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1 エラスチン分解アミノ酸の 定量分析 上智大学 理工学部 物質生命理工学科 准教授 臼杵 豊展 平成30911

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エラスチン分解アミノ酸の定量分析

上智大学 理工学部 物質生命理工学科

准教授 臼杵 豊展

平成30年9月11日

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・ エラスチンは肺や血管、皮膚などの弾性線維タンパク質・ デスモシンはエラスチンの伸縮性に寄与する架橋アミノ酸・ 当研究室で唯一の化学合成を達成

1) Partridge, S. M.; Elsden, D. F.; Thomas, J. Nature 1963, 197, 1297-1298.

エラスチン・デスモシンについて

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・ タバコ病とも言われる深刻な呼吸器系疾患・ 世界第3位の死亡原因(WHOによる)・ 有効な治療薬は未開発

COPDの危険因子 COPD患者と健常者の肺

COPD(慢性閉塞性肺疾患)

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診断法:・ 喫煙歴、CT、X線・ スパイロメトリー法

問題点:・ 肺胞の破壊が始まった初期段階では症状が表れにくい・ 臨床現場での正確な診断が難しい

簡便な方法による早期診断が必須

現状でのCOPDの診断法

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HClhydrolysis

LC-MS/MSanalysis

elastase

neutrophilsmacrophages

エラスチン エラスチン分解ペプチド(血液・尿・気管支肺胞洗浄液)

control COPD

デスモシン量

・ デスモシンはCOPDのバイオマーカーである・ エラーバーが大きいためより厳密な定量分析が必要・内部標準として重水素標識したデスモシンが最適

X:デスモシン

COPDのバイオマーカー:デスモシン

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DES-d4urine

DESIDS

plasma DES-d4

DESIDSRe

lativ

eRe

lativ

e

+

1) Usuki et al. Anal. Biochem. 2013, 440, 158.

同位体標識desmosineを用いた分析法の開発に成功1)

同位体希釈LC-MS/MS分析

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従来技術とその問題点• アストラゼネカ化学構造不明なdesmosine-d9を用いて分析

1)

• ファイザー化学構造不明なdesmosine-d5を用いて分析

2)

• ロシュ化学構造不明なdesmosine-d4を用いて分析

3)

1) Militotis, T. et al . J. Chromatogr. A 2013, 1308, 73. 2) Huang, T.-J. et al Bioanalysis. 2013, 5, 1991. 3) Dobeli, H. et al. Anal. Biochem. 2013, 436, 127.

いずれも正確なdesmosineの分析に至っていない

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新技術の特徴・従来技術との比較

• 有機合成化学を駆使して、化学的に確実に重

水素置換されたデスモシンを内部標準物質と

したため、より厳密な分析法を確立できた。

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想定される用途

• 治療薬のないCOPDの診断薬の開発

• COPD以外のエラスチンの分解が関与する疾

患の診断薬の開発へ繋がる(子宮筋腫、動脈

瘤、皮膚系疾患、遺伝性疾患、もやもや病他)

• 食品中や人工エラスチン中のデスモシン量の

分析に応用可能

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実用化に向けた課題

• LC-MS/MSを用いた分析法の特許は、コロン

ビア大学との共願であるため、知財に抵触す

る恐れがある(デスモシンの合成は単願なた

め問題ない)

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企業への期待

• デスモシン分析の新薬開発への応用

• 医薬品だけでなく、材料メーカーや食品関係

の企業との共同研究も希望

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :Analyzing Elastic FiberInjury Markers

• 出願番号 :PCT/US2014/036070• 出願人 :Columbia University• 発明者 :Lin、Ma、Turino、Usuki

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お問い合わせ先

上智大学 学術情報局

研究推進センター

TEL 03 - 3238- 3173FAX 03 - 3238- 4116

E-mail [email protected]