マンション改修工事におけるvoc対策 建装工業株式 …...2012.08.02...
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2012.08.02
マンション改修工事におけるVOC対策 建装工業株式会社
VOC は揮発性有機化合物 (Volatile Organic Compounds)の略 塗料、接着剤、シンナーなどに含まれるトルエン、キシレン、酢酸エチルなどが代表的な物質で大気中の光化学反応により、光化学スモッグを引き起こす原因物質の 1 つとされています。
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首都圏マンションリニューアル事業部 業務企画室 舘 林 匠
VOC発生源別発生量
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VOC発生源としては塗装関連が圧倒的に多いことがわかります。 内訳としては規制対象工場を中心とした他産業での工場吹付塗装や新築・改修工事を含む構造物の屋外塗装からの発生となっており今後共継続した削減努力が重要になってきます。
発生源品目別VOC発生量
平成12年度に比較し45%削減されている
環境配慮型材料の開発、普及が大きな要因と考えられます。 3
建設業塗装概況
建築物のストックメンテナンス(維持保全)に対する需要が増加している昨今ですが、我が国の建築外装仕上げの施工面積は2億万㎡と言われており、 その70%(1億4千万㎡)を外装仕上塗材が占めております。 さらに改修向けの塗料は微弾性系フィラー(可とう形仕上塗材)を含め仕上塗材全生産量の60%にも達しているとみられます。
よって、VOC削減に及ぼす外装仕上げ塗材の影響は大きいと考えられます。
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計画修繕工事
VOC発生材料使用工種
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・防水工事
・シーリング工事
・外装工事(塗装等)
・鉄部塗装工事
・内装工事
防水工事
マンション改修における防水工事3大工法
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アスファルト防水 • 加熱溶融したアスファルトでアスファルト系ルーフィングを張り付ける
塩ビシート防水 •溶剤系接着剤で塩ビシートを張り付ける •シートのジョイントは溶剤溶着か熱風溶着
ウレタン塗膜防水 • 2液混合型のウレタン防水材を塗布し、硬化反応によって防水層を形成する。
• 通気緩衝シートを用いた複合仕様もある
防水工事におけるVOC低減
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• プライマー(溶剤系、水性エマルション) • アスファルト(加熱時の煙・臭気) • ルーフィング(アスファルト) • 仕上塗料(溶剤系、水性エマルション) • シーリング材(溶剤系)
アスファルト防水
プライマーを水性エマルションタイプを使用する
仕上塗料を水性エマルションタイプを使用する
シーリング類をホットメルト接着剤を使用する
アスファルトやルーフィングはもともとVOC発生が少ないが熱工法での施工では、微量の窒素や硫黄成分等による臭気が問題になるので、トーチ工法や冷工法により施工するケースが多くなっている
ゼロ溶剤型が可能
防水工事におけるVOC低減
アスファルト防水施工写真
冷工法による施工、VOC発生もなく、臭気も出ない為、居住しながら行う改修工事では居住者や近隣からの苦情も少ない工法である。
施工前
施工中 施工後
防水工事におけるVOC低減
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• 接着剤(溶剤系) • 塩ビシート(塩化ビニル) • 溶着剤(溶剤系) • シーリング材(溶剤系)
塩ビシート防水
接着剤を脱TX・弱溶剤型にする
溶着剤を溶剤型から熱風溶接機へ
溶接シールを溶剤型から溶接棒で溶融接着
塩ビシートはVOC発生は少ない、接着剤を使用しないオール機械固定工法の採択も考えられるが施工性の低下とコスト高が課題である
ゼロ溶剤型が可能
防水工事におけるVOC低減
塩ビシート防水施工写真 オール機械固定工法
機械固定の特徴として既存防水層を撤去せず被せて施工できるので、下地処理のコスト削減ができます。 VOC発生源は接着剤のみなので、オール機械固定工法の採用でゼロVOCも可能。 デメリットとしては歩行部分には不可、施工時の騒音・振動があります。
防水工事におけるVOC低減
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• プライマー(溶剤系、水性エマルション) • ウレタン防水材(溶剤系、水硬化型) • 通気緩衝シート(改質アスファルト系合成繊維マット等)
• 仕上塗料(溶剤系、水性エマルション)
ウレタン塗膜防水
プライマーをエマルション型、脱TX・弱溶剤型にする
トップコートを水性エマルション型にする
環境配慮型ウレタンの使用(水硬化型、脱TX型)
屋上防水の保証期間、一般的に10年(メンテ5年)を担保するため、トップコートはコストと耐久性により弱溶剤系が仕様になっている場合もある、最近では高反射塗料やフッ素によるトップコートも実施されている
脱TX・弱溶剤型、 ゼロ溶剤も可能
防水工事におけるVOC低減 ウレタン防水施工写真
水性プライマー、トップ、水硬化ウレタン使用現場
まだ、適用は少ないがすべて低VOC材料で施工した場合にメーカー資料によると 化学物質放散量測定(パッシブ法JIS A 1903)にて汎用2液型ウレタンと比較しトルエンで最大650倍、キシレンで200倍の放散量の違いがあるとのこと。
施工写真(シーリング)
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現在、シーリング材については,建築基準法の対象外建材ですので,日本シーリング材工業会による自主管理規定(平成18年4月1日施行)によりFマーク表示されている。
JIS A 1901にてシーリング材料の揮発性有機化合物(VOC),ホルムアルデヒド及び
他のカルボニル化合物放散量測定方法(小形チャンバー法)について規定している。
外壁目地
塗装工事
塗料の種類
フッ素 (期待耐用年数15~20年)
シリコン (期待耐用年数10~12年)
ウレタン (期待耐用年数7~10年)
アクリル (期待耐用年数5~7年)
耐 久 性
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現在、大規模修繕工事の主流塗材
超高層マンションを中心に需要がある
第一世代
第二世代
第三世代
第四世代
価
格
主要材料(首都圏マンションリニューアル事業部におけるメーカー別主要塗材)
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現在ほとんどが水性塗料(外壁塗装の約95%)、 鉄部は弱溶剤を使用している 一部仕様で外壁上塗に弱溶剤系を使用しているケースがあります。
S社 K社 K社 N社
外壁 微弾性フィラー 水性ソフトサーフSG アレスホルダーGⅡ ダイヤアクレスフィラー アンダーフィラー弾性エクセル(TVOC5~10% ) アレスホルダーZ(日塗工W3) アレス弾性ホルダー防水型
外壁 上塗材 水性セラミシリコン アレスアクアシリコンACⅢ ダイヤパーマルシリコン オーデフレッシュSi100Ⅱ(TVOC5~10% ) 水性セラタイトSi コスモシリコン(日塗工W3) セラシリコン
クリーンマイルドシリコン アレスアクアセラシリコン上げ裏・リシン面 ノキフレッシュ EPシーラー スーパームキロール 水性ケンエース(TVOC5~10% ) +(日塗工W3) アレスノキテンコート
上げ裏・ボード面 水性ミラクシーラエコ EPシーラー アルテックス#3000 水性ケンエース(TVOC1%未満) + +(日塗工W1) エコフレッシュ・水性エコファイン ビニデラックス300
一般 鉄部 クリーンマイルドウレタン セラMレタン ダイヤナチュラルウレタン ファインウレタンU100(TVOC40~50% )
錆止め SKマイルドボーセイ ザウルスExⅡ ダイヤヒスイエポサビ#100 ハイポン20デクロ(TVOC30~40% ) マイルドサビガード スーパーザウルス ダイヤヒスイエポサビ#200 ハイポンファインプライマーⅡ
エポサビマイルド
有機溶剤
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有機溶剤:約500種類 内人体に有害な物質54種類 ●第一種有機溶剤・・・・クロロホルム等 7種類 ●第二種有機溶剤・・・・トルエン、キシレン等 40種類 ●第三種有機溶剤・・・・ガソリン、ミネラルスピリット等 7種類
有機溶剤中毒予防規則(労働安全衛生法)
【強溶剤】トルエン、キシレンを含む(TX系) 【弱溶剤】溶剤を含む(ミネラルスピリット等)上記第一種、第二種有機溶剤を使用しない。
労働安全衛生法で名称等を表示すべき有害物とは5%を超えて含有する物質は成分を表示する(91種類) MSDS(Material Safety Data Sheet)製品安全データシート 1%以上含有する物質の情報を表示し、GHSラベル表記と共に作業者への製品取扱いに関する注意事項用途として利用されている。
塗料カタログの一例
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シックハウス問題より各省庁より基準が提示されておりメーカーも 基準値に対応していることを明示した形式が多い。 又、鉛の含有やVOCについても記載されている。
施工写真(外壁塗装下塗り)
TVOC5%~10%未満の水溶性 微弾性サーフェーサーでの施工が主流 (日塗工VOC分類W3)
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施工写真(外壁塗装上塗材)
TVOC5%~10%の水溶性 セラミックシリコン樹脂塗料での施工が主流 (日塗工VOC分類W3) 弱溶剤系塗料での施工も一部実施されている(TVOC40%~50%)
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低VOC材使用現場のメリット・デメリット
外壁塗装 メリット デメリット
①保管管理 1.シンナー等溶剤を使用しないので保管設備・保管数量の制限がなくなる 2.引火の危険性がなくなる 3.換気・臭気対策が不要
無し
②施工性 1.作業性がよい 2.作業後の道具の傷みがすくない 3.安全な施工環境、作業環境の向上に繋がる
1.低温環境下での施工性が悪い 2.気温、湿度に左右され、塗膜の完全硬化が遅くなることがある 3.塗装直後の雨に弱い
③コスト 1.洗浄・希釈にシンナーを使用しない分のコストは減となる(材料、保管・管理コスト)
1.水性の為、安易に水道水で道具洗浄してしまい塗料廃水事故に繋がる場合もある 2.下地によっては塗装工程が1回増える場合もありコストアップに繋がる
④性能 1.塗膜形成後は溶剤系と変わらない 1.艶が劣る 2.溶剤系に比較し耐候性に劣る(耐候型1種のシリコン・フッ素は除く) 3.下地との密着性能が溶剤系より劣る
⑤臭気 1.溶剤系に比較し圧倒的に臭気が少なく安全で環境に優しい (居住者の体調不良・アレルギー発生が少ない、ペットの体調不良等の相談ケースが少ない)
ほぼ無し
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施工写真(鉄部塗装)
特に雨掛り部分では速乾性、防錆性、耐久性の面からTVOC30%~40%の 弱溶剤形塗料での施工が主流となっています。
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玄関枠塗装等で室内に臭気が入る場所で水性のさび止め塗料の適用事例もありますが、特に鉄部塗装では素地調整後の状態に適した材料選定が重要なため、適用範囲が広い油性が選ばれるケースが多い。概ね8割程度が弱溶剤と考えられる。 学校等では内・外鉄部にも水性が使用されている。
施工写真(内装仕上)
内装に関連する建材や塗装には改正建築基準法をはじめ様々な法整備が進み、居室使用できる塗料が定められました。 現在はTVOC1%未満の水溶性 アクリルエマルション塗料での施工が主流となっています。 (日塗工VOC分類W1)
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内装材はホルムアルデヒド放散等級F☆☆☆☆や低VOC材料のほか室内環境改善を目的とした左官材や壁紙、調湿建材が豊富に ラインアップされている。
施工者からみた現状
日本国内では各省庁、自治体、関係団体毎に規制や自主目標を定めている為、改修工事における各段階毎にどの規制に準拠すべきか確認が必要。 (厚生労働省、文部科学省、国土交通省、経済産業省、環境省、各自治体、各種関連団体、メーカー団体)
マンション大規模修繕工事では設計段階の仕様でほぼ使用材料が決定している。
顧客要望に左右される。 耐久性の高い溶剤系塗料での塗装工事も継続的に実施されている。(艶、密着性、耐久性、LCC)
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改修工事における軽減努力
1)塗装方法の工夫(付着率向上) 2)開封缶の密封養生(蒸散防止) 3)塗装範囲養生方法の工夫(拡散防止)
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1)価格は高くなるが、高耐久の塗料を提案する等、塗り替え周期を延し、ライフサ イクルコストの低減と同時にVOCの低減を図る提案をする。 2)材料選定時はMSDSの内容確認・提示と共に積極的に環境対応材料を提案する。
設計段階・受注時提案段階
施工段階
施工後
1)適切なメンテナンスを実施し 塗り替えサイクルを延す。
鋼構造物塗装
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鋼構造物塗装
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スカイツリーの現場溶接継手部施工例 溶接部は現場塗りとなり、塗膜性能が確保しにくく欠陥部になりかねないため、より優れた耐久性が求められ塗装仕様は、有機ジンクリッチペイント75μm+厚膜形変成エポキシ樹脂塗料下塗100 μm(2層)+厚膜形ふっ素樹脂塗料上塗55μm。計5工程330μmでの施工。 (工場塗装部は250 μm) 100年のライフサイクルでのVOC排出量に関して、東京スカイツリーの塗装系はC-5塗装系と比較して40%の削減、東京都の推奨する低VOC塗装系(水性塗料採用)と比較しても44%削減できると試算。 塗り替え周期を延ばすことで環境配慮に寄与するタイプの試みといえます。
まとめ
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構造物を彩り、雨風から躯体を保護する、その単純かつ明確な役割から最近の塗料は、世界的な環境意識の高まりと時代のニーズに合わせて機能を進化させてきています。
その原動力が各省庁、自治体の取組であり、日本塗料工業会をはじめとする業界団体の自主取組による排出抑制効果が表れていると思います。
塗料メーカーでは公害や健康障害の原因となるVOCの排出を抑えた水性塗料や粉体塗料などへの切り替えが現在も進行しており、同時に環境負荷材料を低減した環境対応製品の普及はもちろんのこと、塗装することでエネルギーコストの低減や生活環境の快適化につながる機能性塗材※1が各種開発されております。 これからも、国・地方自治体、業界団体、メーカー、施工者、顧客が一体となって経済活動、技術革新の動向、進展にあわせバランスよく継続的に取り組み続けていくことがVOCをはじめとする環境負荷低減と健康な住生活と持続可能な社会の構築に繋がるとおもいます。 ※1機能性塗材(超高耐久性塗料・光触媒塗料・遮熱塗料・高反射塗 料・断熱塗料・低汚染塗料・防藻塗料・防音塗料・ 防火塗料・リユース、リサイクル塗料等)
【参考文献、資料提供】 厚生労働省、環境省、経済産業省、国土交通省、文部科学省 東京都 VOC対策ガイド「屋外塗装編」 産業調査会 建築材料活用辞典 (社)日本塗料工業会 田島ルーフィング㈱ SK化研㈱ ㈱ダイフレックス 化研マテリアル㈱
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世紀を超えて快適サポート
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