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ペーパーブーメラン作りに見る理科と他教科の関わりについて 55 近年流行のおもしろ理科実験の中でも「ペーパーブーメラン」作りは各種メディアの登場回数も 多く,たくさんの人々が知る興味関心を引き付ける科学工作アイテムである。しかしその華やかさ とは逆に特に学校教育の中では授業では使えないとの声も少なくない。ペーパーブーメラン作りの 現状を筆者のここ数年の科学普及活動の実践から分析し,単に娯楽に終わらない理科教材の開発と 他教科との関わりに触れることができる手法について述べる. 〔キーワード〕理科教育  科学教育  科学コミュニケーション ペーパーブーメラン作りに見る理科と他教科の関わりについて 岡 田   努* *:福島大学総合教育研究センター教職履修部門 1 はじめに 学校教育における理科教育において,科学への興味 関心を醸成し,さらにはより高度な知識の習得を目指 して現在さまざまな取り組みが行われている。筆者は ここ数年,科学史研究の方法論を用いて,上述の取り 組みに加えて,通常はエピソードの紹介程度にしか見 過ごされがちな,科学史との関わり,特に著名な科学 者等が行った再現実験から得られた,当該時代の素材 等の物質的な基盤,技術,文化等の歴史的背景との関 わりを抽出し,多角的な視点から科学知識の普及を図 る手段を構築することを研究の目的としてきた。 それはすなわち過年度大きな問題となった高校にお ける「世界史」未履修問題と関わって,上記の成果を 活用し学校教育において各教科間とりわけ理科と世界 史の密接な関わりを提示できる理科教材を製作するこ とが教科を超えて「学ぶ」ための意欲づけとなると考 えたからである。 本論では,近年流行の身近な材料を用いた科学実験・ 工作から「ペーパーブーメラン」をとりあげ,上記の 目的達成のためのアプローチについて述べる。 2 科学普及活動における「ペーパー  ブーメラン」作りの現状 ⑴ スポーツから科学普及活動の道具へ ブーメランといえば日本では,日本ブーメラン協会 (1982年日本ブーメランの会発足,1986年現在の名称 に改称)スポーツとして普及してきた歴史をもつが 1 最近では科学館や科学サークル等で実施されている科 学普及活動の中で「おもしろ理科実験・工作」の類の 象徴ともいうべき実験・工作のアイテムとなっている。 素材も木製のものよりも紙を使った3枚羽,4枚羽 のものが主流で,身近な材料でできるということをう たい文句に国内だけでも年間相当数のブーメラン教室 等が開催されている。 筆者が知る限りでも各種ブーメラン協会,ブーメラ ンをはじめ,科学サークルや科学博物館,科学館,公 民館等での科学教室あるいは学校教育等あきらかにス ポーツから科学普及活動での利用増がめざましく 2 さらにここ最近ではテレビ番組等での紹介とおもしろ 科学実験の流行も手伝って,「ペーパーブーメラン」 を見たことがない者はほとんどないほどの人気があ る。 ⑵ 科学普及活動における「ペーパーブーメラン」 このペーパーブーメランの作り方については多くは 厚紙を用いた3枚あるいは4枚羽の作り方で紙のサイ ズや,止め方,角度,ひねり方,投げ方が,一見 4 4 てい ねいに記載されていて,加えて①小中学生にとっては 難解な物理の法則についての解説と,②投げ方につ いての技能習得,が記載されているというものがほと んどである 3 。しかし「本の作り方通りに作っても飛 ばない」という声も多く,学校教育の現場からは「授 業では使えない」などの声も聞かれている。筆者もこ のペーパーブーメラン作りをテーマとして,小学校へ の出前授業や,学校外の科学講座等を実践してきた 4 本報告では報告者が研究してきたペーパーブーメラン づくりの際に従来ほとんど語られてこなかった点と, それを活用した指導内容および受講生である子どもや 指導者の反応などについて報告し,さらにこの指導内 容が小学生や中学生などにとって理科とそれ以外の教 科との関わりを学ぶ教材として活用する方法について 考察する。 3 ペーパーブーメランの起源と主な 作成方法 ペーパーブーメランの起源については,1985年頃と いう記録もあるが 5 ,実際に不明な点が多い。

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ペーパーブーメラン作りに見る理科と他教科の関わりについて 55

 近年流行のおもしろ理科実験の中でも「ペーパーブーメラン」作りは各種メディアの登場回数も多く,たくさんの人々が知る興味関心を引き付ける科学工作アイテムである。しかしその華やかさとは逆に特に学校教育の中では授業では使えないとの声も少なくない。ペーパーブーメラン作りの現状を筆者のここ数年の科学普及活動の実践から分析し,単に娯楽に終わらない理科教材の開発と他教科との関わりに触れることができる手法について述べる. 〔キーワード〕理科教育  科学教育  科学コミュニケーション

ペーパーブーメラン作りに見る理科と他教科の関わりについて

岡 田   努*

*:福島大学総合教育研究センター教職履修部門

1 はじめに

 学校教育における理科教育において,科学への興味関心を醸成し,さらにはより高度な知識の習得を目指して現在さまざまな取り組みが行われている。筆者はここ数年,科学史研究の方法論を用いて,上述の取り組みに加えて,通常はエピソードの紹介程度にしか見過ごされがちな,科学史との関わり,特に著名な科学者等が行った再現実験から得られた,当該時代の素材等の物質的な基盤,技術,文化等の歴史的背景との関わりを抽出し,多角的な視点から科学知識の普及を図る手段を構築することを研究の目的としてきた。 それはすなわち過年度大きな問題となった高校における「世界史」未履修問題と関わって,上記の成果を活用し学校教育において各教科間とりわけ理科と世界史の密接な関わりを提示できる理科教材を製作することが教科を超えて「学ぶ」ための意欲づけとなると考えたからである。 本論では,近年流行の身近な材料を用いた科学実験・工作から「ペーパーブーメラン」をとりあげ,上記の目的達成のためのアプローチについて述べる。

2 科学普及活動における「ペーパー  ブーメラン」作りの現状

 ⑴ スポーツから科学普及活動の道具へ ブーメランといえば日本では,日本ブーメラン協会(1982年日本ブーメランの会発足,1986年現在の名称に改称)スポーツとして普及してきた歴史をもつが1,最近では科学館や科学サークル等で実施されている科学普及活動の中で「おもしろ理科実験・工作」の類の象徴ともいうべき実験・工作のアイテムとなっている。 素材も木製のものよりも紙を使った3枚羽,4枚羽のものが主流で,身近な材料でできるということをうたい文句に国内だけでも年間相当数のブーメラン教室

等が開催されている。 筆者が知る限りでも各種ブーメラン協会,ブーメランをはじめ,科学サークルや科学博物館,科学館,公民館等での科学教室あるいは学校教育等あきらかにスポーツから科学普及活動での利用増がめざましく2,さらにここ最近ではテレビ番組等での紹介とおもしろ科学実験の流行も手伝って,「ペーパーブーメラン」を見たことがない者はほとんどないほどの人気がある。

 ⑵ 科学普及活動における「ペーパーブーメラン」 このペーパーブーメランの作り方については多くは厚紙を用いた3枚あるいは4枚羽の作り方で紙のサイズや,止め方,角度,ひねり方,投げ方が,一見

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ていねいに記載されていて,加えて①小中学生にとっては難解な物理の法則についての解説と,②投げ方についての技能習得,が記載されているというものがほとんどである3。しかし「本の作り方通りに作っても飛ばない」という声も多く,学校教育の現場からは「授業では使えない」などの声も聞かれている。筆者もこのペーパーブーメラン作りをテーマとして,小学校への出前授業や,学校外の科学講座等を実践してきた4。本報告では報告者が研究してきたペーパーブーメランづくりの際に従来ほとんど語られてこなかった点と,それを活用した指導内容および受講生である子どもや指導者の反応などについて報告し,さらにこの指導内容が小学生や中学生などにとって理科とそれ以外の教科との関わりを学ぶ教材として活用する方法について考察する。

3 ペーパーブーメランの起源と主な 作成方法

 ペーパーブーメランの起源については,1985年頃という記録もあるが5,実際に不明な点が多い。

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2010- 156 福島大学総合教育研究センター紀要第 8号

 図1.ペーパーブーメラン6

 ペーパーブーメランの作成方法に関する出版物やwebサイトは非常に多く,また科学館等での実験メニューレシピの類を含めるとその数は膨大であるが,大きく分けると次の3つくらいに分類できる。 ①ペーパーブーメランを作ることだけをとりあえず目的としたもの,②ペーパーブーメランの作成方法に加え,なぜ戻ってくるのか等について物理学的な視点を加えて子どもから一般人にも分かりやすく解説したもの,③上記①,②に加え,歴史上のブーメランの起源や使用方法や遺跡の発掘地域など広く歴史的な事項にまで言及しているもの。 ①についての事例は極めて多く,主に全国の科学館などで小学生から体験できるような科学教室などで活用されているケースが多い7。そこでは限られた時間内(30分~1時間程度)でしかも工作経験の未熟な小学校低学年児童を対象に教室を実施しなければならないという事情もあって,理屈や作成上の留意事項よりも作品をとりあえず完成させることに主眼が置かれる。 完成しても当然戻ってくるように投げることはできず,結局は大人が作ってしまうケースが多いようである。後述するが筆者が実施したペーパーブーメラン作りでは,物理学的な知見はひとまず置いたとしても,大学生でさえ,自分で作成して投げられるようになるには90分×4回くらいは必要である。そのうえで物理学の知見まで学習させるにはさらに時間を要する。 小学校や中学校の理科の授業で扱われないというのは当然であろう。 次に②については,まず科学指導者が演示実験のような形で比較的一般人にも分かるような説明で物理現象を説明するケースがある。ブーメランがもどってくるしくみは,走っている一輪車と同じです。一輪車に乗って走っているときに,車輪を左にたおそうとすると左に曲がり,逆に右にたおそうとすると右に曲がります(自転車も同じですね)。この秘密は「回転」にあるのです。回転しているものに力がはたらくと,はたらいた力の向きではなく,ちょっとちがう向きに動こうとします。このことをジャイロ効果とよんでいます。

・・・・・・ブーメランは回転しながら,前に飛んでいますから,前方から風の力を受けます。板目紙はひねってあるので,その力のおかげでブーメランは左(左ききの人の場合は右)にたおれそうになります。でもブーメランは回転しているので,ジャイロ効果でたおれないで左に曲がるのです。いつも左に左にと曲がっていくので,最後は自分のところにもどってきます。・・・・・・ブーメランの羽をそらせたのは,ブーメランが落下しないようにするためです。ためしに羽を思いっきりそらせてみましょう。高く上に舞い上がるはずです。さて,ブーメランのしくみがわかって,うまくもどってくるようになったらいろいろと工夫してみましょう。 たとえば,ブーメランの羽をもっとねじるとどうなるでしょうか?風の力をたくさん受けるようになるので,たおされる力が強くなり,曲がり方が大きくなります。つまり,ブーメランは近いところを回ってもどってきます。でも,あまりねじりすぎると,風の力を受けすぎて失速するので注意しましょう。 遠くを回ってもどってくるようにするには,羽の先のほうにおもりをつけます。重くなると曲がりにくくなるからです。ビニルテープなどを巻いてみましょう。 これでブーメランの動きを調節することができます。最後は両手で「パシッ」とはさんでキャッチすれば,拍手かっさい間違いなし。かも・・・8

 これは近年テレビ出演等で著名な米村でんじろう氏の監修による解説であるが,物理現象を非常に分かりやすい事例と言葉で解説しているのがよくわかる。 他にも,科学サークルや理科教材研究会など理科教育の研究者等を対象とした研究物があり,時には研究論文として発表されたものもある。 たとえば大阪市立科学館では「ジャイロの安定性と歳差運動を観察するサイエンスショーを企画し,2008年9月から11月まで実施した。ジャイロコンパスの原理や地球の歳差運動にも言及した」9メニューなどがある。 ③については国立科学博物館がかつて販売していたペーパーブーメランキット10などが代表的なものであろう。そこには作成の手順以外にもその原理や,科学博物館ならではといった世界におけるブーメラン文化に関する情報も記載されていた。 しかしこの分野に属する出版物は意外と少ない11。 以上の通り,近年流行の「ペーパーブーメラン作り」に関する状況を見てきたが,そのほとんどがペーパーブーメランの作り方(組み立て方),ひねり等の微調整,投げかた(持ち方)が記載されているだけで他はブーメランが戻ってくる物理現象について触れられているだけである。 実は筆者の実践から言えば,これでは戻ってくるペーパーブーメランを作ることはできないし,また作成にあたって非常に重要な要素である,材料やその選び方,道具の使い方など最も重要な点が記載されていないということなる。

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4 岡田式「ペーパーブーメラン作成 プログラム」の特徴

 それでは従来のペーパーブーメラン作りに対してどのような点を補足したのか本節で詳述する。

 ⑴ 材料の問題 ―紙の流れ目― まず筆者が注目したのは「紙の流れ目」である。 実はペーパーブーメランの羽根を流れ目の方向に切り取るのか,あるいは垂直方向に切り取るのかでは飛び方に決定的な違いが出るのである。 羽は紙の流れ目の方向に切ることが望ましい。 紙の製作工程の最後でローラー上をパルプが流れるときにその向きに繊維が揃う。この向きの強度,張りの強さをブーメランの羽を切り取る際に配慮することが大切なのである。

 図2.パルプの流れる方向と繊維の向き12

 図3.縦目の紙と横目の紙

 上図の矢印が流れ目の向きを表しており,左の紙がいわゆる「縦目」右の紙が「横目」とよばれる。 紙を流れ目の方向に力をかけると,曲がりにくく張りがあるように感じられる。一方流れ目に垂直な方向には曲がりやすく,抵抗なく曲がってしまう。 ペーパーブーメランは流れ目の向きに羽を切ることが重要である。図1の3枚羽のブーメランを立てて投げるわけだが,羽にひねりを加え,丸みをつけることで,ブーメランの羽根に外側から回転方向の中心に向かって力を受けるが,このとき羽に張りがあって曲がりにくいと,旋回しやすいのである。 しかし張りが弱いと羽が揚力に耐えられず反り上がってしまい旋回せず,手元に戻ってこないのである。 そのことから筆者は次のようなブーメランの台紙を開発した。 図4は右図に示すように流れ目が横向きの,横目の

 図4.筆者が作成した,ペーパーブーメラン台紙

ボール紙である。この紙は横向きの羽(黄色,図4上部の横向きのもの)に張りがあり,縦向きの羽(青色,図4下部の縦向きのもの)では張りが弱いことがよくわかるようになっている。 同じ一枚の紙から黄色と青色の羽の2種類のブーメランを作っても異なる運動をするということを実感できるのが本教材の第1の特徴である。 しかしこの紙の流れ目については,工作本や,科学教室などでは一切ふれられていない13。「紙の目を考えて,2枚を直行するように張り合わせたものを試作。飛行距離が伸びました」という記述があるのみである。14

 しかし各団体が販売しているブーメラン台紙を手に取ってみると明らかに紙の流れ目を意識していることが見て取れる。

 ⑵ 道具の使い方  次に,作成中に使用するハサミとホチキスの使い方とそれがブーメランの旋回にどのような影響を与えるのかについて述べる。 まず図5のように3枚の紙を組み合わせるための切り込みを入れるのだが,ここでは右利き用ブーメランを作成するときは右利き用のはさみで切り込みを入れるのが良い。図のようにずれが生じるからである。

 図5.ハサミで切ったときの切り口

 図5のずれを使って図6に示すように羽を組み合わせる。すると紙に余計な負担をかけずに組み合わせることができる。左利き用の場合は逆になる。 次に組み合わせた3枚の紙をホチキスで固定する。 筆者が見たブーメラン作成の手順ではこの作業が重視されていない。

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 図6.紙に余計な負担をかけない ホチキスで留めた後,図7のようにしっかりとつぶして固定することが重要である。 この作業を行わないと,ブーメランの中心にわずかなブレが生じ,安定した飛行にならないようである。

 図7.ホチキスの針をしっかりとつぶす

 繰り返すが,通常の工作でこの過程が非常に重要であるにもかかわらず,これまでは全くと言っていいほど語られてこなかった。

 ⑶ 微調整について 次に旋回させるための羽の微調整について述べる。通常作成方法を示すイラストなどは,多少大げさに書かれていることが多いようである。 3枚羽を組み合わせたブーメランに次のようなひねりを加え,丸みをつけるのだが,イラストを見ただけでは作成者は本当はどの程度ひねればよいのか理解できず,ブーメランが戻ってこないケースがほとんどである。 以下に説明のためのイラストと,実際微調整を加えた後の画像を示す。

 図8.ひねりを加える

 図8,9の画像のように,微調整はほんのわずかなものである。しかもこの段階で微調整に手間取ると紙がいたんだり,手の水分が紙を湿らせたりなどして取

 図9.丸みをつける

り返しがつかなくなる場合も多い。

 ⑷ 紙の厚さについて 紙の強度や重さを増すことによって飛行距離,旋回の半径を大きくする工夫を行った。 図10の左は型抜き加工を施したものである。紙を厚くすると,小学生にはハサミ等で切るのはより難しくなり,ハサミで切り取る際に紙を曲げてしまったり,折ってしまったりして結局はブーメランにダメージを与えてしまう。そのため厚紙の場合にはこの加工を行ったのである。

 図10.厚紙の使用と微調整のための模様

 また図10の右の画像は,微調整を行うために羽に矢印や模様を加えたものである。 上述したひねりを加えたり,丸みをつける工程は初心者には非常に難解でイメージがつきにくい。そのため上記の作成手順の図をスライドで示しながら,この模様を利用して微調整を行わせたのである。 また厚紙を用いると,薄い紙との違いやそれに伴い強度を保つための工夫が必要となる。 図11はかなり厚めの紙の3枚の組み合わせただけの 状態の画像である。しかし紙自体が厚いために羽がすでに浮き上がっているのが分かる。 この点を見逃さないことも重要なポイントとなる。 また厚紙を用いた場合は,ホチキス止めも薄い紙と同じわけにはいかない。 図12に示すように,薄い紙では3か所を止めていたものを倍の6か所にした。そうすることで重い紙でで

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 図11.厚紙で組み合わせた場合

 図12.ホチキス止めの数増加

きたブーメランが回転する際のわずかなブレを防ぐことができるようになり,回転の安定感が増すようである。 しかしむやみにホチキス止めの箇所を増やせばよいわけでなく,全体の質量が大きくなりブーメランが戻ってこない場合もある。

 従来の解説書ではここで述べた,紙の「流れ目」やハサミを使う意味,ホチキス固定の問題,微調整の部分について全くといいほど語られてこなかった。 通常はブーメランが旋回するための,物理学の理論が語られていた。しかしこの工程では材料の選び方や,加工方法,道具の使い方がブーメランの飛行に決定的な影響を与えるのであり,この工程がブーメランの飛行の原理の理論に内包されている点を指摘しておく。

5 各種科学講座における実践方法

 筆者は上述したブーメラン作成の課題を取り入れた教材を作成し,小学校,高校,課外活動等でブーメラン教室を実施した。この2年間に行ったのは主に以下の場所である。1 平成19年~20年特許庁主催  知的創造サイクル啓発事業 1)指導者向け講習会  「ものづくりにみる,科学・技術・社会   -科学史の視点から知的創造サイクルを考える」  対 象:科学指導者学校教員,      教員OB,企業等研究者OB

 2)子ども向け講座「ペーパーブーメランを作ろう」  対 象:小学生  開催地:国内10数か所(札幌,盛岡,鶴岡,天童,南相      馬,加須,大垣,田原本,広島,那覇等)      国外:マレーシア クアラルンプール2 平成20年度JST地域ネットワーク支援事業   ふくしまサイエンスぷらっとフォーム事業   開催地:福島県内 小中学校,科学館等,図書館,公民      館等  対 象:小学生~一般,学校教員3 スーパーサイエンスハイスクール事業(SSH)  開催地:福島県立福島高等学校  対 象:高校1年生4 大学での講義  「サイエンスコミュニケーター形成論」  対 象:大学生

 小・中学生にはペーパーブーメランの作成のための講座を行った。また高校生・大学生にはペーパーブーメラン作りを通した,科学普及の方法と他の教科との関連を,さらに指導者には生徒と同様の指導方法で受講してもらい,後に指導法上について解説した。 上記のポイントを確認しながら以下のような手順で進めた。

 ①講師よりA4のボール紙に2種類の3枚羽ブーメランが印刷されている用紙を配布し,2種類のうち一方を選択させる。 ②選択した理由を発表させる。 ③作成しておいた2種類のブーメランを講師が飛ばし,飛び方の違いを考えさせ,発表させる。 ④同じ紙であっても,紙の切り取り方の違いで飛び方が変わるという点を解説し,作り方の解説に進む。 ⑤受講生の前でペーパーブーメランを作る。その際受講生には重要と思われる点を随時メモさせる。 ⑥作成後,重要だと思われる点を発表さる。 ⑦最初に配布したボール紙で練習させる。 ⑧工作方法の確認と調整など個別に対応する。 ⑨終了後,別の用紙を配布し,各自に作成させる。

 講座の際の受講生の反応は次の通りであった。 ア①②については,青色と黄色に印刷されている場合,男子児童は圧倒的に青色を選ぶ。 イ紙を選んだ理由として「青色は重そうでブーメランにしたらよく飛びそうだ」という解答が多かった。 ウ③の段階で違いに気付く児童・生徒はまずいない。飛び方の違いについてもなかなか理解できない。 エ④について配布したボール紙にさわらせて,「紙の流れ目」を体感させる。ここで紙の目に注意して3枚の羽根を切り取ることの重要性を解説する。⑨の新しい紙を配布すると子どもも大人も全員がまず紙の目

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すなわち張りを確認するようになる。 オ導入で通常の解説書には記載されていない点を実演を交えながら指摘することで,以降の説明を注意深く真剣に聞くようになった。 カ上記の反応は,小学生だけでなく,高校生,大学生,指導者すべてにおいてみられた。

 このように,従来のペーパーブーメランン作成の手順において欠けている点を指摘ながら,ブーメランがうまく飛ばない理由を考えさせ,物理学の理論以前に材料の問題や紙の性質,加工方法にふれながら作業を進めること,すなわちこの過程を体験させることがブーメラン作りだけでなく他の工作や実験を行う際にも重要である点を指摘した。 なお,本講座で受講者(小学生から大人まで)全員が理解したことは紙の流れ目と強度,そしてホチキスの使い方であることが,受講者のアンケートや感想から明らかとなった。

6 ペーパーブーメラン作りと小学校・ 中学校での各教科との関わりについて

 上述の実践から,ペーパーブーメラン作りを理科教育等にどのように活用すればよいのか,また理科以外の教科とどのように関連付けることができるのか考察したい。それはペーパーブーメラン作りだけでなく,近年流行の「おもしろ科学実験・工作メニュー」すべてに当てはまるものだからである。 では本稿では小学校・中学校理科と中学校技術科についてみていくことにする。

 ⑴ 「ものづくり」教育との関連について 「ものづくり」とは,1999年(平成11)3月に成立した「ものづくり基盤技術振興基本法」の登場以降,教育分野にも頻繁に登場する言葉である。 もともとこの「ものづくり」という日本語はなく,「ものつくり 物作り」という言葉が「1 小正月に,模型の農具や繭玉など予祝行事に用いる飾り物を作る行事。御作立(おさくだて)。2 田や畑を作ること。耕作すること。また,その人」15を意味することばとして存在している。 「ものづくり」は,この法律の内容を見れば明らかな通り,「製造業」を表す用語である。「ものづくり」という言葉の登場をめぐっては,詳述する紙幅はないので別の機会に譲ることにして,ここではこの法律で「学習の振興等」と関連する部分と学校教育との関わりを見ていくことにする。

第十六条 国は,青少年をはじめ広く国民があらゆる機会を通じてものづくり基盤技術に対する関心と理解を深めるとともに,ものづくり基盤技術に関する能力を尊重する社会的気

運が醸成されるよう,小学校,中学校等における技術に関する教育の充実をはじめとする学校教育及び社会教育におけるものづくり基盤技術に関する学習の振興,ものづくり基盤技術の重要性についての啓発並びにものづくり基盤技術に関する知識の普及に必要な施策を講ずるものとする。16

 これは,第16条に示された同法律の文言である。さらに「平成13年度ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告について」の中には 学習指導要領に基づき,主に関係教科の中で,ものづくりに関する知識や技術の指導を実施するとともに,科学技術・理科教育を振興。(具体的事例を紹介)17

と,理科教育の振興にも具体的に触れられている。 そこでまず小中学校での理科・技術科の学習指導要領に見られる関連項目を見てみよう。 文部科学省『小学校学習指導要領解説 理科編』平成20年6月には次の記述がある。 生活科との関連を考慮し,ものづくりなどの科学的な体験や身近な自然を対象とした自然体験の充実を図るようにする。・・・・・ 科学的な体験については,例えば,第3学年の「風やゴムの働き」が考えられる。風で動くおもちゃやゴムで動くおもちゃをつくるものづくりの活動を通して,風力やゴムの伸びとおもちゃの動く距離とを関係付けて考えるなどの学習が考えられる。18

と「理科の改善の基本方針及び具体的事項」の中で取り上げられている。 ここでは「ものづくり」が科学的な体験とされているし,「おもちゃ作り=ものづくり」とされ,「ものづくり」が,理科の授業でせいぜい自作の教材をつくる程度の扱いとなっている。 次に中学校理科についてみてみると,学習指導要領解説の⑴ 改訂に当たっての基本的な考え方には④ 科学的な体験,自然体験の充実を図ること 生徒の自然体験などの不足が課題になっており,観察,実験の充実はむろんのこと,原理や法則の理解を深めるためのものづくり,継続的な観察や季節を変えての定点観測など,科学的な体験や自然体験の充実を図ることに配慮し改善を図る。19

ア 原理や法則の理解を深めるためのものづくりを,各内容の特質に応じて適宜行うようにすること。20

 などと小学校のそれと比較すると原理や法則の理解を深めるための「ものづくり」が強調されている。加えて下記の通り,社会教育施設の利用を通じた「ものづくり」教育の振興についても明記されている。ウ博物館や科学学習センターなどと積極的に連携,協力を図るよう配慮すること。・・・・・・ 科学技術が日常生活や社会を豊かにしていることや安全性の向上に役立っていることに触れること。また,理科で学習することが様々な職業などと関係していることにも触れること。21

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 次に,『中学校学習指導要領解説 技術・家庭科編』の中の,「2 中学校技術・家庭科改訂の趣旨」のⅱ改善の具体的事項での引用を見てみる。

○ これからの生活を見通し,よりよい生活を創造するとともに,社会の変化に主体的に対応する観点から,次のような改善を図る。(技術分野)○ ものづくりなどの実践的・体験的な学習活動を通して,材料,加工,エネルギー,生物,情報に関する基礎的な知識と技術を習得させるとともに,技術と社会・環境とのかかわりについて理解を深め,よりよい社会を築くために技術を適切に評価・活用する能力と態度の育成を重視することとし,次のような改善を図る。ア 現代社会で活用されている多様な技術を,①材料と加工に関する技術,②エネルギーの変換に関する技術,③生物育成に関する技術,④情報活用に関する技術等の観点から整理し,すべての生徒に履修させる。その際,小学校や中学校の他教科等における情報教育及び高等学校における情報教育との接続に配慮し,従来の「B情報とコンピュータ」の内容を再構成する。 なお,ものづくりなどを通して基礎的・基本的な知識と技術を習得させるとともに,これらを活用する能力や社会において実践する態度をはぐくむ視点から,各内容は,それぞれの技術についての「基礎的な知識,重要な概念等」,「技術を活用した製作・制作・育成」,「社会・環境とのかかわり」に関する項目で構成する。イ ものづくりを支える能力などの育成を重視する視点から,創造・工夫する力や緻密さへのこだわり,他者とかかわる力(製作を通した協調性・責任感など)及び知的財産を尊重する態度,勤労観・職業観などの育成を目指した学習活動を一層充実する。また,技術を評価・活用できる能力などの育成を重視する視点から,安全・リスクの問題も含めた技術と社会・環境との関係の理解,技術にかかわる倫理観の育成などを目指した学習活動を一層充実する。ウ 技術に関する教育を体系的に行う視点から,小学校での学習を踏まえた中学校での学習のガイダンス的な内容を設定するとともに,他教科等との関連を明確にし,連携を図る。22

 ここでも理科と同様に,「ものづくり」を実践的・体験的な学習活動としているし,それにより基礎的な知識と技術を習得させ,技術と社会・環境とのかかわりについて理解を深めさせることを目指しているのがわかる。 しかし,ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)での「各教科におけるものづくり教育の例」では,次のような記載にとどまっている。

小学校段階「理科」モーターなどの道具作り「図画工作」材料や用具などを使った工作中学校段階「理科」身近な物質を用いた電池の製作「美術」工芸の制作「技術・家庭」木材加工,金属加工等<理科におけるものづくりの事例> 山梨県甲府市立相川小学校では,4年生の理科において,

電気のはたらきを学習した後,発展的な学習として,レモンや備長炭などで電池をつくり,モーターを回したりした。子どもたちは,身近な素材から電池がつくれることに驚き,探究心をふくらませることができた。23

 これらの事例はそれまでの理科教育・技術教育となんら変わりがない。また山梨の小学校の事例についていえば,発展的学習の内容が中学校理科で学習すべきことであり,それとの継続性の関連や,いわゆる「ものづくり」教育の特徴などには触れられていない。

 ⑵ 筆者の実践例にみる教科間の関連性について 筆者が開発したペーパーブーメランの教育プログラムについては,単に物理学の理論にふれるだけでなく,①材料となる紙の製造工程の話(社会科)②紙の流れ目を意識した羽の切り取り方(図工・技術)③ホチキス止めと飛行への影響(技術・理科)④紙のひねり等の微調整と飛行の問題(技術・理科) これら4つの視点で実施してきたことはすでに述べた。さらに,ブーメランの起源について加えてみよう。 オーストラリアの原住民アボリジニが遊具として用いる有名なブーメランは旋回して手もとに戻ってくるものだが,「本来のブーメランは一度地面でジャンプさせたりして使う,帰還しない飛び道具で,戦闘ないしは狩りの武器である。そして古代エジプトでは,この型のブーメランが鳥打ちに用いられていた」24というのである。 他にも三枚羽のペーパーブーメランの形状に関しては,次の図の狩猟用道具「ボーラ」などは,その飛行時の形状が似ていることも講座等では指摘してきた。

 図13.狩猟用の道具「ボーラ」25

 以上のようにブーメランの起源をめぐって世界史や世界地理などの知見も必要となっていることが分かる。 したがって,ペーパーブーメラン作りにおいては作成方法だけでなく,ここで述べた材料・加工・微調整・道具の使い方等に着目し,体験させることで,そのことが理科と産業,技術,世界史等を結びつける教材となるし,他の「おもしろ理科実験メニュー」等についても,同様の手法を用いることで,学校教育の様々な教科において関わりを持たせ活用できることをひとま

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2010- 162 福島大学総合教育研究センター紀要第 8号

 図14.各教科との関連

ず指摘しておく。

おわりに

 本稿ではその取り扱いがスポーツ分野よりも現在では科学普及活動の道具として活用されている「ペーパーブーメラン」の理科教材としての活用だけでなく,材料や加工方法そして世界史・世界地理など教科を超えた教材となることを取り上げたが,それは他の科学実験・工作メニューの活用方法においても同様のことが言えるだろう。 ペーパーブーメランが科学館などで近年流行している科学イベントでの人寄せのための興味をひくパフォーマンスとして紹介されている現状,そしてそこでは一般人にとってはなじみの少ない難解な物理学の理論が紹介され,ブーメランの投げ方と微調整という個人の修練に偏った紹介がなされている現状を指摘してきた。これでは学校教育理科では活用できないとされてしまうのは当然であり,その制作過程で伝えなければならない重要なエッセンスが欠落しているのである。 上述したように,紙の選び方や加工の仕方(ホチキス止めの重要な視点),そもそも紙はどのようにできているのかなどにもふれることは単に理科の学習に利用するだけでなく図工や社会科への関連にも目を向けさせることになる。そしてこのことは材料の選び方や加工の方法などそのものがブーメランの飛行の原理をなす物理学の理論の構成要素となることを示しているのである。 またブーメランの歴史にもふれることで世界史や世界地理,技術とのかかわりにもふれることが可能となり,ペーパーブーメランを活用して理科と他の教科との関わりを示す教材としての有効性を示すことができる。 昨今理科教育に「ものづくり教育を取り入れた」と謳った教育実践例がよく聞かれるが,そのほとんどは「工作キットの活用」か,「身近な材料を用いた工作」

程度の内容で,材料や道具,強度,そして見た目の美しさといった理科以外の教科との有機的な関連にまで踏み込んだものはほとんど見られない。子どもたちへの理科教育実践研究においては指導者養成にこそ本論で述べてきた研究の視点が必要であろう。

※本研究は科研費(20500772)の助成を受けたもので ある。

注 1 ㈶日本レクリエーション協会編『ブーメランハンドブック』1999年 pp.76-77 2 国立科学博物館,科学技術館,日本科学未来館,等をはじめとする全国の科学博物館・科学館で工作メニューとして実施されてきた。他にも関西ブーメランネットワーク  http://www.kbn3.com/index.htmlなど数多くの団体等がある。筆者自身が体験したものとしては福島県内では郡山市ふれあい科学館,ムシテックワールド,福島市こむこむ,県外では大阪市立科学館,宮崎県科学技術館,二戸市田中館愛橘記念科学館などで実際に体験した。他の施設でも沖縄県那覇市久茂地公民館,東松島市図書館,郡山市図書館,発明協会主催指導者向け研修会など枚挙に暇がない。 3 ブーメラン協会編(1999)『ブーメランハンドブック』㈶日本レクリエーション協会。他多数。 4 岡田努(2008)「ものづくりに見る科学・技術・社会」特許庁知的創造サイクル啓発事業における配布資料より。 5 大阪市立科学館ホームページ 紙ブーメランの歴史  http://www.sci-museum.kita.osaka.jp/̃ohkura/PBhistory.html  ここには下記の記載があるだけで,実際の発明者は依然不明である。  「私が知る限りでは,紙ブーメランの一番古い記録は名倉氏によるものです。 名倉氏の文章は,もともとは月刊「たのしい授業」に掲載されたもののようですが,それは仮説社から出版されている「ものづくりハンドブック2」という本に収録されています。それによれば,紙ブーメランの発明者は,当時(1985‐86)小学5年生だった小林輝之さんだそうです。  名倉氏はバルサやシナベニヤで十字ブーメランを作って飛ばしていていたそうです。名倉氏の講演会にお母さんと参加した小林さんが,数ヵ月後,工作用紙を十字に張り合わせたブーメランを名倉氏に持ってきて見せたのだそうです。」 6 岡田努講演・科学教室配布資料  平成19年~20年特許庁主催 知的創造サイクル啓発事業 ⑴ 指導者向け講習会

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ペーパーブーメラン作りに見る理科と他教科の関わりについて 63

  「ものづくりにみる,科学・技術・社会   -科学史の視点から知的創造サイクルを考える」 ⑵ 子ども向け講座「ペーパーブーメランを作ろう」他 7 たとえば,古くは,東京創価学園 片桐 泉教諭が考案した「学園ブーメランの作り方・投げ方」

  http://www.kansai.soka.ed.jp/̃rika/data/temp/boomerang.pdf 郡山市ふれあい科学館ホームページ「科学の広場 ペーパーブーメラン」  http://www.spacepark.city.koriyama.fukushima.jp/events/square/2004/0513/index.htm  二戸市田中館愛橘記念科学館ホームページ  http://www.civic.ninohe.iwate.jp/topic/prglist/listfail/list158.html  ふくしま森の科学体験センタームシテックワールドの工作教室。その他多数。 8 おしえて「まこペンギン」ホームページ  http://www.eyeladream.com/exp/ex-200106.html  監修:米村でんじろうサイエンスプロダクション  米村傳治郎。米村氏には他にも「ブーメラン」工学院大学広報部編「おもしろ理科実験集2」㈱CMCなど多数の出版物がある。

9 斎藤吉彦「サイエンスショー『ジャイロのわがまま実験』実施報告」大阪市立科学館研究報告 19, 2009年, pp.63-166.大阪市立科学館では,1994年に「風は不思議」というサイエンスショーを実施,そこで登場したのが最初だとのこと。このショーについても,創価学園の片桐泉氏の学園ブーメランを参考に試行を重ねた国立科学博物館の佐々木勝浩氏に指導をうけたという。

10 国立科学博物館編「ブーメランについて」(三枚翼ブーメラン製作キット解説書より

11 近角総信「ブーメランはなぜもどる―原住民の知恵―」『日常の物理』東京堂出版1994年, pp.160-164などもあるがこれはペーパーブーメランにはふれていない。

12 株式会社竹尾ホームページより転載「紙と加工の知識」 http://www.takeo.co.jp/site/paper/line/index.html  2009年8月18日現在13 ブーメラン協会ホームページ  http://www7b.biglobe.ne.jp/̃kenkyukai/  同協会で販売しているブーメラン台紙をみると流れ目を意識して作っているように思われるが,そのことについては明記していない。14 原体験教育研究会ホームページ  http://www.proto-ex.com/gentaiken/gentaikentop.htm  原体験教育研究会第493回例会 3月7日㈮ 2003年  昭和60年前後,兵庫教育大学生物学研究室(当時)教授の山田卓三氏(現在名古屋芸術大学教授)を中心にした「うれしの台教材開発研究会」がその前身。実験・観察を通して行う「うれしの方式」というモジュール的な教材開発を行っている。

15 大辞泉での記述。他に「ものづくり」についての辞書等での記載はない。16 ものづくり基盤技術振興基本法(平成十一年三月十九日法律第二号)より17 経済産業省ホームページ  ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告」(略称:製造基盤白書)について 平成14年6月7日  http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/06/h0611-4.html18 文部科学省『小学校学習指導要領解説 理科編』平成20年6月 pp.7-819 文部科学省『中学校学習指導要領解説 理科編』平成20年7月 pp.9-1020 同上書,p.12.21 同上書,p.1322 文部科学省『中学校学習指導要領解説 技術・家庭科編』平成20年7月,pp.4-5.23 前掲書17「ものづくり白書」2002年  http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/06/h0611-4c.html24 井尻正二『人と文明3 文明の中の未開』1968年,築地書館, p.51.25 岩城正夫『技術の起源をさぐる 原始技術史入門』新生出版 1976年