アルツハイマー病の分子病態 - panasonic(sporadic alzheimer's...

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はじめに アルツハイマー AD; Alzheimer's diseaseにおける 因を する あり,そ をた っている. 因する をベース する VD; Vascular dementia)を し,そ 200 づきつつある.したがって きるだけ くしか 確に うこ するこ っている.そ らしめるために ADがいか ,しか よう カニズム するかに する ある. AD 態に する を概 する に, にメタ ロバイオロジー から, たち いる 題を し, したい. アルツハイマー病の神経病理学 AD らか する AD FAD; familial Alzheimer's disease1) をベース せずに する AD sporadic Alzheimer's disease)に大 される.ま 医学 42 2):97109, 2003 アルツハイマー病の分子病態 -メタロバイオロジー的視点を含む最近の進歩- 大学大学院医学 要旨:アルツハイマー をた っている をきたす ある. アルツハイマー からアミロイド プレセニリン1 らびに2 いう 変異が されたが,アルツハ イマー める アルツハイマー して これま ころ 患遺 ある.しかし,多角 かつ アプローチによってアルツハ イマー レベルに るま じるこ り, 「アミロイド 」を するデータが いつつある.「アミロイド アミロイド され され Aβらか によって し, する し,アルツハイマー いう ある. アミロイド にすえて,アルツハイマー 態に する する に, アルツハイマー ホット ある遺 れる. また一 メタロバイオロジー しつつ, がアルツ ハイマー 態に ように わるかを じる.さらに,これら データを えた して,Aβワクチン キレート について する. キーワード:アルツハイマー ,アミロイド ,ワクチン キレート 15 7 28 :〒602-8566 梶井 465 大学大学院医学 学(

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Page 1: アルツハイマー病の分子病態 - Panasonic(sporadic Alzheimer's disease)に大別される.ま 松仁会医学誌42(2):97~109, 2003 アルツハイマー病の分子病態

はじめに

アルツハイマー病(AD; Alzheimer's disease)

は高齢者における痴呆の主要な原因を構成する進

行性の神経変性疾患であり,その罹患者数は年々

増加の一途をたどっている.今や,動脈硬化性変

化に起因する梗塞をベースとする血管性痴呆

(VD; Vascular dementia)を凌駕し,その数は日

本全体で200万人に近づきつつある.したがって

その診断をできるだけ早くしかも正確に行うこと

と,有効な予防法や治療法を開発することが急務

となっている.そのことを可能ならしめるために

は,ADがいかなる原因で,しかもどのようなメ

カニズムで発症するかに関する基礎的研究が不可

欠である.

本稿では,ADの病理発生や分子病態に関する

研究の最近の進歩を概説するとともに,特にメタ

ロバイオロジーの視点から,私たちの研究室で取

組んでいる話題を取り上げ紹介し,今後の研究を

展望したい.

アルツハイマー病の神経病理学

ADは,明らかな遺伝的背景を有する家族性AD

(FAD; familial Alzheimer's disease)1)と,明確な

家系をベースとせずに発症する孤発性 A D

(sporadic Alzheimer's disease)に大別される.ま

松仁会医学誌42(2):97~109, 2003

アルツハイマー病の分子病態-メタロバイオロジー的視点を含む最近の進歩-

伏木信次

京都府立医科大学大学院医学研究科分子病態病理学

要旨:アルツハイマー病は近年増加の一途をたどっている痴呆をきたす神経変性疾患である.家族性アルツハイマー病の分子遺伝学的研究からアミロイド前駆体蛋白,プレセニリン1ならびに2という三種類の遺伝子の変異が同定されたが,アルツハイマー病の大部分を占める孤発性アルツハイマー病に関してはこれまでのところ疾患遺伝子は不明である.しかし,多角的かつ実験的なアプローチによってアルツハイマー病の分子病態はかなり詳細なレベルに至るまで論じることが可能になり,今や「アミロイド仮説」を支持するデータが揃いつつある.「アミロイド仮説」とは,アミロイド前駆体蛋白の段階的蛋白分解の結果生成され細胞外に恒常的に放出されるAβが何らかの条件によって不溶化し,細胞外で集積・凝集すると神経細胞を傷害し,アルツハイマー病発症を導くという考え方である.本稿ではアミロイド仮説を中心にすえて,アルツハイマー病の分子病態に関する最新知見を整理するとともに,孤発性アルツハイマー病研究のホットな領域である遺伝的危険因子解析にも触れる.また一方でメタロバイオロジーの最新の研究成果を紹介しつつ,微量金属がアルツハイマー病の病態にどのように関わるかを論じる.さらに,これらのデータを踏まえた今後の治療戦略として,Aβワクチン療法や金属キレート療法について紹介する.

キーワード:アルツハイマー病,アミロイド仮説,微量金属,ワクチン療法,キレート療法

平成15年7月28日受付連絡先:〒602-8566 京都市上京区河原町通広小路上ル

梶井町465京都府立医科大学大学院医学研究科分子病態病理学(伏木信次)

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伏 木 信 次

た発症年齢(65歳を境にして)によって二つに分

けられる.一つは早期発症型AD(EOAD; early-

onset AD)2),もう一つは晩期発症型AD(LOAD;

late-onset AD)である.

ADは,肉眼病理学的に中等度から高度の脳萎

縮によって特徴付けられるが,大脳皮質や海馬の

萎縮を反映して,脳室は種々の程度に拡張する.

脳萎縮をきたす部位は,記憶や言語,認知など,

いわゆる高次機能を司る前頭葉,頭頂葉の連合野

や側頭葉,海馬領域である.

顕微鏡レベルでの病理学的変化として3つ挙げ

ることができる.一つは老人斑(SP; senile plaque),

二つ目は神経原線維変化(NFT; neurofibrillary

tangle),三つ目は神経細胞脱落である.

老人斑(図1)ならびに脳血管壁に出現するア

ミロイドはともにβアミロイド(Aβ; amyloid β, β-

amyloid)が細胞外に沈着したもので,βアミロ

イドはアミロイド前駆体蛋白(APP; amyloid

precursor protein)から蛋白分解を受けて作られ

る.HE染色で老人斑はエオジン好性の斑状構造

物として観察されるのみであるが,Bielschowsky

染色のような鍍銀染色を施すと,古典的老人斑は

芯のアミロイドと周囲の変性神経突起から成って

いることがわかる(図1a,b,c).免疫組織化学では,

芯はアミロイドβ蛋白に対して陽性となり(図

1d),変性神経突起はニューロフィラメント,タ

ウ蛋白(図1e),ユビキチンに対する抗体で反応

陽性を示す.

それに対して神経原線維変化(図2)は主とし

て神経細胞内にみられる変化で,鍍銀染色にて嗜

銀性を示す太い線維束が,細胞核周囲を取り囲む

炎のようにあるいはとぐろを巻くような形で存在

する(図2a,b,c).神経細胞が消失したあとに嗜銀

性構造物のみが観察されることがあり,それらは

ghost tanglesと称する.神経原線維変化は,電子

顕微鏡による観察から二本の対をなす線維がらせ

ん構造を形成している(これをPHF; paired helical

filamentsと呼ぶ)ことが判明していて,らせんの

ピッチは80nm,対をなす線維の最大直径部分は

22nmである.生化学的検索から微小管結合蛋白

98

図1 アルツハイマー病大脳新皮質にみられた老人斑.図1 a.b.c.; 鍍銀染色,d; 抗Aβ抗体による蛍光免疫染色(FITC),e. 抗リン酸化タウ蛋白抗体による免疫組織化学.

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アルツハイマー病の分子病態 99

タウの過剰なリン酸化が生じていることが判明し

ているが,事実リン酸化タウ蛋白に対する抗体を

用いて免疫組織化学を行うと神経原線維変化が明

瞭に染色される(図2d)

アルツハイマー病の分子病態

生理的な条件下でアミロイド前駆体蛋白(APP)

の段階的蛋白分解の結果生成される Aβは恒常的

に細胞外に放出される.このAβが何らかの条件に

よって不溶化し,細胞外で集積・凝集すると神経

細胞を傷害する過程が進行し,ADを発症すると

いう考え方が「アミロイド仮説」3) の中核をなす

(図3).

図4に示すようにAPPは一回膜貫通型の膜蛋白

であり,蛋白分解を受けてAβが生成される上で重

要な切断点はβサイトとγサイトであり,その間に

αサイトが位置する.それぞれの位置で切断する

蛋白分解酵素( β-secretase, γ-secretase, α -

図2 アルツハイマー病大脳新皮質にみられた神経原線維変化.図2 a.b.c.; 鍍銀染色,d; 抗リン酸化タウ蛋白抗体による免疫組織化学.

図3 アミロイド仮説を軸にしたアルツハイマー病の発生病理(文献3に基づいて作成,一部改変)

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伏 木 信 次

secretase)が想定されている.通常APPはα -

secretaseによる分解を受けたのち,可溶性の

APPsαとCTFα(carboxy-terminal fragment,C末端

フラグメント)が作られるが,β-secretaseにより

分解されるとAPPsβとCTFβとなり,その後 , γ-

secretaseによる分解を受けてAβが生成される.

APPの遺伝子変異を有する家系(すべてがFAD

家系ではなく,脳出血と脳アミロイドアンギオパ

チーをきたす家系もこの中に含まれる)の解析か

ら,APP遺伝子変異のもたらす効果は次のように

まとめられる.

1)Aβの産生量全体を増加させる:β-secretase

による切断の増加あるいはα -secretaseによ

る切断の減少により起こる.

2)Aβ1-40とAβ1-42の中,より凝集性が高いとみな

されるAβ1-42を増加させる:AβのC末端外側,

γ-secretase切断部位近傍の変異によりAβ1-42

が増加する.Aβ配列内部に起こった変異で

はAβ凝集性自体が変化する.

FAD家系の解析から発見同定された遺伝子とし

てはA P P以外に,プレセニリン 1(P S E N 1 ;

p r e s e n i l i n - 1) 4 ),プレセニリン2(P S E N 2 ;

presenilin-2)がある.プレセニリンは多数回膜貫

通蛋白で,細胞内ループ部分でendoproteolysisを

受け,その結果生じたN末端フラグメントとC末

端フラグメントが結合しヘテロ2量体を形成,さ

らにnicastrin,Aph-1,Pen-2蛋白などと複合体を

形成することによってγ-secretase活性を発揮する

と想定されている5)(図5).なお,FADで見出さ

れたPS1およびPS2遺伝子変異は,Aβ1-42の産生を

相対的あるいは絶対的に増加させる6).

ところで,ADの二大病理所見とも称すべき神

経原線維変化と老人斑がADの病態形成過程で果

してどのような関係にあるのかに関してはまだ完

100

図5 γ-secretase複合体(Nature 423: 393, 2003より引用)

図4 Aβ生成の経路(遺伝子医学7:14, 2003より引用)図4 BACE, β-site APP cleaving enzyme; ADAM, a disintegrin and metalloprotease;

AICD, βAPP intracellular domain.

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アルツハイマー病の分子病態

全な解答が提出されているわけではない.しかし

ながら,タウ蛋白遺伝子の変異によって発症する,

パーキンソニズムを伴う前頭側頭型痴呆

(Frontotemporal dementia with Parkinsonism)で

は,神経原線維変化が著明であるにもかかわらず

老人斑はみられないこと7),またヒトAPP遺伝子

変異とタウ蛋白遺伝子変異を二重に発現させたト

ランスジェニックマウスでは,タウ蛋白遺伝子の

変異のみを発現させたトランスジェニックマウス

と比べて神経原線維変化がより強く現れたこと8)

は,ADの病理形成過程で,タウ蛋白異常の結果

として出現する神経原線維変化は老人斑を引き起

こす必要条件ではなく,むしろAPPのプロセシン

グ異常としての老人斑が神経原線維変化よりも先

行する病変であることを示唆している9).

他方,孤発性ADではFADと異なり,特定の疾

患責任遺伝子は見出されていないため,環境因子

と遺伝因子の相関という観点からの研究に力が注

がれている.そのような研究の流れの中で遺伝的

危険因子(リスクファクター)として広く認めら

れているものは,アポリポ蛋白E遺伝子(APOE,

これは遺伝子としての表記)のε4アレルである.

現在,更なるAD感受性遺伝子を探索すべく高解

像度のゲノムスクリーニングが進行中である10).

さて,アポリポ蛋白E(apoE; これは蛋白とし

ての表記)はapoA,apoB,apoC,apoD,apoJな

どアポリポ蛋白群の一つであり,その中でapoEは

主として肝細胞で産生され,全身諸臓器へのコレ

ステロールや脂肪酸の運搬に関与している.つま

り,細胞外に排出されたapoE はリポ蛋白と複合

体を形成したのち,細胞表面の apoE 受容体

(LDL受容体,VLDL受容体,LRP受容体)と結合

することによって細胞外の脂質を細胞内へ運び込

む際のリガンドとして機能している.他方で,

apoEは細胞からコレステロールやリン脂質などを

引き抜く作用を有する.このように,apoEは脂質

代謝を制御する重要な分子として位置付けられ

る.

中枢神経系でapoEを産生する細胞は,アストロ

サイトやミクログリアである.これらの細胞から

分泌されたapoEは脳脊髄液中11)のリポ蛋白と結合

し,そののち神経細胞表面に存在するapoE 受容

体を介して神経細胞内に取り込まれる.中枢神経

系損傷後にはアストロサイトにおいてそのmRNA

発現が亢進する12)ことが知られていて,損傷を受

けた細胞膜のリサイクリングやコレステロールな

どの脂質を神経細胞へ輸送する機能をapoE が担

っていると考えられる.その他の機能として,

apoEは抗酸化作用を有しており,のちに述べるア

イソフォーム別の抗酸化作用の強さはE2>E3>

E4と報告されている13).

ヒトAPOE遺伝子は第9染色体長腕(19q13.2)

に位置し,4つのエクソンと3つのイントロンから

構成され,約3.7kbのサイズである.その遺伝子

が産生する蛋白apoEには等電点電気泳動により区

分される3つの主要アイソフォーム,すなわち

apoE2,apoE3,apoE4が存在する.このアイソフ

ォームの違いは112番目と158番目のアミノ酸の置

換に起因する.すなわち,最も多いアイソフォー

ムであるapoE3では112番目がシステイン,158番

目がアルギニンであるのに対し,apoE4では112番

目のシステインがアルギニンに,apoE2では158番

目のアルギニンがシステインにそれぞれ置換され

ている.したがってこれらに対応した遺伝子表記

としてAPOE ε2,APOE ε3,APOE ε4を用いる.

ちなみにAPOE ε1,APOE ε5,APOE ε7という多

型も存在するが極めて稀である.このことを踏ま

えると個々人の遺伝子型としては,次の6つの組

合せがあり得ることになる.APOE ε2/ε2,APOE

ε3/ε3,APOE ε4/ε4,APOE ε2/ε3,APOE ε3/ε4,

APOE ε2/ε4である.これら遺伝子型の出現頻度に

は人種差が認められる.APOE ε2,APOE ε3,

APOE ε4の白人における頻度は,8%,78%,14%で

ある.アポEの対立遺伝子は共優性に発現するの

で,遺伝子型と同様の6種類の表現型が存在する

ことになる.

APOE ε4アレルの頻度が家族性AD患者14)や孤発

性AD患者15)で高いことが報告されているが,こ

のデータは人種を超えて等しくAD患者に認めら

れる傾向である16).またε4の遺伝子数が増加する

ほど,すなわちε4をホモ接合で有するとヘテロ接

合に比べてADの発症年齢が早まり,しかも発症

率が増加することが,家族性17)ならびに孤発性

AD18)何れにおいても報告されている.APOE ε4ア

レルを有しない場合には発症リスクが20%である

が,APOE ε4アレルを2コピー持つ人では90%に上

昇する17).しかし,ε4以外の遺伝子型を持つAD患

者が存在すること,またε4を持っていてもADを

101

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伏 木 信 次

発症しない高齢者が存在することから,ε4の遺伝

子型を持つこと,つまりAPOE ε4はAD発症の直接

的な原因ではなく,強力な遺伝的リスクファクタ

ー(発症危険因子)として理解するのが妥当であ

ろう.ちなみにAPOE ε2アレルを二つもつ人では

AD発症年齢が遅くなると報告されている19).

変異APPトランスジェニックマウスをapoE遺伝

子欠損マウスとかけ合わせると,変異APP トラン

スジェニックマウスで頻出していたアミロイドプ

ラークが著しく減少すること20),ヒトapoEの異な

るアイソフォームを導入した変異APPトランスジ

ェニックマウスではアイソフォーム特異的にアミ

ロイドプラーク(この表現は,ヒトAD脳で見ら

れる老人斑に対応する,動物でのアミロイド沈着

病変に対して用いる)形成やAβレベル,神経原線

維変化への影響がみられたこと21)は,apoEとAβ代

謝の密接な関連性を示している.また痴呆を伴わ

ない高齢者の側頭葉内面の老人斑出現状況を調べ

ると,APOE ε4アレルを有する人では同アレルを

持たない同じ年齢群と比べてAβ陽性老人斑の出現

頻度が高いことがわかり22),このことはAPOE ε4

アレルにAβ沈着を加速させる効果があることを推

察させる.

その他の注目すべき遺伝的危険因子として,エ

ストロゲンレセプターα(ER α)遺伝子多型23),

Methylene tetrahydrofolate reductase(MTHFR)

遺伝子多型24),APOE遺伝子プロモーター多型25-28),

γ-secretase 複合体の構成要素であるnicastrin

(NCSTN)の遺伝子多型29),interleukin-1A 遺伝子

allele2多型30),cell division cycle 2(cdc2または

p34)遺伝子多型31),androgen receptor 遺伝子

CAG repeat多型32),等を挙げることができるが,

その意義を確かなものにするためには,さらに多

数例における解析が待たれる.

現在の時点でADの発生病理仮説をまとめると

図3のようになる2).ところで,Aβのどの分子種が

神経細胞に対する毒性を発揮するのかはかねてよ

り論議の的となっているが,最近注目されている

のは可溶性Aβ oligomerである 33).つまりAβ

monomerや不溶性となったアミロイド線維ではな

く,可溶性Aβ oligomerがAD脳やADトランスジェ

ニックマウスモデルにおいてシナプス伝達の障害

を引き起こすという.実験的にラット海馬に可溶

性Aβ oligomerを注入すると長期増強が抑制された

こと34)がその証拠であり,AD患者でみられる認

知障害の程度が脳内の可溶性Aβ濃度と相関すると

いうデータ35)もそれと矛盾しないように思われ

る.またプロテオミクスの手法を用いてごく初期

のAD患者脳を調べた最近の報告36)によると,Aβ

oligomerのほとんどはAβ1-42でかつアミノ末端側が

短くなったものであり,これら分子種がアミロイ

ド線維形成初期において「種」として機能すると

推察されている.FADでみられるAPP遺伝子変異

を導入したトランスジェニックマウスの海馬スラ

イス培養系を用いた研究37)によると,神経細胞活

動の高低によって培養液中に生成されるAβの量が

変動すること,しかもAβは興奮性シナプス活動を

抑制することが判明した.すなわち,神経活動自

体がβ-secretase活性を調節していること,神経活

動が高まるとAβ産生は亢進するが,産生されすぎ

ると神経活動を抑えることによってAβ産生を抑制

するという,ネガティブフィードバック機構の存

在が示唆されている.

アルツハイマー病の分子病態に基づく新たな治療

さて,ADの分子病態の基盤がAβにあるとすれ

ば,Aβの沈着はいかにすれば防げるのか.目下,

多くのAD研究者はAβを分子標的とした治療法の

開発を目指している.その場合,①Aβの生成を抑

える,②Aβの沈着を防止する,③沈着したAβを

分解する,という三つの相が理論的に想定される

ので,各相に照準を合わせた治療法の開発に世界

中の研究者や企業がしのぎを削っている.その中

で最近,有望なものとして脚光を浴びている治療

法がワクチン療法である.

Aβの除去を目指したワクチン療法とは,Aβを

ワクチンとして接種するものであるが,そもそも

このような着想が得られたのは,トランスジェ

ニックマウスでの実験であった.すなわち,FAD

でみられるAPP 遺伝子変異を導入したトランス

ジェニックマウスをヒト型Aβ1−42で免疫して抗Aβ

抗体を産生させるとアミロイドプラークが消失す

るとともに学習記憶障害が改善したという報告38,39, 40)であった.本法によってAβが除去されるメ

カニズムとしては次の二つが想定されている.①

血液中の抗Aβ抗体の一部が脳内に入りアミロイド

102

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アルツハイマー病の分子病態

プラークにあるAβを認識し結合したのち,脳での

抗原提示細胞であるミクログリアが動員され,ミ

クログリアがアミロイドプラークを貪食する,②

血液中の抗Aβ抗体に脳実質からのAβクリアラン

スを高める作用がある41, 42).

動物実験での上記のような成果を踏まえて,米

国では1999年からヒトでの第I相試験が開始され,

その後第II相試験に入ったが,髄膜脳炎の症状を

示す患者が少数ながら出現したため2002年1月に

は急遽試験中止となった43).その中の死亡者1名

の病理解剖によって得られた脳を検索した報告44)

によれば,脳での細胞性免疫機序が活性化され,

脳炎を発生していた.しかしながらワクチン療法

を受けたAD患者の剖検脳において老人斑が明ら

かに消失していたことから,AD患者に対するワ

クチン療法そのものの有効性はマウスのみならず

ヒトでも確認されたと言えよう.そこで,脳炎の

ような副作用を避けるために現在検討されている

のが,ヒト型抗Aβ抗体による受動免疫療法である.

その方法では,ヒト型抗A β抗体の(F a b ')2

fragment を用いることによって細胞性免疫反応を

抑えることをもくろんでいる.なおADトランス

ジェニックマウスモデルを対象とする実験で抗Aβ

抗体による受動免疫療法が奏効することが報告さ

れている41, 45).

ワクチン以外のA β除去の方法としてはβ -

secretase阻害薬やγ-secretase阻害薬によってAβの

産生を抑えることや,neprilysin46)や非ステロイド

系抗炎症薬(NSAIDs)47)によってAβを分解するこ

とが検討されている.

神経変性疾患の病態と微量金属イオン

近年,脳神経系における微量金属イオンの機能

に光があたるようになりつつある.なかでも亜鉛

イオン,銅イオン,鉄イオンはADで変化をきた

す大脳新皮質領域で高レベルに存在すること,し

かも加齢とともに脳での鉄イオンや銅イオンのレ

ベルが上昇すること47)から,ADの病態を理解す

る上で興味がもたれている.また亜鉛イオンと銅

イオンは神経伝達に際しシナプス小胞から伝達物

質とともに放出され,そののち再びトランスポー

ターの作用によってエネルギー依存的に細胞内に

取り込まれることがわかっている49).

さてAD脳からAβを抽出する際に亜鉛イオンと

銅イオンが同時に精製されてきた50)ことから,Aβ

とこれら金属イオンが結合している可能性が示唆

された.生化学的な解析から,Aβの銅イオンや鉄

イオンへの結合性にはAβ分子種による親和性の差

がみられ,Aβ1-40よりもAβ1-42への親和性が高いこ

とが判明した51).またADでみられる老人斑には,

銅イオン,鉄イオン,亜鉛イオンが共存すること

が組織学的に証明されている52).特筆すべきこと

はAPPが銅イオンならびに亜鉛イオンと結合する

部位を有していることであり,その結合部位の一

つはAβにある.

メタロバイオロジーの最新知見を踏まえて,

AD発症におけるAβと微量金属イオンの関係に関

しては次のような仮説が提唱されている53).①加

齢とともに増加する鉄イオンや銅イオンの細胞内

濃度を低下させるためにAPPならびにAβが過剰に

作られ細胞外に放出されるが,その結果金属イオ

ンとAβの結合が増加する,②金属イオンと結合し

たAβは,酸素とコレステロール,ビタミンC,カ

テコラミンなどの還元剤を基質とする反応を触媒

してH2O2を産生させる50, 54),③H2O2はAβを酸化

させ,Aβの架橋がますます進む55),④シナプス近

傍では亜鉛イオンとAβが結合し,酸化されたAβ

と複合体を形成する,⑤酸化されたAβを貪食する

ためにミクログリアが動員され,その際周囲に大

量のH2O2を撒き散らす,⑥H2O2は細胞内に入り,

細胞内に高レベルに存在する銅イオンや鉄イオン

とFenton反応を起こすことによって,ラジカルの

中で最も細胞傷害性の強い水酸化ラジカルを産生

させ,その結果,核酸,蛋白,脂質が酸化され

る.

ともあれ,Aβは金属イオンとの量比によってそ

の機能が変化すると想定されている.すなわち,

Aβが金属イオンよりもはるかに多く存在する場合

には金属イオンを除去する方向に作用し,結果と

して組織保護に働く55)が,金属イオンがAβよりも

はるかに多く局所に分布する場合にはAβの凝集を

促進し,その結果酸化ストレス亢進,細胞傷害が

導かれることになる.

上に述べたAD発症に金属イオンが関与すると

いう仮説に則って考案された治療法がClioquinol

(CQ)の経口投与である.実験的にCQを ADトラ

ンスジェニックマウスモデルに経口投与するとア

103

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伏 木 信 次

ミロイドプラーク形成が抑制され,しかもマウス

の活動性低下を抑えた57).また実験的パーキンソ

ン病モデルマウスへのCQ投与によって黒質の鉄

濃度が減少し神経細胞死が抑制されたと報告され

ている58).CQはペニシラミンのような通常のキ

レート剤とは異なり疎水性で脳血液関門を容易に

通過するので,全身の鉄イオンレベルを低下させ

ることなく脳内の鉄イオンを減少させるという59).現在米国ではAD患者に対するCQ投与が

Phase I60)からPhase IIの段階に移っている.

ところで私たちの研究室では,ミトコンドリア

脳筋症のようなミトコンドリア遺伝子変異61)の結

果生じる脳の病態にヒントを得て,神経細胞の生

存・機能維持におけるミトコンドリアの役割の重

要性に着目し,ミトコンドリアDNAを破壊・欠失

した細胞を作成する実験に取組んだ62).神経芽腫

細胞株にethidium bromide処理を行うことにより

ミトコンドリアDNA欠失細胞(ρ-0細胞,と呼ぶ)

を複数株樹立することに成功した.これらρ-0細胞

はミトコンドリアDNAを完全に欠失しているこ

と,またH2O2のような酸化ストレスに対して極め

て脆弱で,親株に比し容易に細胞死をきたすこと

を確認した(図6A).しかも注目すべきことに,

ρ-0細胞では親株と比べ細胞内鉄濃度が4倍から5倍

も高く(図7),鉄をキレートする薬剤投与を行う

と親株では酸化ストレスの結果生じる細胞死がキ

レート剤の用量依存的に抑制されるのに対し,ρ-0

細胞の細胞死はキレート剤の用量を増しても全く

抑制されないことが分かった(図6C).鉄以外の

微量金属である,アルミニウム,亜鉛,マンガン,

104

図6 ρ-0細胞(Sρ-0)と親株細胞(SILA)の酸化ストレスに対する反応(著者原図,文献62)図6 A:H2O2添加濃度(横軸)が低くてもρ-0細胞では細胞死を起こす(縦軸は培地中のLDH量)図6 C:鉄イオンのキレート剤DFXを投与すると親株では細胞死が抑制されるが,ρ-0細胞では抑制効果が出現しない

図7 ρ-0細胞(Sρ-0)と親株細胞(SILA) の細胞内鉄濃度(著者原図,文献62)

金属イオン

Cu, Fe, Zn

Cu, Zn欠乏

Cu, Fe

蛋 白

SOD1

α-synuclein

表1 微量金属が蛋白凝集に関与することが推定される神経変性疾患

組 織

大脳新皮質

運動ニューロン

基底核

疾 患

アルツハイマー病

家族性筋萎縮性側索硬化症

パーキンソン病

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アルツハイマー病の分子病態

銅に関しても測定したところ,ρ-0細胞では親株に

比し2倍から6倍程度増加していた(図8A,B).ρ-0

細胞内で生じたこのような金属の上昇は,正常な

ミトコンドリアを有する血小板とρ-0細胞を融合さ

せた“cybrid”では親株にほぼ近いレベルにまで

減少し,酸化ストレスに対する脆弱性も親株と同

様にまで回復した(図8A,B,C)ことから,ミトコ

ンドリアによって細胞内金属イオンレベルが調節

されている可能性が示唆された.私たちは,ミト

コンドリアと酸化ストレスの関連を探ろうとして

このような実験に着手したが,実はそこに微量金

属が関与しているという意外な事実を発見するに

至り,結果としてミトコンドリア,金属イオン,

酸化ストレスという三者が,神経系細胞の生存を

維持する上で緊密に連関していることを示すこと

ができた.ADやパーキンソン病の病態に金属が

関与するという報告が先にも述べたように近年増

加していることを考慮すると,私たちの開発した

培養細胞系から得られたデータは示唆に富むもの

である.ここで微量金属が,病態を特徴付ける蛋

白凝集に関与することが推定されている神経変性

疾患を表1に示す.

おわりに

神経変性疾患とは,あるグループないしある系

統に属する神経細胞が細胞死を起こして脱落する

進行性の疾患をいう.アルツハイマー病,レビー

小体型痴呆,パーキンソン病,ハンチントン病,

筋萎縮性側索硬化症,脊髄小脳変性症など多数の

疾患が神経変性疾患に属している.家族性あるい

は遺伝性の神経変性疾患に関しては,近年の分子

遺伝学的研究の成果として責任遺伝子がほぼ判明

し,それらは当該疾患の診断に積極的に用いられ

るようになっている.しかしながら神経変性疾患

を引き起こす遺伝子が同定されたとしても,その

ことによって当該疾患の病態が直ちに解明される

わけでも,有効な治療法が案出されるわけでもな

い.他方,標的とすべき責任遺伝子そのものが特

定されていない孤発性の神経変性疾患では,遺伝

子の側から病態や治療に迫ることはままならない

という状況にある.

考えてみると,神経変性疾患の病態の共通項は

神経細胞の死にある.神経細胞死に対して何らか

の治療的あるいは予防的介入はできないであろう

か.現在猛烈なスピードで発展している再生医学

の成果は神経変性疾患にも活用できるであろう

か.たとえば幹細胞移植のような形で,脱落した

神経細胞を補充する治療法63)は現実に有効なもの

となるであろうか.

しかし,脳という組織の特性,すなわち神経細

胞が無数の精緻なネットワークを築き上げている

という現実に思いを馳せるとき,神経細胞補充療

法で期待し得る効果は残念ながら限定的なものに

ならざるを得ないように思われる.パーキンソン

病ですでに明らかとなっているように,移植され

105

図8 ρ-0細胞(Sρ-0)と親株細胞(SILA),正常血小板と融合させたρ-0細胞(すなわちcybrid)における細胞内微量金属濃度(A,B),酸化ストレスに対する反応(C)(著者原図,文献62)

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伏 木 信 次

た神経細胞自体は十分機能を発揮しネットワーク

の再現を期待させ得るけれども,失われた神経細

胞ネットワークの中に保持されていたかつての

「記憶」はもはや蘇ることはないと考えられるか

らである.

このような考え方が仮に妥当だとすれば,幹細

胞や神経細胞の補充ではなく,むしろ細胞死の進

行をいかにすれば有効に阻止できるかという研究

に神経変性疾患治療の活路を見出すことが望まし

いように思われるのである.その意味で,微量金

属イオンの動態とその病態,さらにその知見の臨

床応用に関する研究64)は今後ますます重要性を帯

びてくるにちがいない.

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Molecular Pathogenesis in Alzheimer’s Disease, with Special Reference to RecentAdvances in Metallobiology.

Shinji Fushiki

Department of Pathology and Applied NeurobiologyKyoto Prefectural University of Medicine Graduate School of Medical Science

It was first proposed more than 10 years ago that neurodegeneration in Alzheimer's disease (AD) may be causedby deposition of β-amyloid(Aβ) in senile plaques throughout brain tissue. According to the amyloid hypothesis,accumulation of Aβ in the brain is the primary influence driving AD pathogenesis. The rest of the disease process,including formation of neurofibrillary tangles, is assumed to result from an imbalance between Aβ production andAβ clearance. In this review, I have summarized recent progress on AD research with regard to amyloid hypothesis,genetic risk factors, immunotherapy, and metallobiology. Treatment strategies based on Aβ biology as well asmetallobiology are discussed.

Key Words : Alzheimer's disease, Amyloid hypothesis, Matallobiology, Immunotherapy, Treatment with chilate agents