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183 シューマンの「子供の情景」作品15に関する演奏解釈(2) 新山真弓* (平成7年9月20日受理) はじめに 今回の「子供の情景」の分析は,前号の4曲に引き続 き,保科理論(注)に基き,第5曲から第9曲までにつ いて試みるものである。 前回の研究において,この理論に基いた分析・解釈を 行った結果,以下のようなことが明らかになってきた。 (1)音符本来の持つエネルギー量の理解が可能となっ た。 (2)そのエネルギーの影響範囲が判明した。 (3)それに基いての抑揚が明確となった。 このような研究を行うことにより,演奏家は,作曲者 がその曲に託した思いを正しく理解し,さらに,演奏家 の主張を加味し訴えていくことのできる演奏の大きな バックボーンとなることは間違いない,と確信するとこ ろである。 1.分析方法 音符のエネルギーのゆらぎ(緊張-弛媛)一昔のグルー プ化-フレーズ形成を考えていくうえにおいて,まずは, 重点(音の長短・高低・重なり)を見つける。 I それを基に,重点を含む最小単位のグループを見つけ る(グルーピング)0 i グループの関連性を見つけ,どこまでがひとまとま りかということからフレーズを考える(フレージング)。 以上に基いて,最終的にデイナミ-ク,アゴーギグ etc.を決定する。 凡例 (1)重点の三要素 音の長短-△,音の高低-×,音の重なり一〇 (2)グルーピング--,フレージング・-I (3)非和声音 倍音-・ (怜),経過音-・ (経),刺しゅう音- (刺), 先取音- (先),掛留・- (掛) (4)持続音- (持) (5)奏法・- (※) (6)右手- (R.H.),左手・- (L.H.) 前号と同様に, 「作者の意図は大部分が音符のみでも 表現できる」ということを証明するため,アーティキュ レーションスラー以外のすべての指示記号を楽譜から取 り去った状態で,分析を進めていくこととする。 (以下,楽譜を参照のこと) wmsi m 第5曲:みたされた幸福 (グルーピング) a) 1-10小節2拍表) (R.H.) 1-2小節2拍表・ 5小節2拍裏 節1拍表・ 7小節1拍真一8小節2拍裏までの3 グループは,倍音を中心として成り立っている。 このグループの1拍日は,跳躍するための内的な ウエイト×がかかると考えられるが,重点はあく まで倍音である。 (L.H.) 2. 5小節のグループは, (R.H.) 倍音を中心としたグループである。 その他のグループは,重点が最高音か,または 跳躍するためにウエイトがかかるかで判断でき る。 (b) (10小節2拍真一18小節) (a)と同様に考えられる。 (フレージング) a) (R.H.) 1小節の倍音fis音をクライマックスと るグループで, 1フレーズを成していると考えら れる。典型的なつりがね型の抑揚を表している。 ※ 1小節2拍目のfis音は倍音であり,最高音で あるが,そこへ向かってcresc.するには, 1拍 目のa音もあまり弱くしない方が良い。 また,その後のdim.は,跳躍の上行形のエネ ルギーが大きいため,なかなか治まらず,順次下 行形の稜, 4度下行している。したがって, d音 -a音でdim.すると良い。 2フレーズ目は, 1フレーズ目と音型が異なっ ていることに着目できる。 1フレーズ目のエネル 事兵庫教育大学(実技教育研究指導センター)

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183

シューマンの「子供の情景」作品15に関する演奏解釈(2)

新山真弓*(平成7年9月20日受理)

はじめに

今回の「子供の情景」の分析は,前号の4曲に引き続

き,保科理論(注)に基き,第5曲から第9曲までにつ

いて試みるものである。

前回の研究において,この理論に基いた分析・解釈を

行った結果,以下のようなことが明らかになってきた。

(1)音符本来の持つエネルギー量の理解が可能となっ

た。

(2)そのエネルギーの影響範囲が判明した。

(3)それに基いての抑揚が明確となった。

このような研究を行うことにより,演奏家は,作曲者

がその曲に託した思いを正しく理解し,さらに,演奏家

の主張を加味し訴えていくことのできる演奏の大きな

バックボーンとなることは間違いない,と確信するとこ

ろである。

1.分析方法

音符のエネルギーのゆらぎ(緊張-弛媛)一昔のグルー

プ化-フレーズ形成を考えていくうえにおいて,まずは,

重点(音の長短・高低・重なり)を見つける。

I

それを基に,重点を含む最小単位のグループを見つけ

る(グルーピング)0

i

グループの関連性を見つけ,どこまでがひとまとま

りかということからフレーズを考える(フレージング)。

以上に基いて,最終的にデイナミ-ク,アゴーギグ

etc.を決定する。

凡例

(1)重点の三要素

音の長短-△,音の高低-×,音の重なり一〇

(2)グルーピング--,フレージング・-I

(3)非和声音

倍音-・ (怜),経過音-・ (経),刺しゅう音- (刺),

先取音- (先),掛留・- (掛)

(4)持続音- (持)

(5)奏法・- (※)

(6)右手- (R.H.),左手・- (L.H.)

前号と同様に, 「作者の意図は大部分が音符のみでも

表現できる」ということを証明するため,アーティキュ

レーションスラー以外のすべての指示記号を楽譜から取

り去った状態で,分析を進めていくこととする。

(以下,楽譜を参照のこと)

wmsi m

第5曲:みたされた幸福

(グルーピング)

a) 1-10小節2拍表)

(R.H.) 1-2小節2拍表・ 5小節2拍裏-7小

節1拍表・ 7小節1拍真一8小節2拍裏までの3

グループは,倍音を中心として成り立っている。

このグループの1拍日は,跳躍するための内的な

ウエイト×がかかると考えられるが,重点はあく

まで倍音である。

(L.H.) 2. 5小節のグループは, (R.H.)と同様,

倍音を中心としたグループである。

その他のグループは,重点が最高音か,または

跳躍するためにウエイトがかかるかで判断でき

る。

(b) (10小節2拍真一18小節)

(a)と同様に考えられる。

(フレージング)

a) (R.H.) 1小節の倍音fis音をクライマックスとす

るグループで, 1フレーズを成していると考えら

れる。典型的なつりがね型の抑揚を表している。

※ 1小節2拍目のfis音は倍音であり,最高音で

あるが,そこへ向かってcresc.するには, 1拍

目のa音もあまり弱くしない方が良い。

また,その後のdim.は,跳躍の上行形のエネ

ルギーが大きいため,なかなか治まらず,順次下

行形の稜, 4度下行している。したがって, d音

-a音でdim.すると良い。

2フレーズ目は, 1フレーズ目と音型が異なっ

ていることに着目できる。 1フレーズ目のエネル

事兵庫教育大学(実技教育研究指導センター)

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ギ-が大きいため, 2フレーズ目はその残力で成

り立ち,あまり抑揚もない。

したがって,大げさにデイナミ-クをつけない

方が, 3フレーズ目が生きてくる。

3フレーズ目は, 1フレーズの発展形で低音か

ら出発し, 1小節目の音型を6. 7小節と上行し

ながら繰り返した後,順次下行し治まっている。

したがって, 6小節の倍音h昔の後は抜けない

ように気をつけ,さらに, 7小節の倍音で最高音

のe音に向けてcresc.し,その後の順次下行形

に従ってdim.して清めると良い。

(L.H.) (R.H.)のメロディーと照らし合わせて

みると, (R.H.)が下行してきた時, (L.H.)が

同型で上行をはじめている。これは(R.H.)の

メロディーが切れ切れにならないように,くきり

のようになっている。

したがって, (R.H.)のフレーズを(L.H.)

のフレーズでつないでいると考えられる。

(R.H.)の1小節目のメロディーを(L.H.)

の2小節で受け, 3小節目で合流している。

(L.H.) 2小節目の上行形のエネルギーが大

きいので, 3小節1拍目は1オクターブ下に下行

しているが,そこ-ウエイトがかかる。その反動

で,再び7度上に跳躍し,順次下行の後もなかな

か治まらず, 1オクターブ下行している。それで

もすぐには消滅できず,その余力で上行し,やっ

と治まっている。

5小節からのフレーズは, 1フレーズ目とは逆

に(L.H.)から先にメロディーが動き出している。

後は, (R.H.)のcresc.を(L.H.)の重模の

音階下行進行でしっかり支える。

(b)

したがって,このオクターブの下行形は,抜け

ぬようにcresc.を助けていかねばならない。 8

小節目の順次進行形で治める。

(a)のフレーズでは, (R.H.)と(L.H.)の抑

揚が全く逆の形で,それがうなりとなっている。

リピートする場合は,単調にならないように全

体的に音量を落とし,デイナミ-クもひかえると

(b)が生きてくる。

考え方は(a)と全く同様である(a)はDdur, (b)

はFdurで,音型がそのまま上行している灘に

なっている。そのため,さらに盛り上がりを感じ

させる。

したがって, 2フレーズ目もあまり治まったフ

レーズには成りきれないので,それに伴い,音量

も弱すぎず, 3フレーズ目につなぐと良い。

1. 2フレーズのエネルギーが大きいので,そ

れを治めるには(a)の時よりも時間を要する。ゆえ

に,15小節の1小節だけ上行した後, 3小節かかっ

て倍音を伴いながら下行して治まってゆく。

16. 17小節の倍音は,前拍の4度下行がすぐ治

まることができず発生しているのである。

15小節の倍音a音がこのフレーズの最高音であ

るが,その勢いで, 16小節はそのままの音量で奏

すると良い。その後, dim.していき消滅させる。

16分音符が最後まで続くので,全体的に軽快さ

が出ている。そのため,最後もあまりrit.しす

ぎない方が曲のイメージをそこねない。

あっさり終わると良い。

5.みたされた幸福Ao

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シューマンの「子供の情景」作品15に関する演奏解釈(2)

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第6曲:大変なこと

a)-(bト(a)の3部形式

この曲は,全般にわたって,和音を使ったどっしりし

た感じの曲想である。

(グルーピング)

a) 1-.小節・2拍)

(R.H.)リズムに注目すると,次の2種類のグルー

プで成立していることがわかる。

」 1月J-重点は,スキップのリズムの強拍で△

J IJ」-重点は,和音より判断でき,真ん中の

4分音符で○

(L.H.)のグループ分けも, (R.H.)と同様に考え

られる。

JiI月J,-・重点も同じであるが,最高音でもあ

;るので△×

J i J J-重点も同じであるが,最高音でもある

ので×○

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ここで, (R.H.).」月」・と, (L.H.) 0円」

のリズムの違いを検討してみる。

(R.H.)の4分音符の箇所が, (L.H.では

8分音符になっているのは, 4分音符を分割した

形であると考えられる。これは,最高音のスキッ

プのリズムの強拍に向かうためのアフタクト感を

強調するための分割である。

(b) (8小節3拍~16小節)

(R.H.) 12小節まで見てみると,ほぼ」日で1

グループを形成している。 10小節3拍-11小節2

拍のグループは, 2分音符が4分音符に分割され

た形である。これは, 」 」.:というリズムのグルー

プが,この4小節において,分かれすぎないよう

に, 3回目にあたるこの箇所を4分音符に分割し

ている。このことによって,エネルギーが抜けて

いかないように,流れをつなげていることがわか

る。 13小節-14小節2柏のグループは,今までの

3拍単位と異なり, 5柏である。これは, 13小節

の和音内のC音が倍音であることから, 14小節1

拍目のh音に解決しているので判断できる。

(l.h.) ;Jけ山のリズムでグループを形成して

いる。 8小節3柏の弱起の8分音符は(a)の始ま

りの8分音符と考え方は同様。 13小節~14小節2

柏のグループは,同和音内であることから推察で

きる。

(フレージング)

Q

リズム型から判断すると, 」月」と」日の2

グループで1フレーズと考えられるOしたがって,

(a)は,同型の4フレーズで成り立っている。また,

③・④フレーズは, ①・②フレーズがちょうど1

オクターブ下で,同型同旋律となっている。

1フレーズ内のクライマックスは, 1小節1柏

である。なぜなら,スキップのリズムと強柏とい

うメトリックアクセントが一緒になることで,こ

の柏は強調されることになるからである。した

がって, R.H.のその前の4分音符のエネルギー

が抜けないように, L.H.)の8分音符でしっか

り奏す。当然のことながら,その後の16分音符と

4分音符は,残力で奏することになるので,後半

グループの3つの4分音符で,どっしりと治める

と良い。

(a)内の音量は,次のように考えられる。

①>② ・ ③>④, (1)>(2)

(b)

o

8小節の解決は(b)に進むことにより, rit.は

不要である。

リズム型とカデンツァの完結より推察してみる

と, 12小節までを境に, 2フレーズで形成されて

いる。前フレーズは, (R.H.)の2分音符のエネ

ルギーが抜けていかないように, (L.H.の8分

音符で補っている。また, (a)の(R.H.)の和音

の重なり3音が, (b)では4音に増している(b)の

最初の8小節3柏は, (a)の最後から1オクターブ

上行跳躍したところの同和音ではじまっているこ

とがわかる(AdurIの和音-DdurのⅤに変

秩)

Lがたって, (b)のはじまりは,調性の変化を明

碑にするために,気分も新たにしっかりと入ると

良い(L.H.)の下行形8分音符も抜けないよう

に, 1昔1音しっかりと奏す。 10小節3拍-12小

節の部分は,グループ分けの時に述べた理由によ

り,それ以前までのエネルギーが抜けていなかな

いように, 4分音符の分割で12小節1拍に向かっ

て, 1音ずつcresc.させる。そして,一旦(L.H.)

の下行形で治める。しかし,和音に注目すると,

Iに解決しないで,借用和音になっていることに

より,dim.しすぎず,次フレーズ-つなぐと良い。

13小節からのフレーズは,清まりかけた前フ

レーズを再び復活させるように, (L.H.)の上行

形でしっかりとcresc.する。和声進行は, 14小

節.2拍までで解決はしているが,あまり抜かない

ように15-16小節につなぎ,抑揚も細かく考えず,

最後のⅤ-Iの解決までは,しっかりと奏すると

良い。そして,この解決もdim.しすぎず,どっ

しりと終わると良い。繰り返す場合は, 1回目の

終了はnt.せず(ら)の最初にもどり,全体的に音

量をひかえて奏し,終了時には, nt.を少しかけ

ると良い(a)にもどる前の4分休符は(b)のエネ

pギ-を一度治めるためということと, 14度の跳

躍を考慮すると,少し時間を要する。

休符を十分にとった後は,最初に(a)を奏した時

とは違って,あまり前に進ませる抑揚ではなく,

全体的に音量を少しひかえめにする。そして最後

は,この曲全体の終了感を出すために,しっかり

rit.すると良い。

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シューマンの「子供の情景」作品15に関する演奏解釈(2)

6.大変なこと

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第7曲:夢(トロイメライ)

(aト(bト(a)′の3部形式

(グルーピング)

a) l-小節)

(R.H.)どのグループも,弱起音から成り立って

いる。詳しく見てみると,次のようなリズムで作

られている。

①JIJ♪②mlnJ③Jm

②′ m IJ-]」.

③′m¥n

④rmJ

ゥJJJ.

PIJ.JJ

①の重点を考えてみると, 4度上の2分音符へ跳躍する

ための内的ウエイトは,前4分音符-かかるが,重点

としては,強柏で2分音符のf昔である。

②考え方は, ①と同様。

③・③'・④の重点は,最高音に跳躍するために,直前

の音符に×のウエイトがかかる。l山

はU

⑦⑧⑨⑲⑪⑲

中日即e.」<別

: (r.h.)の重点と考え方は同様である。

J

⑧′月日」.

♪iiiiiEI

・13 ♪nij

(b) (9-16小節)

(a)と同様に見てみると, 12-13小節にかけて(R.H.)

の①のリズムの4分音符が8分音符になっているが,グ

ループとしてのエネルギーは, (彰と同様である。

(ち)において注目すべきグループは,内声である。

Sop.とBassに付随しているものと,その中を縫うよう

に動いている③のJmのリズムが,連続しているこ

とがわかる。

(a)'(17-24小節)

(a)と同様に考えられる。

(フレージング)

(a)カデンツァの完結,及び同リズム型の繰り返し

により判断すると,2つのフレーズと見てとれる。

まず, 1フレーズ目の1-4小節目のクライマッ

クスは, 2小節2拍目のf音である。なぜなら,

最高音であり,かつ2分音符になっているからで

ある。このf音に上行するためには, 1小節目の

(b)

e音に内的ウエイトがかかり,この5つの8分音

符でcresc.する。その上行したエネルギーが大'

きいため, 8分音符4つからなるグループで,だ

んだんと下行していかなければ治まれない。

したがって,奏する時には, 1小節1拍目の

Bassのf音で,上行する(R.H.)のメロディー

をしっかりと支えるためにテヌートをかけ,

(R.H.の8分音符でしっかりcresc.する。さ

らに, (L.H.)の装飾音符を使って, (R.H.)の

オクターブと加えてアルペジオ風に弾くと, f音

へもっていき易い。そして,そのエネルギーは,

すぐには治まらないので,すぐ後のe-d-e-

fの8分音符は,あまり音量を落とさず, C-f

にかけてフッと抜き,後の2グループの4つの8

分音符で, 1グループずつdim.しながら4小節

目で治めると良い。

5小節目からの2フレーズ目も同様に考えるこ

とができる。

ここで重要なことは, 1フレーズ目の始めの上

行形ば, f音が最高音であるが, 2フレーズ目で

はa音で,しかも借用和音が使われており, (ま

たは, dmollに転調と考えても良い)和声の変化

のインパクトも大きい。その後の下行形において

ち,転調が見られる。

したがって, 2フレーズ目を奏する時は,全体

的に1フレーズ目より音量を増すと良い。また,

7小節目の内声は, Sop.のメロディーが切れ切

れにならないようにつないでいるので,音量も大

きすぎず,かつ,丁寧にdim.を助けていかなけ

ればならない。その後のdim.は(L.H.)の8

分音符でさらにdim.していき,治めていく。

繰り返しをする場合は, 8小節最後の(L.H.)

のd-b一gで少しrit.し, 2フレーズ目のエ

ネルギーをしっかり清め,繰り返し後の(a)は,全

体的にあっさり奏すると良い。また,音量もひか

え目にすると, (b)が引き立ってくる。 (b)へ進む場

合は, rit.をかけず,あまりdim.もしすぎない

ように進むと,跳躍感を増すことができる。

(ち)のフレーズも(a)と同様に考えることができ,

2フレーズと見てとれる。抑揚に関しても同様で

ある。

(ち)において注目すべき点は,内声の8分音符の

グループが, Sop.とBassのメロディーを切れ切

れにならないようにつなげていることである。

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シューマンの「子供の情景」作品15に関する演奏解釈(2) 189

.まず, 9-12小節のフレーズを詳しく見てみる

と, 10小節1拍目の跳躍は(a)のそれとは違い, 4

度から3度に変わり,そのため,. Fdurから下属

調の平行調であるgmollに変化している。この

ことにより,内的なエネルギーが増していること

がわかる。

したがって,奏する時には9-10小節の

(R.H.)の上行形の8分音符でcresc.させ, es

音に到達したエネルギーを保たせるために, 10小

節2-3柏の(L.H.)の内声の上行形で補うと

良い。

ll-13小節にかけては, 8分音符のグループを

使いながら下行の一途をたどるが, 11小節2拍真

一3拍目は,和声もI64と解決しないで上行して

いる。これが11小節4拍裏-12小節1拍目にかけ

ては,全ての声部で下行し(刺しゅう昔),さらに,

12小節2拍真一3拍目は,アルト以外は動かず,

アルトは2皮下に解決している。これは,重さが

しだいに減少している表れで, dim.せざるを得

ないようになっている。

したがって,だんだんと音型に沿って,そのま

まdim.すれば良い。

2フレーズ目も,考え方は前フレ-ズと同様で

ある。

ここで注目すべき点は,バーモニ-が属調の平

行調dmollに変化していることである。内的エ

ネルギーは,さらに増大してくると見てとれる。

その理由として,前フレーズのはじまりである9

小節1拍目のf音は, 2オクターブの間隔である

*

が,13小節1拍目のb音は,3オクターブと広がっ

ている。また,そのすぐ後の(R.H.)の8分音

符の上行度も,減8度から9度に広がっている。

したがって,抑揚の考え方は前フレーズと同様

であるが,全体の音量をさらに増大させて,曲全

体のクライマックスを奏すると良い。

フレ-ズ後半のdim.は,前フレーズでは,吹

フレーズ-進むということもあって, dim.もあ

まりしすぎずrit.もしない方が良い。しかし,

(b)の末尾は再現部のFdurに戻るために,緩和す

る時間が必要なため,かなりのrit.を要する。

フレーズ,また抑揚についても(a)と同様に考

えられる。

(a)′は(b)のエネルギーが大きいため,その残り

の力で回想的に表現すると良い。したがって,全

体的に音量も抑揚もひかえて奏すると良い。とく

に, 20小節の弱起の最後のフレーズは(a)の2フ

レーズ目とは違って,最高音a音に上行する力も

弱々しいためrit.しながらやっと登っていく力

しかない。

23小節4拍目からの8分音符(R.H.のグルー

プは,前グループのメロディーを, (L.tL)を伴っ

て,和音も変化して繰り返している。これによっ

て,再び,少しだけエネルギーをとり戻し,小さ

な最後の盛り上がりを見せ, 24小節の2-4拍で

曲全体を治めている。

したがって,最後の2-4柏は,かなりのrit.

を要し, 2分音符の和音は,音が自然に消えてい

くまでフェルマータをかけると良い。

7.夢(トロイメライ)

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190

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第8曲:暖ろのそばで

a)-(b)-(a)'- coda

(グルーピング)

a) (1小節)

(R.H.)小節2拍表のグループは, 2小節1拍

目のd音を重点とする,典型的なつりがね型と見

てとれる。

1小節1拍目のf音の4分音符は,内的エネル

ギーの重さがかかる。

4小節2拍表までの2グループ目の重点は,秤

点4分音符であることから△。

(a)の後半の2グループは,前半の2グループと

ほぼ同様である。 5小節1拍目のC音-f音の跳

躍は,前グループでエネルギーが一旦治まったた

め,分割せざるを得なく発生したものである。

(l.h.;小節ずつのグループから成立しており,

重点はいずれも1拍目。5小節の分割に関しては,

(R.H.)と考え方は同様。 2・6小節のBassが

2分音符になっているが,これはグループの重心

に重さがかかり易くなっていることがわかる。

両手における内声のシンコペーションも,グ

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シューマンの「子供の情景」作品15に関する演奏解釈(2)

ループとして見てとると,いずれも1拍目の8分

休符にエネルギーを蓄えていると考えられる。

(b) (7小節2拍真一17小節1拍)

(R.H.) (a)のグループ分けと同様に見てみると,

リズム型より, 1グループ目は10小節2拍表まで

と考えられる。重点は最高音で最長音の10小節1

拍日のd音。 2グループ目,及び3グループ目は,

d-e-bの和音の解決から判断できるが,これ

は, Sop.とAltoがうまくからみ合いながら,く

さりのようになっている。

後半の3グループも,前半と同様に考えられる。

しかし,15小節2拍~17小節1拍目のグループは,

前半の3グループ目とは異なり,再現部のFdur

-戻る時間を要している。したがって,前半の3

グループ目のエネルギーよりも,緊張度は高い。

(L.H.) (a)と同様に考えられる。

(a)′ (17小節~2良小節2拍表)

(a)と同様に考えられる。

(coda) (25小節2拍真一33小節)

26・30小節のグル-プは,和声進行(D-T)

より判断できる。

(フレージング)

O

カデンツァの完結より, 4小節を1フレーズと

する,同型2フレーズと考えられる。 1フレーズ

目のクライマックスは, 2小節1拍目であると推

察できる。その理由として,グルーピングの時に

述べたとおり, (R.H.)は最高音に行くために重

心があり, (L.H.)は2分音符になっていること

から,ここに一番重みがかかる。

したがって, (R.H.)の1小節1拍目のf音も

丁寧に入り,下行形が抜けないようにcresc.を

かけ, 2小節1拍目のd音にもっていく。その時

の(L.H.)のd音は, 2小節目全体を支えてお

くためにテヌートをかえると良い。

3-4小節は, 2小節の(R.H.)が抜けてい

く上行形のエネルギーを今一度清め直すために,

3小節1拍目の(R.H.)は符点4分音符に,

(L.H.)のBassは7皮下に下行している。

奏する時には, 3小節1拍目で少しだけテヌー

トをかけ,順次進行にしたがってdim.すると良

い。 (2フレーズ日も同様に考えられる。)

2フレーズ日の入り方は, 1フレーズ目と異な

り分割されているが,これは,グルーピングで示

0

(a)′

191

したとおり3-4小節で減少したエネルギーを再

び立て直すために発生している。しかし,この変

化が単調な繰り返しを防いでいる。

同型2フレーズと考えられる。

全体的な音高を(a)と比較してみると, b)の方が

低いことがわかる。また,フレーズのはじまりも

(a)では4度上の跳躍に対し, (b)では4度下行して

いる。そして,下行しては上行するという,うね

りを繰り返していることより,内的緊張感はどん

どん増し,エネルギーを蓄積している。

9-12小節1柏のフレーズを見てみると, 9小

節の上行形のエネルギーが大きいため, 10小節1

拍目のd音は,符点4分音符となっている。その

エネルギーの減少を防ぐために, 1オクターブ下

からの上行形が現れている。

したがって, 10小節1拍目をクライマックスと

して,フレーズの終わりで治め,解決させれば良

い。

27レ-ズ目も抑揚の考え方は同様であるが, 1

フレーズ目の内的エネルギーが増加しているた

め,2フレーズ目の音高はさらに高くなっている。

したがって, 1フレーズ目より全体的に音量を

増すと良い。

ここで, 16′ト節を考察してみると, 15′ト節の2

拍目裏は,次の1拍目とタイになっている。これ

は, (b)に入ってからの7小節間,蓄積されたエネ

ルギーが大きいため発生したことである。さらに,

そのエネルギーは, 16小節のシンコペーションを

引き嘩こすほど大きいことがわかる。 (この曲で,

シンコペーションのリズムは一貫して内声に現れ

この曲を支配しているが,ここではじめてSop.

に現れている。)

したがって, 15小節2拍日の1オクターブ下行

形も力が抜けないようにしっかり奏し,その後の

シンコペーションも,そのままの音量で(a)′に入

ると良い。

もう1つ注目すべき点は, Bassである。 8小

節間ずっとC昔で保たれている。この持続音(F

durの属音)が, (a)′-戻りたいという感じを一

層強めている。

(a)とほぼ同様に考えられ, 4小節ずつの2フ

レーズである。

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192

(a)'の1フレーズE]が(a)のそれと大きく異なっ

ていることは, 17小節目がオクターブ下である。

これは, (b)の流れから来たものであるが,すぐ前

のg昔からすぐには7度跳躍は不可能である。 17

小節のエネルギーは(b)の全てを受け最大となり,

その後の7度の跳躍を要してやっと弱まる。

18小節の(L.H.)は, (a)とは異なり4分音符

に分割されている。これは, (a)ではb音が中心に

なっていたので, 2分音符が必要であったが, (a)

′では,跳躍によってエネルギーが抜けていくの

で,長い音には成り得ない。したがって,次小節

へいくためには,エネルギーを新たに補充せざる

を得ない。

したがって, 17小節までfで奏して, 18小節に

入る時はフッと抜くようにsubitpにするとうま

く感じが出せる。そのためには,跳躍に時間を少

し要することになる。

2フレーズ目の22小節2拍裏の和音を見ると,

借用和音になっている。これは,内的エネルギー

のゆらぎと見てとれる。それが,アルペジオとなっ

て現れているOまた, 23小節は,もはや」・坪)刀

はなく月と変化している。 ・

したがって, 23小節1拍目の最高音a音にすぐ

入らず,アルペジオを使ってフッと力を抜くよう

に, Pにすると良い。そのことにより, rit.が引

き起こる。その後の2小節は,力を失っているの

で,テンポには戻すが残りの力で奏すると良い。

(coda)これは,曲全体の末尾であり,同型の2フレー

ズでそれまでの24小節全てを治めている。 2フ

レーズ目は,ほぼ同型で1オクターブ下で奏でら

れているが,これは, 1フレーズだけではとても

清まりきらないからである。 26小節のⅤ-Iの繰

り返しは,そのエネルギーのゆらぎが次小節の

Sop.にシンコペーションのリズムとなって現れ

てくる。

※したがって, 26小節はd音に軽くアクセントを

つけC音で抜き,その後の2小節間でdim.する。

2フレーズ目の最後の2ノト節のBassは,オク

ターブの下行形となっているが,これは,これま

でのエネルギーが完全に消滅しているのである。

以上のようなことから, (coda)の音量はPで

良いと思うが, 2フレーズ日はさらに小さくし,

最後の2小節でしっかりdim.とrit.すると良

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8.暖ろのそばでA J- メ

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シューマンの「子供の情景」作品15に関する演奏解釈(2)

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第9曲:竹馬

a)-b)-a′の3部形式

(グルーピング)

(R.H.) 7J♪」のリズムで,曲全体を統一して

いる。

1小節ずつで1グループを形成している。

重点は,シンコペーションの2拍目で△。

(L.H.) J」のリズムで,曲全体を統一している。

重点は, 2分音符。

(フレージング)

(a) -V-Iのカデンツアの完結により考察する

と, 4小節を1フレーズとする,同型2フレーズ

で形成されている。

曲全体を通して,持続昔が継続して使われてい

る。

(a)の1フレーズ目を見てみ.ると, (L.H.)の

Bass,持続音のg音が支配している。 g音は, C

durのIの和音の第5音にあたり, (ォ)全体を,何

か不安定で前-進みたい,という感じを増して

193

いる。

メロディーラインに注目してみると, 1フレー

ズ目はSop.で秦で, 2フレーズ目では,それを

(L.H.)の内声の3度下で受けていることがわ

かる。また, 2フレーズ目の(R.H.)の内声は,

1フレーズのメロディーを1オクターブ下で受け

ている。

また, 3小節目の(R.H.)の倍音, C昔に着

目してみると, h音に解決しないでd音になって

いる。これは,ここで解決してしまうとエネルギー

が抜けてしまうので,あえてこのように処理して

いることがわかる。

以上のようなことから抑揚を考えてみると, 2

小節ずつの上行形-下行形により, <>のうねり

のように奏するとうまくいく。 2フレーズ目は,

メロディーが内声に移ることを考えると, 1フ

レーズ目よりは,やや音量を落とすと良い。しか

し, g音の持続音が鳴り続けているため,あまり

意識しすぎず,また,シンコペーションのアタッ

クの強いリズムを強調するように,しっかりと軽

快に奏するべきであろう。

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194

繰り返しを行う場合は,全体的に音量を落とし

て奏すると単調にならない。

(b) (R.H.)のメロディーラインに着目してみると,上

行形の4小節と下行形の4小節の2フレーズと見 (a)'

てとれるc (b)のはじめは, Fdurともいえるが,

11小節ぐらいからdmollに転調している。持続

音もなくなっていることがわかる。つまり,持続

音という一体感を表現する「ワク」がなくなって,

何処-行くかわからない様な発展性を表現してい

るのである。

1フレーズ目では, (R.H.)は順次進行上行形

で, L.H.では順次進行下行形である。その間

に, Sop.とBassの巾も,はじめの7度から2オ

クターブ以上も開いている。このことより,この

4小節間でエネルギーがどんどん増していること

がわかる。

2フレーズ目では, (L.H.)も跳躍しながら下

行し,フレーズの終わりには, Sop.とBassの巾

も4オクターブを越えている。このことより,エ

ネルギーは最大となっていることがわかる。 ※

※したがって, 9小節はppではじめ,だんだん

cresc.していき, 13小節からさらにcresc.を増

していく。この時,両手とも下行形であるので,

抜けぬように1小節ずつしっかり音量を増してい

くとうまく奏することができる。とくに, 16小節

の(R.H.)には倍音が現れ, (L.H.はオクター

ブの跳躍になっているOこのため,エネルギーは

9.竹

最大となるのでnt.気味に1拍ずつしっかり奏

し, (*)′にはffで入るとCdurに戻った感じが出

る。

フレーズの考え方は, (a)と同様である。

持続音を比較してみると, (a)ではBassにg音

であったことに対して(a)′ではSop.とBassの

両方にC音が現れ,それが最後まで支配している。

g音はCdurのIの和音の第5昔であり, C音は

主音である。このことにより, (a)'では安定感を

出しいる。

また, Sop.とBassの巾も3オクターブと(a)よ

りも広がっている。これは, (a)(b)で増大してきた

エネルギーが(a)'で一挙に爆発したと同時に,やっ

と安定したのである。

メロディーラインは,内声で保たれている。 1

フレーズ目は, (R.H.)のメロディーを10度下で

(L.H.)が支え, 2フレーズ目は, 2オクター

ブの巾で同音で動く。そして, 24小節でとうとう

すべての音がC音に治まる。

以上のようなことから,抑揚を考察すると, 2

フレーズ目は, 1フレーズ目よりももっとどっし

り最後まで奏する。

繰り返しを行う場合は, (b)のcresc.の音量は

単調さを防ぐためにひかえた方が良いが, (a)′は

繰り返し前と同様にffで奏し, 24小節目は力を

抜かずrit.で終わると終了感が出る。

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シューマンの「子供の情景」作品15に関する演奏解釈(2)

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おわりに

今回の(2)は,紙面の都合により,第5曲~第9曲まで

についてのみ分析を試みたものである。次回は,第10曲

一終曲の分析を行い,全曲の完成を目指すこととする。

(注)

保科洋著「音楽における表現の基礎について」F教材の研究と指導』全日本学校音楽研究会

1988年9月

参考文献

1.保科洋・田畑八郎共著r和声応用の楽しみ』音楽之友社, 1985年3月

195

2.池内友次郎・長谷川良夫・石桁真礼生他共著r和声・理論と実習I』音楽之友社, 1964年4月

3.池内友次郎・長谷川良夫・石桁真礼生他共著F和声・理論と実習Ⅱ』音楽之友社, 1965年5月

4.池内友次郎・長谷川良夫・石桁真礼生他共著F和声・理論と実習Ⅲ』音楽之友社, 1966年7月

5.長谷川良夫著r対位法j音楽之友社, 1955年6月

参考楽譜

1.ウィーン原典版:音楽之友社2. A.コルト版:EditionsSalabert.

3. G.ヘンレ版4.全音楽譜出版社

On Interpreting "Kinderszenen" Op. 15 by Schumann

-GI凸ekes geny, Wichtige Begebenheit, Tr云umerei, Am Kamin, Ritter vom steckenpferd-

Mayumi Nnyama

In order to play a piace of music to perfection, we need to properly nuderstand the piece in advance within some good

framework.

There are, however, not vert many works on construting theories of music analysis.

This paper shwos how effectively one such theories works to understand Schumann'sりKinderszenen" Op. 15, em-

ploying a mathod designed by Hoshina (1988), and claims that correct analysis is the first step to any good performance.