オペレーションズ・リサーチ概論で広がり、線形計画法、動的計画法、多変量解析、待ち行列理論、pert/cpm、...

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1 オペレーションズ・リサーチ概論 オペレーション・リサーチの紹介 理工学部 システム数理学科 佐々木 美裕 2014年度

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オペレーションズ・リサーチ概論

オペレーション・リサーチの紹介

理工学部 システム数理学科

佐々木 美裕

2014年度

「OR(オーアール)」とは?

Operations Research (アメリカ)

Operational Research (ヨーロッパ)

オペレーションズ・リサーチ (日本)作戦行動の研究

経営科学

意志決定の科学

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OR(オペレーションズ・リサーチ)とは

ORの起源

軍事研究としてスタート 1935年にイギリスで実用的なレーダーが開発されると、ドーバー海峡に面した地域に、敵機や敵艦の接近を察知するために配備する計画がたてられた。当時の技術水準では製造できるレーダーに限りがあったため、どのように配備して運用すればもっとも高い効果が期待できるかが、問題になった。物理学者のブラケットをはじめとして、さまざまな学問分野の研究者が動員されて、検討が開始された。

その結果、1939年にはじまった第2次世界大戦の初めにはドイツ軍機1機を撃墜するのに、平均して高射砲弾2万発を要していたのが、5分の1程度に減少したといわれる。イギリスでの成果は、アメリカでも関心をあつめ、42年には大規模なORチームがつくられて研究がすすめられた。

"オペレーションズリサーチ" Microsoft(R) Encarta(R) Encyclopedia 2001 (C) 1993-2000 Microsoft Corporation. All rights reserved.

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第2次世界大戦でもドイツのUボートは連合軍に対して通商破壊戦をしかけ、イギリスを敗北の一歩手前までおいこんだ。

"潜水艦" Microsoft(R) Encarta(R) Encyclopedia 2001 (C) 1993-2000 Microsoft Corporation. All rights reserved.

OR(オペレーションズ・リサーチ)とは

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戦後のOR大戦末期から戦後にかけては、ORが軍事研究だけでなく、工業や経営計画にまで広がり、線形計画法、動的計画法、多変量解析、待ち行列理論、PERT/CPM、ゲーム理論などの応用数学の形式が生みだされ、コンピューターを活用した解析がおこなわれるようになっていった。

初期にはすでに、同一の原料や資源から複数の製品を製造できるときに、それぞれの製品をどの程度生産すると利益を最大化できるかとか、複数の地点を巡回するのに、最短時間で完了する経路を探索するといった問題がとりあげられた。

ORにとっては対象となる問題や解決手法には制限がなく、時間、距離、数量といった明らかに数値化できるものから、一定の基準で数値化できるものであれば、満足度や好感度といった感覚的なものまであつかうことができる。今日では、企業経営の意思決定だけでなく、全地球規模の資源利用などについても応用されている。学問分野としても、工学をはじめとして、会計学、経営学、経済学など多方面でとりいれられている。

"オペレーションズリサーチ" Microsoft(R) Encarta(R) Encyclopedia 2001 (C) 1993-2000 Microsoft Corporation. All rights reserved.

ORは万能か?

ある高層オフィスビルで、エレベータの待ち時間が長いという不満が続出した。ビルの管理者がORの研究者を呼んで、待ち時間が最小になるようなエレベータの運行計画を求めた。

しかし、利用者の不満は納まらなかった。さて、解決策は?

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ORの手法

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現実問題の分析(情報収集など)

数理モデルの作成(現実問題を抽象化)

モデルの解を求める

得られた結果に基づいて運用

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ORの発展とコンピュータの発達

コンピュータの起源

ENIAC(Electronic Numerical Integrator and Computer)は初の完全電子式の大型汎用(はんよう)のデジタル・コンピューターである。1946年、ペンシルベニア大学でつくられたこのコンピューターは、55年まで使用された。ENIACには約1万8000本の真空管がつかわれたほか、プログラミングごとに手作業で配線しなおす必要があった。

UPI/THE BETTMANN ARCHIVE/Corbis

"ENIAC(エニアック)" Microsoft(R) Encarta(R) Encyclopedia 2001 (C) 1993-2000 Microsoft Corporation. All rights reserved.

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1964年、IBMは革命的なコンピューター、システム360を開発した。これはソフトウェアやシステム機器を交換できる最初のメインフレーム・コンピューターだった。60年代から70年代にかけてIBMは世界のメインフレーム市場を席巻した。

Charles E. Rot/Corbis

"IBMのメインフレーム型コンピューター、システム360" Microsoft(R) Encarta(R) Encyclopedia 2001 (C) 1993-2000 Microsoft Corporation. All rights reserved.

コンピュータの発達

DECの事例

DEC(Digital Equipment Corporation)(1995年)Global Supply Chain再編成どこで何を生産し,どこへ運ぶか

どの部品をアウトソーシングするか

どのベンダーから調達するか

手法:混合整数計画法

効果:年間1億$の費用削減Franz Edelman Award (1995)

Interfaces 25:1 (1995) pp. 69-93

DECの事例(改善前)

=ロジスティクス・センター =チップ&メディア

=本体=モジュール

ClonmelGalway

Ayr

Taiwan

HongKong

India

Singapore

Sydney

TokyoShenzhen

Brazil

PuetroRico

Mexico

Augusta

Kantana

Cororado

WCVCCupertino

Phenix

Queensterry

Nijimegen

Hull

Greenville

NewEnglandSitesHudson

ShrewsburyspringfiledWestfield

Franklin

Saiem

Westminster

Boston

Mariboro

Andover

DECの事例(改善後)

=ロジスティクス・センター =チップ&メディア

=本体=モジュール

Ayr

Taiwan

HongKong

Singapore

Sydney

Tokyo

Mexico

Augusta

Kantana

Cororado

WCVC

Queensterry

Nijimegen

GreenvilleAlbuquerque

England

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入試監督自動割当システムの作成

手動による割当の問題点割当作成作業の手間

1人が3日間

不完全な割り当て

当日の混乱

改善の方法が見つからない

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複雑な条件の下での割り当て

割当の条件 5日間の試験

1日3科目

40試験室

のべ1万2千人の受験者

200人以上の監督者

多国籍の教員

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入試監督自動割り当て

成果 3日間の作業が

2004年度:6時間

2005年度:3時間

2006年度:30秒

まちがいのない割り当て

ORの威力を証明

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プロジェクトN

ORの専門家と事務職員からなる

業務改善チーム図書館雑誌の見直し

東海地震の注意情報発令時の対策

名古屋キャンパス

瀬戸キャンパス

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図書館雑誌見直し

• 雑誌購入見直しの効率化

満足度ポイントの導入

• 雑誌購入予算の公平化

1人で高額な雑誌を独占することをなくす

• 予算の削減

瀬戸キャンパス図書館

2000万円から300万円削減

名古屋キャンパス

8000万円から1200万円削減予定

大学の定期試験時間割作成問題(1)

• 南山大学瀬戸キャンパス定期試験時間割作成の現状• 1日5限、6日間 (30コマ)• 試験科目数 : 119• 教員数: 72• 教務事務職員の手作業で約1週間かけて作成

• 問題点• 土曜日や平日5限に実施する試験数の増加

• 大教室の試験室としての使用

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大学の定期試験時間割作成問題(2)

• 定期試験試験時間割作成システム

• 問題を2段階に分割• 試験時間割の作成 と試験室の割当て(第1段階)• 試験監督者の割当て (第2段階)

• 最適化ソフトウェアCPLEXを用いて求解

• 定期試験時間割作成時間の大幅な短縮

• 第1段階: 約5分、第2段階: 約7秒

• 教員の都合を考慮した試験監督割り当ての実現20

医学分野での実例

ナーススケジューリング

乳がんの診断

前立腺がんの近接照射療法(Brachytherapy)その他参考)INFORMS Annual Meeting

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Operations Research Advances Cancer Therapeutics (前立腺がんの近接照射療法への応用)

著者: Eva K. LEE (Georgia Institute of Technology)Marco Zaider (Memorial Sloan-Kettering Cancer

Center)論文:Interfaces, Vol. 38, 2008, pp. 5-25.2007年 INFORMS Franz Edelman Award受賞

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Operations Research Advances Cancer Therapeutics (前立腺がんの近接照射療法への応用)

目的:治療方法の改善とコストの削減により、次世代のがん治療法の発展に貢献する

前立腺がんの近接照射療法に対する数理モデルの作成

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結果

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コスト削減:

手術前のシミュレーション、手術後の線量測定分析が不要となり、アメリカ国内だけで年間数100億円のコスト削減に成功

手術後の患者への負担軽減周辺の健康な臓器への線量が減少

尿道:23-28%減少

直腸:約15%減少

手術時間の短縮

使用するシード数が20%-30%減少

シードを移植するためのニードル数は15%減少