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はじめに
精神科医の樺沢紫苑です。私は今までに、「ツイッターの超プロが教えるFacebook
仕事術」「S
NSの超プロが教えるソーシャルメディア文章術」(サンマーク出版)、「Tw
itter
でビジネスを
加速する方法」(ソーテック社)など多くのソーシャルメディア書籍を手がけてきました。
それを知っている方は、だいたい「なぜ精神科医なのに、ソーシャルメディアに詳しいのか?」
という疑問を持たれます。ソーシャルメディアというのは、インターネット上のツールと考える
と、精神科医とソーシャルメディアに何の接点も見つけられないでしょう。
しかし、ソーシャルメディアは、単なるネット上のツールではありません。リアルなコミュニ
ケーションのツールであり、自己アピール、セルフブランディングの重要な道具なのです。アメ
リカではFacebook
をしていなければ、友達と遊びに行く約束もできませんし、彼氏、彼女と
連絡をとることもできません。日本における携帯電話、携帯メールの位置づけと考えれば、わか
りやすいでしょう。
そして私たちのワークスタイル、私たちの働き方自体も、ソーシャルメディアによって変わっ
ていこうとしています。日本でも数年後には、今のアメリカと同じように、ソーシャルメディア
なしでは就職することも、日々の業務をこなすことも、お得意先とのアポイントメントをとるの
3
も難しい時代に突入するでしょう。
仕事とソーシャルメディア。日本におけるワークスタイルの革命に、Facebook
が重要な役割
を果たすことは間違いありませんが、ビジネス専用のSNSとしてすでに一億数千万人のユー
ザーを持つ「リンクトイン」の存在も見逃せません。
私は精神科医として、うつ病や自殺予防の研究を行って来ました。14年連続で年間3万人を越
える日本人の自殺者をどうやって減らすのか、ということをずっと考えています。実は、自殺で
亡くなる方の約半分が無職です。つまり、仕事に就けない。仕事をクビになった。そうした後に
訪れる経済的な困窮が、自殺の大きな原因になっていることは間違いありません。
日本では、中高年の男性が一度会社をクビになると、よっぽどのキャリアを持っていないかぎ
り、再就職は困難か、できても給料の大幅減を余儀なくされます。つまり、お先真っ暗な状態で、
将来に絶望します。自殺を考えても不思議はないでしょう。
逆にいうと、転職や再就職が簡単にできるシステムが存在すれば、「絶対に今の会社を辞めら
れない」と無理して毎日残業をすることもないし、私たちの仕事によるストレスを大幅に軽減し、
「会社をクビになった➡自殺」という短絡的な発想をなくすことができるはずです。
が私たちの人間関係を豊かにしたように、リンクトインは私たちの仕事環境やワー
クスタイルを豊かにしてくれる、と私は確信しています。
私は、Facebook
のパーソナルブランディングについては、日本の第一人者だと自負していま
4
す。しかしながら、リンクトインのプロではありません。リンクトイン、G
oogle+
、フォース
クエア、タンブラーなど次々と日本に上陸するSNSやソーシャルメディアのサービスすべてを
習熟することは不可能です。
そこで3年前からの私のビジネスパートナーで、アメリカのソーシャルメディア事情にも詳し
く、デシタルガレージともゆかりが深い島青志さんと共著で本書を執筆することにしました。
島さんと私は、約3年前に、ソーシャルメディアの勉強会「ウェブ心理塾」http://w
ebshin.org/
を一緒に立ち上げ、共同で二十回以上のセミナーを開催(毎回、異なる内容)し、
、Facebookのノウハウを多くの人達に伝えてきた同志でもあります。
リンクトインを使いコミュニケーションを密にし、自分に必要な人たちとつながり、自分らし
く楽しく仕事をしていく。そうしたヒントがいたるところに散りばめられた本になっていますの
で、是非、最後までお読みになり、あなたの「仕事革命」「ワークスタイル革命」のきっかけに
していただけましたら幸いです。
精神科医 樺沢紫苑
今年(2012年)は世界で最初にブレークした、ソーシャルネットワークシステム(SNS)
フレンドスターのリリースからちょうど10年になります。この10年間、さまさまなソーシャルメ
ディアが隆盛と衰退を繰り返してきました。
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他の機能特化型のSNSと比べ、実にシンプルなリンクトインですが、それでも世界で、特に
米国で浸透しているのは、リンクトイン社の努力や仕組みの良さのみならず、ユーザー側のノウ
ハウの蓄積という面が大きいのです。ひとつひとつは小さいノウハウでも、1億数千万人の蓄積
(ナレッジ)が、このシステムを支えています。
もちろんリンクトインがすべてのビジネス上の問題を魔法の杖のように解決してくれるわけで
はありません。しかし、リンクトインを活用して、多くのビジネスパースンや企業が、問題解決
に取り組み成果を上げてきたことは、紛れも無い事実であり、その手法を一端でも紹介できれば
と思ったのが、本書を企画した意図です。
本書は、『リンクトイン』の解説本であると同時に『仕事革命』の本でもあります。「ビジネス」
を理解し、何が問題であるかを知り、その処方箋として世界で認められたこのツールを活用すれ
ば、あなた自身に『仕事革命』が起きる。
これが本書に『リンクトイン仕事革命』というタイトルをつけた理由です。
『仕事革命』に参加する人がひとりでも増え、ビジネスに大きな成果を上げることに本書が少
しでも役立つことがあれば、筆者としてこれ以上の喜びはありません。
島 青志
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目 次
第一章
あなたがリンクトインを使うべき四つの理由 -----------------------------------------------------------------------------------------------------------
9
理由その1
リンクトインは日本に仕事革命を引き起こす
10
理由その2
リンクトインは究極の「パーソナルブランディングツール」である
18
理由その3
友達が数10人でも150万人の繋がりを持つことができる
23
理由その4
幅広い職種でリンクトインを活用できる
24
第二章
ビジネスを成功させる秘訣はただ2つ〜
「プロフィール」と「ネットワークの質」 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
47
プロフィールの秘訣とは
48
ネットワークの質とは
56
第三章
7つの戦略でビジネスを加速させる戦略構築編 --------------------------------------------------------------------------------------------------
73
7
【第1戦略】
プロフィール戦略
75
名前は本名で
76
【第2戦略】
ネットワーク戦略
98
【第3戦略】
グループ活用戦略
113
第四章
7つの戦略でビジネスを加速させるビジネス実践編 -------------------------------------------------------------------------------
119
【第4戦略】
就職・転職戦略
120
【第5戦略】
採用戦略・ビジネスパートナー獲得戦略
133
【第6戦略】
マーケティング戦略
144
【第7戦略】
売り上げ増大戦略
154
第五章
、Facebook、リンクトインの
相乗効果でビジネスを爆発させる -----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
163
とリンクトインは、どこが違うのか?
164
【メデイア相乗法1】
3つのメディアをかけ合わせ9倍の相乗効果を得る方法
169
8
【メディア相乗法2】
メディア補完計画
、Tw
itter
の短所を
リンクトインで補完せよ!
175
【メディア相乗法3】 T
witter
との連動で機動力を上げる
182
第六章
会社を変革し、売り上げを伸ばす3つのマネジメント術 ------------------------------------------------------------
187
【マネジメント術1】
会社単位でリンクトインを導入する
188
【マネジメント術2】
リンクトインの活用でドラッガー流経営論を実践する
198
【マネジメント術3】
最強のソーシャルメディア運営術
242
終章
リンクトインがあなたの人生を変える -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
257
日本のホワイトカラーの生産性は先進国で最低
258
付記
今日から始めるリンクトイン7ステップ・チェックシート ------------------------------------------------------------
267
あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
第一章
10
「リンクトインは、就職、転職のツールだから、自分とは関係ない」という方がいます。
それは、リンクトインのほんの一側面。可能性の一つを述べているに過ぎません。
リンクトインは、あなたの知らないさまざまな使い方が可能であり、無限のポテンシャ
ルを秘めていると言っていいツールです。その可能性を理解すれば、「私もリンクトイン
を使わなければ」という猛烈wな衝動にかられるはずです。
あなたがリンクトインを使うことによって、どんなことが起きるのか? 何が可能にな
るのか? そして、あなたの仕事、ビジネスと人生にどんな革命を起こすのか?
第一章では、あなたがリンクトインを使わなければいけない4つの理由について説明し
ます。理
由その1
リンクトインは日本に仕事革命を引き起こす
リンクトインとは何か?
11
第一章 あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
2011年10月20日、リンクトインの日本語版がついにリリースされました。
リンクトインは米国では2003年にスタートしています。2004年にスタートした
や日本のミクシィと比べても歴史は古く、実は老舗なのです。
リンクトインの最大の特徴は、ビジネスパースン向けに特化したSNS(ソーシャルネッ
トワーキングサービス)であるということです。2012年4月現在、世界で1億5千万
人のユーザーがおり、米国ではホワイトカラーの7割が参加しています。
これほど多くの人たちがリンクトインに参加するのは、何を求めているのでしょうか?
リンクトインは左に示すような、さまざまなビジネスマンの要望に応えてくれるツール
です。
仕事を探している
自分の経験を生かしてキャリアアップをしたい
自分にマッチしたビジネスパートナーを見つけたい
優秀なプロフェッショナル(専門家・専門職)を探している
優良な取引先を探している
営業成績を大きく伸ばしたい
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もちろん、いままでにも、そして日本でもビジネス向けのSNSというのはいくつか存
在していました。また、Facebook
をビジネスに活用している方も多いかもしれません。
しかしながら、リンクトインは今までのSNSツールとは概念がまったく違います。リ
ンクトインの最大の特徴を一言でいうと、「リンクトインは1億数千万のビジネスパース
ンのデータベースである」ということに尽きます。
つまりあなたは、リンクトインに参加するだけで、この1億数千万人のデータベースを
自由にしかも無料で活用することができるのです。それは、1億数千万人の人脈を手に入
れられるということにも等しい、とてもすごいことなのです。
今までのSNSツールのように、「とにかくまず何よりも繋がりを増やしましょう!
それからその繋がりを利用してビジネスを仕掛けましょう!」というのとは、根本的に発
想が違います。
筆者のもとにリンクトインを活用してビジネスで成果をあげた例が届いています。
13
第一章 あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
不動産の営業マン 不動産販売でリンクトインを使って情報を発信し、高額物件の
契約にこぎつけた
国際弁護士 リンクトインで繋がった海外のコンタクトを活用して顧客を獲得。今
では新規顧客の70%は海外顧客である
フランチャイズビジネスのコンサルタント リンクトインのグループという機能を
活用して、同じ志とする仲間を拡げ、200人を超えるフランチャイズを構築した
システム会社営業マネージャー 見込み客の発掘や連絡にリンクトインを活用し、
今までより業務を30%効率化させた。なお、リンクトインの一日あたりの作業時間
は約30分である
年間数千人を新規採用する大手電話会社 採用予算の削減をきっかけに、求人をリ
ンクトインに絞ったところ、採用予算は今までの100分の一、採用業務期間も数
分の一ですむようになった
これらは成功例のごく一部に過ぎませんが、リンクトインは単にビジネスを効率化させ
るだけでなく、私たちの仕事のやりかたそのものを根底から変えてしまうポテンシャルを
14
持っていることがよくわかると思います。
日本人との意外なつながり〜リンクトイン誕生秘話
リンクトインは2003年に、元ペイパルの創業者であったリード・ホフマンによって
立ち上げられました。
彼がリンクトインを創業したきっかけのひとつは、ペイパル時代の出来事にあります。
当時、ペイパルが日本進出を検討するにあたって、まず日本の独特の商習慣や法律に関す
る情報が必要になりました。そこで、ホフマンは片端から知り合いに電話をかけ、日本の
事情に詳しい人を知っているか? と尋ねました。
するとその中で、二人の友人から、「日本でインターネット・ビジネスを考えているの
なら伊藤穣一氏(デジタルガレージ取締役共同創業者)と相談するのがいいだろう」と言
われたそうです。
ホフマンはその友人に伊藤氏を紹介してもらい、自分のビジネスプランを語ったうえで
要望を伝えました。ペイパルの日本展開はそこから始まったのです。
そして、彼はそのとき気づきました。
15
第一章 あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
ビジネスで必要なことは、「自分を相手に信用してもらえるプロフィールの開示」と「信
頼できるネットワーク」の二つだということを。
もし、この二つを簡単に実現できるツールを開発したならば、人脈拡大の方法や人との
つながり方が、根本から変わるのではないか。そこでホフマンは、プロフェッショナルの
ためのSNSツールである、リンクトインをスタートさせたのです。
リンクトインの2012年4月現在の全世界の会員数は、1億5千万人に達しています。
現在英語版、日本語版のほか、フランス語、ドイツ語、スペイン語などに対応し、全世界
で利用者数を増やし続けています。
そしてそのリンクトインが、「日本語版」のリリースとともに、本格的に日本上陸した、
というわけです。
リンクトインは日本人に向いている!?
リンクトインの日本のユーザー数は2012年4月現在、60万人くらいです。日本語版
がスタートした2011年10月から30%ほど伸びているとはいえ、世界の先進国レベルか
らするとまだまだ少ないと言えるでしょう。
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では、「日本人にはリンリンクトインは向いていないのか?」というと、筆者はむしろ
逆であると考えます。
1990年以降、グローバリゼーションの波と共に、ビジネスの場では競争や成果主義
が唱えられました。しかしそのような「欧米風」の成果主義が日本の社会や風土には必ず
しもマッチしていないことに読者の多くの方は気づかれていることと思います。
そんな日本人の特性を生かしつつ、「個」の力を引き出すシステム──つまり、私たち
個人が社内や社外の人と協力して成果を上げるようなしくみ──があれば、自分自身を無
理な競争環境に置かなくても、生産性を上げることができると思いませんか? リンクト
インは、そんな日本人にとてもよく合うシステムだと筆者は考えます。
前述のように、リンクトインの特性は「1億数千万人のビジネスパースンのデータベー
ス」であり、リンクトイン自身の言葉を借りれば「ビジネスパースン向けのプロフェッショ
ナルネットワーク」です。
リンクトインには、そのプロフェッショナルの英知とネットワークを活用し、自分のも
のにするためのさまざまな仕掛けがあります。
たとえば、
17
第一章 あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
世界中の「プロフェッショナル」の知識や経験を活用できる
「プロフェッショナル」の人脈を自分の人脈にすることができる
あなた自身が「プロフェッショナルのネットワーク」の一員となる
などといったことが可能になります。
リンクトインは今までの「マーケティングツール」のような、「見込み客=友人(ある
いはフォロワーやファン)をたくさん作って一生懸命囲い込んで、ものを買ってもらいま
しょう!」というツールではありません。
もちろん、片端から「友人申請」をして、ネットワーク上の友人(リンクトインでは「コ
ンタクト」と呼びます)を増やすことは可能ですし、実際そのような使い方をされている
方も見受けられます。しかし、そういった使い方は「労多くして益少なし」です。少なく
ともリンクトインをビジネスに生かす有効な使い方とは思えません。
リンクトインはもっとスマートなやりかたで、あなたのサービスや商品、あるいはあな
た自身を、その情報を持っている人、ほしい人と結びつけることができるツールであり、
システムなのです。
リンクトインが日本で大きく広がれば、新しい人とのつながりが生まれ、協力や分担が
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進み、ホワイトカラーの労働生産性が大きくアップするでしょう。日本人の労働環境が変
わり、ワークスタイルが変わる。もしかすると、日本に仕事革命を引き起こすかもしれな
い……そんな計り知れない可能性を秘めたSNSが、リンクトインなのです。
理由その2
リンクトインは
究極の「パーソナルブランディングツール」である
パーソナルブランディングの重要性
ビジネスの世界で、パーソナルブランディングの重要性について異論をはさむ人は、お
そらく皆無であろうと思います。
「ブランド」という言葉の元になったのは、自分の牛と他人の牛を見分けるためにつけ
た「焼き印」であると言われています。それが転じて、自分の商品を他の商品と区別する
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第一章 あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
ために使われるようになったのが現在のブランドです。同じような商品であっても、有名
企業の商品(いわゆるブランド品)なら多少割高でも購入する。誰でも経験していること
ですね。
今では企業や商品だけでなく、私たち個人にもブランドが必要な時代です。ご自身でビ
ジネスをしている人はもちろんのこと、企業や組織に属している人も社内、社外のかかわ
りの中で、「自分の商品価値、ビジネスの世界での存在価値をあげる必要性」を痛感しな
い人は少ないでしょう。
就職や転職を考えている人はなおのことです。労働市場という言葉が示すように、あな
た自身がまさしく「商品」なのですから。
パーソナルブランディングとは何か?
ここで立ち止まって考えてみましょう。そもそも「ブランド」とはなんでしょうか?
商品の性能や色、形状のことではありませんね。私たちが「ブランド品」を購入するとき
の心理を思い出してください。そのとき私たちの心には、「このブランドの商品なら安心だ」
「このブランドの商品を使うのは気分がよいに違いない」という感情やイメージがよぎっ
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ていると思います。
中にはそのイメージに反して実際には「たいして使えない商品」があるかもしれません。
そのとき私たちは怒って、もう二度とそのブランドを手にすることはないでしょう。
商品を提供する側からとらえると、「ブランド」とは「消費者への約束」と定義するこ
とができます。使い心地、快適さ、周りに自慢できる気分の良さ。それを購入前から消費
者に約束しているのが「ブランド」です。
パーソナルブランディングも同じです。あなたという個人の「ビジネスの相手への提供
価値の約束」。これがパーソナルブランディングです。そして、大事なことは商品の場合
と同じように、「相手にイメージしてもらうこと」です。
「私はブランドです」と声を枯らして叫んだところで何にもなりません。「○○と言えば
Aさんに」と言ってもらえる人は「Aさんは○○について詳しい」と認知されている、イ
メージされているから「○○のことはAさんに頼もう」と思ってもらえるのです。
一度この循環が生まれると、ますますAさんのもとに人は集まってきます。自然と周り
の期待が高まり、指名され、それがまた評判を呼んで周りの期待がますます高まっていく。
これがブランディングの効果です。
パーソナルブランディングが確立できた人とそうでない人、その実力差以上にどんどん
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第一章 あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
差が開いてしまうのは、ある意味恐ろしいことです。
パーソナルブランディングを確立する方法
誰もが知っている有名企業でなくても、どんなコモディティな商品であっても、他とまっ
たく同じということはなく、そこには必ず「提供できる提供価値」が存在します(そうで
なくては、そもそも「商品」「サービス」として存在しえません)。
個人でもまったく同じことで、あなたは(外見や能力、職種などの条件が他の誰かと似
ていたとしても)他の誰とも違ったこの世で唯一の存在です。
「パーソナルブランディング」の第一歩は、唯一無二のあなたという存在を、きちんと
世の中に提示してあげることにあります。
そして「パーソナルブランディング」でもうひとつ大事なことが、相手にイメージして
もらう、認知してもらうということでした。この場合の相手というのは、ビジネスの現場
では「取引先」や「同僚」となります。あるいは、潜在的な顧客やこれから就職しようと
する会社の人事部長であるかもしれません。
これらの相手と繋がってあなたという人間の存在をしっかりイメージしてもらう。ある
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いは認知してもらう。ここまでできれば、ビジネスにおける「パーソナルブランディング」
は完成したといってもよいでしょう。
ホフマンが自分のビジネスを日本で展開できたのは、「ペイパルというユニークなサー
ビス企業の創業者であったこと」、そして「ビジネスのキーマンに辿り着く人脈をもって
いたこと」にありました。
言い換えれば、「自分を相手に信用してもらえるプロフィールの開示」「信頼できるネッ
トワーク」がまさに「パーソナルブランディング」構築の方法なのです。
ホフマンは、リンクトインの特徴を「パブリックにアクセスできるプロフィールと「信
頼の置けるネットワークである」と述べました。そしてこの二つの特徴は、「パーソナル
ブランディング」の手法そのものです。
リンクトインをうまく活用することによって、誰でも自分の「パーソナルブランディン
グ」を確立することができるのです。
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第一章 あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
理由その3
友達が数10人でも150万人の繋がりを持つことができる
ビジネスを加速させるリンクトインネットワークの
すごさ
図1は筆者(島)の2012年1月時点のリンクトインネッ
トワークです。メニューバーの「コンタクト」➡「ネットワー
ク統計」で誰でも自分の「リンクトインネットワーク」を表
示させることができます。
筆者の例では、直接のコンタクト((友人)は100人弱に
過ぎませんが、友人の友人である「2次コンタクト」は
1万8千人、2次コンタクトの友人の「3次コンタクト」に
至っては150万人にも達しています。
たった数10人の友人関係から、100万人を超す人との人
図1 �100人弱の友人が、150万人のネットワークに
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脈を作ることができる。そしてその人脈をもとにビジネスを構築する。これがリンクトイ
ンのビジネス活用の肝になります。
リンクトインネットワークについては、第二章の「リンクトインでビジネスを成功させ
る秘訣はただ2つ」で詳しく解説します。
理由その4
幅広い職種でリンクトインを活用できる
さまざまなビジネスシーンで活用できるリンクトイン
いまだ日本では、リンクトインは就職や転職のためのSNSである、というイメージが
結構あるようです。実際に米国でも、就職や転職でリンクトインを活用したり、人事担当
者や人材会社が人材募集やスカウティングで活用したりする例は数多くあります。
しかし、けっして就職・転職だけがリンクトインの活躍の場ではありません。日々の営
25
第一章 あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
業活動、マーケティングや情報収集、さまざまな場面でリンクトインがビジネスのツール
として活躍し、ビジネスパースンの必須アイテムとなっているのです。
では、具体的にどのような職種で、どのようなメリットをもたらすのでしょうか? 代
表的な8つの職種について詳しく説明していきましょう。
1
マーケティング担当者
現在、インターネットを見るとさまざまなデータや情報であふれています。その中には
本物の情報も偽物の情報も、価値のある情報もない情報も玉石混交です。結局のところ、
本当に大事な情報は、いつの時代も「人」からしか得られないのです。
リンクトインは「1億数千万人のデータベース」です。誰かのフィルタリングで歪めら
れた情報ではなく、情報源ひとつひとつにアプローチすることができます。
基本的にリンクトインメンバーのプロフィールは公開されていますので、リンクトイン
のメンバーになれば。誰のプロフィールであっても見ることができます。
どんな経歴で、どのような分野に強いのか。周りにどんな知り合いがいて、どう評価さ
れているのか。どのような発言をして、どういう考えの持ち主なのか。どのようなグルー
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プに入っていて、どんな分野に興味があるのか。
そして、リンクトインの検索機能は、さまざまなソーシャルメディアツールの中で、最
も使い勝手が良いものです。
名前だけでなく、経歴や興味、発言などさまざまなキーワードで、1億数千万人のデー
タベースを縦横無尽に検索して、該当する人を表示してくれます。
2
営業職・セールス担当者
新規開拓でWebやメールを使うことは、もはや当たり前になっていますが、リンクト
インを活用すれば、今までの方法よりはるかに効率的な営業活動ができます。
かつて新規開拓と言えば、ターゲットの会社に電話をかけて、担当者に代わってもらい
アポイントを取るというやりかたが主流でした。ダイレクトメールを郵送する、Webペー
ジの「お問い合わせ」からメールを送るやりかたもありますが、なかなか担当者に届かな
いのが現状です。
電話にせよ、メールにせよ、あるいは直接訪問という方法であっても、「数打てば当たる」
というやりかたでは、効率的に営業成績を伸ばすことは難しいものです。
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第一章 あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
最近は既存の顧客や知り合いから新規顧客を紹介してもらう「紹介営業」の比率も多く
なっています。しかし、リンクトインならより効率的に顧客を探すことができます。
リンクトインの会社ページは情報の宝庫です。従業員の履歴書データ、ブログ投稿、人
事異動、採用情報など。そのほか、さまざまなデータが公開されています。
たとえば、最近異動した社員の情報や、社員の主な職歴などもあり、これらはその社員
が情報をアップデートするたびに最新情報が加わります。
またリンクトインは、あなたとその会社との繋がりを表示してくれます。図を見ると、
私の場合にはデジタルガレージとの間に、コンタクトが5人、友人の友人である「2次コ
ンタクト」は40人いることがわかります(図2)。
グーグルで調べてみた場合、直接の知り合い「コンタクト」は残念ながら0人ですが、
2次コンタクトには41人いることがわかります(図3)。
もし「2次コンタクト」の中に、目指す部署の社員がいれば、間にいるコンタクトに紹
介してもらうことができます。
このように営業社員、セールス担当者にとって、とても有益なツールであることがわか
ります。
28
図2 自分とある会社とのネットワークを調べることが可能
図3 自分とグーグルとのネットワークを調べてみる
29
第一章 あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
3
人事・リクルーター
米国では、いまや人事担当やリクルーターでリンクトインを活用していない人は皆無と
いっても過言ではないでしょう。日本でも、ITや専門職を中心に、リンクトインの活用
が増えています。
リンクトインでは、検索機能を使って、募集する職種のスキルや経験に合った人材を見
つけることができます。リンクトインの検索機能は、氏名や会社名だけでなく、プロフィー
ルに書かれた単語、あるいは推薦文の単語も対象になります。
あなたが人材を探すとき、今までは、せいぜい学歴や所属している会社名や部署名くら
いしか事前に情報収集することはできませんでした。しかしリンクトインを使えば、学歴
や経歴だけでなく、細かい条件設定で検索をかけることができるようになりました。
それだけでなく、リンクトインでは、その人の交友関係もわかってしまいます。ネット
ワークが多い人は人脈が豊富と推測できます。もちろん闇雲にコンタクト申請をしまくっ
て数だけ増やしている人も中にはいますが、そうした人も実際のコンタクトを見ればすぐ
にわかります。このように量だけでなく、人脈の質をチェックすることもできます。
もう一つのメリットとして、リンクトインでは格安で求人情報を出すことができる点も
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挙げられます。
人を採用するために、たとえば朝日新聞に求人情報を出そうとすると1段広告を一日出
すだけで50万円程度はかかります。ちょっと目につく形の2段広告となると100万円以
上でしょう。もう少し安い求人雑誌やインターネットの求人サイトへの掲載でも、半月で
20万円以上というのが相場のようです。
一方、リンクトインでは、人材募集広告のサイト内の掲載が、1件あたり月額
1万6300円からと、とてもリーズナブルです。
4
学生・求職者
今現在、就職活動中の人はもちろんのこと、いずれは転職したいと思っている人、キャ
リアプランでステップアップしたい人にとってもリンクトインは必須のツールです。
21世紀に入り、日本は人口(特に若年人口)が減っています。企業としては日本市場だ
けを考えていては立ち行かなくなることが明白ですので、グローバル市場に目を向けざる
を得ません。特に東日本大震災以降はこの動きが顕著です。
2012年1月に毎日新聞が行ったアンケートでは、主要な会社122社のうち23%に
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第一章 あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
あたる28社が新卒の外国人採用を増やすと回答しています。
ユニクロを展開するファーストリテイリングは、新卒採用の8割を外国人にすると発表
し、楽天も新卒採用の外国人比率を3倍にしました。ローソンやヤマト運輸も新卒採用の
3割が外国人です。
かつては、グローバル企業であっても、日本の人事制度と海外の人事制度は違っていま
したので、国内業務の社員が海外のことを考えることはありませんでしたが、もはや国内
であっても、海外の人たちと一緒に仕事をすることは珍しくなくなりました。
そうなると過去のあらゆる制度がそうであったように、日本の人事制度も「開国」する
ことを余儀なくされています。世界の中で日本だけが独特の人事制度を取ることは、もは
や不可能になってきたのです。
こういうことを言うと、日本の人事制度は世界の中でむしろ優れている、成果主義のア
メリカや韓国もさまざまな問題を抱えていると反論する方もいらっしゃると思います。
問題は、どの制度が正しいとか間違っているというイデオロギー論争ではありません。
実際に日本社会がどういう方向に動いているのか、そしてその中であなたは、いち早く世
界の潮流に乗る人になるのか、後になってどうしようもなくなってから重い腰をあげるの
か、という二者選択が突きつけられているのです。
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この本を今読んでいるあなたは、いち早く時代の先端にいるかたなのは間違いありま
せん。
リンクトインがもっと日本の就職・転職に根づいてから始めよう。それも悪くはないの
ですが、先んじて人より先の優位に立てるこのチャンスを逃すのはもったいないことだと
思いませんか?
5
海外向けビジネス担当
リンクトインで今すぐ成果をあげられるのが、海外と何らかのビジネスをやられている
かたでしょう。
世界中の1億数千万人のプロフェッショナルネットワークとすぐに繋がることができる
ツールは、リンクトイン以外にはありません。
リンクトンでは次のような成果が期待できます。
海外に関する市場調査
海外進出の提携企業を探す
33
第一章 あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
取引先の開拓
もっと軽いところでも、「カリフォルニアのバークレーに出張するのだけれど美味しい
日本食レストランを知らない?」といった情報を得るのにもリンクトインは便利です。
6
SO
HO
個人事業主
SOHO
や個人事業などのいわゆるスモールビジネスでもリンクトインの活用によって、
ビジネスを飛躍させることが可能です。
リンクトインのプロフィールは、そのままあなたの事業の広告塔の役割を担うことがで
きます。この場合Tw
itter
など他のソーシャルメディアと連携することで、より高い効
果をあげることもできるでしょう。
アメリカのあるベーカリーショップで、店主がお店のセールを企画しました。
彼女は「今日と明日、ご来店されたかたにはカップケーキが50%オフ!」とリンクトイ
ンで書き込みをしました。
リンクトインで書き込みをしたり、プロフィール情報を変更したりすると、「更新」と
34
いう機能によって、あなたのネットワークにその情報が自然と流れます。
リンクトインと連携したTw
itter
と合わせ、多くの顧客の目に触れさせることに成功し、
彼女はセールで売り上げを伸ばすことができました。
また次項でも述べますが、Webデザイナーや、ライターなどの専門職で独立されてい
るかたは、プロフィール欄をしっかり記入することで、問い合わせや仕事の依頼を増やす
ことも十分期待できます。
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専門職
冒頭で述べたイタリア在住の弁護士は、リンクトインで顧客を増やすことに成功しまし
た。「プロフェッショナルネットワーク」であるリンクトインはまさに「専門職」のため
のツールです。
プロフィール欄に記入されたスキル、専門知識、経歴や事例はそれぞれが「プロフィー
ル検索」の対象になります。したがって、あなたの専門をできるだけ具体的にプロフィー
ルに書くことが成功のポイントです。
たとえば派遣者雇用の問題に悩む経営者がリンクトインで「弁護士」を検索するとき、
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第一章 あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
A弁護士のプロフィール欄には、職業「弁護士」「民事全般に強い」と書いてあったとし
ます、一方でB弁護士は「労働法、特に派遣法に関するプロフェッショナル」あって、そ
のうえ今までの実績が詳しく書いてありました。
おそらく、ほとんどの人が、B弁護士のほうに興味を持つでしょう。
他の職種でも、たとえばプログラマーなら、単に「プログラミング」ではなく、得意な
言語や、構築したシステムの実績などを記入すれば、依頼がしやすくなります。
また日本では通信関係の専門職の例ですが、リンクトインのプロフィールを見た出版社
から原稿依頼を受けたかたもいます。このかたはアート関係に造詣が深いことを、プロ
フィールに書いたところ、そちらのほうでの問い合わせも大幅に増えたそうです。
リンクトインには、Q&A機能があり、活発な議論が行われています。このQ&Aはま
さに専門家、プロフェッショナルのためのツールと言ってもよいでしょう。
Q&Aには、さまざまなジャンルの質問が寄せられていますが、この質問に回答するこ
とによって、あなたの専門性を広くアピールすることができます。また、質問に回答した
ことがきっかけでビジネスが生まれることも珍しくありません。
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経営者
2011年6月にリンクトイン社が公表したデータによると、フォーチュン誌が編集・
発行している全米上位500社(フォーチュン500)の企業では、経営幹部の少なくと
も1人以上がリンクトインに登録しているそうです。
ソフトバンクの現在の躍進が、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブスと直接会って話が
できる孫正義社長のネットワーク力による部分が大きいことは、おそらくあなたもご存じ
でしょう。
経営者がどれだけ強いネットワークを持っているか、これが企業の命運を握っていると
いっても過言ではありません。リンクトインの活用で、あなたにも強いネットワークを築
くことが可能になります。
また同時に経営者は孤独でもあります。会社のゆくえを左右するような問題で、最後の
決断は経営者が下さなければならない。あるいは社長が先頭を切って方針を決めなければ
ならない。
そんなとき、情報を提供してくれたり、あなたの疑問に客観的に答えてくれたりしてく
れるのも、経営者間のネットワークです。前述したQ&Aも経営上、実務上の悩みの答え
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第一章 あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
を求めるのに役立つでしょう。
また自分を補佐してくれるアドバイザーやパートナーを探すのも、リンクトインの得意
な分野です。詳細検索という機能を使えば、あなたの欲しいスキルや経験を持った人をピ
ンポイントで見つけることもできます。
経営支援システムとしてのリンクトイン
1980年代、日本は世界の頂点にありました。電気製品や自動車、半導体など日本製
品は世界を席巻し、「日本経営モデル」はお手本とされたものです。
1990年以降の「失われた20年」の間に日米はあっという間に逆転されてしまいます。
「失われた20年」の原因をバブル崩壊や円高、あるいは政府の経済政策の失敗だと思っ
ている人も多いようですが、これらは事象の一面を表しているに過ぎません。
90年代の米国で起こったこと。それはITを活用した経営革命でした。冷戦の終結で、
それまで軍事機密で囲われてきた人や技術が一気に民間に流出しました。例を挙げると、
ロジスティックス(兵へいたん站)という軍事用語が経営用語となりました。商品や原料の在庫状
況をほぼリアルタイムで把握することで、在庫循環による景気変動を抑え、財務や経営の
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可視化によって現場との距離が縮まり、意思決定がスムーズに的確に行うようになったの
です。
このころドイツのSAPなどが提供したERP(EnterpriseResourcePlanning
)、S
CM(SupplyC
hainManagem
ent
)などのシステムは日本企業もこぞって導入しまし
たが、それらは単に現場が使う会計システム、在庫システムの役割しか果たさず、経営陣
が意思決定や経営のリストラクチャリング(Restructuring
)に活用した企業は日本では
皆無に近かったと思います
そもそも、90年代の米企業が取り組んだことで日本にも浸透したリストラクチャリング
という言葉が、日本では事業縮小、人員整理という意味しか持っていないことでも、これ
は顕著だと思います。
米国はその中で、インテル、マイクロソフト、アップル、アマゾン、グーグルなどの新
しい企業が生まれ、IBMはコンピュータハードウェアの会社から、ソフトウェアサービ
スの会社へと生まれ変わりました。
リンクトインも個人レベル、現場レベルのツールと思ってしまえば、結局は今までと同
じことです。しかし経営者がこのシステムを経営に活用しようと思えば、90年代の米国企
業以上に役立てることができます。
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第一章 あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
例えば次のようなことです。
情報の収集
経営陣、従業員(特に営業、マーケティング、リクルーティング部門)の情報共有、
意思統一
企業ブランディング
顧客、取引先との情報共有
経営者と従業員、あるいはこの間にコンタクトを持つことにより、会社内で情報共有や
意志統一が図れるだけでなく、従業員と取引先とのつながりをあなた自身も把握し管理す
ることが可能になります。高額な経営管理システムを入れなくても、それと同等以上のこ
とができるのがリンクトインなのです。
詳しくは第六章「リンクトインで会社を変革し売り上げを伸ばす」で解説します。
このようにリンクトインはさまざまな業種、さまざまなビジネスシーンで活用すること
ができます。そして、あなたもこれら8つの職種のどれかに含まれていたはずです。
誰ともつながらず、ビジネスをたった一人だけで行い、成功するということは不可能な
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話です。
英語の“linked in
”とは「つながっている」という意味ですが、まさにその名前のと
おりリンクトインは、ビジネス上の大切な「つながり」を猛烈に促進し、ビジネスをする
ほとんどすべての人にメリットをもたらしてくれるはずです。
もはやあなたの、「リンクトインは自分には関係ない」という気持ちは、完全に吹き飛
んでしまったはず。逆に、リントクインをやりたくてしょうがなくなっているはずです。
次章からは、リンクトインを使いこなすための戦略と、具体的な方法についてお話しし
ていきます。
インターネットの歴史を作った男のリンクトイン創業への道のり
シリコンバレーで最も「ソーシャルネットワーク」を知る男
世界最大のビジネス向けSNSのリンクトインは、2003年にリード・ホフマン
によって設立されました。ホフマンは、アップルや富士通のプロダクトマネージャー
を経て、世界最大のオンライン決済サービス、ペイパルの創業に参加。同じころに「ソー
シャルネットドットコム」というデーティングサイトを立ち上げた人物です。
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第一章 あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
ホフマンは、ソーシャルネットワークの基本特許を共同所有している事実からもわ
かるように、「SNSを最もよく知る男」として知られており、フレンドスター、シッ
クスアパート、フリッカー、ジンガ、そしてFacebook
などシリコンバレーのSNS
運営企業のエンジェル(投資家)としての顔も持っています。
「リード・ホフマン? そんな人は知らいないよ」と思うかもしれませんが、実は
映画『ソーシャルネットワーク』にも、登場しています。
Facebookの創業者マーク・ザッカーバーグとその創業秘話を描いた『ソーシャル
ネットワーク』。ザッカーバーグと初代社長のショーン・パーカーが、資金集めのた
めに、シリコンバレーの投資家(エンジェル)を廻るシーンがありますが、実際ショー
ン・パーカーがFacebookの経営に参画して、いちばん最初に接触した人物が、リー
ド・ホフマンその人なのです。
インターネットより古いソーシャルネットワークの歴史
リンクトインを始めとするソーシャルネットワークの起源は、インターネットの普
及以前、パソコン通信に見ることができます。
ニフティサーブやPC
-VAN
を中心としたパソコン通信は、最盛期で数百万人の会
員を有するネットワークとなりました。
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当時のパソコンの年間出荷数は、約200万台と現在の約七分の一に過ぎず、携帯
電話やスマートフォンまでをコンピュータに入れれば数千万台となる現在と比較すれ
ば、相当数の人たちが、このネットワークに参加していたことになります。
会員は会員間でのみ有効なメールによるやり取りを行い、フォーラムと呼ばれるコ
ミュニティで議論を交わしたり、チャットで交流したりと、現在SNSで行っている
行動の多くは、ほとんどこのパソコン通信の場で行われてきたものと同様です。
「パソコンの電源を切って(オフにして)、集まろう」という意味で、コミュニティ
メンバーが実際にリアルの場で集まることを、「オフ会」と言うようになったのも、
このパソコン通信時代からでした。
ソーシャルネットワーク元年に登場した創業者リード・ホフマン
その後インターネットが普及し始めた1997年に登場した二つのサイトが「イン
ターネット版ソーシャルネットワーク」の始まりと言われています。
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第一章 あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
一つは、アンドルー・ワインライクがニューヨークで始めた、「SixD
egrees.com
」
です。「SixD
egrees.com
」は、実名制を基本として、プロフィールサイトの作成機能、
そしてオンライン上で人間関係を作ることを目的としていました。SixD
egrees.comのメンバーになるには、既存のメンバーからの招待が必要でした。この招待制、今で
は広く知られた制度ですが、この招待登録制度を初めて取り入れたのが、この
「SixDegrees.com
」です。
SixDegrees
とは、「六次の隔たり」という意味です。後で詳しく触れますが、「6
人を介せば世界中の人と繋がることができる」という社会学(Sociology
)の理論か
らこの名がつけられました。
ワインライクが会社のビジョンとして掲げた「SocialN
etworkingO
peratingSystem
」以降このような人と人をつなぐシステムをSNSと呼ぶようになりました
し、SNSの基本特許を最初に取得したのもワインバーグです(現在この特許は、ホ
フマンと、ソーシャルゲーム最大手のジンガ創業者のマーク・ピンカスが買収してい
ます)。
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SixDegrees.com
は1999年には350万人のユーザーをもつまで成長しました
が、収益を上げるのには成功せず、2000年のネットバブル崩壊の中、閉鎖されま
した。
そして1997年にオープンしたもうひとつのサイトが、リード・ホフマンが始め
た「Socialnet.com
」です。「Socialnet.com
」は、プライベート利用のためのいわゆ
るデーティングサイトでしたが、ボードメンバーの間で意見の齟齬が起きるようにな
り、ホフマンはこの会社を去り、友人のピーター・シールの誘いに乗ってペイパルの
創業に参加しました。
ペイパルは2002年にIPOした後、eBay
に買収されました。
創業者利益を得た、ペイパルのボードメンバーたちは「ペイパルマフィア」と呼ばれ、
ネットバブル崩壊後のシリコンバレーをリードする存在となります。
社長のピーター・シールは、Facebook
の最初の投資ラウンドのリードインベスター
になり、ホフマンと共に、Facebookのほかフレンドスター、ジンガなど多くのSN
Sサイトのエンジェルとなっています。
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第一章 あなたがリンクトインを使うべき四つの理由
デビット・サックスは企業向けSNSのヤマーを立ち上げ、デザイナーだったリ
チャード・ハリーはユーチューブを開設し、その後グーグルに16億5千万ドルで売却
しました。
少し変わったところでは、シリコンバレーで設立された電気自動車の「テスラモー
タース」のCEO、イーロン・マスクもペイパルの共同創業者の一人です。