ダム貯水池における水資源品質確保技術に ついて－日本の風土に … ·...
TRANSCRIPT
1
ダム貯水池における水資源品質確保技術について－日本の風土に適合した技術開発－
埼玉大学
大学院理工学研究科 環境科学・社会基盤部門
助教 古里 栄一
4.新技術説明会について（実施後フォローアップ、来年度の実施） 【産連展開部（産学連携支援Ｇ）】
2
「貯留水」品質管理
• ダム関連施設の分類
• 堤体(コンクリート，ロック，アース，地下ダム，，)
• 貯留水(≒貯水池？)
• 関連機械電機施設
• 周辺土木施設(橋梁，付け替え道路，トンネル，付け替え鉄道，のり面保護工．．．．．)
• ※「貯水池」は「場」の名称であり，あいまいさを含む可能性がある．
3釜房ダム管理所資料より
たとえば．．．（大きければ良いというものではありませんが．．．）
提体・諸機械電機施設
貯留水
橋梁・付替道路等
蔵王山
気泡循環施設群
4
背景 : ダム貯水池における貯留水の品質管理と課題ダム貯水池(多目的)
：重要な社会資本施設➢水資源の開発➢発電➢洪水調節➢上水道➢灌漑・工業用水
貯留水の品質管理が重要
➢ 貯留水の品質管理➢ 高品質な水の供給
➢ 不純物を含まない➢ 毒性が無い➢ 富栄養化していない
➢ 直轄ダム-特定多目的ダム法に基づき設計．国が計画・管理．➢ 補助ダム-国からの補助を受け地方自治体が計画・管理．➢ 水資源機構ダム-水資源機構が計画・管理
4
図: 釜房ダム (宮城県川崎町)
図:富栄養化した水域
課題:➢植物プランクトンの異常増殖➢有害物質の形成➢生態系の破壊➢非衛生的な環境➢効率的な貯留水の品質管理
5
従来技術とその問題点
既に実用化されている，貯留水品質改善技術には、様々な手法が存在するが、
確かな学術基礎の不足に起因する確実性の費用対効果の低さが存在
等の問題があり、今後の解決されるべき課題である。
6
背景 :曝気循環-効率的な設計・管理
6
図: 循環による変化 (高山ダム), JWA (2005)
歴史および効果1950 年代以来，多くの国で対策が適用
➢ 水温成層の生成➢有害なシアノバクテリアの削減➢貯留水の品質改善
気泡の浮力を利用した循環流を発生する気流拡散装置
図:人工循環の概念図 図:水温鉛直分布の気泡循環実施による変化（寺内ダム） 水資源機構資料(2003より)
課題
水深
(m)
[気泡循環で生じる流動]
図: テーゲル湖での気泡循環 (ドイツ，ベルリン)
小型コンプレッサーを使用した循環対策の前例が無い
貯水池規模に相当しない大型のコンプレッサーを使用した非
効率的な循環対策
7
水資源環境工学の構築：貯留水品質の戦略的管理
[基礎理論] [応用]
1. 物理陸水額; 密度成層形態の動態2. 気泡噴流; 流量と特性3. 水界生態学; 物理環境と一次生産
設計手法, 施設規模管理指針国際貢献気候変動への対応
[気泡循環とハビタット制御] ：密度流
光
z eu
水温
z m
z cr
[戦略的貯水池水管理の枠組み]
河川連続性確保[下流河川への微細粒子供
給量削減]
[設計手法:合理的設計]水域特性(規模・形状）・LCC・問
題発生機構との対応
[管理手法]・確実性(時期・運用),・他施設との連携 ,
・コスト縮減(臨界水深・IDH)
[グローバル視点]1.温暖化への適応， ２．国際貢献(世界最高水準技術の輸出・歴史的貯水池)
釜房ダム管理所操作室内の総合管理システム
8
貯留水品質の戦略的管理手法の研究
多 項 目 気 象 計 お よ び水 位 計 観 測 装 置 に よ る無人計測および同時遠方監視
多 項 目 水 質 鉛 直 分 布 高 精 度観 測 装 置 に よ る 水 質 ・ 気 象 数 値 の無 人 計 測 お よ び 同 時 遠 方 監 視 実 施 中
山城池における水質等の無人観測および浄化実験を埼玉大学，久米島町，島根大学，琉球大学，岐阜大学，鹿児島大学，ベルリン工科大学，ライプニッツ淡水生態学・漁業研究所との共同研究として実施中です．
久米島PJ研究開発コンソーシアム(代表：古里栄一(埼玉大学大学院理工学研究科))
多 項 目 水 質 鉛 直 分 布 高 精 度観測装置による水質・気象数値の無人計測および同時遠方監視実施中
緊急連絡先：古里栄一(090-4594-4501)
期間：平成28年12月21日から平成29年8月末
多 項 目 気 象 計 お よ び水 位 計 観 測 装 置 に よ る無人計測および同時遠方監視
HaRLCS (prototype)
9
大局的な富栄養化現象の発生機構と水質保全対策との関係
(特に、ダム貯水池)
流域における負荷の発生
貯水池に流入
有光層への栄養塩の供給
低次生態系の諸過程(主に植物プランクトン）
諸過程の結果としての現象の発生(例：水の華)
【流域対策】廃水処理事業等、発生負荷の削減
【貯水池内対策 その１】バイパス・フェンス等流動制御
【貯水池内対策 その２】気泡循環・バイオマニピュレーション
等の発生させない環境の創造
10
対策技術の枠組み
• 浅枝先生の対策の配置図
11
気泡循環対策の概要
図 気泡装置によって貯水池で広域的に生じる流動の模式図
(丹羽，久納 1994)
• 【間接的複合効果】– 水深10m以上まで、強制混合– 藍藻類の生息環境を間接的に破壊→他種の増殖– 流入栄養塩の下層への押し込み
12
効果の事例（土師ダム）：ハビタットの大規模制御と社会実装
• 気泡循環でアオコの抑制に成功（おそらく大規模多目的ダムでは日本初
↓
• その後，多くの多目的ダムで適用
↓
• 水機構9ダムでの効果
↓
• 当該技術の文部科学大臣表彰
水の華発生
水の華抑制
水資源機構(2014)水とともに8月号
13
研究実施状況：リアルタイム水質監視
14
新技術の特徴・従来技術との比較
• 新技術– 設計・管理の双方における費用対効果を向上できる技術
– 確固たる学術基礎に基づく
• 従前技術– 学術的基礎不足
– 費用対効果向上に対する意識不足
– 社会資本設備としては改善が必要
• 本技術の適用による期待される効果– 高い費用対効果
– 学術的正確性
15
想定される用途
• 用途–ダム貯水池水質保全
–ダム下流環境改善
• 日本中および海外の莫大な貯水池，ため池等への適用
• 現時点では，ほぼ日本の全水域の管理システムが不十分である．
• 莫大な潜在的適用箇所が存在する．
16
企業への期待
• 対策システムについては，現在主に学術基礎の構築を図っている．
• 将来的には，社会実装に向けての課題として，実際のダム貯水池等の管理施設（例：ダムコンピューターや諸観測施設）と同様な位置づけの施設開発と展開が必要である．
