コーヒーが牛乳界面に作るフラクタル構造

下川倫子

九州大学総合理工学府、福岡県春日市春日公園 6－1

simokawa@esst.kyushu-u.ac.jp

Fractal structure exhibited by coffee on milk’s surface

Michiko Shimokawa Kyushu University、6-1 Kasuga-Koen, Kasuga, Fukuoka, Japan

Abstract: We have discovered a new fractal pattern, coffee exhibits on a horizontal surface of milk, with a fractal dimension 1.88 ± 0.06, when a heavy coffee droplet interacts with the surface of lighter milk. Parts of coffee pattern on the surface disappear due to Rayleight-Taylor instability, and the annihilative behavior produces the fractal pattern. Coffee fractals and Sierpinski carpet have common features, such as the fractal dimension, annihilative behavior, and an exponential decrease of the pattern area. It is suggested that the formation of the coffee fractal follows a rule similar to that of Sierpinski carpet. Keywords: pattern formation, fractal, Rayleigh-Taylor instability, Sierpinski carpet

フラクタルパターンは川や木の分岐構造や雲の形など自然界のさまざまな場所で見られ

る。また、結晶成長、ヴィスカスフィンガリングやバクテリアコロニーなど多くの実験系

でもフラクタルパターンは観察されている。従来、研究されてきたこれらのフラクタルパ

ターンは(二次元系であれば)面を覆うように増殖しながら、形成されるものである。しか

し、我々が見つけたフラクタルパターンは二次元に覆われていたパターンが徐々に抜けて

いくことで形成される消滅フラクタルである。本研究は、我々が知っている限り、実験で

消滅フラクタルを観察した初めての例である。本講演は、この消滅フラクタルの実験的研

究について報告する。

使った試料はインスタントコーヒー (ネスカフェ ゴールドブレンド )と牛乳 (みどり 低脂肪乳)である。実験方法は以下のとおりである。

(i) インスタントコーヒー2.0g と墨汁 (書光 )3.0ml を

100℃のお湯で湯煎しながら混ぜ合わせる (ii) ビーカーの高さ 3.5cm のところまで牛乳を注ぎ、流

れをなくすために 10 分以上放置する(Fig. 1) (iii) この牛乳界面に室温に戻したコーヒー溶液 0.2ml の

滴を静かに置く このとき、コーヒー溶液の密度は 1.71g/ml、牛乳の密度は

1.03g/ml であり、コーヒー溶液は牛乳より重い。 Figure 2 のパターンが牛乳界面に現れる。パターンの白と

黒い部分はそれぞれ牛乳、コーヒー溶液である。このパター

ンを密度相関関数法およびボックスカウント法で調べたとこFig. 1 Schematic drawing of

experimental procedures

ろ、表面パターンはフラクタルであることが分かった(Fig. 3)。Figure 4(a), (b)はコーヒー滴

を置いて 10 秒、20 秒後のもので、上部、下部の写真は Fig. 1 の Camera 1, Camera 2 で撮影

したものである。重いコーヒーが下に落ちることで、界面のコーヒーパターンが次々に抜

け、コーヒーフラクタルが形成される。パターン面積σ(t)は時間 t とともに減少し、コー

ヒーパターンは時々刻々と変化する。しかし、フラクタル次元 D は時間やコーヒー溶液の

密度に依存せず、ほぼ一定値 D=1.88±0.06 をとる(Fig. 5 (a))。このフラクタル次元は、消

滅フラクタルの代表的な数学モデルのシェルピンスキーカーペット(D=1.89)を思い出させ

る。また、Fig. 5 (b)に見られるようにσ(t)～exp(－t/τ)で近似でき、シェルピンスキーカ

ーペットの面積変化(8/9)n と同じ指数関数的減少を示す。コーヒーフラクタルとシェルピ

ンスキーカーペットのその他の類似点として、消滅的振る舞いがフラクタル形成にとって

本質的であることやフラクタルが出現するステップ数がほとんど同じであることが上げら

れる。以上のことから、シェルピンスキーカーペットと類似したルールでコーヒーフラク

タルが形成されていることが期待される。

(a) Correlation function (b) Box counting

Fig. 3 Fractal analysis by (a) correlation function and (b) box counting

Fig. 2 Coffee fractal pattern

Fig. 4 Surface pattern at (a) t = 10 s and (b) 20 s. The top and bottom pictures are captured from Camera 1 and 2, respectively.

(a)

(b)

Fig. 5 (a)Fractal dimension D at time t and average Dis 1.88±0.06. (b)Pattern area σ(t) at t andσ(t)～exp(－t/τ).

Coffee solution density