スティーブン・ホールの設計手法に関する研究steven holl architects 2004-2008 el...

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スティーブン・ホールの設計手法に関する研究 ー 9 つの住宅作品をもとにー 宇野研究室 4106096 山田 和也 1. 序 1-1. 研究背景 スティーブン・ホール ( 以下 SH) は現在、アメリカを 代表する建築家であり、その建築には独特の形態がある。 SH は設計プロセスにおいてモチーフを使用することは知 られているが、モチーフによって全ての形態が決定して いるわけではない。SH 自身も「複雑な諸要素の多重な関係 がひとつのコンセプトによってまとめあわされるのであ る」と言及している 註 1) 1-2. 既往研究 SH の建築に関しての既往研究として、水彩スケッチに 関する研究 註 2) 、モチーフの応用手法に関する研究 註 3) 、SH の建築の現象学的解釈に関する研究 註 4) はあるが、建築を 決定する上での諸要素の因果関係を研究したものはない。 1-3. 研究目的 本研究の目的は、SH の建築について、SH 自身の考えが 客観的に理解できる作品の説明文 註 5,6) と図面を軸として、 諸要素がどのように関係しているかを明らかにする。 2. 研究対象(表 1 上部) SH の建築を機能別に分類した時に、サンプルが比較的 多い住宅作品、9 作品を対象とする 註 7) 3. 研究方法 3-1. 文献から要素を抽出 各作品の説明文から設計意図として言及されている要 素を抽出する。 3-2. 関係の分類 説明文に記されている要素間の因果関係の数が多かっ たものを各作品において分類し、表を作成する。 3-3. 図面での詳細分析・考察 各作品に対して、写真と図面を図式化したものから分 析・考察を行う。 ▼表 1 研究対象基礎データ・分布・関係表 4. 要素抽出から関係表の作成 4-1. 要素抽出の結果 要素を抽出した結果、《敷地》、《コンセプト・モチーフ》 (以下C.M)、《形態》、《空間構成・動線》、《素材》、《光》、《環 境設備》、《部位》、《建設工程》、《ランドスケープ》、《付 加機能》の 11 個が抽出できた。 4-2. 分布表の作成、分析(表 1 の合計の数字) 作品ごとで抽出要素の記述数を見るために分布表を作 成し、記述数の合計を表した。その結果、 《敷地》 19 箇所、 《素 材》17、《形態》、《空間構成・動線》13となり、以後《C.M》、 《光》、《環境設備》、《部位》、《付加機能》、《ランドスケープ》 と続くことになった。 4-3. 関係表の作成、分析(表 1 の矢印) 分布表に要素間の因果関係を矢印で示す。その結果、 矢印の総数は 41( 重複可 ) であった。そのうち 26/41 が《敷 地》と、 13/41が《C.M》、 2/41が《形態》という結果になった。 以上より、SH の建築は敷地との因果関係が他要素に比べ て強いことが見れた。これは敷地からの情報から、建築 設計の着想を得ていると言える。 5. 分類表の作成(表 2) 4-3で《敷地》と因果関係が見れた《C・M》、《形態》、《空 間構成・動線》、《素材》、《部位》にそれらに対する効果 を分類し、表を作成した。 6. 図面による詳細分析 6-1. 分析方法 9 つ全ての作品で配置図、平面図 註 8) か ら 図 を作成した。 《敷地》は配置図 ( 図 2①) 《C.M》は写真 ( 図 2②)《形態》 は 1 階と 2 階の壁を重ねた図 ( 図 2③) 、《空間構成》は室 構成関係図 (図2④)、 《部位》は写真を用い分析、考察を行っ た。 6-2. 詳細分析・考察 ( 図 1、表 2、表 3) 詳細分析より、《敷地》と因果関係が考えられる要素の 効果を表2 に加えた。また、個別にダイヤグラムを比較 した場合、それぞれの敷地とは因果関係がない共通点 ( タ イプ )(図 1)が見れた。その結果を表3 としてまとめた。 表2 より、大きく分け、 「同化」と「適応」に分けられる。「同 化」とは、敷地に対し表層的に溶け込む効果であり、 「適応」 とは、それに対し機能的に順応するための効果である。 しかし同じ要素への効果でも、敷地との関係の構築方法 には幅があり、それぞれの敷地の情報を様々な観点で得 ていることが見れる。そのため、作品ごとにまったく異 なった印象を受けるものと考えられる。 7 事例について分析・考察 小論では近年の作品で、敷地との因果関係が強いライ ティング・ウィズ・ライトハウスについて論じる。 7-1.外壁と内壁(図2①、②、③) 文献より《敷地》→《コンセプト・モチーフ》→《形態》 「自 由なフォルム」を作っているとわかった。図2①、②より、 外壁では北側で複雑な形態を表している。図 2③より外壁 は 1、2 階で連続だが、内壁は 1、2 階で不連続である。 上下で独立した形態をとり、内壁で「自由なフォルム」を 作っていると見ることができる。また南側を閉じること で敷地に機能的に適応する形態を示している。 7-2. リビングと階段と光 ( 図 2④、⑤) 共通点②、③を示す図 2④より、この住宅の一階は、吹 き抜けのリビングから各部屋へ繋がり、階段もここから 伸びていることから、リビングが空間的中心になってい る。図 2⑤より、トップライトからの光、《素材》の木製 のルーバーが作る光の線が、2 層吹き抜けのリビングに射 文献分析より 図面分析・考察より 脚注:1)参考文献 3 の中で SH の原書の内容を翻訳されたものを要約した。2)参考文献 1。3) 参考文献 2。4)参考文献 3。5)参考文献 4。6)参考文献 5。7)9 作品は SH の設計事務所公式 HP である、『STVEN HOLL ARCHITECTS』 の「HOUSE」の項目にある住宅 13 作品から、 2009 までに竣工されている、かつ平面図が入手できる作品である。8) 参考文献 6。9)作品の写真は「HP」の画像を引用。10)絵画《セブン・イン・エイト》( 作 : ジャクソン・ポロック) の画像は MoMA の HP より画像を引用。アドレスは参考文献 7 を参照。10)図面は参考文献 8。 参考文献 :(1) 強矢大輔 日高單也「モチーフの建築での応用手法についての研究 - スティーブン・ホールの作品を事例として」 (2) 田島栄子「モチーフの建築での応用手法についての研究 - 水彩スケッチ分析を通じて -」日本建築学 会大会学術講演梗概集 ( 九州 )2007 年 8 月 (3)小野育男「スティーブン・ホールにおける建築学的現象」日本建築学会計画系論文集 第 617 号、 201-206、 2007 年 7 月 (4)「ルミノシティ / ポロシティ」, 著 : スティーブン・ホール ,TOTO 出版 , 2006 年 6 月 10 日(5) 「House Black Swan Theory」著 : スティーブン・ホール ,Princeton Architectural Press 2007 (6)HP「STVEN HOLL ARCHITECTS」(http://www.stevenholl.com) (7)HP「MoMA」 (http://www.moma.org/)(8)「 Steven Holl ARCHITECTS 2004-2008 El croquis141」,El Croquis Editorial し込み、光を内部に取り入れる。また、階段を上下する 人の姿を 2 層吹き抜けのリビングから見えるようになっ ている。これらより、リビングは空間の中心だけではなく、 空間演出の中心にもなっていると考えることができる。 7-3.動線と眺望 ( 図 2③、④) 共通点①を示す図2③、④より、1 階に公室、2 階に私室 を配している。階段は吹き抜けの空間を渦を巻くように 上り、最終的に外部のプールに人を帰着させ、敷地の特 徴である大西洋の眺望を与えていることが見れる。 8. 結論 本研究より、明らかになったことは以下の3点である。 1)SH の住宅建築は、建築が建てられる敷地から着想を得 て設計されている。 2)建築が建てられる敷地との因果関係が見られない共通 点 ( タイプ ) が見れた。 3)SH の住宅建築は、共通点とそれぞれの敷地からの情報 をもとに設計されていると考えられるが、取り出す情報、 敷地との関係の構成方法も異なるため、様々な様態を示 すと推測できる。 今後の展開として、住宅建築だけでなく、博物館、集 合住宅などの他の建築作品についても見ていくこと、今 回の対象が全て郊外の建築だったことから、都市部での 敷地の読み取り方、敷地との関係の構築方法などの研究 が可能となると考えられる。 ▲図 2 文献分析からの関係図・図面による分析図 (1 例 ) 註)9、10 関係図 渦巻くように配された ゲストルーム 自由なフォルム 2001-2004 ロングアイランド NY USA 506㎡ 2階 私邸 木造バルーン構法 Writing with Light House ライティング・ウィズ・ライト・ハウス 敷地 規模 階数 プログラム 構造 英名 日本語名 敷地 コンセプト・モチーフ 空間構成・動線 形態 素材 近くにある防砂フェン ス ( 景観 ) 南側が通り、北側が大 西洋 ( 機能 ) 近くにジャクソンポ ロックのアトリエ ( 文化 ) 絵画《セブン・イン・エ イト》 プライベートな南側を 閉じて北側を開く形態 (文化的同化) ( 計画的同化 ) ( 景観的同化 ) 木造バルーン構法 木製のルバー L St K D Ga GB1 GBa1 Te GB3 GBa3 GB2 GBa2 MB MBa Po 1F 2F E ・公室 / 私室を 1 階、2 階で分離 ・En から伸びる階段 ・En から壁・扉がなく L に繋がる ・一筆書の直線的な動線と空間的中 心 L をもつ流動的 ・外壁が連続している部分はある。 ・内部の壁は上下階で一致してない。 ・空間的中心の空間が連続 ・暖炉がある ・方位軸は意味なし ・方位で僅かな形態の変化 ・公道と平行に配したつくり 配置図 1 階壁 2 階壁 連続壁 階段 扉無 扉有 上階 外部 名称 スイス大使館 公邸 タービュラン ハウス プレイナー ハウス ライティング ウィズライト ハウス ネイルコレク ターズハウス リトル テセラクト Yハウス ストレット ハウス マーサスビン ヤードハウス 写真 2001-2006 2001-2005 2002-2005 2001-2004 2001-2004 2001-2001 1997-1999 1989-1991 1984-1988 敷地 ワシントンD.C,USA N・メキシコ,USA アリゾナ,USA ロングアイランド,NY, USA エセックス,USA リネベック,NY,USA キャッツキルズ,NY, USA テキサス,USA マーサスビンヤード, MA,USA 規模( ) 212 83 305 506 110 138 322 690 258 階数 2階 2階 1階 2階 3階 2階 2階 2階 1階 プログラム 大使館公邸 ゲストハウス 私邸 私邸 私邸 私邸 ウィークエンド ハウス 私邸 私邸 構造・構法 コンクリート造 鉄骨造 コンクリート造 木造バルーン構法 木造 木造 鉄骨造 コンクリート造 木造バルーン構法 敷地 ●●● ●● ●●●● ●●● ●●●● 19 コンセプト モチーフ ●● 8 形態 ●● ●●● ●● ●● 13 空間構成 動線 ●● ●● ●●● ●●● 14 素材 ●● ●●● ●● ●● ●● ●●● 17 4 環境設備 3 部位 ●●● 5 建設工程 ●●● 3 ランド スケープ 1 付加機能 3 合計 名称 スイス大使館 公邸 タービュラン ハウス プレイナー ハウス ライティング ウィズライト ハウス ネイルコレク ターズハウス リトル テセラクト Yハウス ストレット ハウス マーサスビン ヤードハウス ①明確なゾーニング ②空間的中心からのアクセス ③空間的中心から伸びる階段 ④一筆書きの動線→形態 ⑤最小限のヴァッファゾーン ▼表 3 詳細分析からの共通点の分布図 私室 公室 G.L 私室 公室 En 明確なゾーニング En 内部 外部 ヴァファゾーンを最小限に して内外を繋げる 空間的中心からのアクセス L G.L 空間的中心からの階段 L 一筆書きの動線→形態 ▲図 1 共通点 地形的同化 ( 地形の形態・起伏 ) 景観的同化 ( 敷地の景観 ) A B 文化的同化 ( 敷地の伝統・敷地で生まれた文化 ) C 気候的適応 ( 雨・風・太陽光 ) D 計画的適応 ( 法規・プライバシー ) E F 概念的同化 ( 方位軸・コンセプト ) 記号 効果 同化 適応 名称 スイス大使館 公邸 タービュラン ハウス プレイナー ハウス ライティングウィズ ライトハウス ネイルコレクターズ ハウス リトル テセラクト Y ハウス ストレット ハウス マーサスビンヤード ハウス コンセプト モチーフ B C D D C 形態 D E E F D・F D A A・A・E A A A・F 空間構成 動線 D D D A 素材 C E B C・E・B B B C・D・(A) 部位 B・B ▼表 2 分類表

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Page 1: スティーブン・ホールの設計手法に関する研究Steven Holl ARCHITECTS 2004-2008 El croquis141」,El Croquis Editorial し込み、光を内部に取り入れる。また、階段を上下する

スティーブン・ホールの設計手法に関する研究ー 9つの住宅作品をもとにー

宇野研究室 4106096  山田 和也

1. 序

1-1. 研究背景

 スティーブン・ホール ( 以下 SH) は現在、アメリカを

代表する建築家であり、その建築には独特の形態がある。

SH は設計プロセスにおいてモチーフを使用することは知

られているが、モチーフによって全ての形態が決定して

いるわけではない。SH 自身も「複雑な諸要素の多重な関係

がひとつのコンセプトによってまとめあわされるのであ

る」と言及している註 1)。

1-2. 既往研究

 SH の建築に関しての既往研究として、水彩スケッチに

関する研究註 2)、モチーフの応用手法に関する研究註 3)、SH

の建築の現象学的解釈に関する研究註 4)はあるが、建築を

決定する上での諸要素の因果関係を研究したものはない。

1-3. 研究目的

 本研究の目的は、SH の建築について、SH 自身の考えが

客観的に理解できる作品の説明文註 5,6)と図面を軸として、

諸要素がどのように関係しているかを明らかにする。

2. 研究対象(表 1上部)

 SH の建築を機能別に分類した時に、サンプルが比較的

多い住宅作品、9作品を対象とする註 7)。

3. 研究方法

3-1. 文献から要素を抽出

 各作品の説明文から設計意図として言及されている要

素を抽出する。

3-2. 関係の分類

 説明文に記されている要素間の因果関係の数が多かっ

たものを各作品において分類し、表を作成する。

3-3. 図面での詳細分析・考察

 各作品に対して、写真と図面を図式化したものから分

析・考察を行う。

 

▼表 1 研究対象基礎データ・分布・関係表

4. 要素抽出から関係表の作成

4-1. 要素抽出の結果 

 要素を抽出した結果、《敷地》、《コンセプト・モチーフ》

(以下 C.M)、《形態》、《空間構成・動線》、《素材》、《光》、《環

境設備》、《部位》、《建設工程》、《ランドスケープ》、《付

加機能》の 11 個が抽出できた。

4-2. 分布表の作成、分析(表 1の合計の数字)

 作品ごとで抽出要素の記述数を見るために分布表を作

成し、記述数の合計を表した。その結果、《敷地》19箇所、《素

材》17、《形態》、《空間構成・動線》13 となり、以後《C.M》、

《光》、《環境設備》、《部位》、《付加機能》、《ランドスケープ》

と続くことになった。

4-3. 関係表の作成、分析(表 1の矢印)

 分布表に要素間の因果関係を矢印で示す。その結果、

矢印の総数は41(重複可)であった。そのうち26/41が《敷

地》と、13/41 が《C.M》、2/41 が《形態》という結果になった。

以上より、SH の建築は敷地との因果関係が他要素に比べ

て強いことが見れた。これは敷地からの情報から、建築

設計の着想を得ていると言える。

5. 分類表の作成(表 2)

 4-3 で《敷地》と因果関係が見れた《C・M》、《形態》、《空

間構成・動線》、《素材》、《部位》にそれらに対する効果

を分類し、表を作成した。

6. 図面による詳細分析

6-1. 分析方法

 9つ全ての作品で配置図、平面図註 8)から図を作成した。

《敷地》は配置図 ( 図 2①)、《C.M》は写真 ( 図 2②)、《形態》

は 1 階と 2 階の壁を重ねた図 ( 図 2③)、《空間構成》は室

構成関係図(図2④)、《部位》は写真を用い分析、考察を行っ

た。

6-2. 詳細分析・考察 (図 1、表 2、表 3)

 詳細分析より、《敷地》と因果関係が考えられる要素の

効果を表 2 に加えた。また、個別にダイヤグラムを比較

した場合、それぞれの敷地とは因果関係がない共通点 (タ

イプ )(図 1)が見れた。その結果を表 3としてまとめた。

表 2より、大きく分け、「同化」と「適応」に分けられる。「同

化」とは、敷地に対し表層的に溶け込む効果であり、「適応」

とは、それに対し機能的に順応するための効果である。

しかし同じ要素への効果でも、敷地との関係の構築方法

には幅があり、それぞれの敷地の情報を様々な観点で得

ていることが見れる。そのため、作品ごとにまったく異

なった印象を受けるものと考えられる。

7 事例について分析・考察

 小論では近年の作品で、敷地との因果関係が強いライ

ティング・ウィズ・ライトハウスについて論じる。

7-1. 外壁と内壁 (図 2①、②、③)

 文献より《敷地》→《コンセプト・モチーフ》→《形態》「自

由なフォルム」を作っているとわかった。図 2①、②より、

外壁では北側で複雑な形態を表している。図 2③より外壁

は 1、2 階で連続だが、内壁は 1、2 階で不連続である。

上下で独立した形態をとり、内壁で「自由なフォルム」を

作っていると見ることができる。また南側を閉じること

で敷地に機能的に適応する形態を示している。

7-2. リビングと階段と光 (図 2④、⑤)

 共通点②、③を示す図 2④より、この住宅の一階は、吹

き抜けのリビングから各部屋へ繋がり、階段もここから

伸びていることから、リビングが空間的中心になってい

る。図 2⑤より、トップライトからの光、《素材》の木製

のルーバーが作る光の線が、2層吹き抜けのリビングに射

文献分析より 図面分析・考察より

脚注:1)参考文献 3 の中で SH の原書の内容を翻訳されたものを要約した。2)参考文献 1。 3) 参考文献 2。4)参考文献 3。5)参考文献 4。6)参考文献 5。7)9 作品は SH の設計事務所公式 HP である、『STVEN HOLL ARCHITECTS』の「HOUSE」の項目にある住宅 13 作品から、 2009 までに竣工されている、かつ平面図が入手できる作品である。8) 参考文献 6。 9)作品の写真は「HP」の画像を引用。10)絵画《セブン・イン・エイト》( 作 : ジャクソン・ポロック)の画像は MoMA の HP より画像を引用。アドレスは参考文献 7を参照。10)図面は参考文献 8。参考文献 :(1) 強矢大輔 日高單也「モチーフの建築での応用手法についての研究 - スティーブン・ホールの作品を事例として」 (2) 田島栄子「モチーフの建築での応用手法についての研究 - 水彩スケッチ分析を通じて -」日本建築学会大会学術講演梗概集(九州)2007年8月(3)小野育男「スティーブン・ホールにおける建築学的現象」日本建築学会計画系論文集 第 617号、201-206、2007年7月(4)「ルミノシティ/ポロシティ」,著:スティーブン・ホール,TOTO出版,2006 年 6 月 10 日 (5)「House Black Swan Theory」著 : スティーブン・ホール ,Princeton Architectural Press 2007 年 (6)HP「STVEN HOLL ARCHITECTS」(http://www.stevenholl.com) (7)HP「MoMA」(http://www.moma.org/) (8)「Steven Holl ARCHITECTS 2004-2008 El croquis141」,El Croquis Editorial

し込み、光を内部に取り入れる。また、階段を上下する

人の姿を 2 層吹き抜けのリビングから見えるようになっ

ている。これらより、リビングは空間の中心だけではなく、

空間演出の中心にもなっていると考えることができる。

7-3.動線と眺望 (図 2③、④)

 共通点①を示す図 2③、④より、1 階に公室、2 階に私室

を配している。階段は吹き抜けの空間を渦を巻くように

上り、最終的に外部のプールに人を帰着させ、敷地の特

徴である大西洋の眺望を与えていることが見れる。

8. 結論

 本研究より、明らかになったことは以下の3点である。

1)SH の住宅建築は、建築が建てられる敷地から着想を得

て設計されている。

2)建築が建てられる敷地との因果関係が見られない共通

点 (タイプ )が見れた。

3)SH の住宅建築は、共通点とそれぞれの敷地からの情報

をもとに設計されていると考えられるが、取り出す情報、

敷地との関係の構成方法も異なるため、様々な様態を示

すと推測できる。

 今後の展開として、住宅建築だけでなく、博物館、集

合住宅などの他の建築作品についても見ていくこと、今

回の対象が全て郊外の建築だったことから、都市部での

敷地の読み取り方、敷地との関係の構築方法などの研究

が可能となると考えられる。

▲図 2 文献分析からの関係図・図面による分析図 (1 例 )註)9、10

関係図

渦巻くように配されたゲストルーム

自由なフォルム

2001-2004 ロングアイランドNY USA 506㎡ 2階 私邸 木造バルーン構法Writing with Light House ライティング・ウィズ・ライト・ハウス

年 敷地 規模 階数 プログラム 構造英名 日本語名

文献分析

図面分析

敷地 コンセプト・モチーフ 空間構成・動線形態 素材

近くにある防砂フェンス ( 景観 )

南側が通り、北側が大西洋 ( 機能 )

近くにジャクソンポロックのアトリエ( 文化 )

絵画《セブン・イン・エイト》

プライベートな南側を閉じて北側を開く形態

(文化的同化)

( 計画的同化 )

( 景観的同化 )木造バルーン構法木製のルバー

L

St

K

D

Ga

GB1 GBa1

Te

GB3

GBa3

GB2 GBa2

MB MBa

Po

1F

2FE

・公室 / 私室を 1階、2階で分離・Enから伸びる階段・Enから壁・扉がなく Lに繋がる・一筆書の直線的な動線と空間的中 心 L をもつ流動的

・外壁が連続している部分はある。・内部の壁は上下階で一致してない。・空間的中心の空間が連続・暖炉がある

・方位軸は意味なし・方位で僅かな形態の変化・公道と平行に配したつくり

配置図

1 階壁 2階壁 連続壁階段扉無 扉有

上階 外部

① ② ③ ④ ⑤

名称スイス大使館

公邸

タービュラン

ハウス

プレイナー

ハウス

ライティング

ウィズライト

ハウス

ネイルコレク

ターズハウス

リトル

テセラクトYハウス

ストレット

ハウス

マーサスビン

ヤードハウス

写真

年 2001-2006 2001-2005 2002-2005 2001-2004 2001-2004 2001-2001 1997-1999 1989-1991 1984-1988

敷地 ワシントンD.C,USA N・メキシコ,USA アリゾナ,USA ロングアイランド,NY,USA

エセックス,USA リネベック,NY,USA キャッツキルズ,NY,USA

テキサス,USA マーサスビンヤード,MA,USA

規模(㎡) 212 83 305 506 110 138 322 690 258階数 2階 2階 1階 2階 3階 2階 2階 2階 1階

プログラム 大使館公邸 ゲストハウス 私邸 私邸 私邸 私邸 ウィークエンドハウス

私邸 私邸

構造・構法 コンクリート造 鉄骨造 コンクリート造 木造バルーン構法 木造 木造 鉄骨造 コンクリート造 木造バルーン構法

敷地 ● ● ● ●●● ●● ●●●● ●●● ●●●● 19コンセプトモチーフ

● ● ● ● ● ● ●● 8形態 ● ● ●● ● ● ●●● ●● ●● 13

空間構成動線

● ● ● ●● ●● ●●● ●●● ● 14素材 ●● ●●● ● ● ●● ● ●● ●● ●●● 17光 ● ● ● ● 4

環境設備 ● ● ● 3部位 ● ● ●●● 5

建設工程 ●●● 3ランドスケープ

● 1付加機能 ● ● ● 3

合計

名称スイス大使館公邸

タービュランハウス

プレイナーハウス

ライティングウィズライトハウス

ネイルコレクターズハウス

リトルテセラクト

Yハウスストレットハウス

マーサスビンヤードハウス

①明確なゾーニング ● ● ● ● ● ● ●②空間的中心からのアクセス ● ● ● ● ● ●③空間的中心から伸びる階段 ● ● ● ● ● ●④一筆書きの動線→形態 ● ● ● ●⑤最小限のヴァッファゾーン ● ● ● ●

▼表 3 詳細分析からの共通点の分布図 

私室

公室 G.L

私室 公室En

明確なゾーニング

En 内部外部

ヴァファゾーンを最小限にして内外を繋げる

空間的中心からのアクセス

L

G.L空間的中心からの階段

L

一筆書きの動線→形態

▲図 1 共通点 

地形的同化 ( 地形の形態・起伏 )景観的同化 ( 敷地の景観 )

AB

文化的同化 ( 敷地の伝統・敷地で生まれた文化 ) C

気候的適応 ( 雨・風・太陽光 )D

計画的適応 ( 法規・プライバシー )EF

概念的同化 ( 方位軸・コンセプト )

記号効果

同化

適応

名称 スイス大使館  公邸

タービュラン ハウス

プレイナー ハウス

ライティングウィズ  ライトハウス

ネイルコレクターズ   ハウス

 リトルテセラクト Yハウス ストレット

 ハウスマーサスビンヤード   ハウス

コンセプトモチーフ B C D

D

C

形態 D E

E

F D・F D A A・A・E A

A

A・F

空間構成動線 D D D A

素材 C E B C・E・B BB C・D・(A)

部位 B・B

▼表 2 分類表