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AN884オペアンプによる容量性負荷の駆動
注意 : この日本語版文書は参考資料としてご利用ください。 新情報は必ずオリジナルの英語版をご参照願います。
はじめに
概要
オペアンプで大きな容量性負荷を駆動すると、好ましくない結果が生じる可能性があります。本アプリケーション ノートでは、考えられるいくつかの問題点を取り上げ、各問題点に対する簡単で実用的な解決策を提示します。
本書では、回路の解説と数式を 小限にして、詳細な説明よりもわかりやすさを重視しています。また、このような方針を補助するために、オペアンプ挙動の簡単なモデルを使います。回路設計を全般的な回路挙動に結び付けるために、簡単な数式も使います。
さらに、簡単な事例を使って、問題の概念をわかりやすく説明します。これらは具体的な結果を提示し、理論をよりよく理解するための助けとなります。また、これらは実践的であるため、実用的な回路の設計に向けて感覚を養う事ができます。
目的
本アプリケーション ノートでは、オペアンプを使って容量性負荷を駆動する回路の設計について解説します。読者には、回路解析に関する基本的な理解だけが必要です。
本書は、オペアンプ回路における容量性負荷にまつわる問題を、素早く効果的に解決するための手助けとなる事を目的としています。本書では、問題の発生原因に関する基本的な理解と、それらの問題の解決方法に焦点を合わせます。
線形応答
容量性負荷はオペアンプの線形応答に影響します。この影響により伝達関数が変化し、結果として AC 応答とステップ応答に影響が表れます。負荷の容量がある程度以上大きい場合、オペアンプ回路の動作を安定させて、AC応答のピーキングとステップ応答のオーバーシュートおよびリンギングを防ぐために、回路の補償が必要となります。
オペアンプの線形応答は、サンプリング コンデンサとの相互作用を理解する上でも、非常に重要です。これらのサンプリング コンデンサは、オペアンプにとって非線形なリアクタンス負荷となります。このようなサンプリング コンデンサは、多くの A/D コンバータ ( 低周波 SAR、Δ-Σ 等 ) で使われます。
オペアンプの簡略化 AC モデル
容量性負荷がオペアンプにおよぼす影響について理解するには、オペアンプの出力インピーダンスと帯域幅に着目する必要があります。フィードバック回路によってオペアンプの挙動が変化するため、等価回路モデルにはこの影響を含めます。
オペアンプモデル
図 1 に、電圧フィードバック オペアンプの簡略化したAC モデルを示します。 開ループゲインは、周波数によって変化するゲインAOL(s) (s = jω = j2πf)により表現します。出力段は、抵抗 RO ( 開ループ出力抵抗 ) により表現します。
図 1: オペアンプの AC モデル
この開ループゲイン (AOL(s)) モデルには、利得帯域幅積 (fGBP) と開ループゲインの「第 2 極」 (f2P) を含めます。単純化するために、低周波での挙動は考慮しません。f2P を含める事により、高周波で内部寄生容量に起因して発生する開ループゲインの位相マージンの減少 (< -90°) をモデル化します ( 詳細はセクション B.1「f2P の推定」参照 )。
式 1:
Author: Kumen BlakeMicrochip Technology Inc.
VE
VINP
VOUTRO
VEAOL(s)VINM
AOL s( )ωGBP
s 1 s ω2P⁄+( )---------------------------------≈
© 2012 Microchip Technology Inc. DS00884B_JP - p. 1
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AN884
回路モデル
図 2 と図 3 に、それぞれ非反転増幅と反転増幅のオペアンプ回路を示します。これらの回路を使って大部分のアプリケーションに対応できます。
図 2: 非反転増幅回路
図 3: 反転増幅回路
これらの回路は差動 DC ゲイン (K) と DC ノイズゲイン (GN) を持ちます。GN は、フィードバック回路によって決まる入力ピンから出力までのゲインとして定義できます。これは、オペアンプ回路の安定性の評価にも役立ちます。これらのゲインは下式により表せます。
式 2:
オペアンプのフィードバック ループ (RF と RG) により、開ループ挙動とは異なる閉ループ挙動が生じます。利得帯域幅積 (fGBP) と開ループ出力インピーダンス(RO) は、GN によって、閉ループ帯域幅 (f3dBA) と出力インピーダンス (ZOUT) に変わります。図 1、図 2、図 3 の回路を解析する事により、下式が得られます。
式 3:
図 4 に、ZOUT の挙動を示します。低周波では、開ループゲインが一定であるため、出力インピーダンスも一定です。周波数が高くなるにつれて、開ループゲインは減少するため、ZOUT は増加します。周波数が f3dBAを超えると、フィードバック ループが影響しなくなるため、ZOUT は RO で一定となります。GN = +1 でのピーキングは、f2P による位相マージンの減少に起因します。
図 4: 周波数に対する閉ループ出力インピーダンスの関係 (MCP6271)図 5 に、この挙動を近似する簡略化した AC モデルを示します。このモデルでは、増幅器を使って無負荷ゲインと帯域幅をモデル化し、インダクタと抵抗を使って周波数に対する出力インピーダンスの挙動をモデル化しています。
図 5: オペアンプの簡略化 AC モデル
f2P の位相シフト効果により、ROUT は RO よりも大きくなります。これは特にゲイン (GN) が低い時に顕著となります。LOUT と ROUT は下式により求まります。
式 4:
Note: 一部のアプリケーションでは、リアクタンス素子 ( コンデンサ等 ) の影響により、GN は一定ではありません。そのような場合、より高度な設計手法やシミュレーションが必要となります。
VIN VOUT
RFRG
MCP6XXX
VIN
VOUT
RFRG
MCP6XXX
K 1 RF RG⁄+ ; =K R– F RG⁄ ; =
GN 1 RF RG⁄+=
非反転
反転
f3dBA fGBP GN⁄≈
ZOUTRO
1 AOL s( ) GN⁄+---------------------------------------=
0.001
0.01
0.1
1
10
100
1000
1.E-01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
1.E+03
1.E+04
1.E+05
1.E+06
1.E+07Frequency (Hz)
Out
put I
mpe
danc
e (
)
0.1 10k 100k 1M 10M
GN = +1GN = +10GN = +100
1k100101
MCP6271
ZOUT
VOUTVINROUT
MCP6XXX
LOUT
1+s/ω3dBA
K
LOUT RO 2πf3dBA( )⁄=
ROUTRO
max 1 f3dBA f2P⁄ , 1/2–( )--------------------------------------------------------------------≈
DS00884B_JP - p. 2 © 2012 Microchip Technology Inc.
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AN884
未補償の AC 挙動
以下では、容量性負荷がオペアンプ増幅回路に与える影響について説明します。これらの結果は、回路の補償が必要かどうかの判断材料として役立ちます。
原理
図 6 に、未補償の容量性負荷を持つ非反転増幅回路を示します。この回路は簡単に反転増幅回路に変更できます。容量性負荷が小さくてノイズゲインが高い ( 一般的に CL/GN < 100 pF) 場合、この回路は良好に動作します。
図 6: 未補償の容量性負荷
フィードバック回路 (RF と RG) も、オペアンプ出力に対する負荷となります。この負荷 (RFL) は、ゲインが反転か非反転かで下記のように異なります。
式 5:
図 6 のオペアンプを図 5 の簡略化 AC モデルに置き換えると、LOUT と CL によって LC 共振回路が形成されます。CL が十分に大きい場合、ROUT||RFL による LC共振のダンピング効果が弱まるため、ピーキングとステップ応答のオーバーシュートが発生します。これは、f2P と CL の両方の影響によって、フィードバック ループの位相マージンが減少するためです。
簡略化した伝達関数を下式に示します。
式 6:
ここで、補遺 A: 「2 次システム応答モデル」 に記載した式を使って、総帯域幅 (f3dB)、周波数応答のピーキング (HPK/GN)、ステップ応答のオーバーシュート(xmax) を推定できます。f3dB は、オペアンプの無負荷(-3dB) 帯域幅 (f3dBA) とは異なる事に注意してください。
MCP6271 の使用例
上記の式を使って求めたマイクロチップ社製MCP6271 オペアンプの特性曲線を図 7 と図 8 に示します。パラメータには表 B-1: 「代表的マイクロチップ社製オペアンプのパラメータ推定値」からの値を使っています。
図 7: MCP6271 の AC 応答の推定 (GN = +1)
図 8: MCP6271 の AC 応答の推定 (GN = +10)良の総合性能を達成するには、ピーキング (HPK/GN)
を 0 dB 近くまで抑える必要があります。一般的に、ピーキングを 3 dB よりも低く維持できれば、オペアンプ、抵抗、コンデンサの温度および製造ばらつきによる特性の変動に対して十分な設計余裕が得られます。ただし性能は、0 dB 近くまで抑えた場合よりも劣ります。
VIN VOUT
RFRG
MCP6XXX
CL
RFL RF RG ; +=RFL RF ; =
非反転ゲイン
反転ゲイン
VOUTVIN
------------- K 1 sωPQP-------------- s2
ωP2
-------+ +⎝ ⎠⎜ ⎟⎛ ⎞⁄≈
GN 1 RF RG⁄+=K GN ; =
ωP 2πfP 1 LOUTCL⁄= =
K 1 G– N ; =
QP ROUT RFL( ) CL LOUT⁄⋅=
非反転
反転
-20
-15
-10
-5
0
5
10
15
20
1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08Frequency (Hz)
Gai
n (d
B)
10k 1M 100M
MCP6271GN = +1
CL = 10 pFCL = 100 pF
CL = 1 nF
10M100k
CL = 10 nF
0
5
10
15
20
25
30
35
40
1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08Frequency (Hz)
Gai
n (d
B)
MCP6271GN = +10
CL = 100 pFCL = 1 nF
CL = 10 nF
10k 1M 100M10M100k
CL = 100 nF
© 2012 Microchip Technology Inc. DS00884B_JP - p. 3
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AN884
この例に関して、前述の式を使って推定した結果を表 1 に示します。CL の増加およびゲインの減少によってピーキングが高くなる事がわかります。表 1: 応答の推定
直列抵抗を使った補償
この補償では、共振ピーキングを低減するために、直列抵抗 (RISO) を挿入します。 負荷抵抗が存在しない場合、この直列抵抗は余分な DC 電流を引き込まず、DCゲインの精度に影響しません。この補償方法では、抵抗 1 個分のコスト増となります。
原理
図 9 の直列抵抗 RISO は、オペアンプの出力側で共振回路を形成し、周波数応答ピーキングを低減します。これは反転増幅回路でも同様です。
図 9: 直列抵抗で補償した容量性負荷
この回路の伝達関数は、下式のように RISO を含みます。
式 7:
次に、妥当な RISO の値を求める事ができます。QP = 1/√2 の場合、応答の帯域幅はピーキングを生じずに 高となり、式は下記のように も単純な形態となります。
式 8:
回路 応答
GN(V/V)
CL(F)
fP(Hz)
QP( )
f3dB(Hz)
HPK/K(dB)
xmax(%)
1.0 10p 9.3M 0.23 2.3M 0.0 0100p 2.9M 0.73 3.1M 0.0 5
1n 0.93M 2.3 1.4M 7.5 5010n 0.29M 7.3 0.46M 17.3 81
10.0 100p 930k 0.22 211k 0.0 01n 294k 0.69 285k 0.0 4
10n 93k 2.2 139k 7.0 48100n 29k 6.9 46k 16.7 80
VIN VOUT
RFRG
MCP6XXX
CL
RISO
VOUTVIN
------------- K 1 sωPQP-------------- s2
ωP2
-------+ +⎝ ⎠⎜ ⎟⎛ ⎞⁄≈
GN 1 RF RG⁄+=K GN ; =
ωP 2πfP 1 LOUTCL 1RISO
ROUT RFL----------------------------+
⎝ ⎠⎜ ⎟⎛ ⎞
⁄= =
K 1 G– N ; =
QP 1 ωPLOUT
ROUT RFL---------------------------- RISOCL+⎝ ⎠⎜ ⎟⎛ ⎞
⎝ ⎠⎜ ⎟⎛ ⎞⁄=
非反転
反転
RISO 0, CL CX≤=
RISO ROUT RFL( )2CXCL
----------CLCX------- 1– , CL CX>⋅ ⋅=
QP 1 2⁄ 0.707≈=
CXLOUT
2 ROUT RFL( )2--------------------------------------=
DS00884B_JP - p. 4 © 2012 Microchip Technology Inc.
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AN884
MCP6271 の使用例
これらの式を使って、図 9 の回路で MCP6271 の補償済み特性を計算しました。結果を図 10 と図 11 に示します。未補償の図 7 および図 8 と比較してください。
図 10: MCP6271 の補償済み AC 応答の推定(GN = +1)
図 11: MCP6271 の補償済み AC 応答の推定(GN = +10)
前述の式を使って推定した補償済みの結果を表 2 に示します。RISO を追加する事により、ゲインのピーキングが抑えられています。これらの結果は、未補償の結果 ( 表 1) から大幅に改善されたと言えます。
表 2: 応答の推定 (NOTE 1)
図 12 に、MCP6271 向けの RISO の推定値を示します( 式 8 参照 )。解釈しやすくするために、X 軸の負荷容量は正規化しています (CL/GN)。
図 12: MCP6271 の RISO の推定
-20
-15
-10
-5
0
5
10
15
20
1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08Frequency (Hz)
Gai
n (d
B)
MCP6271GN = +1
CL = 10 pFRISO = 0
CL = 100 pFRISO = 187
CL = 1 nFRISO = 232
10k 1M 100M10M100k
CL = 10 nFRISO = 76.8
0
5
10
15
20
25
30
35
40
1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08Frequency (Hz)
Gai
n (d
B)
MCP6271GN = +10
CL = 100 pFRISO = 0
CL = 1 nFRISO = 0
CL = 10 nFRISO = 226
10k 1M 100M10M100k
CL = 10 nFRISO = 76.8
回路 応答
GN(V/V)
CL(F)
RISO(Ω)
fP(Hz)
QP( )
f3dB(Hz)
xmax(%)
1.0 10p 0 9.3M 0.23 9.3M 0100p 187 2.4M 0.71 1.4M 41n 232 0.74M 0.71 0.74M 4
10n 76.8 0.27M 0.71 0.27M 410.0 100p 0 930k 0.22 211k 0
1n 0 294k 0.69 285k 410n 226 73k 0.71 73k 4
100n 76.8 27k 0.71 27k 4
Note1:これらの補償済み結果の全てで HPK/K = 0 dB です。
10
100
1,000
1.E-11 1.E-10 1.E-09 1.E-08 1.E-07Normalized Load Capacitance; CL/GN (F)
Estim
ated
RIS
O (
)
10p 1n 100n
1k
100p10
GN = +1GN +2
100
MCP6271
10n
© 2012 Microchip Technology Inc. DS00884B_JP - p. 5
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AN884
シャント抵抗を使った補償
この補償では、応答ピーキングを低減するために、シャント抵抗 (RSH) を出力側に追加します。直列にコンデンサ (CSH) を接続する事により、RSH への余分な DC電流引き込みを防げます ( この電流は DC ゲインの精度を低下させます )。この補償では、抵抗 1 個とコンデンサ 1 個分のコスト増となります ( ただしコンデンサは必須ではありません )。RSH と CSH は 1 つの R-Cスナバ回路とみなす事ができます。
原理
図 9 のシャント抵抗 RSH は、オペアンプの出力側で共振回路を形成し、周波数応答のピーキングを低減します。CSH は DC をブロックし、この補償方法の欠点を補います。これは反転増幅回路でも同様です。
図 13: シャント抵抗で補償した容量性負荷
RSH だけを含む伝達関数 (CSH は短絡 ) は下式となります。
式 9:
QP = 1/√2 とする事により、下式を使って妥当な RSHの値が求まります。
式 10:
設計を簡略化するために、CSH の値は、共振回路との相互作用が 小限になるように、下記のように計算します。
式 11:
MCP6271 の使用例
これらの式を使って、図 13 の回路で MCP6271 の補償済み特性を計算しました。結果を図 14 と図 15 に示します。未補償の図 7 および図 8 と比較してください。便宜上、図には CSH を表示していません。
図 14: MCP6271 の補償済み AC 応答の推定(GN = +1)
図 15: MCP6271 の補償済み AC 応答の推定(GN = +10)
VIN VOUT
RFRG
MCP6XXX
CLRSH
CSH
VOUTVIN
------------- K 1 sωPQP-------------- s2
ωP2
-------+ +⎝ ⎠⎜ ⎟⎛ ⎞⁄≈
GN 1 RF RG⁄+=K GN ; =
ωP 2πfP 1 LOUTCL⁄= =
K 1 G– N ; =
QP ROUT RFL RSH( ) CL LOUT⁄⋅=
CSH short=
非反転
反転
GXX2CL
LOUT------------- 1
ROUT------------- 1
RFL---------––=
RSH 1 GXX⁄ , GXX 0>=
RSH open , GXX 0≤=
QP 1 2⁄ 0.707≈=CSH short=
CSH open RSH open = =
CSH10
ωPRSH----------------- , RSH ∞<≥
-20
-15
-10
-5
0
5
10
15
20
1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08Frequency (Hz)
Gai
n (d
B)
MCP6271GN = +1
CL = 10 pFRSH = open
CL = 100 pFRSH = 12.7 k
CL = 1 nFRSH = 174
10k 1M 100M10M100k
CL = 10 nFRSH = 42.2
0
5
10
15
20
25
30
35
40
1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08Frequency (Hz)
Gai
n (d
B)
MCP6271GN = +10
CL = 100 pFRSH = open
CL = 1 nFRSH = open
CL = 10 nFRSH = 182
10k 1M 100M10M100k
CL = 10 nFRSH = 43.2
DS00884B_JP - p. 6 © 2012 Microchip Technology Inc.
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AN884
前述の式を使って推定した結果を表 3 に示します。この表には、各設計条件における CSH の値も記載しています。この結果から、RSH によってゲインのピーキングが抑えられた事がわかります。これらの結果は、未補償の結果 ( 表 1) から大幅に改善されたと言えます。表 3: 応答の推定 (NOTE 1)
式 10 を使って推定した MCP6271 向けの RSH と CSHの値を図 16 に示します。このグラフでは、負荷容量とシャント容量を正規化しています(CL/GN、CSN/GN)。
図 16: MCP6271 の RSH の推定
A/D コンバータの駆動
マイクロチップ社のSARおよびΔ-Σ A/Dコンバータ(ADC) は、入力側でサンプリング コンデンサを使います。入力信号が DC に近付くと、これらのスイッチトキャパシタは他の内部コンデンサと相互に作用し、それらのコンデンサが大きな抵抗であるかのような挙動を示します。周波数が高い場合、それらの挙動はさらに複雑化します。
ADC の入力インピーダンスは、回路内の他の部品と同様に非線形であり、非常に高い周波数までフーリエ成分を持ちます。
以下では、この現象を解析するための各種方法を紹介します。また、簡単な解決策も提示します。
不適正な DC 挙動の解析
通常、A/D コンバータ入力は、入力抵抗として表現( モデル化 ) されます。スイッチトキャパシタは、抵抗とは異なり、入力における低周波 (DC) インピーダンスには応答せず、高周波インピーダンスに応答します。
オペアンプ回路でサンプリング コンデンサ入力を備えた ADC を駆動する場合、予期した通りに動作しない事があります。たとえ「DC」アプリケーションであっても、オペアンプの低周波での挙動によって回路の挙動が決まるわけではありません。
例
ここでは、不適切な回路の典型的な解析事例について説明します。図 17 のように、MCP6031 オペアンプを使ってユニティゲインでMCP3421Δ-ΣADCを駆動します。MCP3421 は、3.75 SPS (18 ビット ) ~ 240 SPS(12 ビット ) (typical) のデータレートを持ち、DC で動作するように見えます。この理由から、MCP6031 はドライバとして適切な選択と思われます。このオペアンプは低無負荷時電流 : IQ = 0.9 µA、低オフセット電圧 : VOS ≤ ±150 µV、低 DC 出力抵抗 ( 表 B-1 参照 ) といった特性を備えています。
式 12:
図 17: MCP3421 の駆動 ; 不適切な相互作用のモデル
このモデルでは、RODC と ZIND 間の相互作用によってゲインエラーが約 -0.06 ppm しか生じないかのように見えます。しかし、実際の回路の挙動は、この簡略化したモデルとは大きく異なります。
回路 応答
GN(V/V)
CL(F)
RSH(Ω)
CSH(F)
fP(Hz)
QP( )
f3dB(Hz)
xmax(%)
1.0 10p open open 9.3M 0.23 9.3M 0100p 12.7k 47p 2.9M 0.71 2.9M 41n 174 10n 0.93M 0.71 0.93M 410n 42.2 120n 0.29M 0.71 0.29M 4
10.0 100p open open 930k 0.22 211k 01n open open 294k 0.69 285k 410n 182 100n 93k 0.71 93k 4100n 43.2 1.2µ 29k 0.71 29k 4
Note1: これらの補償済みの結果の全てで HPK/K = 0 dB です。
1
10
100
1,000
10,000
100,000
1.E-11 1.E-10 1.E-09 1.E-08 1.E-07Normalized Load Capacitance; CL/GN (F)
Estim
ated
RSH
( )
1.E-10
1.E-09
1.E-08
1.E-07
1.E-06
1.E-05
Estim
ated
CSH
/GN (F
)
10p 1n 100n
100k
100p1
RSH:GN = +1GN +21k
MCP6271
10n
10k
100
CSH/GN:GN = +1GN +2
10µ
100p
10n
100n
1n
1µ
10
Note: スイッチトキャパシタは、それらを駆動する回路に対して DC 抵抗とはなりません。
RODC GN RO AOL⁄( ) 0.13Ω= =
VIN
MCP6031
RODC
MCP3421
Δ−Σ
0.13Ω
ZIND2.25MΩ
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AN884
AC 解析
オペアンプと ADC 間の相互作用を表現可能な も単純なモデルでは、オペアンプのゲイン、ADC サンプリング レートにおける閉ループ出力インピーダンス、ADC 等価入力抵抗を使います。解析を簡略化するために、その他の高調波成分は無視します。
例 -1MCP3421 の入力サンプリング コンデンサのスイッチングはデータレートよりも大幅に高速です ( オーバーサンプリング比による )。18 ビットモードのサンプリング レート(fSMP)は約16 kSPSです。これはMCP6031の帯域幅 (10 kHz) を超えています。この特定の回路では、MCP6031 の開ループ出力抵抗 (RO) を使って DCゲイン精度を推定できます。ZO は fSMP 以上の周波数で一定です。ZO が一定であるため、より複雑な解析は不要です。図 18 に、オペアンプと ADC 間の相互作用を表現可能なモデルを示します。
図 18: MCP3421 の駆動 ; 改良した相互作用モデル
このモデルの DC ゲインエラーは約 -3% となります。これは MCP3421 の 大仕様 INL の約 900 倍にもなるため、このように大きなゲインエラーを許容する事はできません。ベンチ試験でも、この結果に近いゲインエラー (-5%) を計測しました。
例 2 - オペアンプの高速化
より高速なオペアンプを使うと、2 つの利点が得られます。まず、開ループ出力抵抗が小さくなり、利得帯域幅積が向上するため、等価出力インダクタンスが小さくなります。また、オペアンプが十分に高速であるために ADC サンプリング レートにおいて誘導的である場合、オペアンプのエラーへの寄与が大幅に減少します。
オペアンプを MCP606 に交換すると、下記の特性が得られます ( 図 19 と表 B-1 参照 )。
図 19: MCP3421 の駆動 ; 高速なオペアンプの使用
この回路の AC 解析は簡単です。MCP3421 のサンプリングレート (fSMP = 16 kSPS) における MCP606 の出力インピーダンスは、下記のように概算できます。
式 13:
ゲインエラーは、複素インピーダンスの比によって大まかに概算できます。位相差がほぼ 90° である事により、エラーが大幅に減少します。
式 14:
DC ゲインエラーと位相シフト ( 時間遅延 ) は、どちらも無視可能です。MCP606 を使う事により、このような改善を得る事ができますが、VOS = ±250 µV ( 前ページでは ±150 µV)、IQ = 18.7 µA ( 前ページでは 0.9 µA)になります。
ステップ応答解析
この回路のステップ応答解析は、AC 解析よりも高精度で有益です。この回路のスイッチング時の挙動を調べるために、ステップ関数を入力し、出力が目標精度で安定するまでの挙動を観察します。正確な ADC 結果を得るには、セトリングタイムが十分に短い事が必要です。
Note: オペアンプを高速化すると、既に述べた問題の多くを解消できます。
RO = 4.20 kΩfGBP = 155 kHz
f2P = 673 kHzGN = K = 1 V/V
f3dBA ≈ 155 kHzLOUT ≈ 4.31 mHROUT ≈ 5.46 kΩ
VIN
MCP6031 MCP3421
Δ−Σ
ZIND2.25MΩ
ZOUT=RO72.8kΩf≥fSMP
VIN
MCP606 MCP3421
Δ−Σ
ZIND2.25 MΩ
ZOUT≈(217Ω)∠(87.7°)
ZOUT ROUT j2πfSMPLOUT( )=
ZOUT 1 15.46 kΩ( )
-------------------------- 1j 217Ω( )--------------------+⎝ ⎠
⎛ ⎞⁄=
ZOUT 217Ω( ) 87.7°∠=
ZINDZIND ZOUT+--------------------------------- 2.25 MΩ( )
2.25 MΩ( ) 8.7 Ω( ) j 217 Ω( )+ +--------------------------------------------------------------------------------------=
ZINDZIND ZOUT+--------------------------------- 1 3.9 ppm–( ) 0.0055– °∠=
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AN884
例 -1図 20 に、MCP6031 オペアンプを使った回路の時間領域解析用のモデルを示します。
図 20: 時間領域解析用のオペアンプおよび ADCのモデル
ここでは 28 pF の負荷容量を使って、ステップ応答のセトリングタイムを下記のように推定します ( 式 9、式 A-5、式 A-15 参照 )。
fSMP は約 16 kSPS であるため、サンプリング期間(TSMP) は約 62.5 µs です。xset が 1 桁減少するごとに、tset が 27 µs ずつ増加する事に注意してください。これに従い、5% のエラーは下記の条件で発生します。
この事から、前述のベンチ結果の計測では、ADC のセトリングに約 61% の TSMP が使われたと推測できます。補償しない場合、MCP6031 オペアンプはこのアプリケーションには低速すぎます。
例 - 2図 21 に、MCP606 を使った回路の時間領域解析用のモデルを示します。
図 21: 時間領域解析用のオペアンプおよび ADCのモデル
ここでは 28 pF の負荷容量を使って、ステップ応答のセトリングタイムを下記のように推定します ( 式 9、式 A-5、式 A-15 参照 )。
例 -1 から、tset が約 38 µs である事がわかっています。xset が 1 桁減少するごとに、tset は 2.5 µs ずつ増加します。これに従うと、 38 µs における xset は、0.01%よりも約 11 桁小さくなるため、セトリングエラーは無視可能です。極の尖鋭度 (QP) が低い事も有利に働きます。MCP606 は、一切の補償を必要とせずに、このアプリケーションに良好に適合します。
CL ≈ 1 / (fSMPZIND) ≈ 28 pFfP ≈ 27.9 kHz
QP ≈ 0.396f3dB ≈ 13.0 kHztset ≈ 30 µs, xset = 10%tset ≈ 56 µs, xset = 1%tset ≈ 83 µs, xset = 0.1%tset ≈ 110 µs, xset = 0.01%
tset ≈ 38 µs, xset = 5%
VINROUT
LOUT
MCP6031
MCP3421
ZIND = ADC の差動入力インピーダンス
Δ−Σ
1.16H
80.7kΩ
1+s/ω3dBA
K
≈ 28 pF、fSMP ≈ 16 kSPS でスイッチング
CL ≈ 1 / (fSMPZIND) ≈ 28 pFfP ≈ 458 kHz
QP ≈ 0.440f3dB ≈ 246 kHztset ≈ 3.0 µs, xset = 10%tset ≈ 5.5 µs, xset = 1%tset ≈ 8.0 µs, xset = 0.1%tset ≈ 10.5 µs, xset = 0.01%
VINROUT
LOUT
MCP606
MCP3421
ZIND = ADC の作動入力インピーダンス
Δ−Σ
4.31mH
5.46kΩ
1+s/ω3dBA
K
≈ 28 pF、fSMP ≈ 16kSPS でスイッチング
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AN884
R-C スナバを使った改良型回路
この方法は、RSH と CSH によるスナバを使って、高周波におけるオペアンプの出力インピーダンスを低減します。これにより、ADC サンプリングレートにおける抵抗ゲインエラーが減少します。このスナバは、フィードバック安定性を維持するように設計でき、ADC サンプリング レート ( およびその高調波周波数 ) における出力抵抗を大幅に低減できます。この改良は低コストで実装でき、とりわけ、高消費電流のオペアンプを使わなくて済みます。
例
式 8 を使って推定した MCP6271 向けの RISO と CL の値を図 22 に示します。負荷容量は正規化しています(CL/GN)。
図 22: MCP6031 の RISO の推定
図 23 では、ADC による容量性負荷は小さい (28 pF)ため、この負荷に対してオペアンプを安定化する必要はありません。それでもこの回路は、スナバ (RSH とCSH) を使ってスイッチング周波数における出力抵抗を低減し、結果としてステップ応答を改善します ( 共振回路の Q を低減します )。図 22 を参考にして、オペアンプを安定に維持可能な RSH と CSH の値を選択できます (CSH は容量性負荷として作用します )。下記のように、まず妥当な RSH の値を選択します。
• RSH (RISO) には、抵抗ゲインエラーを約 -0.044%に低減するために、1 kΩを選択します。
• CSH (CL) には、図 22 で上記の抵抗に対応する 大の容量 (2.2 µF) を選択します。
RSH と CSH によって決まる極周波数 (72 Hz) は、ADCサンプリング レート (16 kSPS)よりも大幅に低くなります。従って、サンプリング レート ( およびその高調波)におけるADC入力でのインピーダンスは一定です。
図 23 の回路では、サンプリング周波数において ADC入力でのインピーダンスを平衡させるための抵抗(RBAL) を使っていますが、使わなくて済む場合もあります。
図 23: MCP3421 の駆動 : R-C スナバを使用
次に、負荷容量が 28 pF の場合のステップ応答のセトリングタイムについて検討します (CSH は短絡 ) (式 9、式 A-5、式 A-16) 参照。
ADC サンプリング レートに比べてアンプが大幅に低速であり、スナバはサンプリング レートにおいて固定抵抗とみなす事ができるため、アンプの出力インピーダンスが性能に対する支配的要因となります。DC エラーは、予期した通り約 -0.044% になるはずです。
極が 2 つあるため、16 kHz における一切のクロストークは 88 dB で除去されます。
MCP3421 をこれよりも低精度の条件 ( 低サンプリングレート / 高データレート ) で動作させる場合、CSHを大きくする必要があります。詳細は、補遺 C:
「MCP3421 のサンプリングレート」を参照してください。
1,000
10,000
100,000
1.E-11 1.E-10 1.E-09 1.E-08 1.E-07 1.E-06Normalized Load Capacitance; CL/GN (F)
Estim
ated
RIS
O (
)
10p 1n 1µ
100k
100p1k
GN = +1GN +2
10k
MCP6031
10n 100n
CL = 2.2 µFfP ≈ 99.6 Hz
QP ≈ 1.36f3dB ≈ 140 Hztset ≈ 10 µs, xset = 10%tset ≈ 20 µs, xset = 1%tset ≈ 30 µs, xset = 0.1%tset ≈ 40 µs, xset = 0.01%
VIN
MCP6031
RSH
CSH
1.00kΩ
2.2µF
RBAL1.00kΩ
MCP3421
Δ−Σ
1.00kΩZIND
2.25MΩ
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AN884
非線形応答
オペアンプが供給可能な出力電流よりも容量性負荷が要求する電流の方が大きい場合、応答は非線形となります。この非線形性により、出力電圧スルーレート( データシートに記載されているオペアンプ内部のスルーレートではない ) が制限されます。
スルーレートを制限する物理的要因
オペアンプからの出力電流 (IOUT) は、容量性負荷 (CL)に流れます ( 図 24 参照 )。IOUT は、オペアンプの出力短絡電流 (ISC) を超える事はできず、また CL の電圧(VOUT) の変化率は IOUT に比例するため、VOUT のスルーレートは一定レベル (SRCL) 以下に制限されます。SRCL は、オペアンプの内部的なスルーレート (SR) とは物理的に無関係であり、回路の挙動は、どちらか低い方のスルーレートにより制限されます。
図 24: IOUT、CL、VOUT
SRCL ( 単位 : V/s) は下式により求まります。
式 15:
スルーレートと正弦波
SRCL または SR よりも高いエッジレートを持つ正弦波では、信号歪みが生じます。 大エッジレートは下式により求まります。
式 16:
回路設計
スルーレート制限を避けるには、下記の条件が必要です。
式 17:
1 つの対策として、CL よりも前で、信号にローパスフィルタを適用する方法があります ( 図 25 参照 )。入力側のフィルタ (LPF) の帯域幅 (BW) は、下記の条件を満たす必要があります。
式 18:
図 25: SRCL による制限を回避するためのローパスフィルタ
別の対策として、図 26 に示すように、RISO を追加する方法もあります。これは、IOUT を制限するとともに、出力にローパスフィルタを追加する効果も持ちます。大電流は VOUT(t) = 0 で発生し、この時の RISO の両
端電圧は VM です。従って、下記の条件満たす必要があります。
式 19:
図 26: 分離するための抵抗 (RISO) による出力電流 (IOUT) と帯域幅 (BW) の制限
この回路は、VOUT における信号帯域幅を下記のように低減します。
式 20:
この方法でも、式 18 と同等の結果が得られますが、オペアンプの内部 SR による制限を回避する事はできません。これを回避するには、オペアンプよりも前の回路で対策する必要があります。
信号のスルーレートが SR または SRCL を超えない限り、これらの設計式と補遺 A: 「2 次システム応答モデル」に記載した式を使って、回路の性能を推定できます。
VIN VOUT
RFRG
MCP6XXX
CL
IOUT
dVOUT t( )dt
------------------------IOUT t( )
CL-------------------=
SRCL maxdVOUT t( )
dt------------------------⎝ ⎠⎛ ⎞ ISC
CL--------= =
maxdVOUT t( )
dt------------------------⎝ ⎠⎛ ⎞ 2πfVM=
VOUT t( ) VM 2πft( )sin=
2πfVM min SRCL SR,( )<
BWmin SRCL SR,( )
2πVM--------------------------------------<
VIN VOUT
RFRG
MCP6XXX
CL
IOUTLPF
RISO VM ISC⁄>
VIN VOUT
RFRG
MCP6XXX
CL
IOUTRISO
BW 12πRISOCL--------------------------
ISC2πVMCL---------------------<
SRCL2πVM--------------= =
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AN884
例ここでは、MCP6271 を G = +1 V/V、CL = 1.0 µF の条件で使います。表 B-1 に基づき、SR = 0.9 V/µs、ISC = 25 mA であるため下記が求まります。
これは SR よりも大幅に低い値です。 大ピーク電圧が 2.5VPK の場合、入力信号の帯域幅は 1.8 kHz よりも低い事が必要です。
RISO を使って出力電流を制限する場合、100 Ωよりも大きな抵抗値が必要です。RISO = 130 Ω とした場合、下記の値が得られます。
RISOを応答ピーキング除去用に使う場合(QP = 1/√2に対して 7.6 Ω)、より広い帯域幅 (29 kHz) を達成しますが、出力電流制限と過大な信号歪みを避けるために、VM を 0.15 VPK よりも低く維持する必要があります。
スルーレートと矩形波
急峻なエッジを持つ矩形波も、容量性負荷で問題を生じます。矩形波 (10 ~ 90% 立ち上がり時間 tr、ピークツーピーク電圧 VPP) の 大エッジレートは、下式により概算できます。
式 21:
回路設計
立ち上がり時間がスルーレートによって制限される事を防ぐには、下記の条件を満たすように矩形波のエッジレートを下げる (VPP を小さくする、tr を大きくする )必要があります。
式 22:
入力側で矩形波にローパスフィルタ (BW = 0.35/tr) を適用する事により、エッジレートを制限します ( 図 25参照 )。
より低速の論理ゲートを使って tr を大きくする事もできます。
エッジレートは、出力側で RISO を使って制限できます( 図 26 参照 )。立ち上がり時間だけにしか影響を受けないような理想的な出力波形が本来達したであろうレベルに出力が達した時、IOUT は 大となります。IOUT < ISCを維持するには、下記の条件を満たす必要があります。
式 23:
RISO を使うと、エッジレートが低下するとともに波形が変化します。
例
ここでは、MCP6271 を G = +1 V/V、CL = 100 nF の条件で使います。表 B-1 から SR = 0.9 V/µs、ISC = 25 mA であるため、下記が求まります。
これは SR よりも極端に低い値です。 大電圧振幅が5.0 VPP の場合、入力信号の立ち上がり時間は 16 μs よりも大きい事が必要です。
オペアンプ入力側の矩形波のフィルタ処理の帯域幅は22 kHz よりも下げる必要があります。
RISOを使って出力電流を制限( 大電圧振幅: 5.0 VPP、入力立ち上がり時間 : 10 µs) する場合、RISO を 75Ωよりも大きくする必要があります。RISO = 100 Ωとした場合、下記の値が得られます。
RISO を応答ピークの除去用に使う場合 (QP = 1/√2 に対して 24.0 Ω)、より広い微小信号帯域幅 (92 kHz) を達成しますが、出力電流制限を回避するともに立ち上がり / 立ち下がり時間を低減するために、VPP を3.7 VPP よりも低く維持する必要があります。
電力損失
リアクタンス要素 ( 理想的なコンデンサとインダクタ )は電力損失を生じません。しかし、リアクタンス負荷を駆動するオペアンプは電力を消費します ( 出力段の負荷電流は出力トランジスタにより整流されます )。
図 27 に、以降の説明に使う回路を示します。CL は DC成分を通さないため、DC 負荷電流は生じません。低い周波数では、IQ ( オペアンプの無負荷時電流 ) と CLの影響が支配的となります。高い周波数では、RISO の影響が支配的となります。
図 27: IOUT、CL、VOUT
周波数の低い正弦波の場合、オペアンプの平均電力損失は下記のように計算できます。
式 24:
周波数が高くなるにつれて、負荷における CL の影響が支配的となるため、電力損失が増加します。
SRCL = 0.028 V/µs
QP = 0.046f3dB = 1.2 kHz
maxdVOUT t( )
dt------------------------⎝ ⎠⎛ ⎞ 0.8VPP
tr-------------------≈
0.8VPPtr
------------------- min SRCL SR,( )<
RISOVPP tr 0.8⁄( )min SRCL SR,( )–
ISC---------------------------------------------------------------------------->
SRCL = 0.25 V/µs
QP = 0.18f3dB = 16 kHz
VIN VOUT
RFRG
MCP6XXX
CL
IOUTRISO
POA VDD VSS–( ) IQ 2VMfCL+( )≈
VOUT t( ) VM 2πft( )sin=
f 12πRISOCL--------------------------«
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AN884
周波数がさらに高くなると、RISO が支配的となるため、オペアンプによる平均電力損失は下記のように一定となります。式 25:
CL が支配的な領域と RISO が支配的な領域の中間の周波数領域 (f ≈ 1/(2πRISOCL)) では、2 つの領域の計算結果のうち小さい方の値を使って POA を推定します。実際の POA は、この推定値より少し低くなります。
その他
本書における内容の簡略化
本アプリケーション ノートでは、検討結果を容易に理解して実際のアプリケーションに適用できるようにするために、内容を下記のように簡略化しています。
• モデル ( および式 ) を簡略化しています。
- 実際の回路では、より高次 ( 例えば 4 次 ) のシステム応答が生じ、伝達ゼロ点を含む可能性があります。
- 部品のばらつき ( 製造過程、温度、動作電圧によるばらつき、経時変化 ) を考慮していません。
• 表 B-1 はあくまでも参考データです。
• も一般的な問題と解決策だけを記載しています。
複数負荷の駆動
オペアンプを使って複数の負荷を駆動する場合があります。各負荷には、下記を含む大きな寄生容量が存在する可能性があります。
• プリント基板トレースの静電容量
• 配線または同軸ケーブルの静電容量
• RFI (EMC) 抑制用コンデンサ
• 負荷の入力静電容量
負荷点が複数あるため、これらの寄生容量が非常に大きく影響する可能性があります。プリント基板上のオペアンプ出力に、RISO を ( たとえそれが必要なさそうに思えても ) 追加しておく事を推奨します。この場合、回路を実用条件で試験するまで、RISO には非常に低い抵抗を取り付けておきます。
大きなコンデンサを高速に駆動する
容量性負荷が大きすぎてオペアンプでは高速に駆動できない場合、マイクロチップ社のパワー MOSFET ドライバ (www.microchip.com) の使用を検討してみる事を推奨します。これらのドライバは容量性負荷向けに設計されており、非常に優れた帯域幅、立ち上がり時間、スルーレートを備えます。
回路の検証
設計した回路の性能は、SPICE シミュレーションと、ブレッドボードによるベンチ試験により検証する事を推奨します。異常なイベントや条件を防ぐために、一般的慣例に従って設計してください。
マイクロチップ社製オペアンプのSPICEマクロモデルは、弊社ウェブサイト (www.microchip.com) から入手できます。
POA VDD VSS–( ) IQVM
πRISO---------------+⎝ ⎠
⎛ ⎞ VM2
RISO-----------–≈
f 12πRISOCL--------------------------»
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AN884
まとめ
オペアンプが大きな容量性負荷を駆動する場合、ピーキングまたは発振、帯域幅の減少、出力スルーレートの低下、消費電力の増加等を生じやすくなります。スイッチトキャパシタは、スイッチング周波数において、オペアンプの出力インピーダンスと相互に作用し、DCゲインエラー等の問題を引き起こします。これらの問題は「DC」アプリケーションでも発生します。出力電圧の変化率は、出力短絡電流により制限されます。
1 個の抵抗と、必要に応じて 1 個のコンデンサを回路に追加する事により、性能を大幅に改善できます。長所 / 短所の異なる 2 種類の実装方式を紹介しました。容量性負荷に対する影響を素早く評価できる簡略化した計算式も提示しました。
シミュレーション ツールとベンチ評価についても述べました。さらに、要件の厳しい回路向けの代替部品について説明しました。
参考資料
オペアンプ
[1] Bonnie Baker, “AN723 - Operational Amplifier ACSpecifications and Applications”, Microchip TechnologyInc., DS00723, 2000.[2] Adel Sedra and Kenneth Smith, “MicroelectronicCircuits”, 3rd ed., Saunders College Publishing, 1991,Chapter 8.[3] Paul R. Gray and Robert G. Meyer, “Analysis andDesign of Analog Integrated Circuits”, 2nd ed., JohnWiley & Sons, 1984.
2 次システム応答
[4] Charles Phillips and H. Troy Nagle, “Digital ControlSystem Analysis and Design”, 2nd ed., Prentice Hall,1990, pp 192-3.[5] Benjamin Kuo, “Automatic Control Systems”,5th ed., Prentice Hall, 1987.
DS00884B_JP - p. 14 © 2012 Microchip Technology Inc.
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AN884
補遺 A: 2 次システム応答モデル
本書では、ゼロ点を持たない 2 次の伝達関数を使いました。この種の伝達関数は、本書に記載したオペアンプ回路を良好に表現できます。
本補遺では、伝達関数を使いやすい等価な形態に変形する方法について説明します。また、正弦波およびステップ応答に関する簡単な式をいくつか紹介します。これらは、本書に記載した回路の性能を評価する上で役立ちます [2、4、5]。さらに、計測結果からこれらのパラメータを同定する際の注意事項についても記載しています。
A.1 等価な伝達関数
本アプリケーションの本編で使った伝達関数の形態は下式で表せます。
式 A-1:
制御理論を含む多くの技術分野では、この伝達関数を、減衰係数 (ζ) を使った下記の形態で記述する場合があります。この形態では、ζの値によって応答のモードを不足制動 ( アンダーダンピング : 0 < ζ <1)、臨界減衰( クリティカル ダンピング : ζ = 1)、過制動 ( オーバーダンピング : ζ > 1) に分類できるので便利です。詳細は [5] を参照してください。
式 A-2:
QP ≤ 1/2 の場合、下式のように分母を 2 つの実数極に因数分解すると便利です。
式 A-3:
この式を下記のように逆にすると便利な場合もあります。
式 A-4:
A.2 正弦波応答
図 A-1 に、代表的な周波数 ( 正弦波 ) 応答を示します。
図 A-1: 周波数応答
切り捨てまたは丸め誤差を 小限に抑えるために、f3dB の計算には下記の厳密な式を使います。
式 A-5:
図 A-2: QP と正規化した -3dB 帯域幅の関係
VOUTVIN
------------- K 1 sωPQP-------------- s2
ωP2
-------+ +⎝ ⎠⎜ ⎟⎛ ⎞⁄≈
VOUTVIN
------------- K 1 2ζ sωP-------⋅ s2
ωP2
-------+ +⎝ ⎠⎜ ⎟⎛ ⎞⁄≈
ζ 減衰係数1
2QP----------= =
VOUTVIN
------------- K
1 sωP1---------+⎝ ⎠
⎛ ⎞ 1 sωP2
---------+⎝ ⎠⎛ ⎞
---------------------------------------------------≈
QP 1 2⁄≤
A QP2
1 1 4QP2–+
----------------------------------⋅=
ωP2 ωP A⁄=ωP1 ωPA=
ωP ωP1ωP2=
QP 1ωP1ωP2---------
ωP2
ωP1
---------+⎝ ⎠⎜ ⎟⎛ ⎞⁄=
|VOUT/VIN|
f(logscale)
(logscale)
K
HPK
K/√2
fPK f3dB
f3dB fP 1 1
2QP2
----------– 1 1
2QP2
----------–⎝ ⎠⎜ ⎟⎛ ⎞ 2
1++ , QP1
2------->=
f3dBfPQP
12--- QP
2– 12--- QP
2–⎝ ⎠⎛ ⎞ 2 QP
4++
----------------------------------------------------------------------- , QP1
2-------≤=
0.01
0.1
1
10
0.01 0.1 1 10 100QP
f 3dB
/ f P
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ピークゲイン (HPK) は、周波数 fPK で発生します。ゲインピーキング(HPK/K)は正規化したパラメータです。式 A-6:
式 A-7:
図 A-3: QP と正規化したピーク周波数の関係
図 A-4: QP と正規化したピーク振幅の関係
A.3 矩形波応答
図 A-5 に、代表的なステップ ( 矩形波 ) 応答を示します。VOUT はゲイン K で正規化しています。図にはオーバーシュート (xmax)、セトリング精度 (xset)、10% 時間 (t10)、遅延 (50%) 時間 (td)、90% 時間 (t90)、ピークオーバーシュートまでの時間 (tmax)、セトリングタイム (tset) を示しています。
図 A-5: ステップ応答
不足制動、臨界減衰、過制動での単位ステップ応答の式をそれぞれ以下に示します。
式 A-8:
式 A-9:
fPK 0 , QP 1 2⁄≤=
fPK fP 11
2QP2
----------– , QP 1 2⁄>=
HPKK
---------- 1 , QP 1 2⁄≤=
HPKK
---------- QP 1 1
4QP2
----------–⁄ , QP 1 2⁄>=
0.00.10.20.30.40.50.60.70.80.91.0
0.1 1 10 100QP
f PK
/ f P
1
10
100
0.1 1 10 100QP
HPK
/ K
t
1
1+xmax
0.9
t90 tset
0.5
0.10
0 t10 tmaxtd
1–xset
VOUT/K
1+xset
VOUTK
------------- 1 A t( )–[ ] u t( )⋅=
QP 1 2⁄<
VIN t( ) u t( )=
A t( )ωP2 ωP1t–( )exp ωP1 ωP2t–( )exp–
ωP2 ωP1–--------------------------------------------------------------------------------------=
VOUTK
------------- 1 B t( )–[ ] u t( )⋅=
QP 1 2⁄=VIN t( ) u t( )=
B t( ) 1 ωPt+( ) ωPt–( )exp=
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式 A-10:遅延時間 (td = 50% 時間 ) は下式により概算できます。
式 A-11:
図 A-6: QP と正規化した遅延時間の関係
10 ~ 90% 立ち上がり時間 (tr) は下式により概算できます。
式 A-12:
図 A-7: QP と正規化した立ち上がり時間の関係
QP > 1/2 の場合、ステップ応答でオーバーシュート(xmax) が生じます。xmax と、ピークオーバーシュートまでの時間 (tmax) は下記のように計算できます。
式 A-13:
式 A-14:
図 A-8: QP と正規化したピークオーバーシュート時間の関係
VOUTK
------------- 1 C t( )–[ ] u t( )⋅=
QP12--->
VIN t( ) u t( )=
C t( )
ωPt–2QP------------⎝ ⎠⎛ ⎞ ωPAt φ+( )sinexp
A------------------------------------------------------------------=
A 1 1
4QP2
----------–=
φ 12QP----------⎝ ⎠⎛ ⎞acos=
td0.110 0.005QP 0.089QP
20.298QP
3+ + +f3dB
--------------------------------------------------------------------------------------------------------≈ , QP12---≤
td
0.2587 0.0781QP
------------------ 0.0954
QP2
------------------– 0.0173
QP3
------------------+ +⎝ ⎠⎜ ⎟⎛ ⎞
f3dB--------------------------------------------------------------------------------------------------≈ , QP
12--->
0.100.120.140.160.180.200.220.240.260.28
0.01 0.1 1 10 100QP
t d f 3
dB
tr t90 t10–=
tr0.350 0.013QP– 0.084QP
20.165QP
3–+f3dB
------------------------------------------------------------------------------------------------------≈ , QP12---≤
tr
0.2503 0.1177QP
------------------ 0.0409
QP2
------------------– 0.00246
QP3
---------------------+ +⎝ ⎠⎜ ⎟⎛ ⎞
f3dB-----------------------------------------------------------------------------------------------------≈ , QP
12--->
0.250.260.270.280.290.300.310.320.330.340.350.36
0.01 0.1 1 10 100QP
t r f 3
dB
xmax 0% , QP 1 2⁄≤=
xmax 100%( ) π 4QP2
1–( )⁄–( ), QP 1 2⁄>exp=
tmax 0 , QP 1 2⁄≤=
tmax QP fP 4QP2
1–⋅( )⁄ , QP 1 2⁄>=
0.1
1
10
100
0.1 1 10 100QP
t max
f P
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
x max
100%
10%
1%
0.01%
xmax
tmax fP
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目標セトリング精度 (xset) が決まれば、これに対応するセトリングタイム (tset) を推定できます。QP ≤ 1/2 の場合、下記の近似計算を使えます。式 A-15:
QP > 1/2 の場合、セトリングタイム (tset) を正確に計算する事は困難です ( リンギングにより、xset の変化に対して tset が不連続に変化するため )。そのかわり、リンギングの包絡線が精度 xset に達するまでの時間(tenv) を下式により推定できます。
式 A-16:
図 A-9: QP と正規化したセトリングタイムの関係
A.4 計測結果から 2 次モデルを同定する
周波数応答の計測結果がノイズをほとんど含まず、挙動が 2 次応答に非常に近い場合、容易に K、fP、QP を同定できます。
• ∠VOUT/VIN ( 単位は「 °」) からの同定
- fP ( 位相が -90° の時の周波数 )• |VOUT/VIN| ( 単位は「V/V」) からの同定
- 低周波数におけるゲイン K (f << f3dB)- 共振周波数におけるゲイン KQP (f = fP)
計測結果がノイズを多く含んでいる場合、または応答が 2 次的ではない場合、データを多数の周波数点で近似するために、より複雑な手法が必要です。多くの場合、 小二乗近似で十分に良好な結果が得られます。この際、安定性と信号応答波形に も影響する -3 dB帯域幅に近い周波数での近似を重視する必要があります。
tset0.367 0.013QP– 0.270QP
20.232QP
3–+f3dB
------------------------------------------------------------------------------------------------------ ,≈
xset 10%=
tset0.738 0.221QP– 1.764QP
23.076QP
3–+f3dB
------------------------------------------------------------------------------------------------------ ,≈
xset 1%=
tset1.113 0.530QP– 3.884QP
26.900QP
3–+f3dB
------------------------------------------------------------------------------------------------------ ,≈
xset 0.1%=
tset1.492 0.894QP– 6.319QP
211.215QP
3–+f3dB
--------------------------------------------------------------------------------------------------------- ,≈
xset 0.01%=
QP12---≤
tenv 2QP xset 1 1
4QP2
----------–⋅⎝ ⎠⎜ ⎟⎛ ⎞
ωP⁄ln–=
tset tenv≤
QP12--->
0.1
1
10
100
1000
0.01 0.1 1 10 100QP
t set
f 3dB
xset:0.01%0.1%
1%10%
Note: 図 A-9 は、QP ≤ 1/2 の時の tset f3dB と、QP > 1/2 の時の tenv f3dB を示しています。後者の場合、実際の tset は tenv よりも小さくなる可能性があります。
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AN884
補遺 B: マイクロチップ社のオペアンプ
B.1 f2P の推定
オペアンプモデルの f2P を推定するには、データシートの開ループゲイン線図で、位相が- 135°になる周波数(f-135) を読み取ります。その線図で使われている容量性負荷の代表値 (CLtyp)( マイクロチップ社のデータシートでは通常 60 pF) 向けに、f-135 を下記のように調整します。
式 B-1:
B.2 オペアンプの性能
表 B-1 に記載した代表的なマイクロチップ社製オペアンプの性能パラメータは、製品のデータシートから推定しています。これらのデータシートには、公式にサポートする仕様値が記載されています。これらのデータシートは、弊社ウェブサイト (www.microchip.com)から入手できます。
表 B-1: 代表的マイクロチップ社製オペアンプのパラメータ推定値
B.3 MCP6V01/2/3 および MCP6V06/7/8オペアンプ
これらの自動ゼロ調整オペアンプの出力インピーダンスは、図 5 の簡略化したモデルよりも複雑です。これらのオペアンプを安定化するには、各製品のデータシートを参照してください。
φCLtyp 2πf 135– ROCLtyp( )atan≈
f2P f 135– 45° min φCLtyp , 40°( )–( )tan⁄≈
製品
GN_MIN(V/V)
Specified
fGBP(Hz)Typ
SR(V/µs)Typ
f-135(Hz)Typ
ISC at min VDD(mA)Typ
ISC at max VDD(mA)Typ
RO(Ω)
Meas
ΦCLtyp(°)
Typ
f2P(Hz)Typ
MCP6041 1 14k 0.003 23k 2 20 101k 41 263kMCP6141 10 100k 0.024 15k 2 20 108k 31 111.1kMCP6031 1 10k 0.004 23k 5 23 72.8k 32 102kTC1034 (Note 1)
1 60k 0.035 510k 8 8 72.8k 72 5.83M
MCP606 1 155k 0.080 270k 7 17 4.20k 23 673kMCP616 1 190k 0.080 300k 7 17 5.05k 30 1.10MMCP6231 1 300k 0.15 800k 6 23 2.62k 38 6.83MMCP6241 1 550k 0.30 1.20M 6 23 1.69k 37 8.99MMCP6001 1 1.00M 0.60 1.00G 6 23 780 90 11.4GMCP6271 1 2.00M 0.90 5.00M 25 25 368 35 27.6MMCP601 1 2.80M 2.3 3.10M 22 12 350 22 7.39MMCP6281 1 5.00M 2.5 11.0M 25 25 173 36 66.9MMCP6291 1 10.0M 7.0 28.0M 25 25 108 49 320MMCP6021 1 10.0M 7.0 20.0M 30 22 108 39 195M
Note1:TC1034 のパラメータは TC1026、TC1029、TC1030、TC1035 にも適用します。
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AN884
補遺 C: MCP3421 のサンプリングレート
MCP3421 の 新のデータシート (2008 年 11 月発行 )には、サンプリング レートのデータを直接記載していません。データレートはサンプリング レートに関連しており、マイクロコントローラと通信するためのオーバーヘッドを含んでいます。
表 C-1: MCP3421 のサンプリング レート
選択した精度(bit)
データレート(SPS)Typ
サンプリング レート(SPS)Typ
(Note 1)
12 240 25614 60 102416 15 409618 3.75 16386
Note1:データシートの内容が公式の仕様値です。
上表はあくまでも参考データにすぎません。
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• マイクロチップ社では、通常の条件ならびに仕様に従って使用した場合、マイクロチップ社製品のセキュリティ レベルは、現
在市場に流通している同種製品の中でも最も高度であると考えています。
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マイクロチップ社データシートにある動作仕様書以外の方法でマイクロチップ社製品を使用する事になります。このような行
為は知的所有権の侵害に該当する可能性が非常に高いと言えます。
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11/29/11