ノロウイルスはなぜ繰り返し...

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ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、 HACCP義務化と併せ考えるー 食の安全と公衆衛生 主宰 食品衛生アドバイザー 笹井 勉 2017328

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Page 1: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

ノロウイルスはなぜ繰り返し流行するのか

ー予防の徹底はどこまで、

HACCP義務化と併せ考えるー 食の安全と公衆衛生 主宰

食品衛生アドバイザー

笹井 勉

2017年3月28日

Page 2: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

ノロウイルスはなぜ 繰り返し流行するのか

遺伝子の変異が起きる

(新型ノロウイルスの出現)

新型が出現すると免疫がなく、

医療機関の簡易検査で検出しにくい

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食中毒患者の半分はノロウイルス

年 全患者数

(人)

ノロウイルス

患者数(人) % 事件数(件) %

2005年 27,019 8,727 32.3 274 17.7

2006年 39,026 27,616 70.8 499 33.5

2007年 33,477 18,520 55.3 344 26.7

2008年 24,303 11,618 48.9 303 22.2

2009年 20,249 10,874 53.7 288 27.5

2010年 25,972 13,904 53.5 399 31.8

2011年 21,616 8,619 39.9 296 27.9

2012年 26,966 17,632 67.9 416 33.2

2013年 20,872 12,672 60.7 328 35.2

2014年 19,355 10,506 54.3 293 30.0

2015年 22,718 14,876 65.2 481 40.0

2016年 20,253 11,397 56.3 354 31.1

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0

5000

10000

15000

20000

25000

30000

93年 94年 95年 96年 97年 98年 99年 00年 01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 16年

サルモネラ 黄色ブドウ球菌 病原性大腸菌 腸炎ビブリオ

ウエルシュ菌 セレウス菌 カンピロバクター ウイルス

化学物質 植物性自然毒 動物性自然毒 その他(寄生虫)

2006年

2012年

食中毒病因別患者数の推移(全国)

2015年

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☆病因別食中毒患者数の割合

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

85年 86年 87年 88年 89年 90年 91年 92年 93年 94年 95年 96年 97年 98年 99年 00年 01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 16年

サルモネラ 黄色ブドウ球菌 腸炎ビブリオ 病原性大腸菌

ウエルシュ菌 セレウス菌 カンピロバクター ウイルス(ノロ他)

化学物質 植物性自然毒 動物性自然毒 その他(寄生虫)

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ノロウイルス変異の経過 最初はGⅡ.4型の変異(新型)、最近はGⅡ.17やGⅡ.2などの新型が

• 2002年(Farmington Hills株)⇒2003年1月バターロールパンやミニきな粉ねじりパン(661人)事件(乾燥したもので感染)

• 2004年(Hunter株)⇒2005年1月箱根駅伝の弁当、大規模社員食堂事件(291人=しゃもじの浸け水?)が起きた

• 2006年(2006b株)⇒ノロウイルスの食中毒患者2万7千人を超える。メトロポリタンホテル347人(客の吐物で感染)

• 2010年(New Orleans株)⇒イギリスなどで流行。この年東京都ではノロウイルスで68件1208人。

• 2012年(Sydney 2012)⇒世界各地で流行している。東京プリンスホテル76人、弁当で広島2035人、山梨1445人、

• 2014年(2014kawasaki)⇒GⅡ.4でなくGⅡ.17が変異、 15年の春先に生カキで大量の患者発生 • 2016年(GⅡ.2)⇒GⅡ.4 (Sydney 2012)に近い変異 17年の1月~2月の「キザミのり」の広域感染はGⅡ.17だった

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GⅡ.17の特徴⇒GⅡ.2も同様

• GⅡ.17はGⅡ.4に比べて、小児科で使用しているノロウイルス簡易キットで検出しにくい。

• 1g当1000万コピーがあっても検出されない例があった。(IASR Vol. 36 p. 2015年5月号)

• 医療機関でノロウイルスがマイナスと言われても存在している場合がある

• GⅡ.2も同様に簡易検査では検出しにくい

• どうするか⇒検査結果に左右されず冬場におう吐や下痢があったらノロウイルスとして対処する

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他の微生物より少量で感染し、発症させる

100

1000

10000

1000000

0 ノロウイルス(10個~100個/人)

サルモネラ・エンテリティディス(10個~10億/人) ボツリヌス菌(300個/人) カンピロバクター(500個/人)

赤痢菌(100個~10億/人) コレラ菌(1000個/人)

腸炎ビブリオ(1万~10億/人) 黄色ブドウ球菌(10万~100万/g) セレウス菌(10万~1000億/人) ウエルシュ菌(100万~1000億/人) その他の病原大腸菌(100万~100億/人)

腸管出血性大腸菌O157(10個~100個/人)

⇒数個で増殖しなくても食中毒を起こす 10

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☆キザミのり 食中毒を考える

ノロウイルスの特徴を再確認させる事例 少量感染 長期生存 人の腸内での爆発的増殖 その対策は

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御坊市の給食センター事件

<きっかけになった事件> • 発生年月日:2017年1月26日

• 原因施設:御坊市給食施センター

• 摂食者数:2,062人

• 患者数:763人(小・中学校や幼稚園15施設の園児・児童・生徒や教職員)

• 症状 下痢や嘔吐、腹痛等

• 原因食品:1月25日の給食の「磯和え」

• (下ゆでしたホウレンソウとモヤシ、それにちくわを蒸して加熱したあと、キザミみのりを加えて味付けしたものをクラスごとの食缶に分けて配送した。他のメニューは塩ちゃんこ、ご飯、牛乳)

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立川市学校給食共同調理場の事件 • 発生日:2月17日

• 患者数:都の発表521人、立川市1,098人

• 2月16日(木曜)の給食の親子丼に「キザミのり」を使用(「キザミのり」は調理場で取り分けられ、各教室配布し、給食当番の生徒がトングでつまんで親子丼に振りかけた。(親子丼の他はうど入りすまし汁、伊予かん、牛乳)

• 仕入れ先に保管されていた同じ賞味期限の未開封製品15検体のうち、4検体からノロウイルスを検出した

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東京都小平市立小学校の事件

<小平市第一小学校の事例―患者26人> • 発生日:2月22日、患者26人、喫食者467人 • 原因食品:2月21日の給食、炊き込みご飯、キ

ザミのり、手作りさつまあげ、冬野菜汁、牛乳 <小平市第十一小学校の事例―患者39人> • 発生日:2月25日、患者39人、喫食者645人 • 原因食品:2月24日の給食、きんぴらご飯、キザ

ミのり、鮭のなんばん漬け、わかめ入り野菜スープ、いちご、牛乳

• 食品6検体中1検体(キザミのり)からノロウィルス検出

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同じ「キザミのり」による事件 <大阪府大東市の弁当店の事例>3月8日公表

• 2月18日発生、患者101人:患者便2検体、調理従事者便1検体から検出されたノロウイルスが、東京都と和歌山のもの一致

<久留米市の事業所給食の事例>3月9日公表

• 1月26日発生、患者39人:患者便6検体、調理従事者便2検体から検出されたノロウイルスが東京都と和歌山のものと遺伝子配列が一致した、喫食者42人

<檜原村学校給食共同調理場の事例>3月14日公表

• 2月28日発生、患者2人:2月27日に供給した給食(キザミのり)、喫食者19人

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「キザミのり」原因施設は • 当該のキザミのりの表示上の製造販売業者は焼き

海苔を作り、キザミ・包装作業は個人業者に委託している

• 大阪市調査で個人業者の加工所内にあるのりの裁断機やトイレの便器など8カ所から、東京、和歌山と同じ遺伝子配列のノロウイルスを検出した

• 個人業者は12月にノロウイルス様の症状があった

• 元請から作業には手袋(ニトリル)を使用するように指示されていたが、作業効率が落ちるとして素手で作業していた

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何故キザミのりでノロウイルスか • 下請け加工所業者が12月にノロウイルスに感染

し発病、手袋もせずに作業を続けた

• 手指が汚染されたまま作業を続け結果、「キザミのり」や裁断機にノロウイルスを付着させた。

• 加工日から50日~80日経過してもノロウイルスは感染力を維持していた。食材(乾燥食材)に付着したノロウイルスは感染力が長期間持続する。

• ノロウイルスは少量で感染し、糞便中には大量のウイルスを排出する

• パックの中でノロウイルスが拡散した?

Page 16: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

下痢便で汚れる手指や衣類

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ノロウイルスの生存期間

乾燥物質表面等の生存率

ネコカリシウイルス(FCV)による

実験データ

乾燥状態では

4℃なら60 日以上、20℃では28日

20℃の液体中では約20日

37℃では1日程度、長くても5日未満 JC Doultree; J Hosp Infect 1999, 41:51-57

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ウイルスは食品にどれくらい付くのか

<2014年1月、浜松市学校給食の食パン事件>

• 患者1,271人、食パンから2,400と3,333コピー検出、従事者4人からノロウイルス検出

<2003年1月、北海道の学校給食の黄粉ねじりパンによる事件>

• 患者661人、小学生用のパンで800コピー/個、中学生用のパンでは1,400コピー/個。

• 従事者1人からノロウイルス検出、8万個あれば事件は成立する

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ノロウイルスは腸内で爆発的に増殖

• 細菌のように分裂するのでなく、腸管の細胞の中で大量にウイルスをつくり細胞外に排出する。そのため糞便中には1g当り10億~100億ものウイルスが含まれる。おう吐物中にも1g当り100万個程度排出される。

• 糞便中にノロウイルスが1g10億コピー含まれると、0.1gの糞便が手に付着しただけで1億個(108)となる。これを100個(102)程度までするには100万(106)分の1減らす必要がある。

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御坊市の再発予防対策

保健所と委託業者と和歌山県で協議した結果

• 設備や器具の消毒にはノロウイルスの殺菌に有効な塩素系消毒薬を使う

• 手洗い後や「和え物」を作る前にはエタノール系消毒剤を手に吹きかけて消毒する

• 作業衣は家で洗わず、給食センターで洗濯などを一括して管理する

• 冬の間(10〜3月)は検便の検査項目にノロウイルスを加える

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小平市の再発防止対策

臨時保護者会の概要報告より

• 当面、生の果物、ミニトマト、非加熱で提供される食材

(きざみのり等)の使用中止。

• 引き続き、給食室や給食調理過程における衛生管理の

徹底、調理従事者の健康管理の徹底。

• 食材選定や納入時のチェック(検収)で色、におい、状態

などをきめ細かく確認。

• メーカー、卸問屋に「食品衛生監視票」「作業工程表」

「従業員の細菌検査」等による確認を徹底。

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小平市再発防止と学校の対応 • 給食調理員は今後も衛生管理のチェックリストに

基づき日常の点検と定期的な点検を確実に実施し、食品の管理や調理の手順、消毒を徹底する。

• 教職員の誰もが確実に実行できるよう「嘔吐処理対応マニュアル」を改めて確認した。

• 児童下校後、ドアノブ・手すりなど消毒し二次感染防止に取り組んでいる。

• 給食調理室内における壁やドアなどの施設をはじめ、全ての食器・器具・機材を改めて洗浄、消毒した。

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☆食材料の調達 に関する 対策(立川市)

(1)一部の加工品の調達においては、

①原材料、原産地及び加工地・加工場、成分分析、非遺伝子組換を証する書類に加え、次の書類提出を求める。

ア)製造工程表・特に、加熱殺菌の方法・温度・時間の記録

イ)微生物検査結果・一般生菌、大腸菌群、黄色ブドウ球菌等の確認ができるもの

ウ)製品の納入工程図・製造元から共同調理場に納入されるまでの工程・特に、製造者以外の事業者の関わりの有無や加熱処理後の充填方法が確認できるもの

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☆食材料の調達 に関する 対策(立川市)

②加工場における従業員の衛生管理状況を確認する。

• ア)従業員の検便実施状況

• イ)従業員への衛生研修の実施状況など

(2)非加熱食材料については、納入事業者に対し、新たに食材料の『ノロウイルス非感染検査証明書』の提出を求める。なお、「共同調理場で加熱調理しない食材料の一律使用禁止」の意見があったが給食は食教育なのでそれまではしない

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行政処分はどうなったのか • 東京都の学校給食は民会委託で受託した会社の従業員が調理

して提供している。献立や食材購入は教育委員会がしており、委託しているのは労働力だけというので、受託業者は食品衛生法の営業許可を取っていない

• 健康増進法(旧栄養改善法)で届出が必要な給食施設なので、自治体(教育委員会)が保健所に届出している

• 東京都は届出している立川市や小平市などに対して食事の供給停止命令処分した

• 社員食堂は事業者が受託営業しているので営業許可を受託会社が取っている。事故を起こせば受託している会社が営業停止や営業禁止の処分を受ける

• 自治体は不利益処分した時は公表するので、会社名が明らかになる

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トッピングなど仕入食材による食中毒 • 1996年7月、堺市の学校給食で患者7,936名死亡者3名の

O157の食中毒事件もトッピングに使用された「貝割れ大根」が推定されている

• 2012年9月、13事業所の給食で下痢原性大腸菌O148による580人の食中毒、原因食品は「やっこ」や「うどん」「ラーメン」などにトッピングに使用していた、カット野菜業者から納品された生食用の「長ネギ小口切り」だった。

• 2012年8月、高齢者施設やホテル、飲食店、販売店など23施設で患者169人、8人が死亡した事件は「白菜の切り漬け」よるO157食中毒が起きた。

• 2016年8月、「きゅうりのゆかり和え」で市川市と東京都羽村市の老人施設で患者86人死者10人の事件が起きている

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何故食材が汚染されるのか

• 「貝割れ大根」は米国から輸入した「貝割れ大根の種」が汚染⇒栽培場で増殖したと考えられた

• 「長ネギ小口切り」はカット野菜業者が中国からの輸入したネギ使用⇒糞便由来の下痢原性大腸菌を検出

(ネギは刻んでしまうと塩素消毒でも減らない)丸で洗浄

• 「白菜の切り漬け」は原材料の白菜の汚染が推定された⇒風評被害を恐れて十分調査できなかった。(漬物工場では塩素消毒していた)⇒未発酵の牛糞の使用、切り口

• 「きゅうりのゆかり和え」事件、花火大会の「冷やしキュウリ」でも食中毒も起きている⇒キュウリそのものの汚染も考えられる。栽培中に使用する農業用水の汚染?

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その他の学校給食での 食中毒事例

<学校に関する食中毒統計の分類>

学校-給食施設-単独調理場-幼稚園、小学校、中学校、その他

学校-給食施設-共同調理場

学校-給食施設-その他

学校-寄宿舎

学校-その他

Page 29: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

学校給食施設での食中毒発生状況

0

1

2

3

4

5

6

7

8

06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 16年

件数

ノロウイルス サルモネラ属菌 カンピロバクター ウエルシュ菌

ヒスタミン 病原性大腸菌 その他の菌 植物性自然毒

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学校給食施設での食中毒、原因物質と原因食品 発生年月日 病因物質 患者数 原因食品2016年12月13日 ノロウイルス 197 マロニーサラダ2016年11月17日 ソラニン 7 ゆでジャガイモ(料理実習)

2016年9月9日 溶血性レンサ球菌 140 ブロッコリーおかか和え(消防学校)2016年6月3日 ウエルシュ菌 65 坦坦ソース

2016年5月21日 ノロウイルス 145 不明2016年2月24日 ウエルシュ菌 18 不明2016年1月16日 ノロウイルス 27 不明(幼稚園給食)2015年6月9日 ヒスタミン 231 アジフライ

2014年4月22日 ノロウイルス 19 不明2013年11月15日 ヒスタミン 26 いわしつみれ団子汁2013年11月12日 ノロウイルス 178 不明2013年6月28日 ノロウイルス 47 不明2013年1月31日 ノロウイルス 292 不明2013年1月23日 ノロウイルス 7 寿司2012年11月4日 ノロウイルス 73 不明2012年2月4日 ノロウイルス 78 背割りパン2011年6月9日 ヒスタミン 12 かじきのみそチーズ焼き

2011年2月25日 サルモネラ属菌 219 もやしのナムル 2011年2月9日 サルモネラ属菌 1298 ブロッコリーサラダ

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給食施設以外でも食中毒 平成28年食中毒発生事例発生地域 発生月日 原因食品 病因物質 原因施設 摂食者数 患者数奈良県 1月16日 不明(学校給食) ノロウイルス 単独調理場-幼稚園 214 27岐阜県 1月28日 調理実習で調理された食事 カンピロバクター 学校-その他 73 20埼玉県 2月5日 調理実習で調理した食品 ノロウイルス 学校-その他 40 12京都府 2月6日 不明(2月5日の夕食) ノロウイルス 学校-寄宿舎 39 10茨城県 2月10日 提供されたもち ノロウイルス 学校-その他 202 59尼崎市 2月24日 原因施設が提供した食事 ウェルシュ菌 単独調理場-その他 27 18宮城県 3月28日 合宿所で提供された食事 ノロウイルス 学校-その他 45 24長野県 5月6日 スイセンの鱗茎 植物性自然毒 学校-その他 12 11福井県 5月21日 給食 ノロウイルス 給食施設-共同調理場 964 145茨城県 5月26日 バーベキュー カンピロバクター 学校-その他 55 24都区部 6月3日 坦々ソース ウェルシュ菌 給食施設-その他 70 65静岡県 7月15日 生徒調理の塩ゆでジャガイモ 植物性自然毒 学校-その他 152 25山形県 9月5日 不明(施設で提供した食事) セレウス菌 学校-給食施設-その他 96 12大阪府 9月9日 ブロッコリーのおかか和え 溶血性レンサ球菌 単独調理場-その他 229 140都区部 9月29日 仔羊肉のアミ脂包み焼き サルモネラ属菌 学校-その他 39 26京都府 11月10日 調理実習で調理した食事 カンピロバクター 学校-その他 25 10北海道 11月17日 調理実習のゆでたジャガイモ 植物性自然毒 単独調理場-小学校 102 7青森市 11月19日 調理実習で調理された食品 カンピロバクター 学校-その他 30 13千葉県 12月13日 マロニーサラダ(学校給食) ノロウイルス 単独調理場-その他 640 197

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次亜塩素酸ナトリウムと アルコールの使い分け

大量調理施設衛生管理マニュアル改正2016年7月1日

アルコールにも効果のあるものが発表された

通常のアルコールの効果は

有効とは100分の1以上減らせるもの

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ノロウイルスの効果のあるアルコール

2015年7月1日付大量調理施設衛生管理マニュアル改正で(注3)

• 塩素系消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸水、次亜塩素酸水等)やエタノール系消毒剤には、ノロウイルスに対する不活化効果を期待できるものがある。使用する場合、濃度・方法等、製品の指示を守って使用すること。

• 使用方法:浸漬により使用することが望ましいが、浸漬が困難な場合にあっては、不織布等に十分浸み込ませて清拭すること。

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アルコールと塩素剤の使い分け方法

• 器具、容器等の使用後は、別添2に従い、全面を流水で洗浄し、さらに80℃、5分間以上の加熱又はこれと同等の効果を有する方法注3で十分殺菌した後、乾燥させ、清潔な保管庫を用いるなどして衛生的に保管すること。

• まな板、ざる、木製の器具は汚染が残存する可能性が高いので、特に十分な殺菌注4に留意すること。なお、木製の器具は極力使用を控えることが望ましい。

• 注4:大型のまな板やざる等、十分な洗浄が困難な器具については、亜塩素酸水又は次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系消毒剤に浸漬するなどして消毒を行うこと。

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ノロウイルスの不活化に用いる消毒剤 • ふん便、嘔吐物等の付着物の処理

1,000~5,000ppmの次亜塩素酸ナトリウム

• 施設の日常的清掃

200ppmの次亜塩素酸ナトリウム

アルコール類 酸性電解水

その他効果が確認された消毒剤(アルコール製剤等)

• 手洗い

アルコール類 酸性電解水

ヨード化合物含有速乾性消毒剤

その他効果が確認された消毒剤等

• うがい(口腔内洗浄)

ヨード(ポピドンヨード)系うがい薬等 44

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ノロウイルス食中毒を 予防するために

ノロウイルスの予防はノロウイルスを知ること

いままでの食中毒と異なった性質を持っていることを

事例から学ぶ

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従事者由来

(発症), 25%

従事者由来

(非発症),

55%

従事者由来

(不明), 2%

二枚貝(生

食), 7%

二枚貝(加熱

不十分), 4% 不明, 7%

☆ノロウイルス食中毒の発生原因

平成28年度自治体からの食中毒詳報報告書より(n=68)

Page 38: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

ノロウイルス対応の難しさ • 温度が低いほど感染力が持続する(冬に流行)

• 非常に小さい(落ちにくい・乾燥して舞い上がる)

• 少量で感染(感染力が強い)

• 糞便やおう吐物に大量に排出される

(人間の腸内で爆発的に増える=人が持ち込む)

• 不顕性感染(健康保菌者)多い、症状が無くても排出

• 逆性石ケンがきかない、アルコールはある程度効果がある。おう吐物、トイレには次亜塩素酸NA

• ノロウイルスは遺伝子変異が激しい(免疫ができにくい=新型が出るたびに流行する)

• 衛生的な環境では長生きできない(最近わかったこと)

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ノロウイルスの感染経路 (1)食品媒介感染・水媒介感染(食中毒) • ノロウイルスに汚染された食品(カキ等の二枚貝)や飲料水を、生また

は加熱不十分で摂食する

• 調理中に従業員の手指等を介して食品等を汚染し、それを摂食する

(2)接触感染 • 感染した人の糞便やおう吐物に触れ、手指等を介してノロウイルスが

口から入る場合

• 感染者の手指等に付着したウイルスがドアノブ等の環境を汚染し、それに接触した手指等を介して口に入る場合

(3)飛沫感染・塵埃感染 (主におう吐物を介して起こる)

• 患者のおう吐物が飛び散り、その飛沫が口から入る

• おう吐物の処理が不十分で、それが乾燥して塵やほこりとなって空気中に漂い、それらのものとともに口にはいる

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ノロウイルスの症状等

• 潜伏期間

o 1日 ~2日で症状が出る。早い時は12時間後、 最も多いのは、35~36時間前後(2日~4日後大量のウイルスを排出)

• 主な症状

o 吐き気、おう吐、水様性下痢、腹痛で、発熱は軽度。小児・学童などでは、おう吐が高く成人では、下痢、吐き気が主症状。

• 症状

o 1日~2日続いた後、治癒。患者はウイルスを通常では1週間程度長いときには1ヶ月程度ウイルスの排泄が続くことがある。感染者は発症しなくても、ウイルスが検出される

• 治療

o 水分補給(輸液)など、対象療法を行う

Page 41: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

ノロウイルス食中毒予防は4原則

• 持ち込まない(汚染物、人・症状のある感染者)

• 拡げない(食材・大便・吐物・服装)

• 加熱する・不活化する

• 付けない(手指・衣服・食器・環境から)

最も重要なのは、誰もが感染してつもりで作業すること、特に冬場は

発症者と健康保菌者の違いは?

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持ち込まないようにするには

人が持ち込むのと、汚染したものが持ち込まれることがある

人(調理従事)持ち込まないようにするには

oできるだけノロウイルスの保有者とならない⇒ かき(しじみ)など二枚貝の生食は避ける

o 感染したら仕事を休む⇒個人の健康状態の把握

o家庭での感染予防の徹底⇒なかなか難しい、ウイルスが埃の中などに長く生きている

• 手洗いの徹底

Page 43: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

家庭での感染予防 • 家族が感染した場合トイレとおう吐物の処理が重要

• トイレは便器だけでなく個室全体が汚染されているので全体の清掃と消毒する

• 吐物は調理場と同様に処理する。塩素剤はハイタ―・ブリーチが代用できる。カーペットはアイロンで加熱する

• 直接汚れた衣類は廃棄するか汚れを落として煮沸してから洗濯する。付近にあった衣類も洗濯やクリーニングに出す。洗濯するときに漂白剤に漬けるか乾燥機で乾かす。

• 通勤着や下着類はトイレや子どもの遊び場から区分して保管する

• 部屋はできるだけ清潔にする。ゴミの中のノロウイルスは長期間生きている。

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汚染したもの持ち込まない

街場に蔓延しているノロウイルスを調理場に持ち込まないようにする

• 調理場に入るものをチェック

食材、通い箱、包装紙、新聞紙、ダンボール、発泡スチロールは持ち込まない

納入業者も履き替え、白衣、手洗い

• カキなどの二枚貝は汚染を拡げない

Page 45: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

拡げない(汚染物から)ようにする 一番の汚染源は大便⇒ここから汚染を拡げない • トイレを汚染しない(大便専用の個室) • トイレの清掃、消毒の徹底 • 着替え、履き替と手洗いの徹底。 おう吐物の汚れを拡げない • 処理を厳重に(処理キットと訓練) • 乾燥すると空中に漂う(エアロゾル)飛び散らな

いように 二枚貝等の食材から拡げない • カキやアサリ、シジミなどの取扱いに注意する

Page 46: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

都内老人ホームでの食中毒事例

トイレの汚染が広がった例 原因食品:2010年11月施設の食事

原因物質:ノロウイルス

発症者:37名

【トイレのふき取りでウイ

ルスを検出した場所】

患者13人と従業員5人、

トイレのふき取り4か所から

ノロウイルスGⅡを検出

便器の蓋の裏、便座の裏表3,420,000

フラッシュ・バルブ

126,000

壁・床

1,140,000

トイレの ドアノブ 7,800

Page 47: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

用便の心構え・不顕性感染者対策 • 小用でも作業服を脱ぎ、靴を履きかえる

• 排便は自宅でするような生活習慣を指導

• 出勤後の排便は専用のトイレを使用する

o 上衣だけでなくズボンも脱ぐ?

o 衛生手袋やアームカバー着用し入室前に着用し、退出前に外す

o 使用前後に便座の殺菌・消毒

o ウォシュレットは使用しないウォシュレットを使用する場合、水量は弱めに、トイレットペーパーは水分が手指に着かない量を使用する

• 公衆トイレはできるだけ使用しない

Page 48: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

ドアノブよりウイルスや細菌汚染

• 感染者が触れたドアノブからウイルス付着

ドアノブに触れた手でキャベツを取り分けたら7回目までキャベツにウイルスが付いていた

東京都「ノロウイルス対策緊急タスクフォース」第2報より

Page 49: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

デリバリー給食のノロウイルス食中毒 • 発生:2014年1月22日、患者:広島市内中学校10校、

301名(生徒280名、教職員21名)

• 原因食品:給食事業所で製造したデリバリー給食(推

定)しょうゆごはん、あなごめし、お好み揚げ、たことわか

めの酢の物、みかん、牛乳

• 検査結果:患者便;45人中、42人陽性、従事者便 ;3

5人中、1人がノロウイルス陽性⇒配送担当者、10校す

べてには配送していない。陽性者から取っ手や容器など

の汚染が疑われた)

Page 50: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

不顕性感染者も1億以上を排出する

1億個

百万個

百億個

排出は感染後4日~5日が多い

資料:東京都健康安全研究センター

Page 51: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

ノロウイルスのおう吐は突発性

準備する間もなく嘔吐する→ホールでも、調理場でも

おう吐物中の

ノロウイルスは10万から100万個、1リットル中には10億から100億個

Page 52: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

おう吐物処理のしかた(訓練する)

身支度(使い捨て手袋・マスク・エプロン)をする。 消毒液(0.1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液)を作る。

吐物をペーパータオルで覆い消毒液を散布し15分放置する。汚物を拭き取りビニール袋に入れる。(袋に消毒薬を入れ、密封)汚物が付いた床などは、消毒液の布で10分位覆う。

手袋を外し、ビニール袋に捨てる。 手洗いをする。

十分に室内換気をする。

人が近づかないようにする

汚れを包み込むように

作業中にエアロゾルを吸入しないよう予防する

残ったウイルスを死滅させる

緊急な場合は吐物に原液をかける

6%溶液は300倍=200ppm

Page 53: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

付けない(食品・器具に)ようにする • 手洗いの徹底 o作業開始時・トイレの後、汚染作業から清

潔区域に移行時、盛り付け時の手洗いは二度洗い

• 素手で食品に触れない • 使い捨て手袋の適切な使用とマスク

の正しい着用 • 清潔な作業着の着用 • 清潔な作業環境(調理器具・食器)

Page 54: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

個人衛生点検表 (記録は正確に記入、責任者のチェック)

従事前の 健康チェック

トイレ時の着替え

履き替え

手指のチェック 手洗いの徹底

清潔な服装 身だしなみ

Page 55: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

健康チェック・症状と食中毒の危険性

こんな症状のときは こんな食中毒を起こす

危険性がある

吐気・おう吐・下痢

ノロウイルス 冬場突然の食欲不振・胃部のむかつき感

発熱(節々、体の痛み)38℃以下

下痢・腹痛とともに(血便はO157・赤痢、発熱39℃以上はサルモネラ、激しい下痢はコレラ)

病原性(腸管出血性)大腸菌

サルモネラ・赤痢・コレラ

発熱を伴う のどの痛み A群溶血性レンサ球菌

黄疸 A型肝炎ウイルス

手指等の傷や化膿症 黄色ブドウ球菌

Page 56: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

手洗いに関する科学的な根拠給食施設では衛生的手洗いを

顆粒層

皮膚の表面

大腸菌、黄色ブドウ球菌、ノロウイルス等

悪玉菌(ウイルス)

角質細胞

通過細菌叢(汚染菌等)

常在細菌叢

脂質(皮脂)

表皮ブドウ球菌ミクロコッカス等

皮膚固有の菌

善玉菌

A日常手洗い

B衛生的手洗い C手術時手洗い

角質層

○通過細菌叢:外からの汚れや菌は皮膚の表面に付着する。

○常在細菌叢:皮膚を守っている善玉菌(悪玉菌が増殖するのを防ぐ)

A日常的な手洗いとは:表面の汚れの除去を目的する。石けんと流水の手洗いで十分。

B衛生的な手洗いとは:汚れを落とすだけでなく外部からの付着微生物(通過細菌)を除去を目的とする。石けんで丁寧に洗い、さらに殺菌剤(アルコール等)を使用する。

C手術時手洗いとは:一時的にもともと生息している微生物(常在細菌)も取り除く。(日和見善玉菌対策)

汚れ

手荒れでここまで菌が入る

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手洗いの効果は3つ ①持ち込まない②拡げない③付けない

手洗いの徹底には

洗いやすい手洗い環境の改善を ①泡立ちの良い液体石鹸(薄め過ぎ、泡立ち悪い×)

②ペーパータオル(下に引きぬく、ハンドドライヤーは△)

③ペーパータオル用ゴミ容器(フタ無、余分な動作をしない)

④噴霧式のアルコール消毒(握るものより据え置き型を)

⑤手洗い器や周辺の清掃を徹底する(周辺から汚染される)

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☆各5回ずつ

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ペーパータオルの活用を

ペーパータオルは水分と一緒に大腸菌も減らす

0

1

2

3

4

5

6

未処理 石けん1回洗い ペーパータオル アルコール

回収菌数の対数値lo

gC

F/

片手・大腸菌塗

布後

資料:学校給食調理場における手洗いマニュアルより(20年3月発行)

検出限界まで落とせる

50万

5千

十以下

石けんで洗うだけで100分の1に、99%減らせる

ペーパータオルで50分の1に減らせる

タオルの使いまわしは拭き取った分の菌が蓄積してしまいます。

片手についている菌数

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加熱する・やっつけるには カキなど二枚貝のノロウイルスに対しては

85℃~90℃で90秒間の加熱

(二枚貝以外は75℃1分で良い) • 加熱による殺菌・消毒(加熱が可能なものは)食品・食器・器具類。自動洗浄機、食器消毒保管庫も有効

• 加熱できないものは次亜塩素酸ナトリウム(200ppm)による消毒、金属や清潔な部分はアルコールも可

• 調理台や勤務中に手の触れるところすべて

• 噴霧するのは有効か⇒噴霧だけではだめ、全体を湿らせる必要がある。(噴霧はすきまだらけ)

• 手指は塩素消毒できない⇒手荒れは最悪事態

Page 61: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

• 腸管出血性大腸菌 • サルモネラ • ウエルシュ菌 • ヒスタミン • ソラニン(じゃがいも)

ノロウイルス以外で 学校給食で注意すべき食中毒

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学校給食施設での食中毒、原因物質と原因食品 発生年月日 病因物質 患者数 原因食品2016年12月13日 ノロウイルス 197 マロニーサラダ2016年11月17日 ソラニン 7 ゆでジャガイモ(料理実習)

2016年9月9日 溶血性レンサ球菌 140 ブロッコリーおかか和え(消防学校)2016年6月3日 ウエルシュ菌 65 坦坦ソース

2016年5月21日 ノロウイルス 145 不明2016年2月24日 ウエルシュ菌 18 不明2016年1月16日 ノロウイルス 27 不明(幼稚園給食)2015年6月9日 ヒスタミン 231 アジフライ

2014年4月22日 ノロウイルス 19 不明2013年11月15日 ヒスタミン 26 いわしつみれ団子汁2013年11月12日 ノロウイルス 178 不明2013年6月28日 ノロウイルス 47 不明2013年1月31日 ノロウイルス 292 不明2013年1月23日 ノロウイルス 7 寿司2012年11月4日 ノロウイルス 73 不明2012年2月4日 ノロウイルス 78 背割りパン2011年6月9日 ヒスタミン 12 かじきのみそチーズ焼き

2011年2月25日 サルモネラ属菌 219 もやしのナムル 2011年2月9日 サルモネラ属菌 1298 ブロッコリーサラダ

Page 63: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

腸管出血性大腸菌

潜伏時間:2日から7日(平均3~5日) 症状:通常は水様下痢と38℃以下の発熱

重症化すると激しい腹痛・血便、溶血性尿毒性症候群

牛レバ刺し、牛肉、サラダ、貝割れ大根、シーフードソース、シカ肉、キャベツ、白菜漬け、キムチ、日本そば、メロン、キュウリのゆかり和え、冷やしキュウリ

O157は牛の腸内にいる 牛の糞からいろいろな食品・水等を汚染

するのでどんな食品でも起きる ノロウイルスと同様の対策を

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老人ホームの給食で提供された「キュウリのゆかり和 え」を原因とする腸管出血性大腸菌O157食中毒

1.発生日:2016年8月25日~

患者数:84名(喫食者数219名) 死者数:10名

病因物質:腸管出血性大腸菌 O157(VT1,2産生)

2.概要:千葉県及び東京都の老人ホームにおいて、8月22日に同 一の給食事業者が提供した食事を原因とする腸管出血性大腸菌O157による食中毒が発生。調査の結果、メニューの中の「きゅうりゆかり和え」から腸管出血性大腸菌O157が検出され、原因食品と断定された。

3.対応:原因施設ではキュウリの殺菌工程がなかったことから、厚生労働省は都道府県等に対し、高齢者等に食事を提供する施設への指導にあたり、野菜を加熱せずに供する場合には、次亜塩素酸ナトリウム等による殺菌を徹底するよう指導を要請。

*フードチェーン全体の衛生管理(生産現場の管理徹底が課題)

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65

サルモネラは2010年の事件の教訓を

★岩見沢市ブロッコリーサラダ★群馬県もやしナムルの事例

• 調理済み食品に使用する機器・機材の洗浄・消毒不足 o 回転釜・釜の蓋、アームやヘラに菌が残る可能性がある

• 洗浄が衛生の基本

• マニュアルだけでは対応できない(想定外には) o マニュアルに記載がなければ対応しない(できない)?

o 調理場の作業すべてがマニュアルに書いてあるわけではない

• 二次汚染(加熱後の汚染)を防ぐことが重要 o 調理済み食品を手指や容器具などで汚染しないこと

• サルモネラ・エンテリティディスは少量感染する

Page 66: ノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのかsasai/sinagawaku2017.3.28.pdfノロウイルスはなぜ繰り返し 流行するのか ー予防の徹底はどこまで、

ウェルシュ菌食中毒(当日調理でも起きる) ウェルシュ菌の特徴

• 芽胞(ガホウ)を作る→芽胞状態では100℃1時間でも生き残る

• 嫌気性菌(空気のないところで増殖)、加熱調理品は空気が少なく、加熱で他の菌が殺されて、ウェルシュ菌のみが増える

• 大量の菌が腸内に入って芽胞を作る時に毒素を出す(生体内毒素型)潜伏時間が6時間から24時間(8~15時間)発育は15℃以上で、適温は30から47℃(43から46℃)

• 食品中にウェルシュ菌が出した毒素の摂取による毒素型(食物内毒素)は少ない。(毒素が胃酸で壊されるため)最近は短時間で発症する事例が起きている。3時間ほどの放置でも起きる(増殖が速い、腸炎ビブリオと同じくらい)

予防方法 • 十分な加熱と調理後の温度管理が最も重要(前日調理は危険)

• 調理済み食品の迅速な提供、「肉じゃが」は3時間の常温放置

• 再加熱は最初から煮込むつもりで、十分な加熱

原因食品 • カレー、シチュー、グラタン、スープ、スープ煮、坦坦スープ

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• 原因食品は赤身(血合いの多い)魚 マグロ・カジキ・アジ・サバ・イワシ・サワラ・サンマ・ブリ

• 鮮度の悪い魚、再凍結した魚

予防するには • 魚介類は信頼できる食品事業者から仕入れる、納入時の検収品温の確認も重

要(安いからといって安易に仕入れない) • 魚は(特に赤身魚)常温に放置する時間をできるだけ短くする

• 冷凍魚介類は必要量だけ解凍する(再凍結しない) • 原材料にヒスタミンが蓄積している場合があるので、赤身の魚料理は店長等

が試食する(花粉症がある人?)

ヒスタミンとは • 赤身の魚のたんぱく質ヒスチジンから腐敗細菌(モルガネラ菌)がヒスタミンを作る。最近の研究で5℃で増殖しヒスタミンを産生する低温好塩菌もある。

• 加熱しても分解しない • 症状は30~60分して顔面紅潮、酩酊感、頭痛、じん麻疹

ヒスタミン食中毒

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学校給食でのヒスタミン食中毒の教訓的事例

• 09年1月21日、札幌市の小学校、摂食者512人で患者は279人、原因食品は「マグロのごまフライ」でした。症状はかゆみ、発疹、しびれ等。

• 原材料は、キハダマグロで、インドネシア産の「加熱用黄肌ロイン冷凍品」で08年8月12日に輸入したもの。 o 参考事例:08年8月26日輸入のインドネシア産加熱用黄肌ロイン冷凍品で、08年10月8日千代田区の社員食堂(マグロのマヨネーズ焼き)で16人が、08年11月22日に江戸川区(マグロのケチャップ和え)の小学校で35人がヒスタミン食中毒となっている。

o 事例に学び、自分のところでも同じような事故が起こる可能性があるか点検することが重要

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ジャガイモのソラニン中毒

• ジャガイモに含まれるソラニンやチャコニンを一定量取り込むと腹痛、下痢、吐き気等の食中毒症状を起こす

• 一般的に100g当り200~400mg子供の場合はその10分の1の20mg程度で起きる

• ソラニンの含有量が多い部分は緑色の皮や芽の部分、小いもなど

• 花壇や学校の農場などで自家栽培したジャガイモで多く起きる

• 市販物でも起きる可能性がある。男爵イモよりメイクイーンが溜まりやすい