サブサハラアフリカにおける...*3...
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32イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 5(2013.3)
論
文
一
サブサハラアフリカの宗教別人口
アフリカは広く、その文化は多様である。宗教についてみれば、ルギラ
(二〇〇四)はアフリカ伝統宗教として五六種を数えており、それらがキリ
スト教やイスラーム教と複雑に融合しながら、国・地域により異なった様相
を示している。しかしあえてその全体像を描き出そうとするならば、何らか
のデータに基づいて比較分析することからはじめなければならない。幸いに
も近年、利用できるデータは飛躍的に増大してきている。
一九八〇年代から、USAID(米国国際開発庁)が支援して発展途上国
九〇カ国以上が行っている人口保健調査(D
emographic and H
ealth Surveys
以
下DHSとする)は、アフリカでも多くの国で行われ、個票データも公開さ
れている。また同様にUNICEF(国連児童基金)はMICS(M
ultiple Indicator C
lustor Surveys
)という調査を行っており、そのデータも公開され
ている。これらの調査では宗教が質問項目に入っている場合が多い。そこで
アフリカの国連加盟国である五四カ国から、北アフリカアラブ諸国五カ国
(アルジェリア、エジプト、リビア、モロッコ、チュニジア)、島嶼国で社会
事情が異なる二カ国(モーリシャス、セイシェル)を除いた四七カ国をサブ
サハラアフリカの国とし、各国の宗教別人口割合のデータを特定した。DH
Sによりデータがあるものが三三カ国、MICSによりデータが得られるも
のが四カ国であり、それらからデータを得ることができない一〇カ国につい
てはCIAによるThe W
orld Factbook
や、外務省の国別情報などによる推計
値を用いた。それらを集計すると、サブサハラアフリカ全体の六一%はキリ
サブサハラアフリカにおける
林 玲子 国立社会保障・人口問題研究所国際関係部長
イスラーム人口と人間開発
スト教徒、イスラーム教徒はその約半数である三一%、伝統宗教実践者はわ
ずか三.五%にすぎない(表一)。
日本の宗教統計では各宗派の申告ベースであるため、宗教指導者は多めに
信者を報告し、信者合計が二億人あまりにもなっている。ルギラが引用して
いる「世界現代指導者年鑑」では、例えばリベリア、トーゴ、ベナンは伝統
宗教実践者が人口の七〇%としているが、それも各宗教指導者の申告ベース
のデータなのかもしれない。またDHSではボツワナ(二六.七%)、マダガ
スカル(二二.二%)のように無宗教者の割合が多い国もある。アフリカの
伝統宗教は地元の人々には宗教として認識されておらず、調査で回答する際
に無宗教と回答している可能性もある。
同じDHSの結果で、ある程度以前のデータがある二六カ国の宗教別割合
の推移を比較すると(表二)、伝統宗教の割合で、三%以上の増減が見られ
るのは増加が二カ国、減少が三カ国である。古い時点で伝統宗教が大きな割
合を占めていた国では一様に割合が減少している。一方イスラーム教は同じ
く三%以上の増減で見ると六カ国で増加、二カ国で減少、キリスト教に至っ
ては、一〇カ国で増加、二カ国で減少、となっている。観察の期間が一〇年
程度であり短いことから断定は難しいが、伝統宗教がイスラーム教やキリス
ト教といった世界宗教に取って替わられている、ということになっているの
かもしれない。一九〇〇年には伝統宗教が七六%を占めていたが、二〇一〇
年には一三%にまで低下した、という報告も近年なされている(Pew
Forum
2010
)。
DHSは標本調査であるが、地域人口分布を反映するように標本抽出およ
びウェイト設定がなされており、得られる値は全国平均値である。DHSの
33 イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 5(2013.3)
サブサハラアフリカにおけるイスラーム人口と人間開発
Country 国名構成比(%)
Source *2イスラム教 キリスト教 伝統宗教 その他 無宗教 計
Angola アンゴラ 0.0 53.0 47.0 - 0.0 100.0 CIA Factbook
Benin ベナン 21.9 53.3 18.4 1.5 4.9 100.0 DHS2006
Botswana ボツワナ 0.5 62.7 2.2 7.9 26.7 100.0 National2006
Burkina Faso ブルキナファソ 58.9 28.7 11.1 0.0 1.3 100.0 DHS2003
Burundi ブルンディ 2.5 94.4 - 0.7 2.4 100.0 DHS2010
Cameroon カメルーン 17.9 70.2 3.4 3.3 5.2 100.0 DHS2004
Cape Verde カーボベルデ - 100.0 - - - 100.0 外務省HP
Central African Republic 中央アフリカ共和国 8.9 87.5 - 3.1 0.6 100.0 MICS2006
Chad チャド 55.7 40.1 1.5 0.2 2.5 100.0 DHS2004
Comoros コモロ 98.0 2.0 - - - 100.0 CIAFactbook
Congo Dem Rep コンゴ民主共和国 1.4 95.7 0.8 0.2 1.9 100.0 DHS2007
Congo Rep コンゴ共和国 1.2 86.8 0.3 2.7 8.9 100.0 DHS2009
Cote d'Ivoire コートジボワール 36.7 44.8 16.8 1.7 - 100.0 DHS2005
Djibouti ジブチ 94.0 6.0 - - - 100.0 外務省HP
Equatorial Guinea 赤道ギニア - 99.0 1.0 - - 100.0 外務省HP
Eritrea エリトリア 36.5 63.0 0.4 0.1 - 100.0 DHS2002
Ethiopia エチオピア 28.5 69.5 0.7 1.2 - 100.0 DHS2011
Gabon ガボン 9.5 77.8 1.0 1.0 10.7 100.0 DHS2000
Gambia ガンビア 96.3 3.6 0.0 0.1 0.0 100.0 MICS2005-6
Ghana ガーナ 15.8 74.9 4.9 0.2 4.2 100.0 DHS2008
Guinea ギニア 84.4 11.0 2.8 - 1.8 100.0 DHS2005
Guinea-Bissau ギニアビサウ 43.5 22.1 28.6 1.4 4.4 100.0 MICS2006
Kenya ケニア - 89.4 - 0.4 3.3 100.0 DHS2008-09
Lesotho レソト - 96.6 - 0.2 3.2 100.0 DHS2004
Liberia リベリア 10.4 86.7 0.4 0.1 2.4 100.0 DHS2011
Madagascar マダガスカル 0.8 69.7 2.2 5.0 22.2 100.0 DHS2008-09
Malawi マラウィ 12.6 84.8 - 0.9 1.7 100.0 DHS2004
Mali マリ 92.6 3.3 1.7 0.0 2.4 100.0 DHS2006
Mauritania モーリアニア 100.0 - - - - 100.0 CIAFactbook
Mozambique モザンビーク 19.7 61.7 1.0 5.2 12.5 100.0 DHS2009
Namibia ナミビア - 97.6 - 0.5 1.9 100.0 DHS2006-07
Niger ニジェール 98.6 0.7 0.0 0.0 0.7 100.0 DHS2006
Nigeria ナイジェリア 45.0 53.4 1.3 0.3 - 100.0 DHS2008
Rwanda ルワンダ 1.9 96.0 0.0 0.4 1.6 100.0 DHS2005
Sao Tome and Principe サントメ・プリンシペ 0.1 83.1 0.0 4.1 12.8 100.0 DHS2008
Senegal セネガル 95.2 4.4 0.3 0.0 0.0 100.0 DHS2011
Sierra Leone シエラレオーネ 77.6 21.8 0.1 0.2 0.3 100.0 DHS2008
Somalia ソマリア 100.0 - - - - 100.0 CIAFactbook
South Africa 南アフリカ 1.5 79.8 0.3 3.4 15.1 100.0 2001Census
South Sudan 南スーダン - 50.0 50.0 - - 100.0 *1
Sudan スーダン 98.1 1.9 0.0 0.0 0.0 100.0 DHS1989-90
Swaziland スワジランド 0.2 86.9 0.4 1.2 11.3 100.0 DHS2006-07
Tanzania タンザニア 30.3 58.2 - 0.4 11.2 100.0 DHS2004-05
Togo トーゴ 17.0 43.2 33.8 1.1 4.8 100.0 MICS2006
Uganda ウガンダ 12.8 85.9 - 1.4 - 100.0 DHS2011
Zambia ザンビア 0.5 97.5 - 2.0 - 100.0 DHS2007
Zimbabwe ジンバブエ 0.9 77.7 4.8 0.2 16.5 100.0 DHS2005-06
Totalサブサハラアフリカ合計*3 31.0 60.8 3.5 1.0 3.7 100.0
*1 南スーダンの宗教構成比はCIA FactbookにChristian, Animistとの記述があるため、それぞれを50%とした暫定値である。*2 DHSは、女性15~49歳、男性は15歳~59歳前後(国により最終年齢は異なる)を対象としており、男女別、年齢別の宗教割合は全体に影響を与えな
いとみなしている。男女のデータがある場合は、その平均値とした。*3 サブサハラアフリカ合計は、各国宗教別人口割合を各国2005年人口に乗じて求めた宗教別人口の合計の割合。紙面の都合上、各国宗教別人口数は割愛した。DHS : Demographic and Health Survey, MICS : Multiple Indicator Cluster surveys
表1 サブサハラアフリカ宗教別人口
34イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 5(2013.3)
Islamic Populations and Human Development in Sub-Saharan Africa
Country (
国)
最新
年最
旧年
イス
ラー
ム教
キリ
スト
教伝
統宗
教そ
の他
無宗
教合
計デ
ータ
ソー
スイ
スラ
ーム
教キ
リス
ト教
伝統
宗教
その
他無
宗教
合計
デー
タソ
ース
Benin ベ
ナン
21.9 53.3
18.4 1.5
4.9 100.0
DH
S200621.4
46.4 20.5
0.3 11.4
100.0 D
HS1996(
F)
Burkina Faso ブ
ルキ
ナフ
ァソ
58.9 28.7
11.1 0.0
1.3 100.0
DH
S200354.6
29.1 15.5
0.8
100.0 D
HS1992(
F)
Burundi ブ
ルン
ジ2.5
94.4
-
0.7 2.4
100.0 D
HS2010
4.3 91.7
0.7
3.3 100.0
MIC
S2005
Cam
eroon カメ
ルー
ン17.9
70.2 3.4
3.3 5.2
100.0 D
HS2004
22.0 64.1
0.1
13.7 10 0.0
DH
S1991
Central A
frican Republic 中
央ア
フリ
カ8.9
87.5
-3.1
0.6 100.0
MIC
S20068.9
89.3 1.2
0.6
100.0 D
HS1994
Chad チ
ャド
55.7 40.1
1.5 0.2
2.5 100.0
DH
S200454.7
39.0 3.0
3.4
100.0 D
HS1996
Congo R
ep コン
ゴ共
和国
1.2 86.8
0.3 2.7
8.9 100.0
DH
S20091.6
62.8 0.3
24.7 10.6
100.0 D
HS2005
Cote d'Ivoire コ
ート
ジボ
ワー
ル36.7
44.8 16.8
1.7
-100.0
DH
S2005(F)
32.6 42.6
5.5 0.1
19.1 100.0
DH
S1994(F)
Ethiopia エチ
オピ
ア28.5
69.5 0.7
1.2
-1 00.0
DH
S201132.5
63.7 3.6
0.3
100.0 D
HS2000
Ghana ガ
ーナ
15.8 74.9
4.9 0.2
4.2 100.0
DH
S20089.9
70.1 7.8
0.3 11.8
100.0 D
HS1988
Guinea ギ
ニア
84.4 11.0
2.8
-1.8
100.0 D
HS2005
85.2 9.7
2.5 0.0
2.6 100.0
DH
S1999
Kenya ケ
ニア
6.9 89.4
-
0.4 3.3
100.0 D
HS2008-09
3.5 92.3
1.6
2.6 100.0
DH
S1989
Liberia リベ
リア
10.4 86.7
0.4 0.1
2.4 100.0
DH
S20113.5
92.3
1.6 2.6
100.0 D
HS1996(
F)
Madagascar マ
ダガ
スカ
ル0.8
69.7 2.2
5.0 22.2
100.0 D
HS2008-09
0.9 77.9
2.5 0.4
18.3 100.0
DH
S1992(F)
Mali マ
リ92.6
3.3 1.7
0.0 2.4
100.0 D
HS2006
92.7 2.4
4.9
100.0
DH
S1987(F)
Mozam
bique モザ
ンビ
ーク
19.7 61.7
1.0 5.2
12.5 100.0
DH
S200917.4
55.0
6.9 20.8
100.0 D
HS1997
Nam
ibia ナミ
ビア
-
97.6
-0.5
1.9 100.0
DH
S2006-07
98.6
0.1 1.3
100.0 D
HS1992(
F)
Niger ニ
ジェ
ール
98.6 0.7
0.0 0.0
0.7 100.0
DH
S200699.0
0.7 0.3
0.1
100.0 D
HS1992
Nigeria ナ
イジ
ェリ
ア45.0
53.4 1.3
0.3
-100.0
DH
S200847.6
47.7 2.4
2.4
100.0 D
HS1990
Rw
anda ルワ
ンダ
1.9 96.0
0.0 0.4
1.6 100.0
DH
S20052.2
94.2 0.2
0.1 3.3
100.0 D
HS1992
Senegal セネ
ガル
95.2 4.4
0.3 0.0
0.0 100.0
DH
S201195.5
4.3
0.2
100.0 D
HS1986
Tanzania タン
ザニ
ア30.3
58.2
-0.4
11.2 100.0
DH
S2004-0532.1
53.5
7.5 6.9
100.0 D
HS1992
Togo トー
ゴ17.0
43.2 33.8
1.1 4.8
100.0 M
ICS2006
11.4 37.9
40.2 3.6
6.8 100.0
DH
S1988
Uganda ウ
ガン
ダ12.8
85.9
-1.4
-
100.0 D
HS2011
11. 6 87.8
0.7
100.0
DH
S1988
Zambia ザ
ンビ
ア0.5
97.5
-2.0
-
100.0 D
HS2007
0.4 97.0
0.0 2.6
100.0
DH
S1992(F)
Zimbabw
e ジン
バブ
エ0.9
77.7 4.8
0.2 16.5
100.0 D
HS2005-06
67.2
8.6 22.9
1.3 100.0
DH
S1988(F)
3%以
上増
加3%
以上
減少
*(F)
は女
性の
みの
デー
タ
表2
宗
教別
割合
の変
化(
デー
タの
ある
サブ
サハ
ラア
フリ
カ26
カ国
)
35 イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 5(2013.3)
調査対象は、女性はどの
国も一五歳から四九歳で
あるが、男性は一五歳か
ら国により四九歳、五九
歳、六四歳までと異なっ
ており、また高齢者の情
報は含まない。男女の違
いは大きなものではな
く、この年齢幅のうち高
い年齢層になると、伝統
宗教の割合が多くなる国
が多いため、伝統宗教が
過小評価されている、と
いう点もある。しかしな
がら、いまだ低いアフリ
カの人口高齢化率を考え
ると、高齢者の伝統宗教
信仰者割合が全体の宗教
割合に大きな差をもたら
すとは考えにくい。
したがって、現在のア
フリカの宗教構成は、も
はや伝統宗教はマイノリ
ティーとなり、キリスト
教、イスラーム教という
世界宗教がしのぎを削っ
ている状態であるといえ
るだろう。
二
州別のイスラーム人口
アフリカの国境が外部者により恣意的に決められたことは解説の必要もな
いが、そのため国別にデータを見ると、各国の地域差、または国境を接した
地域の類似性を見逃すことにもなる。またサブサハラアフリカは人口が一.
六億人のナイジェリアや八千万人のエチオピアのような大国から人口一五万
人のサントメ・プリンシペのような小国も多く存在する。これらを同列に比
較することに問題がないわけではない。一方、国内の地域、つまり州や県と
いう行政区分(以下、便宜上「州」とする)は、その境界は頻繁に変わって
いるとはいえ、各国の国内事情、歴史的経緯に基づいて設定されており、州
別のデータはそれぞれの地域事情をよりよく反映している。各国の国勢調査
はもちろんのこと、DHSやMICSをはじめとする調査でも州別にデータ
を算出することが可能であり、それを比較分析してみよう。
サブサハラアフリカ四七カ国について、基本的に人口が二〇〇万人以下の
国は一つの地域区分とし、それ以上の国はR
egion, Province, State
といった州
別に集計すると、合計四一〇州が特定できる。ただしここでは、人口が
二〇〇万人以下であるが国土面積が大きくデータがあるガボン、ナミビア、
民族・文化構成が複雑なギニアビサウは州別としている。州の平均人口は
一八六万人であるが、最低の一万人(モーリタニア・インシリ州)から最大
の三千万人(エチオピア・オロミヤ州)まで幅があり、その違いは国別人口
の差に匹敵するものではある。人口密度は平均三五九人/㎢で、日本と同程
度であるが、これは都市部では人口密度が極端に高くなることに起因してい
る。最低は〇.二人/㎢(ナミビア・カラス州)から最高一三七三四人のコ
ンゴ・ブラザビルまで幅があるが、サブサハラアフリカ全体の人口密度は約
三〇人/㎢程度であり、それ以下の人口密度である州は四一〇州中、一六九
州となっている。
四一〇州について、イスラーム教徒の割合を見ると(図一)、国境に関わ
らず、セネガルからスーダンまで、つまり大西洋から紅海まで続くいわゆる
サヘル地域のイスラーム教の広がりが見て取れる。それとは若干離れて東ア
フリカには、環インド洋世界としてのイスラーム地域があることもわかる。
また、ギニア、ギニアビサウ、マリ、ナイジェリア、チャドでは、九五%
以上がイスラーム教徒である北部と、それよりもイスラーム教徒割合が少な
図1 イスラーム教徒割合(サブサハラアフリカ)
図2 アフリカにおけるツェツェバエの分布 Stephen G.A. Leak (1999) Tsetse Biology
and Ecology p.82
36イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 5(2013.3)
Islamic Populations and Human Development in Sub-Saharan Africa
い南部、というパターンが認められる。さらに南のシエラレオーネ、リベリ
ア、コートジボワール、ブルキナファソ、ガーナ、トーゴ、ベナン、カメ
ルーン、中央アフリカといった国々では、イスラーム教徒割合がモザイク状
に入り乱れている状況を示している。このような宗教モザイク状態は、東ア
フリカのエチオピア、ケニア、タンザニア、モザンビークについてもあては
まっている。これらの国々では、イスラーム教徒以外はキリスト教徒、とい
うわけではなく、伝統宗教者割合や無宗教者割合が高い地域もあり、宗教が
複雑に入り混じった地域である。
イスラーム教は、北から馬に乗ってやってきたアラブ人によりサブサハラ
アフリカにもたらされたが、馬に眠り病をもたらすツェツェバエがいる地域
にはひろがらなかった、とされているが(G
oody 1971, Fukuyama 2011, A
lsan 2012
)州別のイスラーム教徒割合は、ツェツェバエの生息範囲とよく呼応
し、ツェツェバエのいない地域でイスラーム教徒割合が高くなっている(図
二)。
州別のイスラーム教徒割合と、キリスト教徒割合、伝統宗教者割合、無宗
教者割合の相関を見ると(表三)、キリスト教徒割合との相関係数はマイナ
ス〇.九一七と非常に強い負の相関があり、イスラーム教とキリスト教が二
大宗教となっている状況を示しているといえる。また伝統宗教者割合は、イ
スラーム教徒割合とキリスト教徒割合に対して、それぞれマイナス〇.
一八六、マイナス〇.一三四と低いが、有意な負の相関を有しており、イス
ラーム教、キリスト教という世界宗教に拮抗しているといえなくもない。
これとは異なり、無宗教者割合はキリスト教徒割合とは有意な相関をもた
ないが、イスラーム教徒割合とは有意な負の相関(マイナス〇.二九三)を
有している。イスラーム教徒が多い州では、無宗教者と自己表現するのがタ
ブーである、ということが影響しているのかもしれないが、無宗教者割合
と、イスラーム教徒割合・キリスト教徒割合の分布を見ると(図三)、イス
ラーム教徒が過半数を占めるような州では無宗教徒割合は低く、イスラーム
教と無宗教の関係は明らかではない。しかし、キリスト教徒割合と無宗教徒
割合は、それらが補完する関係である州が多い(対角線に近い州が多い)。
これは、無宗教者は、キリスト教徒が多い州でキリスト教以外の人が無宗教
と答える人が多いことを示しており、サブサハラにおける無宗教とは、キリ
スト教との関係で捉える必要があるのではないだろうか。
三
人間開発に関する指標分析
人間開発H
uman D
evelopment
という概念は、一九八〇年代からマブーブ
ル・ハックやアマルティア・センらにより提唱されてきた。経済開発のみな
らず、教育や医療を十分に享受して、人間としての能力を向上させることが
重要である、という考え方であり、一九九〇年には人間開発指数として指標
化され広く知られるようになり、現在では開発援助政策において重要な柱と
なっている。人間開発指数には、平均寿命、就学率、一人当たりGNPなど
の指標が用いられるが、ここでは人間開発に関する指標をより広くとらえ、
イスラーム教徒割合との相関を分析した(表四)。
イスラーム教徒割合は、多くの人間開発に関する指標と有意な相関を示
す。イスラーム教徒割合が多いと、出生率が高く、乳幼児死亡率が高く、完
全予防接種児の割合が低く、保健施設での出産割合が低い。しかしこれらの
相関は有意であるものの、〇.二〜〇.三程度と強いものではない。一方イス
ラーム教徒割合と教育指標は、非常に高い負の相関がある。イスラーム教徒
割合と無教育者の割合は、女性で〇.六一六、男性で〇.七〇六、また非識字
率は女性で〇.五三七、男性で〇.六五二のいずれも有意な強い相関があり、
イスラーム教徒が多い地域では教育水準が低い、という傾向が明らかであ
る。イスラーム教徒割合と相対的最貧困者の割合は有意な相関がないため、
この低い教育水準は、経済的理由によるものではないようである。
さらに国別にみると、一国で北部はイスラーム教徒、南部はキリスト教徒
と大きな違いを見せるナイジェリアにおいては、イスラーム教徒割合と女性
無教育者割合の三七州の相関係数は、〇.九二五と非常に高い(図四)。
西アフリカでは、ナイジェリア以外でも、カメルーン、チャド、コートジ
ボワール、ガーナ、セネガル、シエラレオーネでイスラーム教徒割合と女性
無教育者割合の相関係数が〇.七以上と高く、例えばセネガルのジガン
ショール州やガーナのノーザン州のように、国内のほかの州と比べて宗教構
成が違う場合に教育水準の差が如実に認められるケースも散見される。一方
東アフリカ、例えばタンザニアのイスラーム教徒割合が高いザンジバルでは
女性無教育者割合は低く、タンザニア国内二六州のイスラーム教徒割合と教
育水準の相関は認められない。ウガンダでは、逆にイスラーム教徒割合が高
いと教育水準が高くなる相関が見られる。このイスラーム教徒割合と教育水
37 イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 5(2013.3)
サブサハラアフリカにおけるイスラーム人口と人間開発
図3 イスラーム教徒割合・キリスト教徒割合と無宗教者割合の分布(州別)
表3 イスラーム教徒割合と各宗教割合の相関(州別)
表4 州別イスラーム教徒割合と人間開発に関する指標との相関
表5 教育指標を制御変数としたイスラーム教徒割合と人口指標、経済指標との偏相関
図4 イスラーム教徒割合と女性無教育者割合の分布(ナイジェリア37州)
イスラーム教徒
キリスト教徒割合
伝統宗教者割合
無宗教者割合
イスラーム教徒割合
相関係数 1 -.917** -.186** -.293**
有意確率 .000 .000 .000
N 409 409 409 393
キリスト教徒割合
相関係数 -.917** 1 -.134** .052 有意確率 .000 .007 .306
N 409 409 409 393
伝統宗教者割合
相関係数 -.186** -.134** 1 .043 有意確率 .000 .007 .390
N 409 409 409 393
無宗教者割合
相関係数 -.293** .052 .043 1
有意確率 .000 .306 .390 N 393 393 393 393
(注)** : 1%水準で有意
人口指標 保健指標 経済指標 教育指標
合計特殊出生率 乳幼児死亡率 完全予防接種児の割合
保健施設での出産割合
相対的最貧困者の割合
無教育者割合 非識字率純就学率
女性 男性 女性 男性相関係数 .213** .241** -.210** -.310** .093 .616** .706** .537** .652** -.379**有意確率 .000 .000 .000 .000 .079 .000 .000 .000 .000 .000
N 384 404 379 397 356 382 313 358 301 352(注)** : 1%水準で有意
制御変数 合計特殊出生率 乳幼児死亡率 相対的
最貧困者割合
女性非識字率偏相関係数 -.164** -.119* -.181**有意確率 .002 .025 .001
N 355 350 334
男性非識字率偏相関係数 -.065 .015 -.151**有意確率 .263 .802 .009
N 298 297 291(注)** : 1%水準で有意,* : 5 %水準で有意
無宗教者割合(%)
無宗教者割合(%)
38イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 5(2013.3)
Islamic Populations and Human Development in Sub-Saharan Africa
準との相関のパターンからも、サブサハラアフリカにおけるイスラーム教
は、西アフリカと東アフリカとは様相が異なっていることが窺い知れよう。
相関とは因果関係を示すものではない。したがって、イスラーム教のため
に、もしくはイスラーム教徒が多いことによって、その州の教育水準が低い
のか、教育水準が低いためにイスラーム教徒が多いのか、ということはデー
タからだけでは断定できないが、ことの性質を考えると、やはり前者と考え
られるのではないかと思われる。一方前述したように、出生率や乳幼児死亡
率などは、イスラーム教徒割合とゆるやかな相関を持つが、これらは教育水
準を媒介とする疑似相関の可能性もある。男女それぞれの非識字率を制御変
数として、イスラーム教徒割合と合計特殊出生率、乳幼児死亡率、相対的最
貧困者割合の偏相関をみると、女性非識字率を制御変数としたときには、合
計特殊出生率、乳幼児死亡率とイスラーム教徒割合の相関は弱くなるものの
有意なまま存在しているが、男性非識字率を制御変数としたときには、それ
らの相関は有意ではなくなってしまう(表五)。
つまり、イスラーム教徒割合が高いと出生率や死亡率が高くなる傾向があ
るのは、教育水準、特に男性の教育水準が低いことによる影響である、とい
うことになる。
一方、経済指標、ここでは相対的最貧困者割合は、イスラーム教徒割合と
有意な相関を持たないが、女性、男性非識字率を制御変数とした場合、有意
な負の相関を示すようになる。これは、非識字率が抑制変数として作用して
いる、つまり本来イスラーム教徒が多い地域では最貧困者が少ないのだが、
教育水準が低いことによりその相関が隠されてしまっている、と解釈でき
る。
逆に、イスラーム教徒割合と教育指標の相関は、出生率、死亡率、貧困率
のどれを制御変数としても、必ず強く、有意な偏相関がある。
これらのことから、サブサハラアフリカのイスラーム教徒割合は、教育水
準に有意で重篤な負の影響を及ぼしているが、出生率、死亡率に対する本質
的な影響はなく、教育水準を適切な方法で上げることができれば、経済水準
を向上させる可能性もある、と結論づけられる。
また、出生率、死亡率に影響を及ぼしている教育水準は、女性の教育水準
よりも、男性の教育水準が強く影響していることは注目に値する。従来の開
発政策では、女性と子供が社会的弱者として認識され、多くの支援は女性と
子供に特化して行われることが多い。ジェンダーが重視される中で、男性に
ついての視点が抜け落ちていることは近年指摘されているところである。具
体的に男女それぞれの教育水準がどのように出生率・死亡率に影響を与える
のか、またなぜイスラーム教徒が多い地域で教育水準が低いのか、さらなる
分析が必要とされる。
四
イスラーム教と健康
イスラーム教徒の高い出生率や死亡率は、教育水準が低いことに起因して
いるが、イスラーム特有の慣習が健康に影響をもたらすこともある。サブサ
ハラアフリカにおいては、男性、女性の割礼を挙げることができよう。
女性割礼は、現在では「女性器切除」とされているように、コーランにも
聖書にも記述のない慣習であり、女性の健康に重篤な悪影響を及ぼす。特に
西アフリカ、東アフリカで高い実施率があるが、州別の女性割礼実施率とイ
スラーム教徒割合との相関係数は〇.四三六で有意な相関があり、これは教
育水準を制御変数としてもやはり有意な相関である。しかしエチオピアなど
ではキリスト教徒が多い州でも女性割礼実施率が高い地域もあり、セネガル
などではイスラーム教徒が多い州でも実施率が低い地域もみられ、宗教より
も民族の違いにより女性割礼の実施率が異なる、といったほうが正しい。サ
ブサハラアフリカの多くの政府は女性割礼実施を非合法化しており、今後根
絶していくことは政策レベルでは合意されている。
一方、男性割礼は、旧約聖書に実施の薦めが明記されており、イスラーム
教徒、ユダヤ教徒では必ずといってよいほど行われている慣習である。男性
割礼実施者には生殖器系感染症発症率が低いことは以前から知られていた
が、一九八〇年代後半から男性割礼実施者のHIV感染率が有意に低いこと
が明らかにされ(C
ameron 1989, G
ray 2003
)、イスラーム教徒以外でも、エ
イズ予防策として男性割礼実施が推奨されるにいたっている(W
HO
/U
NA
IDS 2007
)。州別の男性割礼実施者の割合とHIV陽性者割合はマイナ
ス〇.六六〇と強い負の相関が認められ、男性割礼が行われている地域では、
HIV感染率が低いことが示される。その結果、イスラーム教徒割合とHI
V陽性者割合は、マイナス〇.四六五の有意で、ある程度強い相関が見られ
る。イスラーム教徒であることが低いHIV感染率につながっている、とい
うこと自体は、特にイスラーム教指導者の関心を引いているわけではないよ
うだが、これまで割礼の習慣のないキリスト教徒や伝統宗教者の社会では、
39 イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 5(2013.3)
サブサハラアフリカにおけるイスラーム人口と人間開発
図5 宗教の重要度(各国別) 国名の枠は、サブサハラアフリカの国を示す 出典: 世界価値観調査 各国最新年調査(2004~2008年)
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
Hon
g K
ong
Japa
nC
hina
Vie
t Nam
And
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Sw
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Nor
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man
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Jord
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done
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ptS
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alIra
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非常に重要である 重要である そんなに重要ではない 全く重要ではない
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%Hong Kong
JapanChina
Viet NamAndorraSwedenNorway
GermanyTaiwan
NetherlandsFrance
Russian FederationSpain
SloveniaSwitzerland
New ZealandFinlandUkraineBulgariaAustralia
Great BritainSouth Korea
UruguaySerbia
MoldovaCanada
ArgentinaItaly
RwandaChile
United StatesPoland
TotalPeru
BrazilIndia
Cape VerdeCyprus
ThailandRomania
MexicoBotswana
South AfricaTurkey
Trinidad and TobagoNamibiaZambia
IranMozambique
GeorgiaMalaysiaEthiopiaUganda
GuatemalaTanzania
Burkina FasoBenin
KenyaMadagascar
ZimbabweMali
GhanaMorocco
NigeriaMalawiLiberia
LesothoJordan
IndonesiaEgypt
SenegalIraq
非常に重要である
重要である
そんなに重要ではない
全く重要ではない
100%60% 80%40%10% 90%50%20% 70%30%0%
あまり重要ではない
40イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 5(2013.3)
Islamic Populations and Human Development in Sub-Saharan Africa
エイズ予防のための割礼実施については、複雑な様相も示しているが、安価
に安全に行われる男性割礼は、これまでその慣習がなかった東アフリカや南
部アフリカの国々でも広く行われるようになってきている。
イスラームと健康に関してはさらに、予防接種拒否という事象がある。ナ
イジェリアでは、二〇〇三年に北部カノ市のシャリーア最高評議会がポリオ
予防接種を禁止した。これは、ポリオワクチンが米国の陰謀による不妊薬で
あり、またエイズを広げるものである、という間違った認識によるものであ
る(K
app 2003)。このため、ナイジェリア北部でポリオの流行が起こり、そ
の後西アフリカ全域に広がった。サブサハラアフリカ全体でみると、イス
ラーム教徒割合と予防接種率はマイナス〇.二一〇と緩やかだが有意な負の
相関がある。ナイジェリア一国で見ると、相関係数はマイナス〇.七四二と
強い負の相関を示すが、いずれも教育水準を制御変数とすると有意ではなく
なる。予防接種率は乳幼児死亡率と有意な負の相関があり、子供の死亡率を
下げる有効な手段ということには間違いないが、イスラーム社会の低い教育
水準により予防接種率が低く、それが子供の死亡率を高める方向に働いてい
る、という解釈が可能である。
このように、サブサハラアフリカでは、イスラームが、健康に影響を及ぼ
している面があるが、それは正の方向のこともあれば、負の方向のこともあ
る。五
宗教心と人口増加
国連の人口推計によれば、今後世界人口は高齢化し、人口減少にまで至る
国家もたくさんあるなか、アフリカ人口は増加を続け、二一〇〇年には世界
人口一〇〇億人のうち、アフリカ人口は三六億人となる、とされている
(UN
2011
)。今後アフリカの重要性が増す、といえる半面、アフリカ人口が
四割近くを占めるような世界は、現在とはかなり違う構造になっていること
は想像に難くない。
イスラーム教徒に限らず、アフリカ人は信仰心が強い。米国ミシガン大学
のInglehart
教授らが主導して世界五六カ国で行なわれている世界価値観調査
によれば、アフリカには、「宗教が非常に重要である」と思っている人の割
合が極めて高い国が多い(図五)。
調査が行われたサブサハラアフリカ二三个国のうち、一七个国においてこ
セネガル・ムリディズムの聖地トゥーバ
41 イスラーム地域研究ジャーナル Vol. 5(2013.3)
サブサハラアフリカにおけるイスラーム人口と人間開発
の割合が八〇%を超えており、一番宗教心が強いセネガルでは、九五.八%
が「宗教が非常に重要である」と答えている。この割合が三八.九%と一番
低いルワンダでも、「重要である」という回答が五六.九%もあり、あわせる
と九五.八%もの人が宗教が重要だと考えており、アジアやヨーロッパと比
べ、アフリカにおける宗教の重要度が高いことは明らかである。
宗教心が高い人口集団は出生率が高いことは世界各地で認められ
(Kaufm
ann 2010)、またそのことにより今後宗教者が無宗教者にとって代わ
り世界に広がる、という見方がある。アフリカについても、宗教心が高く、
世界のどの地域よりも出生率が高く、人口は増加し続けているので、そのよ
うな見方は正しいかもしれない。
しかし南アフリカ共和国やザンビアなどキリスト教地域を中心に、無宗教
者割合が高い地域もあり、二〇世紀の一〇〇年間で伝統宗教から二大世界宗
教、つまりキリスト教とイスラーム教に転換したサブサハラアフリカは、同
様に速いスピードでこれから世俗化していく可能性もないとはいえない。ま
たすでにサブサハラアフリカでも出生率は低下傾向にある。
サブサハラアフリカにおける宗教の長期的な動向には多様な可能性がある
とはいえるが、短期的にしばらくは、宗教がサブサハラアフリカの人々の生
活に大きく影響を与える状態が続くであろう。そうした中で、イスラーム教
徒の低いHIV感染率から、男性割礼のエイズ予防の効果が認められ、イス
ラーム教徒以外にも男性割礼が薦められるようになったように、宗教から有
益な政策を引き出すこともできよう。またイスラーム教地域に特化した教育
政策を考える必要も出てくるだろう。宗教という切り口を人間開発に取り込
むことは重要であると思われる。
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