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www.pwc.com/jp コンシューマーインテリジェンスシリーズ 今日のホテルブランドにとって 顧客ロイヤルティを高める要因は何か? PwC のコンシューマー インテリジェンスシリーズ では、急速な変化を続け るメディア、ホスピタリティ、 テクノロジーを取り巻く 環境における、消費者の 態度と行動について考察 します。

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コンシューマーインテリジェンスシリーズ

今日のホテルブランドにとって顧客ロイヤルティを高める要因は何か?

PwCのコンシューマーインテリジェンスシリーズでは、急速な変化を続けるメディア、ホスピタリティ、テクノロジーを取り巻く環境における、消費者の態度と行動について考察します。

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3 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ

調査の概要および目的PwCのコンシューマーインテリジェンスシリーズの今号では、1,026人の旅行者(ビ

ジネス客およびレジャー客の合計)にインタビューを実施。彼らの好みが、大手グローバルホテルのロイヤルティプログラムの投資優先順位付けに、どのように影響するのかを調査した結果を報告する。私たちはホテル業界における顧客ロイヤルティに焦点を当てた4つの質問を彼らに投げかけ、より本質的な理解をするべく、その回答を分析した。

1. ロイヤルティに関するミレニアル世代の旅行者の行動は、当該世代特有のものなのか、または旅行者全般におけるより大きなマクロトレンドを示すものなのか?

2. ホテル間の競争激化や統合整理が進むホテルマーケットにおいて、ロイヤルティプログラムの価値は、ロイヤルティの構築や会員の利用や、ブランドやオーナーの価値にどのように影響しているか?

3. 会員利用を促すロイヤルティプログラムの最も重要な要素は何か?ホテルブランドは会員利用を促すために何をできるのか?目に見えるハード面のメリットと目に見えないソフト面のメリットのどちらを重視するかについて検討する場合、ホテルのロイヤルティプログラムはどちらに注目すべきなのか?

4. シェアリングエコノミーの旅行選択肢が増えている中で、伝統的なホテルのロイヤルティプログラムが勝ち抜くためにはどうすればよいのか?

1回答者属性 合計1,026 名 59%ビジネス客(年間宿泊数10 泊以上対象) 41%レジャー客(年間宿泊数5泊以上対象)

14% : 21-29 歳21% : 30-39 歳20% :40-49 歳22% :50-60 歳23% :61-69 歳

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4 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ

1. ミレニアル世代のロイヤルティに関する考え方、受け止め方は、当該世代特有のものなのか、それとも旅行者全般におけるより大きなマクロトレンドを示すものなのか?

ロイヤルティを検証するにあたり、世代別のグループで態度や行動がどのように異なるのかを調査した。近い将来、バイイングエコノミーの大部分を占めるようになるミレニアル世代(本件調査では21歳から29歳の年齢層と定義)の旅行者が持つ、特定のロイヤルティプログラムに対するロイヤルティや愛着度は低いのだろうか?

平均して何件のロイヤルティプログラムに入会しているのかを世代別に調査したところ、世代間で大差はないという興味深い結果が出ている。

ミレニアル世代のビジネス客は、平均して3.4件のロイヤルティプログラムに入会している。30歳以上のビジネス客(平均3.9件)よりはやや少ないが、30歳以上のレジャー客(平均3.2件)よりは多い。

調査結果

その他ミレニアル世代

3.4 3.9

3.22.3

3.63.0

ロイヤルティプログラムへの平均入会件数

ビジネス

レジャー

合計

ロイヤルティプログラムはビジネス客、レジャー客を問わず引き付ける要素を持っている

対照的に、ミレニアル世代のレジャー客が入会しているロイヤルティプログラムは 平均2.3件で、同世代のビジネス客と比較して低くなっている。その要因としては次のようなことが考えられる。

• ミレニアル世代のレジャー客は、従来型の宿泊施設よりも、シェアリングエコノミー型の宿泊施設を利用することにより関心を持っている(Section 4参照)。

• ミレニアル世代のレジャー客は、ロイヤルティプログラムの入会件数を積み上げる時間が、他の世代のレジャー客と同じようには無かった。

• ミレニアル世代のレジャー客は、30歳以上の旅行者やビジネス客と同じような旅行経験や、同じ頻度で旅行することがなかった。

結果的には、ミレニアル世代と30歳以上の旅行者におけるロイヤルティプログラムへの関心度には、示唆するほどの大きな違いはなかった。むしろ、私たちがミレニアル世代に過度に注目してしまったために、ミレニアル世代以外も含むマクロトレンドを蔑ろにしていなかったか、自問しなければならない。

ミレニアル世代:その他の世代の旅行者と変わらない

一方でミレニアル

世代は3.0件のロイヤルティプログラムに入会している

30歳以上の旅行者は平均して

3.6件のロイヤルティプログラムに入会している

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5 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ

調査結果

自分に合ったサービス

値頃感

ポイントの価値 54%

調査対象 ビジネス客(600名)、レジャー客(426名)問7:ロイヤルティプログラムに参加するに至った決め手は何ですか?

その他

ビジネス客 レジャー客

46%

41%38%

40%

33%

27%

31%

7%7%

3%6%

他のロイヤルティプログラムとの提携 (クレジットカード、

エアラインなど)

家族・友人

ビジネス客 18%52%30%

レジャー客 7%35%58%

3回以上1~3回0回

ミレニアル世代

その他 39% 47% 13%

52% 33% 14%

ビジネス vs レジャー

ミレニアル世代 vs その他

2. 交換の経済:ロイヤルティとバリューの交換旅行者が特定のロイヤルティプログラムを選択する動機について調査したところ、ビ

ジネス客、レジャー客ともにポイントバリューと価格をより重視することが分かった。しかし、レジャー客がロイヤルティプログラムを選択する上で最も重視する上位3つの要素に、ロイヤルティ特典がランクインしていないことは興味深い。これは何を示唆しているのだろうか。

ロイヤルティとバリューの交換の経済性を検証する上で問うべきことは、ロイヤルティプログラムは誰のためにあるものなのか、そしてロイヤルティプログラム、交換頻度、交換する特典をどのように連携させるのか?である。

旅行者が特定のロイヤルティプログラムを選択する動機は何か?

過去一年間にどのくらいの頻度でポイントを利用したか?

ホテル企業は旅行者が特定のプログラムに入会する動機を理解した上で、最善のブランドエンゲージメント手法を考える必要がある。旅行者は3つ以上のロイヤルティプログラムに入会していることを踏まえると、ホテル企業は他のロイヤルティプログラムとの差別化をどう図るべきなのだろうか?

最終的には、最も多くの会員利用を促すブランドが最も高い経済的果実を得る可能性が高い。私たちはビジネス客やレジャー客が、この一年間にどのくらいの頻度でポイントを利用しているのかを尋ねた。答えはやや意外で、レジャー客の約60%が過去一年間においてポイントを利用していなかった。

今回の調査ではミレニアル世代とその他の世代の旅行者が、どのくらいの頻度で ホテルのロイヤルティプログラムのポイントを利用するのかについても確認している。一見すると、ミレニアル世代は年齢が上の世代の旅行者よりもロイヤルティプログラムのポイントを利用することが少ないようだ。

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6 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ

調査結果

ビジネス客600人、レジャー客426人質問5a:過去12カ月で何回ポイント利用しましたか?質問5b:ポイントは何のために利用しましたか?

Points redemptionRedeemed points for

ポイント交換したものビジネス客 (n=423)

レジャー客(n=180)

無料宿泊特典 84% 79%

客室アップグレード 21% 12%

航空マイル 13% 19%

商品 12% 7%

0% 2%その他

ただし、より詳しく分析してみると、ミレニアル世代の行動はレジャー客の行動に似ていることが分かった。従って、ミレニアル世代がロイヤルティプログラムのポイントを利用するか否かには、彼らの行動特性ではなく、旅行の回数(量)が影響しているのではないかと考えられる。

いずれにしても、ミレニアル世代やレジャー客と一貫性を持ったかかわり方を理解しているブランドは、より大きくロイヤルティの基盤を築くことができる。

ホテルロイヤルティプログラムの価値基準は往々にして、ビジネス客寄りのものとなっている。ロイヤルティプログラムが成熟し、価値を創出しようとするにつれ、ホテル企業はどこに投資するのか優先順位付けの方法を決める必要がある。ホテル企業は、「全客層を対象にプログラムをデザインするのか、それよりも最も収益性の高い客層に焦点を当てるのか」を自問する必要がある。

会員による利用内容について、もう少し深堀りしてみる。過去12カ月でポイントを交換している回答者に対し、5つある交換景品のカテゴリーそれぞれを検討した上で、ポイント交換時に選択したもの全てを選択してもらった。カテゴリーには、ハード面(物理的)の利点(宿泊、航空会社のマイル、その他の商品)とソフト面(目に見えない)の利点(アップグレードまたは他の経験)が含まれる。消費者が何を有益と考えるのかを理解すると、人々が魅力的と感じるものについてターゲットを絞ったプロモーションを実施することに役立つと考えられる。

ビジネス客はソフト面の利点を有益と考える今回の調査では、ビジネス客、レジャー客ともに無料宿泊特典が最も有益であると考

えていることが分かった(ビジネス客の84%、レジャー客の79%)。また、二番目に有益と考えるものは、ビジネス客では客室のアップグレード(21%)、レジャー客では航空会社のマイル獲得(19%)であることが分かった。

この好みの違いは、客室のアップグレードに必要なポイント数が、一般的なレジャー客の利用頻度では貯まりにくい水準に設定されているか、またはビジネス客が客室のアップグレードのような体験型の特典をより好むようになったことに起因するものと思われる。

ビジネス客が出張でホテルに宿泊することが多い場合、彼らはその際に得たポイントを、先々にレジャー目的で利用するホテルでの宿泊体験をより良いものとするために、客室のアップグレードやアップセルに活用する可能性がある。会員の旅行理由をポイント利用のパターンから把握することができれば、ホテルはより利用者に訴求する特典を提案することができるようになり、結果としてより多くの会員利用を促せると考えられる。

30歳以上の旅行者は目に見えるハード面の利点を、ミレニアル世代は経験を求める世代別のポイント利用の理由に焦点を当てることにすると、少し異なる状況も見えて

くる。全ての旅行者にとって無料宿泊特典が最も重視する選択肢であることに変わりはないが、ミレニアル世代の旅行者の36%が客室のアップグレードを二番目に重視する選択肢としているのに対し、その他の世代の旅行者で客室アップグレードを選ぶのは16%に留まっている。

ビジネス客、レジャー客それぞれが好む特典は何か?

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7 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ

調査結果

その他(n=533)ミレニアル世代(n=70)

64% 85%

16%36%

Redeemed points for (those that redeemed any points in past 12 months)

Millennials (n = 70) Others (n=533)Hotel nights 64% 85%Upgrades 36% 16%Airline miles 19% 14%Merchandise 19% 10%Other 1% 0%

14%19%

10%19%

0%1%

商品

無料宿泊特典

客室アップグレード

航空マイル

その他

ビジネス客

+27米ドル

レジャー客

+23米ドル

旅行者が好みのブランドのホテルに泊まるために許容できる追加料金はいくら?

旅行者がポイントと交換したいものは何か?

ロイヤルティ=より高いホテルブランドの対価ホテル企業はロイヤルティプログラム、交換特典、交換頻度を戦略的に組み合わせ、さ

まざまな方法で自社ポイントの価値を高めている。この相互作用がホテルにより多くの収益をもたらしているのだとすれば、それはどの程度なのか?

私たちの調査では、ほとんどの旅行者が、彼らの好みのホテルに泊まるために追加料金を払うということが分かった。ビジネス客とレジャー客の大半(ビジネス客69%、レジャー客59%)が、好みのホテルブランドを冠したホテルに泊まるために、一滞在あたり追加で10米ドルから50米ドル払う。しかし、ビジネス客はレジャー客よりも平均して少し高めの追加料金(ビジネス客27米ドル、レジャー客23米ドル)を払っても構わないと考えている。

ポイント利用に関してミレニアル世代は、よりビジネス客に近い行動をとっている。このことはミレニアル世代が30歳以上の旅行者よりも、客室のアップグレードのようなソフト面の特典によりメリットを感じており、マクロトレンドに見られるホテルでの経験の重要性の高まりを裏付けている。

他ではできないゲスト経験や、今までにない体験を提供することは、利用者のロイヤルティの構築やブランドへの愛着心の醸成にあたり、今後も重要な要素であり続けると考えている。

最も重要なことは、年齢に関係なく、利用者がポイントの価値を理解し、またポイントの価値が利用者の行動を後押しするということである。これは2つの理由から重要である。まず、プログラムが会員利用を促すことと、会員とホテルオーナーに対する価値のバランスをとり続けるに当たっては、通貨価値の変動が会員の行動にどのような影響を与えるのかを念頭に置く必要がある。第二に、市場統合の流れでロイヤルティプログラムを統合する際には、ポイント価値と会員全体に対して公平性を確保することに焦点を当てるべきである。

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8 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ

調査結果

旅行者にとって、ロイヤルティとは 自ら要 求しているわ けでは な い 特典を享受すること。

3. ブランドとロイヤルティに対する愛着が与えるインパクト前章では特にホテルのロイヤルティプログラムに着目したが、本章ではホテルでの経

験や旅行経験に注目し、利用者のブランドに対する愛着度やロイヤルティを高める要素が何なのかを検証する。

ホテルに対するロイヤルティは、利用者がブランドに対して感じる価値とロイヤルティプログラムに対して感じる価値によって構成される。例えば、私たちの調査回答者は、 スターウッドホテルズ&リゾーツを一番好きなブランドと回答しており、その理由として目に見えない価値、つまり、そのホテルで経験したことの素晴らしさを挙げている。

しかしながら、同社のロイヤルティプログラム「SPG」は、会員数ではヒルトンやマリオットといった古くからあるプログラムの後塵を拝する4位にランクされている。これは、目に見えるハード面の価値もロイヤルティプログラムの人気を左右しているためである。

客室の質、それに加えて...ビジネス客もレジャー客も、ホテルを選ぶ最も重要な要素として客室の質を挙げてい

る。もし、客室の質がホテル選びにおいて不動の地位を占めるならば、ブランドへの愛着に影響する他の要素はどのようなものなのか。ビジネス客はブランドへの愛着度を左右する上位3つの要件の1つとしてロイヤルティプログラムを挙げている。

事実、全般的に旅行者は、ロイヤルティはホテルへのアクセスの良さ(例えば利便性、視認性、利用できるホテル軒数など)や、プロモーション(例えば割引特典、アップグレード、ダブルポイント、無料宿泊特典など)そしてサービスといった他の要素に左右されると答えている。

一方で、レジャー客にとってのロイヤルティは、ホテルの特典プログラムとはより関係が薄く、むしろ価格にひも付く値頃感やそのホテルグループ内のホテルブランドの多彩さや価格帯の幅の広さといった点にひも付いている。

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調査結果

“コンシェルジュに頼めば、何でもやってくれる。”

“到着前に必要なものがないか、 ホテルのマネージャーから ウェルカムメールが届くんだ。”

“ロイヤルティプログラムの表と裏を知るくらい多くの旅行をしていれば、サードパーティサイトを介してホテルを予約したいとは言わないと思います。”

レジャー客ビジネス客

Redeemed points for (those that redeemed any points in past 12 months)

79% 76%

67%68%

30%48%

69%41%

23%26%

価格

客室の質

立地・ロケーション

会員特典

サービス・経験

14%14%

アメニティ(スパ、ジム)

10%12%

12%10%

クレジットカードとの提携

館内の料飲施設

9%7%

ブランド認知度

利用者の好みがロイヤルティを左右する客室の質や立地に次いで、ビジネス客は客室料金ではなくロイヤルティ特典を重視

する。これは驚くことでもなく、出張費で客室料金が賄われ、その分のロイヤルティポイントが貯まっていき、休暇の際に無料宿泊特典として使えるからである。逆にレジャー客は価格に敏感で、ロイヤルティ特典にはあまり関心がないと言える。

しかし、どのブランドについても価格水準があり、より多彩なホテルブランドポートフォリオがあれば、利用者のロイヤルティをさらに多様に維持できるので、価格そのものが問題ではないという考えもある。

全ての年代のビジネス客と30歳以上のレジャー客については、以下に示す様な個々のニーズにあった経験も重視している:

• 効率的で丁寧なチェックイン手続き

• プログラム会員に対する挨拶

• チケット手配やさまざまな提案といった コンシェルジュサービス

• チェックインの際や客室でのウェルカムギフト

• チェックイン前にホテル支配人から 届くウェルカムメール

賢い利用者は何を欲しいか、そして、どうしたら欲しいものを手に入れられるかを理解している

旅行者はホテルのロイヤルティプログラムの表と裏についてさらに理解してきている。彼らは比較のためにサードパーティーサイトを調べた上で、ホテルに直接予約を入れ、最も安い価格とより多くのポイントを得ている。こうすることで、ホテルのロイヤルティポイントを稼ぎ、プロモーションを利用し、またアップグレードや特別な場面での特別なサービスを得ているのである。

利用者は好みのホテルブランドの何を重視しているのか?

これに対し、ホテル企業はロイヤル ティプログラム全体と今日の旅行者の ロイヤルティを高めるために特別な瞬 間を創造する力を常に磨く必要がある。

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調査結果

“私どもの会社では実際、シェアリング エコノミーに泊まってはならないと 非常に強く警告しています。損害賠償 などを懸念すると...”

“時に普段とは違う道に逸れて誰かの家に泊まるのは冒険的であり、得することもある。”

よりアットホームに感じるから

値頃感があるから

新しい場所を見つけたいから 55%

60%

59%

シェアリングエコノミーを選択する理由:

予約が簡単だから

自分に合ったサービスを

受けられるから

便利だから 78%

53%

80%

ホテルを選ぶ理由:

レジャー客が選ぶのは...4. シェアリングエコノミーはロイヤルティを阻害するか?

旅行者はテクノロジーを活用してより安い価格、よりユニークな経験、そしてより多くの選択肢を得る中で、時に自分の宿泊先の選択肢としてシェアリングエコノミーにも目を向けている。その魅力の一方で、シェアリングエコノミーには課題も伴う。私たちの調査では利用者が安全面、衛生面および宿泊品質の不透明さに懸念を示していることが分かった。

レジャー客の88%およびビジネス客の90%は、従来型とは異なる宿泊施設の存在を知っているものの、これらの施設をあまり使ってはいない。(ビジネス客の16%、レジャー客の24%)

事実、多くのビジネス客にとってシェアリングエコノミーは、選択肢の1つではないのである。私たちの調査によると、ほぼ三分の一のビジネス客が、雇用先の方針により、従来型と異なる宿泊施設には泊まれないと回答しており、盗難を含む損害賠償、人身損害、物的損害などを懸念している。さらに、多くのビジネス客がホテル宿泊に伴うさまざまなメリットを魅力的と考えている。

ミレニアル世代のレジャー客はシェアリングエコノミーを宿泊先の選択肢として積極的に活用

シェアリングエコノミーについて非常に関心の高いミレニアル世代のレジャー客の中で、60%の人々が冒険的な経験を求めている。一般的に若年層の旅行者は比較的リスクをいとわず、価格志向であり、価格の割にユニークな経験を求めている。

こうした利用者は、より気ままに旅行をでき、また滞在期間についても制約が少ないという点で、他の利用者よりも自由度が高いと言える。彼らはまた、人とのかかわりや検索、商品やサービスの購入をオンラインを通じて行うなど、最新技術やソーシャルメディアにも親しんでいる。

同様に、私たちが調査したレジャー客の多くが宿泊品質と安全面に懸念を示している。

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11 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ

調査結果

ブランドの力シェアリングエコノミー型の宿泊施設が有名ホテルブランドを冠する場合、ビジネス

客およびレジャー客にとってそうした施設に宿泊する選択肢はより現実的になものになる。しかしながら、以下の様な疑問や懸念は引き続き対応が必要となる:

• サービス、品質および清潔さについて、利用者に対する保証はどの程度なのか。

• 各施設の規定や運営管理はどのように行われるのか。

• 遵法性をどのような基準で判定するのか。

• 各社は全ての施設状況をどの様に把握するのか。

• シェアリングエコノミー型の宿泊施設にホテルのブランドを付けるにあたり、どのような基準や要件を満たさなければいけないのか。

• ホテルと共通する特徴や特典を周知するために新しいブランド名が必要か。

• 施設を使う際には施設所有者と借主の間で直接のやり取りが発生するのか。

• 責任の所在や遵法性が欠けることによりホテルブランド価値に悪影響があるのではないか。

利用者の中には、こうした取り組みがブランドの過度な拡大になりうると考える向きもある。一方で、今回の調査対象となった全てのレジャー客が、ホテルブランドのロイヤルティポイントの付与対象になるならば、シェアリングエコノミー型の宿泊施設により頻繁に泊まるだろうと回答している。

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12 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ

考察のポイント1. ミレニアル世代のロイヤルティプログラムに対する態度や行動は、世代特有なものではない。実際に、30歳以上の

旅行者と非常に似ている。各ブランドは、ミレニアル世代だけをターゲットとするのではなく、本質的には全ての世代を考慮してロイヤルティプログラムを作るべきである。これは、それぞれの態度や行動は互いに似ているからである。

2. ロイヤルティプログラムそのものが成熟するにつれ、ホテル企業は全ての消費者セグメントにおいて、ブランドに対する親しみを高めるための投資優先順位を判断するのと同時に、最も有益な客層をターゲティングする必要が出てくる。究極的には、会員の利用を最大限高めることができるホテルブランドが最大の経済的な果実を得られると考えられる。

3. 客室の質の他に、ビジネス客とレジャー客では宿泊に対するニーズとロイヤルティプログラムに対する考えの基準が異なる。ビジネス客は自ら宿泊代金を支払わない場合も多いので、客室価格に対する関心度は低いが、ロイヤルティプログラムは将来の無料宿泊特典を稼げるために重要と考えている。一方で、レジャー客はより価格志向である。ホテルブランドとしては、会員特典とロイヤルティプログラムをうまく作りこむべきである。

4. シェアリングエコノミーは非常に高い注目を浴びる一方、冒険的な若いミレニアル世代を除いた多くの利用者の間では、シェアリングエコノミーに内在する品質に対する懸念がある。むしろ、こうした利用者はブランドネームが安全面、安心感そして品質について保証するといったことを望んでいるといえる。ホテル企業にとっては、シェアリングエコノミーパートナーと協調することによるビジネスチャンスがあるとも考えられるが、一方でこうしたモデルの実施に伴う課題は多く残る。

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日本におけるビジネスホテルチェーンとロイヤルティプログラムに関する考察

日本で展開する日系ホテルチェーンの多くは、宿泊特化型のホテルを展開するビジネスホテルチェーンである

ラグジュアリーセグメントからバジェットセグメントまで幅広いクライアント層をターゲットに、複数のブランドを展開する大手のグローバルホテルチェーンとは対照的に、日本のビジネスホテルチェーンは、30代から50代の日本人のビジネスパーソンを主たるクライアントターゲットとして、単独ブランドのホテルを展開している。そのため、利用者が出張時の宿泊利用で貯めたポイントを、週末のレジャー利用で使えるリゾートホテルやフルサービスのホテルもあわせて展開しているチェーンは極めて少ない。

ホテルチェーンの他にレストラン事業などを展開する事業会社では、会員による相互利用を高めるための割引特典を提供していたり、ホテルチェーンを展開する鉄道会社では、交通系ICカードとホテルの会員証を共通化してポイントの互換性を高めることで、会員になった後の使い勝手をよくしている例もある。しかし、国内のビジネスホテルチェーンのロイヤルティプログラムは、ホテル以外の事業体(クレジットカードや共通ポイントカードなど)と提携していないチェーン独自のロイヤルティプログラムが多く見られる。こうした背景には、海外のホテルと比較してホテルのチェーン化やチェーン間の統合が進んでいない国内ホテルの特性も影響していると思われる。また、出張の多いビジネスパーソンは複数の会員カードを持ち歩くことになり不便な側面があることに加え、ポイントの利用範囲や互換性が乏しいため、現時点では利用者が会員になるインセンティブは限定的なものと思われる。ホテルのロイヤルティプログラムの脅威として、OTA(オンライン旅行代理店)のロイヤルティプログラムの存在が以前にも増して顕在化している。利用者がホテルの予約時に利用するOTAは、インターネット上で互換性の高いポイントを付与しているため、ホテルに対するロイヤルティを高めたいホテルとOTAが対峙する状況が生じている。また、OTAのロイヤルティプログラムのポイントは利便性が高いことから、OTAが加盟ホテルのチェーン化を進めているとも考えられる。

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14 コンシューマーインテリジェンスシリーズ | ホテル ブランド ロイヤルティ

今後、国内のホテルが取るべきロイヤルティプログラムの運営管理体制において、解決すべき課題はどのようなものがあると考えられるだろうか?

国内のホテルチェーン、特にビジネスホテルチェーンにおいては、ロイヤルティプログラムを専任する担当部署が存在しないことが多く、ロイヤルティプログラムの運営管理が他の業務との兼務で行われているケースが多いようである。その結果、会員属性を分析してマーケティングに反映したり、会員にとってより魅力的なサービスや付加価値を提供することでロイヤルティを高め、会員が予約する際にOTAを経由せずに自社チェーンに直接予約してもらうといった、ホテルロイヤルティプログラムの本質的な目的が果たせていないと考えられる。

これ以外にも、多くのビジネスホテルチェーンでは同業他社の動向をにらみながら、会員に対して客室の無料アップグレードやレイトチェックアウトといった特典を提供しているが、深夜から早朝の数時間寝るだけといった滞在が多いであろうビジネスパーソンにとって、こうした特典は必ずしも魅力的ではなく、チェーンのポイント交換先の自由度が高いOTAのロイヤルティプログラムを利用する方にメリットを感じるといった状況がある。

また、ホテルチェーン本部のロイヤルティプログラムとは別に、ホテル単館でのロイヤルティプログラムが存在するために、複数の会員カードやID・パスワードを持たなければいけないケースや、ホームページでロイヤルティプログラムの入会案内を掲載しているにもかかわらず、実際に入会するためにはホームページだけでは完結しない煩雑な入会手続きが必要になるなど、個別のケースを挙げれば多くの課題がある。

近年は訪日外国人旅行者の増加などに後押しされてホテルマーケットが活況を呈しており、国内のホテルチェーン、特にビジネスホテルチェーンにとっては客層が変化することも考えられる。今後はミレニアル世代がバイイングエコノミーの大半を占めるようになる中で、SNSやアプリの活用といったデジタルマーケティングの強化も避けられない。OTAに集客を頼るという選択肢は、よりOTAに力を与え、送客手数料の引き上げといった形でのOTAチェーン化の加速も懸念される。また、それに対抗する形でのホテル間の連携や合従連衡が必要となり得る。変化する客層や、さらに多様化するであろう利用者のニーズに対応するためには、各社が自社のあるべき姿、自社にとって重要な客層、そして、その客層に提供したい付加価値を把握し、ロイヤルティプログラムのあり方や具体的な提供価値を見直し、その運営管理体制を強化することに真剣に取り組む必要があるのではないだろうか。

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PwCJapanは、日本におけるPwCグローバルネットワークのメンバーファームおよびそれらの関連会社(PwCあらた監査法人、京都監査法人、PwCコンサルティング合同会社、PwCアドバイザリー合同会社、PwC税理士法人、PwC弁護士法人を含む)の総称です。各法人は独立して事業を行い、相互に連携をとりながら、監査およびアシュアランス、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務、法務のサービスをクライアントに提供しています。PwCは、社会における信頼を築き、重要な課題を解決することをPurpose(存在意義)としています。私たちは、世界157カ国に及ぶグローバルネットワークに208,000人以上のスタッフを有し、高品質な監査、税務、アドバイザリーサービスを提供しています。詳細はwww.pwc.comをご覧ください。

本報告書は、PwCメンバーファームが2016年3月に発行した『What’sdrivingcustomerloyaltyfortoday’shotelbrands?』を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。電子版はこちらからダウンロードできます。www.pwc.com/jp/ja/japan-knowledge/thoughtleadership.htmlオリジナル(英語版)はこちらからダウンロードできます。www.pwc.com/us/en/industry/communications/publications/cis-hotel-loyalty.html日本語版発刊月:2016年5月 管理番号:I201603-4

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