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第 1章 古代地中海世界・インド・東南アジア 【第 3講】ギリシア世界の発展と衰退
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ポリスの発展
Ⅰ アテネ民主政の展開とペルシア戦争 商業の発達や貨幣経済の進展で富裕な平民の出現
→ 武器を自弁した平民がファランクス(密集隊形)の戦法をとる重装歩兵として戦争
で活躍する
→ 政治を独占する貴族に対して参政権を要求
(平民の権利拡大、貴族政から民主政へ)
① ドラコンの立法(前 7世紀後半) 立法者ドラコンが慣習法を成文化。 → 平民にも法が公開される
② ソロンの改革(前 594年)
(1) 負債の帳消しと債務奴隷の禁止
市民の奴隷への転落を防止し、重装歩兵軍の弱体化を防ぐ。
(2) 財産政治
財産に応じて軍務と参政権を規定。 → 平民の政治参加の道が開かれる
③ ペイシストラトスの僭主せんしゅ
政治(前 561~前 528年) 僭主(平民の不満を利用して非合法に政権を握った独裁者)のペイシストラトスが、貴
族の土地を没収して無産市民に分配するなど中小農民を保護。 → 貴族政に打撃
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④ クレイステネスの改革(前 508年)
(1) 部族制改革
貴族の基盤であった血縁にもとづく部族制を廃止し、デーモス(区)単位の地縁的部族
制に移行。 → 貴族政再現の防止
(2) オストラシズム(陶片追放)
僭主になる可能性のある人物の名をオストラコンと呼ばれる陶片に記して投票する
制度。 → 僭主政再現の防止 → アテネ民主政の基礎が確立
⑤ ペルシア戦争(前 500~前449年)
(1) 概要
ギリシア諸ポリスとアケメネス朝
ペルシアとの戦争。
(2) 原因
小アジアのイオニア植民市がミレ
トスを中心にアケメネス朝(ダレイ
オス 1世時代)の支配に対して反乱。
(3) 経過
• マラトンの戦い(前 490年)
… アテネの重装歩兵軍が勝利
• テルモピレーの戦い(前 480年) … スパルタが大敗
• サラミスの海戦(前 480年)
… テミストクレス率いるアテネ海軍が勝利
• プラタイア(プラテーエ)の戦い(前 479年) … アテネ・スパルタ連合軍の勝利
ペルシア戦争
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(4) 結果
ギリシアの勝利
→ アテネの覇権(アケメネス朝の再攻にそなえたデロス同盟の盟主となる)
⑥ ペリクレス時代(前 443~前 429年) サラミスの海戦で三段櫂
かい
船せん
の漕ぎ手として活躍した無産市民に、戦後に参政権を付与。 →将軍ペリクレスのもとで民主政治が完成
※ アテネ民主政の特徴
• 全成年男性市民で構成される民会を最高機関とする直接民主政
• 奴隷制の存在を前提とする
• 女性・奴隷・在留外人に参政権なし
Ⅱ ポリス社会の衰退
① ペロポネソス戦争(前 431~前 404年) • アテネ中心のデロス同盟とスパルタ中心のペロポネソス同盟との間の戦争
• 戦争中、デマゴーゴス(デマゴーグ)に扇動されて衆愚政治に陥ったアテネが敗北。
② ペロポネソス戦争後 • ポリス間の抗争が常態化
• スパルタが覇権を握るも、まもなくテーベ(テーバイ)(アイオリス人のポリス)に覇
権が移る。
→ 多年の従軍や貧富の差の拡大で、重装歩兵の担い手である中小農民が没落。
→ 傭兵の流行 = ポリス社会の基礎であった市民皆兵の原則の崩壊。
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ヘレニズムとイラン世界
Ⅰ マケドニアの台頭 北方のギリシア人国家のマケドニアがフィリッポス(フィリップ)2 世のもとで強大化。
→ カイロネイアの戦いでアテネ・テーベ連合軍を破る(前 338年)
→ 翌年、コリントス同盟(ヘラス同盟)を結成し、スパルタを除く全ギリシアのポリスを
支配下におく
Ⅱ ヘレニズム時代
① アレクサンドロス大王の帝国時代 フィリッポス 2世の子アレクサンドロス(アレクサンダー)大王が東方(ペルシア)遠征
開始(前 334年)。
(1) イッソスの戦い(前 333年)・ア
ルベラ(ガウガメラ)の戦い(前331
年)でアケメネス朝のダレイオス
3世を破る。→ アケメネス朝滅
亡(前 330年)(ギリシア世界とオ
リエント世界を統一)
(2) ギリシア・エジプトから中央アジア・インダス川流域にいたる大帝国を建設。
(帝国の各地に自らの名を冠したアレクサンドリア市を建設)
(3) バビロンでアレクサンドロス大王の急死(前 323年)。 → 帝国分裂
ヘレニズム時代
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② 後継のギリシア系国家(ヘレニズム国家)の分立時代 アレクサンドロス大王の「後継者(ディアドコイ)」を称する部将たちが分立・抗争。
おもな後継国家
• プトレマイオス朝エジプト(前 304~前 30年)
都 … アレクサンドリア
ヘレニズム文化の中心
• セレウコス朝シリア(前 312~前 63年)
都 … セレウキア → アンティオキア
領域最大 → パルティア(イラン)自立・バクトリア(中央アジア)自立
• アンティゴノス朝マケドニア(前 306~前 168年)
→いずれもローマによって滅ぼされる
Ⅲ イラン世界の展開
イランを支配した勢力の変遷
メディア → アケメネス朝 → アレクサンドロス帝国 → セレウコス朝
-→ パルティア → ササン朝 → イスラーム諸国
→ バクトリア
① バクトリア(前 255年頃~前 139年) • 中央アジアのアム川上流域でセレウコス朝から自立したギリシア系国家
• ヘレニズム文化を継承
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② パルティア(アルサケス朝)(前 248 年頃~後 224年) 都 … クテシフォン
• アルサケスがセレウコス朝から自立してイラン高原に建国したイラン系遊牧民の
国家
• 中国名は安息(開祖アルサケスの名にちなむ)
• オアシスの道(絹の道)の要衝を占め、東西交易で繁栄
• セレウコス朝滅亡後は、国境を接したローマと抗争(ローマのクラッススが戦死)
③ ササン朝(224~651年) 都 … クテシフォン
アルダシール(アルデシール)1
世(位 224~241年)がパルティア
を滅ぼしてイラン高原に建国した
イラン系農耕民の国家。
(1) シャープール 1世(位 241~272年)
• ローマ帝国と抗争し、軍人皇帝ウ(ヴ)ァレリアヌスを捕虜にする
• 西北インドのクシャーナ朝を攻撃し、衰退させる
(2) ホスロー1世(位 531~579年) … ササン朝最盛期の王
• 東ローマ(ビザンツ)帝国の皇帝ユスティニアヌスと抗争
• 突厥と同盟し、遊牧民エフタルを挟撃して滅ぼす
(3) ササン朝の滅亡
ニハーヴァンドの戦い(642年)でイスラーム教徒のアラブ人に大敗 → 滅亡
ササン朝