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2015.3 金属資源レポート 41 597チリの鉱業の現状と課題 チリにおける2013年の銅生産量は5,776千tで、世界 の銅生産量の32%を占めるものであった。世界の銅生 産において重要な位置を占めるチリの銅鉱業は、チリ の国家経済のみならず、我が国の産業への寄与も大き い。 2013年から2014年にかけて、Ministro Hales 銅鉱山 CODELCO)、Caserones銅・モリブデン鉱山(パンパ シフィック・カッパー、三井物産)、Sierra Gorda銅・ モリブデン鉱山(KGHMI、住友金属鉱山、住友商事) の3つの新規鉱山が操業を開始した。過去10年間に生 産 を 開 始 し た 新 規 鉱 山(2006年 のSpence、2008年 の Gaby、2011年のEsperanza)と同じ数の鉱山が集中して 生産を開始したことになる。そのうち2つは日本企業 が参画する鉱山であり、とりわけ、1つは日本企業 100%の鉱山ということで、チリ銅鉱業と我が国の産 業との結びつきが一層強くなっている。 そのようなチリの銅鉱業について、2013年の現状や 過去10年程度の推移のほか、鉱業投資環境の現状と課 題について概観したい。なお、本稿は、平成26年11月 25日に開催した『平成26年度第9回金属資源関連成果発 表会』において講演した内容であることを申し添える。 1. チリ銅鉱業の現状 1-1. 生産 2013年の銅生産量は5,776千tで、2012年から6.3%増 となり、世界の銅生産量の32%を占めるものであった (図1-1)。チリ国家経済への貢献度は大きく、GDP9.8%は鉱業に由来するもので、国家歳入の10.1%が民 間主要10銅鉱山及びCODELCOからもたらされた。 2013年の生産内訳についてフローとしてまとめたも のを図1-2に示す。採掘された鉱石中の銅金属量5,776 tのほか、ブラジル等からの輸入鉱石中の金属量が 163千tとなっている。精鉱生産量とSxEw生産量はそ れぞれ、4,006千t (銅金属分、以下同様)、1,933tであり、 国内製錬およびSxEwからの地金生産量は2,755千tであ る。精鉱と地金の輸出量はそれぞれ、2,533千t、2,586 tとなっている。 銅精鉱とSxEwそれぞれからの銅金属量生産状況に ついて過去10年間の推移を比較してみると(図1-3)、 2009年以降、銅精鉱が増加する一方でSxEw分が減少 する傾向が継続していることがわかる。2012年以降は 精鉱の輸出比率が上昇し、精鉱の国内製錬あるいは製 錬地金生産比率が低下している。 サンティアゴ事務所 所長 山本 邦仁 図1-1. 銅鉱山生産量 (出典:ICSG、WBMS資料から作成)

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Page 1: レポート チリの鉱業の現状と課題mric.jogmec.go.jp/wp-content/old_uploads/reports/...41 (597) チリの鉱業の現状と課題 チリにおける2013年の銅生産量は5,776千tで、世界

2015.3 金属資源レポート 41(597)

チリの鉱業の現状と課題

 チリにおける2013年の銅生産量は5,776千tで、世界の銅生産量の32%を占めるものであった。世界の銅生産において重要な位置を占めるチリの銅鉱業は、チリの国家経済のみならず、我が国の産業への寄与も大きい。 2013年から2014年にかけて、Ministro Hales銅鉱山(CODELCO)、Caserones銅・モリブデン鉱山(パンパシフィック・カッパー、三井物産)、Sierra Gorda銅・モリブデン鉱山(KGHMI、住友金属鉱山、住友商事)の3つの新規鉱山が操業を開始した。過去10年間に生産を開始した新規鉱山(2006年のSpence、2008年のGaby、2011年のEsperanza)と同じ数の鉱山が集中して生産を開始したことになる。そのうち2つは日本企業が参画する鉱山であり、とりわけ、1つは日本企業100%の鉱山ということで、チリ銅鉱業と我が国の産業との結びつきが一層強くなっている。 そのようなチリの銅鉱業について、2013年の現状や過去10年程度の推移のほか、鉱業投資環境の現状と課題について概観したい。なお、本稿は、平成26年11月25日に開催した『平成26年度第9回金属資源関連成果発表会』において講演した内容であることを申し添える。

1. チリ銅鉱業の現状1-1. 生産 2013年の銅生産量は5,776千tで、2012年から6.3%増となり、世界の銅生産量の32%を占めるものであった(図1-1)。チリ国家経済への貢献度は大きく、GDPの9.8%は鉱業に由来するもので、国家歳入の10.1%が民間主要10銅鉱山及びCODELCOからもたらされた。 2013年の生産内訳についてフローとしてまとめたものを図1-2に示す。採掘された鉱石中の銅金属量5,776千tのほか、ブラジル等からの輸入鉱石中の金属量が163千tとなっている。精鉱生産量とSxEw生産量はそれぞれ、4,006千t(銅金属分、以下同様)、1,933tであり、国内製錬およびSxEwからの地金生産量は2,755千tである。精鉱と地金の輸出量はそれぞれ、2,533千t、2,586千tとなっている。 銅精鉱とSxEwそれぞれからの銅金属量生産状況について過去10年間の推移を比較してみると(図1-3)、2009年以降、銅精鉱が増加する一方でSxEw分が減少する傾向が継続していることがわかる。2012年以降は精鉱の輸出比率が上昇し、精鉱の国内製錬あるいは製錬地金生産比率が低下している。

サンティアゴ事務所 所長 山本 邦仁

図1-1. 銅鉱山生産量(出典:ICSG、WBMS資料から作成)

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1-2. 鉱物資源の輸出額 2013年の鉱物資源の輸出額は439.4億US$であり、全輸出額におけるシェアは57.3%であった(図1-4)。また、銅資源の輸出額は397.4億US$であり、これは鉱物資源の87.2%を占めるもので(図1-5)、チリの輸出額における鉱物資源の割合、なかでも銅資源の割合の高さが際立っている。

1-3. 銅資源の輸出状況 銅資源の輸出先を国別でみると、最大の輸出先は中国(37.5%)で、これに日本が次ぐ(12.9%)(図1-6)。アジア圏への輸出は69.6%を占めており、チリから産する銅資源の3分の2がアジアへ供給されている。 2003~2013年の輸出先国別状況の推移をみると(図1-7)、中国への輸出は、2008年まで20%以下、2009年以降は32%前後で推移してきたが、2013年に37.5%に

図1-2. 銅生産状況(出典:COCHILCO資料から作成)

図1-3. 銅精鉱およびSxEwの生産状況推移(出典:COCHILCO資料から作成)

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増加した。2013年のアジア圏への輸出量が前年から5ポイント上昇したのは、中国向け輸出の増加を反映している。日本は13%程度の水準で安定的に推移している。 2013年の地金の輸出先国別シェアは中国が37.6%であり(図1-8)、第2位の米国(16.8%)を大きく引き離して、最大となっている。

 精鉱の輸出国別シェアについても中国が34.8%を占めて最大であり、これに日本の27.8%が次ぐ(図1-9)。2012年には第1位:日本(30.8%)、第2位:中国(26.3%)であった。 地金と精鉱の輸出先国別の状況について、2003~2013年の推移をみると(図1-10、1-11)、2012年以降、中国への精鉱の輸出量が増加傾向にあることがわかる。特に、2013年は前年から大きく増加した。

銅地金(2013)2,586千t

銅輸出(2013)38,597千t

銅精鉱(2013)2,533千t

銅地金(2013)2,586千t

銅輸出(2013)38,597千t

銅精鉱(2013)2,533千t

図1-4. 2013年輸出額(出典:チリ中央銀行)

図1-6. 2013年銅輸出先構成(出典:COCHILCO資料から作成)

図1-8. 2013年銅地金輸出先(出典:COCHILCO)

図1-5. 2013年鉱物資源輸出額(出典:COCHILCO)

図1-7. 銅輸出先の推移(出典:COCHILCO資料から作成)

図1-9. 2013年銅精鉱輸出先(出典:COCHILCO)

銅地金(2013)2,586千t

銅輸出(2013)38,597千t

銅精鉱(2013)2,533千t

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1-4. 生産能力見通し COCHILCOが各鉱山会社の投資計画を取りまとめた資料によると(表1-1、図1-12)、年間銅生産能力は2021年に7,000千tを超え、2025年には約8,500千tとなる見通しである。

 今後生産開始を見込む開発事業には、SxEwによる酸化鉱からの地金生産から、硫化鉱からの精鉱生産へと転換を図る事業が多数含まれる。2019年以降、そのような事業からの生産量と、新規開発鉱山からの生産量はほぼ同程度と見込まれる。

銅地金(2013)2,586千t

銅輸出(2013)38,597千t

銅精鉱(2013)2,533千t

銅地金(2013)2,586千t

銅輸出(2013)38,597千t

銅精鉱(2013)2,533千t

図1-10. 銅地金輸出先推移(出典:COCHILCO)

表1-1. 銅資源開発プロジェクト一覧(2014年以降、出典:COCHILCO)

図1-11. 銅精鉱輸出先推移(出典:COCHILCO)

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2015.3 金属資源レポート 45(601)

1-5. SxEwプロジェクト 1990年代に定着し、チリの銅生産量の増加に貢献したSxEwによる地金生産は2009年をピークに、酸化鉱の枯渇等を背景として減少してきている(図1-13)。 主要な新規開発プロジェクトとしては、Antucoya(80千 t/年)、Encuentro酸化鉱(50千 t/年)、Diego de Almagro(11千t/年)があるが限定的であり、既存鉱山のSxEw生産量の減少していくことから、硫化鉱からの精鉱生産の増加が、今後のチリの銅生産の増加要因となる(図1-14)。

1-6. コスト競争力 チリ銅鉱業の競争力を弱める要素のひとつとして課題とされてきている高い人件費は、依然として上昇傾向にあるが、上昇の割合は鈍化したといえる。生産性は、2013年には前年から改善された(図1-15)。 2013年のチリの生産コスト(C3コスト)は249.9¢/lbであり、依然として南米全体や北米の生産コストを上回っている。ただし、上昇傾向は緩やかとなってきており、CODELCOはコストを低減している(図1-16)。

銅地金(2013)2,586千t

銅輸出(2013)38,597千t

銅精鉱(2013)2,533千t

図1-13. SxEwおよび製錬地金生産(出典:COCHLCO資料から作成)

図1-15. 人件費および生産性(出典:Consejo Minero資料から作成)

図1-14. SxEwと精鉱生産の見通し(出典:COCHILCO)

図1-16. 生産コスト(出典:Consejo Minero資料から作成)

図1-12. 銅生産能力見通し(出典:COCHILCO資料から作成)

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2. 鉱業投資環境2-1. 新規鉱山開発 2013 ~ 2014 年 に か け て、Ministro Hales鉱 山、Caserones鉱山、Sierra Gorda鉱山の3つの新規鉱山が操業を開始した。日本企業が参画する鉱山(Caserones鉱

山:パンパシフィック・カッパー77.37%、三井物産22.63%、Sierra Gorda鉱山:住友金属鉱山31.5%、住友商事13.5%)が生産を開始したことで、チリ銅鉱山権益分銅量における日本企業権益分は13.7%となった(図2-1)。

図2-1. 主要銅鉱山の銅生産量と資本構成(出典:COCHILCO資料等から作成)

 今後の大型開発プロジェクトとしては酸化鉱から硫化鉱への転換を図るものが多く(表1-1)、年産100千tを超える開発プロジェクトとしては、Encuentro(SxEw:50千t/年、2016年開始予定、精鉱:140千t/年、2020年開始)、2017年生産開始予定のSanto Domingo(100千t/年、2017年開始)、Relincho(228千t/年、2020年開始)がある。

2-2. 大手企業の動向 金属価格の下落等による業績悪化から非鉄メジャーはグローバルな観点で事業の選択や資産の整理を進めつつある中で、チリの銅鉱山権益にも動きがあった。 Freeport McMoRan は El Abra 鉱 山(Freeport 51%、CODELCO 49%)に集中するとして、Candelaria鉱山等の80%権益を売却した。 Anglo AmericanはMantos Blancos鉱山等の売却計画を有しており、今後、Los Blonces鉱山へと集中していく戦略を有している。 Antofagasta Minerals社はEsperanza鉱山とEl Tesolo鉱山を、Centinela鉱山に事業統合することで、合理化を推し進めた。 このような動きの一方で、生産を開始したSierra Gorda鉱山を操業するKGHMI(ポーランドKGHMのカナダ子会社)や、FreeportのCanderalia鉱山等権益を買

収したLundin Mining(スウェーデンLundin Groupのカナダ鉱山会社)など、チリ銅鉱山への新規参入の動きもあった。 今後の銅資源開発プロジェクト(表1-1)についてみると、チリ資本企業であるCODELCOとAntofagasta Minerals社による投資額が大きい。

2-3. 社会環境問題 社会環境問題による鉱業分野やエネルギー分野での投資計画の遅延・見直しが顕著となっていて、民間プロジェクト投資額予測が下方修正された。民間の投資分析機関のとりまとめによると、2014年第1四半期発表で233.6億US$と予測されたものが上半期発表では208.8億US$となり24.8億US$の減少となった。エネルギー分野で1.4億US$減、鉱業分野で0.6億US$減となっている。 先住民との合意形成の不備により開発プロジェクトが中止あるいは遅延する事例のひとつとしてEl Morro金・銅プロジェクトがある。同プロジェクトを巡っては、2013年10月、先住民グループが再承認された環境認可について差し止めを提訴した。2014年4月に上訴裁判所がこれを棄却したものの、先住民グループはこれを不服として、最高裁判所に上訴。2014年10月に最高裁判所は先住民グループの訴えを認めるとの判決を

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図2-2. 鉱床と氷河の位置関係(第III~VI州)(出典:カレントトピックス2014年05号)

下すに至った。プロジェクトを運営するGold Corp社は、最高裁判所の判決を尊重するとして、環境認可の再取得を予定している。事業再開までには最低でも1年を必要とするとみられる。 環境認可関連での開発事業の遅延があった事業としては、Sierra Gorda銅・モリブデンプロジェクト(2014年操業開始済み)、Cerro Colorado銅鉱山操業継続プロジェクトなどがある。

2-4. 鉱山会社の電力問題への取り組み 社会環境問題により大型発電所建設プロジェクトが軒並み中止あるいは先送りされるなど、電力確保は鉱業に於いて重要な課題となっている。そのような背景の下、発電事業への投資を進める鉱山会社も多い。 Antofagasta Minerals社が建設事業に参画してきたEl Arrayan風力発電所は2014年6月に本稼働した。同社が運営するLos Pelambres鉱山は必要な電力の20%を同発電所から供給を受ける。また同社は、2013年7月、首都圏州において水力発電所開発プロジェクトを保有する電力会社Alto Maipo社への資本参加を実施し、発電所建設事業への投資を進めている。Alto Mipo社の水力発電所からの電力供給はLos Pelambres鉱山の50%以上の電力をまかなうこととなる。供給が開始される2019年には、同鉱山に必要な電力すべてが、同社の資本参加する発電所からの供給に切り替わり、スポット購入の必要がなくなる。 世界最大の銅鉱山であるEscondida鉱山は選鉱所の新設を軸とする拡張を控えており、同鉱山を操業するBHP Billitonは、2014年8月、Kelar火力発電所の建設に着手した。

2-5. 法制度改正の動き 社会環境関連の法制度改正の動きとしては、氷河保

護法(国会審議中)、改正閉山法(国会審議中)、先住民協議に関する新制度(政府検討中)、環境影響評価システム変更(政府検討中)がある。また、許認可手続きの遅延対策として行政能力・機能強化、重複排除といった政府方針が示されている。

2-6. 氷河保護法 氷河保護法は、環境基本法の氷河保護を拡大することを主眼としており、距離にかかわらず氷河に負の影響がある事業について環境影響評価を義務づけるものとなる。鉱山開発にとっては環境影響評価の義務付けによって環境認可取得に要する期間を考慮する必要が生じるほか、建設計画の修正といった影響が生じる。 氷河と鉱床が近接しているチリ中部の鉱山あるいは開発プロジェクトは氷河保護法の制定により影響を受ける可能性がある(図2-2)。Andina鉱山拡張プロジェクト(第V州)における露天採掘ピットについて設計の見直しが必要となる可能性があるほか、氷河への干渉を一切禁じられた場合にはLos Bronces鉱山(第V州)も影響を受けることとなり、また、Los Pelambres鉱山(IV州)の将来の拡張に影響が生じる可能性がある(カレントトピックス2014年05号)。 氷河保護法の経緯は次の通りであるが、リサイクル法案の審議が優先的に行われているといった事情から、審議は停滞している。

2006年5月、Pascua-Lama金銀プロジェクト環境認可取得後、上院に法案提出2010年6月、法案棚上げ(archivir)2010年8月、棚上げ解除申請2013年6月、審議再開2013年10月、議員法案提出2014年5月、政府案提出、下院委員会審議開始

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2-7. 鉱業法改正 政府は、鉱業投資促進、特に探査活動の促進を目的とした鉱業法改正も検討している。 鉱区税納付義務を果たすことで無期限に鉱区(採掘鉱区)を保有することが可能となっている現状が新規参入の妨げになっていると認識されており、その障壁除去のために、鉱業活動実績に応じた鉱区税体系設定、採掘鉱区の有効期限導入などが検討されている。また、チリにおける鉱業権付与手続きは他国に例を見ない司法手続きとなっている。これが鉱区取得手続きにおける非効率性の要因のひとつであり、行政手続きへ転換することで改善を図るのが妥当との考えもある。

2-8. 税制改革法 2014年9月26日、税制改革法が公布され、外資法(DL600)は廃止されることが決定された。外資法の代替制度については2014年9月に発足した専門委員会により2015年1月に政府へ報告書が提出され、その後法案が国会に提出された。バケーションシーズンが終わる3月以降国会での審議が進み、法案成立は2015年後半が見込まれている。

3. まとめ・ チリは世界の銅生産の32%を占め、銅資源供給地としての地位は高い。計画されている銅資源開発プロジェクトを考慮すると、将来の生産ポテンシャルは大きく、その地位は維持・継続される見通し。

・ SxEw地金生産・輸出が減少傾向にあり、それに伴い銅精鉱輸出の増加傾向が継続している。増加分の輸出先は中国となっている。酸化鉱の枯渇により硫化鉱採掘への転換が進むこと、新規の酸化鉱開発プロジェクトが限定的であることなどから、硫化鉱からの銅精鉱生産が増える傾向は今後も続くこととなる。・ 社会環境問題に起因する開発期間の長期化やコストの増大といったリスクは継続している。社会環境問題の影響により鉱業のみならずエネルギー分野への投資計画の遅延等が生じている。電力問題の解決の方向性として、再生可能エネルギーを含む発電事業への投資等、鉱山会社が独自に電力調達をはかるといった動きがあり、これが進展。・ 今後、氷河保護法や先住民協議に関する新制度等、新規鉱山開発において考慮する必要のある制度が導入される見込み。一方で政府には、環境影響評価システムの変更や鉱業法改正など、鉱業投資促進に向けた法制度改正を推進する方針もある。

(2015.2.24)

参考資料COCHILCO (2014) Anuario de Estadísticas del Cobre y Otros Minerales 1994-2013COCHILCO (2014) Analisis de variables claves para la sustentabilidad de la minería en ChileCOCHILCO (2014) Inversion en la mineria chilena-Catastro de proyectos 2014-2023

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