例におい

て遠隔期にも冠動脈障害が残存や進行し,小児の虚血性

心疾患に移行する症例が認められる.このような症例の

うち,内科的管理では虚血所見が改善しない例には,有

茎内胸動脈を用いた冠動脈バイパス手術が確実な治療法

であり,わが国のみならず,欧米でも普及している.

川崎病罹患児の急性期後の死亡の原因のほとんどが突

然死と心筋梗塞であるため,時期を逸しない手術適応の

決定が重要である.術後においては 70~80 % に心事故

は消失し,運動能力の改善を含む学童,学生生活の質の

改善が明かに認められる.

①手術適応

川崎病外科治療の適応基準について,表 14 に示す.

成人の場合に PCI やステントの適応とされる左前下行

枝の 1枝病変でも重度の虚血所見を示す川崎病の場合は

手術治療を考慮すべきである.

②手術時年齢

1 歳児に対する冠動脈バイパス手術も行われている

が,わが国の集計による手術平均年齢は 10.6 歳で 5~7

歳児が多い.男女比は約 3:1 で男子が多い.低年齢児

の手術の決定はより慎重に行う必要がある.学童期以後

の手術成績は非常に安定しており,可能であれば運動量

の高くなる学童期までは内科的管理を行い,それ以後に

手術を行うのが良策といえる.しかし,手術待機に危険

を伴うと判断される場合には 1歳児でも手術を行うべき

であり有茎内胸動脈グラフトを用いた手術(北村法)が

可能である.

③手術術式

手術術式としては,有茎内胸動脈(internal thoracic

artery),有茎右胃大網動脈(right gastroepiploic artery),

大伏在静脈(saphenous vein)による冠動脈バイパス手

術が最も一般的である.1984 年に初めて有茎内胸動脈

グラフトが使用され,その良好な開存性と患児の成長に

伴うグラフトの成長も確認された.それ以来,本グラフ

トの使用は広く普及し,最も標準的な術式となっている.

また,小児における両側内胸動脈の使用も胸郭の成長に

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 20031166

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2001-2002年度合同研究班報告)

冠動脈バイパス手術2

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障害をもたらすことなく,安全に行われる.また,右胃

大網動脈グラフトも,第 2の有茎動脈グラフトとして使

用されるようになった.

④手術成績

(1)グラフト開存率

グラフトの開存率は,大伏在静脈で 1 か月 92.1 %,1

年 73.0 %,3年 52.8 %,5年 46.2 % である.一方,有茎

動脈グラフト(内胸動脈,右胃大網動脈)では 1 か月

95.3 %,1年 90.0 %,3年以降 77.1 % と 1か月目では差

はないものの,その後は動脈グラフトのほうが有意に良

好である.

(2)術後の生活,問題点

術後には運動時の左室機能の改善が認められる.約

70~80 % の術後患児は心事故なく良好に経過し,体育

を含めた学校教育や社会に完全復帰し,女性では出産例

もみられる.残る 20~30 % は何らかの問題を残してい

るが,心室性不整脈以外ほとんどが重大・重篤なもので

ない.

①冠動脈瘤切除術

巨大冠動脈瘤の切除術を行った報告があるが,現在で

は瘤そのものの切除術の適応はきわめて少ない.

②僧帽弁閉鎖不全症

本症の僧帽弁逆流の特殊性は,①しばしば複雑な冠動

脈病変を合併し同時手術を行わねばならぬことが少なく

ないことと,②心筋障害が強く左室機能低下例が多いこ

とである.川崎病の重症な僧帽弁逆流は予後不良のもの

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 2003 1167

川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン

表 14 川崎病外科治療の適応

主要冠動脈,特にその中枢部に高度の閉塞性病変が存在するか,または急速な進行を示し,心筋虚血が証明される場合は冠動脈バイパス手術が有効な治療法となりうる.使用されるグラフトとしては,年齢に関係なく,自己有茎内胸動脈が勧められる.また,稀であるが,内科的治療に抵抗する僧帽弁閉鎖不全が存在する場合には僧帽弁手術など外科的治療を考慮する.1.冠動脈バイパス手術

冠動脈造影にて高度閉塞性病変の存在が確認され,さらにその領域の心筋の生存性(viability)が認められる場合,冠動脈バイパス手術の適応となりうる.領域心筋の生存性は狭心症の存在・心電図所見・タリウム心筋シンチグラフィ所見・断層心エコー図所見・左室造影所見(局所壁運動)などから総合判定する.冠動脈造影所見最も重要であり,次のような閉塞性病変所見のある場合,外科治療も考慮する.

¡左冠動脈本幹の高度閉塞性病変¡多枝(2,3 枝)の高度閉塞性病変¡左前下行枝高位の高度閉塞性病変¡危険側副路状態(jeopardized collaterals)そのほか,適応決定上考慮すべき状態として,(1)すでに心筋梗塞が存在し,第 2 回目,第 3 回目の梗塞が考えられる状態では適応は拡大しうる.例えば右冠動脈

系単独への外科治療なども考慮される.(2)冠動脈閉塞部の再開通(recanalization),側副路(collateral)形成のある場合は慎重に観察し,心筋虚血所見の強

い場合には外科治療を考慮する.(3)移植グラフトの遠隔期開存性を考慮し,低年齢児ほど適応決定は慎重に行う.内科的管理が行いうれば,冠動脈

造影を適宜反復して慎重に追求し,患児の成長を待つが,重症例では,1~2 歳での手術も行われている.この場合でも有茎内胸動脈グラフトの使用が勧められる.

左室機能検査所見外科治療を考慮する場合,左室機能は良好なほうが望ましいが,局所的低収縮状態は適応としうる.重篤なびまん性低収

縮状態にある場合には,冠動脈所見とあわせて総合判断するが,慎重な決定を要し,稀ではあるが心臓移植の適応となる.2.僧帽弁手術

内科的治療に抵抗し,長期存続する重症僧帽弁閉鎖不全症では,弁形成術や弁置換術の適応となりうる.3.その他の手術

まれであるが,川崎病合併症として心タンポナーデ・左室瘤・末梢動脈の瘤形成,閉塞性病変がみられ,手術適応となることがある.

(昭和 60年厚生省心身障害研究「川崎病に関する研究」)を改変

その他の手術3

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が多いことから,外科治療の時期を失わぬようにする必

要がある.小児例の弁置換術では人工弁の選択に苦慮す

るが生体弁は早期の石灰化を生じやすく,機械弁の使用

が一般的である.

③左室瘤

川崎病による小児期心筋梗塞の頻度は比較的高いわり

に,左室瘤形成を来たすことは少ない.本症の手術は側

副路形成が乏しく,瘤による左室機能低下,不整脈の発

生が明かな症例に限られる.

④大動脈瘤,末梢動脈瘤

冠動脈瘤のほかに上行大動脈瘤,腹部大動脈瘤,腸骨

動脈瘤,腋窩動脈瘤の発生をみることがある.ほとんど

常に冠動脈瘤の合併をみている.手術は瘤が大きなもの

や,拡大が進行するものに限られる.

⑤心臓移植

川崎病に対する心臓移植の報告世界には 10数例ある.

1996 年の Checchia らの論文では 13 例と報告されてお

り,その後,日本からも川崎病で心臓移植のために渡航

したものが 2名ほど見られる.

心臓移植は(1)著しい左室機能低下を示す症例,(2)

致死的不整脈を生じ,冠動脈末梢部の病変が強い症例に

は有効である.

小児における急性心筋梗塞の治療方針は,できるだけ

早期に再灌流させることが,急性期の治療として重要で

ある.急性心筋梗塞が疑われた時の救急外来あるいは入

院直後の初期治療は,一般的な治療とともに救命に必要

な処置や緊急冠動脈造影,再灌流療法の準備を行うこと

である.迅速な診断のもと,初期治療を実施しながら再

灌流療法の適応を決定する.

川崎病における心筋梗塞の症状をショック,嘔吐,胸

痛,呼吸困難,腹痛および不整脈などであり,特に乳幼

児では特徴的な症状がないため,心電図,心エコー図,

心筋逸脱酵素の測定などを同時に行う.

①抗ショック療法

¡酸素投与

¡塩酸モルヒネの静注

¡カテコールアミンの点滴静注

¡ニトログリセリンの静注,もしくは舌下

②血栓溶解療法

以下に述べるすべての薬剤において,小児に対する投

与量の基準値は定まっていない.このため成人投与量を

参考値として記載しており,投与に際しては症例ごとに

慎重に判断する必要がある.

全身的静脈内投与

(1)tPA(チソキナーゼ)29~43.5万単位/kg の 10 % を

静注し,残りを 60分間で点滴静注.

(2)改変型 tPA(モンテブラーゼ)2.75 万単位/kg を 2

~3 分間で静注,(パミテプラーゼ)6.5 万単位/kg

を 2~3分間で静注.

(3)ウロキナーゼ:1万単位/kg(最大 96万単位)を 30

~60分間で点滴

冠動脈内注入

(1)tPA(チソキナーゼ)25,000単位/kg ずつ 10分間で

注入し,成人一回最大投与量 640万単位まで.

(2)Pro-UK(ナサルプラーゼ)成人では 1500 単位ずつ

10 分間で注入し,成人一回最大投与量 6000 単位ま

で.

(3)ウロキナーゼ:1 万単位/kg ずつ 10 分間で注入し,

成人一回最大投与量 96万単位まで.

③再発防止のための抗凝固,抗血小板療法

(1)ヘパリン 200~400単位/kg/day 点滴静注

APTT が 1.5~2.5倍になるよう調整する.

(2)ワーファリン 0.1 mg/kg 分1

INR が 1.2~1.5程度になるよう調整する.

(3)アスピリン 3~5 mg/kg/day(最大 100 mg)

以上の治療に関する本ガイドラインの重症度分類別の

勧告として,表 15 に示す.

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 20031168

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2001-2002年度合同研究班報告)

急性心筋梗塞に対する初期(内科的)治療33

一般的方針1

心筋梗塞の症状2

初期治療法3

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本項のガイドラインは学校における生活管理指導が中

心となっている.平成 14 年度版の学校生活管理指導表

(小学生用,中学・高校生用に分けられる)は,表 16に

中学・高校生用を示す.

①急性期に冠動脈病変がないと診断されているもの

生活・運動面での制限はしない;管理指導表-発症

後 5 年以上経過していれば,「管理不要」とする.経

過観察の目安は,発症後 1 か月,2 か月,6 か月,1

年後,および 5年の時点とする.その後の管理につい

ては保護者(または本人)との協議による.

②急性期に冠動脈病変についての評価が行われていないもの

(1)急性期以降に検査が行われ,冠動脈病変がないと判

断されたもの

生活・運動面での制限はしない;①に準じる.

(2)冠動脈病変が残存していると判断されたもの(冠動

脈病変分類は本ガイドラインの分類による)

a.冠動脈造影検査が施行され病変がない(あるい

は退縮)と判断されたもの

生活・運動面での制限はしない;①に準じる.

b.冠動脈造影検査が施行されていないもの

生活,運動面での指導;③に準じる.

1.心エコー検査で小動脈瘤あるいは拡大あり

と診断されたもの,2.心エコー検査で中等瘤

ありと診断されたもの,3.心エコー検査で巨

大瘤ありと診断されたもの,に分類して指導す

る.2,3 については冠動脈造影検査による評

価が望ましい.

c.冠動脈造影検査が施行され病変が残存している

と診断されたもの

生活,運動面での指導;③に準じる.

1.小動脈瘤あるいは拡大が残存していると診

断されたもの,2.中等瘤が残存していると診

断されたもの,3.巨大瘤が残存していると診

断されたもの,に分類して指導する.

③急性期から冠動脈病変についての評価が行われているもの

(1)一過性の拡大で急性期以降には正常化したもの

生活・運動面での制限はしない;①に準じる.

(2)小動脈瘤あるいは拡大病変が残存しているもの

生活・運動面での制限はしない;管理指導表

「E 可」とする.

a.冠動脈病変が退縮すれば①に準じる.

b.冠動脈病変が退縮しなければ,発症後 2 か月,

6 か月,1 年後,その後は 1 年に 1 回は経過観

察とする.心エコー所見と冠動脈所見が必ずし

も一致しないことがあるので,一度は冠動脈造

影検査による評価が望ましい.(薬物治療につ

いては心臓専門医の判断による)

(3)中等瘤以上の冠動脈病変が残存しているもの

心臓専門医による経過観察が望ましい.

a.狭窄性病変,心筋虚血の所見がないもの

生活・運動面での制限はしない;管理指導表-

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 2003 1169

川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン

生活・運動指導44

表 15 川崎病冠動脈病変の重症度分類に対する治療の適応

¡抗血小板薬(アスピリン,ジピリダモール,パナルジン)u ClassⅠ 重症度分類 Ⅳ,Ⅴu ClassⅡ 重症度分類 Ⅲu ClassⅢ 重症度分類 Ⅰ,Ⅱ

¡抗凝固薬(ワーファリン)u ClassⅠ 重症度分類 Ⅳ,Ⅴu ClassⅡ 重症度分類 Ⅲu ClassⅢ 重症度分類 Ⅰ,Ⅱ

¡冠拡張薬(Ca 拮抗薬,β遮断薬,硝酸薬など)u ClassⅠ 重症度分類 Ⅴu ClassⅡ 重症度分類 Ⅳu ClassⅢ 重症度分類 Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ

¡抗心不全薬(ACE 阻害薬/アンギオテンシン受容体拮抗薬,β遮断薬)u ClassⅠ 重症度分類 Ⅴu ClassⅡ 重症度分類 Ⅳu ClassⅢ 重症度分類 Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ

¡冠動脈インターベンションu ClassⅠ 重症度分類 Ⅴ(b)u ClassⅡ 重症度分類 Ⅳ,Ⅴ(a)u ClassⅢ 重症度分類 Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ

¡冠動脈バイパス手術u ClassⅠ 重症度分類 Ⅴ(b)u ClassⅡ 重症度分類 Ⅴ(a)u ClassⅢ 重症度分類 Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ

Class Ⅰその治療法が有用・有効であることについて見解が広く一致している.

Class Ⅱその治療法の有用性・有効性に関する見解が一致していない場合がある.

Class Ⅲその治療法が有用・有効ではなく,不必要であるとの見解が広く一致している.

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巨大瘤以外は「E 可」とする.

薬物治療の必要性について説明し服薬を守るよ

う指導する.また,虚血時の症状,対応につい

ても指導する.退縮しないかぎり年 1回以上の

経過観察が必要である.検査は常に運動負荷心

電図の評価が必要である.巨大瘤では運動部活

動は基本的には参加しないこととする;管理指

導表「D 禁」とする.発症後 1年以降で変化が

無い場合は「E 禁」もありうる.

b.狭窄性病変,心筋虚血の所見を認めるもの

運動制限が必要;状態により「D」以上の区分

で判断する.運動部活動は「禁」とする.

運動負荷検査の評価,心筋虚血の評価などによ

り「A」~「D」区分の判断をする.服薬の重

要性について十分指導する.

カテーテル治療を行った場合は,その結果によ

り管理指導表区分を変更する.

c.心筋梗塞の既往がある場合

生活,運動面の制限は必要;状態により「A」

~「E」区分とする.基本的には運動部活動は

「禁」が望ましい.管理指導表の「A」~「E」

区分の判断は心機能評価などを参考にする.生

活面では,薬物療法による出血傾向には留意す

るよう指導する.

④冠動脈以外の病変について

(1)弁膜症

心臓専門医の評価で生活・運動面での制限の必要性に

ついて考慮する.心機能評価,手術適応評価が必要とな

る.

(2)不整脈

心臓専門医の評価で生活・運動面での制限の必要性に

ついて考慮する.心機能に問題が無く,心筋虚血の可能

性が無ければ,不整脈管理指導基準に準じる.心機能,

心筋虚血などの問題があれば,総合的に判断する.

⑤心臓手術後について

冠動脈バイパス手術,弁手術,心臓移植などの術後に

ついては,心臓専門医による経過観察及び管理指導が必

要である.

⑥予防接種はガンマグロブリン大量療法後 6 か月以降の実施が望ましい.

⑦動脈硬化予防のための生活習慣についての指導を行うことが望ましい.

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 20031170

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2001-2002年度合同研究班報告)

                    �昭和�                          中 学 校�  �  �氏名            � 男・女  �平成�  �年  �月  �日生(  �才)           �高等学校      �年      �組�

③運動部活動� ④次回受診�

(       )部� (  )年(  )か月後�可�(但し、 ) ・�禁� または異常があるとき�

【指導区分 : �A�…在宅医療・入院が必要 �B�…登校はできるが運動は不可 �C�…軽い運動は可 �D�…中等度の運動も可 �E�…強い運動も可】�

運動強度�体育活動�

バスケットボール� パス、シュート、ドリブル、フェイント�ハンドボール� パス、シュート、ドリブル� ゴールキーピング�バレーボール� パス、サービス、レシーブ、フェイント�

ドリブル、シュート、リフティング、パス、�フェイント、トラッピング、スローイング�グランドストローク、サービス、ロビング、�ボレー、サーブ・レシーブ�

ラグビー� パス、キッキング、ハンドリング� ラック、モール、スクラム、ラインアウト、タックル�

卓球� フォア・バックハンド、サービス、レシーブ�バドミントン� サービス、レシーブ、フライト�ソフトボール� スローイング、キャッチング、バッティング�野球� 投球、捕球、打撃�ゴルフ� グリップ、スイング、スタンス�柔道、剣道、(相撲、弓道、�なぎなた、レスリング)�創作ダンス、フォークダンス�現代的なリズムのダンス�雪遊び、氷上遊び�スキー、スケート、キャンプ、�登山、遠泳�水辺活動�

平成  年  月  日�

 医療機関                 .

 医  師               � 印�

文 化 的 活 動�

武 道�

ダンス�

通常の野外活動�

フォア・バックハンド、サービス、レシーブ�ハイクリア、ドロップ、ドライブ、スマッシュ�

スパイク、ブロック、連携プレー(攻撃・防御)�

水慣れ、浮く、伏し浮き、け伸びなど�

スマッシュ、力強いサーブ、レシーブ、乱打�

学校行事、その他の活動�

強い運動( Eのみ "可" )�

立ち幅跳び、負荷の少ない投てき、基本動作、軽いジャンピング�

 � � � �運� � � � �動� � � � �種� � � � �目�

カヌー、ボート、スクーバー・ダイビング�

体力の必要な長時間の活動を除く文化的活動�

      ▼体育祭、運動会、球技大会、スポーツテストなどは上記の運動強度に準ずる。�

 � � �球� � � � �技�

陸上競技�

水 泳�

(競走、跳躍、投てき)�

(クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ、�横泳ぎ)�

サッカー�

テニス�

基本の運動(運動遊び)�(投げる、打つ、捕る、蹴る、跳ぶ)�

簡単な技の練習、ランニングからの支持、ジャンプ・回転系などの技�

長距離走、短距離走の競走、競技、タイムレース�

最大限の持久運動、最大限のスピードでの運動、最大筋力での運動�体の柔らかさ及び巧みな動きを高める運動、力強い動きを高める運�動、動きを持続する能力を高める運動�

体操運動、簡単なマット運動、バランス運動、簡単な跳躍、回転系の�技� 演技、競技会、連続的な技�

ゴールキーピング、タックル�

競泳、競技、タイムレース、飛び込み�

ジョギング、短い助走での跳躍�

ドリブルシュート、連携プレー(攻撃・防御)�

ボレーシュート、連携プレー(攻撃・防御)�

(�

身�体�の�強�い�接�触�を�伴�わ�な�い�も�の�)�

フ�ッ�ト�ワ�ー�

ク�を�伴�う�運�動�

走塁、連携プレー、ランニングキャッチ�

ドリブル・ヘディングシュート、�

簡易ゴルフ(グランドゴルフなど)�

タ�イ�ム�レ�

ス�・�応�用�練�習�

簡�易�ゲ�ー�

ー�

ー�

ム�・�ゲ�

ム�・�競�技�・�

(マット、鉄棒、平均台、跳び箱)�

体つく�り運動�

体ほぐしの運動�体力を高める運動�

スキー・スケートの歩行やゆっくりな滑走�

走塁、連携プレー、ランニングキャッチ�

ゆっくりな泳ぎ�

パス、キッキング、ハンドリング�

ドリブルシュート、連携プレー(攻撃・防御)�

ラ�ン�ニ�ン�グ�の�な�い�ゆ�っ�く�り�な�運�動�

いろいろな手軽な運動、リズミカルな運動、�

〔平成14年度版〕�

軽い運動( C・D・E は "可" )�

②指導区分�

要管理 : A・B・C・D・E�

中等度の運動( D・E は "可" )�

管理不要�

①診断名(所見名)

      学 校 生 活 管 理 指 導 表 (中学・高校生用)�

器械運動�

体力を相当使って吹く楽器(トランペット、トロンボーン、オーボ�エ、バスーン、ホルンなど)、リズムのかなり速い曲の演奏や指揮、行進を伴うマーチングバンドなど�

礼儀作法、基本動作、受け身、素振り�

即興表現、手振り、ステップ�

水・雪・氷上遊び�

簡単な技・形の練習�

サーフィン、ウインドサーフィン�

野外活動�

右の強い活動を除くほとんどの文化的活動�

      ▼指導区分"E"以外の生徒の遠足、林間学校、臨海学校、宿泊学習などへの参加について不明な場合は学校医・主治医と相談する。�

応用練習、試合�

リズムダンス、創作ダンス、ダンス発表会�リズミカルな動きを伴うダンス(ロックやサンバを除く)、日本の民�謡の踊りなど�

登山、遠泳、潜水�平地歩きのハイキング、水に浸かり遊ぶ�

表 16 学校生活管理指導表―中学・高校生用(平成14年度版)

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経過観察のガイドラインは,急性期(第 30 病日前後

まで)に心エコー検査が定期的に行われた症例を対象と

したものである.循環器医を対象とした詳細な心臓血管

後遺症に対するガイドラインを示した.

A-1.冠動脈の拡大性変化を認めない群:急性期の冠

動脈径はコントロール群に比べて拡大傾向にあ

るとされているが,心エコー検査で局所性の拡

大を認めなかった症例とする.

A-2.第 30 病日までに正常化する軽度の一過性拡大

を認めた群.

A-3.第 30病日において小動脈瘤を残した群.

A-4.第 30病日において中等瘤を残した群.

A-5.第 30病日において巨大瘤を残した群.

この心エコー分類と心臓血管病変の重症度分類(表

2-b)との関係を図 4 に示した.

A-1:心臓血管病変の重症度分類Ⅰに該当する.

現時点では冠動脈病変に関しては問題ないものと考え

られる.本群の症例については,発症後 5年までは経過

を観察する.経過観察は発症後 1か月,2か月,6か月,

1 年および 5 年の時点とする.それ以降は家族・本人と

主治医との協議によって,個々に対応する.検査項目と

しては,心電図,心エコー,必要に応じて胸部 X 線写

真を加える.最終チェック時に負荷心電図検査を行うの

が望ましい.

A-2:心臓血管病変の重症度分類Ⅱに該当する.

この群も A-1 群と同様の状況下にあるが,現時点で

は冠動脈病変に関しては問題ないものと考えられる.経

過観察・検査項目は A-1に準ずる.

A-3:心臓血管病変の重症度分類Ⅲの軽症に該当する.

この群に関してはエビデンスが少ないため,症例ごと

に経過観察期間を定めなければならないが,最大の冠動

脈内径が 4 mm 以下の症例では血管内超音波検査法を用

いた検討で,内中膜肥厚はないか,あっても軽微なこと

が示されており,冠動脈病変を残す頻度は希と考えられ

る.原則としては,拡大所見が消失するまでは 3か月ご

とに経過観察を行い,それ以後は小学校入学時まで 1年

ごとに確認した後,小学校 4年時,中学校入学時,高等

学校入学時まで観察を続ける.検査項目は A-1 に準ず

るが,検査可能な年齢からは負荷心電図検査を追加する.

A-4:心臓血管病変の重症度分類Ⅲ,Ⅳ,Ⅴの一部,に該当する.

この群の長期予後は多岐にわたるため,個々の症例に

応じて経過観察期間を定めなければならない.

経過観察に関しては,心エコー上拡大所見が消失する

までは 1~3 か月ごとに心電図,心エコー,必要時胸部

X 線写真,可能であれば負荷心電図で経過を観察する.

それ以後はおおむね 1年ごとに経過観察を続ける.発症

後 1 年を経過しても瘤を残した症例では引き続き 3~6

か月ごとに経過を見る.選択的冠動脈造影検査は症例ご

とに考慮されるが,急性期の冠動脈内径が 6 mm 以上の

症例では本検査は必須で,少なくとも川崎病回復期早期

と心エコー上冠動脈の拡大所見が消失した時点とで行

い,瘤を残した症例では適宜追加検査を行う.

regression 群を含め,狭窄性病変への進行を知るために

2~5 年ごとに負荷心筋シンチグラフィ,MRI,MRA,

Multi-slice spiral CT などで経過を追跡する.

A-5:心臓血管病変の重症度分類Ⅳ,Ⅴに該当する.

この群に関しては完全な regression はないと考えられ

ており,高率に冠動脈の閉塞性病変に進展するため,症

例ごとに order made の計画を立てなければならない.

この群では,すべての症例において川崎病回復期早期

に初回の選択的冠動脈造影検査を行い,病変の広がりを

確認しておく必要がある.臨床症状を詳細に検討し,心

電図・負荷心電図・心エコー・負荷心筋シンチグラフ

ィ・選択的冠動脈造影・MRI・MRA・Multi-slice spiral

CT などの画像検査をうまく組み合わせて経過観察を行

わなければならない.観察時期は個々の症例で異なるが,

概ね発症後 1年間は 1~3か月ごとに,それ以後は 3~6

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 2003 1171

川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン

経過観察Ⅴ

心エコー所見に基づく冠動脈病変の重症度分類1

A-1

A-2

A-3

A-4

A-5

Ⅰ�

Ⅱ�

Ⅲ�

Ⅳ�

Ⅴ�

図 4 心エコー分類(左)と心臓血管病変の重症度分類(右)との関係

心エコー所見による重症度分類に基づいた経過観察2

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か月ごとにチェックする.

現在,成人期に達した川崎病患者の治療・予後につい

て,大規模無作為比較試験などエビデンスレベルの高い

科学的に検討されたデータはなく,取り扱いに関してス

タンダードなものはない.

成人期においては,小児期の診断の中心的存在であっ

た通常の経胸壁心エコーでは評価が困難なことが多く,

以下のような非侵襲的な評価法または,冠動脈造影が必

要となる.

¡運動負荷心電図または,運動負荷心筋シンチグラフィ

¡ホルター心電図

¡経食道心エコー

¡MRA(magnetic resonance coronary angiography

¡Multi-slice spiral CT

小児期の冠動脈瘤の有無により,以下のような経過観

察を行う.

①小児期に冠動脈瘤のない症例

急性期以後に正常心エコーの患者は治療の必要はない

とされている.しかし,中年以降に動脈硬化の進行をも

たらす可能性は否定できない.したがって,家族・本人

と主治医との協議によって個々に対応し,希望があれば

成人期にも数年に 1回程度の非侵襲的な検査での経過観

察をしても良い.

②小児期より冠動脈瘤があるが無症状の症例

長期間の心危険因子層別化や管理が必要である.成人

期にも冠動脈瘤があるが無症状の症例でも,毎年 2~3

回の非侵襲的な検査と数年に 1回の冠動脈造影検査が望

ましい.

③成人期に狭心症,心筋梗塞,心不全および重症不整脈のある症例

成人期に狭心症,心筋梗塞,心不全および重症不整脈

のある症例は,川崎病由来ではない場合と同様の経過観

察が必要である.定期的診察と年 3~4 回の非侵襲的な

検査の他に,適宜冠動脈造影検査を施行することが望ま

しい.

④川崎病既往の不明な成人冠動脈瘤症例

若年成人で冠動脈瘤のある症例の多くは,川崎病既往

が不明である.しかし,他の二次性冠動脈瘤病変を有す

る例を除外できれば川崎病後遺症と診断してよいと思わ

れる.基本的には若年成人で冠動脈瘤のある症例に対し

ては,上記②の小児期に冠動脈瘤のある症例に従うもの

である.

①小児期に冠動脈瘤のない症例

小児期に冠動脈瘤のない症例では,アスピリンなどの

抗血小板薬の内服は中止しても構わない.

②小児期より冠動脈瘤があるが無症状の症例

小児期より冠動脈瘤があるが無症状の症例では,原則

的にはアスピリンなどの内服が必要である.また,肥満

の防止や禁煙の推進など生活習慣の改善だけでなく,糖

尿病,高脂血症,高尿酸血症といった冠危険因子に対す

る予防と適切な治療が必要である.

③成人期に狭心症,心筋梗塞,心不全および重症不整脈のある症例

成人期に狭心症,心筋梗塞,心不全および重症不整脈

のある症例は,川崎病由来ではない場合と同様の治療が

必要である.アスピリンの他に,抗血小板剤,抗狭心薬,

利尿薬などの抗心不全薬,抗不整脈薬を必要とする場合

がある.運動負荷心電図や運動負荷心筋シンチグラフィ

などで虚血が証明されれば,適当な PCI を行う.

④川崎病既往の不明な成人冠動脈瘤症例

基本的には若年成人で冠動脈瘤のある症例に対して

は,上記②または③に従う.

一般内科医においては,川崎病急性期の病態の理解は

不十分であり,特に循環器内科医が成人川崎病の病態を

深く理解することが重要になりつつあると考える.

心筋梗塞や心血管症状のある若年成人者をみたら,幼

少時に川崎病の既往があるか確認するべきである.

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 20031172

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2001-2002年度合同研究班報告)

成人期の対応,循環器内科医との連携Ⅵ

診 断1

治 療2

内科医における川崎病の理解3

若年者冠動脈瘤・心筋梗塞と川崎病4

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川崎病の病理所見で興味深いことは,著明な動脈硬化

にもかかわらず,高度の粥状動脈硬化病変はみられない.

川崎病心後遺症者の冠動脈病変のリモデリングは,川崎

病発症数年後も継続し,内膜増生と新生血管が認められ

る.

小児科での経過観察後,成人した症例に関しては,そ

の臨床経過と検査所見を内科と小児科で共有することが

必要である.

Circulation Journal Vol. 67, Suppl. IV, 2003 1173

川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン

まとめ(表 17)Ⅶ

小児科医と循環器内科医との連携6

表 17 ガイドラインのまとめ

重 症 度 病   態 診断・経過観察 治   療 生活・運動指導*

Ⅰ 拡大性変化がなかった群

川崎病既往が動脈硬化性病変に進展する要因となる可能性については,明かなエビデンスはない.

発症後 5 年までは経過を観察する.経過観察は 30病日,60 病日,6 か月,1年および発症後 5 年の時点とし,心電図,心エコー,必要に応じて胸部 X 線写真を行う.最終チェック時に負荷心電図を行うのが望ましい.

遠隔期には原則として,治療は必要としない.急性期以降に冠動脈瘤のない症例では,アスピリンなどの抗血小板薬の内服は中止しても構わない.

生活・運動面での制限はしない;管理指導表-発症後5 年以上経過していれば,「管理不要」とする.その後の管理については保護者(または本人)との協議による.生活習慣病の重複を生涯に渡り避ける様にすべき点が重要である.特に中学,高校生に対する生活習慣病予防の教育(脂質の測定,禁煙,肥満予防など)が必要である.

Ⅱ 急性期の一過性拡大群

急性期の冠動脈では,組織学的に血管炎が中膜外層から始まり,内膜に及ぶのが認められる.心エコーで瀰漫性の冠動脈の拡大がみられ,30 病日までに正常径にもどる群.

Ⅲ Regression 群

発症から 1~2 年後に起こることが多く,小~中の動脈瘤でしばしばみられる.退縮部位における冠動脈拡張能の低下,血管内皮機能の異常や内膜の著明な肥厚が報告されている.

原則としては,小学校入学時まで 1 年ごとに心電図,心エコー,必要に応じて胸部 X 線写真を行う.その後,小学校 4 年時,中学校入学時,高等学校入学時まで負荷心電図を含めた観察を続ける.急性期の冠動脈瘤の内径が大きい症例では種々の画像検査**を組み合わせて経過を追跡する.

生活・運動面での制限はしない;Ⅰ,Ⅱに準じる.

Ⅳ 冠動脈瘤の残存群

回復期以後に残存する瘤が後遺症とされる.組織的には炎症が進行し内弾性板が破綻し,汎血管炎となる.その後,内,外弾性板が断片状となり動脈圧に耐えられなくなって破綻し瘤の形成に至る.

負荷心電図および種々の画像検査**を組み合わせて経過観察を行わなければならない.特に,急性期の冠動脈瘤の内径が大きい症例では狭窄性病変への進行を知るために 2~5 年ごとに負荷心筋シンチグラフィを行うことが望ましい.

アスピリンなど抗血小板薬の服用を継続する.巨大冠動脈瘤形成例,冠動脈瘤内血栓例に抗凝固薬を必要とする場合がある.

生活・運動面での制限はしない;管理指導表-「E 可」とする.巨大瘤;管理指導表-「D 禁」とし,発症後1 年以降で変化が無い場合は「E 禁」もありうる.

Ⅴ-a

冠動脈狭窄性病変群

(虚血所見のない群)

中等以上の瘤において発症後比較的早期に血栓により閉塞するものがみられる.突然死がある一方,無症状の閉塞も約 2/3 を占めている.閉塞後に再疎通血管や側副血行路が発達し心筋虚血所見の改善を見る場合も多い.遠隔期に出現,進行する局所性狭窄は右冠動脈に比し,著しく左冠動脈,とりわけ左前下行枝近位部,主幹部に出現頻度が高い.狭窄や閉塞に進展する可能性は瘤が大きい程高く,長期経過観察で狭窄が出現している可能性がある.

一生を通じての経過観察が必要であり,症例ごとにorder made の計画を立てなければならない.負荷心電図および種々の画像検査**を組み合わせて経過観察を行わなければならない.観察時期は個々の症例で異なるが,概ね 3~6 か月ごとにチェックする.

アスピリンなど抗血小板薬の服用を継続する.虚血発作,心不全の予防として,Ca 拮抗薬,硝酸薬,β遮断薬,ACE 阻害薬,アンギオテンシン受容体拮抗薬を併用する.

生活・運動面での制限はしない;管理指導表-巨大瘤以外は「E 可」とする.薬物治療の必要性について説明し服薬を守るよう指導する.また,虚血時の症状,対応についても指導する.退縮しないかぎり年 1 回以上の経過観察が必要である.

Ⅴ-b

冠動脈狭窄性病変群

(虚血所見を有する群)

Ⅴ-aと同様に薬物療法を行い.運動負荷心電図や負荷心筋シンチグラフィなどで虚血が証明されれば,冠動脈バイパス術,または,適当な冠動脈インターベンションを考慮する.

運動制限が必要;状態により「D」以上の区分で判断する.運動部活動は「禁」とする.運動負荷検査の評価,心筋虚血の評価などにより「A」~「D」区分の判断をする.服薬の重要性について十分指導する.

**表 16を参照.

**画像検査:心エコー(負荷を含む)・負荷心筋シンチグラフィ・選択的冠動脈造影・MRI・MRA・Multi-slice spiral CT など

成人型心筋梗塞との比較5