南アフリカの供給リスクの現状mric.jogmec.go.jp/wp-content/uploads/2014/08/briefing...ir...
TRANSCRIPT
1 PGMとは
VIII
鉄族(4周期) 白金族(5・6周期) Platinum Group Metals
2
PGM
Pt プラチナ
Ru ルテニウム
Pd パラジウム
Ir イリジウム
Rh ロジウム
貴金属、自動車用触媒(欧州)、白金るつぼ
るつぼ、スパークプラグ、電極、有機EL
自動車用触媒(米国、中国)
ハードディスクドライブ、タッチパネル、
スパッタリングターゲット
自動車用触媒
PGM利用分野
3
PGM産出地域① 3
Norlisk ★
North American Palladium
★
Norlisk ★
★
Stillwater
KGHM ★
4 鉱業国としての南ア
中国 53%
ロシア 20%
南ア 26%
その他 1%
V
76,000t
豪 19%
ブラジル 8%
中国 19%
ガボン 12%
南ア 23%
その他 19%
Mn
17,000,000t
米国 8% 豪
9%
中国 15%
ペルー 6%
ロシア 8%
南ア 5%
その他 49%
Au
2,770t
鉱石生産量
出典:Mineral Commodity Summaries 2014
インド 15%
カザフスタン 16%
南ア 42%
その他 27%
Cr
26,000,000t
カナダ 3%
ロシア 12%
南ア 80%
ジンバブエ 4%
その他 1%
Rh
22t
出典:Johnson Matthey Platinum 2013
※
カナダ 5%
ロシア 14%
南ア 72%
ジンバブエ 7%
その他 2%
Pt
179t
カナダ 14%
ロシア 42%
南ア 37%
ジンバブエ 5%
その他 2%
Pd
200t
※
※国家備蓄放出分を含む
5 南アのリスク① スト
南アの労組
NUM(全国鉱山労働者組合) 1982年設立、勢いはAMCUに押されつつある
UASA(連合南アフリカ) 設立は1894年と最も古いが鉱山分野の組合員は少ない
AMCU NUM UASA 計 非加盟者
Amplats 62% 20% 12% 94% 6%
Implats 61% 6% 7% 74% 26%
Lonmin 82% 10% 92% 8%
企業別労組加入割合
出典:Chamber of Mines South Africa HP
AMCU(鉱山労働者・建設組合連合) 1998年にNUMから分派、今や最大派閥
2012年のMarikana鉱山スト以後、勢力・権力を伸ばす
その他NUMSA(広範で組合員数最大)等
6 南アのリスク① スト
※1994年のアパルトヘイト廃止後、最長のスト
スト概要(2014年1月~6月)
1月23日、AMCUメンバー7万人、ストを開始
5,300ランド※/月から12,500ランドの給与引き上げ要求
この間、給与の要求額を固持するAMCU側と、要求を呑めない企業側との協議が何度も行われ、何度も物別れに終わる
5月、新鉱物資源大臣の下協議を再開するが、折り合いがつかず、6月11日、大臣が交渉から退く
6月24日、3社とAMCUが合意、5か月に亘るスト終結
※1ランド=約10円
7 PGM生産量の変化 Amplats
出典:Amplats News Release
0
100
200
300
400
500
600
700
800
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2
2012 2013 2014
Amplats
platinum palladium rhodium
Pt
37%down
Pd
40%down
Rh
27%down
単位:千oz PGMs
8 PGM生産量の変化 Implats
出典:Implats Interim Results
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
0
50
100
150
200
250
300
350
400
450
500
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2
2012 2013 2014
Implats
Implats milled platinum palladium rhodium
Pt
50%down
Pd
48%down
Rh
39%down
単位:千t 鉱石
単位:千oz PGMs
9 PGM生産量の変化 Lonmin
出典:Lonmin Regulatory Release
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
3500
0
50
100
150
200
250
300
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2
2012 2013 2014
Lonmin
Lonmin mined platinum palladium rhodium ruthenium iridium
Pt
69%down
Pd
62%down
鉱石
78%down
単位:千t 鉱石
単位:千oz PGMs
10 南アのリスク① スト
スト中もなぜ生産・供給があったのか?
1.各鉱山会社に貯鉱があった
2.製錬所は稼働していた
(ストを行っていたのは鉱山労働者だった) →鉱石生産量の方が下落幅が大きい
3.Amplats社のRustenburg鉱山、Amandelbult鉱山、Union鉱山等一部の鉱山はストの影響を大きく受けたが、Mogalakwena鉱山、Unki鉱山では生産にストの影響がなかった
11 南アのリスク① スト
なぜストは長期化したのか?なくならないのか?
1821 2409
4701
7051
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000
8000
African Coloured Indian White
鉱業分野の人種別給与(2007年) 単位:ランド
2.AMCU内での暴力
5月14日、職場復帰を目指す労働者が殺害される
→要求を通したい一部の人がストを長引かせている
職場復帰を望む労働者もいる
※Amplats CEOの2011年報酬は28,197,674ランド。
鉱山会社CEO全体平均では20,183,433ランド。
鉱山労働者の最低年収平均を60,000ランドとし計算。
出典:Mining Sector Wages in South Africa 2013
1.黒人の低賃金労働
黒人世帯の年間所得は白人世帯の4分の1
企業幹部の報酬は労働者の賃金平均の
300~400倍※
4倍
出典:Mining Sector Wages in South Africa 2013
12 南アのリスク① スト
結局、この長期ストで誰が一番得をしたのか? ☀☁☂
2.企業側 ☂
242億ランド(22.7億米ドル相当)の損失※
※企業側 24,159,010,320ランド、労組側 10,737,248,472ランド
出典:Chamber of Mines South Africa HP
1R=US$0.09
1.労働者 ☁/☀
賃金が12,500ランド以下の労働者には、月あたり1,000ランドの賃上げ
賃金が12,500ランド以上の労働者には、年率8%の賃上げ
→PGM鉱山労働者最低賃金は5,300ランド、当初の要求額が無謀
結局要求した全額の賃上げは叶っていない
労働者賃金全体として、 107億ランド(10.1億米ドル相当)の損失※
出典:Mining Sector Wages in South Africa 2013
13 南アのリスクその① スト
結局、この長期ストで誰が一番得をしたのか?
3.南アのイメージ ☂
世界中に、投資環境として大丈夫なのかというマイナスの印象を与えた
4.AMCU ☀
要求が全て通らなくても、賃金アップを企業側に認めさせたことは成果
労組間の権力・勢力争いに更に弾みをつけた
5.AMCU幹部 ☀
高級外車を数台所有、交渉には高級スーツに身を包み
ボディーガードを何人も連れて現れる
妻に複数ビジネスを展開させている?
※現在は収束するも、権力争いや賃金アップを巡って再発可能性大
14 PGM価格推移
出典:Johnson Matthey Platinum Today
$0.00
$200.00
$400.00
$600.00
$800.00
$1,000.00
$1,200.00
$1,400.00
$1,600.00
$1,800.00
$2,000.00
03
/01
/20
12
23
/01
/20
12
10
/02
/20
12
01
/03
/20
12
21
/03
/20
12
12
/04
/20
12
02
/05
/20
12
22
/05
/20
12
11
/06
/20
12
29
/06
/20
12
19
/07
/20
12
08
/08
/20
12
28
/08
/20
12
17
/09
/20
12
05
/10
/20
12
25
/10
/20
12
14
/11
/20
12
04
/12
/20
12
24
/12
/20
12
16
/01
/20
13
05
/02
/20
13
25
/02
/20
13
15
/03
/20
13
08
/04
/20
13
26
/04
/20
13
16
/05
/20
13
05
/06
/20
13
25
/06
/20
13
15
/07
/20
13
02
/08
/20
13
22
/08
/20
13
11
/09
/20
13
01
/10
/20
13
21
/10
/20
13
08
/11
/20
13
28
/11
/20
13
18
/12
/20
13
10
/01
/20
14
30
/01
/20
14
19
/02
/20
14
11
/03
/20
14
31
/03
/20
14
22
/04
/20
14
13
/05
/20
14
03
/06
/20
14
23
/06
/20
14
11
/07
/20
14
31
/07
/20
14
20
/08
/20
14
Pt
Pd
Rh
Ir
Ru
AMCUスト
15 各社コスト① 工程別
出典:各社Annual Report
0
5000
10000
15000
20000
25000
30000
35000
2009 2010 2011 2012 2013
Amplats
Amplats
on-mine smelting treatment&refining
単位:千ランド
0
5000
10000
15000
20000
25000
30000
35000
2009 2010 2011 2012 2013
Implats
Implats
on-mine processing refining
単位:千ランド
0
5000
10000
15000
20000
25000
30000
35000
2009 2010 2011 2012 2013
Lonmin
Lonmin
mining concentrating smelting&refining
単位:千ランド
※選鉱を含む ※選鉱を含む
16 各社コスト② 費目別
9%up
出典:各社Annual Report
6465 6762
8369
5519 5464
6481
1394 1647
1857
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
14000
16000
18000
2011 2012 2013
Implats
人件費 資材・燃料費 光熱費
単位:千ランド
24%up
13%up
10831 12745
7477
8504
3509
3824 2282
1708 4129
4130 293
61
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
14000
16000
18000
20000
22000
24000
26000
28000
30000
32000
34000
2012 2013
Amplats
人件費 燃料費 光熱費 請負費 雑費 委託製錬費
単位:千ランド
12%up
17
0
200
400
600
800
1000
1200
1400
2009 2010 2011 2012 2013
鉱山別トンあたり採掘コスト
(Amplats)
Bathopele
Thembelani
Khuseleka
Siphumelele
Khomanani
Tumela
Dishaba
Union
Mogalakwena
Unki
単位:ランド
露天掘
坑内掘のUG2鉱床では、採掘エリアが深部化するにつれ採掘コストが上昇
→古い鉱山、コストのかかる鉱山(Rustenburg、Union、Pandora)は売却対象
各社コスト③ 採掘深度
出典:Amplats Annual Report 2013
-1500
-1000
-500
0
500
1000
1500
採掘深度とトンあたり採掘コスト(2013)
(Amplats)
depth cash on-mine cost R/tonne milled
単位:ランド
単位:m
採掘深度
採掘
コスト
露天掘
南アのリスク② 電力
南アフリカ電力公社(Eskom)
設立:1923年
発電容量:41,995MW
南ア電力の95%、アフリカ大陸電力の40%を発電
石炭火力:35,726MW
ガスタービン:2,409MW
原子力:1,860MW
水力、揚水:2,000MW
風力:3MW
18
石炭火力,
37,780 , 85%
ガスタービン, 2,426 , 6%
原子力,
2,426 , 5%
揚力, 1,400 ,
3% 水力,
600 , 1%
Eskom発電量
石炭火力
ガスタービン
原子力
揚力
水力
出典:Eskom Integrated Report 2014
19 南アのリスク② 電力
4%down 3%down 32630 31611 30667
59611 51675 54658
2867 2996 3125
4919 5193 5191
9020 9519 9605
91564 91386 91262
10539 10390 11017
13296 13791 12378
0
50000
100000
150000
200000
250000
2011 2012 2013
Eskom電力販売先
輸出
住居
自治体
商業
農業
鉄道
工業
鉱業
出典:Eskom Integrated Report
単位:GWh
20 南アのリスク② 電力
鉱業分野への電力供給量が減ったのは?
1.電力バイバック制度※
※フェロクロム生産者に対し、電力使用削減の見返りとしてEskomより補償金を受け取る契約。
2012年1~3月、2013年1~5月に実施、一部の生産者が契約を表明。
2.スト・生産停止の影響
→2014年電力使用量はより減る可能性
鉱山への電力供給量が減っても、鉱山側の電力コストは上昇
→電力料金の上昇、いずれにせよ鉱山側のコストを上げる要因に
72.63
89.70
115.18
132.59 142.53
0
20
40
60
80
100
120
140
160
2009 2010 2011 2012 2013
Eskom電力料金 単位:ランド/kVA/m non local authority rates
nightsave urban (large)
出典:Eskom Tariffs & Charges Booklet
21 南アのリスク② 電力
Eskomの発電コスト、2013年は前年比12%増
1.燃料代、設備増強に伴う人件費・メンテナンス費、環境税が増加
2.電力バイバック制度によるコスト削減も実現しているが、全体のコストを下げるまでには至っていない
12%up
35.8 46.3
60.7 69.8
5
6.2
8
8.5
20.4
24.4
28.6
31.3
10.6
12.9
0
20
40
60
80
100
120
140
2010 2011 2012 2013
電力生産コスト
メンテナンス
人件費
環境税
エネルギー
単位:10億ランド
出典:Integrated Report 2014
22 南アのリスク まとめ
2.電力
鉱山の生産コストが今の割合で増加していけば、鉱山操業はいずれ
維持できなくなる
→鉱山・電力各社がコストを下げ、生産性を上げる努力が必要
1.ストライキ
PGM産業は主に黒人による低賃金労働に支えられており、
アパルトヘイト撤廃後20年が経過しても、高額所得者と低賃金労働者
の格差問題は根深い
→人種間問題というより、富の再分配の問題
格差が縮まらない限りストは収まらない
ご清聴、ありがとうございました。
※PGMの重要性が変わらない中、
鉱産物の供給リスクはこれからも続く・・・