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呼吸器内科 医長 齋藤春洋 肺がん ゲノム異常と治療

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呼吸器内科 医長 齋藤春洋

肺がんゲノム異常と治療

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手術

放射線治療薬物治療

肺がんの治療は

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薬物療法が必要な「進行肺がん」とは?

リンパ節やその他の臓器に転移がある状態を「進行肺がん」といいます

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「進行肺がん」には手術や放射線治療はできません

できません

CTやPETで見えなくても、がん細胞が血管やリンパ管に入りこみ、全身に広がっています

転移があると・・

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「進行肺がん」には薬物治療を行います

薬物治療とは、薬剤(内服、点滴)を使って、

全身に散らばっているがん細胞をたたく治療

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「薬物治療」の種類は?

②免疫チェックポイント阻害剤(点滴)

①細胞障害性抗がん剤(主に点滴)

③分子標的薬(内服)

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「薬物治療」の使い分けは?

②免疫チェックポイント阻害剤(点滴)

①細胞障害性抗がん剤(主に点滴)

③分子標的薬(内服)

元気であれば誰でも

元気であれば誰でも

ゲノム異常がある(ドライバー遺伝子陽性)

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分子標的薬とは?

肺がんでは、おもに非扁平上皮癌(肺腺癌)で使用

2002年にイレッサを皮切りに登場し、肺がんの治療の歴史を変えた薬剤

ピンポイントにがん細胞を攻撃する

従来の抗がん剤にくらべ、高い奏効率と長期生存

ドライバー遺伝子が特定された癌に使う

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ドライバー遺伝子変異の種類と頻度は?

⑤その他の稀な遺伝子変異 数%未満

①EGFR遺伝子変異 30-40%

②ALK融合遺伝子 5%

③ROS1融合遺伝子 1%

④BRAF遺伝子変異 1%

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EGFR

53.0 %

KRAS , 9.4

HER2, 1.9

BRAF, 0.6

ALK , 3.8

RET, 1.9

ROS1, 0.9

NRG1, 0.3

MET, 2.8

Unknown, 25.4

日本人の肺がんにおける遺伝子変異

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標的をピンポイント攻撃→分子標的薬

正常細胞 がん細胞

がん増殖に特異的にはたらく分子を攻撃

→癌細胞はたたかれ、正常細胞のダメージは少ない

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EGFR遺伝子変異とは?

「EGFR」とは、がん細胞が増殖するためのスイッチのような役割を果たしているタンパク質のことで、がん細胞の表面にたくさん存在しています。

EGFRを構成する遺伝子の一部(チロシンキナーゼ部位)に変異があると、がん細胞を増殖させるスイッチが常にオンとなっているような状態となり、がん細胞が限りなく増殖してしまいます

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分子標的薬の作用機序

がん細胞が増殖できなくなる

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分子標的薬の副作用は?

比較的頻度の高い副作用

発疹 30-40%

下痢 30-40%

肝障害 10%

例えば、EGFR遺伝子変異症例に用いる分子標的薬では、

頻度は低いが、重篤になる副作用

薬剤性肺炎 4-5%

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遺伝子変異と分子標的薬

①EGFR遺伝子変異イレッサ・タルセバ・ジオトリフ・タグリッソ・ダコチニブ

②ALK融合遺伝子ザーコリ、アレセンサ、ジカディア、ローブレナ

③ROS1融合遺伝子 ザーコリ

④BRAF遺伝子変異 タフィンラー/メキニスト

⑤その他の稀な遺伝子変異治験が行われている場合がある

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LC-SCRUMとは?

SCRUM-JAPANとは、患者さんのがん細胞の遺伝子異常

の検査を行い、その結果に基づいて、有効な治療薬を届け

ることを目的とした、産学連携の全国がんゲノムスクリー

ニングプロジェクトです。遺伝子解析の結果を元に治療薬

を選択するだけでなく、この遺伝子検査を保険診療で使用

できるようにすることも大きな目的の一つです。

肺癌 ⇒ LC-SCRUM-Japan

消化器癌 ⇒ GI-SCREEN-Japan

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担当医に何を聞けばよいか?

自分の肺癌はドライバー遺伝子があるか?

可能性のある遺伝子は全て調べているか?

稀な遺伝子を調べて治療できる可能性はあるか?(LC-SCRUM、NCCオンコパネル)

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ご清聴ありがとうございました