ウシラクトペルオキシダーゼの in vitroでの細胞傷害...
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ウシラクトペルオキシダーゼの in vitroでの細胞傷害防止効果について
誌名誌名 ミルクサイエンス = Milk science
ISSNISSN 13430289
巻/号巻/号 601
掲載ページ掲載ページ p. 1-6
発行年月発行年月 2011年4月
農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat
Milk Science VoL 60. No. 12011
E霊童薗
ウシラクトペルオキシダーゼの invitroでの細胞傷害防止効果について
石川稿大郎1.2・田仲哲也1.3.島崎敬一1.*
(1北海道大学大学院農学研究科,札幌市北区, 060-8589)
。王子製紙制研究開発木部開発研究所,東京都江東区, 135-8558)
(3鹿児島大学農学部獣医学科,鹿児島市郡元,890-8580)
Inhibition effects of bovine lactoperoxidase on cellular damage by chemicals in vitro
Ishikawa Koutaroul.2, Tanaka Tetsuya1.3 ancl Kei-ichi Shimazaki1
(lGracluat巴Schoolof Agricultur巴, Hokkaiclo University, Sapporo 060-8589)
(2Aclvanc巴clTechnology Laboratories, Research & Development Division, Oji Paper Co., Ltcl町 Tokyo135-8558)
(3Gracluat巴 Schoolof Agriculture, Kagoshima Univ巴rsity,Kagoshima 890-8580)
Abstract
Lactoperoxidase system is a w巴ll-knownantibacterial activity of milk巴nzyme,lactop巴roxidase(E.C. 1.11.1.7). We
have investigated another possibility of lactoperoxidase activity utilization. 1n this report we attempted if lactoperoxidase
activity prevent the induction of cytopathic activity against Caco-2 cells in the presence of some chemicals such as
naphthoquinone derivatives. Th巴yare l,4-naphthoquinone potassium sulfonate, 2,3-dichloro-5,8-dihydroxy-1,4
anphthoquinone and 2-m巴thyl-1,4-naphthoquinone.It was obs巴rvedthat the addition of lactoperoxid呂S巴oncell culture
was eifective to prevent cellular damages by chemicals as estimated by the methods of microscopic obs巴rvationof cell
denaturation, cell viability test, det巴ctionof poly-(ADP-ribose)-polymerase by immunoblotting and detection of DNA
fragm巴ntation.
緒言
ラク卜ペルオキシダーゼは牛乳中に見出される酵素の
一つであり,その酸化還元活性を利用した抗菌作用は,
ラクトペlレオキシダーゼシステムとして広く知られてい
る。これは過酸化水素とチオシアン酸イオン (SCN-)
からラクトペルオキシダーゼがハイポチオシアン酸イオ
ン (OSCN一)を生成し,殺菌作用を発揮するけもので
ある。その他にも,乳酪菌の陸生成を抑制する効果2),
抗炎症作用玖 大腸炎抑制作用久 抗ウイルス作用5)な
どが報告されている。ラクトペlレオキシダーゼの酵素反
応は他の化学物質にも適用できると考え,細胞傷害を誘
発することが知られている化学物質の作用を抑制する可
能性について検討した。すなわち,各種細胞に対して酸
*連絡者島崎敬一(しまざき けいいち)干060-8558 北i毎道札幌市北区 北海道大学大学院農学研究科, Tel & Fax 011-885-7365, E-mail: [email protected] 2010年 7月30日受付
2011年 1月 91'1 受理
化的ストレスを与え,アポ卜ーシスを誘発することが知
られているナフトキノン誘導体(5)の,培養細胞に与える
影響をラクトペlレオキシターゼ添加で回止できるかどう
かを調べた。対象としたのは1.4ナフトキノンスルホ
ン酸カリウム (NA),2,3ジクロロ 5,8ジヒドロキシ-
1,4-ナブトキノン (DDN),2-メチlレ-1,4ーナフトキノ
ン (MEN)である。一般にキノン化合物は高等植物,
菌類,細菌類および動物界を通して自然界に広く存在し
ているが, 一方で健康にとって好ましくない環境汚染物
質として大気中の微粒子,タバコの煙,ディーゼjレ排気
に|コなど広範囲に含まれている。本研究では,細胞生存
率,細胞形態,ポリ (ADP リボース)ポリメラーゼ
(PARP)の検出を主に行い,これら化学物質とラクト
ペルオキシダーゼの Caco-2細胞への影響を調べた。
材料および方法
酵素および試薬類
ウシラクトベjレオキシダーゼは TatuaCo-operative
2
Dairy Company Ltd. (New Zealand)製造のものを,
CM-Toyopearl 650Mを用いた陽イオン交換クロマトグ
ラフィーによってさらに精製して用いた。 1,4ーナフトキ
ノンスルホン酸カリウム (NA)は関東化学制, 2,3ージ
クロロ 5,8ジヒドロキシ-1,4ーナフトキノン(DDN)
は CALBIOCHEM(Darmstadt), 2 メチル-1,4ーナフ
トキノン (MEN)は SIGMAChemicalsのものを使用
した。 CellCounting Kit-8は同仁化学側から購入した。
Caco-2細胞の培養
Caco-2細胞は, Lグルタミンを含む Dulbecco'smo-
dified Eagl巴medium (DMEM, GIBCO-BRL, Grand Is-
land, N., Y.)培地に10%牛胎仔血清(DifcoLaborato-
ries, Detroit, MI), 100 U /mlペニシリン(明治製菓粉)
および lμg/mlストレプトマイシン(明治製薬附)を
添加し漏過滅菌したものを使用し, 370
C, 5% CO2存花
下で培養を行った。本実験では継代数55~77の細胞を
使用した。
細胞生存率の測定
細胞生存率の測定は,細胞内脱水素酵素の活性を指標
に測定する CellCounting Kit-8を用いる方法と,培養
プレートへの接着能を測定するクリスタlレバイオレッ卜
法によって行った。前者の方法は, Caco-2細胞を96穴
プレートで10日間培養した後,各穴のJ者養液を除去 し
てリン酸緩衝化生理食J益水 (PBS)で 31宣l洗浄を行い,
0.001-10 mg / mlの濃度に調製したラクトペルオキシ
ダーゼ溶液およびナフトキノン誘導体溶液をそれぞれ各
穴に加えて穏かに撹枠し, 一定時間培養した。培養後,
各穴に CellCounting Kit-8溶液を10μlずつ添加し,さ
らに 1時間培養した後,マイクロプレートリーダーを
用いて450nmにおける吸光度を測定した。クリスタノレ
バイオレット法では,上記と同様の処理をした Caco-2
細胞に, 0.01%クリスタルバイオレット溶液を100μlず
つ添加し,さらに 1時間培養した。次いでクリスタル
バイオレット溶液を捨て,細胞のないブランクの穴が透
明になるまで,水で各穴を洗浄した。その後プレートを
乾燥させ,各穴に0.5%SDS溶液を100μlずつ添加し,
残存する細胞を溶解することによって色素を遊離させ,
マイクロプレートリーダーを用いて600nmにおける吸
光度を測定した。プレートには生細胞のみが残存するこ
とから,吸光度が高いほど残存した細胞が多いこととな
る。
顕微鏡による細胞の形態観察
カパースリップを敷いた24穴ブPレートに Caco-2細胞
を4x 104 cell/穴の密度になるように播種し,3rc, 5
%C02存在下で培養した。各処理を施した細胞の入っ
第60巻
た穴を PBSでよく洗った後,各穴から細胞が付着して
いるカパースリップを取り出し,風乾した後lこ100%メ
タノールで固定した。これをギムザ染色液で10分間染
色後,水で洗浄し完全に風乾させたカパースリップをマ
ウントクイック(大道産業側)でスライドグラスに包埋
し,油浸用対物レンズで倍率l.000倍で検鏡し,デジタ
ルカメラ (NikonDS-5M-Ll)を用いて撮影した。
ポリー(ADP-リボース)ーポリメラーゼ (PARP)の検出
12穴プレートで10日間培養した Caco-2細胞に,ラク
卜ペルオキシダーゼ裕液およびナフトキノン誘導体液液
をそれぞれ加え穏かに撹枠し ,3rcで一定時間培養し
た細胞を超音波処理し,得られた細胞内容物を SDS電
気泳動で分離した。さらにクリアプロット P膜(アトー
制)へ転写し, 5%スキムミルク/0.1%Twe巴n20/PBS
でブロッキングした後,抗 PARPウサギポリクローナ
lレ抗体 (UpstateBiotechnology, NY) に反応させた。
余分な抗体を洗浄した後,この!院をペlレオキシダーゼ
(HRP)標識ヤギ抗ウサギ抗体(和光純薬鮒)と反応さ
せ, ECLキット (AmershamBiosci巴nce) を用いて
PARPおよびそのフラグメン卜を検出した。
DNA断片化の検出
上に述べたと同じ方法で,まず Caco-2組i胞にナフト
キノン誘導体溶液を加え培養した。 培養と清中lこ浮遊し
ている細胞を回収,溶解(10mM Tris-HC1, 10 m M
EDTA, 0.5% TX-100を使用)後,遠心分離操作により
上清を回収し, RNase Aおよびプロテイナーゼ Kで処
理した。これにフェノ-)レクロロホルムを添加・撹枠
後,遠心分離操作によって得た上清からイソプロパノ-
lレで沈殿させた DNAをTris-EDTA緩衝液 (pH8.0,
以下 TE)に溶解し, 2%アガロースケソレを用いて電気
泳動を行った。泳動終了後のアガロースゲルはエチジウ
ムブロマイド溶液に約 5分間浸し, トランスイルミ
ネーターで観察した。
結果
細胞生存率の比較
Caco-2細胞に対するナフトキノン誘導体の細胞毒性
効果およびラクトペjレオキシダーゼの影響を,まず細胞
生存率を 2つの方法で観察することによって比較した
(Fig 目 1~3)o
MENを10,30,60μMの濃度で Caco-2細胞培養液に
添加した場合の生存率を CellCounting Kit-8を用いて
測定した場合, 24時間後でそれぞれ89,74,17%であり,
1 mg/mlラクトペlレオキシダーゼを同時添加した場合
の生存率は94,87,62%であった (Fig.1A)。また, 72
第 l号
MEN
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Fig. 1 Effects of lactoperoxidase addition on the ce.1I viability of Caco-2 cells 川 thepresence 01 MEN observed by cell counting kit-8 (A) and crystal violet method (B) at 24 hours.
l時間後の生存率はそれぞれ85,66,19%であったが, 1
mg/mlラク トペルオキシダーゼを同時添加することに
より生存率はそれぞれ91,90,60%とさらに高くなっ
た。クリスタ Jレバイオ レット法による比較でも, Fig.
lBに示すようにラクトペル;;aキシダーゼ添加効果は24
1時間でほぼ同様の傾向を示した。
Aを100,250および500μMの濃度で添加した場合,
Cell Counting Kit-8を用いて測定した生存率は24時間
後でそれぞれ88,55,17%であり, 1 mg/mlラクト ベJレ
オキシダーゼを同時添加した場合の生存率は97,96, 59
%とやはり高い値を示 した (Fig.2A)。また, 72時間
後の生存率はそれぞれ86,39,2%と24時間曝露よりも
(s:い値を示したが,これに lmg/mlラク卜ベ/レオキシ
ダーゼを同Il!i添加すると生存率はそれぞれ97,44,4%と
なった。24時間曝露の場合はラクトペルオキγダーセ.
が効果酌に NAの細胞傷害性スト レスを緩和している
が, 72時間爆蕗にはその傾向が見 られなかった。ま
た,クリスタ ルバイオ レット法による24時間後での結
果も Fig.2B l'こ示すようにほぼ同様の傾向を示した。
DDNを10,50. 100μMの濃度で添加した場合, Cell
Counting Kit-8を用いて測定した24時間後の生存率は
それぞれ98,95, 899ずであり, 1 mg/mlラク卜ペルオキ
シダーゼを同時添加した場合の生存率は99,99,98%で
あった (Fig.3A) 0 また, 72時間後の生存率はそれぞ
れ91,82,27%であったが,ラク トペJレオキシダーゼを
同時添加することによ って生存率はそれぞれ97,93, 52
%とやや高 くなった。また,クリスタルバイオレット法
による24時間後の結果も Fig.3Bに示すようにほぼ同様
の傾向を示した。
3
NA
A -,.
B
100
開
曲
胡
(JCb=一。偲一〉
=s
10
。5川 IIwJ
Fig. 2 Effects of lactoperoxidase addition on the cell viability of Caco-2 cells in the pres白nce01 NA observed by cell cou円tingkit-B (A)ヨ円dcrystaトviolet method (B) at 24 hours.
DDN
'2' A 自
10
au
nu
AU
8
6
4
(JCht}一且同一三一宮
20
'--J主o c:ontrol control 50" M 100μM
DDN D日付
回 control図 no-lPO ロ0.1mg LPD同 Slm自LPOlml
Fig. 3 Effects of lactoperoxidase addition on the cell viability 01 Caco-2 cells in the prese円ceof DDN observed by cell cou円tingkil-8 (A)呂円dcrystal-violet method (B) at 24 hours
Caco-2細胞の形態変化
MENi容液を添加した Caco-Z細胞は, 明らかにプ
レー トへの接着能を失 っていた。そ こで,未処理の
Caco-2細抱と60μMMEN溶液に24時間曝露した細胞
の形態を光学顕微鏡にて比較した ところ,僅かではある
が細胞が縮小しており ,細胞間隙も大きくなっている様
子が観察された (Fig.4)。また, 60μMMENと1mg
/mlラクトぺJレオキシダ←ゼ稽液を細胞溶液に向時に添
加した場合,プレ トへの接着能は保持しており,コン
トローjレの細胞と比較しでも変化は見られなかった。こ
のことは, MEN添加により Caco2細胞がアポ卜ーシ
スを起こしていることが推察された。
PARPの挙動
Caco-2細胞培養液にナフト キノン誘導体溶液および
4 第60巻
A B C
Fig. 4 Microscopic observation of Caco-2 cells
(A) The c巴11shap巴 withoutany additives
(B) The cell shape with 60μM MEN after 24 hours
(C) The c巴11shape with 60μM MEN and 1 mg/ml lactop巴roxidaseafter 24 hours
116 kDa
A
123456789
一ー・院
B
o 4 4.5 5 5.5 6 (h)
Fig. 5 PARP appearance (A) and its time-dependent
changes (8) observed by SDS-polyacrylamide
gel electrophoresis in the presence or absence of
MEN and lactoperoxidase
Arrow means PARP band (116 kDa). Each lane
means as follows. Lane 1, cells incubated in
DMEM (medium only as a control) for 6 hours;
lane 2, incubat巴dwith 60μM MEN for 3 hours;
lane 3, incubated with 60μM MEN for 6 hours;
lane 4, incubated with 1 mg/ml lactoperoxidase
for 3 hours; lan巴 5,incubated with 1 mg/mllac-
toperoxidase for 6 hours; lan日 6,incubated with
60μM MEN and 0.1 mg/mllactoperoxidase for 3
hours; lane 7, incubated with 60μM MEN and
0.1 mg/ml lactoperoxidase for 6 hours; lane 8,
l円cubatedwith 1 mg/ml lactoperoxidase for 6
hours; lan巴 9,incubated with 60μM MEN and 1
mg/ml lactoperoxidase for 6 hours
Anti-PARP polyclonal antibody (1 1,000 dilu-
tlO円)was used as a primary antibody solutiona
and horse radish peroxidase (HRP)-Iab巴11巴danti-
rabbit IgG antibody (goat, 1 : 10,000 dilution)
was used as a seco円daryantibody solution.
ラクトペルオキシダーゼ溶液を添加して一定時間培養し
た後,回収した細胞の破砕物中に含まれる PARPを,
抗PARPポリクローナJレ抗体を用いたウエスタンプロ
ット法で観察した。 PARPはアポト ーシスの際にカス
パーゼ 3によって特異的に切断され断片化することが
知られており i.8) 本実験でのナフ トキノン誘導体添加
における細胞崩壊の指標となるものと期待したためであ
2 3 4 5 6
116 kDa -ーーー..圃帽.ザ岨肩、
(PARP)
Fig. 6 Time-dependent changes of PARP appearance
with additives observed by SDS-polyacrylamide
白巴1electrophoresis in the presence or absence of
l¥IA and lactoperoxidase
Incubation time was 24 hours and the arrow
means PARP band (116 kDa). Each lane means
as follows. lane 1, control; lane 2, incubated
with 1 mg/ml lactoperoxidase; lan巴 3,incubated
with 50μM NA; lan巴 4,incubated with 100μM
NA; lan巴 5,incubated with 50μM NA and 1 mg/
ml lactoperoxidase; lane 6, incubated with 100
μM NA and 1 mg/ml lactoperoxidase. Other ex-
perimental conditions are the 5ame a5 in Fig. 5
る。その結果, Fig. 5A fこ示 したようコントロール
(レーン 1) とラ クトベjレオキシダーゼ添加群および60
μMMEN溶液に 3時間l暴露した細胞に PARPに相当す
るバンドが検出された(レーン 2,4~9 )。しかし, 60
μMMEN溶液に 6時間曝露した細胞において PARPは
検出されなくなった(レーン 3)。また, Caco-2細胞培
養液に60μMMEN溶液を添加し, 30分毎に細胞を回収
して PARPに相当するバン ドの挙動を観察したところ,
MEN溶液添加l後5.5時間で PARPの分解が開始され,6
時間では完全に消失することが認められた。一方, NA
および DDNの場合は (Fig.6, 7),コントローlレ(レー
ン 1)およびラクトペlレオキシダーセー添加系(レーン 2)
において, 116 kDa付近に PARPに相当するバンド が
検出され,またこのバンドはラクトベJレオキシダーゼ無
第 l号
2 3 4 5 6
116 kDa -ーー・.-ー』ーー(PARP) ."令園、
Fig. 7 Tim巴 d巴pendentchanges of PARP appearanc巴
with additives observed by SDS-polyacrylamide
gel巴lectrophoresisin th巴 pr巴senceor abs巴nc巴of
DDN and lactoperoxidase
3000
1500
500
100
bp
Incubation time was 24 hours and the arrow
means PARP band (116 kDa)白 Eachlan巴 means
as follows. lane 1, control; lane 2, incubated
with 1 mg/mllactoperoxidase; lane 3, incubated
with 250μM DDN; lane 4, incubated with 500
μM DDN; lane 5, incubated with 250μM DDN
and 1 mg/ml lactoperoxidase; lane 6, incubated
with 500μM DDN and 1 mg/mllactopero)ωase
Other experim巴ntalconditions are th巴sam巴 asIn
Fig. 5
町lk 1 2 3 4 5 6
Fig. 8 DNA fragmentation patter円sof Caco-2 c巴Ilsin
the presence of additives observed by agarose
gel el日ctrophoresis.
Incubation time was 24 hours. La 円巴 mk,100 bp
ladder marker (MBI Fermenter); la円巴 1,incubat
ed with 500μM NA; lane 2, incubated with 100
μM DDN; lane 3, incubated with 60μM MEN;
lane 4, incubated with 500μM NA and 1 mg/ml
lactop巴roxidase;lane 5, incubated with 100μM
DDN and 1 mg/ml lactoperoxidase; lane 6, incu
bated with 60μM MEN and 1 mg/ml lactopeoxi
das巴
添加の系(レーン 3,4)では検出されなかった。
DNAの断片化の観察
NA (500μM), DDN (100 μM),および MEN (60
μM) で24時間曝露した Caco-2細胞の DNAの状態を
観察した (Fig.8)。コントローlレおよびラクトペルオ
キシダーゼ添加した Caco-2細胞では断片化した DNA
5
は見られず(データ省略),ナフトキノン誘導体で処理
した Caco-2細胞から抽出した DNAの電気泳動バンド
には,大きな変化が生じていた(レーン 1~3) 。 一方,
ナフトキノン誘導体添加と同時に 1mg/mlラク卜ペル
オキシダーゼを添加した場合, DNAの傷害は見られ
ず,断片化は見られなかった(レーン 4~6) 。
考察
3種のナフトキノン誘導体(1,4-ナフトキノンースjレ
ホン酸カリウム, 2,3ージクロロ-5,8ジヒドロキシー1,4ー
ナフトキノン, 2 メチル1.4 ナブトキノン)が Caco-2
細胞に対して細胞傷害性ストレスを与えること,さらに
これらの効果をラクトベルオキシダーゼが抑制する可能
性のあることが,細胞生存率の測定および細胞の形態観
察から示唆された。なお,牛乳からラクトペlレオキシ
ダーゼを精製した際に微量爽雑物として混入し易いラク
トフェリンが作用している可能性も考えられた。ラクト
ペルオキシダーゼと同様に塩基性タンパク質であるため
である。そこで,ラクトペルオキシダーゼ添加と同様な
条件でラクトブェリン添加の影響についても調べたが細
胞系への影響は全く観察されなかった(データ省略)。
よって本実験で示された結果は,ラクトペlレオキシダー
ゼの酸化還元酵素としての作用が本質であるといえる。
さらに,ミトコンドリア傷害から誘発されるカスパー
ゼi.S),特にその最終的な反応であるカスパーゼ 3によ
るPARPの特異的切断もナフトキノン誘導体の添加で
観察され,ラクトペjレオキシダーゼ同時添加では観察さ
れなかった。そこでアポトーシス誘導剤として知られて
いる試薬に対する効果も調べてみた。しかし, Caco-2
細胞系に 5種類のアポトーシス誘導斉IJ (100μMアクチ
ノマイシン D.2μMカンプトテシン, 100 μMシクロヘ
キシミド, 10μMデキサメタゾン, 100μMエトポシ
ド)をそれぞれ添加した試験を行ったところ, 1 mg/ml
ラクトペjレオキシダーゼを添加した;場合と生存率の有意
の差は見られなかった(データ省略)。
以上の結果から,ナフトキノン誘導体添加が Caco-2
細胞に何らかの細胞傷害性ストレスを与え,アポ卜ーシ
スを誘導すること,およびこれらの現象はラクトペルオ
キシダーゼの同時添加によって抑制でき,ラクトペルオ
キシダーゼの酸化還元酵素としての作用がこれらナフト
キノン誘導体に何らかの化学的変化を生じさせて無害化
したものと考えられる。しかし,ここで用いた 5種の
アポトーシス誘導剤については,それらの化学構造の違
いあるいは作用様式の違いによってラクトペjレオキシ
ダーゼの酸化還元作用による変化を受け難いのであろう
と推定される。
なお,本実験で用いた条件と生体内における状態とは
6
全く異なるため,実際にラクトベjレオキシダーゼが消化
管内において,このような細胞に対するストレスの回避
に有効に働くとは考えにくい。もし応用を考えるなら
ばF 吸気の浄化マスクなど酵素作用で直接にナフトキノ
ン誘導体を無害化する装置への利用などが考えられる。
要約
ラク卜ベルオキシダーゼの酸化還元活性を利用した抗
菌作用は,ラグトペルオキシダーゼシステムとして広く
知られている。これは過酸化水素とチオシアン酸イオン
(SCN-)からラクトペlレオキシダーゼがハイポチオシ
アン酸イオン (OSCN-)を生成し,殺菌作用を発揮す
るものである。ラク卜ペルオキシダーゼの酵素活性は他
の化学物質に対しても応用できると考え,細胞傷害を誘
発することが知られている化学物質の作用を抑制する可
能性について検討した。すなわち,細胞に対して酸化的
ストレスを与え,アポトーシスを誘発することが知られ
ているナフトキノン誘導体の塙養細胞 (Caco-2) に与
える影響をラクトペルオキシダーゼ添加で阻止できるか
どうかを調べた。対象としたのは 1,4ーナフトキノンース
jレホン酸カリウム, 2,3ージクロロ 5,8ージヒドロキシ-
1,4ナフトキノン, 2ーメチル 1,4ーナフトキノンであ
る。細胞生存率,ポリ (ADPリボース)ーポリメラーゼ
の検出,細胞形態の観察などから,ラクトペlレオキシ
ターーセ。添加の有効性が観察された。
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