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1 ミクロンサイズの 球形アパタイト粒子を 簡単に合成 兵庫県立大学 工学研究科 機械系工学専攻 准教授 飯村 健次

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Page 1: ミクロンサイズの 球形アパタイト粒子を ... · 吸光度を分光光度計により測定 試料 蒸留水 タンパク質吸着実験 使用したタンパク質

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ミクロンサイズの球形アパタイト粒子を

簡単に合成

兵庫県立大学 工学研究科 機械系工学専攻

准教授 飯村 健次

Page 2: ミクロンサイズの 球形アパタイト粒子を ... · 吸光度を分光光度計により測定 試料 蒸留水 タンパク質吸着実験 使用したタンパク質

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研究背景

生体材料として既に実用段階にあるヒドロキシアパタイトですが、もう一つタンパク質の分離精製にも大きなニーズがあります。

簡単に適度な大きさの粒子が得られれば、また優れた分離特性を持つものであれば、大儲けも夢ではありません

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ヒドロキシアパタイト

生体親和性に優れている

人工骨,人工歯根

イオン交換特性に優れている

Ca10(PO4)6(OH)2

ヒドロキシアパタイトとは?

タンパク質吸着クロマトグラフィー用カラム

直接的な応用

間接的な応用

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ある生体機能に関与するタンパク質を特定

種々のタンパク質が生体内に存在

多様な役割を果たしている

遺伝子治療

品種改良

タンパク質を分離精製する必要性

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新技術の基となる研究成果・技術一般的な合成法と形状

カラム充填材に最適な粒子径は5 µm ~20µm

圧力損失

圧力損失

針状ヒドロキシアパタイト

湿式法

カラム充填の際目詰まりするため使い難い

欠点

µm以下

一般的に板状ヒドロキシアパタイトは合成不可能

塩基性タンパク質を吸着分離できない

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ヒドロキシアパタイトのタンパク質吸着特性

c

a

b

Ca2+

PO43-OH-

acidicprotein

-ooc-ooc

+H3N

Basic protein

+H3N+H3N+H3N

a軸に沿って成長板状アパタイト

塩基性タンパク質がより吸着

c軸に沿って成長

針状アパタイト

酸性タンパク質がより吸着

形状を変えることで吸着するタンパク質を制御

-ooc-ooc

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60℃で保持し熟成→結晶化促進・細分化

比較的均一な球形粒子

W/O乳化液膜法

二リン酸カリウム

相分離

水-エタノール混合溶液

塩化カルシウム水溶液

W/O乳化液膜状態

熟成前(40µm)

2時間熟成後(5µm)

10µm

100µm

イオン交換が十分でなく結晶化していない

(半液滴状態)

リンとカルシウムが反応→シェルを形成

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mμ100

Just after adding CaCl2 aqPrecursor CA. 20~30μm Spherical particles CA. 5μm

After 2hrs

mμ100

mμ100After 1hr

Disrupture of precursorGeneration of finer spherical partiles

at 60℃

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Optical microscope images of particles for several ethanol concentrations (a) 90wt%, (b) 60wt% and (c) 40wt%.

粒子径もある程度制御可能

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ヒドロキシアパタイトではない

XRD解析結果

熟成後

HAP

K2CaP2O7

ピロフォスフェイト(K2CaP2O7)

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結晶相を転移させる一般的な手法

水熱合成法

①ポータブルリアクター

②温度コントローラー

150℃で24時間水熱処理

水熱合成

フライアッシュ ゼオライト

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水熱前(ピロフォスフェイト) 水熱後(HAp)

水熱合成後の物性評価

24h熟成後

HAP

K2CaP2O7

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pH値がカルシウム溶出量におよぼす影響

高pH

PO4K

OH

Ca

界面で反応 球形のままHAp転移?

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高pH下での水熱合成(NaOH添加)

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吸光度を分光光度計により測定

試料 蒸留水

タンパク質吸着実験

使用したタンパク質

酸性タンパク質:アルブミン (RCH(NH2)COOH )のアミノ酸約600から成る

塩基性タンパク質:リゾチーム (C616H963N193O182S10・XHCl)

対照試料:市販アパタイト(湿式法)

酸性または塩基性タンパク質水溶液

(100ppm)

アパタイト粒子

2時間振とう

酸性タンパク質(アルブミン)吸着

0

0.02

0.04

0.06

0.08

0.1

0.12

0.14

0.16

200 250 300 350 400

波長[nm]

吸光

度[a

.u.]

24時間 150℃水熱 

湿式法アパタイト

蒸留水

アルブミン

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リゾチー

ム吸

着量

(mg/

m2 )

塩基性タンパク質(リゾチーム)

得られたアパタイトは塩基性タンパク質のみ吸着

酸性タンパク質(アルブミン)

アルブミン吸

着量

(mg/

m2 )

リゾチー

ム吸

着量

(mg/

m2 )

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ゼータ電位測定結果

湿式法HAp(20.6mV)

- +

水熱合成後 pH14(-12.3mV)

- +

表面は負に帯電

板状アパタイトの合成に成功?

吸着特性+表面電位

表面は正に帯電

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XRDによる結晶面解析

c面ピークa面ピーク

板状であれば c面のピーク>a面のピーク

ではなぜ塩基性タンパク質を吸着したのか?

針状アパタイトの集合体

×

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しかし,負に帯電

カルシウム欠損型HAp?

Ca10- X(PO4)6(OH)2-X

板状HApではない

Ca+

Ca+

Ca+

Ca+

+H2N

塩基性タンパク質

+H2N+H2N

+H2N

PO43-

PO43-

PO43-

PO43-

針状HApであった

K2CaP2O7

))((

))((

))((

))((

考察

詳細なメカニズムは不明であるが

塩基性タンパク質を選択的に吸着する

球形アパタイト粒子の合成に成功した

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想定される用途

• これまで無かったタンパク質分離カラムに

• また、達成された吸着挙動に着目すると、重金属イオンの分離といった分野・環境用途に展開することも可能と思われる。

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実用化に向けた課題

• 現在、強度等の物性の点が不明である。

• 今後、タンパク質分離について実験データを取得し、カラム充填剤に適用していく場合の条件設定を行っていく。

企業への期待

• 分離精製に知見を持つ、企業との共同研究を希望。

• また、生体分野への展開を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :球状ヒドロキシアパタイ

ト及びその製造方法

• 出願番号 :特願2009-232624

• 出願人 :兵庫県

• 発明者 :飯村健次

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お問い合わせ先

兵庫県立大学 知的財産本部

知的財産コーディネーター 林谷正雄

TEL 078-367-8645

FAX 078-362-0654

e-mail [email protected]