マルチホップができる“革新的lpwa” zetaでiotビ...

1
46 テレコミュニケーション_March 2019 47 テレコミュニケーション_March 2019 Z E TAを採用。アイティアクセスの澤村 宗仁氏は、「いずれも少子高齢化で現 場の監視が困難だったケース。既存の 通信技術ではコストが高くてネットワー クが作れなかったが、Z E TAでそれを 助けることができた」と話す。 凸版印刷では医療施設において、人 感センサーを用いてトイレでの転倒や 利用状況等を可視化する見守りサービ スの実証実験を行った。屋内施設でも ZETAの実効性が確認できた。 アシックスが行った実証実験も面白 い。スポーツシーンでの L P WA 活用を 推進する同社は、山間部で行われるト レイルランニングにおけるランナーの安 全管理などに役立てようとしている。ラ ンナーの体調不良や遭難事故等への 迅速な対応を行うため、ランナーにセン サーを身につけてもらい、位置情報や コンディションを遠隔からモニタリング するというものだ。 こうした競技が行われるコースは大 部分が携帯電話の圏外であり、LTE をベースとするL P WA 規格(LT E - M、 NB-IoT)も使えない。そこで、中継器が 使えるZETAに注目した。 神戸の六甲山で行った実証実験で は、クルマ 2 台に電池駆動の Z E TA中 継器を取り付け、コースの近くに配備 図表2)。ランナーの状況をモニタリン グすることに成功した。加えて、移動中 継器を現地に配備するだけで迅速に 通信網を構築し、終わればすぐに撤収 できるという短期開催イベントに適した 運用が可能なことも証明できた。 アシックスでは、こうしたイベントだ けに留まらず、幅広いシーンでの活用 も検討しているようだ。Z E TAアライア ンス理事で I oT 事業・サービス開発を 担当するQTnetの松崎真典氏によれ ば、「一般の人がハイキング等を楽しん だり、観光する際にも位置情報を活用 した様々なアプリケーションが展開でき る」可能性があるという。 いよいよ登場する日本製デバイス 中国・東南アジアへの展開も Z E TAアライアンスは、こうしたユー スケース開拓をさらに加速させるため の様々な取り組みを行っている。 目玉の1つが、日本製デバイスの拡 充だ。4 月から凸版印刷が Z E TA 通信 モジュールの量産を始める。海外 製の 従来製品に比べて42%も小型化されて おり、国内メーカーとも、凸版印刷製モ ジュールを使った Z E TA 対応センサー 等の開発を進める計画だ。Z E TAアラ イアンスに参加するマクセルの電池技 術をはじめ、日本の技術を駆使したデ バイスが続々と登場するはずだ。 こうした日本製の Z E TAデバイスに は、「中国のユーザーも期待している」 と朱氏は話す。現在、中国ではインフラ 監視などに Z E TAを用いようとする複 数のプロジェクトが進行中で、「数百万 から数千万台のセンサーを用いる計画 もある」という。また、マクセルの宮本真 氏は、「日本と同じ 920MHz 帯を使って いる東南アジアにも日本の技術と製品 を持っていける」とも話す。こうした海 外展開が成功すればデバイス価格の低 廉化も進み、「日本でもさらに展開しや すくなる」と同氏は展望する。 このほか、会員のビジネスマッチング やユースケース開拓の促進に向けて、 ワーキンググループ(WG)活動も盛り上 がっている。すでに交通・社会インフラ 分野、スマートビルディング、環境ビジネ ス分野のWG が発足。活動を後押しす るため、Po C 用キットを3カ月無償で貸 し出すレンタル制度も始めた。 「新しいビジネスの芽がでてくる実 感がある」(諸井氏)と手応えは十分だ。 2019 年、ZETAの飛躍が期待される。 LPWA 通信規格「ZETA」 2018 年 6月にわずか 4 社で設立準備 会を立ち上げた ZETAアライアンス。そ こから半年余りで会員企業・団体は 40 に増えた(2019 年 2月時点)。理事を務 めるテクサーの朱強氏は「 2019 年の目 標は 100 社。関西と九州支部も立ち上 げて活動を全国に広げる」と話す。 続々と仲間を呼び込む魅力は何か。 同氏は「他の LPWAにないZETAの優 位性とビジネスの可能性」を挙げる。 安価+電池駆動の中継機が活躍! 短期・低コストに大規模通信網 ZETA は、超狭帯域(UNB)による多 チャンネル通信を行うLPWA規格だ(表1 )。最大の特徴はマルチホップ通信 が可能なこと。基地局(A P)の約 10 分 の1と安価で、かつ電池駆動の中継器 (Mote)を用いてメッシュネットワークを 作り、広範なエリアをカバーできる。 基地局の設置にはその都度、電源工 事等が必要になるため、障害物が多い 市街地や屋内・地下に電波を届かせよ うとすると、一般的な L P WA 規格では どうしてもネットワーク構築に時間とコ ストがかかる。対して、Z E TAなら中継 器を置いていくだけで通信エリアが作 れる。冗長経路の確保も容易だ。 さらに、デバイス/ユーザー管理や データ可視化等の機能を備えた ZETA S e r ve rも用意されている。アイティアク セスが 提供するクラウドサービスを利 用するほか、ユーザーがソフトを購入し て自ら運用することも可能だ。 つまり、短期間かつ低コストに信頼性 の高い I oT 無線ネットワークが構築で きるのだ。凸版印刷の諸井眞太郎氏は 「ネットワーク構築のコストで、ZETA は 圧倒的に優位」と話す。 この強みを活かして中国では、同国 3 大キャリアの基地局インフラを管理す る中国鉄塔(China Tower)が上海市全 域をカバーするZ E TA 通信網を構築し て同市内の通信インフラ遠隔監視に用 いているほか、スマートシティ向けアプ リケーションの展開も進めている。 “携帯圏外”での IoT を後押し アシックスがスポーツ振興に活用 マルチホップ通信の利点は、山間部 などの光/携帯電話網の圏外や、電波 の届きにくい屋内へ I oT を展開したい ケースでも存分に発揮される。電源の 確保が困難な場所でも、中継器を使っ て容易に無線通信網を“延伸”できるか らだ。いくつか事例を紹介しよう。 宮崎県ではQTnetが主導して山奥 でのチョウザメ養殖の遠隔監視に用い られている。中国地方でも、レモン農家 が山間部にある果樹園の遠隔監視に ZETA アライアンス マルチホップができる“革新的 LPWA” ZETAで IoTビジネスを掘り起こす ! IoT 向け無線通信の主役として注目が集まるLPWA(Low Power Wide Area)。その 1つである「ZETA(ゼタ)」を巡る動 きが熱を帯びてきた。マルチホップ通信が可能という他の LPWA 規格にない特性を活かして、次々とユースケースを開拓。 普及推進を目的に設立された ZETAアライアンスには、 IoTビジネスを手がける企業が続々と集まっている。 場 所:株式会社テクサー(東京都港区芝 2-5-19 ITO ビル 5 階) 受講料:8640 円(一般)/4320 円(ZETA Alliance 会員) 定 員:10 名(先着順) ハンズオンセミナーのご案内 スタートアップ! ZETA92JP 評価キット ハンズオンセミナー ZETA92JP テストモジュールの活用<入門編> 20194 19 日(金)10:0013:00 ワイヤレスジャパン 2019/ ワイヤレス IoT EXPO 2019 のご案内 ZETA アライアンスが出展します! 2019 5 2931日(金)東京ビッグサイト 西 3,4 ホール & 会議棟 お問い合わせ先 ZETA アライアンス E-mail:[email protected] URL:https://zeta-alliance.org/ 【ZETA Alliance 理事】(左から)QTnet 執行役員 サービス開発部長の松崎真典氏、アイティアク セス 取締役の澤村宗仁氏、テクサー 代表取締役の朱強氏、凸版印刷 エレクトロニクス事業本部 事業戦略本部 第二企画部 マーケティングチーム 課長の諸井眞太郎氏、マクセル エナジー事業本 部 新事業推進本部企画部 担当部長の宮本真氏 図表1 ZETAの特長 マルチホップ メッシュネットワーク インターネット ZETA Server オンプレミス またはクラウド AP (基地局) Mote (中継器) センサー 920MHz 帯を使用 UNB(Ultra Narrow Band):帯域幅2kHz 中継器(Mote)を用いた 4 ホップまでのメッシュ・アクセス ローパワー双方向通信 中継器は電池駆動が可能 クラウドプラットフォーム(ZETA Server)も提供 図表 2 アシックス、凸版印刷、テクサーによる共同実験 六甲山天覧台 天望山 坊主山 市街地 2km AP Mote Mote 六甲ケーブル下駅 実験 コース Mote Mote 中継器を載せた クルマを配置 山岳部 PR この内容は「通信」の力でビジネスを進化させるための情報サイト「business network.jp」でもご覧いただけます。 https://businessnetwork.jp/ Web Review

Upload: others

Post on 01-Aug-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: マルチホップができる“革新的LPWA” ZETAでIoTビ …...ZETAでIoTビジネスを掘り起こす! IoT向け無線通信の主役として注目が集まるLPWA(Low

46 テレコミュニケーション_March 2019 47テレコミュニケーション_March 2019

ZETAを採用。アイティアクセスの澤村宗仁氏は、「いずれも少子高齢化で現場の監視が困難だったケース。既存の通信技術ではコストが高くてネットワークが作れなかったが、ZETAでそれを助けることができた」と話す。 凸版印刷では医療施設において、人感センサーを用いてトイレでの転倒や利用状況等を可視化する見守りサービスの実証実験を行った。屋内施設でもZETAの実効性が確認できた。 アシックスが行った実証実験も面白い。スポーツシーンでのLPWA活用を推進する同社は、山間部で行われるトレイルランニングにおけるランナーの安全管理などに役立てようとしている。ランナーの体調不良や遭難事故等への迅速な対応を行うため、ランナーにセンサーを身につけてもらい、位置情報やコンディションを遠隔からモニタリングするというものだ。 こうした競技が行われるコースは大部分が携帯電話の圏外であり、LTEをベースとするLPWA規格(LTE-M、NB-IoT)も使えない。そこで、中継器が使えるZETAに注目した。 神戸の六甲山で行った実証実験では、クルマ2台に電池駆動のZETA中継器を取り付け、コースの近くに配備

(図表2)。ランナーの状況をモニタリングすることに成功した。加えて、移動中継器を現地に配備するだけで迅速に通信網を構築し、終わればすぐに撤収できるという短期開催イベントに適した

運用が可能なことも証明できた。 アシックスでは、こうしたイベントだけに留まらず、幅広いシーンでの活用も検討しているようだ。ZETAアライアンス理事でIoT事業・サービス開発を担当するQTnetの松崎真典氏によれば、「一般の人がハイキング等を楽しんだり、観光する際にも位置情報を活用した様 な々アプリケーションが展開できる」可能性があるという。

いよいよ登場する日本製デバイス中国・東南アジアへの展開も ZETAアライアンスは、こうしたユースケース開拓をさらに加速させるための様 な々取り組みを行っている。 目玉の1つが、日本製デバイスの拡充だ。4月から凸版印刷がZETA通信モジュールの量産を始める。海外製の従来製品に比べて42%も小型化されており、国内メーカーとも、凸版印刷製モ

ジュールを使ったZETA対応センサー等の開発を進める計画だ。ZETAアライアンスに参加するマクセルの電池技術をはじめ、日本の技術を駆使したデバイスが続 と々登場するはずだ。 こうした日本製のZETAデバイスには、「中国のユーザーも期待している」と朱氏は話す。現在、中国ではインフラ監視などにZETAを用いようとする複数のプロジェクトが進行中で、「数百万から数千万台のセンサーを用いる計画もある」という。また、マクセルの宮本真氏は、「日本と同じ920MHz帯を使っている東南アジアにも日本の技術と製品を持っていける」とも話す。こうした海外展開が成功すればデバイス価格の低廉化も進み、「日本でもさらに展開しやすくなる」と同氏は展望する。 このほか、会員のビジネスマッチングやユースケース開拓の促進に向けて、ワーキンググループ(WG)活動も盛り上がっている。すでに交通・社会インフラ分野、スマートビルディング、環境ビジネス分野のWGが発足。活動を後押しするため、PoC用キットを3カ月無償で貸し出すレンタル制度も始めた。 「新しいビジネスの芽がでてくる実感がある」(諸井氏)と手応えは十分だ。2019年、ZETAの飛躍が期待される。

LPWA通信規格「ZETA」

 2018年6月にわずか4 社で設立準備会を立ち上げたZETAアライアンス。そこから半年余りで会員企業・団体は40に増えた(2019年2月時点)。理事を務めるテクサーの朱強氏は「2019年の目標は100 社。関西と九州支部も立ち上げて活動を全国に広げる」と話す。 続 と々仲間を呼び込む魅力は何か。同氏は「他のLPWAにないZETAの優位性とビジネスの可能性」を挙げる。

安価+電池駆動の中継機が活躍!短期・低コストに大規模通信網 ZETAは、超狭帯域(UNB)による多チャンネル通信を行うLPWA規格だ(図表1)。最大の特徴はマルチホップ通信が可能なこと。基地局(AP)の約10 分の1と安価で、かつ電池駆動の中継器

(Mote)を用いてメッシュネットワークを作り、広範なエリアをカバーできる。 基地局の設置にはその都度、電源工事等が必要になるため、障害物が多い市街地や屋内・地下に電波を届かせよ

うとすると、一般的なLPWA規格ではどうしてもネットワーク構築に時間とコストがかかる。対して、ZETAなら中継器を置いていくだけで通信エリアが作れる。冗長経路の確保も容易だ。 さらに、デバイス/ユーザー管理やデータ可視化等の機能を備えたZETA Serverも用意されている。アイティアクセスが提供するクラウドサービスを利用するほか、ユーザーがソフトを購入して自ら運用することも可能だ。 つまり、短期間かつ低コストに信頼性の高いIoT無線ネットワークが構築で

きるのだ。凸版印刷の諸井眞太郎氏は「ネットワーク構築のコストで、ZETAは圧倒的に優位」と話す。 この強みを活かして中国では、同国3大キャリアの基地局インフラを管理する中国鉄塔(China Tower)が上海市全域をカバーするZETA通信網を構築して同市内の通信インフラ遠隔監視に用いているほか、スマートシティ向けアプリケーションの展開も進めている。

“携帯圏外”でのIoTを後押しアシックスがスポーツ振興に活用 マルチホップ通信の利点は、山間部などの光/携帯電話網の圏外や、電波の届きにくい屋内へIoTを展開したいケースでも存分に発揮される。電源の確保が困難な場所でも、中継器を使って容易に無線通信網を“延伸”できるからだ。いくつか事例を紹介しよう。 宮崎県ではQTnetが主導して山奥でのチョウザメ養殖の遠隔監視に用いられている。中国地方でも、レモン農家が山間部にある果樹園の遠隔監視に

ZETAアライアンス

マルチホップができる“革新的LPWA”ZETAでIoTビジネスを掘り起こす!IoT向け無線通信の主役として注目が集まるLPWA(Low Power Wide Area)。その1つである「ZETA(ゼタ)」を巡る動きが熱を帯びてきた。マルチホップ通信が可能という他のLPWA規格にない特性を活かして、次 と々ユースケースを開拓。普及推進を目的に設立されたZETAアライアンスには、IoTビジネスを手がける企業が続 と々集まっている。

●場 所:株式会社テクサー(東京都港区芝 2-5-19 ITOビル5階)●受講料:8640円(一般)/4320円(ZETA Alliance会員)●定 員:10名(先着順)

ハンズオンセミナーのご案内スタートアップ!ZETA92JP 評価キット ハンズオンセミナーZETA92JPテストモジュールの活用<入門編>2019年4月19日(金)10:00~13:00

ワイヤレスジャパン 2019/ワイヤレスIoT EXPO 2019のご案内

ZETAアライアンスが出展します!2019年5月29~31日(金)東京ビッグサイト 西3,4ホール&会議棟 お問い合わせ先

ZETAアライアンスE-mail:[email protected]:https://zeta-alliance.org/

【ZETA Alliance 理事】(左から)QTnet 執行役員 サービス開発部長の松崎真典氏、アイティアクセス 取締役の澤村宗仁氏、テクサー 代表取締役の朱強氏、凸版印刷 エレクトロニクス事業本部 事業戦略本部 第二企画部 マーケティングチーム 課長の諸井眞太郎氏、マクセル エナジー事業本部 新事業推進本部企画部 担当部長の宮本真氏

図表1 ZETAの特長

マルチホップメッシュネットワーク

インターネット

ZETAServer

オンプレミスまたはクラウド

AP(基地局)

Mote(中継器)

センサー

● 920MHz 帯を使用 ● UNB(Ultra Narrow Band):帯域幅 2kHz● 中継器(Mote)を用いた4ホップまでのメッシュ・アクセス● ローパワー双方向通信 ● 中継器は電池駆動が可能● クラウドプラットフォーム(ZETA Server)も提供

図表2 アシックス、凸版印刷、テクサーによる共同実験

六甲山天覧台

天望山

坊主山

市街地

2km

AP

Mote

Mote

六甲ケーブル下駅

実験コース

Mote

Mote

中継器を載せたクルマを配置

山岳部

PR

この内容は「通信」の力でビジネスを進化させるための情報サイト「business network.jp」でもご覧いただけます。https://businessnetwork.jp/Web Review