今回のリハビリ講座は、草むしりに対する注意点についてお話し...

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1 今回のリハビリ講座は、草むしりに対する注意点についてお話しさせて頂きます。 城北病院 リハビリテーション部 作業療法士 城野 有希子です。 宜しくお願い致します。

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今回のリハビリ講座は、草むしりに対する注意点についてお話しさせて頂きます。

城北病院 リハビリテーション部 作業療法士 城野 有希子です。

宜しくお願い致します。

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これから雑草が生い茂る時期になってきましたが、疾患に関わらず、草むしりを行う目的を考えてみました。

草むしりの目的、家や畑の見栄えの改善、雑草による近隣トラブル防止、生育環境の改善、害虫駆除、園芸道具の劣化予防、他にしてくれる人がいなく自分が行うしかない、ストレス解消など様々な理由があると思われます。

自分でやりたい人も、やりたくないがしなければならない人も、草むしりの経験がある方であれば、草むしりという作業活動は、関節に負担がかかることは理解されていると思います。

痛み止めを使いながら無理に草むしりを行うことは負担をかけ続けるだけであり、リウマチの活動性が増悪したり、関節破壊が進行するリスクが高くなります。

如何に関節の負担を軽くし、保護するか考えていきましょう。

リウマチの治療コンセプトを確認しましょう。

2010年に、関節リウマチの新しい治療コンセプトとして「T2Tリコメンデーション」が発表されました。

「T2T」とは「Treat to Target」の略語で、分かりやすく言うと「関節リウマチの臨床的寛解を目標とし達成することに向けた治療」という意味です。

基本的な考え方の4つの中で C:炎症を取り除くことが、治療ゴールを達成するために最も重要であるとあります。

「リコメンデーション」とは専門家の意見に基づいた「推奨」「おすすめ」されることで、10個の項目があげられます。

その内 1:関節リウマチ治療の目標は、まず臨床的寛解を達成することである。 2:臨床的寛解とは、疾患活動性による臨床症状・徴候が消失した状態と定義する。とあり、これをサポートする行動の一つとして「関節保護」があります。

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関節保護をすることで目指すものは「臨床的寛解を阻害しない」ことです。臨床的寛解とは、疾患活動性による臨床症状や徴候が消失した状態で、表に書いてある項目で評価されます。

生活動作で、関節への過剰な負担は、寛解している状態から増悪に向かわせたり、腫れや痛みが強い状態、赤沈やCRPなど炎症を示す値が高い状態、関節が破壊されやすい状態、生活動作がしにくい状態を悪化させることになり、おすすめできません。

草むしりは1回の動作ではなく、数十分、数時間のうちに数十回を繰り返し行うため、関節に負担をかけ続けてしまいます。

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草むしりの姿勢について考えましょう。

草むしりを行う上で、前提として、足は床(地面)についており、背骨がまっすぐになっても倒れないこと、草を抜くタイミングで力がいれられるようにするため、手や腕の力が抜けている状態を保てることが必要があります。

それ以外に床(地面)から物をひろう作業をする際体幹、下肢の状態として、①膝関節を伸展位で体幹を極度に前傾する中腰パターンと②膝関節を0~90度の範囲内で軽度屈曲して体幹前屈が軽度の膝屈曲パターンと③しゃがみこんだ姿勢に近い深い膝屈曲パターンで3つが大まかにありますと思われますが、草むしりでは短時間であれば①、長時間であれば③が多いと思います。

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草むしり最中の手や手首の状態です。

草の種類によっても、手指や手首の状態は違うのではないでしょうか。

茎が縦に伸びる草、特に根っこが深くまで生える草は、手指屈曲、手関節軽度橈屈位で手で引き抜くには肘の屈曲と握力が必要です。

茎が横にのびる草、根は浅いですが広範囲にひろがるような草は、手指対立、手関節背屈が必要です。引き抜くには、つまむ力と手関節の角度、肘の屈伸が必要

となります。とくに指先の力が必要で、手指に変形がある場合は親指と、人差し指の側面でつまむかたもいらっしゃるのではないでしょうか。

それぞれの草はランダムに生えているため、草むしりは何度もこの姿勢を繰り返す必要があります。

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草むしりを行う際に関節に負担となるやり方をしていませんか?

晴れた日に乾いた場所から行う。夢中で長時間行う。一度に広範囲おこなってしまう。中腰姿勢が続く。無理やり指先や手の力だけで行う。

これらが当てはまる場合、関節破壊や疲労の蓄積により疼痛が生じてしまいます。ではどのように改善していくか考えてみました。

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晴れた日は土が乾き、雑草が抜けにくいため、必要以上に握力や腕力が必要です。地面からの照り返しもあり体力も消耗します。

無理やり行うと、関節破壊を進行させてしまうリスクが高まるだけでなく、後ろに倒れ転倒する危険もあります。晴れた日でなく雨上がり直後の曇りの日に行いましょう。

雨が降ると地面が柔らかくなり、比較的草が抜けやすくなります。寒い日などはこわばりも強くなるので、体調によって考慮してください。

晴天時の方が体調が良いという方は、草を抜く範囲に水を撒いてから行いましょう。

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まじめな方が陥りやすいのですが、夢中で長時間おこなうことはおすすめできません。

どうしても1回で終わらせたくなるのですが、長時間の作業は、疲労するため、そもそも効率が低下します。

そして、関節に負担をかけるため炎症が生じてしまします。さらに疼痛が出現することでうつ状態となり、悪循環を引き起こしてしまいます。

そのため、短時間で、楽しめる範囲で行うことが大事となります。

残っているものでなく、自分が頑張った結果をみるようにしましょう。短い時間で疲労なく行うことで、結果も振り返りやすく、達成感や満足感にもつながります。

また、短時間で行うことで、自分がどのくらいで疲れるのか自分の体調管理を把握することもできます。

一度に広範囲を行うことや長くい時間、中腰姿勢やしゃがみこみ姿勢が続くことはお勧めできません。

草むしり後だけでなく、翌日まで疲労が続きます。

長時間のしゃがみこみ姿勢は足や膝へ負担となります。しゃがみこみ姿勢を緩和するために椅子の使用をお勧めします。

向かって左側の椅子は素材が発砲スチロールのような軽いもので腰に巻きつけられ、立ち上がると一緒にお尻についてきます。持ち運ぶ必要はありません。

右側のものは、椅子の高さが変えられます。タイヤがついているので移動は簡単ですが、座ったまま、移動する際にはひざ関節への負担に注意してください。

タイヤがついているものや背もたれつきの物は動きますので、着座の際に転倒にご注意ください。重いものもあるので重量も購入する際には注意してください。

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無理やり自分で行ってしまうこともおすすめできません。

関節の腫れや変形、疼痛を助長してしまいます。

草むしりは疾患の疼痛をまねき、疼痛が変形やストレスを招く悪循環になります。

草むしりに対して便利道具やスプリントとの併用を考えましょう。環境の調整も考えましょう。

除草剤の使用も考えましょう。草が生えない環境つくりも重要です。社会資源の利用も検討しましょう。

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スプリントは、医師の指示のもと、作業療法士や理学療法士が作成します。必要に応じて義肢装具士も介入します。

スプリントの素材はいろいろあります。①関節の固定②関節の支持③変形の予防④変形の強制⑤局所の安静⑥不良肢位の防止⑦疼痛の軽減⑧関節や筋力の代償⑨ADLのアシスト⑩活動制限の改善や社会参加の支援 等を目的として、目的に合わせて素材や形状を選択しています。

本人と、セラピストが目的に応じて、個人に合わせて作成します。静的スプリント(安静を目的としているもの)を草むしり(活動時)に使用することは避けましょう。目的をしっかりとセラピストに伝え、目的にあったスプリントを使用しましょう。

以下は草むしりを行う際の便利道具の一例です。

立ったまま草が抜ける、三角ホーや、スピーディーウーディーというものがあります。三角ホーは鍬のように使用し、スピーディー土に差し込み、上端のレバーを回すと刃が草をつかみ雑草を引きすく道具です。

つまむ動作を助けるものとしては、草抜きニッパーや草抜き爪などがあります。

しかし、どれも抜く動作は手関節の負担があります、使用される際は、十分に注意をして短時間で行うようにしましょう。

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プランターなど環境が調整できるものはプランターを高い位置に置き換えて育てましょう。

フラワースタンドも様々ありますので、お好みの物を選ばれると良いかと思います。

庭や玄関先であれば防草シートを敷き、砂利を撒くことで遮光され雑草が生えにくくなります。このような方法もよいかもしれません。

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社会資源の利用も検討してください。

疾患の活動性が高い時期や疼痛がある時はなおの事、目的が趣味で自分でどうしてもしたいわけでなく、費用負担が可能であれば、除草剤の使用や草取り業者への依頼、相談されてもよいかと思います。

費用は様々で時間と作業内容によると思います。連絡する際に確認してください。

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まとめになります。

草むしりは常に負担のかかる作業です。しかし、趣味活動や近隣トラブル防止など重要な意味や目的があり、一概に中止できるものではありません。

身体への負担を以下に軽くできるかを考え、時間帯や環境を調整し、道具を利用しながら、関節保を意識して行っていただきたいと思います。

草むしりを行う際は、現在の疾患の活動性や疼痛、関節破壊の状態を医師やPT・OTと確認、相談しながら行っていただけると幸いです

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