効率的でトータルなシステムとしてのOCWと著作権許諾

古壕直子（東京大学大学総合教育研究センター） 大瀧友里奈（一橋大学大学院社会学研究科） 藤原毅夫（東京大学大学総合教育研究センター） 辻秀典（株式会社情報技研／情報セキュリティ大学院大学）

日本工学教育協会第62回年次大会 会長企画・特別セッション 「これからの工学教育－工学の構造化から見えてきたもの－」

2014年8月29日

1

目次

1. UTokyo OCW 、UTokyo-eTEXTについて

スタッフ 機能と特長

2. 著作物利用許諾処理 3. 工学教育とOCW

工学倫理教育 工学は全学の講義に役に立つ

4. まとめ

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１．UTokyo OCW、UTokyo-eTEXT について

3

東京大学大学総合教育研究センター 全学教育推進部門 学術俯瞰講義（企画、調整、実施） UTokyo OCW（運営：撮影、資料整理― 著作権許諾処理、OCW運営・管理） UTokyo-eTEXT 東京大学授業カタログ（企画・運営）

特任教授 １人 エフォート 10% 准教授 １人 エフォート 20% 特任専門職員１人 (OCW全般) エフォート 50% 特任研究員 1.2人 エフォート 100% (Copyright Clearance) （4 days/week *1 + 2 days/week *1) 事務補佐員 0.5人 エフォート 30% 合計 2.15人

Staff

UTokyo OpenCourseWare(OCW)

• 東京大学の正規講義の資料や映像を、ウェブ上に無償公開し、学内外に広く提供している

• コンテンツ数：（2014年8月12日時点） 講義シリーズ 110 講義公開数 1243 講義資料（日本語） 967 講義資料（英語） 571 講義映像（日本語） 452 講義映像（英語） 26

4 http://ocw.u-tokyo.ac.jp

ユーザーの年代： すべての年代に均等に分布

10代 4%

20代 25%

30代 16%

40代 14%

50代 17%

60代以上 11%

回答なし 13%

教育関係者ですか？

学修者の姿 ２ これらの結果はシステム設計、将来計画に最も重要

5 高学歴者が多数

月間アクセスー平均 30000 ユーザー数ー月平均 8000

UTokyo OCW システム

公開サーバ

連携

管理サーバ

UTokyo-eTEXT/OCWシステム

閲覧者（ユーザ）

閲覧

TalkMiner （Video 画像解析、メタデータ）

2. 解析用HD動画 受け渡し 3.画像解析結果の 受け渡し テキスト情報 サムネイル画像

4.解析結果の 管理情報への反映と 公開用SD動画への変換

1. HD動画のアップロード

コンテンツ管理者、登録者

管理サーバーの機能 1．OCW eTEXT の作業進捗管理 2．コンテンツ格納・管理 3．著作権許諾処理 データ

授業カタログ （学務データ）

5.講義全体、 シラバスとの関連

6

UTokyo OCWシステムの特徴

1. 学務システム（授業カタログ）との連携――全学教育の中で 2. 著作権許諾管理 （許諾作業はすべて大学が：作業管理の自動化とデータベース化）

3. OCW作業管理 （講師との連絡、動画作成などを自動化） 4. 検索機能

(a) MIMASearchによる検索・構造化の可視化 (b) 動画解析とメタデータ作成自動化 （動画検索）

5. iOS, Android対応 6. Sub-systemとしてUTokyo-eTEXT （講義を文章化、補助教材）

http://todai-etext.ocw.u-tokyo.ac.jp/page.top 7

UTokyo OCW の視聴者の特徴

高学歴． 長時間、複数回利用 ⇔ 学修システムとして利用

Contents Management System

• 実際の業務フローから、その業務を管理し、促進するシステムを

作成：

（１）業務管理

（２）作業の見落としをなくす

（３）進捗状況を共有

（時間管理＋誰がやっても同じ結果）

（４）定型（メールなど）の作業は自動管理

（５）作業結果が、システム内に自動格納

8

検索システムと可視化（MIMASearch)

10

動画検索 ： 動画内の文字列をOCRによりdigital化、meta-dataとして利用

2．UTokyo OCW における著作物利用許諾

第三者の著作物については、全て東京大学が利用許諾を取得 11

講義資料に使われる画像の転載元 論文 書籍 ウェブサイト 新聞記事 テレビ番組 映画 第三者からの提供 その他

利用許諾が必要！

0

20

40

60

80

100

120

全体

数学

リスク

情報

世界史

光 倫理

物質

政治・法

生命

画像数（件）

1講義資料に使用される 平均画像数

講義資料に使われる画像数

• 講義科目によって処理する画像件数が大きく異なる。

• 講義から資料公開まで2年近くかかってしまうものもある。

（先生のオリジナル含む）

12 データ：2011年度冬学期から2013年度冬学期までの学術俯瞰講義全100講義より。

光の科学

講義資料に使われる画像の内訳

13 * 講義担当講師のオリジナルは除く。ただし、講義担当講師が執筆者である論文や書籍についてはカウントに含める。 ** データは、学術俯瞰講義より抽出。理系分野40講義、文系分野37講義、文理融合分野23講義、計100講義の処理件数をカウント。

0

50

100

150

200

250

300

350

400

ジャーナル他

書籍

書籍等の表紙

教科書

新聞記事

オンライン記事

画像共有サイト（wikipedia

等）

画像提供サイト/

アーカイブサイト等

その他ウェブサイト（ブログ含む）

研究機関

公的機関

企業

第三セクター（研究機関以外）

研究者個人

その他個人

肖像

美術品（絵画・彫刻・工芸品等）

史料

標本

切手

貨幣

楽譜

国旗

マンガ

キャラクター

DVD/CDジャケット

地図

ロゴ

ポスター・カレンダー・ポストカード等

映画

テレビ番組

YouTube

動画

その他映像

音楽・音源

フリー画像

出典不明

画像数（件）

UTokyo OCWの著作権処理作業

• 講義資料の各画像（動画含む：以下同じ）に関して著作権その他の権利処理が必要かどうかの判断

• 同時に、各画像の出典（転載元、許諾方法、連絡先）の調査

• 利用許諾が必要な画像について、許諾申請作業

• 公開用の講義資料の作成 （クレジットの掲載、差し替え・削除処理）

出典調査

許諾作業

公開資料作成 14

15

処理の流れ

※1 一巡目の判断で差し替えに適当なものがなかった場合に、元の画像を処理する流れに戻ることがある。 ※2 書籍や論文の出版社から、著者からの許諾が必要

との返答を得た場合や、別の許諾先に問い合わせるよう指示があった場合に、再度許諾申請の流れに戻ることがある。

・一般的なものである。 ・有料である。 ・過去に許諾済みで同様のものがある。

先生オリジナルである。

・CCである。 ・許諾不要でOKである。

許諾情報確認

許諾作業

済差替

講義資料入手

他の権利への考慮が不要である。

yes

no

yes

yes

yes

yes

yes

yes

yes

no

no

no

no

no

no

no

許諾不要

許諾不要

差し替えに適当なものがある。

差し替えに許諾が必要である。

許諾OKである。

PDである。

許諾不要

済削除

※1

※2

許諾情報がある。

no

yes

済OK 済差替

出典調査

許諾作業

CC: Creative Commons license PD: Public Domain

作業が止まる要因 • 出典が見つからない. • 許諾申請をする連絡先が見つからない. • 返事が来ない. • 判断が難しい.

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• 先生のオリジナルか？ 先生が執筆者の論文や書籍に同じ画像が掲載されている場合

• 適した差し替え画像とは？ - 講義内容の理解が必要不可欠 - 削除の判断にするタイミングは？

• パブリックドメイン（PD）か？ 古い書籍や論文など

• 他の権利についてどこまで考慮するか？ 著作権ではない知的財産権（商標権・意匠権）、肖像権（パブリシティ権）、所有権など。

判断が難しい場合とは

３．私たちの進む方向（Utokyo OCWの目的と戦略）

1. 個々の大学における全教育体系の中で設計 2. 大学教員の連携で新しい教育プログラムを形成 3. 反転授業、ブレンド型学習など、講義形態の変化に伴う利用価値の上昇 4. 広い分野にまたがる講義（バーチャル講義） --- 例 （工学、研究）倫理教育

OCWとMOOC

質の保証！

大学の知の公開 （当初、すべての資料を英訳した→経費の問題）

⇒ 著作権許諾処理は大学（我々）の手で、大学（我々）の判断で！

大学のITを用いた教育の課題解決 （「ITを導入すると教員の負荷が増える」は本末転倒．誰にとっても有用．）

大学のトータルな方針の中で位置づける ＝ 他の教育ツールとの一元化 （授業カタログなど）

経済的に持続可能な仕組み作り！ （1．自動化による効率化と内容の充実、2．経費の調達） 17

18

工学倫理の公開

1. 科学技術倫理とは何か 2. 組織としての技術倫理 3. 企業活動と倫理－社会を変える視点から 4. 安全確保の潮流－科学技術・法・倫理をつなぐ 5. 失敗に学ぶ －失敗しても正直でいられるか 6. 化学・生命研究倫理 7. 生命倫理の考え方とその規制―世界と日本 8. ネットワークの脅威と情報セキュリティ －ウイルス等

ネットワークの脅威の変遷と対策 9. 技術者倫理演習 10.研究室における研究管理と業務管理 11.工学倫理を大学の安全に応用した実例を紹介する

http://ocw.u-Tokyo.ac.jp/lecture?id=11360&r=1774559732

工学部各学科で行われている工学倫理教育の集大成 （この様な単一の講義はない） 最近3か月のアクセスランキング第9位

４．まとめ

1. UTokyo OCW 、UTokyo-eTEXTについて

機能と特長 （成熟した技術のみを使用） 自動化（効率）と検索機能（利便性）・全体システム（経費節減）

2. 著作物利用許諾処理 東京大学が責任をもって行う． 自動化とデータ・ベースの蓄積

3. OCWの活用 （教育の拡大） 工学倫理教育、研究倫理教育

4. 工学技術は全学（の教育）に貢献できる．

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ご清聴ありがとうございました

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希望機関に対して著作権利用許諾システムの体験利用を提供いたします． (1) 6ヶ月間の試用可能 (2) 東京大学内にサーバーを用意 (3) 設定実費のみ負担