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アバスチン 2.7.2 臨床薬理の概要 Page 1 アバスチン点滴静注用100 mg/4 mL アバスチン点滴静注用400 mg/16 mL (ベバシズマブ(遺伝子組換え)) [結腸・直腸癌] 2CTD の概要(サマリー) 2.7 臨床概要 2.7.2 臨床薬理の概要 中外製薬株式会社

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Page 1: アバスチン点滴静注用100 mg/4 mL...1) AVF0737g 試験(単剤反復第Ⅰ相試験) 各種進行固形癌患者を対象に0.1,0.3,1,3及び10 mg/kgの用量で単剤第Ⅰ相試験を実施

アバスチン 2.7.2 臨床薬理の概要 Page 1

アバスチン点滴静注用100 mg/4 mL アバスチン点滴静注用400 mg/16 mL

(ベバシズマブ(遺伝子組換え)) [結腸・直腸癌]

第2部 CTD の概要(サマリー)

2.7 臨床概要

2.7.2 臨床薬理の概要

中外製薬株式会社

Page 2: アバスチン点滴静注用100 mg/4 mL...1) AVF0737g 試験(単剤反復第Ⅰ相試験) 各種進行固形癌患者を対象に0.1,0.3,1,3及び10 mg/kgの用量で単剤第Ⅰ相試験を実施

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略語一覧 略語 省略していない表記 5-FU フルオロウラシル(5-fluorouracil) AUC 血中濃度時間曲線下面積 CBDCA カルボプラチン(carboplatin) CI 信頼区間 CL クリアランス CPT-11 塩酸イリノテカン(irinotecan) CRC 転移性結腸・直腸癌 Dose 投与量 DOX 塩酸ドキソルビシン(doxorubicin) HRPC ホルモン療法抵抗性前立腺癌 l-LV レボホリナートカルシウム(isovorin) L-OHP オキサリプラチン(oxaliplatin) LV ホリナートカルシウム(leucovorin) MBC 転移性乳癌 MRT 平均滞留時間 NSCLC 非小細胞肺癌 PTX パクリタキセル t1/2 initial 初期半減期 t1/2 terminal 終末半減期 Vc 中心コンパートメントの分布容積 Vd (ノンコンパートメント法により求めた)分布容積 Vss 定常状態の分布容積 VEGF 血管内皮増殖因子

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目次

2.7.2 臨床薬理の概要 ............................................................................................................. 4 2.7.2.1 背景及び概観 .......................................................................................................... 4 2.7.2.2 個々の試験結果の要約 .......................................................................................... 6

2.7.2.2.1 海外臨床試験 .................................................................................................. 6 2.7.2.2.1.1 AVF0737g 試験(単剤反復第Ⅰ相試験) ................................................... 6 2.7.2.2.1.2 AVF0761g 試験(併用反復投与第Ⅰ相試験) ........................................... 8 2.7.2.2.1.3 AVF0780g 試験(5-FU/LV 療法併用第Ⅱ相試験) ................................... 8 2.7.2.2.1.4 AVF2107g 試験(IFL 又は 5-FU/LV 療法併用第Ⅲ相比較試験).......... 10

2.7.2.2.2 国内臨床試験 ................................................................................................ 10 2.7.2.2.2.1 JO18157 試験(単剤又は 5-FU/l-LV 療法併用第Ⅰ相試験).................. 10

2.7.2.3 全試験を通しての結果の比較と解析 ................................................................ 12 2.7.2.3.1 母集団薬物動態解析 .................................................................................... 12 2.7.2.3.2 日本人と外国人の薬物動態の比較 ............................................................ 14 2.7.2.3.3 ベバシズマブと化学療法剤との薬物相互作用 ........................................ 16 2.7.2.3.4 ベバシズマブの薬力学(VEGF).............................................................. 20

2.7.2.3.4.1 海外データ .................................................................................................... 20 2.7.2.4 特別な試験 ............................................................................................................ 23

2.7.2.4.1 抗ベバシズマブ抗体検査 ............................................................................ 23 2.7.2.4.1.1 国内試験結果 ................................................................................................ 23 2.7.2.4.1.2 海外試験との比較 ........................................................................................ 27

2.7.2.5 付録 ........................................................................................................................ 31 2.7.2.5.1 JO18157 試験における抗体検査陽性例の予測血清中ベバシズマブ濃

度推移と実測値 ............................................................................................ 31 2.7.2.5.2 抗体陽性例の副作用及び有害事象一覧 .................................................... 38

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アバスチン 2.7.2 臨床薬理の概要 Page 4

2.7.2 臨床薬理の概要

2.7.2.1 背景及び概観 ベバシズマブ(本剤)は血管内皮増殖因子(VEGF)に対する遺伝子組換えヒト化 IgG1抗体

である。本剤は in vitro 及び in vivo 試験(2.6.2)により,血管新生の阻害による抗腫瘍効果,

転移抑制効果,腫瘍組織内の血管透過性抑制効果や,化学療法及び放射線療法との併用による

効果の増強作用を有することが示されている。 国内外において,薬物動態が検討された臨床試験を表 2.7.2.1-1に示す。このうち,薬物動態

に関する重要な検討が行われた第Ⅰ相臨床試験及び結腸・直腸癌患者を対象にした下記試験の

結果の要約を2.7.2.2に記述する。

(1) 海外試験 1) AVF0737g 試験(単剤反復第Ⅰ相試験)

各種進行固形癌患者を対象に0.1,0.3,1,3及び10 mg/kg の用量で単剤第Ⅰ相試験を実施

した。本試験ではベバシズマブの用量線形性について検討を行った。 2) AVF0761g 試験(併用反復投与第Ⅰ相試験)

各種進行固形癌患者を対象に,他の抗悪性腫瘍薬(ドキソルビシン,カルボプラチン/パ

クリタキセル又は5-FU/LV 療法)と併用第Ⅰ相試験を実施した。本試験ではベバシズマブ

及び併用された抗悪性腫瘍薬の血清又は血漿中薬物濃度を検討した。 3) AVF0780g 試験(5-FU/LV 療法併用第Ⅱ相試験)

転移性結腸・直腸癌患者を対象に,対照群(5-FU/LV 療法単独)又はベバシズマブ併用群

(5又は10 mg/kg,2週間毎投与[Dose intensity 2.5又は5 mg/kg/週]+ 5-FU/LV 療法)に無

作為に割り付け,5-FU/LV 療法併用第Ⅱ相試験を実施した。本試験では定常状態における

血清中ベバシズマブ濃度を検討した。 4) AVF2107g 試験(IFL 又は5-FU/LV 療法併用第Ⅲ相比較試験)

転移性結腸・直腸癌患者を3治療群(第1群:IFL(CPT-11 + 5-FU + LV)療法 + ベバシズマ

ブのプラセボ,第2群:IFL 療法 + ベバシズマブ,第3群:5-FU/LV 療法 + ベバシズマブ)

のいずれかの群に無作為に割り付け,第Ⅲ相比較試験を実施した。本試験では本剤の血清

中濃度に基づき母集団薬物動態解析を実施した。また,併用された CPT-11及びその活性代

謝物である SN38の血漿中薬物濃度を検討した。 (2) 国内試験

1) JO18157試験(単剤又は5-FU/l-LV 療法併用第Ⅰ相試験) 国内第Ⅰ相臨床試験では結腸癌又は直腸癌患者を対象に3,5及び10 mg/kg の用量で試験を

実施した。本試験では日本人における用量線形性,日本人と米国人の薬物動態の比較及び

5-FU/l-LV がベバシズマブの薬物動態に与える影響を検討した。

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表 2.7.2.1-1 ベバシズマブの薬物動態データを得た試験の一覧

レジメン 試験 (海外/本邦)

試験方法 対象患者 用量

(mg/kg) 投与頻度 併用化学療法 被験者数

平均クリア

ランス (mL/day/kg)

平均 分布容積

(mL/kg)評価資料/ 参考資料

AVF0737g(海外) 用量漸増

各種固形癌 0.1, 0.3, 1,

3, 10 初回,28日後か

ら週1回 × 3 なし(単剤)

25例 (各投与群5例)

2.75–9.29 37.9–48.6 評価資料 第Ⅰ相 AVF0761g

(海外) 各種固形癌

3 週1回 DOX,CBDCA/PTX,

5-FU/LV 11例 2.48–3.74 51.7–64.8 評価資料

AVF0780g(海外)

併用

CRC 5, 10 2週間毎 5-FU/LV 104例 2.78–2.79 45.4–46.1 評価資料

AVF0755ga)

(海外) HRPC

10 2週間毎 なし(単剤) 15例 2.71 46.1 参考資料

AVF0776g(海外) 用量漸増

MBC 3, 10, 20 2週間毎 なし(単剤)

3 mg/kg 群:18例 10 mg/kg 群:41例 20 mg/kg 群:16例

2.74–3.15 39.0–40.1 参考資料

第Ⅱ相

AVF0757g(海外)

併用

NSCLC 7.5, 15 3週間毎 CBDCA/PTX

7.5 mg/kg 群:32例 15 mg/kg 群:34例

2.75–2.98 39.4–42.9 参考資料

AVF2119g(海外)

MBC 15 3週間毎 カペシタビン 462例 2.08 34.3 参考資料 第

Ⅲ相 AVF2107g

(海外) CRC

5 2週間毎 5-FU/LV/CPT-11,5-FU/LV 923例 10.2

(mL/hr)b)3230

(mL)b) 評価資料

第Ⅰ相

JO18157(本邦) 用量漸増

CRC

3, 5, 10 初回,21日後か

ら2週間毎 5-FU/l-LV(2回目投与以降)

18例 (各投与群6例)

3.61–3.94 60.26–73.47 評価資料

CRC = 転移性結腸・直腸癌;HRPC = ホルモン療法抵抗性前立腺癌;MBC = 転移性乳癌;NSCLC = 非小細胞肺癌 DOX = ドキソルビシン;CBDCA = カルボプラチン;PTX = パクリタキセル;5-FU = フルオロウラシル;LV = ホリナートカルシウム;CPT-11 = 塩酸イリノテカン; l-LV = レボホリナートカルシウム a) 予備試験 b) 母集団薬物動態解析結果の推定値

アバスチン

2.7.2 臨

床薬理の概要

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2.7.2.2 個々の試験結果の要約 2.7.2.2.1 海外臨床試験

本項では,表 2.7.2.1-1に示した海外臨床試験のうち,各種固形癌を対象とした2つの第Ⅰ相

臨床試験及び結腸・直腸癌患者を対象にした試験から得た薬物動態の概要を記述する。 すべての臨床試験でベバシズマブは点滴静注した。

2.7.2.2.1.1 AVF0737g 試験(単剤反復第Ⅰ相試験) 各種固形癌患者を対象にして0.1,0.3,1,3及び10 mg/kg の用量を各群5例の被験者に投与し,

薬物動態を評価した。各群において0日目に本剤を点滴静注し,28,35及び42日目にも同量の

本剤を点滴静注し,最終投与後30日目まで薬物動態のための採血を実施した。適切なモデル

(1又は2-コンパートメントモデル)を用いて薬物動態パラメータを評価した。各用量群の平

均血清中ベバシズマブ濃度推移を図 2.7.2.2.1.1-1に示す。

時間(日)

血清

Bev

aciz

umab

濃度(μg

/mL)

清中

ベバ

シズ

マブ

濃度

(μg

/mL)

時間(日)

血清

Bev

aciz

umab

濃度(μg

/mL)

清中

ベバ

シズ

マブ

濃度

(μg

/mL)

図 2.7.2.2.1.1-1 AVF0737g 試験におけるベバシズマブ単剤投与後の血清中濃度推移(平均)

LTS = 定量限界濃度;ライン = 1又は2-コンパートメントモデルを用いて予測した濃度–時間データ;

シンボル = 観測データ;矢印 = ベバシズマブ投与日 0.1 mg/kg 群の被験者において,14日目以降,濃度が LTS になる場合があった。平均濃度を算出するた

めこれらの LTS 値を検出限界(0.078 μg/mL)と見なした。 [5.3.3.2-1 Figure 3を改変]

血清ベバシズマブ濃度は1相性あるいは2相性の消失を示し,低用量群(0.1及び0.3 mg/kg 投

与群)では他の投与群より,急速に低下した。初回投与から72日目までの利用可能なデータを

用いてコンパートメントモデルにより求められた薬物動態パラメータを表 2.7.2.2.1.1-1に示し

た。

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表 2.7.2.2.1.1-1 AVF0737g 試験における薬物動態パラメータ(平均 ± 標準偏差)

用量

(mg/kg) n

CL

(mL/day/kg)

Vc

(mL/kg)

Vss

(mL/kg)

t1/2 initiala

(day)

t1/2 terminalb

(day)

MRT

(day) 0.1 5 9.29 ± 7.07 48.0 ± 17.4 50.1 ± 17.0 NA 5.21 ± 2.41 7.40 ± 3.440.3 5 5.07 ± 2.39 48.6 ± 13.0 60.3 ± 7.30 1.9 10.4 ± 5.34 13.9 ± 6.11 1 5 3.27 ± 0.81 37.9 ± 7.77 60.4 ± 18.8 1.30 ± 0.535 14.7 ± 6.92 19.9 ± 9.253 4 3.65 ± 2.10 41.4 ± 12.0 53.4 ± 12.0 0.844 12.8 ± 6.60 18.1 ± 9.36

10 5 2.75 ± 0.47 43.5 ± 12.6 53.0 ± 10.9 2.17 14.2 ± 3.36 19.3 ± 3.18初回投与から72日目までの利用可能なデータを用いて1又は2-コンパートメントモデルにて解析 CL = クリアランス;Vc = 中心コンパートメントの分布容積;Vss = 定常状態分布容積;t1/2 initial = 初期半減期;

t1/2 terminal = 終末半減期;MRT = 平均滞留時間;NA = 該当せず a 2-コンパートメントモデルを用いた被験者のみで算出した(n=1 − 4)。 b 1-コンパートメントモデルの被験者では t1/2を用いて,2-コンパートメントモデルの被験者では t1/2βを用いて平

均値を算出した。 [5.3.3.2-1 Table 8を改変]

ベバシズマブの CL は低用量群(0.1及び0.3 mg/kg 投与群)でより大きく,バラツキが大き

かったのに対し,1~10 mg/kg の用量では一定で,バラツキも小さかった。平均 Vc値は37.9~48.6 mL/kg で,血清容積とほぼ同等であった。ベバシズマブの用量が増加しても Vssも Vcもほ

ぼ一定であった。 また,単回投与時と反復投与時の薬物動態パラメータを表 2.7.2.2.1.1-2に示した。初回投与

時データと初回投与後72日目までの利用可能なすべてのデータ(全データ)を用い解析したパ

ラメータを比較したところ,差異は小さかった。このことから,ベバシズマブ反復投与時の薬

物動態は単回投与時と同等であると考えられた。

表 2.7.2.2.1.1-2 AVF0737g 試験におけるベバシズマブの薬物動態パラメータ

(平均 ± 標準偏差)

CLa)(mL/day/kg) Vc b)(mL/kg) 用量 (mg/kg) n 初回投与 c) 全データ d) 初回投与 全データ

0.1 5 9.13 ± 6.90 9.29 ± 7.07 44.9 ± 16.5 48.0 ± 17.4 0.3 5 5.50 ± 2.47 5.07 ± 2.39 47.1 ± 11.5 48.6 ± 13.0 1 5 3.55 ± 0.72 3.27 ± 0.81 37.8 ± 8.85 37.9 ± 7.77 3 4 3.45 ± 1.82 3.65 ± 2.10 40.6 ± 11.4 41.4 ± 12.0

10 5 2.81 ± 1.14 2.75 ± 0.47 41.1 ± 9.19 43.5 ± 12.6 a) CL = クリアランス b) Vc = 中心コンパートメントの分布容積 c) 初回投与データ:初回投与後から28日目投与前までのデータ d) 全データ:初回投与後から72日目までのデータ

[5.3.3.2-1 Table 31, Table 32から作成] ベバシズマブの薬物動態は1~10 mg/kg の範囲で線形性が認められ,用量が増加しても CL

は変動せず,Vc も変化しなかった。1~10 mg/kg の範囲でベバシズマブの CL は小さく,反復

投与したときの終末半減期の平均値はコンパートメント法で12.8~14.7日であった。また,反

復投与時のベバシズマブの薬物動態は単回投与時と同様であり,単回投与時の薬物動態から反

復投与時の薬物動態が予測可能と考えられた。

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アバスチン 2.7.2 臨床薬理の概要 Page 8

2.7.2.2.1.2 AVF0761g 試験(併用反復投与第Ⅰ相試験) 各種進行固形癌患者に対し,他の抗悪性腫瘍薬との併用で本剤3 mg/kg を週1回8週間投与し

た。被験者を次の3つの化学療法群のいずれかに4例ずつ割り付けた。 (1) ドキソルビシン(50 mg/m2)[DOX] (2) カルボプラチン(AUC が6 mg・min/mL となるようにカルバートの式で用量調整)

[CBDCA]/パクリタキセル(175 mg/m2)[PTX] (3) フルオロウラシル(500 mg/m2)/ホリナートカルシウム(20 mg/m2)[5-FU/LV 療法] 治験期間中,0日目(注入前,10分,2及び8時間後),7,14,21,28,35,42,49日目(注

入前及び10分後)及び第49日目の最終投与から30日目まで採血した。1-コンパートメントモデ

ルを用いて血清ベバシズマブ濃度データを解析し,併用化学療法ごとに薬物動態パラメータを

表 2.7.2.2.1.2-1にまとめた。なお,DOX 群に割り付けられた1症例は病勢の進行が認められた

ため,28日目の投与が行われず,薬物動態の解析から除外された。

表 2.7.2.2.1.2-1 AVF0761g 試験におけるベバシズマブの薬物動態パラメータ

(平均 ± 標準偏差)

群 n CL

(mL/day/kg)Vc

(mL/kg) t1/2 terminal (days)

MRT (days)

DOX 3 3.74 ± 0.555 64.8 ± 8.68 12.1 ± 0.603 17.4 ± 0.854 CBDCA/PTX 4 2.48 ± 0.436 51.7 ± 14.0 14.2 ± 1.55 20.6 ± 2.26 5-FU/LV 療法 4 3.28 ± 0.857 56.0 ± 12.3 12.5 ± 4.39 18.1 ± 6.36 全群 11 3.11 ± 0.792 56.8 ± 12.2 13.0 ± 2.75 18.8 ± 3.98

CL = クリアランス;Vc = 中心コンパートメントの分布容積;t1/2 terminal = 終末半減期;MRT = 平均滞留時間 DOX = ドキソルビシン;CBDCA = カルボプラチン;PTX = パクリタキセル;5-FU = フルオロウラシル;LV = ホリナートカルシウム 1-コンパートメントモデルにより,薬物動態パラメータを算出

[5.3.3.2-2 Table 12を改変] 全データの平均ベバシズマブ CL は3.11 mL/day/kg,平均 Vc は56.8 mL/kg,平均滞留時間

(MRT)は18.8日であった。これらは AVF0737g 試験における,3 mg/kg 投与群の値(表 2.7.2.2.1.1-1)と同程度であった。以上のことから,前述の化学療法剤と併用しても,ベバシ

ズマブの薬物動態に明確な違いは認められなかった。

2.7.2.2.1.3 AVF0780g 試験(5-FU/LV 療法併用第Ⅱ相試験) 転移性結腸・直腸癌患者104例を対照群(5-FU/LV 療法単独)又はベバシズマブ併用群(5又

は10 mg/kg,2週間毎投与[Dose intensity 2.5又は5 mg/kg/週]+ 5-FU/LV 療法)に無作為に割り

付けた。8週間を1サイクルとし,各サイクルの最初の6週間において5-FU/LV 療法を週1回行っ

た。被験者には少なくとも1サイクルの化学療法を行った。5-FU/LV 療法は病勢の進行が認め

られるまで継続した。ベバシズマブも病勢の進行が認められるか,又は投与回数が24回に達す

るか,いずれか早い時点まで2週間ごとに投与した。初回ベバシズマブ投与時は投与前,投与

終了10分後及び2時間後に,2回目投与以降は投与前と投与終了10分後に血清を採取した。1-コンパートメントモデルを仮定してベバシズマブの薬物動態を評価した。ベバシズマブの平均ト

ラフ濃度を図 2.7.2.2.1.3-1に示し,薬物動態パラメータを表 2.7.2.2.1.3-1にまとめた。

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アバスチン 2.7.2 臨床薬理の概要 Page 9

↑↑↑↑ ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑

時間 (Day)

血清

中ベ

バシ

ズマ

ブ濃

度(μg

/mL)

↑↑↑↑ ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑

時間 (Day)

血清

中ベ

バシ

ズマ

ブ濃

度(μg

/mL)

図 2.7.2.2.1.3-1 AVF0780g 試験におけるベバシズマブ反復(5-FU/LV 療法併用)投与後の

トラフ濃度推移(平均 ± 標準偏差)

矢印(↑)はベバシズマブ投与日を示す。 [5.3.5.1-3 Figure 5を改変]

表 2.7.2.2.1.3-1 AVF0780g 試験におけるベバシズマブ点滴静注後の薬物動態パラメータ

用量 (mg/kg/2週) n

CL (mL/day/kg)

Vc (mL/kg)

MRT (day)

5 34 2.79 ± 0.849 45.4 ± 9.02 17.3 ± 4.65 10 28 2.78 ± 0.663 46.1 ± 8.84 17.4 ± 5.00

CL = クリアランス;Vc = 中心コンパートメントの分布容積;MRT = 平均滞留時間 1-コンパートメントモデルにて薬物動態パラメータを算出 平均 ± 標準偏差

[5.3.5.1-3 Table 32を改変] 図 2.7.2.2.1.3-1に示したように,ベバシズマブの血清トラフ濃度は反復投与後に上昇し,5又

は10 mg/kg 投与の両群とも100日目までに定常状態に達した。表 2.7.2.2.1.3-1は両群間の薬物動

態パラメータに差がないことを示しており,5及び10 mg/kg を2週間ごと(2.5及び5 mg/kg/週)

投与した場合でもベバシズマブの CL 及び Vc は一定であった。更に,これらのパラメータと

先行試験(AVF0737g 試験)の値との間に大きな差異はなく,5-FU/LV 療法と併用しても,ベ

バシズマブの薬物動態に変動は認められなかった。

Page 10: アバスチン点滴静注用100 mg/4 mL...1) AVF0737g 試験(単剤反復第Ⅰ相試験) 各種進行固形癌患者を対象に0.1,0.3,1,3及び10 mg/kgの用量で単剤第Ⅰ相試験を実施

アバスチン 2.7.2 臨床薬理の概要 Page 10

2.7.2.2.1.4 AVF2107g 試験(IFL 又は5-FU/LV 療法併用第Ⅲ相比較試験) 転移性結腸・直腸癌を有する被験者923例を以下の3治療群のいずれかの群に無作為に割り付

けた。 第1群:IFL(塩酸イリノテカン + 5-FU + LV)療法 + プラセボ 第2群:IFL 療法 + ベバシズマブ 第3群:5-FU/LV 療法 + ベバシズマブ 本剤は5 mg/kg を2週間ごとに投与した(Dose intensity 2.5 mg/kg/週)。各群100例までの被験

者において,スクリーニング時,第1サイクル14日目(第2群及び第3群),第3サイクル0日目

(第2群)又は第2サイクル28日目(第3群)の本剤投与前及び投与終了後10分に血清検体を採

取し,ベバシズマブの体内動態を検討した。ベバシズマブを含む2種のレジメン(第2群及び第

3群)から得た血清濃度–時間データを用い母集団薬物動態解析を行った。ピーク及びトラフ検

体しか採血しなかったため,1-コンパートメントモデルを仮定して解析を行い,結果を表 2.7.2.2.1.4-1に示した。

表 2.7.2.2.1.4-1 母集団パラメータ推定値及び変動係数

パラメータ 結果 被験者数 214 母集団平均値[CL(mL/hr)] 10.2(2.80) 母集団平均値[Vc(mL)] 3230(2.00) 個体間変動[ωCL(%)] 30.8(10.5) 個体間変動[ωVc(%)] 18.7(30.1) 個体内変動[σProp(%)] 12.4(38.4) 個体内変動[σAdd(μg/mL)] 16.7(18.3)

CL = クリアランス;Vc = 中心コンパートメントの分布容積;σAdd = 残差分散(相加的); σProp = 残差分散(相乗的);ωCL = クリアランスの分散;ωVc = 分布容積の分散

[5.3.5.1-1 Table 35を改変] 体重80 kg の被験者を仮定した場合(被験者923例の体重の中央値:78.0 kg),CL は3.06

mL/kg/day 及び Vcは40.3 mL/kg であり,同じ投与レジメン(併用薬)を用いた AVF0780g 試験

の計算値とほぼ同等であった。 初回投与後14日目の「IFL 療法 + ベバシズマブ群」と「5-FU/LV 療法 + ベバシズマブ群」の

血清中トラフ濃度は各々,28.6 ± 10.6(平均値 ± 標準偏差),32.5 ± 18.8 μg/mL であり,84日目の血清中トラフ濃度は83.6 ± 31.4,77.0 ± 26.9であった。両群の血清中ベバシズマブ濃度値

はほぼ同等であり,5-FU/LV 療法/ベバシズマブに塩酸イリノテカンを追加してもベバシズマ

ブの薬物動態は影響を受けないことを示した。

2.7.2.2.2 国内臨床試験 2.7.2.2.2.1 JO18157試験(単剤又は5-FU/l-LV 療法併用第Ⅰ相試験)

国内第Ⅰ相臨床試験では結腸癌又は直腸癌患者を対象に3,5及び10 mg/kg の用量の薬物動態

を各群6例で評価した。各群とも初回は本剤の単独投与を行い,3週後より5-FU/l-LV 療法を週

に1回6週間投与し,2週間休薬する投与レジメンを繰り返し,これに併用して本剤を2週間ごと

に投与した。

(1) 単剤単回投与 図 2.7.2.2.2.1-1にベバシズマブ単剤投与後の平均血清中濃度推移を示し,その時のノンコン

パートメント法での解析結果を表 2.7.2.2.2.1-1に示した。

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アバスチン 2.7.2 臨床薬理の概要 Page 11

時間 (Day)

血清

中ベ

バシ

ズマ

ブ濃

度(μ

g/m

L)

0 5 10 15 20

1050

100

500

3mg/kg 群5mg/kg 群10mg/kg 群

↑ 時間 (Day)

血清

中ベ

バシ

ズマ

ブ濃

度(μ

g/m

L)

0 5 10 15 20

1050

100

500

3mg/kg 群5mg/kg 群10mg/kg 群

時間 (Day)

血清

中ベ

バシ

ズマ

ブ濃

度(μ

g/m

L)

0 5 10 15 20

1050

100

500

3mg/kg 群5mg/kg 群10mg/kg 群

図 2.7.2.2.2.1-1 JO18157試験におけるベバシズマブ単剤単回投与後の血清中濃度推移

(平均 ± 標準偏差)

矢印(↑)はベバシズマブ投与日を示す。 [5.3.3.2-3 図 11.4.4.1-1を改変]

表 2.7.2.2.2.1-1 日本人における単剤単回投与後の薬物動態パラメータ

投与量 3 mg/kg 5 mg/kg 10 mg/kg 平均 852.3 1387.2 2810.9 AUCinf

(μg・day/mL) 標準偏差 237.4 426.9 344.8 平均 62.50 73.47 60.26 Vd

(mL/kg) 標準偏差 11.10 18.34 8.93 平均 3.80 3.94 3.61 CL

(mL/day/kg) 標準偏差 1.20 1.34 0.48 平均 12.33 13.40 11.68 t1/2

(day) 標準偏差 4.52 2.82 1.74 AUCinf = 無限大時間までの濃度–時間曲線下面積;Vd = 分布容積;CL = クリアランス; t1/2 = 消失半減期 各群の症例数は6例

[5.3.3.2-3 表 11.4.4.2-1より抜粋] 本試験の結果,投与量3~10 mg/kg の範囲で,濃度–時間曲線下面積(AUCinf)は投与量に比

例して増加し,CL は一定であったことから,日本人においても線形性を認めた。

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アバスチン 2.7.2 臨床薬理の概要 Page 12

(2) 5-FU/LV 療法併用反復投与 図 2.7.2.2.2.1-2に平均血清中濃度推移を示した。3,5及び10 mg/kg 投与群の105日目における

トラフ濃度は各々5例,4例,6例で,44.78 ± 14.81(平均値 ± 標準偏差),66.18 ± 24.40,160.67 ± 44.56 μg/mL であり,ピーク濃度は各々5例,4例,5例で120.12 ± 31.62,152.75 ± 23.80,404.00 ± 47.91 μg/mL であった。

時間 (日)

血清

中ベ

バシ

ズマ

ブ濃

度 (μ

g/m

L)

0 42 84 126 168

15

1050

500

3mg/kg 群5mg/kg 群10mg/kg 群

血清

中ベ

バシ

ズマ

ブ濃

度(μ

g/m

L)

↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑

時間 (Day)

時間 (日)

血清

中ベ

バシ

ズマ

ブ濃

度 (μ

g/m

L)

0 42 84 126 168

15

1050

500

3mg/kg 群5mg/kg 群10mg/kg 群

血清

中ベ

バシ

ズマ

ブ濃

度(μ

g/m

L)

↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑

時間 (Day)

図 2.7.2.2.2.1-2 JO18157試験における全期間のベバシズマブの血清中濃度推移

(平均 ± 標準偏差)

矢印(↑)はベバシズマブ投与日を示す。 [5.3.3.2-5 図 5.1-1を改変]

2.7.2.3 全試験を通しての結果の比較と解析 2.7.2.3.1 母集団薬物動態解析

表 2.7.2.1-1に示したベバシズマブの薬物動態を検討した臨床試験のうち,国内で実施した

JO18157試験を除く8つの海外臨床試験から得たベバシズマブ血清中濃度データを用い,母集

団薬物動態解析を実施した。この解析では491例の患者に1~20 mg/kg の用量で本剤を1週間,2週間又は3週間間隔で点滴静注したときの4,629点の血清中濃度データを用い,母集団パラメー

タ並びにパラメータの共変量について探索を行った。この解析では第Ⅰ相試験のデータ及び第

Ⅱ相及び第Ⅲ相試験の長期治療中(1年まで)に採血したピーク及びトラフデータを用いた。 ベーシックモデルとして,2-コンパートメントモデルを選択し,共変量の探索を行った。そ

の結果を以下に示す。

Page 13: アバスチン点滴静注用100 mg/4 mL...1) AVF0737g 試験(単剤反復第Ⅰ相試験) 各種進行固形癌患者を対象に0.1,0.3,1,3及び10 mg/kgの用量で単剤第Ⅰ相試験を実施

アバスチン 2.7.2 臨床薬理の概要 Page 13

( )[ ] ( ) ( ) ( ) ( ) ( )( )

),/5(1

)(11

26/102/37/74/1

15

14

51

^10976

用くはドキソルビシン併        若し

ビンリタキセル,カペシタカルボプラチン・パク

併用化学療法なし

併用

LVFUCHEMEFCHEMEF

IFLCHEMEFCHEMEFSGOTALKALBUWTGDRLC

−+=

+=

=

+=

θθ

θθ θθθθ

CL に影響を与える因子として性別(GDR:男性は1,女性は0),体重(WT),アルブミン

(ALBU),アルカリホスファターゼ(ALK),血清グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミ

ナーゼ(SGOT)及び化学療法(CHEMEF)の種類の影響が認められた。

( )[ ]( ) ( ) 1312 37/ALBU74/WTGDR1V 112C

^θθθ+θ=

Vcについては GDR,WT 及び ALBU の影響が認められた。 各パラメータの数値については表 2.7.2.3.1-1に示す。

表 2.7.2.3.1-1 母集団薬物動態パラメータの一覧

固定効果 変量効果 CL (L/day) Vc (L) 個体間変動/個体内変動

θ1 0.207 (4.6) θ2 2.66 (1.7) ωCL (%) 26.0 (14.0) θ5 (GDR) 0.264 (27.6) θ11 (GDR) 0.221 (13.2) ωVc (%) 16.8 (14.2) θ6 (WT) 0.368 (36.7) θ12 (WT) 0.411 (13.6) σprop (%) 17.2 (8.4) θ7 (ALBU) −0.726 (20.7) θ13 (ALBU) −0.333 (17.2) σadd (μg/mL) 7.2 (60.8) θ9 (ALK) 0.133 (26.4) θ10 (SGOT) −0.0715 (48.5) θ14 −0.003 (1630.5) θ15 −0.174 (22.1) 括弧内は変動係数(%)を示す θ1~θ15:CL 又は Vcに関する固定効果の係数

ωCL = クリアランスの分散;ωVc = 分布容積の分散;σAdd = 残差分散(相加的);σProp = 残差分散(相乗的) [5.3.3.5-1 Table 11を改変]

最終モデルでのクリアランスの個体間変動値(ωCL)は26.0%,中心コンパートメント

(ωVc)では16.8%であり,上記の共変量を考慮することにより個体間変動値は小さくなり,ベ

バシズマブの薬物動態に関する個体間変動の要因が明らかとなった。最終モデルでの CL 及び

Vc に対する共変量効果の程度を表 2.7.2.3.1-2にまとめた。連続変数については中央値を,カテ

ゴリー変数については最頻値を用いて,各々の共変量の影響を検討したところ,アルブミン及

びアルカリホスファターゼが中央値である被験者に比べ,血清アルブミン濃度が低い(29 g/L,5パーセントタイル)被験者で CL が19%高く,アルカリホスファターゼ濃度が高い(483 IU/L,95パーセントタイル)被験者で CL が23%高かった。また,ベバシズマブ CL は男性の方が女

性よりも26%高く,共変量中央値を仮定した女性及び男性被験者の CL はそれぞれ0.207 L/dayと0.262 L/day であり,Vcは2.66 L と3.25 L であった。

化学療法剤のベバシズマブの薬物動態に及ぼす影響を検討したところ,ベバシズマブの CL

はベバシズマブを単独投与した被験者と IFL 療法を併用した患者でほぼ同等であった。しかし

ながら,5-FU/LV 療法,カルボプラチン/パクリタキセル,カペシタビン又はドキソルビシン

Page 14: アバスチン点滴静注用100 mg/4 mL...1) AVF0737g 試験(単剤反復第Ⅰ相試験) 各種進行固形癌患者を対象に0.1,0.3,1,3及び10 mg/kgの用量で単剤第Ⅰ相試験を実施

アバスチン 2.7.2 臨床薬理の概要 Page 14

と併用した場合には,ベバシズマブの CL は単剤投与時よりも17%低下した。 また,国内で実施した JO18157試験のみでのコンパートメント解析においても,5-FU/l-LV

と併用時の CL はベバシズマブ単剤のみ投与したときの CL と比べ約10%程度低下した。しか

しながら,表 2.7.2.3.3-1で示すように,その比の90%信頼区間は0.825~0.979であり,その変化

は軽微な変化であった。このことから,ベバシズマブ単剤投与時と5-FU/l-LV 療法併用時の薬

物動態は同等と考えられ,5-FU/l-LV 療法によるベバシズマブの薬物動態への影響は少ないと

考えられた。

表 2.7.2.3.1-2 共変量の影響度

共変量 共変量の条件

共変量の値

又は例数

パラメータ(CL

又は Vc)の値 変動率 b)(%)

CL(L/day) 中央値又は最頻値 –a) 0.207 0

体重(kg) 5パーセントタイル 49.1 0.179 −13.3

95パーセントタイル 113.9 0.241 +16.2

アルブミン(g/L) 5パーセントタイル 29 0.247 +19.3

95パーセントタイル 44 0.183 −11.6

5パーセントタイル 59 0.192 −7.0 アルカリホスファ

ターゼ(IU/L) 95パーセントタイル 483 0.255 +23.0

SGOT(IU/L) 5パーセントタイル 15 0.215 +4.0

95パーセントタイル 114.5 0.186 −10.1

性別 男性 n=215 0.262 +26.4

女性 n=276 0.207 0

化学療法 IFL n=132 0.207 0

なし(ベバシズマブ単剤) n=104 0.206 −0.3

5-FU/LV,カルボプラチン

/パクリタキセル,カペシ

タビン又はドキソルビシン

n=255 0.171 −17.4

Vc(L) 中央値又は最頻値 –a) 2.66 0

体重(kg) 5パーセントタイル 49.1 2.25 −15.5

95パーセントタイル 113.9 3.18 +19.4

アルブミン(g/L) 5パーセントタイル 29 2.88 +8.5

95パーセントタイル 44 2.51 −5.6

性別 男性 n=215 3.25 +22.1

女性 n=276 2.66 0 a) 共変量を各々の中央値(体重 = 74 kg,アルブミン = 37 g/L,アルカリホスファターゼ = 102 IU/L,SGOT = 26

IU/L)及び最頻値(ベバシズマブ + IFL 療法で治療を受けた女性)を仮定 b) 共変量を各々の中央値及び最頻値を仮定し,該当する共変量のみ変動させた場合の変動率

[5.3.3.5-1 Table 9を改変]

2.7.2.3.2 日本人と外国人の薬物動態の比較 図 2.7.2.3.2-1にベバシズマブ単剤を米国人又は日本人に投与後の血清中濃度推移を示した。

日本人の平均血清中ベバシズマブ濃度推移は,米国人での第Ⅰ相臨床試験(AVF0737g 試験)

で得られた血清中ベバシズマブ濃度推移よりも低い傾向であったが,そのバラツキ(標準偏

差)は小さく,日本人のバラツキは米国人のバラツキの範囲内であった。

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アバスチン 2.7.2 臨床薬理の概要 Page 15

Time (Day)

Seru

m b

evac

izum

ab c

onc

ent

ration (ug

/mL)

0 7 14 21

020

40

60

80

100

Mean Time - Serum bevacizumab Concentration Profiles (3mg/kg)

JO18157AVF0737g

Time (Day)

Seru

m b

evac

izum

ab c

onc

ent

ration

(ug/

mL)

0 7 14 21

0100

200

300

400

Mean Time - Serum bevacizumab Concentration Profiles (10mg/kg)

JO18157AVF0737g

時間 (Day)

平均

血清

中ベ

バシ

ズマ

ブ濃

度(μ

g/m

L)

時間 (Day)

平均

血清

中ベ

バシ

ズマ

ブ濃

度(μ

g/m

L)

Time (Day)

Seru

m b

evac

izum

ab c

onc

ent

ration (ug

/mL)

0 7 14 21

020

40

60

80

100

Mean Time - Serum bevacizumab Concentration Profiles (3mg/kg)

JO18157AVF0737g

Time (Day)

Seru

m b

evac

izum

ab c

onc

ent

ration

(ug/

mL)

0 7 14 21

0100

200

300

400

Mean Time - Serum bevacizumab Concentration Profiles (10mg/kg)

JO18157AVF0737g

時間 (Day)

平均

血清

中ベ

バシ

ズマ

ブ濃

度(μ

g/m

L)

時間 (Day)

平均

血清

中ベ

バシ

ズマ

ブ濃

度(μ

g/m

L)

図 2.7.2.3.2-1 米国及び日本で実施された試験での血清中ベバシズマブ濃度推移の比較

左図:3 mg/kg 投与群,右図:10 mg/kg 投与群,国内試験:JO18157試験,米国試験:AVF0737g 試験 [5.3.3.2-3 図 11.4.4.5-1]

前述の母集団薬物動態解析結果に国内で実施された試験(JO18157試験)の5 mg/kg 投与群の

被験者の背景因子を代入したモンテカルロシミュレーション結果並びに日本人で実測された血

清中ベバシズマブ濃度を図 2.7.2.3.2-2に示す。実測された血清中ベバシズマブ濃度の多くは海

外試験データを基に求められた母集団薬物動態解析結果によって求められた5パーセントタイ

ルと95パーセントタイルの範囲内に収まった。 少数例での日本人での検討ではあるが,日本人の薬物動態と外国人の薬物動態との間に大き

な差はないことが示唆された。

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アバスチン 2.7.2 臨床薬理の概要 Page 16

Time (Day)

Seru

m b

eva

ciz

um

ab c

oncentr

atio

n (

ug/

mL)

0 7 14 21

050

100

150

200

Comparison of Predicted Concentration - Time Profiles (90%CI) vs Observed Concentration (5mg/kg)

時間 (Day)

平均

血清

中ベ

バシ

ズマ

ブ濃

度(μ

g/m

L)

Time (Day)

Seru

m b

eva

ciz

um

ab c

oncentr

atio

n (

ug/

mL)

0 7 14 21

050

100

150

200

Comparison of Predicted Concentration - Time Profiles (90%CI) vs Observed Concentration (5mg/kg)

時間 (Day)

平均

血清

中ベ

バシ

ズマ

ブ濃

度(μ

g/m

L)

図 2.7.2.3.2-2 モンテカルロシミュレーションによる5パーセントタイルと

95パーセントタイルの範囲と実測値

●:実測値,-:中央値,斜線部分:90%信頼区間(5パーセントタイルと95パーセントタイルの範囲) [5.3.3.2-3 図 11.4.4.5-2]

2.7.2.3.3 ベバシズマブと化学療法剤との薬物相互作用 (1) ベバシズマブ

1) 5-FU/l-LV 療法(JO18157試験) 表 2.7.2.3.3-1に示すように,JO18157試験で得られたベバシズマブ単剤投与時と5-FU/l-LV療法併用時の CL 及び Vcの比の推定値は1に近かった。このことから,5-FU/l-LV 療法併用

により,ベバシズマブの CL は若干の低下傾向を示すが,その程度は小さく,薬物動態へ

の影響は少ないと考えられた。

表 2.7.2.3.3-1 ベバシズマブ単剤投与時と5-FU/l-LV 療法併用時の薬物動態パラメータの比の

90%信頼区間

推定値 下限値 上限値 Vc 1.118 1.034 1.209 CL 0.863 0.786 0.947

Vc = 中心コンパートメントの分布容積;CL = クリアランス [5.3.3.2-5 表 5.4.2-4]

2) ドキソルビシン,カルボプラチン/パクリタキセル及び5-FU/LV 療法(AVF0761g 試験) 表 2.7.2.2.1.2-1に示したように,ベバシズマブの薬物動態パラメータは異なる化学療法剤

を投与した場合でも,各群でほぼ同等であった。このことから,ドキソルビシン,カルボ

プラチン/パクリタキセル又は5-FU/LV 療法はベバシズマブの薬物動態に影響を及ぼさな

いことが示唆された。

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アバスチン 2.7.2 臨床薬理の概要 Page 17

(2) 化学療法剤 1) ドキソルビシン,カルボプラチン/パクリタキセル及び5-FU/LV 療法(AVF0761g 試験)

表 2.7.2.3.3-2に示すように,初日及び28日目又は35日目の化学療法剤の血漿中濃度に大き

な変動はなく,ベバシズマブによって,これら化学療法剤の薬物動態は変動しないものと

考えられた。

表 2.7.2.3.3-2 AVF0761g 試験における化学療法剤の平均血漿中濃度(平均 ± 標準偏差)

時間 初回投与 28日目

化学療法剤 5分 2時間 8時間 5分 2時間 8時間 ドキソルビシン

(ng/mL) 1280 ± 411 40.0 ± 12.2 32.1 ± 13.8 942 ± 1065 48.5 ± 10.5 21.4 ± 3.32

時間

初回投与 28日目 化学療法剤 5分 3時間 24時間 5分 3時間 24時間

カルボプラチン (μg/mL) 48.3 ± 15.2 12.0

± 0.816 1.83

± 0.126 29.3 ± 10.2 11.0 ± 0.816

1.93 ± 0.222

パクリタキセル (ng/mL) 2933 ± 549 547 ± 117 71.4 ± 11.0 2740 ± 901 458 ± 118 53.9 ± 13.6

時間

初回投与 35日目 化学療法剤 5分 30分 1時間 5分 30分 1時間

5-FU(μg/mL) 24.9 ± 15.9 3.80 ± 4.80 0.529 ± 0.610 18.4 ± 11.2 4.25 ± 4.31 0.377

± 0.411 [5.3.3.2-2 Table 13を改変]

2) イリノテカン ① AVF2107g 試験

IFL との併用で本剤5 mg/kg を2週間ごとに静注し,43日目に本剤又はプラセボ投与後,5時間まで経時的に採血した血漿検体でイリノテカン及びその代謝物(SN38)の濃度を,

一部の被験者で測定した。その結果,表 2.7.2.3.3-3に示すように,ベバシズマブ併用時

と非併用時の用量補正したイリノテカンの AUC0-t(AUC0-t/Dose)の比(評価対象例数)

は1.10(ベバシズマブ併用群28例,非併用群36例),SN38の(AUC0-t/Dose)の比は1.33(ベバシズマブ併用群28例,非併用群37例)であった。ベバシズマブ併用群で SN38のAUC が大きかったのはベバシズマブの影響によるものかどうか現在のところ不明である。

表 2.7.2.3.3-3 ベバシズマブ併用/非併用時のイリノテカン及び SN38の AUC 及び

AUC/Dose の比と95%信頼区間

AUC0-t AUC0-t/Dose

イリノテカン 1.03(0.85,1.25) 【29/38】

1.10(0.96,1.27) 【28/36】

SN38 1.26(1.03,1.52) 【29/39】

1.33(1.07,1.65) .【28/37】

上段の( )内は AUC0-t又は AUC0-t/Dose の比の95%信頼区間(下限値,上限値)を示す。 下段の【 】は評価に用いた症例数【ベバシズマブ併用群/非併用群】を示す。

[5.3.5.1-1 Table 36及び Table 37を改変]

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アバスチン 2.7.2 臨床薬理の概要 Page 18

② AVF3135g 試験 36名の固形癌患者を対象に Day 0に FOLFIRI 療法を行い(イリノテカンは180 mg/m2を

90分間の点滴投与),血漿中イリノテカン及び代謝物(SN38)濃度を測定した(Cycle 1)。Day 2にベバシズマブを5 mg/kg 静脈内点滴投与した。2週間後の Day 16に FOLFIRI療法とベバシズマブ投与を併用した。更に次の2週間後の Day 30に FOLFIRI 療法とベバ

シズマブ投与を併用し,その際の血漿中イリノテカン及び SN38濃度を測定した(Cycle 3)。 ベバシズマブ併用時及び非併用時の血漿中イリノテカン濃度推移を図 2.7.2.3.3-1に,血

漿中 SN38濃度推移を図 2.7.2.3.3-2に示す。血漿中イリノテカン及び SN38濃度推移にベ

バシズマブ併用時及び非併用時で差異は認められなかった。 また,血漿中イリノテカン及び SN38の AUC0-lastの比較を表 2.7.2.3.3-4に示した。血漿中

イリノテカン及び SN38のベバシズマブ併用時と非併用時における AUC0-last 比は,イリ

ノテカンは0.99(90%信頼区間:0.93,1.07),SN38は1.01(90%信頼区間:0.92,1.11)であった。ベバシズマブ併用投与は,イリノテカン及びその代謝物,SN38の薬物

動態に影響を与えなかった。

図 2.7.2.3.3-1 イリノテカン単独投与及びベバシズマブ併用時の

血漿中イリノテカン濃度推移

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アバスチン 2.7.2 臨床薬理の概要 Page 19

図 2.7.2.3.3-2 イリノテカン単独投与及びベバシズマブ併用時の血漿中 SN38濃度推移

表 2.7.2.3.3-4 ベバシズマブ併用/非併用時のイリノテカン及び SN38の AUC0-lastの比と

90%信頼区間

薬物動態 パラメータ

サイクル1の 幾何平均 (N=36)

サイクル3の 幾何平均 (N=36)

幾何平均値の比 (サイクル3

/ サイクル1)

幾何平均値の比 (サイクル3 / サイク

ル1)の90%信頼区間

イリノテカン AUC0-last (ng・hr/mL)/(mg/m2)

58.64 58.33 0.99 0.93,1.07

SN38 AUC0-last (ng・hr/mL)/(mg/m2) 1.68 1.69 1.01 0.92,1.11

3) カペシタビン(AVF2119g 試験)

転移性乳癌患者を対象に,カペシタビン(経口,1日2回)との併用でベバシズマブ15 mg/kg を3週間ごとに静注し,第1及び第3サイクルの0日目並びに第2週の後半(10~13日目)にカペシタビンを投与後,90,150及び240分後にカペシタビン及びその代謝物である

フルオロウラシル及び5’-DFUR(5’-deoxy-5-fluorouridine)の血漿中薬物濃度を測定した。

採血が実施されたうち,最も評価可能被験者数が多かった第1サイクル第2週時点での,平

均投与量で換算した AUC を表 2.7.2.3.3-5に示した。本剤併用群のカペシタビン及びその代

謝物の AUC は非併用群と比べ低下する傾向を示した。しかしながら,カペシタビンの

AUC の変動係数(CV 値)は本剤併用群で68.6%,非併用群で124.6%と大きなバラツキを

示したことから,明確な結論を得るまでは至らなかった。

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アバスチン 2.7.2 臨床薬理の概要 Page 20

表 2.7.2.3.3-5 カペシタビン及びその代謝物の AUC(第1サイクル,2週目)

カペシタビン

(ng・day/mL)

5’-DFUR

(ng・day/mL)

5-FU

(ng・day/mL)

ベバシズマブ非併用群(n=19) 108 321 18.6

カペシタビン + ベバシズマブ併用群(n=21) 70.1 237 15.0

比(95% CI) 0.65

(0.39,1.07)

0.74

(0.50,1.08)

0.80

(0.53,1.21) 5’-DFUR = 5’-deoxy-5-fluorouridine;5-FU = フルオロウラシル;CI = 信頼区間 値は平均投与量を投与したときの AUC 値に換算した 転移性乳癌患者を対象とした

[5.3.5.4-1 Table 21を改変]

2.7.2.3.4 ベバシズマブの薬力学(VEGF) ベバシズマブは VEGF に結合し,VEGF と VEGF 受容体との結合を阻害する。その結果,血

管新生が阻害され,腫瘍の増殖が阻害される。そこで,バイオマーカーとして総血清/血漿

VEGF 濃度を検討した。

2.7.2.3.4.1 海外データ 総 VEGF 濃度は第Ⅰ相試験では血清試料,第Ⅱ相試験では血漿試料を用い,総 VEGF 濃度

(遊離 VEGF 及びベバシズマブ結合 VEGF)を ELISA 法によって測定した。ただし,海外試

験で用いた VEGF 測定法は,測定試料中にベバシズマブが100 μg/mL 以上ある場合,VEGF 濃

度測定値に影響を及ぼし,正確な総 VEGF 濃度が測定不能となり,VEGF 濃度の測定値は真の

値より低値を示す。

(1) AVF0737g 試験(単剤単独投与第Ⅰ相試験) AVF0737g は本剤を0.1~10 mg/kg の5用量段階で投与する用量漸増試験であった。図 2.7.2.3.4.1-1に示すように,0.1 mg/kg と0.3 mg/kg で総血清 VEGF 濃度はほぼ同等であり,試

験期間中安定していた。

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アバスチン 2.7.2 臨床薬理の概要 Page 21

LTR=20 pg/mL

↑ ↑ ↑↑

時間 (Day)

血清

中V

EGF濃

度(p

g/m

L)

0 14 28 42 56 70

010

020

030

040

050

0

0.1mg/kg 群0.3mg/kg 群1mg/kg 群3mg/kg 群10mg/kg 群

LTR=20 pg/mL

↑ ↑ ↑↑↑ ↑ ↑↑

時間 (Day)

血清

中V

EGF濃

度(p

g/m

L)

0 14 28 42 56 70

010

020

030

040

050

0

0.1mg/kg 群0.3mg/kg 群1mg/kg 群3mg/kg 群10mg/kg 群

図 2.7.2.3.4.1-1 AVF0737g 試験におけるベバシズマブ投与後の血清総 VEGF 濃度

LTR = 定量限界濃度 矢印(↑)はベバシズマブ投与日を示す。

[5.3.3.2-1 Figure 6を改変] 初回投与日に本剤1~10 mg/kg を投与すると,血清総 VEGF 濃度は投与後7日目には上昇し,

その後ベバシズマブの排泄とともに低下した。続く28,35及び42日目の投与で血清総 VEGF濃度は再度,上昇した。10 mg/kg,週1回の投与で,血清 VEGF 濃度はベースライン値の約

10倍まで達した。最終投与後,血清総 VEGF 濃度は減少したものの,観察期間終了時(初

回投与後72日)までベースライン値に戻らなかった。 血清総 VEGF 濃度が上昇したのは VEGF/ベバシズマブ複合体が形成され,VEGF クリアラ

ンスが低下したことに起因するものと考えられた。このことはラットを用いた前臨床試験

で実証されており,同試験ではベバシズマブ/VEGF 複合体の形成により血漿中 VEGF クリ

アランスが1/3程度にまで低下し,その結果として血漿中 VEGF 濃度が上昇したことが示さ

れている(2.6.4.8.2)。

(2) AVF0761g 試験(各種化学療法併用反復投与第Ⅰ相試験) AVF0761g 試験において,各種進行固形癌患者に対し化学療法剤との併用で本剤3 mg/kg を

週1回8週間投与したときの平均血清総 VEGF 濃度推移を図 2.7.2.3.4.1-2に示す。すべての被

験者における本剤投与前の平均 VEGF 濃度(ベースライン)は66.9 ± 40.6 pg/mL であった。

併用化学療法剤の種類に関係なく,本剤投与後の VEGF 濃度は上昇傾向を示し,VEGF 濃度

の平均 Cmaxは272~351 pg/mL であった。

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アバスチン 2.7.2 臨床薬理の概要 Page 22

時間 (Day)

血清

中V

EG

F濃

度 (

pg/m

L)

0 10 20 30 40 50 60 70 80

010

020

030

040

050

0

5-FU/LV 群CBDCA/PTX 群DOX 群

時間 (Day)

↑ ↑ ↑↑ ↑ ↑ ↑ ↑時間 (Day)

血清

中V

EG

F濃

度 (

pg/m

L)

0 10 20 30 40 50 60 70 80

010

020

030

040

050

0

5-FU/LV 群CBDCA/PTX 群DOX 群

時間 (Day)

↑ ↑ ↑↑ ↑ ↑ ↑ ↑↑ ↑ ↑↑ ↑ ↑ ↑ ↑

図 2.7.2.3.4.1-2 AVF0761g 試験における平均血清総 VEGF 濃度推移

DOX = ドキソルビシン;CBDCA = カルボプラチン;PTX = パクリタキセル;

5-FU = フルオロウラシル;LV = ホリナートカルシウム 矢印(↑)はベバシズマブ投与日を示す。

[5.3.3.2-2 Table 26より作成]

(3) AVF0780g 試験(5-FU/LV 療法併用第Ⅱ相試験) 転移性結腸・直腸癌患者を対象に本剤併用群(5又は10 mg/kg,2週間ごと投与[2.5又は5 mg/kg/週]+ 5-FU/LV 療法)又は非併用群に無作為に割り付けたときの平均血漿総 VEGF 濃

度推移を図 2.7.2.3.4.1-3に示した。 2週間間隔で5又は10 mg/kg 投与したとき,各々の平均血漿総 VEGF 濃度は初回投与日(ベ

ースライン値)より,6.4倍又は9倍まで増加した。

時間 (日)

平均

血漿

中V

EG

F濃度

(pg

/mL)

時間 (日)

平均

血漿

中V

EG

F濃度

(pg

/mL)

↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ ↑↑↑時間 (Day)

血漿

中V

EG

F濃度

(pg

/mL)

時間 (日)

平均

血漿

中V

EG

F濃度

(pg

/mL)

時間 (日)

平均

血漿

中V

EG

F濃度

(pg

/mL)

↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ ↑↑↑時間 (Day)

時間 (日)

平均

血漿

中V

EG

F濃度

(pg

/mL)

時間 (日)

平均

血漿

中V

EG

F濃度

(pg

/mL)

↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ ↑↑↑時間 (日)

平均

血漿

中V

EG

F濃度

(pg

/mL)

時間 (日)

平均

血漿

中V

EG

F濃度

(pg

/mL)

時間 (日)

平均

血漿

中V

EG

F濃度

(pg

/mL)

時間 (日)

平均

血漿

中V

EG

F濃度

(pg

/mL)

↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ ↑↑↑時間 (Day)

血漿

中V

EG

F濃度

(pg

/mL)

図 2.7.2.3.4.1-3 AVF0780g 試験における平均血漿総 VEGF 濃度推移

矢印(↑)はベバシズマブ投与日を示す。 [5.3.5.1-3 Figure 6を改変]