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1 トヨタ生産方式 テキスト中部学院大学 経営学部 國澤英雄

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トヨタ生産方式

(テキスト)

中部学院大学 経営学部

國澤英雄

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トヨタ生産方式目次 1.トヨタ生産方式の考え方

1.1 原価低減の重要性 1.2 トヨタ生産方式の基本的な考え方 1.3 ムダの認識 1.4 ムダの種類 1.5 能率と企業の効率 1.6 トヨタ生産方式の2つの柱

2.ジャスト・イン・タイム

2.1 平準化生産 2.2 ジャスト・イン・タイムの基本的な原則 2.3 自働化 2.4 自働化の補助手段 2.5 かんばん 2.6 かんばんのルール 2.7 運搬

3.標準作業

3.1 標準作業 3.2 標準手持ちの原則 3.3 標準作業と改善 3.4 標準作業の作成要領

3.4.1 工程別能力表の作成 3.4.2 標準作業組合せ表の作成 3.4.3 標準作業表の作成

3.5 要素作業分析 3.6 作業改善と設備改善 3.7 作業改善の着眼点 3.8 動作経済の原則 3.9 生産管理板 3.10 部品置場と表示方法 3.11 標準作業に基づく職場管理のポイント 3.12 「問題1」標準作業の作成 3.13 「問題2」標準作業の作成

1010121314151624

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1. トヨタ生産方式の考え方 1.1 原価低減の重要性 ①原価低減の必要性

・ 社会との調和を図りながら、利益を得て、永続的に繁栄して、私たちの生活の向

上を図ることが大切である。そのために原価低減を推進するのである。 ②売価と原価

売価=原価+利益 需要>供給 原価主義でもよかった (売り手市場)

利益=売値-原価 需要<供給 原価低減が必要 (買い手市場)

・売価を上げる…売価は市場の実勢で決まる 市場競争が厳しく困難な場合が多い ・原価を下げる…原価低減が利益を大きく増大させる 努力で原価低減ができる

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1.2 トヨタ生産方式の基本的な考え方 「ムダを徹底的に排除し、効率的なジャスト・イン・タイムで物を造っていく」 ①トヨタ生産方式が目指すもの (1)ムダを徹底的に排除して、生産原価の低減をはかる (2)製造品質の保証・確保をしやすくする

(3) 人間性の尊重・信頼・相互援助を基礎として、全員がその能力をフルに発揮

できる職場をつくる (4)流動的な市場に即応できる現場体制をつくる ②物の造り方と原価

・ 原価は物の造り方・作業のやり方によって左右される。この物の造り方の技術を

製造技術と呼んでいる

原価主義が取れない 売価は市場の実勢で決まる 利益を上げなければ、企業活動は成り立たない ・物の造り方を色々な角度から調べ、ムダを徹底的に排除して製造原価を低減する

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1.3 ムダの認識 ムダとは「原価のみを高める 生産の諸要素」である

①動きと働き

作業=仕事+ムダ 仕事とは 付加価値を高めるもの

ムダとは 〃 を高めないもの

②仕事とムダ

③生産のリードタイム

生産のリードタイム=加工時間+停滞時間

物を切削・組付け・変形・変質させ付加価値を高めること

加工時間:停滞時間=1:100~200(ひどい所)

停滞時間を縮めようとすると色々なムダが顕在化してくる

技能員 の動作

ムダ 作

正味作業

付加価値のない 付随作業

生産化活動の中で、仕事を成

し遂げる時、作業の動作を細

かく観察すると、多かれ少な

かれ、3つの部分に分けるこ

とができる

・ ムダ ・ 付随作業 ・ 正味作業

物に付加価値を高めないもので、物

が停滞(在庫)・運搬・検査の状態

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④人の仕事と機械の仕事

・ 作業改善と設備改善

現状

改善後

セット 保持

スポット

セット 保持

スポット

セット 保持

スポット

セット

スポット

セット

スポット

セット

スポット

セット

スポット

以下のように改善することにより、手持ち作業

の時間で、別の作業ができるようになる

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1.4 ムダの種類

①ムダの種類

・ 作りすぎのムダ

・在庫のムダ

・ 手待ちのムダ

・ 動作のムダ

・ 運搬のムダ

・ 不良手直しのムダ

・ 加工そのもののムダ

②作りすぎにより発生するムダ

・ 工程の問題点とかムダを隠してしまう

・ 作りすぎによるムダを無くすると、問題点やムダが浮き彫りになる

・ 作りすぎのムダは、次から次へとムダを呼び、企業効率に大きな影響を与える

③作りすぎが発生する理由

(1)機械故障・不良・欠勤・変更などの異常からくるもの

(2)技能員が多い

安心賃、作業のバランスが正しく取れてない

会社に対して請負の考え方

(3)負荷量のバラツキ

(4)仕組みの悪さからくるもの

工程の組み方・ロット生産

(5)誤った稼動率の向上と見掛けの能率向上

(6)ラインを止めることは罪悪だという考え方

(1) 材料・部品の先喰い (2) 電気・エアー・油などのエネルギーの浪費 (3) パレット・箱などの増加 (4) 運搬車・リフトなどの増加 (5) 置場・倉庫などの新設 (6) 在庫管理のための工数と機器の増加 (7) その他

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1.5 能率と企業の効率

①能率と効率

能率と効率は異なる。能率を上げても企業の効率が低下するようではいけない。

生産必要数が効率を上げる大前提となる。

②真の能率と見かけの能率

見かけの能率向上は、原価低減に結びつかない

能率の向上は、原価低減に結びついて役に立つ

③稼動率と可動率

稼動率とは、必要数を造るのに働かせる時間であり、その率は生産量により増減

する

可動率とは、必要な時に常に設備機械が可動することであり、常に 100%が目標

機械を止めると稼動率が下がり、損だとうい考えは間違い。売れ行きと稼動率は

直結していなくてはいけない。造っても売れない状況で、稼動率を向上すること

は正しい選択ではない。

・能率の向上は、原価低減に結びついてはじめて意味がある ・そのために必要なものを、いかに少ない人数で作ったかという考え方で進めな

くてはいけない

・見かけの能率向上 従来 10 人で 100 個 改善 10 人で 120 個 ・真の能率向上 従来 10 人で 100 個 改善 8 人で 100 個

20%の能率向上

20%の能率向上

メインライン

サブ

サブ サブ サブ

サブ

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1.6 トヨタ生産方式の2本の柱

①トヨタ生産方式の2本の柱

ジャスト・イン・タイム…必要な時に、必要な物を、必要なだけ造る(運ぶ)

自働化……………………後工程へ不良品を流さない

②ジャスト・イン・タイム生産の考え方と原則

ジャスト・イン・タイムとは、必要な時に、必要な物を、必要なだけ造る(運ぶ)

これにより、現場からムダを無くし、人の働きを集めることである

ジャスト・

イン・タイム

(1)必要数で ライン タクトを 決定

(2) 後工程 引き取り

(3)工程を 流れに する

かんばんと運搬

動脈と自律神経

(前提条件) 平準化生産

ムダの排除

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2. ジャスト・イン・タイム

2.1 平準化生産

①平準化生産とは

平準化生産とは、生産量・種類・時間のすべてを平均化して物を造ることである

生産にバラツキがあればある程、ジャスト・イン・タイムは困難となり、ムダが発

生する(ダンゴ生産)

Max

Min

平準化

生産量

時間

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②平準化生産とダンゴ生産

車種 生産量 直当り数 タクトタイム パターンA車 9,600台 240台 2分  ○  ○  ○  ○B車 4,800台 120台 4分    △     △C車 2,400台 60台 8分       ×合計 16,800台 420台 1.1分

(ダンゴ生産)

○○○

○○○○

△ △ △ △

××

A

B

C

○○ ○ ○× △△ △ △× ○ ○○○

(平準化生産)

△× ×

○○○

○○○○

△ △ △ △

××

A

B

C

○○ ○ ○△ △△○○ ○ ○

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2.2 ジャスト・イン・タイムの基本的な原則

必要な時に、必要な物を、必要なだけ造る(運ぶ)

①必要数によってラインタクトを決定する

・ 必要な物を、必要なスピードで、必要なだけ造るということ

・ 売れ行きにより、生産必要数は変化する

・ 売れに結びついた生産をする

②後工程の引取り

・ 終工程に生産計画を指示し、後工程が使った分だけ、前工程に引取りに行き、

前工程は引き取られた分だけ作る

③工程を流れとする

・ 品物を1つ1つ、次々に工程を進むように流れとして工程を組むこと

・ これは多数で構成する工程でも、1人の工程でも同じ

<流れ生産の条件>

工程順に設備を並べる

1つずつ物を流す

同期させる

<多工程持ちと細くて速い流れ>

・ 多台持ちは工程間に仕掛品を多く持つことになり、手持ちが多く、リードタイ

ムが長くなる

・ 1つ流しで、多工程持ちは、品物の進みが早く、リードタイムが短くなる

ラインは 多工程持ち にする

技能員の多能工化 立ち作業

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2.3 自働化

①自働化と自動化の相違

自働化 自動化省人化 省力化

異常があったら機械自身が判断して止まる 誰かがスイッチを切らない限り動き続ける

不良が出ない 不良が多い機械・型・治具が壊れない 故障が多い問題がはっきりする 問題が多く原因を見つけ難い再発防止ができる 人手でカバーするため再発防止が遅れる

・ 70~80 年前に豊田佐吉が作った自動織機は、何千何万とある縦糸が、1 本切れ

ても機械が止まるようになっていた

②もう一つの自働化

・ ラインにおける自働化

イ. 標準作業どうりに仕事ができなければ、呼び出しボタンを押してラインを

止める。

ロ.それをアンドンで表示して、改善に結びつける

ハ.改善し、歯止めをすれば、それを標準作業に組み込んでいく

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2.4 自働化の補助手段

①ポカヨケ(FP)

・品質を工程で造り込み、不良品を後工程に送らないために、作業ミス・怪我・

不良品およびその他多くの不具合について、いちいち気を配っていなくても、自

然に取り除いてくれるとか、不良品を造らないようにしたりする仕掛け

②定位置停止方式

・ 技能員が何らかの理由で、作業遅れになったと感じたとき、ライン停止の信号

を送ると、ラインがいつも同じ場所で停止するようにしたもの

③目で見る管理(アンドン)

・ 作業中に問題が発生したら即時に知らせることが必要である。そのため管理・監

督者が、管理の道具として、知りたい内容がわかるようにしたものである。

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2.5 かんばん

①かんばんの役割:造りすぎのムダ防止

1.生産・運搬の指示情報

・ かんばんには品名・生産量(時間)・順序・運搬先が書いてあり、何をどれ

だけ、いつまでに生産して、運搬したらよいかわかる

2.目で見る管理

a.造りすぎの抑制

余分に造ることができない

生産の優先順位がわかる

b.工程の遅れ・進みの検知

工程の管理が簡単にできる

・ 標準作業の遵守状況 ・後工程の作業の進捗状況

・ 自工程の能力把握 ・ 〃 の緊急度

・ 〃 の在庫状況 ・自工程作業の優先順位

3.工程改善・作業改善の道具

・ かんばんを減らすことにより、隠れていた問題がわかる

②かんばんの種類

工程間かんばん(流れ生産のもの)

仕掛けかんばん

信号かんばん(ロット生産のもの)

かんばん

工程間引取りかんばん

引取りかんばん

外注部品納入かんばん

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<仕掛けかんばん>

工程内かんばん(1品1葉)

SDコード 発行枚数(背番号)

後工程名

仕掛数 容器 完成品置場

工程名 仕 掛 か ん ば ん

組立て工程のように専用ラインであったり、複数の品物を生産しても、段取り替えが実質ゼロに近いラインで用いる

品番・品名

信号かんばん(ロット)

ライン 置場

品  番品  名

完成品置場

材料置場

ロットサイズ(仕掛数)

収容数

容器

後工程名

基準数

プレス・ダイキャストのように、段取り替えに若干時間のかかるものに、ロット生産のものに用いる

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<引取りかんばん>

工程間引取りかんばん

SDコード 発行枚数(背番号)

容器

前工程置場 後工程置場 収容数

工 程 間 引 取 り か ん ば ん

組立てラインでは、機械加工・プレス・塗装・メッキ。樹脂成形など多くの前工程から、部品を集めてこなくてはいけない。これらの部品を集めるためのかんばん

品  番品  名

外注部品引取りかんばんメーカー名 荷姿 納入サイクル 納入時間 ライン置場 発行枚数

収容数 SDコード 受入置場(背番号)

メーカー番号 品番・品名 受入口

工程間引取りかんばんと同じ考え方だが、前工程が他の会社の場合に用いる

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2.6 かんばんのルール

①仕掛かんばんのルール

(1)外れたかんばんの分だけ、外れた順に物を造る

(2)かんばんと物は、必ず一緒に流す

(3)かんばんの無い物は、絶対に造らない

②引取りかんばんのルール

(1)部品箱の 初の一つに手をかけたら、かんばんを外す

(2)外れたかんばんで、前工程に取りに行くこと

(3)取りに行った先でのストアで、工程内かんばんと差し替える

(4)かんばんの無い物は、絶対に運ばないこと

③かんばん運用上の注意事項

(1)かんばん 1枚当りのロットを、できるだけ小さくすること

(2)看板必要枚数は、必要以上に多くしないこと

(3)かんばんは、できるだけこまめに出し、こまめに回収すること

(4)100%と良品とみなす

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かんばんの廻し方

2 仕掛指示  となる

A

B

C

A

B

C

①指定の場所に置く

④運ぶ

②かんばんを持って取りに行く

前 工 程

3 物と一緒に  流れる

1 仕掛かんばん  が外れる

c a

①~④ 引取りかんばんの流れ

1 ~ 3 引取りかんばんの流れ

③かんばんを  差し替える

仕掛けかんばんの流れ

引取りかんばんの流れ

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④納入のサイクル

納入サイクルとは

(X) - (Y) - (Z)

1 - 1 - 1

2 - 1 - 1

<参考> サイクル 月 火 水

1-1-1 ○ ○ ○ 1-2-1 ① ○ ○ ○

② ○ ○ ○ 1-2-2 ① ○ ○ ○ ② ○ ○ ○ 1-4-2 2-1-1 ○ ○

かんばん持ち帰り時、何回目

に納入するか

1日に何回納入するか

何日に納入するか 2のとき…2日に1度 3のとき…3日に 〃

① ○ ○ ○ ② ○ ○ ○ ③ ○ ○ ○ ④ ○ ○ ○

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⑤かんばんの回転枚数

(1)かんばんの回転 例:納入サイクル 1-4-2

在庫

① ② ③ ④

入荷数/1便

小在庫

昼 夜

社内の在庫

在庫は入荷直後大となる

かんばんの回転

(N-1)日

A

Ⅲ:前便(前日④便)  で持帰り、  メーカーにある  かんばん

N日

①便

Ⅰ:①便入荷分

Ⅱ:持帰り分

かんばんは(遅れ係数1)の群で回転する

 1-4-2Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ群

メーカー

かんばん回収

かんばん回収

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(2) かんばん回転枚数の計算ステップ 例:1箱 10 ケ入りの部品を、1 日 120 ケ使用するときの 回転枚数(安全値 0.2 日) 納入サイクル 1-4-2 の場合 x y z ア)1日のかんばん使用枚数は…当り使用ケ数/一箱収容数=120/10=12 枚/日

イ)1便当りの入荷数は …A/y=12/4=3枚/1便・・・・・・・・B

ウ)かんばん群は …(z+1)×B=(2+1)×3=9枚・・・C

エ)安全在庫は …A×0.2=2.4 3枚(現在は切上げ)・・D

オ)かんばん回転枚数は …C+D=9+3=12 枚

カ)(参考) 大 小在庫は … 大在庫は B+D=3+3=6 小在庫は D=3

(3) 計算式

(z)+1 {日当り使用個数×(x)}× かんばん回転枚数=

y +安全値

1箱収容数

・・・A

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〔かんばん回転枚数の計算例〕

・納入サイクル : 1-4-2

・ 直必要数 : 320ケ/直

・ 収容数 : 20ケ/個

・ 安全係数 : 0.2日

かんばん回転枚数は何枚 ?

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2.7 運搬

①工程間運搬

・ ジャスト・イン・タイム生産を実現するためには、離れた生産工程間を、タイム

リーに結び付け、円滑な生産ができるように物を運搬することが必要である。

②工程間運搬の条件

(1)小刻みな情報の収集 ………… 多回運搬

(2)多種・少量で異なる物の引取り …… 混載運搬

(3)ラインサイドの部品置場からの引取り … 多回運搬とダイレクト運搬

③工程間運搬の方法

ア)定量・不定期運搬

後工程が一定量使ったら、その時点で前工程へ引取りに行く方法で、

消費量を基準としている

イ)定時・不定量運搬

経過時間を基準として運搬する方法で、考え方は定量・不定期運搬と同じ

である

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3.標準作業

3.1 標準作業

①標準作業とは

・ トヨタ生産方式において、物の造り方・改善・管理の仕方などの根本である。

・ 良い品質のものを、安全に、しかも安く造るための仕事のやり方を決めたもの

である

②標準作業の条件

(1) 人の動作を中心にしたもの

(2) 繰り返し作業

③標準作業の3要素

1. タクトタイム

・ 1台または部品1個を、何分何秒で造らなければいけないかという時間

2. 作業順序

・ 物を加工したり、組み付けたりする場合、技能員が物を運び、機械に取付け

たり、外したり、部品を組み付けていく順序

3. 標準手持ち

・同じ手順で、繰り返し作業ができるために、必要な 小限のワークの手持ち

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3.2 標準手持ちの原則

工程順序 (a) 順 方向の作業 0(物の流れ) (b) 逆 方向の作業 1個

機械の自動送り (c) 有 自動送り装置 1個(d) 無 手作業 0

①条件の組合せによる標準手持ち

工程順序 順 方向の作業 0機械の自動送り 有の場合 1工程順序 順 方向の作業 0機械の自動送り 無の場合 0工程順序 逆 方向の作業 1機械の自動送り 有の場合 1工程順序 逆 方向の作業 1機械の自動送り 無の場合 0

( a ) + ( c )

( a ) + ( d )

( b ) + ( c )

( b ) + ( d )

1個

0個

2個

1個

② 工程内の標準手持ち数の事例

(A)

(B)

(A)

(B)

② ③ ④

⑥⑦

物の流れ

物の流れ

1工程

2工程

1工程 2工程 3工程

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3.3 標準作業と改善

『標準のない所には改善はない』

・“表”準作業とは、現状をおもて

表の現したものである。

・ 標準作業とは、監督者が自分の意志を組入れて、“表”準を標準にしたものであ

①標準作業に基づく改善

(1) 工数低減

(2) 仕掛品在庫の低減

(3) 品質不良の低減

(4) 生産能力の増強

(5) レイアウト(編成)

(6) 目で見る管理

②標準作業と作業標準

・ 作業標準とは、標準作業を行うために、作業のやり方や機械操作などを標準化し

たものである。作業要領書が代表的なものである。

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3・4 標準作業の作成要領

標準作業を作成するためには

1.タクトタイム

2.作業標準

3.標準手持ち を決定すること

手順 1:工程能力表の作成

① 工順 …… 加工工程の順序番号

② 工程名称 … 部品が加工されていく工程の名称を記入する

(a)加工においては、同一工程で機械が 2台以上ある時は、別々に記入する

(b)1 台の機械が、2個取り・3個取りの場合は、それも記入する

(c)ある頻度を持ち、定期的に行う作業、例えば切粉払い・品質チェックも頻度と

一緒に記入する

③ 機番 …… 機械番号を記入する

④ 基本時間

(a)手作業時間 …技能員が機械(工程)で行う手作業の時間を測定し記入する。

歩行時間は含まない

(b)自動送り時間…機械がワークを加工するのに要する時間を測定し記入

(c)完成時間 ……ある機械(工程)で、1個(2個取りの時は 2個)の部品を完

成させる必要な時間で、一般に

完成時間=手作業時間+自動送り時間

とする

注1:ある頻度を持つ作業は、ワーク 1個当りの手作業時間を記入する

⑤ 刃具

(a)刃具交換個数…刃具・砥石ごとに記入

(b)刃具交換時間… 〃

⑥ 加工能力 … 1直の定時間内でできる個数

直の稼動時間

ワーク1個当りの完成時間+ワーク1個当りの刃具交換時間

加工能力=

注2:小数点以下は切り捨てる。機械が違う時は、分けて書く

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工程能力表の例

課長 工長 所属 氏名

基本時間 刃具 加工能力 備考

手作業時間 自動送り時間 完成時間 交換個数 交換時間  (    )分 秒 分 秒 分 秒

1 ブースター取付、面削り Mi1764 3 25 28 100 1分

2 ブースター穴 穴明 Dr 3 21 24 1000 30秒2424

3 ブースター穴 ネジ立て Tp 3 11 14 1000 30秒1101

4 品質チェック(1/1) 5 5(ネジ径を測定する)

合計 14 稼働時間 7時間50分(470分)/直当り

工順

機番

年   月   日 作成

工 程 能 力 表

- - - -

図示    :手作業    :自動送り

ワーク1個当りの交換時間

品 番

品 名

KE

形 式

個 数

17111 - 24060

インテークマニホールド

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工程能力表の例

課長 工長 所属 氏名

基本時間 刃具 加工能力 備考

手作業時間 自動送り時間 完成時間 交換個数 交換時間分 秒 分 秒 分 秒

1 ブースター取付、面削り Mi1764 3 25 28 100 1分 986

2 ブースター穴 穴明 Dr 3 21 24 1000 30秒 11732424

3 ブースター穴 ネジ立て Tp 3 11 14 1000 30秒 20091101

4 品質チェック(1/1) 5 5 5640(ネジ径を測定する)

合計 14 稼働時間 7時間40分(460分)/直当り

工順

機番

年   月   日 作成

工 程 能 力 表

- - - -

図示    :手作業    :自動送り

ワーク1個当りの交換時間

品 番

品 名

KE

形 式

個 数

17111 - 24060

インテークマニホールド

(986)

3” 25’

3” 21’

3” 11’

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手順2:標準組合せ表の作成

(1)作業順 … 作業を行っていく順序を1・2・3……と示す

(2)作業内容 … 機番と手作業の内容を示す

(3)時間 … 工程能力表の手作業・自動送り時間を記入する

(4)作業時間… (実線)手作業時間

(破線)自動送り時間

(波線)歩行時間

(5)タクトタイム

直稼働時間

直当りの必要数

<標準作業組合せ表の作成手順>

① 作業時間の時間軸にタクトタイムの時間を赤線で引く

② 一人当りの工程範囲を決める

赤線で示したタクトタイムに、ほぼ等しくなるような作業時間の合計を、工程別能

力表から求めて、ほぼ1人当りの工程を決める。なお歩行時間も加わるので、若

干の時間を見込む。

③ 作業内容の欄に、それぞれの手作業の内容を1行づつまとめて記入する

④ 時間の欄に各時間を記入する

⑤ 初の作業を決め、手作業時間・自動送り時間を、時間軸に書く

自動送りの時間が、タクトタイムを越える場合は、越えた分をスタートの位置から

引く。この時、手作業時間と、自動送り時間はぶつからないこと。

⑥ 2番目の作業を決める

通常、下の欄の作業が2番目となるが、作業が変り、歩行が必要な時は、 (波

線)にて時間軸を示す。

タクトタイム=

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・順次繰り返し、作業順序を決めていく。ただし2台の機械がある場合や、2個取

りの機械、あるいは共用工程を持つ機械は、技能員が機械の自動送り時間で、手

待ちにならないように、作業順序を考えてみる

⑦作業の組合せが成立つか調べる

自動送りの時間が、タクトタイムを越える場合は、越える分をスタートの時点か

ら引き直すが、これが同じ作業の手作業時間にぶつかれば、この作業は成立せず、

作業を選び直す必要がある。

⑧ 予定した作業と、タクトタイムとの関係を見る

予定した作業を終えたら、 初の作業の欄に戻す。歩行時間が必要な時は、波線

で示す。

⑨ 適正作業量かを見る

⑧で戻った点が、赤線(タクトタイム)と合致すれば、適当な組合せといえる。赤

線の手前で、作業が終るようであれば、作業量が少ないのであるから、他の作業

ができないかを検討する。もし赤線から、はみ出している場合は、そのままにし

ていると定時で終らず、残業や欠品となるから、はみ出した分だけ短縮できない

か、個々の作業を見直す。

⑩ 作業順を記入する

組合せができたら、図示したものに基づいて、作業順の欄に番号を記入する。

直の稼動率が、7時間 40 分で、直当りの必要数が 920 個の時の

タイムタクトを出せ

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標準作業組合せ表品番・品名 17111-24060 インテークマニホールド 年月日

工程 インテークマニホールド ブースター穴加工時間

1  粗材を取る 2 2

2 3 25 2

3 3 21 2

4 3 11 2

5  ネジ径を測定する 5 2

6  完成品を置く 2 2

作業順

ワークを取り外し取付けMi-1714送りをかける

ワークを取り外し取付けDr-2424送りをかける

ワークを取り外し取付けTp-1101送りをかける

作 業 名 手作 送り 歩き

10” 20” 30” 40”

所属12年4月1日経営学部

必要数タクトタイム

920個/直30”

標準作業組合せ表

作 業 時 間

手作業自動送り歩行

直の稼働時間 7時間40分

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手順3:標準作業票の作成

① 作業内容

標準作業組合せ票の、 初の作業と 後の作業を記入する

② 作業順序

機械配置図に、標準作業組合せ票に示された作業順序に従い、番号付けを行い、こ

れを実線で結ぶ。

後の作業から、 初の作業への戻りは破線で示す。

③ 作業標準

・品質チェック…品質チェックが必要な機械(工程)には、 印を記入する

・ 安全注意 …安全注意が必要な機械(工程)には、 印を記入する

・ 標準手持ち …作業標準通り作業を行っていく上に、どうしても必要な手持ちを

標準手持ちと言い、機械(工程)に置かれる位置へ 印を記入

する

・ タクトタイム…標準作業組合せ票にて産出した、タクトタイムを明記する

・ 正味時間 …作業標準通り行った場合の作業時間を記入する

作業標準票(例)

粗材を取る から

完成品を置く まで

品質チェック 安全注意 標準手持ち 標準手持ち数 タクトタイム 正味時間 分解番号

①②

④⑤⑥

粗材

完成品

Mi1756

Dr2424

Tp1101

(1/1)

作業内容

3 30” 30” 1/1

標準作業表(例)

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3.5 要素作業分析

①要素作業分析の分析単位

物を操作する1つ 1つの行為を、1単位として考える。

(対象物を ……を取る、置くなどの目的行為そのものを行う)

②時間測定の手順

(観測点は、その作業が終った瞬間を取る)

1. 作業順序を見て暗記する

2. 作業要素を記入する

3. 1サイクル分の時間を測定する

4. 要素作業ごとの時間を測定する

5. 1サイクル分の時間と、要素作業ごとの時間を合せる

6. 未測定の要素作業を測定する

7. 例外作業を測定する

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③要素作業の分析単位と観測点

<要素作業の分析単位>

(1) 対象物を取る

(2) 目的行為そのものを行う

(3) 対象物を置く

<要素作業の分析単位と観測点>

要素No 動作 観測点

立つ 椅子から立ち上がった瞬間

歩く 黒板まで行き終わった瞬間

チョークを取る チョークを取った瞬間

書く 書き終わった瞬間

チョークを置く チョークを置いた瞬間

歩く 椅子まで戻った瞬間

腰にかける 椅子にかけた瞬間

椅子に座る 椅子に座った瞬間

椅子から立つ

歩く

チョークを取る

字を書く

チョークを置く

歩く

腰掛ける

椅子に座る

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④時間測定の要領

手順 1: 作業順序を見て暗記する

1 2 3 4

手順 2: 要素作業を記入する

2 3 4 5 7 8 9

手順 3: 1サイクル分の時間を測定する

手順 4: 要素作業ごとの時間を測定する

1・2 3・4 5 6 7・8・9

手順 5: 1サイクル分の時間と、要素作業ごとの時間を合せる

1・2 5 7・8・9

3・4 6

手順 6: 未測定の要素作業を測定する

2 4 7 8 9

手順 7: 例外作業を測定する

1 6

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3.6 作業改善と設備改善

作業改善とは、作業上のルールを決めたり、配分をやり直したり、物の配置・置

場を明示したり、作業動作などの改善である。

①生産の仕組みと設備

仕組みとは、粗材から製品に完成させていく過程で、製造のやり方・仕事の進め

方などである。

②設備改善の問題点

(1)設備改善は費用がかかる

(2)設備の改善は、やり直しがきかない

(3)作業改善のすすんでない職場での、設備改善は、失敗する可能性が高い

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3.7 改善の着眼点

改善のニーズの発見が出発点

“おもて

表”準化→問題の顕在化→改善→標準化

①標準作業と改善項目

(1) 標準作業と改善項目

(2) 仕掛品在庫の低減

(3) 品質不良の低減

(4) 生産能力の増強

(5) レイアウト(工程の組み方)

(6) 目で見る管理

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3.8 動作経済の原則

①身体の使用についての原則

(1)両手は同時に、反対または対称方向に示す

(2) 身体の運動部分をなるべく小さくする

(3) 軽作業には、手や前腕の運動の方が、上腕や肩の運動の方よりも良い

(4) 運動の方向を急激に変えることを避け、かつ動作を拘束制限のない自由な運

動にする

(5) 不自然な姿勢や、身体の重心を上下する運動を避ける

(6) 動作の順序を選定して、リズムをつける

(7) できるだけ注意力を少なくして、無雑作に動作が行えるようにする

② 配置および設備についての原則

(1)工具や材料は、定位置に置く

(2)工具や材料は、作業者の周辺の、できるだけ前面近くに配置する

(3)物の移動には、上下移動を避けて、水平移動ににする

(4)物の移動には、重力を利用する

(5)材料や工具は、動作に も都合の良い位置に置く

(6)作業台の高さは、作業の性質や、技能員の身長に適したものとする

(7) 作業の性質に適した、換気や照明を与える

③道具や器具の設計についての原則

(1) 手で材料や道具を保持する動作はなるべく避ける

(2) 汎用式(万能式)の道具は使わず、専用型の物を用いる

(3) 2つ以上の工具は、できるだけ組み合わせる

よい動作域

この動作域までにしたい

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3.9 生産管理板

A直 ライン生産計画 生産実績 ラインストップ 停止内容 過去 高数

(時間/累計) (時間/累計) (分)8:30~9:30 100 95 11月1日

1009:30~10:30 100 100 3’ 機械調整

200 195 20010:30~11:30 83 80

283 275 29911:30~12:30 100 86 12’ オートローダー作動不良

383 361 37913:30~14:30 100 100 8.4’ ヘッドトローリー作動不良

483 461 47514:30~15:30 100 90 6’ ヘッドボルト

583 551 ナットランナー上昇せず 57515:30~16:30 83 83 10.2’

666 634 65716:30~17:30 100 90 18’ 新メタルワークナシ

766 704 ブロック欠 75717:40~18:10 50

754 76518:10~18:40 11

754備考

残業

時間

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3.10 部品置場と表示方法

①部品置場

部品置場にある部品の状況を見て、少なくても次のことが、分からなくてはいけ

ない

(1)現在の仕事が進みすぎているか、遅れているか

(2)定められた置場に、定められた部品があり、誤品はないか

(3)次に何を仕掛けて、どの部品を使用するのか

②部品置場の工夫(表示方法)

(1)置場は、それを加工するライン近くに設置し、加工ラインの技能員が分かるよ

うにする

加工ラインと置場と、置場との途中に、部品を借り置きしない

(2)部品は種類別に置き、各種類の数量が分かるようにする

(3)加工順に、後工程が持っていけるようにし、先入れ・先出しができるようにし

ておく

(4)置場の大きさは、必要数だけが置けるようにし、部品が多すぎる時には、置場

からはみ出すようにして、異常状態が分かるようにしておく

(5)置場の表示は、所番地を明確にし、かんばんと対応付けを行う

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3.11 標準作業に基づく職場管理のポイント

・標準作業と品質

不良品や手直し品が出た時は、原因を掴むことが第一歩

①原因対策のステップ

(1) 原因をつかむ

(2) 対策を考える

②原因を追求するための条件

(1) 同じ条件で繰り返し作業をする

(2) 1 ケ流し生産をする

(3) 加工直後で検査できるようにしておく

③標準作業と標準手持ち、および完成品在庫

・ 余分な物を 1 つも持ってはいけない。なくてはいけない所にだけ、手持ちをも

つこと。そして、決められた作業順序で、1サイクルの作業範囲が回れるよう

にする

②③

④ ⑤ ⑥

M1M2

M3 M4

完成品

粗材

物の流れ

物の流れ