アイルランドにおけるハイブリッド蓄電池を用いた …平成26...

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平成 26 年度エネルギー需給緩和型インフラ・システム普及等促進事業 再生可能エネルギー及び省エネルギー等技術・システムの事業実施可能性調査 アイルランドにおけるハイブリッド蓄電池を用いた 系統安定化事業可能性調査 報告書 平成 27 2 三菱商事株式会社 日本ガイシ株式会社 富士電機株式会社 (幹事)株式会社野村総合研究所

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Page 1: アイルランドにおけるハイブリッド蓄電池を用いた …平成26 年度エネルギー需給緩和型インフラ・システム普及等促進事業 再生可能エネルギー及び省エネルギー等技術・システムの事業実施可能性調査

平成 26 年度エネルギー需給緩和型インフラ・システム普及等促進事業

再生可能エネルギー及び省エネルギー等技術・システムの事業実施可能性調査

アイルランドにおけるハイブリッド蓄電池を用いた

系統安定化事業可能性調査

報告書

平成 27 年 2 月

三菱商事株式会社

日本ガイシ株式会社

富士電機株式会社

(幹事)株式会社野村総合研究所

Page 2: アイルランドにおけるハイブリッド蓄電池を用いた …平成26 年度エネルギー需給緩和型インフラ・システム普及等促進事業 再生可能エネルギー及び省エネルギー等技術・システムの事業実施可能性調査

はじめに

アジア地域を中心とした新興国や中東を始めとする資源国等では、引き続き、大幅なエ

ネルギー需要の伸びが見込まれており、こうした国々における省エネルギー対策及び再生

可能エネルギー導入を促進することは、気候変動対策上重要であることに加えて、我が国

のエネルギー安全保障確保の観点からも重要である。また、世界各国で低炭素社会実現に

向けた様々な政策が発表され、それに伴う新たな市場が創出されており、年々その規模は

拡大している。しかしながら、これらの市場では、計画段階からアドバイザーとして参入

している欧米企業や高いコスト競争力を有するアジア企業等が熾烈な国際競争を行ってい

ることから、我が国の省エネルギー及び再生可能エネルギー技術の海外展開に当たっては、

「機器」の輸出のみならず、インフラの設計、運営、管理を含む「システム」としての受

注や、現地での「事業投資」の拡大など、多様なビジネスを展開していくことが重要とな

る。

その際、省エネルギー・再生可能エネルギー等の分野は、その市場動向が現地政府の政

策に大きな影響を受けることから、官民一体となり、我が国技術・システムの海外展開を

推進していくことが必要となっている。

こうした背景を踏まえ、本事業ではアイルランドにおけるハイブリッド蓄電池を用いた

系統安定化に係る事業可能性を調査し、当該分野における海外展開を推進することで、世

界の経済成長を我が国の成長に取り込むとともに、もって我が国のエネルギー安全保障確

保を図る。

1. ア

イル

ラン

ドの

蓄電

ニー

ズ調

•アイルランド電力シス

テムの現状把握

•政策動向の把握

2. 制

約条

件の

調査

•事業の制約となる政

策動向の把握

•協業パートナー等の

意向の把握

3. 蓄

電シ

ステ

ム特

性の

把握

•N

ASと

LIBを組み合わ

せたハイブリッド蓄電

池の優位性の明確化

4. 卸

電力

市場

のサ

ービ

ス・プ

ロダ

クトの

把握

•シグナル特性の把握

5. 有

望蓄

電シ

ステ

ムの

スペ

ック

設計

•シグナル特性に応じた

最適な蓄電システム

の設計および運用方

法の決定

6. 電

池寿

命の

推計

•蓄電システムの運用

方法に応じた寿命の

推計

7. 市

場取

引価

格の

予測

•卸電力市場における

取引価格の予測

8. 事

業の

経済

性試

•事業経済性試算

•5カ年の事業計画策定

9. ア

イル

ラン

ド政

府等

への

提案

•制度設計のステーク

ホルダーに対する提

10. 事

業展

開戦

略の

検討

•事業展開戦略の策定

蓄電事業の経済性を高めるために、

蓄電システムのスペック・運用方法を再検討

Ⅰ. 市

場分

析書

Ⅱ. 事

業計

画書

Page 3: アイルランドにおけるハイブリッド蓄電池を用いた …平成26 年度エネルギー需給緩和型インフラ・システム普及等促進事業 再生可能エネルギー及び省エネルギー等技術・システムの事業実施可能性調査

本調査の全体像

1. ア

イル

ラン

ドの

蓄電

ニー

ズ調

•アイルランド電力シス

テムの現状把握

•政策動向の把握

2. 制

約条

件の

調査

•事業の制約となる政

策動向の把握

•協業パートナー等の

意向の把握

3. 蓄

電シ

ステ

ム特

性の

把握

•N

ASと

LIBを組み合わ

せたハイブリッド蓄電

池の優位性の明確化

4. 卸

電力

市場

のサ

ービ

ス・プ

ロダ

クトの

把握

•シグナル特性の把握

5. 有

望蓄

電シ

ステ

ムの

スペ

ック

設計

•シグナル特性に応じた

最適な蓄電システム

の設計および運用方

法の決定

6. 電

池寿

命の

推計

•蓄電システムの運用

方法に応じた寿命の

推計

7. 市

場取

引価

格の

予測

•卸電力市場における

取引価格の予測

8. 事

業の

経済

性試

•事業経済性試算

•5カ年の事業計画策定

9. ア

イル

ラン

ド政

府等

への

提案

•制度設計のステーク

ホルダーに対する提

10. 事

業展

開戦

略の

検討

•事業展開戦略の策定

アイルランド政府等の反応を考慮しながら、

蓄電事業の経済性を高めるために、

蓄電システムのスペック・運用方法を再検討

Ⅰ. 市

場分

析書

Ⅱ. 事

業計

画書

Page 4: アイルランドにおけるハイブリッド蓄電池を用いた …平成26 年度エネルギー需給緩和型インフラ・システム普及等促進事業 再生可能エネルギー及び省エネルギー等技術・システムの事業実施可能性調査

目次

I 市場分析書 ...................................................................................................................... 1

1 アイルランドの蓄電ニーズ調査 .................................................................................. 1

1.1 アイルランドの事業環境 ...................................................................................... 1

1.2 アイルランドの電力市場改革の概観 ................................................................... 6

1.3 蓄電ニーズの背景 ................................................................................................. 6

1.4 蓄電システムの市場規模 ...................................................................................... 7

2 制約条件の調査 ........................................................................................................... 8

2.1 電力市場改革動向 ................................................................................................. 8

2.2 政策担当者の意向 ............................................................................................... 12

2.3 競合動向 ............................................................................................................. 12

3 蓄電システム特性の把握 ........................................................................................... 14

3.1 NAS および LIB の特性に関する調査 ................................................................ 14

3.2 ハイブリッド蓄電システムの優位性の明確化 ................................................... 14

4 卸電力市場のサービス・プロダクトの把握 .............................................................. 15

II 事業計画書 .................................................................................................................... 18

1 有望蓄電システムのスペック設計 ............................................................................ 18

1.1 アイルランド電力市場における技術的要件の調査 ........................................... 18

1.2 蓄電システムのスペック設計 ............................................................................ 19

1.3 CAPEX、OPEX の推計 ...................................................................................... 19

1.4 ハイブリッド蓄電システムの運用方法の決定 ................................................... 19

2 電池寿命の推計 ......................................................................................................... 20

3 市場取引価格の予測 .................................................................................................. 20

3.1 各国アンシラリー市場価格動向調査 ................................................................. 20

3.2 アイルランドのアンシラリー市場における取引価格の予測 ............................. 21

4 事業の経済性試算 ...................................................................................................... 22

4.1 ベース・シナリオ ............................................................................................... 23

4.2 余剰電力インセンティブ・シナリオ ................................................................. 25

5 アイルランド政府への提案 ....................................................................................... 28

6 事業展開戦略の検討 .................................................................................................. 29

6.1 事業戦略の検討 .................................................................................................. 29

6.2 10 年後の目指すべきビジョンの策定 ................................................................ 29

6.3 5 カ年程度の事業計画の策定 ............................................................................. 30

6.4 事業実施体制の検討 ........................................................................................... 30

6.5 資金調達計画の検討 ........................................................................................... 30

6.6 リスク分析 ......................................................................................................... 30

Page 5: アイルランドにおけるハイブリッド蓄電池を用いた …平成26 年度エネルギー需給緩和型インフラ・システム普及等促進事業 再生可能エネルギー及び省エネルギー等技術・システムの事業実施可能性調査

6.7 課題の抽出および対応策の検討 ......................................................................... 31

6.8 政策の活用の検討 ............................................................................................... 31

6.9 国内経済への波及効果の試算 ............................................................................ 31

6.10 エネルギー削減効果 ....................................................................................... 31

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I 市場分析書

1 アイルランドの蓄電ニーズ調査

本章では、アイルランドの電力システムの課題や、政策動向、同国に蓄電システムに対

するニーズについて示す。

1.1 アイルランドの事業環境

1.1.1 アイルランド共和国概要

アイルランド共和国は、北海道(面積:約 8.3 万 km2、人口:約 540 万人)と比べ面積

はやや小さく(約 7.0 万 km2)、人口もやや少ない(約 460 万人)規模である。

電力に関する需要をみると、年間電力需要量 34.9TWh、最大電力需要 6,229MW の国で

あり、北海道電力(販売電力量:約 31TWh、最大 3 日平均電力:約 4.9GW、いずれも 2013

年度)よりやや大きい。

図 I-1 アイルランド共和国概要

1.1.2 送配電システム

アイルランドでは、ESB(Electricity Supply Board)グループが送配電線を保有し、EirGrid

が系統運用を行っている。

ESB は、送電線を保有する TAO(Transmission Asset Owner)であり、同社の株式の 95%

をアイルランド政府が保有している。(なお、残りは ESB 持ち株会が保有している。)EirGrid

は、系統運用を行う TSO(Transmission System Operator)である。

また、卸電力市場 SEM(Single Electricity Market)にて、アイルランド島全体の電力が

取引されている。

アイルランドの電気事業体制を図 I-2 に示す。また、電力システムに関連するプレイヤー

* アイルランド、北アイルランド合計

正式名称 アイルランド共和国

人口 458.7万人(2012年、世界銀行)

GDP 2,106 億USD (2012年、世界銀行)

1人当たりGDP 4.6 万USD (2012年、世界銀行)

年間電力需要* 34.86 TWh (2013年、EirGrid)

最大電力需要* 6,229 MW (2013年、EirGrid)

再エネ導入目標(2009年発表)

• 2020年までにエネルギー消費量の16%を再エネ由来に

• 2020年までに電力消費量の40%を再エネ由来に

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を表 I-1 にまとめる。

図 I-2 アイルランドの電気事業体制

出所)CER “Electricity & Gas Retail Markets Annual Report 2013”、Eirgrid “All-Island Generation

Capacity Statement 2014-2023”などから NRI 作成

表 I-1 アイルランドにおける電力システム関連プレイヤー

略語 内容

CER Commission for Energy Regulation;アイルランドの電気事業に関す

る規制機関。

DCENR

The Department of Communications, Energy and Natural

Resources; アイルランド通信・エネルギー資源省(アイルランド

の電力系統の管理を管轄する官庁)。

ESB(Electricity

Supply Board)

送電線を保有する TAO(transmission asset owner)。ESB グループ

には発電会社も抱えている。

EirGrid アイルランドの系統運用機関。

発電 小売

ESBグループ傘下のElectricity Irelandが最大のシェアを占める

取引市場

SEM(Single Electricity Market)にて、アイルランド島全体の電力が取引されている

アイルランドは、2020年までに消費電力量に占める再エネ比率を40%にするという目標を掲げている。これを達成するために、現在アンシラリー・サービス市場の制度改革(Delivering a Secure Sustainable Electricity

System (DS3))が行われている。

規制機関 CER (Commission for Energy Regulation)

送電 配電

ESBが送電線を保有し、EirGridが系統運用を行う

ESB (Electricity Supply Board)が送電線を保有するTAO(Transmission Asset

Owner)。ESBの株式の95%をアイルランド政府が保有。(残りはESB持ち株会が保有。)

EirGridが系統運用を行うTSO

(Transmission System

Operator)。

ESB傘下のESB Networksが配電線を独占的に保有

設備容量ベースで風力が20%近くを占める

水力(揚水含

む)4.4% 石炭

13.7%

天然ガス43.1%

石油12.3%

風力19.6%

その他再エネ0.8%

英国との連系

線6.1%

設備容量

12,211 MW

(2013)

Electricity Ireland

62.8%

Airtricity18.5%

Bord Gáis Energy

14.7%

PrePayPower3.3%

Others0.7%

Electricity Ireland

57.2%Airtricity22.0%

Bord Gáis Energy

16.8%

PrePayPower3.1%

Others0.9%

顧客数

202万(2013 Q4)

販売量

2.3 TWh

(2013 Q4)

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1.1.3 電源構成

政府は、2020年までに電力消費量に占める再エネ比率を40%に高める目標を立てている。

特に、風力発電の設備容量比率は、2020 年に 30%を超える見込みである。

図 I-3 電源構成(アイルランド・北アイルランド合計)

出所)EirGrid “All-Island Generation Capacity Statement 2014-2023”をもとに作成

1.1.4 風力発電の現状と課題

風力発電の売電価格には下限(Reference price)が設けられており、これが風力発電導

入のドライバーとなっている。しかし、風力発電の導入が進む西海岸では、送電網の整備

が進んでいない地域も多い。そのため、風力発電の増加に伴い、余剰電力等の問題が顕在

化してきている。アイルランド島では、風力発電の発電量の 3%以上が出力抑制または解列

(”dispatch-down”)されている(表 I-2)。この出力抑制・解列されている発電量の比率は

欧州の中でも突出して高く、欧州の中でも再生可能エネルギーの導入が進んでいるイギリ

スやドイツ、イタリアでも、出力抑制・解列の比率は 0.5%程度である。これは、アイルラ

ンドで積極的に風力発電が導入されてきている一方、同国が島国で他国との電力融通が難

しく、余剰電力を賄いきれないためである。

アイルランド国内でも特に、電力系統の脆弱な北西部および南西部で、dispatch-down が

多くなっている(図 I-5)。時間帯別では、電力需要が小さくなる夜間に出力抑制・解列量が

大きい。

水力(揚水含む)3.6%

石炭11.3%

天然ガス34.9%

石油8.7%

風力31.8%

その他再エネ3.5%

英国との連系線5.1%

新規発電設備1.1%

水力(揚水含む)4.4%

石炭13.7%

天然ガス43.1%

石油12.3%

風力19.6%

その他再エネ0.8%

英国との連系線6.1%

合計設備容量

12,211 MW

合計設備容量

14,633 MW

2013年 2020年

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図 I-4 Energy 市場価格と reference price の関係(2013/10/1~2014/9/30)

出所)SEMO 提供データより NRI 作成

表 I-2 アイルランドにおける dispatch-down の状況(2013 年)

出所) EirGrid and SONI (2014) “Annual Wind Constraint and Curtailment Report 2013”

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

2013/10/1 2013/11/20 2014/1/9 2014/2/28 2014/4/19 2014/6/8 2014/7/28 2014/9/16

Max SMP Min SMP LWP Reference price

(€/MWh)

※ SMP: System marginal price LWP: Load weighted priceまた、上記グラフでは、縦軸の€500/MWh以上を省略しており、max SMP が €1,000/MWh近くになることもある。

国 County 名称設備容量

(MW)発電量

(MWh)

Dispatch-down (MWh)

Dispatch-down 比率

NI Antrim Garves 15 42,300 454 1.1%

Antrim Gruig 25 63,216 449 0.7%

Londonderry Altahullion 2 11.7 30,619 422 1.4%

Londonderry CarnHill 13.8 22,131 223 1.0%

Londonderry Curryfree 15 48,988 835 1.7%

Londonderry Slieve Kirk 74 130,086 2,837 2.2%

Tyrone Carrickatane 20.7 50,581 394 0.8%

Tyrone Crighshane 32.2 68,655 1,085 1.6%

Tyrone Screggagh 20 51,241 964 1.9%

Tyrone Slieve Divena 1 30 66,670 784 1.2%

Tyrone Churchill 18.4 42,802 256 0.6%

Fermanagh Slieve Rushen 2 54 152,991 2,810 1.8%

Fermanagh Tappaghan 28.5 75,476 916 1.2%

Donegal Beam Hill 14 39,559 4,371 11.0%

Donegal Meentycat 84.96 219,860 27,410 12.5%

Donegal Sorne Hill 38.9 98,117 9,896 10.1%

IRE Sligo Kingsmountain 2 11.05 29,312 416 1.4%

Leitrim Garvagh 1 26 90,754 1,133 1.2%

Leitrim Garvagh 2 22 60,710 842 1.4%

Cavan Bindoo 48 118,740 1,888 1.6%

Clare Booltiagh 1 19.45 37,626 775 2.1%

Clare Booltiagh 2 3 10,664 411 3.9%

Dublin Lisheen 1 36 104,644 2,193 2.1%

Dublin Lisheen 1a 19 42,164 576 1.4%

Laois Gortahile 20 65,362 794 1.2%

Galway Derrybrien 59.5 130,756 9,849 7.5%

Wexford Ballywater 42 96,002 5,289 5.5%

Wexford Castledockrell 41.4 105,836 1,054 1.0%

Wexford Richfield 27 69,300 705 1.0%

国 County 名称設備容量

(MW)発電量(MWh)

Dispatch

-down (MWh)

Dispatch

-down 比率

IRE Tipperary Glenough 32.5 117,387 1,368 1.2%

Limerick Dromada 28.5 74,844 1,432 1.9%

Limerick Dromdeeveen 27 90,778 1,254 1.4%

Limerick Grouse Lodge 15 46,959 702 1.5%

Limerick Knockawarriga 22.5 64,910 649 1.0%

Limerick Rathcahill West 12.5 46,091 647 1.4%

Limerick Tournafulla 17.2 50,678 1,033 2.0%

Cork Ballybane 29.9 71,734 174 0.2%

Cork Boggeragh 57 181,058 8,685 4.8%

Cork Bawnmore 24 74,024 2,343 3.2%

Cork Coomacheo 59.225 183,645 12,090 6.6%

Kerry Ballincolling Hill 13.3 37,055 552 1.5%

Kerry Coomagearlahy 1 42.5 113,631 7,845 6.9%

Kerry Coomagearlahy 2 8.5 24,544 1,032 4.2%

Kerry Coomagearlahy 3 32.5 83,809 2,144 2.6%

Kerry Clahane 37.8 108,056 1,247 1.2%

Kerry Glanlee 29.8 83,808 7,267 8.7%

: Dispatch-down 比率が5.0%を上回る風力発電所

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図 I-5 アイルランドにおける dispatch-down の状況(2013 年)

出所) EirGrid and SONI (2014) “Annual Wind Constraint and Curtailment Report 2013” より NRI 作成

なお、アイルランドでは、dispatch-down は発動理由によって curtailment と constraint

に分類され、それぞれで補償制度が異なる。curtailment は、電力システム全体の制約から、

風力発電を受け入れられないときの出力抑制・解列をいう。非同期系発電機の発電量比率

が 50%を超えたときや、電圧調整の必要が生じたときなどに発動される。2017 年末まで、

エネルギー市場価格にて補償される。一方、constraintは電力システムの局所的な制約から、

風力発電を受け入れられないときの出力抑制・解列をいう。系統容量の制約で風力発電を

受け入れられないときや、系統の定期点検などの運用停止時に発動される。風力発電所が

EirGridとFirm契約を結んでいる場合は、エネルギー市場価格にて補償される一方、Non-firm

契約を結んでいる場合は、補償されない。

Dispatch-down の発動量のうち、Constraint が約 7 割を占め、かつ風力発電所の大半が

Non-firm 契約であるため、dispatch-down の補償の適用対象は限定的となっている。

こうしたことから、アイルランド政府にとっては、風力発電の dispatch-down への対応が

課題となっている。また、今後さらに風力発電が増加することから、さらなる dispatch-down

への対応に加え、系統安定化対策が必要となっている。

Dispatch-down の量 発電量に占める dispatch-down の比率

: 10,000 MWh以上

: 5,000 MWh以上10,000 MWh未満

: 2,500 MWh以上 5,000 MWh未満

: 2,500 MWh未満

: N/A

: 10.0%以上

: 5.0%以上10.0% 未満

: 2.5% 以上 5% 未満

: 2.5% 未満

: N/A

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図 I-6 Dispatch-down の分類と補償制度

出所) EirGrid and SONI (2014) “Annual Wind Constraint and Curtailment Report 2013” 等より NRI 作成

1.1.5 海洋エネルギー

アイルランドでは、風力発電に加え、海洋エネルギーの活用も計画されている。アイル

ランドの海洋発電(波力・潮力)の開発ポテンシャルは 34GW ともいわれている。こうし

た中、Galway Bay と Belmullet、Killard では実証が実施・計画されている。

ただし、海洋発電は現在実証段階であり、アイルランド初となる波力発電のフルスケー

ルの実証試験である Westwave Project の運転開始も、早くて 2020 年ごろになるとみられ

ている。

1.2 アイルランドの電力市場改革の概観

上述のような再エネ導入目標の達成に向けて、アイルランドでは現在 DS3(Delivering a

Secure Sustainable Electricity System)とよばれる電力市場改革が行われている。特に、そ

の中では、アンシラリー・サービス市場を拡大することにより、増大する風力発電に対応

しようとしている。DS3 における具体的な検討内容については、2.1 説にて詳述する。

1.3 蓄電ニーズの背景

アイルランドでは、風力発電導入の拡大に伴い、電力系統の不安定化および余剰電力の

発生が課題となっており、蓄電システムに対するニーズが高まると想定される。アイルラ

ンドの電力システムにおけるニーズを図 I-7 に示す。

補償有無 発動量の比率定義

• 2017年末まで、エネルギー市場価格にて補償される。

28%

風力発電所がEirGrid と• Firm 契約を結んでいる場合は、エネルギー市場価格にて補償される。

• Non-firm 契約を結んでいる場合は、補償されない。

72%

•電力システム全体の制約から、風力発電を受け入れられないときの出力抑制・解列。

•非同期系発電機の発電量比率が50%を超えたときや、電圧調整の必要が生じたときなどに発動される。

•電力システムの局所的な制約から、風力発電を受け入れられないときの出力抑制・解列。

•系統容量の制約で風力発電を受け入れられないときや、系統の定期

点検などの運用停止時に発動される。

Curtailment

Constraint

※ 2013年、EirGrid & SONI 予測

※ Firm 契約は、風力発電所が接続される電力系統が十分に整備されているケースにのみ結ぶことが可能である。

Dispatch-downの補償の適用対象は限定的

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- 7 -

図 I-7 アイルランドの電力システムにおけるニーズ

1.4 蓄電システムの市場規模

アイルランドでは、2020 年までに累計 1,209MWhの蓄電システムが導入されると想定し

ている。

表 I-3 蓄電システム市場規模 (2015~2020 年累積)

注 1)四捨五入により合計が一致しない場合がある。

出所)コンソーシアム推計

電力システムの特徴 課題 ニーズ

風力発電導入の拡大

• 2020年までに消費電力量の40%を再エネ由来に

電力系統の不安定化

• 出力変動の激しい風力発電の導入拡大に伴う系統の不安定化 即応性の高いリソースに

対するニーズ

• 2020年までに消費電力量の40%を再エネ由来に

需給調整対応のために既存火力発電を非効率に運転

余剰電力の発生

• 風力発電導入量の拡大に伴い curtailment (余剰電力に起因する出力抑制)が拡大

海洋発電導入の拡大

• 実証を計画中

蓄電システムに対するニーズ

• 発電事業者ESB は蓄電システムの導入を検討

短周期 中長周期 合計

アイルランド11MWh

16百万USD

1,198MWh

731百万USD

1,209MWh

747百万USD

欧州(イギリス、イタリア、ドイツ)

98MWh

145百万USD

2,976MWh

1,815百万USD

3,074MWh

1,960百万USD

北米(PJM、カリフォルニア)

113MWh

180百万USD

4,980MWh/年3,040百万USD

5,090MWh/年3,220百万USD

合計222MWh

341百万USD

9,154MWh

5,587百万USD

9,376MWh

5,927百万USD

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2 制約条件の調査

本章では、蓄電池を用いた事業の制約となるような政策動向について示す。加えて、ヒ

アリング調査等を通じて、系統管轄官庁や系統運用機関の意向についても確認を行った。

2.1 電力市場改革動向

2014 年 12 月に、CER よりアンシラリー・サービス市場設計の high-level design が公表

された。その概要を図 I-8 に示す。

図 I-8 蓄電システムに関連する卸電力市場ルール(2014 年 12 月公表事項)

出所) SEM Committee DS3 System Services Procurement Design and Emerging Thinking / Decision

Paper”より NRI 作成

蓄電池はアンシラリー・サービス市場に参入することができる。また、放電レートの大

きい LIB の場合、大きな容量での入札が可能となっている。

アイルランドのアンシラリー・サービス市場では、表 I-4 に示すサービス・プロダクトの

導入が検討されている。

蓄電池の市場参入可否

最低容量

「容量」の定義

エネルギー市場・アンシラリー・サービス市場の双方に参入可能。

現時点で規定なし。

各サービス・プロダクトに対応できるだけの容量で入札可能*。

* 例えば、最大2C放電が可能な電池が 1 MWh あった場合、放電時間が30分以下のサービス・プロダクトには 2MWでの入札が可能。

取引量

取引価格

シグナル

複数プロダクトへの同時入札可否

シグナル頻度

シグナルの特徴吸い込み

シグナルの有無シグナル平均

持続時間シグナルの季節性・時間依存性

価格決定方式

契約期間

インセンティブ(Scalar)

支払い方式(Payment basis)

予想取引価格

ペナルティ

収入保証

2017年10月以降、Pre-Qualification Process で十分な競争が想定される場合はオークション方式、そうでない場合は規制価格方式が採用。

すべてのサービス・プロダクトに availability payment が適用される。

新規設備とは1~15年、既存設備とは1年契約となる。ただし SEM

Committee の承認が得られた場合には 20年までの契約が可能。

可能。

不明。

TSO は、各サービス・プロダクトの予想調達量を2015年Q1より検討する。

導入されない見込み。

TSO は、各サービス・プロダクトの予想調達量を2015年Q1より検討する。

入札時に “minimum annual revenue requirement” を指定することが可能で、落札できれば TSO にはこの支払い義務が生じる。

2015年以降のDetailed design の段階で設計される。

実績の優れたリソースに対するインセンティブとして、Performance

Scalar, Scarcity Scalar, Volume Scalar, Product Scalar が導入される。

現時点で不明。

項目 決定事項

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表 I-4 導入が検討されているアンシラリー・サービスのサービス・プロダクト

出所) EirGrid

すべてのサービス・プロダクトに対して availability payment が導入され、かつ契約期間

も 1 年以上の長期が採用されたことから、事業者は安定した収益が期待できることとなっ

た。ただし availability payment とは、「アンシラリー・サービスが提供可能である時間」に

対して報酬が支払われる方式を指す。一方、「実際に提供したアンシラリー・サービスの量」

に対して報酬が支払われる方式は dispatch payment とよばれる。Dispatch paymentの場合、

事業者の収益はサービス・プロダクトの発動頻度に大きく影響を受けることになる。2014

年 7 月に CER より公表された consultation paper(パブリック・コメント)では、サービ

ス・プロダクトのうち POR など 7 つに dispatch payment が適用される方針であった。そ

のため、2014 年 12 月の決定は、事業者の収益に関するリスクが大きく低減することとな

った。

価格については、2016 年 10 月 1 日から 2017 年 9 月 30 日までの期間は、すべてのサー

ビス・プロダクトに対して規制価格が導入される見込みである。以降はサービス・プロダ

クトごとに競争が十分に発生するかを規制機関が判断し、その判断に応じて価格決定方式

が異なる。競争が十分に発生すると規制当局が判断した場合には、オークション方式によ

り決定されるが、競争が十分に発生しないと判断した場合は、TSOがコストプラス方式で

算出した規制価格が採用される(図 I-9)。

また、高い信頼性を示すリソースや、応答の速いリソースに対して報酬にインセンティ

サービス用途 サービスプロダクト 反応時間 持続時間

系統周波数安定化

Synchronous Inertial Response N/A N/A

Fast Frequency Response 2 sec 8 sec

Primary Operating Reserve (POR) 5 sec 15 sec

Secondary Operating Reserve (SOR) 15 sec 90 sec

Tertiary Operating Reserve 1 (TOR1) 90 sec 5 min

Tertiary Operating Reserve 2 (TOR2) 5 min 20 min

Replacement Reserve (De-Synchronised; RRD) N/A 20-60min

Replacement Reserve (Synchronised; RRS) N/A 20-60min

Ramping Margin 1 N/A < 1hr

Ramping Margin 3 N/A < 3hr

Ramping Margin 8 N/A < 8hr

系統電圧安定化

Dynamic Reactive Power capability N/A N/A

Fast Post-fault Active Power Recovery N/A N/A

Steady-state Reactive Power N/A N/A

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ブが導入される見込みであり、蓄電池にとって有利となる可能性がある(図 I-10)。その他、

TSOのアンシラリー・サービス市場向け支出が大きくならないような制度が導入される予

定である。

今後、2015 年以降詳細設計フェーズに入り、2017 年には競争入札が実施される予定であ

る(図 I-11)。今後は規制価格の決定方式やオークションの詳細設計等に関する検討が行わ

れる見込みである(図 I-12)。

図 I-9 サービス・プロダクトの価格決定方式

出所) SEM Committee DS3 System Services Procurement Design and Emerging Thinking / Decision

Paper”より NRI 作成

十分な競争が起こるか?(SEM が判断)

暫定規制価格方式(Interim Regulated Tariff)

オークション方式(Competitive Procurement)

• 価格はコストプラス方式により決定。

• TSO は、価格決定方法を確立し、SEM Committee に承認を得る必要がある。

• 規制価格は、すべてのサービス・プロバイダに対して支払われる。

• 封印入札方式(sealed-bid)、pay-as-cleared方式のオークション。

• 相互排他的な複数の入札が可能。

• 入札時に価格およびサービスごとの提供容量を申告。

• 入札時には最低年間収入保証(minimum annual revenue

requirement)を申告することが可能。落札した場合、TSO は落

札者に対して、稼働状況に関わらず最低年間収入保証分を支払わなければならない。

十分でない場合

十分な場合

2016年10月1日~2017年9月30日

規制価格方式(Regulated Tariff)

• 「暫定規制価格方式」と同様。

2017年10月1日以降日程

価格決定方式

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図 I-10 Scalar と蓄電池にとっての意味合い

出所) SEM Committee DS3 System Services Procurement Design and Emerging Thinking / Decision

Paper”より NRI 作成

図 I-11 今後の DS3 System Services スケジュール

出所) SEM Committee DS3 System Services Procurement Design and Emerging Thinking / Decision

Paper”より NRI 作成

Performance Scalar

• 高いパフォーマンスを示すリソースに対する報酬を高くするために、落札価格に乗じられる指標。

• 信頼性(reliability)が90%以上のリソースは1、50%未満のリソースは0となる。• 信頼性50%以上90%未満のリソースの performance scalar や、信頼性の測定方法・定義は detailed design phase にて設計される。

各種 Scalar とその内容

Scarcity Scalar

• アンシラリー・サービスが不足する時間帯や、アンシラリー・サービスが不足している地域にサービスを提供するリソースに対して適用される。

• 不足が認められる場合には、1以上2未満scarcity scalar が適用される。• 具体的な内容はdetailed design phase にて設計される。

Volume Scalar

• 価格が不当に高騰することを防止する指標で、オークション方式によって落札したサービス・プロバイダのリソースがすべてサービス提供可能でない場合に適用される。

• 詳細な内容はdetailed design phase にて設計される。

Product Scalar

• 効率的なサービス提供が可能なリソースや、規定された時間よりも速く応答できるリソースに対してインセンティブを与える指標で、サービス・プロダクトごとに定義される。

• 詳細な内容はdetailed design phase にて設計される。

蓄電池は正確に応答できるため、高い報酬を得られる可能性が高い。

火力発電設備よりも蓄電池は設置場所の自由度が高く、アンシラリー・サービスが不足する地域に設置することも可能。

FFRの反応時間(2秒)よりも速く応答できる蓄電池が有利となる可能性がある。

蓄電池にとっての意味合い

2015年 2016年 2017年

Q1 Detailed Design Phase 開始

• 詳細設計は2017年まで実施される。

Q1 調達方針作成(TSO)

• サービス・プロダクトごとの調達量や、契約期間ごとの調達量の決定方法などをTSOが設計する。

Q2 RoCoF Implementation Project の18ヶ月目フェーズの終了

• アイルランドおよび北アイルランドの Grid Code設計プロジェクトの節目。

Q2 暫定規制価格の運用開始

• 完全競争までの経過措置として、暫定規制価格が運用される。

Q1 オークション開始

Q4 競争入札方式で調達されたサービスの提供開始

* 詳細なスケジュールは2015年Q1に公表される予定。

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図 I-12 DS3 System Services におけるワークストリーム

出所) SEM Committee DS3 System Services Procurement Design and Emerging Thinking / Decision

Paper”より NRI 作成

2.2 政策担当者の意向

アイルランドは、拡大する風力発電に対応するための手段として、蓄電池に対する期待

が大きい。例えば、関係者からは以下のようなコメントを得ている。

「アイルランドは、蓄電池に関心を持っている。DCENR は現在、University of Ulster や

SEAI(Sustainable Energy Authority Ireland;政府持続可能エネルギー局)らと共同で、あ

らゆる種類の蓄電システムの実用可能性に関する調査を行っている。対象となる蓄電シス

テムは、家庭に設置する小規模のものから、系統用の大型蓄電池や氷蓄熱、大型の CAES

(Compressed Air Energy Storage)にまで及ぶ。」(DCENR 担当者)

2.3 競合動向

アイルランドでは、AES と Gaelectric が蓄電システムの導入を検討している(図 I-13)。

WS1Regulated Tariffs

• 規制価格の算定方式

WS2System Service

Volumes• 将来のサービス・プロダクト調達量の予測方法

WS3Pre-Qualification Process Design

• Pre-qualification process において、各サービス・プロバイダに求めるデータ等のガイドライン

WS4Auction Design

• 入札プロセス設計• 入札の評価方法

WS5Contract Design

• 契約条項等

WS6Product Design

and I-SEM

• サービス・プロダクト提供状況の計測方法• 各種scalarの定義• 容量市場やエネルギー市場への影響

ワークストリーム 検討内容

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図 I-13 AES および Gaelectric のアイルランドでの事業内容

蓄電システム関連の動向

• IPP として、北アイルランドにて下記の発電所を運営。− Kilroot発電所(石油および石炭、合計618MW)− Ballylumford発電所(ガスおよび石油、合計1,213MW)

• アイルランドおよび英国において、約60MWの風力発電所の運営。

• 今後90MW以上の風力発電所の建設・運営を検討中。

【参考】DS3 Consultation回答における蓄電システムに関する

言及

• 特になし。• DS3 の市場設計の方向性が見えないため、CAES のプロジェクトへの投資が妨げられていると不満を示している。

• 2015年末までに、北アイルランド Kilroot発電所に10MWのリチウムイオン電池を併設予定。− 風力の余剰電力の吸収が主な用途。

• 2017年末までに同プラントを100MWに拡大することを

計画。

• 北アイルランドで、CAES (Compressed Air Energy

Storage) の建設を計画中。• ほか、大型蓄電池プロジェクトにも関心を示している。

アイルランド島での事業内容

AES Gaelectric

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3 蓄電システム特性の把握

本章では、NAS とリチウムイオン電池を組み合わせたハイブリッド蓄電システムの、他

の同等技術に対する優位性を明確化する。

3.1 NAS および LIB の特性に関する調査

大容量蓄電池(自己放電なし)が特徴の NAS 電池と、高速ハイレート特性の LIB 電池を

組合せた最適なハイブリッド制御方式で、短周期から長周期を制御対象とすることができ

る。

3.2 ハイブリッド蓄電システムの優位性の明確化

適切なハイブリッド蓄電制御(LIB/NAS)にて、短時間から長時間までの全てのアンシラ

リー・サービス・メニュー(系統周波数安定化、系統電圧安定化)に対応することが可能

である。

表 I-5 アイルランドのサービス・プロダクトとハイブリッド蓄電システムの対応可能性

◎:最適(●適用中),○可,-:不適

注 1) 適/不適は,技術的観点ではなく,費用対効果の観点で評価

注 2) NAS 電池は,LIB の充放電限界時の補完充放電等に使用

サービス用途 サービスプロダクト反応時間

持続時間

回転機系発電

単種蓄電制御(LiB)

ハイブリッド蓄電制御(LiB/NAS)

備考

系統周波数安定化 Synchronous Inertial ResponseN/A N/A ○ ○ ◎

Fast Frequency Response2 sec 8 sec - ◎ ◎

Primary Operating Reserve (POR)

5 sec 15 sec ● ◎ ◎

Secondary Operating Reserve (SOR)

15 sec 90 sec ● ◎ ◎

Tertiary Operating Reserve 1 (TOR1)

90 sec 5 min ● ◎ ◎

Tertiary Operating Reserve 2 (TOR2)

5 min 20 min ● ◎ ◎

Replacement Reserve (De-Synchronised; RRD)

N/A 20-60 min ● ○ ◎

Replacement Reserve (Synchronised; RRS)

N/A 20-60 min ● ○ ◎

Ramping Margin 1N/A < 1hr ◎ ○ ◎

主にNAS電池でサービスに対応

Ramping Margin 3N/A < 3hr ◎ ○ ◎

同上

Ramping Margin 8N/A < 8hr ◎ ○ ◎

同上

系統電圧安定化 Dynamic Reactive Power capability

N/A N/A ○ ○ ◎日本製LiBの特長を活かす工夫要。NASは主にLiB充放電補完(注2)に主に使用

Fast Post-fault Active Power Recovery

N/A N/A - ○ ◎

Steady-state Reactive PowerN/A N/A ◎ ○ ◎

主にNAS電池でサービスに対応

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4 卸電力市場のサービス・プロダクトの把握

本章では、アイルランドのアンシラリー・サービス市場において導入が検討されている

サービス・プロダクトを調査する。なお、サービス・プロダクトとは、アンシラリー・サ

ービス市場において取引される商品のことであり、多くの場合、出力指令から定められた

出力に引き上げるために要する時間(反応時間;response time)と、それを持続する時間

(持続時間;duration)により規定される。

サービス・プロダクトの中でも Fast Frequency Response(FFR)は、要求される「反応

時間」が短いため、放電レートの高い LIB にとって有利なものとなっている。

表 I-6 アイルランドにおけるサービス・プロダクトと蓄電池の対応可能性

FFR は、主に周波数過渡現象時(Frequency transient event)に発動されるものとみられ

る。過去の周波数過渡現象の一覧を表 I-7 に示す。周波数過渡現象の頻度は、月 2.8 回程度

である。すなわち、FFR の発動頻度は非常に小さいと想定される。ただし、風力発電の増

加に伴い電力系統が不安定になることで、将来的にこの頻度は大きくなると考えられる。

なお、周波数過渡現象には、季節性・時間依存性はみられない(図 I-14、図 I-15)。

目的 サービス・プロダクト ステータス 反応時間 持続時間価格

(€/MW/h,

EirGrid想定)

サービス提供可能性*

LIB NAS

周波数調整

Synchronous Inertial Response 新規 N/A N/A 0.00052

Fast Frequency Response 新規 2 sec 8 sec 4.93

Primary Operating Reserve (POR) 既存 5 sec 15 sec 3.55

Secondary Operating Reserve (SOR) 既存 15 sec 90 sec 1.58

Tertiary Operating Reserve 1 (TOR1) 既存 90 sec 5 min 1.87

Tertiary Operating Reserve 2 (TOR2) 既存 5 min 20 min 1.69

Replacement Reserve (De-Synchronised;

RRD)既存 N/A 20 ~ 60 min 0.094

Replacement Reserve (Synchronised; RRS) 既存 N/A 20 ~ 60 min 0.094

Ramping Margin 1 新規 N/A < 1 hr 0.14

Ramping Margin 3 新規 N/A < 3 hr 0.28

Ramping Margin 8 新規 N/A < 8 hr 0.17

電圧調整

Dynamic Reactive Power capability 新規 N/A N/A 0.19

Fast Post-fault Active Power Recovery 新規 N/A N/A 0.39

Steady-state Reactive Power 既存 N/A N/A 0.14

* : 得意 : 対応可能

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表 I-7 周波数過渡現象詳細 (2010 年 10 月~2013 年 6 月)

出所)EirGrid and SONI “Frequency Transient Analysis DS3 Enhanced Performance Monitoring”

No

Dat

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Tim

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MW

Lo

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Nad

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15

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cs

H/MM/SS MW Hz MW MW MW % Hz/sec Hz/sec1 2010/10/13 132912 440 49.589 4716 22 244 5.63 0.22 0.052 2010/11/27 101515 399 48.85 4686 557 412 20.69 0.21 0.143 2010/12/12 201257 400 49.591 4985 747 442 23.84 0.13 0.055 2010/12/26 93146 138 49.693 3743 1420 442 49.76 0.08 0.036 2011/1/2 81128 286 49.498 3052 57 424 15.78 0.06 0.029 2011/1/23 235915 350 49.471 4072 110 425 13.14 0.17 0.15

10 2011/2/11 150655 363 49.569 4873 279 444 14.83 0.2 0.0513 2011/5/25 144825 403 49.225 4718 1240 406 34.89 0.25 0.0314 2011/5/25 185034 365 49.435 4371 939 404 30.72 0.23 0.0415 2011/5/28 10727 260 49.546 2908 902 257 39.84 0.11 0.0317 2011/6/11 234257 272 49.446 3036 390 380 25.33 0.13 0.0318 2011/7/7 20541 194 49.663 2619 290 63 13.47 0.09 0.0419 2011/7/14 31226 240 49.56 2513 82 63 5.75 0.19 0.0420 2011/8/12 185137 285 49.469 4184 655 246 21.52 0.17 0.0421 2011/8/13 61031 280 49.471 2724 563 35 21.96 0.24 0.0322 2011/8/15 94801 292 49.625 4470 171 245 9.32 0.11 0.0223 2011/8/24 130923 247 49.636 4515 451 245 15.42 0.16 0.0424 2011/9/5 103944 388 48.805 4443 458 0 10.3 0.21 0.0225 2011/9/8 222636 407 49.399 3475 441 0 12.68 0.24 0.0527 2011/9/24 105842 347 49.608 4149 640 0 15.42 0.21 0.0428 2011/10/9 112552 340 49.28 4226 1287 0 30.46 0.25 0.0429 2011/10/30 113416 265 49.317 4103 927 0 22.58 0.14 0.0130 2011/11/3 222748 350 49.364 4210 368 0 8.74 0.24 0.0331 2011/11/10 91257 390 49.473 4662 895 0 19.2 0.16 0.0333 2011/11/29 112801 380 49.257 4981 1185 0 23.78 0.16 0.0134 2012/1/4 81717 280 49.582 4463 1427 0 31.99 0.17 0.0338 2012/3/29 155519 364 49.581 4425 267 444 16.05 0.14 0.0339 2012/5/5 62945 265 49.662 3052 191 129 10.48 0.05 0.0240 2012/5/9 103301 265 49.692 4666 189 395 12.52 0.02 0.0141 2012/8/11 92219 218 49.693 3880 859 219 27.78 0.14 0.0243 2012/8/20 135642 395 48.816 4281 519 246 17.85 0.21 0.0544 2012/8/28 153100 100 49.774 4470 1118 246 30.52 0.05 0.0448 2012/9/12 82136 360 49.543 4489 473 777 27.85 0.19 0.0549 2012/9/12 152057 500 49.643 4560 941 776 37.65 0.23 0.0950 2012/9/14 192251 360 49.649 4485 535 247 17.42 0.07 0.0552 2012/9/19 84515 285 49.648 4566 131 247 8.27 0.13 0.0553 2012/9/26 124256 500 49.335 4572 1341 775 46.29 0.25 0.1254 2012/10/1 75811 243 49.663 4365 590 246 19.15 0.19 0.0555 2012/10/10 205753 200 49.559 4348 590 247 19.25 0.08 0.0558 2012/10/30 142014 215 49.761 4822 992 247 25.7 0.12 0.0459 2012/11/4 142135 209 49.78 4247 493 247 17.44 0.11 0.0460 2012/11/6 192848 405 49.118 5419 892 247 21.01 0.21 0.0261 2012/11/10 111847 142 49.796 4396 399 204 13.71 0.01 0.0262 2012/11/20 112815 285 49.756 4871 1574 496 42.5 0.07 0.0563 2012/11/20 172308 310 49.769 5974 1373 496 31.3 0.09 0.0364 2012/12/27 193427 285 49.787 4916 550 496 21.27 0.01 0.0265 2013/1/9 42623 260 49.698 3114 106 496 19.33 0.11 0.0467 2013/1/12 72122 182 49.587 3306 457 291 22.61 0.1 0.0768 2013/1/15 62105 189 49.678 3546 194 253 12.58 0.09 0.0369 2013/1/17 211044 250 49.688 5096 1746 497 44 0.13 0.0570 2013/1/18 163803 245 49.663 5620 816 497 23.36 0.26 0.0471 2013/1/24 22112 250 49.716 3552 181 443 17.57 0.11 0.0472 2013/2/3 22901 128 49.792 3352 1094 295 41.44 0.1 0.0274 2013/2/20 212812 350 49.679 4920 1660 497 43.84 0.06 0.0475 2013/3/5 144501 396 49.537 4809 491 247 15.36 0.19 0.0776 2013/3/20 73437 185 49.782 4474 134 191 7.25 0.08 0.0378 2013/3/22 104450 120 49.719 5350 1610 234 34.47 0.13 0.0679 2013/3/22 193046 223 49.503 5000 1106 16 22.44 0.26 0.1280 2013/4/10 61335 350 49.556 4144 333 -103 7.84 0.14 0.0381 2013/4/13 233142 285 49.372 3499 1514 115 46.54 0.21 0.0983 2013/4/18 101325 395 49.772 4644 1482 217 36.6 0.08 0.0486 2013/5/3 104438 180 49.752 4601 1627 720 51.01 0.1 0.0687 2013/5/6 30945 379 49.245 2576 594 335 36.05 0.29 0.1988 2013/5/10 104022 500 49.213 4504 1112 777 41.92 0.24 0.0890 2013/5/27 212130 357 49.487 3993 383 725 27.75 0.21 0.07

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図 I-14 周波数過渡現象の月別分布(2010 年 10 月~2013 年 6 月)

図 I-15 周波数過渡現象の時間帯別分布(2010 年 10 月~2013 年 6 月)

出所)EirGrid and SONI “Frequency Transient Analysis DS3 Enhanced Performance Monitoring”をもと

に作成

9

3

5

3

9

1

2

7

8

6

9

3

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

回数

0

1

3

2

1

0

4

3

4 4

8

5

1

3

4 4

1 1

2

4

2

3

2

3

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23

回数

時刻

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II 事業計画書

1 有望蓄電システムのスペック設計

本章では、ハイブリッド蓄電システムが対応するサービス・プロダクトを特定した上で、

サービス・プロダクトの技術的要件に対応可能なハイブリッド蓄電システムのスペックを

決定する。ここでは、ハイブリッド蓄電システムで複数のサービス・プロダクトに対応す

ることを含めて検討する。

1.1 アイルランド電力市場における技術的要件の調査

サイト候補地として、Woodhouse Wind Farm が挙げられる。同サイトにて、ハイブリッ

ド蓄電システム運用の可能性を検証した。

表 II-1 Woodhouse Wind Farm 概要

出所)写真:NRI 撮影

所在地 Aglish, Cappoquin, County Waterford

事業者 ESB International

合計出力 20MW

タービン• N90/2500型×3台 (半径45m・2.5MW)• N100/2500型×5台 (半径50m・2.5MW)

運開 2015年4月(予定)

概観

Wind Farm内変電所(建設中)蓄電池設置候補地

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ここでは、アンシラリー・サービスの提供と風力発電の余剰電力吸収の双方が可能であ

る。

調査の結果、Woodhouse Wind Farm の場合、環境面・設備面で蓄電システム設置に重大

な課題はないことが分かった。

1.2 蓄電システムのスペック設計

大容量蓄電池の NAS 電池と、高速ハイレート特性の LIB 電池を組合せたハイブリッド制

御方式で、再エネ(風力余剰+潮流電力)貯蔵と、アンシラリー出力が連続的に可能であ

る。

図 II-1 ハイブリッド蓄電システム設計

なお、仮に NAS4.8MW、LIB1MW の蓄電システムを想定した場合、80m×80m の敷地(面

積)が必要と試算される。

1.3 CAPEX、OPEX の推計

LIB1MW(定格)、NAS4.8MW とした場合、CAPEX は 48.8 億円、OPEX は 9,800 万円と

推計される。

1.4 ハイブリッド蓄電システムの運用方法の決定

風力発電所の抑制・解列分(または海洋発電)を充電し、LIB・NAS それぞれでアンシラ

リー・サービス市場に参入する。なお、NAS は、LIB のバックアップとして利用する。

61

潮流発電

(直流連系)

風力発電(WT)

アンシラリー管理装置

長周期 短周期※D/D:DC/DCコンバータ

※PQ診断装置:電力品質計測分析装置

PQ診断装置

はPQ測定ユニット

直流母線連結

NAS電池 リチウム電池

ハイブリッド制御アンシラリー連係

PCS(蓄電制御装置)

PCS(蓄電制御装置)

D/D

非常用電源

バックアップ電源D/D

D/D

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図 II-2 ハイブリッド利用における電力の流れ

注)例えば、Coomacheo 風力発電所では 12,090MWh/yr(=33MWh/day)の dispatch-down が発生している。

FFR 等のシグナルの頻度が年間 3 回程度であることから、風力発電所の dispatch-down の量は調達量とし

て十分であり、他から電力を調達する必要はないと想定される。

2 電池寿命の推計

アンシラリー・サービスのメニュー(系統周波数安定化、系統電圧安定化)に対し、適

切なハイブリッド制御・運用方式を計画することで寿命的な問題がなく、長期にわたる電

池性能・特性等の発揮が期待できる。

3 市場取引価格の予測

本章では、各サービス・プロダクトの取引価格を推計する。

3.1 各国アンシラリー市場価格動向調査

大型蓄電池の導入が進む米国 PJM では、アイルランドに比べて取引価格が高くなってい

る。ただし、表 II-2 において、米国 PJM の価格が実績であるのに対し、アイルランドの価

格は EirGrid らによる簡易的な推計であることに注意が必要である。

電力調達 サービス提供ハイブリッド蓄電システム

LIB

NAS風力発電所

(Dispatch-down分)

/海洋発電

エネルギー市場

平均価格にて調達

夜間に調達

アンシラリー・サービス市場

エネルギー市場

FFR

FFR

日中に売電

POR

夜間に調達*

: 本アプリケーションにおける電力の流れ

POR

• 単価の高いサービス・プロダクトから順に入札

• LIBが優先的に放電

・・・

LIB放電後、Dispatch-downが発生していない時間帯にはNASから充電

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表 II-2 アイルランドと PJM の市場取引価格比較

注)2013 年 10 月 1 日~2014 年 9 月 30 日の平均値。$1.00=€0.80 として計算。

3.2 アイルランドのアンシラリー市場における取引価格の予測

アイルランドでは他国に比べサービス・プロダクトが細分化されており、特徴の異なる

他国のプロダクト価格をもとに予測することは適当でないと想定される。そのため、本調

査では簡単のために EirGrid らによる予測を用いることとする。(ただし EirGrid らによる予

測では、調達方法に関する言及がないため、価格が availability payment に基づくものなの

か、dispatch payment に基づくものなのか現時点で明らかでない。)

表 II-3 サービス・プロダクトの想定取引価格

LIB NAS

System service product Fast Frequency Response Ramping Margin 3

Delivered by 2 sec N/A

Delivered until 8 sec 3 hr

Payment basis Availability Availability

Estimated rate* € 4.9 / MW / h € 0.28 / MW / h

Corresponding service product

in PJMRegulation Day-ahead Scheduling Reserve

Delivered by 5 min 30 min

Delivered until N/A N/A

Payment basisAvailability + Dispatch

(Performance)

Availability + Dispatch

(Performance)

Average price** $ 42.5 / MW / h (≈ € 34.0) $ 0.6 / MW / h (≈ € 0.50)

目的 サービス・プロダクト ステータス 反応時間 持続時間価格

(€/MW/h,

EirGrid想定)

周波数調整

Synchronous Inertial Response 新規 N/A N/A 0.00052

Fast Frequency Response 新規 2 sec 8 sec 4.93

Primary Operating Reserve (POR) 既存 5 sec 15 sec 3.55

Secondary Operating Reserve (SOR) 既存 15 sec 90 sec 1.58

Tertiary Operating Reserve 1 (TOR1) 既存 90 sec 5 min 1.87

Tertiary Operating Reserve 2 (TOR2) 既存 5 min 20 min 1.69

Replacement Reserve (De-Synchronised; RRD) 既存 N/A 20 ~ 60 min 0.094

Replacement Reserve (Synchronised; RRS) 既存 N/A 20 ~ 60 min 0.094

Ramping Margin 1 新規 N/A < 1 hr 0.14

Ramping Margin 3 新規 N/A < 3 hr 0.28

Ramping Margin 8 新規 N/A < 8 hr 0.17

電圧調整

Dynamic Reactive Power capability 新規 N/A N/A 0.19

Fast Post-fault Active Power Recovery 新規 N/A N/A 0.39

Steady-state Reactive Power 既存 N/A N/A 0.14

* : 得意 : 対応可能

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4 事業の経済性試算

本章では、「VI 電池寿命の推計」や「VII 市場取引価格の予測」を踏まえ、本事業の経

済性を試算する。

アイルランドでは現在、DS3 System Services を通じてアンシラリー・サービス市場の改

革を行っているため、本調査では今後の政策シナリオとして次の 2 つを用意する。

シナリオ A は、アンシラリー・サービス市場が、目下検討中の方向性のまま導入される

「ベース・シナリオ」である。一方シナリオ B は、余剰電力の活用にインセンティブが付

与される「余剰電力インセンティブ・シナリオ」を想定する。シナリオ B では、ハイブリ

ッド蓄電システムを用いたアンシラリー・サービスの提供と同時に、余剰電力を用いたエ

ネルギー取引を行うことを想定する。

本調査における経済性試算の全体像を図 II-3 に示す。なお、本調査では仮に、「経済性が

成り立つ」を、「税引前プロジェクト IRR が 10%以上となること」と定義する。

図 II-3 経済性試算の全体像

注)ここでは仮に、税引前 IRR 10%を「経済性が成立する」基準とする。

A.ベース・シナリオ

• 現在、アイルランドで検討されているアンシラリー・サービス市場の設計を想定

• 各サービス・プロダクトの価格は、過去にEirGridらが予測したものを使用

B.余剰電力インセン

ティブ・シナリオ

• 上記ベースシナリオに加えて、余剰電力の吸収に対してインセンティブが付与されることを想定

政策シナリオ 政策シナリオ内容 分析内容

• 現行の蓄電システム価格で、経済性が成立する(*)ようなサービス・プロダクト価格水準の推計

• 現行の蓄電システム価格で、経済性が成立する(*)ようなサービス・プロダクト水準の推計

• 現行のサービス・プロダクト価格水準で経済性が成立する(*)ような蓄電システム価格の推計

• 余剰電力を夜間に吸収し、日中に放電するモデルにおいて、経済性が成立する(*)ような夜間電力水準の推計

• アンシラリー・サービスによる収益が大きいため、LIBでFFRをはじめとする

即応性の高いプロダクトに対応し、NASをLIBのバックアップに利用する

• LIBでFFRをはじめとする即応性の高いプロダクトに対応する

• NASで余剰電力を充電し、

日中に放電する

蓄電池のアプリケーション

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4.1 ベース・シナリオ

ベース・シナリオにおいては、風力発電所の抑制・解列分を充電し、LIB・NAS それぞれ

でアンシラリー・サービス市場に参入するモデルを想定する。なお NAS は、主に LIB のバ

ックアップとして利用する。

図 II-4 ベース・シナリオにおけるハイブリッド蓄電システムの運用方法

アンシラリー・サービスのみを提供するベース・シナリオにおいては、LIB 容量が大きい

ほど、経済性が高くなる。これは、LIB の放電レートが大きいため、NAS よりも大きい容

量で入札できるためである。特に、高い取引価格が想定されている FFR は、持続時間が 8

秒と短いため、LIB は大きい容量での入札が可能となっている。

なお FFR は、availability に対して支払いが行われる一方、表 I-7 に示したように発動頻

度が小さい。したがって、蓄電システムが充電しなければならない電力量も小さいため、

dispatch-down の買取価格が事業に与える影響は僅少である。

ベース・シナリオにおいて経済性を大きく左右するのが、LIB の放電レートである。ハイ

ブリッド蓄電システムの経済性が成り立つためには、LIB を高い放電レートで運用する必要

がある。図 II-5 は、LIB:4MW、NAS:1MW から構成されるハイブリッド蓄電システムの

経済性が成り立つために、FFR 価格がいくらであるべきかを試算したものである。なお同

試算では、FFR 以外のサービス・プロダクトの価格を EirGrid らの推計値で固定している。

同図より、一般的な LIB の放電レートとされる 2C~4C 程度では、FFR 価格を現在の予想

水準から大幅に引き上げなければ経済性が成立しないことが見て取れる。

電力調達 サービス提供ハイブリッド蓄電システム

LIB

NAS

風力発電所(Dispatch-down分)

エネルギー市場

平均価格にて調達

夜間に調達

アンシラリー・サービス市場

エネルギー市場

FFR

FFR

日中に売電

POR

夜間に調達*

: 本アプリケーションにおける電力の流れ

POR

• 単価の高いサービス・プロダクトから順に入札

• LIBが優先的に放電

・・・

LIB放電後、Dispatch-downが発生していない時間帯にはNASから充電

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図 II-5 税引前プロジェクト IRR10%を達成するために必要な FFR 価格

【前提条件】

LIB が未充電時に FFR シグナルを受け取ってしまう場合に備えて、同 MWh容量の NAS を保有する

ケースを想定。

蓄電システム価格は現在の価格を想定。また、政策は、現在 DS3 System Services にて検討されてい

るものを勘案し、サービス・プロダクトの価格水準は、EirGrid らによる予測を使用。

本試算においては、放電レートと放電可能時間の関係を簡易的に求めたため、他の試算結果と異なる

場合がある。

0

10

20

30

40

50

60

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

税引前プロジェクト

IRR

10%を達成するために必

要な

FF

R価格

[€/M

W/h

]

リチウムイオン電池の放電レート [C]

EirGridらによる予想価格

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4.2 余剰電力インセンティブ・シナリオ

余剰電力インセンティブ・シナリオにおいては、LIB がアンシラリー・サービスに参入す

る一方、NAS は、LIB のバックアップおよび風力の余剰電力を利用したエネルギー取引を

毎日行う(図 II-6)。

図 II-6 余剰電力インセンティブ・シナリオにおけるハイブリッド蓄電システムの運用方法

Dispatch-down のほぼ全量を充電するために、NAS:4.8MW、LIB:1MW からなる蓄電

システムを想定した。具体的な容量決定方法を図 II-7 に示す。

図 II-7 余剰電力インセンティブ・シナリオにおける容量決定方法

出所)EirGrid and SONI (2014) “Annual Wind Constraint and Curtailment Report 2013”より NRI 作成

電力調達 サービス提供ハイブリッド蓄電システム

LIB

NAS

風力発電所(Dispatch-down分)

エネルギー市場

平均価格にて調達

夜間に調達

アンシラリー・サービス市場

エネルギー市場

FFR

FFR

日中に売電

POR

夜間に調達*

: 本アプリケーションにおける電力の流れ

POR

• 単価の高いサービス・プロダクトから順に入札

• LIBが優先的に放電

・・・

LIB放電後、Dispatch-downが発生していない時間帯にはNASから充電

国 County 名称設備容量

(MW)発電量(MWh)

Dispatch

-down (MWh)

Dispatch

-down 比率

NI Antrim Garves 15 42,300 454 1.1%

Antrim Gruig 25 63,216 449 0.7%

Londonderry Altahullion 2 11.7 30,619 422 1.4%

Londonderry CarnHill 13.8 22,131 223 1.0%

Londonderry Curryfree 15 48,988 835 1.7%

Londonderry Slieve Kirk 74 130,086 2,837 2.2%

Tyrone Carrickatane 20.7 50,581 394 0.8%

Tyrone Crighshane 32.2 68,655 1,085 1.6%

Tyrone Screggagh 20 51,241 964 1.9%

Tyrone Slieve Divena 1 30 66,670 784 1.2%

Tyrone Churchill 18.4 42,802 256 0.6%

Fermanagh Slieve Rushen 2 54 152,991 2,810 1.8%

Fermanagh Tappaghan 28.5 75,476 916 1.2%

Donegal Beam Hill 14 39,559 4,371 11.0%

Donegal Meentycat 84.96 219,860 27,410 12.5%

Donegal Sorne Hill 38.9 98,117 9,896 10.1%

IRE Sligo Kingsmountain 2 11.05 29,312 416 1.4%

Leitrim Garvagh 1 26 90,754 1,133 1.2%

Leitrim Garvagh 2 22 60,710 842 1.4%

Cavan Bindoo 48 118,740 1,888 1.6%

Clare Booltiagh 1 19.45 37,626 775 2.1%

Clare Booltiagh 2 3 10,664 411 3.9%

Dublin Lisheen 1 36 104,644 2,193 2.1%

Dublin Lisheen 1a 19 42,164 576 1.4%

Laois Gortahile 20 65,362 794 1.2%

Galway Derrybrien 59.5 130,756 9,849 7.5%

Wexford Ballywater 42 96,002 5,289 5.5%

Wexford Castledockrell 41.4 105,836 1,054 1.0%

Wexford Richfield 27 69,300 705 1.0%

国 County 名称設備容量

(MW)

発電量

(MWh)

Dispatch-down (MWh)

Dispatch-down 比率

IRE Tipperary Glenough 32.5 117,387 1,368 1.2%

Limerick Dromada 28.5 74,844 1,432 1.9%

Limerick Dromdeeveen 27 90,778 1,254 1.4%

Limerick Grouse Lodge 15 46,959 702 1.5%

Limerick Knockawarriga 22.5 64,910 649 1.0%

Limerick Rathcahill West 12.5 46,091 647 1.4%

Limerick Tournafulla 17.2 50,678 1,033 2.0%

Cork Ballybane 29.9 71,734 174 0.2%

Cork Boggeragh 57 181,058 8,685 4.8%

Cork Bawnmore 24 74,024 2,343 3.2%

Cork Coomacheo 59.225 183,645 12,090 6.6%

Kerry Ballincolling Hill 13.3 37,055 552 1.5%

Kerry Coomagearlahy 1 42.5 113,631 7,845 6.9%

Kerry Coomagearlahy 2 8.5 24,544 1,032 4.2%

Kerry Coomagearlahy 3 32.5 83,809 2,144 2.6%

Kerry Clahane 37.8 108,056 1,247 1.2%

Kerry Glanlee 29.8 83,808 7,267 8.7%

サイトあたり平均 dispatch-down: 7.8MWh/日

Dispatch-down をほぼすべて充電できるようにするため、NAS を 4.8MW (=19.2MWh) 導入すると想定*

* サイトごとのDispatch-downの日次変動等は今後要検証。

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図 II-6 に示した運用方法は、ベース・シナリオの場合と異なり、毎日風力発電所から余剰

電力の充電を行うため、余剰電力の買取価格が事業に与える影響は大きい。

表 II-4 は、NAS:4.8MW、LIB:1MW からなる蓄電システムについて、経済性が成り立

つために必要な追加インセンティブを、余剰電力の買い取り価格別に試算したものである。

ここで「追加インセンティブ」とは、余剰電力を日中に売電することに対して付加される

もので、日中の売電価格に上乗せされる価格と定義する。表 II-4 より、余剰電力の買い取り

価格がゼロであったとしても、依然として€155/MWh の追加インセンティブが必要となる

ことが見て取れる。

表 II-4 経済性成立に必要な追加インセンティブ

【前提条件】

蓄電システム価格は、価格低減が進み現在の 75%と想定。

政策は、現在 DS3 System Services にて検討されているものを勘案し、サービス・プロダクトの価格

水準は、EirGrid らによる予測を使用。

エネルギー価格は過去の日次最高値・最安値・平均価格データおよび前日の価格推移をもとに推計。

ただし、NAS と LIB の容量配分を変化させ、LIB の容量を大きくすれば、必要な追加イ

ンセンティブをアイルランド政府が許容可能な水準にまで引き下げることが可能である。

図 II-8 は、NAS と LIB の容量配分別に、経済性が成り立つために必要な追加インセンティ

ブを試算したものである。将来的に蓄電事業を実施する際には、余剰電力の利用に対する

インセンティブを勘案しながら、容量配分を決定する必要がある。

余剰電力買い取り価格シナリオ余剰電力買い取り価格

[€/MWh]

経済性成立に必要な追加インセンティブ

[€/MWh]

風力発電事業者が保証されている売電価格よりもやや安い価格で買い取り

• Reference priceよりも10%安い水準で買い取ることを想定する

62.6 240

エネルギー市場と同水準の価格で買い取り

• Dispatch-downが発生する夜間に買い取ることを想定する

32.5 200

価格ゼロで買い取り 0 155

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図 II-8 容量配分別の必要追加インセンティブ

【前提条件】

蓄電システム価格は、価格低減が進み現在の 75%と想定。

政策は、現在 DS3 System Services にて検討されているものを勘案し、サービス・プロダクトの価格

水準は、EirGrid らによる予測を使用。

エネルギー価格は過去の日次最高値・最安値・平均価格データおよび前日の価格推移をもとに推計。

詳細なデータを ESB から取得予定。

Dispatch-down の買取価格はゼロと想定。

なお、アンシラリー・サービスの提供や、エネルギー市場での取引以外では、容量市場

での取引(capacity payment)が収益源となる可能性がある。

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

3.4 3.6 3.8 4.0 4.2 4.4 4.6 4.8

必要追加インセンティブ

[€/M

Wh]D

isp

atc

h-d

ow

n充電量

[MW

h/y

r]

NAS容量 [MW]

Dispatch-down充電量 必要追加インセンティブ

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

2.4 2.2 2.0 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0

必要追加インセンティブ

[€/M

Wh]D

isp

atc

h-d

ow

n充電量

[MW

h/y

r]

LIB容量 [MW@1C]

Dispatch-down充電量 必要追加インセンティブ

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5 アイルランド政府への提案

経済性試算結果や、蓄電システムの利用が進む他のアンシラリー・サービス市場の制度

設計をもとに、アイルランド政府等に対して、蓄電システムの導入を促すような制度の提

案を行った。調査期間中に 2 回、アイルランドにて制度設計のステークホルダーとのミー

ティングを実施し、制度設計に関する提案を行った。

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6 事業展開戦略の検討

本章では、FS 調査結果を踏まえて、他国への蓄電システム事業展開戦略を示す。

6.1 事業戦略の検討

蓄電システムの普及戦略として、以下の 2 ステップを想定している。

① アイルランドでの事業実証後は、三菱商事がアイルランド現地のパートナー(ESB

等)と共に出資を行い、アンシラリー・サービス事業会社を設立する。蓄電システ

ムの EPC コントラクター、O&M およびオペレーターは ESB が担当する事を想定し

ている。メーカ各社は機器供給に加え、SV 派遣等により ESB をサポートする。

② アイルランドでの実績を構築した上で、欧米諸国への横展開を図る。

ほか、戦略の実行にあたっては、各国政府の制度設計及び制度変更リスクの見極め、

電力分野での実績と経験の豊富な現地企業とのパートナリング、蓄電池及びシステムの

コストダウン、プロジェクト・ファイナンス組成の追求が必要となる。

6.2 10 年後の目指すべきビジョンの策定

系統用大型蓄電システムの市場規模は、図 II-8 に示す通り、今後増加していくことが想定

される。再生可能エネルギーの増加にともない、電力系統の不安定化と余剰電力の問題が

世界各地で顕在化してくると予想されるためである。

シェアは、系統用蓄電池の分野で 10%程度(2025 年時点)を見込んでいる。日本独自の

技術で長時間の充放電が可能な NAS 電池と、世界トップクラスの放電レートを誇るリチウ

ムイオン電池を活用することにより、今後のシェア拡大を目指す。

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図 II-9 蓄電システム市場規模

6.3 5 カ年程度の事業計画の策定

アイルランドでの実証実施後、同国内で SPC を設立し、蓄電事業を展開する。また、2020

年以降、ドイツをはじめとした他の欧州諸国に展開する。

6.4 事業実施体制の検討

アイルランド国内での事業化に際しては、SPC を ESB 等と共同で設立する。

6.5 資金調達計画の検討

長期サービス契約が締結できれば、プロジェクト・ファイナンス組成の可能性があると

想定している。

6.6 リスク分析

ポリティカル・コマーシャルともに、リスクは限定的と想定される。ハイブリッド蓄電

システムの新規性が故の技術リスク、今後政府が決定する収入価格に関するリスクは、実

証を通じて低減を図る。

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2015 2020 2025

市場規模(m

US

D)

アイルランド 欧州(イギリス、イタリア、ドイツ) 北米(PJM、カリフォルニア)

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6.7 課題の抽出および対応策の検討

相手国政府及びパートナー企業との関係を更に強化し、アイルランド政府への制度改革

への働きかけを通じて主な課題に対応する。

6.8 政策の活用の検討

NEDOの国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業を活用予定である。

6.9 国内経済への波及効果の試算

蓄電システムの導入により、2015~2020 年で累計 450-760 億円の経済波及効果、

2,000-3,400 人の雇用効果が見込まれる。

表 II-5 蓄電システム導入による国内への経済波及効果(2015~2020 年の累計)

6.10 エネルギー削減効果

ハイブリッド蓄電池の導入により、表 II-6 に示す 2 つの効果が期待できる。

表 II-6 蓄電システム導入の効果

項目 国内経済効果

経済波及効果 直接効果 270~450億円

一次波及効果 300~500億円

二次波及効果 150~260億円

合計 450~760億円

雇用効果 直接雇用効果 830~1,400人

間接雇用効果 1,200~2,000人

合計 2,000~3,400人

火力発電の非効率運転の回避

Dispatch-downの有効活用

現状ハイブリッド蓄電池導入の効果

予備力確保のために、低負荷で運転。結果、非効率な運転となっている

再エネ電力の一部をdispatch-downとして捨てている

蓄電地で即応性の高いプロダクトに対応、火力の高効率運転を可能に

Dispatch-downの有効活用

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上記の効果を勘案すると、LIB1.0MW(定格)、NAS4.8MW の蓄電システムの導入により、

年間 170GWh の省エネ・代エネ効果が期待される。