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ソフトウェア・デファインド・ストレージ

スコットD.ローウィ (Scott D. Lowe)著

寄稿:

ニュータニックス プロダクトマーケ ティング部門シニアディレクターグレッグ・スミス(Greg Smith)

Nutanix 特別版

これらの内容は当社が著作権を保有しています。ⓒ 2014 John Wiley & Sons, Inc. いかなる公開、配布、および不正使用も厳禁します。

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ソフトウェア・デファインド・ストレージFor Dummies®、 ニュータニックス特別版John Wiley & Sons, Inc. 出版 111 River St. Hoboken, NJ 07030-5774 www.wiley.com

Copyright © 2014 by John Wiley & Sons, Inc., Hoboken, New Jersey

本書のいかなる部分も、1976年米国連邦著作権法の第107条および第108条で許可されている場合を除き、出版社の書面による同意なく、いかなる形式、手段によっても、電子的、機械的、複写、録音、スキャンその他の再生可能な方法で複製、保存システムへの格納、あるいは伝達することが禁じられています。出版社に許可を申請する場合は、以下の連絡先までお申し出ください。Permissions Department, John Wiley & Sons, Inc, 111 River Street、Hoboken、NJ 07030、Tel (201) 748-6011、 Fax (201) 748-6008、http://www.wiley.com/go/permissions商標: Wiley、For Dummies、Dummies Manのロゴ、The Dummies Way、Dummies.com、Making Everything Easier、その他の関連トレードドレスはJohn Wiley & Sons. Inc.およびその関連会社の米国およびその他の国における商標、または登録商標であり、書面による許可なしに使用することを禁じます。Nutanix および Nutanix のロゴは、Nutanix, Inc の商標です。その他全ての商標は、それぞれの所有者に帰属します。John Wiley & Sons. Inc.は、本書に記載されているいずれの製品やベンダと何ら関係はありません。

法的責任の制限/免責条項: 本書の出版社および著者は、本書内容の正確性と完全性に関して一切の表明および保証を行いません。また、特定目的適合性に関する一切の保証を免責します。販売や販促資料に関しての保証はなく、いかなる保証も付与されません。本書に記載された助言および戦略は、必ずしもすべての状況に適用されるものではありません。本書の出版社は法務、会計、あるいはその他専門サービスに従事せず、本書は、その理解の下で販売されるものです。専門的な助言が必要な場合は、有能な専門家のアドバイスを求めてください。本書の出版社と著者はいずれも、本書の使用によって発生した損害に一切責任を負うものではありません。本書における企業組織または関連ウェブサイトの引用または詳細情報源としての参照は、著者や出版社による、かかる企業組織または関連ウェブサイトの提供情報及びアドバイスの是認を意味するものではありません。さらに、本書に記載されたインターネットのウェブサイトは、本書が執筆されてから、読者によって読まれるまでの間に、変更されたり、削除される可能性があることにご留意ください。

当社のその他の製品およびサービスに関する一般情報、または、個別の企業や組織向けのフォーダミーズのカスタム出版ご要望については、当社米国の事業開発部(877-409-4177 / [email protected]) にご連絡いただくか、ウェブサイト (www.wiley.com/go/ custompub) をご覧ください。 製品やサービスへの「フォー ダミーズ」のブランドのライセンス許諾については、 Eメール(BrandedRights&[email protected])でお問い合わせください。ISBN 978-1-118- 96103-2 (pbk); ISBN 978-1-118- 96143-8 (ebk)

Manufactured in the United States of America

1 0 9 8 7 6 5 4 3 2 1

謝辞本書の出版にあたり、以下の方々をはじめとする多くの方々にご協力をいただきました。企画編集者: キャシー・シンプソン(Kathy Simpson)プロジェクト編集者: ジェアニファー・ビンガム(Jennifer Bingham)発注編集者: コニー・サンティスティバン(Connie Santisteban)編集者マネージャー: レヴ・メングル(Rev Mengle)事業開発代表者: キンバリー・シュマッカー(Kimberley Schumacker)カスタム出版プロジェクト スペシャリスト: マイケル・サリバン(Michael Sullivan)プロジェクトコーディネーター: メリッサ・コセル(Melissa Cossell)

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はじめに

デ ータセンターの運営形態が変化してきている。仮想化は、データセンターの経済性と運用に多大な利得と改

善をもたらした一方で、とりわけストレージに関して新しい課題も投げかけた。既存環境におけるワークロードの多様化や新たなワークロードの発生によって、ストレージデバイスはその追随に奮闘するようになった。こうした問題の多くは、時代遅れで複雑、独自仕様に頼らざるを得ないレガシー的な性質が要因となっており、今日のストレージシステムにおいて最も一般的で共通する問題となっている。

しかし、ストレージに関して多くの問題は、コモディティハードウェア上で動作するソフトウェア型のインフラによって解決することが可能である。複雑なソフトウェアツールを使って、ストレージを独自仕様のハードウェアデバイスから、残りのソフトウェア・デファインド・データセンター(ソフトウェアで定義された)に容易に適合するソフトウェア主導のサービスへと移行することができる。つまり、これがソフトウェア・デファインド・ストレージ(SDS)(ソフトウェアで定義されたストレージ)である。

現在、SDSはIT業界で注目の話題である。有望な新技術が発表されると、それがどのようなものであってもベンダコミュニティは過度な反応をしがちであり、何とか市場の恩恵にあずかろうとし、新たなキーワード使うことによって新市場での指導性を確立しようとやっきに なる。

これは単にIT業界における感染症のようなものである。何十億ドルもの市場が危険にさらされる局面では、これは驚くに値しない。幸いなことに、新技術がもたらす真の利得は、時間の経過とともに一般的に広く知られ理解されるようになるのが常である。本書では、SDSの実態を明らかにするとともに、SDSの本質的な利点を説明していきたい。

本書について本書では、高機能ソフトウェアが、データセンターとIT効率化における主要な推進力として独自仕様のハードウェアサービスに取って代

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2 ソフトウェア・デファインド・ストレージ For Dummies, Nutanix 特別版

わる、即ち、ソフトウェアが主導となる可能性を探る。今日の企業は、運用に多数のIT人員を必要とせず、簡素で複雑さに煩わされることもない技術サービスを求めている。GoogleやFacebookなどが提供するクラウドプラットフォームの効率性を、社内のIT機能にも応用することを企業は望んでいるのである。

クラウド企業はその成功を現状維持の姿勢で達成したわけではない。こうした企業は、従来のハードウェアを安価なコモディティハードウェアで置き換え、その上に高機能ソフトウェアを構築し、配備した。この設定により、ハードウェア主導の環境と同等の可用性、データ保護、管理機能を、複雑さを排除しつつ、わずかな費用とで実現できたのである。

本書で提示される概念を理解するのに、ストレージのMBA(経営管理学修士号)や博士号は必要ない。いかなる読者もその経歴に関係なく、データセンターで主流になりつつある新しいソフトウェア主導システムについて、先入観なしに理解されることを希望したい(最近の若者はとても変わった思考をするらしいので)。

本書は、ニュータニックスと共同で、同社のために執筆された。

本書の構成本書は、5つの章にまとめられており、順番に読み進んでも、どの章から読み始めても構わない。これが「For Dummies」シリーズの素晴らしいところである。必要な章を部分的に読んで、他は飛ばしても問題ないし、あるいは最初から最後まで、ページを熟読するのも有益である。以下に各章の内容をまとめる。

✓ 第1章: 現状のストレージ: レガシーストレージが抱える問題について説明する。

✓ 第2章: ソフトウェア・デファインド・ストレージの基礎: ソフトウェア・デファインド・ストレージの実態をひも解く。

✓ 第3章: SDSの基本概念と成功への鍵: SDSの背景にあるテクノロジーを解明する。

✓ 第4章: SDSの企業への貢献: 企業の最高財務責任者にとってのSDSの関心事項、すなわち、柔軟性と効率性の向上について説明する。

✓ 第5章: SDSの重要な真実10項目: SDSを検討する際に留意すべき重要項目を説明する。

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3 はじめに

読者の想定まず、読者は、一般的なデータセンターの概念やリソースのサイロについて、また仮想化についても、多少の知識をお持ちのことを推定する。本書は、ストレージおよびITの効率化、そして全般的な管理に関心をお持ちの読者を対象に書かれている。

本書で使用するアイコン本書では、内容の理解に役に立つ以下のアイコンが使用されて いる。

時間や労力の節約をもたらすキーポイント

覚えておくべき重要情報

問題を引き起こす可能性のあるリスクや落とし穴

より深い理解につながる技術知識

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4 ソフトウェア・デファインド・ストレージ For Dummies, Nutanix 特別版

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第1章

現状のストレージ本章の内容▶ 旧式で高価、極めて複雑な技術▶ 他のリソースから隔離されたストレージ▶ ストレージは仮想化を活用したものでなければならない

た とえ、既存のソリューションが市場のニーズに見合っていても、技術革新がとどまることは決してない。レガシーシ

ステムは過去のストレージにおける問題に対処してきたが、新たに出現する需要に対応するには、不十分で柔軟性に欠けることが明らかになってきた。加えて、今後問題がより深刻化しないと誰が言い切れるであろうか?

過去の技術の上に成り立つ今日のストレージ

今日市場に普及するストレージ技術の多くは、コンピューターの使用方法が今日とは異なる時代に設計されたものである。これらは、アプリケーションおよびこれに伴うワークロードが常に専用サーバで動作するとの想定で考案されたが、仮想化の台頭による仮想マシン ( VM)の普及以後、この状況は変化している。残念ながら、レガシーのストレージシステムの開発と管理も、クラウド的なリソースの供給、 仮想マシン主体のデータセンターサービス、スケールアウト アーキテクチャ、そしてオンデマンド プロビジョニングの機能などの新しいニーズに応じることが困難になっている。

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ソフトウェア・デファインド・ストレージ For Dummies, Nutanix 特別版 6

つい最近に至るまで、レガシーのストレージ システムでもストレージにおける大幅な進歩である、ソリッドステート (フラッシュ) ストレージをシームレスに活用できていなかった。フラッシュストレージは、ストレージ ハードウェアにおける近年の大きな進展である。ストレージの性能向上へのニーズに応えて15,000 RPM SAS ディスクが市場に紹介された時、確かに同市場はこれを歓迎したが、2000年初めから半ばにかけての展開は、その性質から見て画期的というよりも、進化にとどまるものであった。

今日のストレージは過度に 複雑

仮想化の登場は、データセンター歴史上の転機として多くの関係者に歓迎されたが、これは全く当然のことである。しかし、仮想化は、難解な問題に対する解決策を与えてくれたものの、データセンターにおけるストレージの問題に対しては、ほとんど役立たなかった。むしろ、状況は悪化したとさえ言える。

様々なアプリケーションのワークロードに対応させるためのストレージの調整は、時として、ストレージシステム専門の博士号が必要なのではないかと思えるほど大変な作業である。長年にわたって、多様な新技術導入されたが、そのほとんどが単に複雑さを増すにすぎなかった。ストレージ運用管理者が一般的に管理する、以下のストレージ構築を考慮してみる。

✓ LUN: 論理ユニット番号(LUN)は、下位の物理的ストレージリソースから成る仮想構築である。ストレージ運用管理者は、LUNによってデータセンターで動作するアプリケーションの理にかなう方法で物理的ストレージを切り分けることができる。LUNを認可されたホストのみから閲覧可能にする場合は、LUNのマスキングが必要である。

✓ RAIDグループ: RAIDとは、RAID1、RAID5、またはRAID10など、一定のRAIDレベルのグループに割り当てられ、運用される一連の物理ディスクのことである。RAIDレベルは、データ保護とストレージ性能に多大な影響を与える。多様なワークロードのパフォーマンスへのニーズに対してレガシーストレージを調整するには、RAIDレベルに関する高度な知識が欠かせない。

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第1章: 現状のストレージ 7

✓ 階層化: あらゆるワークロードが同等というわけではない。階層化を使用することによって、様々な性能および保護レベルのストレージレイヤを作成することができる。例えば、大量データの分析を行うアプリケーションに対しては、高速の15,000RPM SASディスクを使用し、パフォーマンス層にそのLUNを適用するという手法が用いられる。

用語や全体的な概念を理解するのはそんなに難しいことではないが、 これらの用語の背景には、ストレージ特性に関して豊富な経験がある者のみが真に理解することのできる、膨大な情報が潜んでいる。ストレージの専門家であれば、これらの情報を解釈するのはたやすいことであろう。しかし、組織内で未使用あるいは未調整のストレージが山積みといった状態においては、ストレージ管理に多大な時間を費やさねばならない、中小企業の一般IT技術者にとっては、理解が困難であるかもしれない。

そして、これがまさに問題の真髄である。過去においては、企業は、IT部門が最新技術の習得に時間をかけることに寛容であったかもしれない。しかし、今日の最高情報責任者(CIO)は、刻々と変化するビジネスニーズへの迅速な対応を迫られているため、主要システムの対応を担当者に任せて何とかうまく行くように望むなどという悠長なことはできなくなった。

さらに、レガシーストレージの管理ツールは、近代的データセンターのアーキテクチャとして一般的になった仮想マシンを必ずしもサポートしていない。典型的なデータセンターで作動する、多数のアレイから成る仮想マシンは、異なるストレージサービスおよび異なるサービス水準を要求する場合が多い。ストレージ管理においては、個々の仮想マシンレベルでサービス管理しなければならないという、新しい現実を受け入れなくてはならない(仮想マシンについては、後述の「ハイパーバイザによって統制されるデータセンター」を参照されたい)。

最後に、レガシーのストレージシステムは一般的にスケールアップのモデルで構築される。スケールアップ環境では、より大きい容量が必要になると、たとえ追加ストレージが少しであっても顧客は新しいディスクシェルフを設置しなければならない。レガシーのストレージ環境では、アーキテクチャ上の制限によって、顧客はストレージのオーバープロビジョニングを行わねばならない、というような非効率な技術決定を余儀なくされているのである。

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8 ソフトウェア・デファインド・ストレージ For Dummies, Nutanix 特別版

独自仕様技術に基づく今日のストレージ構築

レガシーシステムでは、ハードウェアによってすべてが統制される。一部の重要機能に対してストレージアレイが最善の効率で作動するよう、アレイは専用ハードウェアで埋め尽くされる。実際、多くのアレイはカスタマイズされた独自仕様のハードウェアでゼロから構築される。

多くのレガシーシステムでは、目標達成に向けてフィールド プログラマブル ゲート アレイ (FPGA) や特定用途特化型のた集積回路(ASIC) がカスタマイズされ搭載される。ストレージアレイの全体性能に多大な影響を及ぼすことなくインライン重複排除サービスを提供するだけのために、それ専用のASICを実装するベンダもある。FPGAやASICは、多くのレガシーアレイベンダの専用設計シャーシで作動するカスタムコントローラモジュール上に実装される。新しいアレイやモデルがリリースされる度に、新しいユニットの目的に合わせてハードウェアのコンポーネント(FPGA、ASIC、コントローラ基板、シャーシを含む)も再設計される。

とどまる事のないハードウェアの設計作業により、研究開発コストは増大し、最終的には価格上昇という形で顧客にその負担が転嫁される。加えて、ハードウェア中心主義アプローチでは、柔軟性に欠けるシステムを構築することになり、新しいニーズに応じて再装備することができない。カスタム製造のハードウェアに依存するアプリケーションを使用すると、時期尚早なリップ・アンド・リプレース運用から逃れることはできず、経済的な損失が大きい。つまり、レガシーアプローチはコストがかかり適応性に欠けるといえる。ベンダ間の容易な統合は困難であり、長期的なストレージコストも増大することから、究極的には革新が遅延するのである。

これらすべての問題を背景として、コモディティハードウェアを使用し、独自仕様のコンポーネントなしにストレージレイヤを構築し、高度なストレージ機能を実現するといったソリューションの必要性が浮上する。詳細は第2章を参照されたい。

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第1章: 現状のストレージ 9

今日のストレージにおけるリソースの隔離

仮想化により、コンピューティング環境全体において中央管理式、かつトップダウン式の単一システムが実現された。環境に対する可視性の向上とともに、オペレーティングプラットフォーム(つまりハイパーバイザ)と新たなワークロードに対する認識も高まった。個々のハードウェアのユニットが個別に動作するのではなく、単一のハイパーバイザがすべてのワークロードをサポートするようになった。この単一プラットフォームによって、ハイパーバイザが環境全般にわたって動作するアプリケーションすべてを認識し、個々の仮想マシンに対してサービスを調整することが可能になった。

しかしながら、時間の経過とともに状況は改善したものの、ストレージは依然としてリソース面で隔離されている。ストレージは、同一環境内の他のリソースと全く独立しており(特に問題なのは、ネットワークレイヤと仮想化レイヤ)、管理者がワークロードを明示的に定義しない限り、ワークロードの予測が不能である。ワークロードが定義されたとしても、既存のストレージ技術では環境内の個々のワークロードに妥当なサービスを割り当てることが非常に難しい、あるいは不可能なのである。データセンターの他のコンポーネントとの統合や認識が困難であるこの状態は、全体的なプロジェクトのリスク増大につながり、組織が簡素化を推進するにあたって障害となっている。

こうした問題すべてが要因となって、ニーズの変化に自動的に対応し、アプリケーションの性能を維持するプロアクティブなストレージレイヤへの必要性が高まっている。詳細は第3章を参照されたい。

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10 ソフトウェア・デファインド・ストレージ For Dummies, Nutanix 特別版

スケーリングのための多大なコスト

レガシーのストレージ環境では、スケーリングに多大なコストを伴う場合が多い。ディスクシェルフの増設といったソリューションにおいて、独自仕様のレガシーストレージは、コストが嵩み、追加ストレージのギガバイト当たりのコストも非常に高い。

性能面でも、とりわけ、フラッシュストレージをシームレスに活用しない、あるいは、できないシステムにおいては、判断が極めて難しい。システム性能を向上し、重要なワークロードのサポートに十分なIOPS(1秒あたりのI/O回数)を実現するために、ストレージ容量が十分である場合も、ディスクスピンドルの増設が必要となる場合がある。このコストは高額である。容量ニーズと性能ニーズのバランスをとることは現実的に不可能であり、将来のストレージニーズを予測することもできない。

さらに、ストレージサービスが、汎用的な形式で提供された場合、ストレージの全体コストを限定するのが難しくなる。レガシーのストレージシステムでは、ゲスト仮想マシンに個別な要求を考慮することなく、処理コストが高く、多くの資源を必要とするサービスを環境内のすべてのホストマシンに一律に適用する。個々のワークロードへに対応できない場合、最高水準の可用性を実現する仮想化コストを受容せざるを得ない。例えば、一時データや業務にとって重要度の低いデータも、同様に扱われるからである。

これらすべての課題が要因となり、継続的にニーズを満たす一方で予測可能なITコストモデルを提供し、実装可能なストレージの創造が促された。この詳細は第4章を参照されたい。

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第1章: 現状のストレージ 11

ハイパーバイザによって統制されるデータセンター

ハイパーバイザは、データセンターにおいて新しいワークロードを処理するための、事実上の標準プラットフォームとなった。こうした現実を受け入れてソリューションの提供に取り組むストレージベンダもあるものの、その場合においても、ベンダはハイパーバイザベンダ (主にVMware)のサービスを使用してソリューションを提案して いる。

ストレージベンダが、データセンターで使用される仮想マシンベースのストレージアレイを開発するために、VMwareは、以下をはじめとするAPIを提供している。

✓ vSphere API for Array Integration ( VAAI ): ホストマシン上の仮想マシンの集約度と共有ストレージの性能向上(領域をゼロで埋める処理やファイル/領域の複製処理など)のために提供されるAPI。データセンターにおける仮想化及びストレージレイヤを統合する。

✓ vSphere APIs for Data Protection ( VADP ): 個々の仮想マシン上のバックアップによってワークロードを中断することなく、仮想マシンの集中バックアップを実行

✓ vSphere API for Storage Awareness ( VASA ): アレイの能力を正確に把握できるため、ハイパーバイザとストレージレイヤの密度の高い統合が可能。ストレージの仮想化、設定、容量、シン・プロビジョニングなどの情報を収集し、vCenterのサーバを介してユーザーに送信する。

ハイパーバイザとストレージを統合するための進歩は、すべてソフトウェアをベースにしている。ソフトウェア・デファインド・ストレージ (SDS) で基本前提となるのは(つまり本書の主題そのものであるが)、ハイパーバイザが、データセンターの新しいベアメタルだという事実である。ソフトウェア・デファインド・データセンター (SDDC)においては、すべてのサービスが仮想化レイヤ上に構築され、明示的にデータプレーンとコントロールプレーンが分離されるだけでなく、ストレージの機能が実行時の情報まで拡張される (遅延束縛)。固定的なハードウェア構築に依存して企業のワークロードのニーズを満たすのではなく、機能やポリシーはハイパーバイザを通じて実行される。ハイパーバイザとSDSは、一連のサービス (API)を提供して連動し、様々なハードウェアの実行能力を把

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12 ソフトウェア・デファインド・ストレージ For Dummies, Nutanix 特別版

握して、適切な実行能力とプロパティを必要に応じて個々の仮想マシンに対し、適用する。

ベンダが仮想化レイヤ上のサービスを構築する際には、実際の環境で実行されるハイパーバイザと独立した開発を行われなければならない。 つまり、構築されるサービスは、特定ベンダのハイパーバイザに依存してはならない。そうでなれば、この開発は、仮想化本来の柔軟性を失うことになってしまう。

現時点では、多くのデータセンターが依然としてレガシーのストレージデバイスを使用しているが、仮想化を中心とするソフトウェアレイヤによって、徐々にストレージの問題は解決の兆しをみせている。

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第2章

ソフトウェア・デファインド・ ストレージの基礎

本章の項目▶ SDDCの仕組みを理解する▶ 仮想化の要件を理解する▶ SDSができないことを理解する

ソ フトウェアによって定義されたインフラの概念は、革新と可能性をデータセンターにもたらすものである。ソフトウ

ェアは、データセンターの全般を完全に変革する勢いであり、ストレージは、ほんの一つのコンポーネントにすぎない。本章では、データセンターにおけるソフトウェア・デファインド・ストレージ (SDS)の概要を説明し、SDSで実現できることと、できないことを整理する。

「2013年 ストレージ分類レポート(2013 Storage Taxonomy Report)」において、アナリスト・グループのIDCは、SDSを 「あらゆるコモディティリソース (x86ハードウェア、ハイパーバイザ、またはクラウド) や市販品のコンピューティング ハードウェアにインストール可能な、ストレージのソフトウェアスタック」として定義し、「完全なるストレージサービスを提供し、様々なデータ格納リソースを連携させて、リソース間のデータ移動性を実現する技術」と解説している。

ソフトウェア・デファインド・データセンターの構造

「ソフトウェア・デファインド・データセンター(SDDC)」という用語は、2012年になって使用され始めたものである。SDDCの背景とな

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14 ソフトウェア・デファインド・ストレージ For Dummies, Nutanix 特別版

る概念は、VMwareがx86の仮想化を市場に持ち込んだことに遡り、これによってビジネスに不可欠なワークロードの展開、管理、および保護の手法に大きな変革がもたらされた(第3章を参照)。ハイパーバイザ型のソフトウェアレイヤが複数のワークロードを結合させる接着剤のような役割を果たし、サーバレイヤの効率が向上したことから、管理者は、新しいワークロードを管理するための多くの選択肢を得ることになった。例えば、一つのホストから別のホスト、一つのデータセンターから別のデータセンター、さらに、プライベートデータセンターからクラウドプロバイダが運用するデータセンターといった、実行中のワークロード間移動が可能になった。

VMware、Microsoft、およびOracleなどのベンダが提供するハイパーバイザ型「ソフトウェア・デファインド・サーバ」 (仮想マシン)の登場によって、最終的にSDDCを目指した他のデータセンター コンポーネントにもソフトウェア型への推移傾向が認められる。データセンターのサービスはすべて、コモディティハードウェア上で実行されるソフトウェアを介して提供されることが、SDDCの基本的な教義の一つに数えられる。

レイヤ(層)重要な業務サービスを提供するために、最終製品(つまり、完全なソフトウェア・デファインド・データセンター)は複数の個別レイヤで構成される。本書では、ストレージレイヤに注目するが、すべてのレイヤを統合システムに関連付けて理解することが重要である。

処理レイヤハイパーバイザを使用して構築されるソフトウェア・デファインド・サーバの台頭により、コモディティハードウェア上で実行されるソフトウェアが、究極的に独自仕様のハードウェア プラットフォームに取って代わるのではないかという考えが主流となった。最終的には、同一のx86サーバが設置された多くのラックで構成されるデータセンターといった図が予測される。

ネットワークレイヤ今日注目されているのが、ソフトウェア・デファインド・ネットワーク(SDN)を構築するネットワークレイヤの「ソフトウェア化」である。SDNは柔軟性、コスト削減、および管理負荷軽減に関して、新しい可能性を生み出す。例えば、従来であれば、固定的で、環境内のすべてのネットワークデバイスに分散されていたネットワークのコントロールプレーンとデータプレーンを切り離すことが可能になる (後述の「コントロールプレーンとデータプレーンの分離」を参照)。

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第2章: ソフトウェア・デファインド・ストレージの基礎 15

各デバイスへのデータ送信を可能にするために、データプレーンは広範囲に分散されるが、コントロールプレーンは、環境全般を制御する集中管理式のソフトウェア有効化サービスとなる。これにより、SDNに基づいて構築されたネットワークでは、物理エラーをより簡単に回避することができ、アプリケーションへのニーズが変化しても手直しの必要性がないなど、低コストでのデバイス有効活用が可能になる。

ストレージレイヤ今日、従来のストレージに伴う問題を低減または排除するような製品の構築に尽力するベンダ間で、ストレージレイヤが注目を浴びている。SDSの展望は本格化してきてはいるものの、広範なITコミュニティには依然として浸透していない状況である。

SDNの場合と同様、SDSも、I/O処理におけるデータ配置や適用サービスを決定するストレージの論理領域と物理的ハードウェアを切り離すことが追求されている。変化するアプリケーションニーズに対応して調整が可能な、柔軟性の高いストレージレイヤが最終目標である。また、すべての仮想マシンの完全な可視性を維持し、統一性および一貫性を持ったデータファブリックを作成する。

サービスレイヤいかなる組織であっても、SDDCへの全面的な取り組みは称賛に値する目標ではある。しかし、本書では、そうした目標に対するソフトウェア的側面であるSDSに集中して議論を進める、以降の章ではSDSのサービスレイヤのストレージ機能に焦点を宛てる。

ストレージサービス ストレージサービスは依然として重要であり、これがソフトウェアレイ

ヤに移動したからといって、企業規模のインフラで必要とされる機能を諦める必要はない。それどころか、ソフトウェアを介した実装によって、ストレージ機能を拡張および向上することも可能である(以下参照)。

✓ 動的な階層化: 新たなストレージシステムは、高性能なフラッシュストレージと、大容量ハードディスクドライブをサポートするため、ソフトウェア型の動的な階層化により、性能を最適化するためのストレージ階層間のデータ移動を自動的に行うことができる。管理者が複雑なルールを設定する必要はない。

✓ キャッシング: フラッシュストレージの価格低下により、キャッシング機能の重要性が増している。また、キャッシングによ

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16 ソフトウェア・デファインド・ストレージ For Dummies, Nutanix 特別版

り、サーバ側のキャッシュデバイスやハイブリッド ストレージアレイなどの新しいストレージ製品も使用可能となった。価格が低下したとはいえ、ハードディスクに比べるとフラッシュストレージは依然として高価である。このため、ストレージベンダは、最も頻繁にアクセスされるデータを高速キャッシュに配置することにより、フラッシュを使用した高速データアクセスを実現している。

✓ レプリケーション: 様々なデータ保護(ローカル レプリケーション)や災害復旧(異なる場所でのレプリケーション)機能を実現するため、ストレージのレプリケーションは、非常に重要である。レプリケーションによって、本番データを地理的に離れたデータセンターの異なるストレージシステムにコピーすることができる。

✓ クオリティ・オブ・サービス (QoS): QoSの目標は、各アプリケーションで負荷を予測し、高い性能をを確実に実現することである。 従来、IT部門は、単一プラットフォーム上で異なる種類のワークロード (例えば、Microsoft Exchange、SQLデータベース、およびVDI)を混合することを避けてきた。これは、ワークロードがリソースを奪い合い、パフォーマンスが低下するからである。しかし、分散コントロールプレーンにより、特定の仮想マシンにローカルデータを保存することが可能になり、パフォーマンスの保護、モニターおよび分析が可能になった。

✓ スナップショット: スナップショットは、任意の一時点でストレージシステムの複製を作成し、復旧に備えるものである。スナップショットは正式なバックアップに置き換わるものではないが、オペレーションミスによって失ったデータをリカバリすることが可能であり、復旧においては、まず用いられる手法である。

✓ 重複排除: フラッシュストレージを含むストレージの価格低下が続いているが、適切なデータ保護が可能であれば、ストレージ容量を有効活用したいと願うのは当然である。重複排除は、このようなニーズに対して頻繁に利用される。容量に対する要件が低下すれば、コスト削減にもつながる。

✓ 圧縮: データ圧縮は、ストレージ容量を最大限に活用するためのもう1つの方法である。データ重複排除はブロックレベルで行われるが、圧縮はファイル単位であり、ファイルサイズを何分の1にも縮小することが可能である。

✓ クローニング: 全体的なサービスを合理化し、向上するクローニングは、特定のプロジェクト(仮想デスクトップのプロジェクトなど)で頻繁に活用される。

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第2章: ソフトウェア・デファインド・ストレージの基礎 17

仮想化と個々の仮想マシンのサービス提供「仮想化とソフトウェア・デファインド・ストレージ」は、同義語ではないかと主張する人々もいるが、これはまるで見当違いである。 SDSは上位の技術であり、仮想化はその主要なコンポーネントの一つである。

最も基礎的なレベルにおいて、仮想化とは抽象化のことである(次項を参照)。抽象化によって下位のハードウェアからワークロードが効果的に分離される。そして、ワークロードは仮想マシン(VM)と呼ばれるソフトウェア主導のフレームワークで処理される。

ソフトウェア・デファインド・ストレージ ソリューションでは、これまでに言及したサービスはすべて仮想マシンレベルで実行されるため、リソースは効果的に使用され、仮想マシンの移動性がSDDC全般にわたって維持される。

仮想マシンレベルでのソリューション構築では、ビジネスニーズに対してより柔軟に対応できる。仮想化されたワークロードに新しいコンポーネントが追加された場合には、例えば、該当する仮想マシンのみにレプリケーションを使用することで投資を保護することが容易になる。 これとは対照的に、RAIDのような原始的なハードウェア型ソリューションを使用すると、IT部門は新しい要件を満たすため、重要でないワークロードを何百回も反復したり、インフラ全体を再設計したりする必要性がでてくる。

抽象化についての事実仮想化やSDNと同様、抽象化はSDSの主要な要素である。仮想化なしでは、実際、SDSは不可能である。それはSDSが「ストレージ リソースはハードウェアから抽象化される(または分離される)」という事実に依存しているからである。抽象化において、サービスは、追加ソフトウェアのメカニズムを通じて拡張される。抽象化された特性に基づいて、例えば、データの格納場所をアプリケーションの必要性に応じて決定する。また、重複排除やシン・プロビジョニングなどの重要なストレージサービスも提供する。しかし、このメカニズムは仮想化スタックの一部ではなく、追加の機能を提供する追加サービスである。

もう一つの構造上の特性は、SDSでは一般的になってきているが、リニアなスケールアウトを可能にするソフトウェアである。スケーラビリティは仮想化されたストレージに依存するが、ストレージ環境が顧客の継続的な容量および性能を向上するニーズに応えるものである。

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18 ソフトウェア・デファインド・ストレージ For Dummies, Nutanix 特別版

SDDCは、すべてのサービスをソフトウェア経由で提供するだけでなく、サービスまたはアプリケーション単位でコントロールプレーンとデータプレーンを分離する。このように結合が緩い分散型モデルでは、どのコンポーネントも一切、システムのボトルネックとなることはない。説明を加えると、例えば、ストレージのロジックがRAIDコントローラのようなハードウェアデバイスの使用に依存して可用性を提供していたと想定する。その場合には、今後の柔軟性はすべて、そのハードウェア デバイスに縛り付けられることになり、このシステムはソフトウェア・デファインドからほど遠くなる。さらに、ストレージ インテリジェンスを下位のハードウェアから切り離すことで、複数の利益が得られる。例えば、ハードウェアレイヤのディスクドライブに障害が発生しても、分散されたコンピュータリソースによってデータの再構築とリカバリ処理が実行される。

SDSシステムでは、コントロールプレーンにより、ハードウェア環境から分離されたストレージサービスのポリシー型管理が可能になる。

抽象化でのコモディティ ハードウェアの使用

組織は、物理リソースを抽象化することで、基盤となる異なるハードウェアの活用を開始することができる。SDSの抽象化によって、今日の企業が必要とする完全なストレージサービスを利用しつつ、より安価なコモディティハードウェアに移行することが可能になった。RAIDグループやLUNのような従来のストレージ構築の多くは(第1章を参照)、目的に沿って使用可能な管理オブジェクトとして設計された。この目的は果たされたかもしれないが、ストレージ環境は複雑化の一途をたどった。データセンターの管理部門が、抽象化を使って、このような構築の多くを排除または隠すことが可能になり、

代わりに、ストレージのワークフローがアプリケーション管理と同調するように、仮想化担当部門がストレージのプロビジョニングと管理を仮想マシン主体ベースのみで行うことができるようなった。どうしてそうなるのだろうか ? SDSにおいては、様々なアプリケーションとワークロードを稼動する仮想化レイヤを含め、ストレージシステムおよびデータセンターの他のエリアで何が起こっているのかを、管理レイヤが正確に把握している。ストレージリソースは特定のアプリケーションニーズに応じて独自で構築されるため、管理者は、ストレージの初期設定をそれほど実行する必要がない。.

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第2章: ソフトウェア・デファインド・ストレージの基礎 19

この分離の重要性は、複数のハードウェアシステムが環境内に追加されるとさらに明白になる。ITは、ハードウェア全領域への可視性を利用して、データ配置を単一システムまたは単一の拠点から拡張し、クラウドやオフサイトのストレージシステムを活用することができる。SDSシステムでは、単一の分散型コントロールプレーンで管理および制御を行い、数多くのデータセンターのハードウェアを(パブリックとプライベートの両方)使うことができる。

オープンAPIハードウェアから分離されていること以外に、SDDCとSDSの主要な特性として、オープン アプリケーション・プログラミング・インターフェース (API)を使用した相互運用性が挙げられる。APIによって、直接的なストレージ管理を超える継続的な自動化が可能になり、同環境内でサードパーティの拡張機能を使って制御されるプロビジョニングが可能になる。例えば、特定のアプリケーションが特定のストレージを必要とする場合、SDS管理レイヤが収集した同環境の情報に基づいてSDSベンダのオープンAPIを使用してストレージのプロビジョニングを行うこともできる。今日、最も一般的なAPI標準はREST(representational state transfer)と呼ばれる APIである。

SDSにできないことSDSはただの誇大広告ではない。レガシーのベンダの中には、そう考える者もいるが、それは大して驚くようなことではない。というのも、レガシーのベンダは現状維持(高価なハードウェア、高価なアドオンのオプション付ソフトウェア、独自仕様のハードウェア、高い利益率)の既得権者であり、この状況をなるべく維持したいからである。実際、SDDCとSDSに難癖をつけて、顧客の不安、不透明感、懸念を駆り立てているベンダもいる。

しかし、より多くのSDSソリューションが市場で発表されるにしたがって、製品の説得力が増大して高性能になり、SDSに対する独自の見解の下で開発を進める業界大手と競合するようになる。

単なる仮想化ではないベンダは、自分の構築をSDSであると主張したがるが、SDSとして市場で宣伝される多くの製品は、厳密な意味でSDSではない。

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仮想化は、SDSに欠かせないコンポーネントではあるものの、SDSの全体像から見るとほんの小さい部分でしかない。アーチェリーの練習用の標的を想像してみると分かりやすい。同様のイメージを使用してSDSを説明したとすると、仮想化は最内部の円である。それを取り囲む次の円は、SDSの高度な機能を提供するソフトウェアレイヤを表現すると言える。SDSが稼動するのに必要な抽象化を提供するという意味において、ストレージの仮想化は重要ではあるが、ソリューションは、それに伴う管理レイヤがなければ、ただの仮想化されたストレージである。

単なる連合ストレージではないこれと同様に、(適切な管理フレームワークによってそれに近づけることは可能であるものの)SDSは単なる連合ストレージではない。「連合ストレージ(共通の管理システムによって統制された異種のストレージリソースの集合体)」は、SDSと全く同一ではない。下位の物理的ストレージシステムに、依然としてスケーリングおよびデータ保護のための独自ハードウェアが使用され、コモディティハードウェアを使用しない場合もある。今日、市場で一般的な連合ストレージ構築は、仮想ストレージ装置、または省略してVSAと呼ばれるものである。連合ストレージシステムは、SDSのワークロードの配置および企業規模の機能を部分的に提供することもあるが、独自仕様のハードウェアを使用することもあり、真のSDSシステムだとは言えない。

単なるソフトウェアではないSDSはソフトウェアのみによるソリューションではない。コモディティハードウェア(コンピュータおよびハードウェア)上に構築されるソフトウェア駆動ソリューションである。ハードウェアは、企業規模のワークロードを確実にサポートできることが最低条件であり、どのようなハードウェアを使っても良いというわけではない。結局のところ、5,400-RPMの中古ハードドライブを購入して費用を抑えようとするような企業は、それがソフトウェア・デファインドであろうがなかろうが、ストレージシステムに長期的な安定性や優れた性能を期待することはできない。

これが、自社製品をコモディティ型SDSシステムだとして販売する多くのベンダが、事実上ハードウェアとソフトウェアをバンドルで販売する理由である。企業にとって、インフラ ソリューションに対する継続的なサポートは不可欠である。製品をサポートする能力の有無は、即ち、究極的に成功と失敗を左右する要因であるとも言える。ベンダがハードウェアをソフトウェアとともに販売しているからとい

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第2章: ソフトウェア・デファインド・ストレージの基礎 21

って、ソリューションのソフトウェアに基づく機能を諦める必要はない。これが、ニュータニックスなどの企業による、ハードウェア/ソフトウェアのバンドルの一部分として販売するソリューションがSDS (あるいは、部分SDS)として捉えられる理由である。

ソフトウェアのみのSDSを販売するベンダも他に存在するが、実際は最初の「S」(つまりソフトウェア)のみを取扱っている。ただし、こうしたベンダも、ハードウェアの互換リストとデバイス毎の様々なテスト結果を提供している。ハードウェアをバンドルするSDSのベンダとハードウェアをバンドルしないSDSのベンダと違いは、後者はハードウェアソリューションのサポートをしないことにある。彼らは単にSDSのソフトウェアを販売して、ソフトウェアのみをサポートする。

単なる容量と性能だけではないSDSは、データセンターにおける容量と性能の両面を向上させる特性を持っているが、これだけでなくSDSの検討は、ストレージ全般における改善を検討する再考する機会も与えてくれる。以下はその一例である。

✓ 費用の削減: IT部門は、機器の導入コストと運用コストを抑え、余剰予算を、企業に付加価値をもたらす活動として還元しなくてはならない。従来、ストレージはデータセンターの非常に高価な部分であった。

✓ 自動化実現の機会: ストレージのハードウェア(データプレーン)上に稼動する完全な管理レイヤ(コントロールプレーン)、および完全なAPIを伴ったSDSは、データセンターの自動化および統合を実践する際の強力なパートナーとなり得る。先進的なIT部門はこうしたプロジェクトに取り組んでおり、価値を創出しない運用サポートを排除し、自動化に切り替える試みを行っている。これは、IT部門がプロセス全般に関与せず、運用において例外的なアプローチを採用する際に業務の支援となるものである。

✓ アプリケーション使用の可能性: すべてのアプリケーションが極めて優れているというわけではないが、データセンターがよりソフトウェア主導になるにしたがって、アプリケーションのインテリジェンスが向上する。インテリジェンスは、データセンターの個々のコンポーネントに対して特定の作業を実行するよう指令を送るとともに、そのアプリケーションを稼動させるために必要な特性および性能レベルに関する情報をコントロールプレーンに伝達する。 例えば、処理作業のピーク時間に突入すると知っているアプリケーションがあるとする。このアプリ

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ケーションはストレージレイヤに、その時間帯には性能の高いディスクが必要であると積極的に知らせ、最高レベルのレプリケーションができるように、より高いレプリケーションファクターをリクエストする。これに応じて、ソフトウェア レイヤは、処理が急増するこの時間帯には、重要度の低いワークロードに対するデータ保護の水準を下げることもあり得る。将来、これらはすべて管理者の関与を一切必要とせずに実行されるようになろう。

機能を諦める必要は一切なし機能や性能面において、SDSソリューションは市場で最も巨大な独自仕様のストレージシステムにさえも対抗できるだけの力量を備えてきた。これは、フラッシュ型ソリッドステートディスクなどの、今日の高性能プロセッサや下位に位置づけられるハードウェアの活用によるもので、驚くに値することではない。

レガシーのストレージシステムの多くが、企業ストレージのアプローチとして、重複排除などの機能を個別に顧客に強制するが、SDSは、より包括的な機能や高い性能を柔軟に顧客へ提供することができると考えられる。

パブリッククラウドの必要なし新しいソフトウェア主導のインフラは、巨大なクラウド基板にて使用される高度なアーキテクチャをベースにしているかもしれないが、クラウドのソリューションを使用するのに、必ずしもクラウドのプロバイダと契約する必要はない。エンタープライズに注力する企業は、クラウド・スケールのソリューション(GoogleやFacebookのネットワーキング、コンピュータ処理、ストレージサービスなど)を、外部の一般企業が利用できるコンポーネントとしてリファクタリングしてきたが、これは、今後、多くの企業がクラウドプロバイダではなく各社のデータセンターにソリューションを導入するという予測に基づいている。

一方で顧客は、現場でのプログラマビリティとパブリッククラウド ストレージサービスに匹敵する経済性を要求すると考えられる。つまり、新しいSDSソリューションは、クラウド プロバイダのデータセンターで生まれたものでありながら、現在では、エンタープライズの領域に取り入れられるものとして展開しているのである。今日のSDSソリューションでは、プログラマビリティをの利便性を提供する一方で、クラウド・スケールの経済性と利益をもたらす。つまり、ストレージのコスト削減とデータセンターにおける柔軟性を実現するのである。第3章ではSDSのこうした成果の背景にある概念を説明する。

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第3章

SDSの基本概念と 成功への鍵

本章の項目▶ x86サーバでの運用▶ ストレージ選択の自動化▶ フラッシュの活用

S DSがストレージ市場を変革する強力な候補である理由は何だろうか。数々の事象や技術が錯綜する中、これまでにない

方法でベンダがストレージ アーキテクチャを構築することができるようになった。これを背景に、データセンター全体を見直したいとの顧客の要望が増大し、これがSDSの革新と導入の原動力となっている。本章では、SDSの原則と成功への鍵について説明し、SDSが注目される背景を探る。

x86のシェア拡大10年前のインテルプロセッサに比べて、今日のx86プロセッサは、ミッドレンジ(中堅企業)の市場においても猛獣のような勢いを示している。ソケットあたりのコア数が10にものぼるこのCPUは、従来、特定用途に特化したカスタム集積回路(ASIC)でしか手におえなかった作業量をこなす処理能力をもつため、このCPUを搭載する製品では、簡素化が進み価格も低く抑えられている。仮想CPUによって、リソースが詳細にスケジューリングされて仮想ワークロードに割り当てられるため、仮想化によってx86の能力はさらに強化されると言える。

SDSの主な利点の1つとして、コモディティハードウェアの経済性と普遍性を活用できることが挙げられる。x86はこの礎となり、10年以

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上にもわたって、仮想化動向の基盤としての実績を積み上げてきた。x86 のアーキテクチャは、データセンターのプロセッサ競争において他のほぼすべてのアーキテクチャを打ち負かした。インテルは製品の強化を続け(例えば、仮想化の為の支援機能を追加するなどして)、x86は、最強プロセッサとしての地位を確立した。

現在インテルのプロセッサの主流は、厳しい状況下でも高い処理能力を発揮するマルチコア プロセッサである。これらのCPUは、レガシーのストレージデバイス使用されるためだけに設計されたプロセッサやASICと比べて安価でもある。さらに、インテルCPUの優れた性能実績は実証済みであるため、ベンダは、ストレージ スタックにおける重要な分野の開発にフォーカスすることが可能である。

SDSシステムでは、ソフトウェアが、RAIDコントローラや専用ASICなど固定ハードウェアのレガシーシステムを置き換える。また、x86 CPUによって高速で強力なソフトウェア中心のストレージ コントローラが稼動するが、これはSDSには必須である。 正しく実装されれば、こうしたプロセッサにより、企業規模の機能を発揮する一方で、企業のニーズに対応するシステムのスケーリングが可能になる。

従来のストレージアレイのライフサイクルが4~5年以上であるのに対し、インテル製品のライフサイクルは18ヶ月未満であるため、SDSシステムは、速いスピードで進化するものと考えられる。顧客は、プロセッサの交換やアップグレードといったわずかな修正のみで、ストレージ環境全体を置き換えることなくこれらの革新の恩恵を受けることができる。例えば、インテルの最新プロセッサであるHaswellは、DDR4 RAMをサポートし、劇的な性能向上を実現した。インテルの前世代プロセッサであるIvy Bridgeは、16 PCI Express 3.0 のサポートにより、スケーラビリティを飛躍的に向上させた。

利用するストレージ選択の自動化これまでは、ストレージの主要決定を行う際、ブロック・レベル、ファイル・レベル、オブジェクト・レベルのストレージの内、特定のアプリケーションがどのレベルを必要とするかを検討する必要があった。しかし、SDSの世界では、データセンターの担当者はこうした選択に関与しなくてもよい。物理的ストレージは、依然としてこの3種類のストレージサービスを提供することもあるが、ソフトウェアが自動的にアプリケーションやデータのニーズ・特性に基づいてデータの配置を選択する。

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第3章: SDSの基本概念と成功への鍵 25

アプリケーションおよびデータのニーズに基づいて、物理ストレージが決定される。

✓ ブロックストレージ: この種類のストレージは、データ転送用の下位レベルのプロトコルを提供するが、メタデータを持たず、使用を可能にするには上位レベルのファイルシステムが必要である。VMwareのVMFSボリュームは、このレベルである。

✓ ファイルストレージ: この種類のストレージは、管理が容易な上位構造であるが、概してスケーリングが困難である。Windowsファイルサーバのストレージは、ファイル・レベルのストレージを使用するストレージシステムである。

✓ オブジェクトストレージ: この種類のストレージはスケールアウトに適しているが、頻繁な変更やトランザクション処理に関するサポートは得意としない。データはオブジェクトとして取扱われ、個々のオブジェクトはデータペイロード(本体)、オブジェクトに関連するメタデータ、およびオブジェクトの検索を可能とするグローバル識別子によって構成される。

コモディティハードウェアとの互換性

コモディティハードウェアを活用する能力は、ソフトウェア・デファインド・データセンター(SDDC)の支柱となるもので、SDSの重要なコンポーネントである。ベンダは、一般的なサーバシャーシ、インテルx86プロセッサ、マザーボード、利用可能なハードドライブ、およびソリッドステートドライブなどの市販コンポーネントを使って、安価なストレージシステムを構築することができる。インテルx86プロセッサを使用することにより、ベンダはプロセッサやその他のハードウェアの研究開発を行う必要がなく、SDDCの真の利点であるソフトウェアに注力することができる。

SDSの目標は、「ファクトリー・デファインド ・ナッシング(出荷時未定義)」のストレージ ハードウェアを活用することである。「ファクトリー・デファインド・ナッシング」 とは、ストレージ機能がハードウェア製造工程でインストールされたコンポーネントによって、事前に用途を決定されていないという意味である。そのかわり、本来の柔軟性が残されているため、その後のライフサイクルにおいてニーズに合わせた設定を行うことができる。端的に言えば、何も組み込まれて

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SDSにおけるハードウェアの役割ソフトウェアによる管理型データセンターサービスへの移行は、実際、ハードウェアの市場全体にとって朗報である。特にコモディティハードウェアのデバイス上にソリューションを構築するベンダにとっては尚更である。SDSにおけるハードウェアの役割は、重要であるが、シンプルである。ハードウェアの選択に関するルールを以下で説明する。 ✓ ハードウェアは交換可能である

こと (依存関係がないこと)。ハードウェアの観点からの変化は、専用設計または独自仕様ハードウェアとの潜在的な依存関係である。SDSでは、x86型コンピュータ技術が、ソフトウェア主導のストレージサービス(コントロールプレーン)を提供し、ハードウェアは、実際のストレージ機能(データプレーン)を提供する。このソリューションが有効であるためには、ストレージ ハードウェアが非依存の状態で保持されなければならない。すなわち、ストレージ ハードウェアを他の製品と交換しても、ソリューションが有効でなくてはならない(交換するハードウェアに独自仕様のデバイスが含まれない場合)。

例えば、数年前にSDSのシステムが利用可能であったなら、

シームレスにフラッシュメモリー技術を組み込んだ形で構築されていたはずである。今後ストレージをはじめとする様々な技術への投資が拡大されるにつれてし、さらなる革新が現実となるのは間違いない。その一例として、2014年には、インテルなどのサプライヤから不揮発性メモリエキスプレス(NVMe)が大量に市場供給されることが予測されている。

✓ ASICおよびFPGAは過去の産物である。専用設計されたハードウェアの構築は、SDSには無縁であり、これまでにASICやフィールド プログラマブル ゲート アレイ (FPGA)によって提供されていた機能は、高性能ソフトウェアによって再現される。今日主流になったx86プロセッサは、SDSシステムとそのすべてのコンポーネントをサポートしても余りある能力を持つ。さらに、インテルはCPUを継続的に最適化しており、新しい命令セットによって特定作業の処理が加速化されたことによって、x86は専用ASICに匹敵する性能を提供するようになった。一部の重複排除メカニズが使用するSHA-1は、x86命令セットにより直接にアクセス可能である。

おらず、柔軟性に優れた状態ということである。顧客は、単にサーバで使用している物と同様の、業界標準のハードウェアを使用することができ、機能しなくなったときに なかなか代わりが見つからないカスタム製造のコンポーネントに煩わされる懸念もない。

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第3章: SDSの基本概念と成功への鍵 27

ソフトウェアによるスケーリングと可用性

このように多大な利益をもたらすSDSであるが、その実装は容易ではない。GoogleやFacebookのような企業が、旧来の技術を用いたデータセンターは費用がかかり過ぎ、非効率的でスケーリングが容易ではないと、結論付けたおかげで、現在のソフトウェア・デファインドの動向が顕著になってきた。とりわけ、これらの企業は、ストレージレイヤに関して、従来のSANおよびNASのデバイスは今後のデータセンターには不要であるという結論を下し、大量のエンジニアリングリソースを投入して、これらを排除した。同時に、これらの企業は、過度に高額な費用をかけずに何百万(潜在的には数十億)のユーザーへとスケールアップできるソリューションを必要としていた。

こうした企業は、ハードウェアプラットフォーム(コモディティハードウェア)の選択肢が増えたおかげで、また、スケーリングが必要なシステムにソフトウェアを戦略的に採用した結果、理想的な環境の構築に成功した。こうした経緯から、SDSをコンポーネントとする企業向けソフトウェア・デファインド・ソリューションが誕生したのである。主な目標(SDSを独自仕様ハードウェアから独立させる)はすでに十分理解されているところである。

しかし、コモディティ 化したx86ハードウェアそのものには、独自仕様ハードウェア製品が持つ高い可用性や冗長性が組み込まれてはいない。実際、ストレージ システムを管理レイヤなしにコモディティハードウェアのみで構築した場合、スケーリングの問題がすぐに明白になろう。

ここでソフトウェアが必要になる。SDSでは、ハードウェアは高性能なソフトウェアメカニズムによって補強され、x86ノードを介してスケールアウトや分散クラスタを実現し、制限のないにリニアなスケーリングを実現する。このスケールアウトできるストレージモデルでは、全ノードおよび全ワークロードによって活用されるハードディスクとソリッドステート ストレージが各x86ノードに直接割り当てられる。さらに、スケールアウトはストレージ容量だけでなく、ストレージの制御論理にも適用され、スケーリング時のボトルネックを回避 する。

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SDSストレージ製品が構成するクラスタでは、データ可用性は、冗長性の高いハードウェア装置ではなく、ソフトウェアのレジリエンス(障害許容性)によって実現される。実際、ソフトウェアレイヤは、ハードウェアインフラで障害が起こり得ることを前提に設計されており、ハードウェアリソースの障害は即座に検出されて、ストレージのSLAが維持される。

例えば、高価で、信頼性を損ないつつあるRAIDを使用する代わりに、SDSシステムでは、データ保護に関して、クラスタの様々な場所に複数のデータコピーを保管するという、レプリカ型アプローチを採用することができる。まさにこれが、ニュータニックスを始めとする企業が提案するアプローチである。

データのローカリティスケーラビリティを最大限活用し、可能な限りの高い性能を提供するため、ニュータニックスのシステムでは、データのローカリティをスケーリング戦略の中心に据えている。これは、できる限り、データをソースの仮想マシンノード上に保存することによって実現される。しかし、仮想環境の常であるが、仮想マシンは他のハイパーバイザーに移動可能であり、また実際に移動を行う。こうした場合に、ニュータニックスは、仮想マシンのストレージ ブロックを一つのホストから他のホストに完全に転送してネットワークファブリックに大きな負担をかけるような手法はとらない。その代わりに、仮想マシンのファイルをリモートノードからゆっくりと読み出す。仮想マシンがデータの呼び出しを行うと、他の仮想マシンは元のノードのままの状態で、読み出されたブロックが新しい仮想マシンの場所に移動される。仮想マシンのコンテンツすべては、徐々に新しい場所に移されるが、この移動は自然な方法で行われ、ネットワークには負担がかからない。

このようなスケーリングのすべてが、ストレージ環境のすべてを管理するソフトウェアレイヤによって実装される。

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第3章: SDSの基本概念と成功への鍵 29

仮想コントローラと仮想マシン認識型ソフトウェア

SDSが単なる仮想化ではない(第2章を参照)と理解すれば、SDSであると主張するいかなるソリューションにおいても、ソフトウェア管理レイヤが重要な役割を担っていることが明らかになる。仮想データセンターの様々なワークロードやI/Oパターンをサポートするために、管理サービスは、データセンターのソフトウェアファブリック全体に統合され、仮想マシンを認識できなければならない。ストレージサービスが個々の仮想マシン レベルで実行されてはじめて、ソフトウェア・デファインド・ストレージは期待通りの効率性やコスト節減を実現できるのである。

これに加えて、ストレージリソースの容量および制御論理に対するプロビジョニングを容易に行い、迅速にスケーラブルなソリューションを提供するため、SDSには仮想ソフトウェアのコントローラを担う能力も必要である。

さらに、インフラ内における他の仮想要素を完全に認識できることにより、ソフトウェアレイヤは、管理者が定義したポリシーに基づいて、環境内で起こっている状況に応じ必要なストレージを決定することが可能となる。例えば、応答性の高いストレージを必要とするアプリケーションには、フラッシュ型ストレージで対応し、そうでないワークロードに関しては、スピードは劣るが安価なハードディスク型ストレージで対応するなど、サービスレベルに合わせてアサインするストレージを変更させる。SDSの抽象化レイヤおよび仮想化によって、環境内すべての動作が監視できるようになり、自動ワークロード管理が可能となった。

SDSは、ストレージ ファブリックに適応したサービスを提供できるため、I/O頻度の高いアプリケーションは、優先的にリソースのアクセスが与えられ、SLAが保証できる。これによって、データセンターのストレージ コンポーネントには、他の技術と同様の柔軟性が確保される。例えば、VDI環境では、すべてのデスクトップが同時に起動し「ブートストーム」が発生する。ブートストームでは、大量のI/O処理が発生する。SDSでは、高いI/O需要が発生する前にこれを検出し、自動的に適切なデータを性能の高いストレージレイヤに移行することができる。

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ソフトウェア・デファインド・ストレージ For Dummies, Nutanix 特別版 30

フラッシュの出現従来のハードディスクは遅い。15,000 RPM シリアルアタッチドSCSI (SAS) ディスクでさえも、仮想デスクトップ、多量のデータアナリティクス、基本的なサーバの仮想化など、多くのワークロードが求める高い性能を提供できない。時間の経過とともに、新しいサービスのI/O要件が、ハードディスク市場が提供できるI/O性能を大きく追い抜いてしまった。

ハードディスクからできる限りの性能を引き出すという勇敢な試みがなされてきてはいるが、残念ながら、ストレージの性能問題を対処するソリューションの多くが非常に高価であった。そして今日、ソリッドステート (フラッシュ) ストレージという、もっと良いソリューションが出現した。

フラッシュ型ストレージは、ずいぶん前から利用可能であったが、最近になるまで多くの企業にとってこれを導入するには高価すぎた。しかし、この価格が大きく低下したため、フラッシュストレージは、ハイブリッド ストレージアレイ、オール フラッシュ アレイ、そしてSDSシステムなどの新しいストレージのクラスの重要な部分となっている。

フラッシュストレージは、ストレージの性能に2つの潜在的な利点をもたらす。

✓ 高速層: フラッシュストレージを使用すれば、ストレージ システム内で真に高速なパフォーマンス層を管理者に提供できる。この層は、1秒あたりのI/O処理(IOPS)で特に高速性が要求されるワークロードに使用することができる。

✓ キャッシング: ソリッドステートドライブをI/Oキャッシングに活用することで、フラッシュストレージは、本来は遅いハードディスクを加速することができる。キャッシュは、アクセス頻度の高いデータおよびメタデータの保管に自動的に使用される。

その仕組みを説明する。まず、ハードドライブが性能を最大限発揮するためには、I/Oパターンがシーケンシャルでなくてはならない。書き込み処理を一定時間保持するのに、キャッシングレイヤを使用することができる。最終的にはソフトウェア管理レイヤがこのデータ(ハードドライブへのランダム書き込みとなっていただろうデータ)をシーケンシャルI/Oに再配列し、その後、ハードディスクへの書き込みが行われる。この単純なテクニックによって、I/Oのランダム処理を大幅に高速化することができる。

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第3章: SDSの基本概念と成功への鍵 31

端的に言えば、フラッシュストレージは、ハードディスクだけでは不可能な、インシステムのソフトウェア制御のストレージ管理を提供する。

迅速な障害からの復旧障害は起こり得る。データセンターのすべてのコンポーネントはいずれ障害を起こす。今日や明日には起こらないかもしれないが、いずれ、すべてが機能しなくなる。別に、読者を憂鬱にさせるつもりでこの節を書いたわけではないが、実際、どのコンポーネントも永久に作動し続けるものではない。

しかし、正当に設計されたSDSシステムは、万が一の障害時に対応できるよう設計されている。つまり、ソフトウェアレイヤは、大規模にスケーリングされた分散システムであっても、システムのハードウェア/ソフトウェアコンポーネントの状態を常に把握することができる。ストレージサービスがスケール化されるに従って、管理レイヤが様々な障害からシステムを保護できることが今後ますます要求される。

ショートストローキングハードディスクの性能をもっと高めようとする試みは、ショートストローキングと呼ばれる。 ショートストローキングは、ハードドライブがフォーマットされる手法を指すが、実際は、各プラッターの外側リングのみがフォーマット処理され、残りのドライブは無視される。プラッターの外側のみをフォーマットすることで、フルディスクをフォーマットした場合と比べて、ヘッ

ドをそれほど動かす必要がない。もちろん、当たり前のことであるが、この手法では未フォーマット領域の容量を使用することはできない。従って、ショートストローキングは、IOPS毎のコスト削減には役立つが、ギガバイト毎のコストが肥大化し、ストレージ性能の問題解決としては、結局は高価な手法となる。

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ソフトウェア・デファインド・ストレージ For Dummies, Nutanix 特別版 32

SDS型ストレージシステムの保護とデータ可用性メカニズムに関しては、いくつかの種類がある。

✓ データ配置のインテリジェント化: データ保護は、データが物理ディスクに書き込まれ、アプリケーションのワークロードに認識されると同時に開始される。SDSのストレージシステムにおいて、データ配置と保護は、重要な意味を持つ。なぜなら、ハードウェアベースのRAIDは一切データ保護をしないからである。SDSでは、データ の再配置が何度も実行される。

ニュータニックスのシステムでは、ディスク、ノード、またはフルアプライアンスの損失によって、クラスタに保管されるデータへのアクセスに問題が生じないように、データ配置のアルゴリズムによって、データのコピーが物理ノードと収束されたアプライアンスに分散される。

✓ コントローラ: SDSでは、データがディスクから読み込まれ、ディスクに書き込まれていること、およびアプリケーションと仮想マシンが使用できる状態にあることの確認をソフトウェア型コントローラが担う。ソフトウェア コントローラは冗長性を持ち、障害が発生した場合も高水準の可用性が維持設計されている。

✓ ソフトウェアRAID: SDSでは、ハードウェア型のRAIDシステムを不要とするが、ソフトウェア型のRAID構築が使用されることもある。SDSの概念に適合させるため、こうしたRAID構築は、ソフトウェア型のコントローラで完全にサポートされ、企業規模の容量と性能ニーズに対応してスケーラブルでなくてはならない。

ニュータニックスの仮想コンピューティングプラットフォームでは、各ホストにて仮想マシンを稼動するのと同時にソフトウェア型のストレージ コントローラが動作する。このストレージ コントローラとそのニュータニックスクラスタアーキテクチャ内の位置づけによって、システム全体が潜在的な障害を回避することができる。これは、クラスタ内のストレージコントローラ同士が緩く結合されているためである。万が一ストレージ管理をする仮想マシン全体が不能状態に陥ったら、不能になっているコントローラが回復する間、他のストレージ仮想マシンが自動的かつ透過的にデータ管理を引き継ぐ。これと同様のことがハードウェアの障害の際にも行われる。ハードウェアのノード全体に障害が起こると、他のストレージ仮想マシンが、不能ノードが停止したところから複製されたデータコピーを使用して稼動を開始する。この処理はすべて、ユーザが意識することなく実行される。管理者にとっても、この処理は透過的で、これがソフトウェア設計のインフラストラクチャが目指すところである。

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第3章: SDSの基本概念と成功への鍵 33

高価な大型コンピュータによるストレージ システムを、今後SDSが完全に置き換えるためには、シームレスな障害対応や、これを回避して作業を継続する能力が、極めて重要な設計要素となる。

SDDCの到来ソフトウェアとインフラ管理の包括的な目標は、完全なSDDCを実装することである。この、より大きなパラダイムの一環として SDSはいくつかの特性をSDDCと共有する。

✓ コントロールプレーンとデータプレーンの分離: コントロールプレーンをデータプレーンから分離させることにより(第2章を参照)、リソースのプロビジョニングやその運用に関する意思決定の分散が可能になる。さらに、インテリジェンスの度合いが低い安価なコモディティハードウェアを使用して、インフラの全体的なコスト削減が可能になる。

✓ 遅延束縛: プログラミング用語である「遅延束縛」とは、環境の柔軟性を維持する能力を指す。早期または静的な束縛システムでは、多くのコンポーネント、その操作、および設定がハードウェアに固定されている。遅延束縛では、これらがランタイム処理の一環としてソフトウェアで提供および管理されるため、特定の環境に合わせて調整が可能になる。SDSとSDDCはこの遅延束縛の原則を活用して、環境に最大限の柔軟性を提供する。

このインフラに対する能動的なシステムのアプローチでは、データセンターのすべての要素が動的であると想定する。データセンター環境そのもの、データセンター環境へのニーズ、そしてビジネス自体が刻々と変化する現状において頻繁な変更は避けられない状況である。 遅延束縛では運用の多くが、ベンダや初期構成での厳しい管理ルール経由で強制されるのではなく、実行時に決定される。初期構成で厳しい管理ルールが作成されるということは、起こり得る変更に対応するためにIT部門は、絶えず警戒していなくてはならない。そしてそれが現状である。変更は通常のことと受け入れ、能動的なシステムとポリシーに環境の管理を任せることで、IT管理者は、ビジネスに付加価値を生む業務に安心して注力することができる。

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第4章

SDSの企業に対する貢献本章の項目▶ クラウドの利点を活用する▶ ITリソースを最大限に利用する▶ 組織の将来に備える

I Tの革新はIT業界だけの革新にとどまらない。概して、技術進展は、トレンドになる前に、幾分かの具体的かつ継続的なビジネ

スの利益をもたらすものである。SDSに関しては、規模の大小にかかわらず、多くの企業にとって、この技術が事業にもたらす成果や推進力が成功への鍵となることに疑いの余地はない。

クラウドスケールのエンタープライズ アーキテクチャ

たとえ、小さな企業であっても、競争力を擁して成長していくには、大企業のような形態を真似なければならないと考える。また、大企業は、社内IT部門がその内向きで受身の体制から、合理的な費用で幅広いサービスを提供できる(または請け負うことができる)クラウドスケールのサービスプロバイダへと生まれ変わならければならないと理解している。

クラウドとサービスプロバイダは、IT部門が関与することなくワークロードの改革が実現できるという提案を事業責任者に対して行うこともあるが、最高情報責任者(CIO)は、これに対して慎重に対処するべきである。事業が必要とするサービスを提供する一方で、自社組織における技術目標へのコントロールを失わないようしなければならない。

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ソフトウェア・デファインド・ストレージ For Dummies, Nutanix 特別版 36

IT目標の支援ITシステムの改善に向けた高額プロジェクトの実施に対しては、最近になって、より厳しいチェックが行われるようになった。財務担当者は、IT部門が提供するサービスの価値について懐疑的である。CIOは、運用コストを低下する一方で、継続的に、可用性、スケール、容量、性能面での目標を達成するシステムの導入を迫られている。

SDSシステムは、広範なソフトウェア・デファインド・データセンター (SDDC) のイニシアチブの一環として配備された場合には特に、新しく発生するワークロードのニーズに対応できる柔軟性をIT部門にもたらす。この柔軟性は、概して、データセンターで別個に管理されたリソースとしてのストレージを排除することでもたらされる。別個に管理されたリソースやストレージシステムは、専門技能を持つ高価な人材を必要とするが、SDSを導入することで、これらのリソースを他の分野に割り振ることが可能になる。SDSがSDDCの一部である場合、ストレージリソースは自動でアプリケーションニーズに応じるように個々の仮想マシンレベルに割り当てられる。アプリケーションレイヤはAPIを介してSDSのコントロールプレーンと通信する。SLAが必要とする性能およびデータ保護を提供するため、コントロールプレーンは、要求元のアプリケーションに対して物理的なストレージリソースを動的に割り当てる。これらはすべて自動的に実行されるだけでなく、リアルタイムでアプリケーションの要求に対し、SDSシステムは、ストレージレイヤに対する変更を実行する。

さらに、このようなソリューションはコモディティハードウェアを使用するため、全体的な性能向上が実現される一方で、IT組織はストレージコストを削減することができる。つまり、SDSを使うことで、ストレージの機能に対して妥協することなく、ストレージのギガバイトあたりのコスト、および1秒あたりのI/O処理(IOPS)に対するコストを削減させることができる。事実上これらの機能(重複排除、圧縮、フラッシュストレージのメタデータ キャッシング) によって、ストレージサービス全体のコストが削減できる場合もある。それは、サービスが高価な独自仕様のハードウェアではなく、ソフトウェアを介して提供されるためである。

SDSが実現するもう一つのITトレンドに、ITシステムの簡素化が挙げられる。データセンターは、何十年に渡り、特定ニーズに対して都度設計されたポイントソリューションで満たされ、しかも、ソリュー

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第4章: SDSの企業への貢献 37

ション同士は、なんら関連性を持たないという状況に陥ってきた。仮想マシンレベルの制御ではなく、性能確保を目的として、インフラのサイロが配備された。

これは、インフラの簡素化と完全にに相反するものである。さらに、スペース、電力消費、冷却負荷という形でデータセンターのコストが増加する。SDDCにおいては、ハードウェアデバイスは、いかなるデータセンターのサービス(複数)も提供できる。共通のリソースでさえも、管理が不安定で困難になった。 データセンターの簡素化はより良いサービスの提供、コスト削減、そしてビジネスへのフォーカスが可能になるため、CIOは、データセンターの簡素化を最重視している。

既存リソースの効率的な使用企業のIT部門が組織内の技術サービスをすべて提供する時代はほぼ終わりに近づいているが、これには正当な理由がある。過剰な数の新しいベンダが強力なソリューションを掲げて市場に参入しているため、企業は、自社のIT部門を使うよりもずっと低い費用で、サードパーティーのサービスを受けることが可能になったからである。この結果、IT部門の人件費や技術リソースを、成長分野のビジネスや技術のニーズを満たす方向で再配置を行わねばならない。これにより、今日のIT部門が、サードパーティー技術サービスを提供する社内サービスプロバイダあるいはブローカーに転向するという、もう一つのトレンドも生まれた。そうしたサービスはクラウドを基にしたものが多く、企業組織におけるハイブリッドクラウド化の一環と言える。

このように、サービスが現場とクラウドプロバイダのデータセンターの両方で実行される「拡大された」環境下でも、SDSアーキテクチャは、オフサイトでもクラウド型のストレージでも、企業の単一のデータファブリックの一部として活用できるはずである。SDSが高速フラッシュSSDを最も頻繁にアクセスされるデータセットに使用するのと同様に、SDSはアーカイブされたデータをより安価なオフサイトのストレージへと押しやって、ITの優先事項を犠牲にすることなく全体的なコスト削減に貢献することができる。SDSは、より深くインフラに統合することが可能なため、IT部門の目標達成をサポートし、新たな自動化実現の機会と捉える事ができる。

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プライベートクラウドの機能を実装する

ますます多くのCIOが、クラウド利用の恩恵を得ることを望む一方で、データセンターのリソースは企業コントロール下に置きたいと考えている。SDSは、プライベート クラウド イニシアチブ(自動化および編成されたデータセンターのインフラ)をサポートする機能を提供する。「オーケストレーショ ン」とは、複雑なデータセンターのサービスを自動化、調整、そして管理する一連のサービスを指す。より大規模に編成された環境でストレージがクラウドの管理リソースになるように、SDSシステムは、こうした戦略的なイニシアチブをサポートできなければならない。OpenStackなどのツールは、企業がオーケストレーショ ンの潜在能力を最大限引き出す際に有用なツールである。

SDSは、クラウド管理スタックにより、ストレージリソースの使用に関する詳細情報を提供する。これらの情報は、以下の問いに対する回答を提供するものである。

✓ どの程度のストレージが必要か?

✓ どのストレージ層が必要か?

✓ どのような性能レベルが実現されているか?

プライベート クラウドは、これらの情報を活用して、全体的なストレージ環境を最適化し、企業に提供されるリソースに対応する。

基本的に言えることは、SDSはプライベートクラウドの環境にとって重要なコンポーネントになり得る、ということである。

現代のCIOが掲げる目標は、TCOを大幅に削減することと、新しい投資からのリターンをなるべく早期に確保することである。既存のリソースを使用する自動化は、この目標を達成する有効な方法である。

IT投資リターンへの期待より迅速に新しいイニシアチブを実行したいとするIT部門の要望を受けて、取り除かれた最初のハードルが、サーバの仮想化であった。しかし、データセンターの他の部分はこうした動向から取り残された。IT部門は、新規プロジェクトやビジネスのイニシアチブにおい

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第4章: SDSの企業への貢献 39

て、コストを合理的範囲に抑えながらも、投資に対しての見返りを迅速に実証しなければならない。仮想デスクトップやデータ アナリティクスのような新しいイニシアチブの多くは、多大な処理能力と容量を必要としており、その実現は、優れた設計のストレージ システムに大きく依存するが、SDSの採用によって、IT部門は、ビジネスニーズをサポートするストレージの設計、プロビジョニング、および管理から解放される。容量と性能の両面においてリニアなスケーラビリティを持つことから、ストレージシステムが新しい目標に向かう際の障害物になることはない。

将来に焦点を当てる事業責任者は、いつでも、どこでも、リソースや情報にオンデマンドアクセスできるコンピュータをポケットに入れて歩くことに慣れてしまっている。IT部門は、一部の情報リソースへのアクセスを管理してはいるものの、サードパーティーからも同様のアクセスが提供されており、 このような経験から、経営陣はどの技術が何を行い、どのように動作するかという見識を持っている。CIOは、こうした新しい展望に社内の部門が応えるように変革しなければ、経営陣がより能力が高いと考えるベンダに、外注することになるというリスクに直面する。

しかしながら、IT部門は変革を実施するための大金を用意してもらっているわけではない。彼らは、80パーセントの予算が既存の運営を賄い、20パーセントの資金で新しいイニシアチブを実施するという80/20の概念で働き続けることを強いられている。SDSとSDDCは、多額の費用を要すことなく、IT部門が24時間体制で運用することを可能にする。ソフトウェア主導のインフラは、自動化と統合に十分な能力を提供する。そうしたイニシアチブにより、過度の費用や遅延を伴うことなくITはビジネス需要を満たすことができるようになり、組織は21世紀の市場に向けてより周到な準備をすることができるようになる。

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第5章

SDSの重要な事実10項目本章の項目▶ 仮想化とSDSの連携▶ ハードウェアの重要性を認識する▶ フラッシュストレージの役割を理解する

以 下は、IT部門がソフトウェア・デファインド・ストレージを検討する際に、意思決定に役立つと考えられる重要な10

項目である。

仮想化はSDSの基本事の起こりは、2000年初頭に仮想化が主流になったことに遡る。仮想化(仮想マシンを実行するソフトウェアレイヤが制御する、CPU、メモリなどの物理的リソースの抽象化)は、データセンター環境に対する概念を一変させた。本当の意味での革新は、仮想化と強力な管理ツールが結びつき、サーバ間でのシームレスなワークロードの移行が実現され、システム全体に迅速さと可用性がもたらされたことである。ここでは、ワークロードはもはや特定のシステムに依存しない。仮想化レイヤが、下位ハードウェアの共通プラットフォームとなり、このプラットフォーム上で上位のアプリケーションが実行されるからである。仮想化によって、個々のアプリケーションやワークロードに対するリソースの割り当てが可能になった。抽象化レイヤ(第2章参照)なしには、SDSは未だにただの夢物語にとどまっていたであろう。

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しかし、SDSは仮想化だけではない

仮想化は、SDSの極めて重要な要素ではあるが、ただの一部分でしかない。SDSをアーチェリーの練習用の標的と仮定すると、仮想化は中心の円である。それを取り囲む次の円は、SDSの高度な機能を実行するソフトウェアレイヤを表す。SDSの動作に不可欠な抽象化を提供するという意味において、ストレージの仮想化は重要ではあるが、付随する管理レイヤなしには、ソリューションは、ただの仮想化されたストレージになってしまう。管理レイヤによって、重複排除や圧縮をはじめとする高度なワークロード管理サービスが提供されるからである(第2章を参照)。細部にわたってアプリケーションを制御するため、これらのサービスは仮想マシンレベルで実行される。また、階層化ハードウェアで構成される物理ストレージ環境(高性能ディスクと大容量ディスクの組み合わせなど)においては、管理レイヤによって、ワークロードが実行されるストレージ層が決定される。

ハードウェアは依然として極めて重要である

SDSにおいては、各種機能を提供するソフトウェアが注目されがちである。しかし、いかなるソリューションにおいても、ハードウェアの重要性を忘れてはならない。SDSでは、ハードウェアから独立したソフトウェアレイヤが機能と製品の差別化を行う。この構造により、仮想ホストやワークロードへのストレージサービスに影響を与えることなく、ハードウェアリソースレイヤのアップグレードが可能になる。

多くのベンダが「コモディティ型SDSソリューション」として、ハードウェアとソフトウェアをバンドル販売している。 これには理由がある。企業にとって、総合インフラの継続サポートは不可欠であり、包括的な製品サポートの有無はビジネスの成否をも決定付けるからである。ベンダがソフトウェアと共にハードウェアを販売している場合でも、ソフトウェアコンポーネントの重要性に対する理解は非常に重要である。

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第5章: SDSの重要な事実10項目 43

SDSに妥協の余地なしSDSは、経済性とITアジリティの向上をもたらすものであるが、だからといって、ストレージ機能やサービスに妥協が許されるものではない。

ストレージソリューションには、データの階層化、スナップショット、重複排除をはじめとする様々な機能が求められる。多くのデータセンターにおいて、これらの機能は必須である。SDSソリューションにおける唯一の違いは、これらの必須機能が独自仕様のハードウェアでなく、ソフトウェアによって提供されることである。

クラウドに借りができたSDSSDSとクラウドストレージは直接関連するものではない。しかし、SDSの概念はFacebookやGoogleをはじめとする先進的なクラウドインフラに触発されたものであるといっても過言ではないであろう。クラウド型サービスのユーザの増加に伴い、コンピュータの処理能力とストレージ容量に対する要求が飛躍的に増大した。共有SANストレージを搭載する従来のx86型アーキテクチャ(第3章を参照) では、新たに求められたITコストの削減に対応できなかったため、安価なサーバーに内蔵されるストレージ(システムが統合ストレージとして認識するフラッシュとHDD)を応用する高性能ソフトウェア主導のアーキテクチャが開発された。この一連の流れの中で、従来の集中型サイロストレージは、終焉を向かえつつある。

中小企業、中小企業のクライアント、および大企業ですらクラウドプロバイダのような巨大規模のシステムは必要ないが、それでも、これらのプロバイダの技術がもたらすコスト激減やシステム設計の簡素化は大きな魅力である。しかも、これらの恩恵は、あらゆる仮想ワークロードで実現することができる。

フラッシュがSDSを拡張するハードディスクには、大量データを安価に保管できるという利点がある。しかし、ハードディスクのみによって高速性能を得ようとする場合、数百台ものドライブを導入し平行稼働しなくてはならない。大容量のストレージに高速性を求める場合、容量のわずか一部しか使用されないという非効率的な状況が発生してしまうからであ

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る。利用効率を犠牲にして性能を追求するのは、優れた手法とは言えない。

フラッシュ型ストレージは、ディスクドライブと比較して何十倍も高速である。フラッシュ型ストレージを適切な構成でシステムに統合すれば、コスト増加を伴わずして、システム全体において高いパフォーマンスが実現できる。SDSにおいては、IT管理者は、フラッシュストレージとハードディスクを組み合わせ、各アプリケーションに適切なストレージ層を割り当てることができる。フラッシュストレージを装備するSDSは、従来型ストレージアレイの安価な代替ソリューションといえる。

コントロール/データプレーンの分離による柔軟性

コントロールプレーンをデータプレーンから切り離すことにより(第2章を参照)、リソース運用に関して一元的な意思決定ができるとともに、企業規模でソフトウェア主導サービスの効率的提供が可能になった。また、IT部門は、安価なコモディティハードウェアを使用することにより、インフラ全体のコストを削減することができる。プレーンの分離によって、ストレージシステムの頭脳部分は集中化され、データ配置を管理する下位データプレーンは分散される。集中化されたコントロールプレーンが分散したデータプレーンを管理するという構造である。

x86ハードウェアが標準にインテルx86アーキテクチャ(第3章を参照) は、データセンターの標準プラットフォームとなった。高速なx86の利用によって、独自仕様のハードウェアにかかるコストが不要になっただけでなく、CPUの短い開発サイクルによって処理能力を大幅に増大することができた。このCPUアーキテクチャを仮想化に応用すれば、x86の低コスト技術は、企業環境やクラウドデータセンターの「ユビキタス」になる可能性を秘めている。こういった背景により、現在、多くのSDSソリューションは、x86シリーズのハードウェア上に構築されている。低価格で柔軟性の高いx86は今日のみでなく、明日のニーズにも応えるプラットフォームである。

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第5章: SDSの重要な事実10項目 45

SDSは本物新技術が登場すると、ハイプ・サイクルに乗ってコストや利益面の利点が誇大に主張されるのが常である。しかし、SDSはこの稀少な例外となる可能性が高く、既存ベンダや新規ベンダの提案の多くが実現するものと期待されている。

SDSはビジネス向上に貢献するSDSを礎石とするソフトウェア・デファインド・データセンター(SDDC)によって、設定が容易で、、管理コストが低く、効率的な運用可能な技術が提供された。ITがサービスとなって組織のすみずみまで迅速に浸透するようになると、ビジネスの機動力が向上する。これはストレージに関しても言えることである。ストレージがハードウェアから切り離されてサービスとなることによって、ビジネスは必要とするアプリケーションとデータを手にすることができる。SDSにおいては、従来のインフラよりも迅速かつ低価格でこれが可能になるのである。

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