インクルーシブデザイン -...

描く

魅せる創

る

書く

Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 1/36

インクルーシブデザイン～「ために」から「ともに」へ社会を変える方法～

京都大学総合博物館准教授

塩瀬隆之


インクルーシブとは、

巻き込むという意味です



市民・ユーザにとどくはずの情報発信の怪

Ｗｅｂに掲載しただけの注意喚起

届けたはず（つもり）だから読まない方が悪い

ハンカチ落とし型情報発信


市民参加型・ユーザ参加型の誤解

「なにか意見があれば何でも言ってください」

「えーっと」

「うーん」

と怖い顔で言われても．．．


中途半端にしか届かない市民・ユーザの声

「点字ブロックが要るというので付けました」

「身障者トイレが要るというので付けました」

2階にあるのにEVがない！

トイレの目の前に段差が！

歩けるか！迷路か！遠！

たしかにトイレは広！


なぜこうなるか？

・

・

・

それは他人事だから



では疑似体験をすればよいのか？

ところが学校で総合学習の時間に取り入れるも…

•

「車椅子は段差があると大変」「点字ブロックの上の自転車は見えない人に邪魔」という毎年同じ調査報告に終始してしまう

•

アイマスクや車椅子体験を子どもが経験すると，「かわいそう」「たすけなければ」といった感想ばかりになる

•

将来，「自分がなるかも知れない」という脅しは，遠い先の未来すぎてリアリティに欠ける

けっきょくどうすればいいの？

相手の立場にたち，その人の気持ちになるのだ．．．


できるだけ多様なユーザをとりこめるようなデザインならびに実際にユーザを巻き込んだデザインプロセス

1. フィールド調査 2. 気づきの共有 3. アイデアのスケッチ

4. プロトタイピング5. ユーザテスト6. プレゼンテーション

そこでインクルーシブデザインの登場

ユーザ自らが参加するデザインワークショップで，最初から最後まで一緒にデザインプロセスを体験する

2008年7月18日

「傘」

神戸ＷＳ


たとえば「気づき」ーいかに気づくか？

細かい工夫や言葉にしにくい困難を言葉にする

目の見えない人の電子ポット利用場面をみせてもらう


とにかくつくるー手をうごかして考える

アイデアには必ずシーンを対応させるアイデアはすぐ試す

二分脊椎症の人の電子ポット利用場面をみせてもらう

パスタチーズのフタ


なぜデザインが大事か？

悪気があるわけではないけれど．．．

デザインによって人の行為は変わり得る

缶を置きたくなるのは仕方がない…

でもそもそも缶を置けないかたちなら…


「○○さんのために」という姿勢は，＜助ける人－助けられる人＞という構図を暗に仮定してしまう

・・・

それよりも…・・・

「●●さんとともに」という姿勢で，具体的なモノを実際につくってみる



13

インクルーシブな場を継続的に開くために

インクルーシブデザインとは，障害のあ

る人をエキスパートユーザとして概念デ

ザインからインクルード（包括）する，

ロンドン発のデザイン概念です

財団法人たんぽぽの家と京都大学大学院情報学研究科は，ユーザ参

加型デザインワークショップを通じて，障害のある人の社会参加，NPOと

大学との実効的な社学連携のあり方を探っています．

財団法人たんぽぽの家と京都大学大学院情報学研究科は，ユーザ参

加型デザインワークショップを通じて，障害のある人の社会参加，NPOと

大学との実効的な社学連携のあり方を探っています．

視覚障害，聴覚障害，車椅子，片麻痺などいろんな人をデザインに巻き込みます


ワークショップの体系的開催

Date Relative proportions of Participants

Variety of design target

Time

1 9 Dec. 2005 People with cerebral paralysis

/ wheelchair usersElectric Pot 120min

2 28 Feb. 2006 Visually impaired people

/wheelchair users

*CyARM 150min

3 1-3 Mar. 2006 Various type of disabled persons Not Fixed 1020min

4 6-8 Mar. 2006 Various type of disabled persons Not Fixed 1440min

5 29 Jun. 2006 Deaf people Picture Books 180min

6 24-25 Aug.2006 Visually impaired people

/wheelchair usersElectric Pot 720min

7 27-28 Oct.2006 Visually impaired people

/wheelchair usersNavigation systems 720min

Deaf people

Visually impaired people

Wheelchair users/ the physical disabled

Electric potTeeth brush

Navigation system

視覚障害，聴覚障害，肢体障害，いろいろな障害のある方と，家電製品から情報システムサービスまで多様なアイテムについて

網羅的に実施

Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 15/362009/6/1015

２００５年12月からの活動報告： 48回のインクルーシブデザインWS実践

WS-I：◆日時：2005年12月9日

14:00～16:00（120分）◆参加者：10名（うち障害のある人４、学生１）◆製品：電気ポット

WS-I：◆日時：2005年12月9日

14:00～16:00（120分）◆参加者：10名（うち障害のある人４、学生１）◆製品：電気ポット

WS-II：

◆日時：2006年2月28日

10:00～12:30（150分）

◆参加者：11名（うち障害のある人５、学生２）

◆製品：サイアーム

WS-II：◆日時：2006年2月28日

10:00～12:30（150分）◆参加者：11名（うち障害のある人５、学生２）◆製品：サイアーム

WS-III：

◆日時：2006年3月1～3日

10:00～17:00（1020分）

◆参加者：26名（うち障害のある人4、学生17）

◆製品：未定

WS-III：◆日時：2006年3月1～3日

10:00～17:00（1020分）◆参加者：26名（うち障害のある人4、学生17）◆製品：未定

WS-IV：

◆日時：2006年3月16,17日

10:00～17:00（360分）


◆製品：博物館サービス

WS-IV：◆日時：2006年3月16,17日

10:00～17:00（360分）◆参加者：35名（うち障害のある人2、学生26）◆製品：博物館サービス

たんぽぽの家，九州大学ユーザサイエンス機構と協力開催

WS-V：

◆日時：2006年6月29日

18:00～21:30（210分）

◆参加者：11名（うち障害のある人５、学生２）

◆製品：オノマトペ絵本

WS-V：◆日時：2006年6月29日

18:00～21:30（210分）◆参加者：11名（うち障害のある人５、学生２）◆製品：オノマトペ絵本

WS-VI：

◆日時：2006年8月24～25日

10:00～17:00（360分）


◆製品：電気ポット

WS-VI：◆日時：2006年8月24～25日

10:00～17:00（360分）◆参加者：35名（うち障害のある人2、学生26）◆製品：電気ポット

WS-VII：

◆日時：2006年10月7～28日

10:00～18:00（840分）


◆製品：情報ナビゲーション

WS-VII：◆日時：2006年10月7～28日

10:00～18:00（840分）◆参加者：21名（うち障害のある人4、学生17）◆製品：情報ナビゲーション

WS-VIII：

◆日時：2006年10月～2007年2月


◆製品：幸せのデザイン

WS-VIII：◆日時：2006年10月～2007年2月◆参加者：183名（うち障害のある人3、学生20）◆製品：幸せのデザイン

ほかIAUD48時間Design Challengeなど

WSの開催支援

2件



事例１）

トゥースキャンディー片手でも使えるハミガキ粉

2006年3月第3回京大ワークショップチームベロ

▲▲さんがハミガキ粉をつけにく

そうにしていた場面に着目


情報システムデザイン関連事例－サイアーム（はこだて未来大）

日時：2006年2月28日

10:00～12:30（150分）◆場所：たんぽぽの家アートセンターHANA2F会議室（25㎡程度）◆参加者：１１（ファシリテータ１、障害のある人５、学生２、社会人３）◆ファシリテータ：西谷光一(京都大学学生/WS-I参加者)◆内容：はこだて未来大学の岡本誠教授らが開発した「サイアーム」

と呼ばれる視覚障害のある人の支援装置を題材にした。赤外線で

得た対象物体までの距離をワイヤーリールのテンションに置き換え

る装置で、遠隔にある物体のおおよその形状を把握できる未来志

向のシステムがどのように応用展開できるかを議論した。


「ために」から「ともに」へ．みんなの思

いをひとつにして届けます．

魅せる

④

実物大の模型をつくることで，みん

なのアイデアを“かたち”にします．

創

る

③

描く

大学生のお兄さん，お姉さんと一緒に

アイデアを魅力的なイラストにします．

②

2006年11月

京都市立御所南小学校での実践

障害のある方と話をして，気づい

たことをフセンに書きとめます．

書く

①


小学６年生たちのとりくみ


「時のなんちゃら？」「なんちゃらの灯？」

京都駅の“中央”はどこ？

見えない人

車イスの人でも待ち合わせしやすい場所は誰にとっても待ち合わせしやすい

見えない人

車イスの人でも待ち合わせしやすい場所は誰にとっても待ち合わせしやすい

京都駅「待ち合わせ」ワークショップ


出来上がった作品は，他の班の人に向けてプレゼンテーションを行います

京都駅構内の様々な情報の提示の仕方について，参加者みんなで考えました

「待ち合わせ」をいかにデザインするか


看護師やリハビリ士らがもつノウハウの共有ＷＳ

共有可能なことばをみつけるためのデザインワークショップ

• テーマに関する気づきを付箋に書き出す

• 付箋の整理からすぐにアイデアを描く

• アイデアはクイック＆ダーティで創る

共創的アノテーションによるリハビリ動画像の共有システム


ユニバーサルとインクルーシブは何が違う？

•

みんなにつかいやすいデザイン

–

結果として誰もが使い難いことがある

•

最適解が唯一つ存在するという思い込み

–

人の多様さは想像を絶する

個からはじまり、いつでも個に立ち戻ることのできるユニバーサルデザインといえる


「みんなのために」：全席優先座席の後退

なぜこのとりくみは持続できなかったか？

「すべての人のために」は、大儀として重要であるが、「誰のために」かが分からない


ユニバーサルもインクルーシブも皆に優しく

麻痺の残る人，高齢者にとってもタレ袋の開封の手間が省かれた容器

この恩恵に浴する人は計り知れないこの恩恵に浴する人は計り知れない


企業を巻き込む接点を探る

社員教育

CSR（企業の社会的責任）商品開発

関心をもつ様々な理由のすべてに門戸を開く体制が必要


商品開発WSにおける秘密保持について

ブレーンストーミングの中でアイデアがうまれていく場合の知的財産権の放棄について


ともにみるについてかんがえてみよう



見えない人と街並みを触るワークショップ

情報保障ロボットビジョンをもちいてデジカメ画像を立体コピー用に処理

2007年11月11日（日）

於

京大構内

見えない人と街並みに触れる


見えない人と顕微鏡写真に触れる

天体と同じように顕微鏡の世界にも触れることは難しい．

「ミドリムシはどんなかたち？」


聞こえない人とともに「音」について話す

•手話通訳

•ノートテイク

•PCテイク

擬音語，擬態語などのオノマトペは，聴覚障害の方とも共有できます


情報保障って何？

ノートテイク

•

視覚障害に点字，聴覚障害に手話または文字を準備すれば事足りると考えるのは早計

•

情報保障予算が全体を圧迫して事業そのものがたちゆかないことは本末転倒で，ユーザも望まない

PCテイク(スクリーン)

視覚障害者のとなりで状況を説明する代読者，聴覚障害者に筆記やPCで文字化するノートテイカーがWSへの参加をサポート

ただしPCテイク（ノートPC）


聴覚障害ユーザとフィールドワークして得た気づき

シーン気づき

駅までのア

プローチ道の端を歩く．後ろからの車の音が聞こえない

ので一方通行が怖い．車両が対面する一

方通行は嬉しい．

銀行のATM 休日は人が少なく，トラブルが怖いので不安．

インターフォンが使えない．

駅・電車遮断機が頭にぶつかったことがある．目的の駅

かどうか案内が分からないので居眠りでき

ない．

観光案内所地図をもらうのみで話しかけない．外国では逆

に筆談で聞ける．

和菓子屋焼きたてなど，生の情報を知ることができない．

値切ったり，交渉はしない．

観光地マンホールや看板のサインを人一倍早く発見．

観光案内処マークに関心．

デパート店員が遠巻きに距離をとり話しかけてこない．

話し始めるとジェスチャ，口パクを駆使する

など店員も積極的．


徹底した情報保障が「ともに」を実現する

雑談もすべて拾うほど徹底した情報保障で，ユーザ自身がWSに貢献してい

る実感をもってもらえる．

ユーザ自身が積極的にアイデアをだしてくれるなど，ワークショップへの参加の仕方がガラリと変わる

•見えない人/見えにくい人に「これ」「それ」は分からない

•聞こえない人/聞こえにくい人は発言者を特定しにくい

ものづくりをするなかで，たまたま隣にいる状況が理想


「ために」から「ともに」へ

ぜひ皆さんも

それがインクルーシブデザインです


インクルーシブデザイン -...

Documents