イタリアのデザイン主導型の製品開発の論理(1) - chubu-univ...小 山 太 郎...

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小 山 太 郎 Taro KOYAMA Product development by design-driven from the perspective of Italian design theory 1イタリアのデザイン主導型の製品開発の論理(1) はじめに 本稿は,デザインを活かしたイタリアのモノつくりの原理を解明することを目的 としている。イタリアでデザインといえば, a)表現(フォルム; かたち)にかかわる 人文学,b)社会経済的な側面(社会科学),c)技術工学的な側面(自然科学)という 三つの側面を勘案して,簡単には廃れないような仕方でモノのかたち(形;フォルム) を美的に定めることである。というのも,世界を取り巻く全てはかたちであり,言い 換えれば人間の周りにあるもの全てはかたちであるので,人間の生活環境を構成す るかたち(フォルム)が美を備えて廃れない仕方で存続するように設計(デザイン) することは,生活の質を上昇させ,幸福の次元を切り開くからである。 そして設計され実現されたモノのかたちは,人間の様々な情緒を充足しつつ, 徴的な意味を担うような効果を持っている。 1.デザインと製品開発 デザインが,企業の競争戦略上の付加価値の源泉となっていることを踏まえ, 2005年と2011年の2回にわたって, Journal of Product Innovation Management でデザイン研究特集号が編まれた。デザインに対する研究者の関心は衰えず,デザ インに関する研究論文が数多く書かれたため,最近では 2014年と 2015年にディポー ― 1 ― 産業経済研究所紀要 第26号 2016年6月 論   文

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Page 1: イタリアのデザイン主導型の製品開発の論理(1) - chubu-univ...小 山 太 郎 Taro KOYAMA Product development by design-driven from the perspective of Italian

小 山 太 郎

Taro KOYAMA

Product development by design-driven from the perspective

of Italian design theory(1)

イタリアのデザイン主導型の製品開発の論理(1)

はじめに

本稿は,デザインを活かしたイタリアのモノつくりの原理を解明することを目的としている。イタリアでデザインといえば,a)表現(フォルム;かたち)にかかわる人文学,b)社会経済的な側面(社会科学),c)技術工学的な側面(自然科学)という三つの側面を勘案して,簡単には廃れないような仕方でモノのかたち(形;フォルム)を美的に定めることである。というのも,世界を取り巻く全てはかたちであり,言い換えれば人間の周りにあるもの全てはかたちであるので,人間の生活環境を構成するかたち(フォルム)が美を備えて廃れない仕方で存続するように設計(デザイン)することは,生活の質を上昇させ,幸福の次元を切り開くからである。

そして設計され実現されたモノのかたちは,人間の様々な情緒を充足しつつ,象徴的な意味を担うような効果を持っている。

1.デザインと製品開発

デザインが,企業の競争戦略上の付加価値の源泉となっていることを踏まえ,2005年と2011年の2回にわたって,Journal of Product Innovation Management 誌でデザイン研究特集号が編まれた。デザインに対する研究者の関心は衰えず,デザインに関する研究論文が数多く書かれたため,最近では2014年と2015年にディポー

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産業経済研究所紀要 第26号 2016年6月 論   文

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リト(D’Ippolito)と ラクス(Luchs)らがそれぞれ ㆑ビ ュ ー 論 文 を 記 している(D’Ippolito, 2014 ;Luchs et al.,2015)。Journal of Product Innovation Management

誌以外で,デザインを活かした製品開発の論文が掲載される学術雑誌としては,Design Issue・Design Studies・Design Management Journal・Design Management

Review・Technovation・Journal of Engineering Design・Long Range Planning・International Journal of Designなどが挙げられる。

表1は,これらの学術雑誌に登場する現在までのデザイン研究の傾向をまとめたものである。デザインの定義は,大別すると,1)人為的に作られる人工物(artifact)の創造(Simon, 1969),2)内省的な実践(Schön, 1983),3)問題を解決する活動

(Buchanan, 1992),4)事物の意味を推論する,あるいは作る手法(Lawson, 2008 ;

Cross, 2006 , 2011),5)意味の創造(Krippendorf f, 2006)に分けられる。なお,製品開発の文脈で頻繁に引用されるデザインの定義は,P.ブロック(Bloch)

によるもので,その定義は以下である。「製品の形( form)は,デザインチームによって,ある一つの全体へと選定・調合

されるような数多くの要素を表現しており,結果として特定の感覚上の効果(sensory

ef fect)をもたらす。デザイナー達は,形状(shape)・寸法・調子(tempo)・反射/反映(reflectiveness)・比率・素材・色・装飾・テクスチャーといった特徴に関する選択を行い,また,これらの要素を混ぜ合わせる仕方を決定し,それらの間に存する適合/一致の程度も決める。(Bloch, 1995 , p.17)」

表1.デザインおよびデザイン思考の定義

日本でも榊原らが,デザインの問題がフォルム(かたち)を定めることにあることを次のように指摘している。「一般にデザインの問題とは,状況(コンテクスト)における諸要件の知覚と設計

されるべき形態(form)との双方の間の適合(good fit)をはかることを意味する。建築のケースで言えば,地盤の状態,気候,日照条件,各部屋の住み心地の良さ,便利さ,

定 義 主な提唱者

1 人為的に作られるもの(artifact)の創造 サイモン(Simon,1969)

2 内省的な実践 ショーン(Schön,1983)

3 問題を解決する活動 ブキャナン(Buchanan,1992)※

4 事物の意味を推論する,あるいは作る手法 ローソン(Lawson,2008[1980]),クロス(Cross,2006,2011)

5 意味の創造 クリッペンドルフ(Krippendorff, 2006)

( Johansson-Sköldberg et al., 2013 に基づく)※リッテルとウェバー(Rittel and Webber,1973)に基づく

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建築費用,法律上の制約等々の知覚された諸要件を満たす形態(=建築物)を構想し実現することがデザインの問題である。(榊原 他1989, p.296)」

原・阿部(2007)は,「社会の多くの人々と共有する問題を発見し,それを解決していくプロセスにデザインの本質がある」としている。これは,「生活上の問題の美的な解決方法」がデザインだとするB.ムナーリ(Munari, 1981, 萱野訳, 2007)の主張に沿ったものと言えるが,デザインの本義に立ち返るなら,「デザインとは,コンセプト(アイディア)にフォルム(形)を与えること」というシンプルな定義が,デザイン発祥の地であるイタリアでは共通了解となっていることが確認できる。このことは,たとえばクルーザーの製品開発の場面では,次のように指摘されている。「言い換えれば,デザインとは,製品のフォルムを定義することを,協調活動の総合,

即ち,その特殊性を通じてフォルムを定義するのに寄与するような一切の要素の統合とみなすような活動である。(諸々の要素の統合/協調活動の統合として製品フォルムを定義するような活動としてのデザイン)は,様々な場所(空間)を個人的であると同時に社会的に使用する諸条件,そしてその使用可能性(を考えること)であり,機能的で(権限)配分的な組織(のマネジメント)・否定的な汚染の拒絶・技術―構成的なシステムと海と両立可能な素材の活用・全体として見たときにボートに相応しい優雅な要素の活用―これらのことが,賢明な仕方で相互に関連させられるならば,新世代の製品の図面の引き方を知ることに繋がる―なのである。デザインは,それがこれらの要求に対応し,最も広義の意味でまた最高度に快適な仕方で “海を楽しんで体験する”ことを可能とするならば,それは良いデザインであると考えられる。同時にデザインは,それが追究に値する唯一の目標として,自己表現と形態上の満足を与えるようなフォルムを単に追究するならば,取るに足らない(つまらない)ものであると考えられる。(Carcano,2010,p.114;強調は引用者)」

ここで述べられていることは,単に見た目の良い外観を追究することをデザインの目的としてはならず,美観はデザイン・プロジェクトの結果として出現するのが良いということである。デザインは,売り上げを伸ばすために美観を追究するような皮相な “美容整形術”ではないということである。

2.デザインの原理

イタリアの美学とデザイナーらの実践を繋ぐデザイン理論の位置について記したのが図1である。G.C.アルガン(Argan)・G.ドルフ㆑ース(Dorfles)・T.マルドナード(Maldonado)・E.フラテイリィ(Frateili)らのデザイン理論が,美学とデザイン実践との間に橋を架けているが,他方で美学者および実際にデザインを行うデザイ

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ナーの側でもデザインの理論的側面に言及している。これら4名のデザイン理論家の内,マルドナードは,ウルム造形大学に与し,合理的なデザインを実施するデザイナーたちが大企業に統合されるようなドイツ型のマネジメントモデルの成立を後押ししたので,イタリアのデザイン理論史から省きたい。というのも社外にいるデザイナーが,ファンタジーに富んだ自由な発想でデザインを行うというイタリア型のマネジメントモデルであり,A.ブランジィ(Branzi)もE.ソトサス(Sottsass)に関する論評の中で次のように述べている。「ウルム(造形大学)のトマス・マルドナードの一派は,アルゼンチン人の目から見たヨーロッパ観をもって50年代のデザイン論争を支配した。カルヴァン主義的な倫理観念をもつ彼は,まったくテクノロジーの分析と構成的手法のみに基づいた科学的なデザイン理論を案出し,いさかかも消費者の感情が介入することの無いよう,それを凍結し機先を制することを目指したのである。かくして製品の生産はその形態(フォルム)という点からも抑圧されたのであった(強調は引用者1))。」ブランジィによれば,ウルム造形大学のデザイン学派が唱えるモダーンな観念は,時代遅れとなってしまったルター主義の厳格さと実践不可能な純粋主義に基づくものであるため,弱々しく未完成で不完全だがそれでいて愉快なイタリアのモダニティとは異なるという2)。要するにウルム造形大学のデザイン理論家達が唱えるデザインは,厳格な方法論的なパラメーターに基づいたデザインであり,連続的な研究と実験作業を旨とするイタリアのデザインとは性質を異にすると彼は指摘する。また,建築家の豊田によれば,ドイツのバロック建築は,「幾何学に淫して造形としての秩序感や強さを失ってしまう結果になりがちであり,…すこぶる高度な幾何学を駆使しているものもあるが,空間としての一体感に欠け,むしろ立体幾何学の遊びに堕している感が無きしもあらずと思われるのだ3)」と指摘している。

もちろんマルドナードにとっても,インダストリアル・デザインのプロセスを経て,最終的に製品のフォルム(かたち)が決められることは自明である。マルドナードは次のように述べている。「フォルムの企画とは,ある仕方あるいは他の仕方で,製品のフォルム(形)を構成するプロセスに関わる,すべての要素を調整・統合・分節接合することである。より正確には,製品の使用や機能および製品を個人的あるいは社会的な仕方で消費すること,に関連した諸要素(機能上そして象徴的あるいは文化的な諸要素)をほのめかすことに加えて,製品の製造に関連した諸要素 ⎝技術―経済上の,技術―建築上の,技術―システム上の,技術―生産上の,技術―分配上の諸要素)もほのめかすことである。4)」

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「イタリアのデザインには方程式のようなものがない」と佐藤は述べているが5),冒頭述べたように,a)表現(フォルム;かたち)にかかわる人文学,b)社会経済的な側面(社会科学),c)技術工学的な側面(自然科学)という三つの側面を勘案して,簡単には廃れないような仕方でモノのかたち(形;フォルム)を美的に定めることがイタリアのデザインの原理である。こういったデザインプロセスの全体論的(ホーリスティック6)な性質については,フラテイリィが以下に示すデザイン要素の図式が分かりやすい。

図 2.デザインの諸要素

図2における第一の領域は,フォルムにかかわる形態学上の領域,「つまり,形を作り,なおかつ,心理学上の知覚現象に関わるというこの二つのプロセスにおいて理解されるデザインの本質的な問題,としてのフォルム(の支配が及ぶ)領域である。前者の場合(企画[progettazione]),フォルムは,ある社会に属する生のモデルを決定し,そして一緒に解釈することに力を貸すような諸々の対象(物体)に関して,

(Fraiteili, 1969, p.22 より)

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デザイナーの創造性が作用する領野である。後者の場合(コミュニケーション),フォルムは,対象(物体)そのものに対して,利用者(享受者)が感じる(感情を抱く)経験の領野である。7)」他方,第二の領域は,科学的―技術的な領域であり,「この領域のおかげで,機械によって助力される人間の労働力と知力の持ち主を組織化する能力を持った人(デザイナー)は,人間を取り巻く人為的な環境の改革者(刷新者)として,産業機構を介して,財に関する社会の要請(要求)をみたす。対象(物体)の機能という意味での技術上の企画であろうと,また,それを実現するための作業プロセスであろうと展開してゆくのは,こういった環境の中でである。8)」最後に第三の領域は,使用上の要求にかかわる社会学上の領域である。

統合理念としてのデザインが上述の三つの領域にかかわることを,現象学者のE.パーチ(Paci)も指摘している。1954年の第10回ミラノトリエンナー㆑における発表の中で,「モノの諸機能に関わる意味論的なもの( the semantic)・モノの構成要素の間に存在するフォルム(かたち)の諸価値に関わる統語法的なもの( the syn-

tactic)・モノの流通可能性という意味でのプラグマティックなもの(the pragmatic)という,モノの三つの側面がインダストリアル・デザインにおいては鼎立するように統合・統一されている。」とパーチは指摘している9)。

E.マーリ(Mari)も,上述の三つの領域に配慮して,最良のモノのかたちを定めることがデザインであると考えている 10)。マーリによれば,そのような三つの要素は以下のように記述される。

(a): 表現=かたち(造形・音楽・文学などすべての芸術が含まれている)(b): 科学=技術・素材(自然科学の地平;ガリ㆑オ革命によって生誕)(c): 生産関係=必要性(社会経済的な側面。物質の必要性にかかわる諸問題に

とどまらず,哲学や宗教までがアナロジーとして含まれる。)

この分類において,(a)と(b)は,かたちを物質化(具体化)するものであるが,(c)は(a)と(b)に多大な影響を与えるという―互いが干渉しあって,形態と機能が様々な関係を結びつつ―。図3は,同様にマーリに従って,部品のかたち(フォルム)であれ最終的な製品のかたち(フォルム)であれ,デザイン・プロジェクトの途上において任意の一つの課題を検討する際に,これら(a)・(b)・(c)の要素に対して注意が払われる様子を表わしたものである。部品のかたち(フォルム)を決定する際であれ,最終的な製品のかたち(フォルム)を決定する際であれ,(b)の自然科学的な要素と(c)の社会経済的な要素が検討される。このような検討に十分な時間とコストをかけないと,最終製品のかたちのクオリティを実現することはできない。マーリは次のように述べている。

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筆者

作成

小 山 太 郎

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「プロジェクトの目標とは最良のかたちを実現することである。プロジェクトのクオリティとはかたちのクオリティから生じるものであり,かたちのクオリティとは研究に研究を重ねた知の「統合」から生み出されるものであるからだ。一般には,プロジェクトのクオリティの根拠は,主に合理科学的なものだという信仰があるのだが。

(Mari, 2001,田代訳, 2009, p.31)」かくして,フラテイリィ,パーチ,マーリなどが指摘しているデザインの三つの側

面は,モノのかたち(フォルム)が最終的に実現されるに至るまで必ず検討すべき要素だということになる。これをイタリアのデザインの基本原理だと言ってよいだろう。

3.デザインプロセスの実際

図4が,マーリの『プロジェクトとパッション』で説明されている椅子を作るデザインプロセスの事例である。デザイン・プロジェクトとは,明確な問い(必要)に対する答えである。ここでは要求を黒丸の点(=●)で表すことにする。矢印(→)は,要求(=●)あるいは任意の検討課題に対して候補となる解決策,または疑問を表わしている。つまり要求から四方八方に向かって放射状に出ている矢印(→)の束は,可能性のある解決策が幾つも存在するということを意味している。図4では,第一周目で木材を使用する可能性,第二周目で四本脚にするかどうか,第三周目でビスの繋ぎ目の検討,四周目で布製の背もたれをつけること,第五周目で,第一周で決めた木材の質感の検討,がなされる。ここで注意すべきは,ある一つの候補となる解決策(選択肢)を検討する際,(a)かたち(フォルム)の芸術的表現を決める際に参考となる人文学的教養,(b)素材の性質などの自然科学的側面,(c)人間の必要性に関する社会経済的側面の三つの次元にわたって研究することが重要であるということである。例えば,第三周目で,椅子の脚と本体を繋ぐ隠された部分のビスの性質(強度や耐久性)について注意深く分析した結果,脚のジョイント部分の面積を広くする必要が発生するかもしれない。そうすると脚のフォルムとの相性(シーム㆑スな美的連結)が検討されることで,脚のフォルムを全面的に変更する必要が生じるかもしれず,あるいは,四本脚でなくて三本脚にしなければならなくなるかもしれない。また,椅子全体の形との整合性も検討しなければならないし,その椅子がどのような空間に置かれているか,といったことも検討しなければならない―要するに,デザイン・プロジェクトの道程において課題を検討する際,フォルム(形)の検討がその都度,全体との関連を考慮しながら実施される。

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図4

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より

筆者

作成

小 山 太 郎

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ここでは第三周目において検討したことが第二周目で仮に決定したことの再検討を促しているのだが,このようなことも想定し,初めに,第一周目から第五周目を暫定的にぐるりと一周し,検討されるべき解決策の束のそれぞれの可能性を比べてみて,どれが一番の得策かを調べてみなくてはならない。第 N周目において,ある二つの解決策を比較している最中に第三の解決策の可能性があることに気付くこともある。時間がない場合,たとえば第二周目の円までで検討されるべき課題を打ち切って,プロジェクトを特定の方向でのみ進行させるような選択肢(解決策)が選ばれることもある―下図参照(Mari, 2004, p.32より筆者作成)。

これは,かたちのクオリティが低くなるようなプロジェクトの実施方法であり,望ましいのは,十周~百周~千周も廻って検討課題に時間をかけることである。たとえば,十二周目の問いで,形態(フォルム)の各細部にいたるまで描写し,プロジェクトをそこで完了させることも可能だが,続いて第十三周目の検討課題に入る,といったことを続けていくことで,最終製品のかたち(フォルム)が高いクオリティを備えることとなる。

様々な課題を時間とコストをかけて検討することで,最高のクオリティを備えたフォルムを実現できるというのがマーリの考えである。マーリは次のように述べている。

「自然のフォルムは,我々によって象徴的な仕方でまずは知覚されますが,物理的にはこういう感じであるほかはないもの,言い換えれば,物理法則とダーウィンの進化論が定める抗し得ない法則が押し付けるようなもの,である。人為的に作られたもの(対象)のフォルムは,物理法則と(その対象が現れてくる)象徴的な原理が,総体的な均衡を伴って決着を付けられる時,こんな感じであるほかなくなるのだ。人為的に作られたもののフォルムを決定する諸記号が,例の総体性から切り離され,偏向した局部的な記号の使用(simibologia)に応じて選ばれるなら,不完全で従って陳腐で凡庸なフォルムが得られる。次のように言うこともできる―必要なことの叙述(描写)という最初の水準をフォルムが超えているなら,クオリティは高い。(Mari, 2004, pp.16-17)」

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つまり,生物などの自然に存在するもののかたち(フォルム)は,物理法則と生物学の論理によって決められているが,人間が人為的に作るもののかたち(フォルム)は,設計される対象であるモノの象徴的な意味と物理法則とがバランスを取りながら実現されるのであり,またその実現のされ方は,単なる機能上の必要性という水準を超えている場合に高いクオリティが達成されるのである。

4.実現されたフォルム(かたち)の効果

画期的な新製品は,消費者に対する市場調査結果に従うことによってではなく,デザイン主導によって作られることを主張しているのは,イタリア人のベルガンティである(Verganti, 2003, 2006a, 2006b, 2008, 2009, 2011a, 2011b)。彼の主張によれば,「ユーザーにとって真に重要であるのは,機能に加えて,製品の情緒的かつ象徴的な価値―製品の意味―(Verganti, 2006, p.156)」であり,成功しているイタリアの企業は,「製品の持つ情緒的かつ象徴的な側面を革新し,人々にとって製品が意味していることを革新している(Verganti, 2006b, p.155)」という。製品の持つ情緒的かつ象徴的な価値を刷新するというデザインのこの定義は,フォルム(形)としてのデザインという概念が狭すぎるとして拡張したものであるという。

最近の International Journal of Design誌では,デザインされたものが喚起する25種類の感情や,フォルム(形)の種類の分類,デザインされたものが発する音や匂いが人間の情緒に及ぼす影響,デザインされたものが持つ象徴的な意味,などの分析に焦点が当てられているが,これらの研究は,ベルガンティが指摘しているイタリアのデザインの特徴―デザインされたものの,象徴的かつ情緒的な側面を深く考えること―の延長線上にある研究だと言える。

しかし,イタリアのデザインを考えるならば,デザインされた最終製品ではなく,デザインされたモノのかたち(フォルム)が,象徴的意味を担いつつ,もろもろの情緒を充足させる―美的で官能的な効果を使用者に対して持っている―と述べた方がよい。そういう効果を持っているかたち(フォルム)がクオリティの高いフォルムである。たとえば,マーリは,ある特定のかたち(フォルム)は,通常,シンボル(象徴)として人間によって読み取られている点を次のように指摘している。

「(ある特定のフォルム(形)は),調和,不調和,厳格さ,奇妙さ,重さ,軽さ,安定感,不安定感,奇妙さ,シンプルさ,異様さ,落ち着き,官能的,確かさ,不確かさ,清潔さ,不潔さ,果断さ,はかなさ,安堵感,焦燥感,ある動物を想像させる,といった具体に。さらに一般的なのは美しさ,醜くさ,とか,古典的文化,あるいは工業文

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化を思い起こさせる,または西洋の文化,あるいはオリエンタルな文化を彷彿とさせる,などだ。(Mari, 2001, 萱野訳, 2007, p.172)」また,別のところでは,任意のフォルムは,象徴的な意味を担って次のように感じ

られると述べている。

「それ(フォルム)は,我々には長さが長く,小さく,大きく,等々のように思われるだけでなく,軽く,安定していて,消えていくようであり,また,どんなに畏れ多いようでも静謐で,それでいて一匹の動物であり,一つの山や花であり,また,典雅なアッティカ風で,アステカ,そしてロココ調であるように思われるのである。

(Mari, 2004, p.16)」

このように最終製品のかたち(フォルム)の効果―様々な情緒の喚起と充足に加えて象徴的な意味を感じさせること―に注意を払うことがイタリアのデザイン・プロジェクトの特徴であるが,実現した任意のフォルムには色彩が施され,場合によっては音が出るような工夫が為されている場合もある(食器メーカーであるア㆑ッシイのケトル・シリーズのように)。あるいはまた,照明の光に焦点を当て,その光がどのような情緒を充足させるのか,という点の研究から実現したアルテミーデ

(Artemide)社のメタモルフォージ(metamorfosi;変容)シリーズの開発もイタリア的であると言えよう。メタモルフォージの開発は,イタリア人の間で健康と心のやすらぎへの関心が高まっていることを受け,精神科医をチームリーダーとして照明の色の変化が感情に及ぼす影響を生物学的・心理学的・社会学的側面から考察し,幸福感をもたらす光を発するにはどうしたらよいのかを徹底的に考えた結果だからである 11)。

5.終わりに

本稿で確認したことは,デザインとは統合理念であるということである。つまり,デザインとは,a)表現(フォルム;かたち)にかかわる人文学,b)社会経済的な側面(社会科学),c)技術工学的な側面(自然科学)という三つの側面を総合的に勘案して,簡単には廃れないような仕方でモノのかたち(形;フォルム)を美的に定めることである。(デザインが統合理念ならば,デザインを社会に活かす仕方として,たとえば,人文学・社会科学・自然科学という三つの分野から成る総合大学の経営理念としてデザインを掲げることなども可能であろう。)

かくして,デザイン思考の第一の側面は,上述の三つの要素を考慮して,モノの

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かたち(フォルム)を定めることである。イタリアで高級自動車を設計する際には,次のようにフォルムが捉えられている。

「“美しいこと” は,好感を得るような線(ライン)を備えた自動車であるだけでなく,安全で,早くて,静かで,心地よく,環境に優しく,機能的で,名声を感じさせるような機械(自動車)である。自動車では,“フォルム” は,単に決して何かを入れる宝石箱ではない:(フォルム)それ自身に意義・価値があるのであり,心を奪ってうっとりさせる例の “心・核心” の一部なのである。そして,決定的な仕方でこうした誘惑に寄与する自動車のデザイナーは,線を描く有能な製図工・巧妙なプロジェッティスタ・インスピ㆑ーションを備えたフォルムのデーミウルゴス(創造神)であるだけでなく,諸々の要求と憧れを自覚している解釈者でもあるのだ。そしてまた,もう一度夢見られるべき様々な夢や,再度考えられるべき悦び,再発明されるべき魅惑の予言者である。あるいは,丈夫だが生硬い最先端の技術要素の背後に,将来主流となるけれども現在は瑞々しくまた微かである潮流を探し求めるような,先見の明のある棒占い師である。(強調は引用者12))」

自動車の場合,フォルムの良し悪しを確認する際には,実際に模型を作ってみないと量の感覚(voluminosità)が分からないため,原寸大の模型が模型職人(Moddelista)によって作られ,同時に当該フォルムの良し悪しも評価される(自動車でも高級クルーザーでも模型を作る職人であるモデリスタ(Moddelista)が職業として成立している)。なお,イタリア語の量(volume)には,あるフォルム(形)の内容物が充満している様子という意味があり,フォルムと内容物との緊張関係にも関心が支払われなければならない。V.フルッサー(Flusser)に従えば,ある現象に対して,ぴったりと収まって都合のよい(comodo)容器(入れ物)がモデル(=フォルム)であり,任意の現象に対して収まりが悪ければ別の容器(モデル)を用意すればよい 13)。つまり,あるかたち(フォルム)には,真のかたちと虚偽(見せかけ)のかたちがあるわけでなく,あるいはプラトン的な不変のイデアとしてのフォルムというわけでもない。かくして,あるフォルムは,発見や発明されるべきものではなく,任意の現象を格納する容器(入れ物)として,言い換えればモデルとして用意されるものである。現象をうまく説明できるような,屹立したフォルムを形作れば―イタリア語のインフォルマー㆑ informareには形作るという意味がある―,それは衆人の眼を引く「情報

(information)」となる。とはいえ,三つの側面を総合的に勘案して,簡単には廃れないような仕方で美的に

定められた,容器(入れ物)としてのモノのかたち(フォルム)は,一部分でも変更すればバランスを欠いたものとなってしまう。美学者のL.パ㆑イゾン(Pareyson)は次のように述べている。

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「かたちが含んでいるものは含むべきもの以上でもなければ以下でもなく,かたちはあるべき姿をしており,また現にあるような姿をしているべきものであって,いささかなりとも加えたり取り去ったり変更を加えたりすれば,形式を徹底的に破壊することになるであろう。また,それゆえ,かたちは整合的体系性の法則によって構造化され,この法則がその諸部分をめぐってそれを全体にまとめ上げているのであって,不安定なつかの間の均衡のいたずらによるものではないから,その調和の相は決定的なものであり,その価値の点では永遠のものであり,また,個性的でありながら普遍的であり,他のものに依存せず自律性をもち,その完全性の点で範例となるものである。それゆえ,このようなかたちは美しいのである。14)」

本稿では,表現に関わる人文学・社会科学・自然科学という三つの要素を勘案してモノのかたち(フォルム)を定める思考をデザイン思考の第一の側面としているが,フルッサーは,デザイン思考を15世紀以来の思考の第二の革命として捉えている15)。つまり,デザイン思考を特徴付ける,数のコードから「線と形と色と音と(やがては)容積のコード」への切り替えは,ニコラウス・クザーヌスが,15世紀にその著『学識ある無知について』で記した,アルファベットのコードから数のコードへの思考の切り替え(思考の算数化)に続く,第二の革命なのである。

今後の研究課題として挙げられるのは,イタリアのデザイン理論史において重要な位置を占める,ローマ市長を務めたアルガンやドムス(Domus)アカデミーの校長であったドルフ㆑ースの諸論考を採り上げつつ,デザインを構成する三つの側面のそれぞれについて詳しく検討していくことである。と同時に,自動車・高級クルーザー・家具・自転車・家電・鞄や靴といった実際の商品の製品開発プロセスにおいて,該当する製品のかたち(フォルム)の決定のされ方を具体的に見ていきたい。例えばベッリーニが家電について指摘するところによると 16),オリベッティがオフィスの文化を提供する方針であった一方で,IBMはパソコンなどのOA機器をより多く売ろうとする。結果として,オリベッティはイタリア的なオフィス文化を象徴し,IBM

はアメリカ的なOA機器の代名詞となったという(IBMのパソコンとオリベッティのタイプライターは根本的に異なる)。簡単には廃れない美しいモノのかたち(フォルム)を創っていくことがデザイン思考の一つの側面であるが,この点については稿を改めたい。

イタリアのデザイン主導型の製品開発の論理(1)

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1) アンド㆑ア・ブランジ 「世界の形の質」 (Herbert Muschamp and Andrea Branzi(2000),

The Work of Ettore Sottsassa and Associates, Universe[横山正訳『巨匠エット㆑・ソットサス』

鹿島出版会,2000年所収,p.12])。

2) Branzi,Andrea(2005),“Il design per l ʼ iinovazione dif fusa,” in Il design degli italiani

Made in Italy a cura di Tonino paris etc.,®designpress,pp.84 -85 .

3) 豊田博之(1986)「空間―横溢する幾何学」(『SD』86年4月号「特集バロック建築」所収

p.97)。

4) Maldonado,Tomas(1976), Disegno industriale: un riesame,Feltrinelli,p.9).

5) 佐藤和子(2001)『「時」を生きるイタリア・デザイン』TBSブリタニカ,p.14。

6) 部分的要素の単純な総計へと還元することが不可能な総体を有機体が構成しているという理

論のこと。

7) Frateili,Enzo(1969),Design e Cività della macchina,editalia,p.10 .

8) Ibid.,p.11 .

9) Anceschi,Giovanni(2004),“Introduction to Enzo Paci’s Presentation at the 10 th

Triennial,” Design Issues,Vol.18(4),pp.48 -53 .

10) Mari,Enzo(2001),Progetto e Passione,Bollati Boringhieri editore s.r.l., Torino.(田代か

おる訳『プロジェクトとパッション』みすず書房,2009年)以下の記述は同書による。

11) メタモルフォージのデザイン・プロジェクトについては,Guiliano Simonelli and Francesco

Zurlo(2002), “Metamor fosi di Ar temide: la luce che cambia la luce,” in Francesco

Zurlo,Raf faella Cagliano,Giuliano Simonelli,and Rober to Verganti,Innovare con il

Design.Il caso del settore dell’illuminazione in Italia,Il Sole 24 Ore,2002およびCastelli,

Guilio,Paola Antonelli,Franchesca Picchi( Ed.)(2007),La fabbrica del design

Conversazioni con i protagonisti del design italiano, Skira,pp.151 -156を参照。

12) Mario Favilla and Aldo Agnelli(2013),Fare l’atutomobile con interviste a grandi car

designer,Marsilio,の序文より。

13) Flusser,Vilem(2001),Filosofia del design,Bruno Mondadori,pp.12 -15 .

14) Parayson,Luigi(1955), “Contemplation du beau et production de forms,” Revue

Internationale de Philosophie,Fasc.1,No.31 .(佐々木健一訳「美の観想と形式の産出」『閉

じた世界から無限宇宙へ』晃洋書房,1978年所収,pp.124-125)なお,引用にあたっては,

邦訳では「形式」となっているところを「かたち」とした。

15) Flusser,Vilem(1994),Vom Sugjekt zum Projekt,Bollmann Verlag GmbH.(村上淳一訳

『サブジェクトからプロジェクトへ』東京大学出版会,2009年,p.23)。

16) Bellini,Mario(1986),Architettura e Design:Considerazioni,Domus,n.675,pp.21 -28 .

小 山 太 郎

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参考文献

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小 山 太 郎

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