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スバルの進化と営農サンバー(JAサンバー)の歴史 初代モデルは、スバル 360 の開発者でもある富士重工業の百瀬晋六氏をチー フエンジニアとして、スバル 360 の 完成直後から開発着手され、1960(昭和 35)年の東京モーターショーで発表、翌 1961(昭和 36)年に市販されました。 リアエンジン方式、横置きトーションバースプリングとトレーリングアームを 組み合わせた四輪独立懸架。過積載へ の危惧もあったのでスプリングレートは スバル 360 より上げられてはいましたが、商用車としては異例の乗り心地を 誇 りました。このソフトなサスペンションは、荷痛み防止にも優れた効果を発 揮し、壊れやすい品物を扱う中小零細事業主のユーザーたちからは、ディーラー を通じて「ガラス(板ガラス)が割れない」「豆腐の角が崩れない」といった好 意的な報告が寄せられたと聞きます。 初代(1961 年 -1966 年)K151 型 1982(昭和 57)年 9 月登場。4 輪独立懸架というサスペンションはこれまで どおりですが、この 4 代目からは 4WD 車のフロントサスペンションが従来のセミトレーリング式からマクファーソン・ ストラット式に変更。タイヤは 4WD 全車に 12 インチ(ただしブレーキは全車、 大径 4 輪ドラム)を採用し、4WD には超低速ギアの EL が設定されました。 1986(昭和 61)年 5 月一部改良。全車に ELR シートベルトが 装備されまし た。1987(昭和 62)年 9 月のマイナーチェンジでは、4WD 車はすべてフロ ントブレーキがベンチレーテッド・ディスク式に 変更となりました。これは、 当時の既存の軽貨物車としては業界初の採用となりました。 4 代目(1982 年 -1990 年)KT2 型 1973(昭和 48)年 2 月登場。宣伝コピーから「剛力(ごうりき)サンバー」という通称で呼ばれました。JA 長野県 で は「買取り購買事業」を開始、県内 JA と共に本格的な軽トラックの販売を開始いたしました。初代以来の空冷エン ジン(EK31 型)から 2 サイクル 2 気筒水冷エンジンにチェンジ。また、リアのテールランプにおけるワンテールから ウイ ンカーランプをブレーキランプと独立させて、橙色となりました。 1976(昭和 51)年 2 月には、長らく続いた 2 サイクルエンジンを捨て、水冷 4 サイクル 2 気筒 SOHC エンジン (EK21 型)に変更となりました。同年 5 月、360cc 用のボディにバンパーの み延長させて 500cc エンジン(EK22 型)に積み替え、 「サンバー5(ファイブ)」 K75 型として生まれ変わりました。 エンジン(EK22 型)に積み替え、「サンバー5(ファイブ)」K75 型として 生 まれ変わりました。 1977(昭和 52)年には完全に新規格車体幅を拡大して、 550cc K77 型(EK23 型エンジン搭載)となり、1980(昭和 55)年より、 破性に優れた四輪駆動モデルが軽トラックとして初めて設定され、 日常的に悪 路や急勾配での走行を強いられる長野県では、農家から 高い評価を受け、爆 発的な人気のもと、多くの注文をいただきました。 また、1981(昭和 56)年 4 月には、営農サンバーが誕生・発売となりました。 3 代目(1973 年 -1982 年)K71 型 1966(昭和 41)年に登場し、通称「ニューサンバー」。初代よりもすっきりとしたフロントマスクを採用し、デザイン が 洗練されました。オプションで副変速機を装備し、前進 6 段・後進 2 段のオーバートップ付を選ぶこともでき、 1968(昭和 43)年には 3 段+オーバートップ付に変更されました。 1970(昭和 45)年にはダミーグリルが装着され、エンジンも R-2 用のリードバルブ付 2 サイクルに変更されました。 このモデルは通称「ババーンサンバー」と呼ばれました。また、インパネも R-2 から流用されたフルパッドのものになり、 安全性と見栄えが向上。フロントドアが「スーサイドドア」から、通常の前ヒンジ・後ろ開きになったのもこのモデル から でした。 さらに 1972(昭和 47)年に再度マイナーチェンジし、ダミーグリルが大型化。このモデルは「ストロングサンバー」 の通称で呼ばれ、後期型 R-2 同様、あまりにもアクの強いデザインの変貌となりました。 2 代目(1966 年 -1973 年)K153 型 二段広床式のニューサンバートラック ニューサンバートラック ババーンサンバー ストロングサンバー 2 月に発売されたサンバートラック サンバートラック三方開 SDX 2 月に発売された剛力サンバー 1990(平成 2)年 3 月登場。新規格に対応し、排気量が 660cc となりました。 エンジンは直列 4 気筒の最高出力 40ps の EN07C 型(キャブレター仕様)を 搭載。JA 長野県は、リヤゲートに「歩み板設置」用を開発し、農家の 皆様か ら好評をいただきました。 1992(平成 4)年 9 月のマイナーチェンジ以降、異形角型ハロゲンヘッドラ ンプに変更。1990 年代の軽自動車に おけるクラシックカー風デザインブームのさきがけとなりました。 1992(平成 4)年 9 月のマイナーチェンジ以降、異形角型ハロゲンヘッドランプに変更。 1990 年代の軽自動車におけるクラシックカー風デザインブームのさきがけとなりました。 5 代目(1990 年 -1999 年)KS4 型 1999(平成 11)年 2 月発表。1998(平成 10)年度の軽自動車規格変更によっ て、ボディサイズが拡大しました。 他メーカーのバン・トラックは軒並みセミ キャブ化されましたが、サンバーはトラック・バンともにフルキャブの車体形 状 を維持し、スーパーチャージャー車の出力が 58ps に向上。NA はキャブレ ター仕様が廃止されました。また、JA 長 野県は「可倒式鳥居アングル」を採 用しました。 2001(平成 13)年 8 月に一部改良。フロントターンシグナルランプの レン ズをアンバーからクリアーに変更し、NA エンジンの出力を 48ps に 向上しま した。2002(平成 14)年 9 月、最初のマイナーチェンジ。フロ ントマスクのデザインを変更し、ヘッドランプがマル チリフレクター化され、 六連星エンブレムを再び装着しました。 2005(平成 17)年 11 月、2 度目 のマイナーチェンジ。フロントマスクのデザインが再び変更され、メーターパネルのデザインも変更。オドメーターが 液 晶化され、全車に液晶式のツイントリップメーターが標準装備。ハンドルコラム上にあったハザードランプスイッチ がエ アコンパネル下部に移動しました。 2009(平成 21)年 9 月 3 日、4 ナンバー車(商用グレード)のみのマイナーチェンジ。フロントマスクがグリルレス デザインとなり、インパネ周りの意匠も変更されました。2012(平成 24)年 2 月 28 日、富士重工製 JA サンバート ラックは、惜しまれる声のなか生産終了となりました。 6 代目(1999 年 -2012 年)TT2 型 2012(平成 24)年 4 月 2 日、OEM サンバーが発売となりました。JA 長野県では、従来の長野県仕様を継承して「寒 冷地仕様・可倒式鳥居アングル・大型荷台作業灯・リヤスプリングの強化・運転席エア―バック」等を標準 装備とし ました。また、特別仕様車パワーステアリングのみ(エアコン・レス)を設定し販売しました。 OEM、JA サンバー誕生(2012 年 -2014 年)S211J 型 2014(平成 26)年 9 月 2 日発売。フロント足回りで L 型ロアームを採用し「操縦性・乗り心地」が大幅に改善。 来より「居住性・経済性」が向上しました。電子制御式 4 速 AT、DOHC 電子スロットルエンジン採用で、力強く燃費 性能の向上と なりました。 JA 長野県は、現在も長野県仕様を継承し「寒冷地仕様・可倒式鳥居アングル・大型荷台作業灯・リヤスプリングの強 化・運転席エア―バック」等を標準装備とし、特別仕様車 パワーステアリングのみ(エアコン・レス)を設定し販売し ています。 * 資料提供 SUBARU 博物館 http://members.subaru.jp/know/museum/ 現行 JA サンバー(2014 年~ )S510J 型

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Page 1: スバルの進化と営農サンバー(JAサンバー)の歴史...4 月には、営農サンバーが誕生・発売となりました。3 代目(1973 年-1982 年)K71 型

スバルの進化と営農サンバー(JAサンバー)の歴史

初代モデルは、スバル 360 の開発者でもある富士重工業の百瀬晋六氏をチーフエンジニアとして、スバル 360 の 完成直後から開発着手され、1960(昭和 35)年の東京モーターショーで発表、翌 1961(昭和 36)年に市販されました。リアエンジン方式、横置きトーションバースプリングとトレーリングアームを組み合わせた四輪独立懸架。過積載へ の危惧もあったのでスプリングレートはスバル 360 より上げられてはいましたが、商用車としては異例の乗り心地を誇 りました。このソフトなサスペンションは、荷痛み防止にも優れた効果を発揮し、壊れやすい品物を扱う中小零細事業主のユーザーたちからは、ディーラーを通じて「ガラス(板ガラス)が割れない」「豆腐の角が崩れない」といった好意的な報告が寄せられたと聞きます。

初代(1961 年 -1966 年)K151 型

1982(昭和 57)年 9 月登場。4 輪独立懸架というサスペンションはこれまでどおりですが、この 4 代目からは 4WD車のフロントサスペンションが従来のセミトレーリング式からマクファーソン・ストラット式に変更。タイヤは 4WD 全車に12 インチ(ただしブレーキは全車、大径 4 輪ドラム)を採用し、4WD には超低速ギアの EL が設定されました。1986(昭和 61)年 5 月一部改良。全車に ELR シートベルトが 装備されました。1987(昭和 62)年 9 月のマイナーチェンジでは、4WD 車はすべてフロントブレーキがベンチレーテッド・ディスク式に 変更となりました。これは、当時の既存の軽貨物車としては業界初の採用となりました。

4 代目(1982 年 -1990 年)KT2 型

1973(昭和 48)年 2 月登場。宣伝コピーから「剛力(ごうりき)サンバー」という通称で呼ばれました。JA 長野県で は「買取り購買事業」を開始、県内 JA と共に本格的な軽トラックの販売を開始いたしました。初代以来の空冷エン ジン(EK31 型)から 2 サイクル 2 気筒水冷エンジンにチェンジ。また、リアのテールランプにおけるワンテールからウイ ンカーランプをブレーキランプと独立させて、橙色となりました。1976(昭和 51)年 2 月には、長らく続いた 2 サイクルエンジンを捨て、水冷 4 サイクル 2 気筒 SOHC エンジン(EK21 型)に変更となりました。同年 5 月、360cc 用のボディにバンパーのみ延長させて 500cc エンジン(EK22 型)に積み替え、「サンバー5(ファイブ)」K75 型として生まれ変わりました。エンジン(EK22 型)に積み替え、「サンバー5(ファイブ)」K75 型として 生まれ変わりました。1977(昭和 52)年には完全に新規格車体幅を拡大して、550cc K77 型(EK23 型エンジン搭載)となり、1980(昭和 55)年より、 走破性に優れた四輪駆動モデルが軽トラックとして初めて設定され、 日常的に悪路や急勾配での走行を強いられる長野県では、農家から 高い評価を受け、爆発的な人気のもと、多くの注文をいただきました。 また、1981(昭和 56)年 4 月には、営農サンバーが誕生・発売となりました。

3 代目(1973 年 -1982 年)K71 型

1966(昭和 41)年に登場し、通称「ニューサンバー」。初代よりもすっきりとしたフロントマスクを採用し、デザインが 洗練されました。オプションで副変速機を装備し、前進 6 段・後進 2 段のオーバートップ付を選ぶこともでき、1968(昭和 43)年には 3 段+オーバートップ付に変更されました。1970(昭和 45)年にはダミーグリルが装着され、エンジンも R-2 用のリードバルブ付 2 サイクルに変更されました。 このモデルは通称「ババーンサンバー」と呼ばれました。また、インパネも R-2 から流用されたフルパッドのものになり、 安全性と見栄えが向上。フロントドアが「スーサイドドア」から、通常の前ヒンジ・後ろ開きになったのもこのモデルから でした。さらに 1972(昭和 47)年に再度マイナーチェンジし、ダミーグリルが大型化。このモデルは「ストロングサンバー」の通称で呼ばれ、後期型 R-2 同様、あまりにもアクの強いデザインの変貌となりました。

2 代目(1966 年 -1973 年)K153 型

ニューサンバートラック二段広床式のニューサンバートラック ニューサンバートラック ババーンサンバー ストロングサンバー

2月に発売されたサンバートラック

サンバートラック三方開SDX

2月に発売された剛力サンバー

1990(平成 2)年 3 月登場。新規格に対応し、排気量が660cc となりました。エンジンは直列 4 気筒の最高出力 40psの EN07C 型(キャブレター仕様)を搭載。JA 長野県は、リヤゲートに「歩み板設置」用を開発し、農家の 皆様から好評をいただきました。1992(平成 4)年 9 月のマイナーチェンジ以降、異形角型ハロゲンヘッドランプに変更。1990 年代の軽自動車におけるクラシックカー風デザインブームのさきがけとなりました。

1992(平成 4)年 9 月のマイナーチェンジ以降、異形角型ハロゲンヘッドランプに変更。1990 年代の軽自動車におけるクラシックカー風デザインブームのさきがけとなりました。

5 代目(1990 年 -1999 年)KS4 型

1999(平成 11)年 2 月発表。1998(平成 10)年度の軽自動車規格変更によって、ボディサイズが拡大しました。 他メーカーのバン・トラックは軒並みセミキャブ化されましたが、サンバーはトラック・バンともにフルキャブの車体形状 を維持し、スーパーチャージャー車の出力が 58ps に向上。NA はキャブレター仕様が廃止されました。また、JA 長 野県は「可倒式鳥居アングル」を採用しました。2001(平成 13)年 8 月に一部改良。フロントターンシグナルランプの レンズをアンバーからクリアーに変更し、NA エンジンの出力を 48ps に 向上しました。2002(平成 14)年 9 月、最初のマイナーチェンジ。フロ ントマスクのデザインを変更し、ヘッドランプがマルチリフレクター化され、 六連星エンブレムを再び装着しました。 2005(平成 17)年 11 月、2 度目のマイナーチェンジ。フロントマスクのデザインが再び変更され、メーターパネルのデザインも変更。オドメーターが液 晶化され、全車に液晶式のツイントリップメーターが標準装備。ハンドルコラム上にあったハザードランプスイッチがエ アコンパネル下部に移動しました。2009(平成 21)年 9 月 3 日、4 ナンバー車(商用グレード)のみのマイナーチェンジ。フロントマスクがグリルレス デザインとなり、インパネ周りの意匠も変更されました。2012(平成 24)年 2 月 28 日、富士重工製 JA サンバート ラックは、惜しまれる声のなか生産終了となりました。

6 代目(1999 年 -2012 年)TT2 型

2012(平成 24)年 4 月 2 日、OEM サンバーが発売となりました。JA 長野県では、従来の長野県仕様を継承して「寒冷地仕様・可倒式鳥居アングル・大型荷台作業灯・リヤスプリングの強化・運転席エア―バック」等を標準 装備としました。また、特別仕様車パワーステアリングのみ(エアコン・レス)を設定し販売しました。

OEM、JA サンバー誕生(2012 年 -2014 年)S211J 型

2014(平成 26)年 9 月 2 日発売。フロント足回りで L 型ロアームを採用し「操縦性・乗り心地」が大幅に改善。 従来より「居住性・経済性」が向上しました。電子制御式 4 速 AT、DOHC 電子スロットルエンジン採用で、力強く燃費性能の向上と なりました。JA 長野県は、現在も長野県仕様を継承し「寒冷地仕様・ 可倒式鳥居アングル・大型荷台作業灯・リヤスプリングの強化・ 運転席エア―バック」等を標準装備とし、特別仕様車 パワーステアリングのみ(エアコン・レス)を設定し販売しています。

*資料提供 SUBARU博物館http://members.subaru.jp/know/museum/

現行 JA サンバー(2014 年~ )S510J 型