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創業者間のコンフリクト - いかに手を打つか - 20131130グロービス経営大学院 教員 山中礼二

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創業期の起業家にとって、「創業メンバー同士の衝突」は鬼門中の鬼門です。 この問題をどうコントロールすれば良いのか。正解はありませんが、自分の個人的な考えをまとめました。Startup Leadership Programでレクチャーをした時の資料を、公開します。

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創業者間のコンフリクト

- いかに手を打つか -

2013年11月30日

グロービス経営大学院

教員

山中礼二

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Startup Leadership Program ©Reiji Yamanaka. All rights reserved.

自己紹介

キヤノン株式会社

グロービス・キャピタル・パートナーズ

留学(ハーバード・ビジネス・スクール)

グロービス・キャピタル・パートナーズ

ヘルス・ソリューション(COO)

エス・エム・エス(事業開発)

グロービス経営大学院

● 創造ファカルティ・グループにてベンチャー系教科の講師、教材

開発、講師育成などを担当しています

-1-

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本日のテーマ

1. 創業時のパートナー選択:「友人か仕事相手か」

2. 共同創業者との持分分割:「投資金額比例か、勤務時間比例か」

3. 遅れて参加した経営メンバーの処遇:「同一株価か、株価を上げるか」

4. 他の経営メンバーの処遇:「取締役か、執行役員か」

5. 他の経営メンバーの働きが悪かった場合:退職してもらうか / 株はどうするか

-2-

起業家がしばしば直面する創業者間のコンフリクト。これにどう対処(または未然に予防)すれば良いか、皆さん一人一人の判断軸を持っていただくことを目的としています。具体的には、以下のテーマについて議論します。

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創業時のパートナー選択

1. 創業時のパートナー選択:「友人か仕事相手か」

2. 共同創業者との持分分割:「投資金額比例か、勤務時間比例か」

3. 遅れて参加した経営メンバーの処遇:「同一株価か、株価を上げるか」

4. 他の経営メンバーの処遇:「取締役か、執行役員か」

5. 他の経営メンバーの働きが悪かった場合:退職してもらうか / 株はどうするか

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どちらを選びますか?

あなたは、3Dプリンターで墓石を削り、安くカスタム生産するサービスを立ち上げ

ようとしています。創業パートナーとして、誰を選びますか?

-4-

• 中学・高校の部活動

(山岳部)の友人 • 前職で仕事をした経験のある取引先の知人

<Aさん> <Bさん>

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創業時のパートナー選択

1. 創業時のパートナー選択:「友人か仕事相手か」

2. 共同創業者との持分分割:「投資金額比例か、勤務時間比例か」

3. 遅れて参加した経営メンバーの処遇:「同一株価か、株価を上げるか」

4. 他の経営メンバーの処遇:「取締役か、執行役員か」

5. 他の経営メンバーの働きが悪かった場合:退職してもらうか / 株はどうするか

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持分分割

あなたはCEOに就任し、共同創業者はCTOの役割を果たすことになりました。

また、友人がもう一人、非常勤で手伝ってくれることになりました。

3人の出資額が同額だとして、あなたは以下のどちらの資本政策を取りますか?

-6-

• 3人が同一株価で出資し、同じ株数を持つ

• 非常勤の人だけ高い株価で投資し、少ない株数を持つ

<資本政策A> <資本政策B>

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資本政策A

-7-

資本政策Aにおいては、3人は同時期に、同額を出資し、同株数を得た。

2013年11月

株数

CEO 100 33%

CTO 100 33%

非常勤 100 33%

小計 300

株価 10,000 円

調達額 3,000,000 円

同額

同株価

同一株数

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資本政策B

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2013年11月 2013年12月

株数 株数

CEO 100 50% 100 45%

CTO 100 50% 100 45%

非常勤 0% 20 9%

小計 200 220

株価 10,000 円 50,000 円

調達額 2,000,000 円 1,000,000 円

同一金額だが、

株価が5倍

資本政策Bにおいては、非常勤の創業者は1ヶ月後に、5倍の株価で同一額を

出資した。

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遅れて参加した経営メンバー

1. 創業時のパートナー選択:「友人か仕事相手か」

2. 共同創業者との持分分割:「投資金額比例か、勤務時間比例か」

3. 遅れて参加した経営メンバーの処遇:「同一株価か、株価を上げるか」

4. 他の経営メンバーの処遇:「取締役か、執行役員か」

5. 他の経営メンバーの働きが悪かった場合:退職してもらうか / 株はどうするか

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遅れてきた役員

-10-

創業から7か月後に、フルタイムで参加した友人がCOOに就任しました。

投資額は、創業メンバーの半分(50万円)です。

株価を上げるべきでしょうか?

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遅れてきた役員(ケースA)

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2013年11月 2014年6月

株数 株数

CEO 100 50% 100 40%

CTO 100 50% 100 40%

COO 50 20%

小計 200 250

株価 10,000 円 10,000 円

調達額 2,000,000 円 500,000 円

投資額は半分

株価は同一

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2013年11月 2014年6月

株数 株数

CEO 100 50% 100 44%

CTO 100 50% 100 44%

COO 25 11%

小計 200 225

株価 10,000 円 20,000 円

調達額 2,000,000 円 500,000 円

遅れてきた役員(ケースB)

-12-

株価は2倍

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他の経営メンバーの処遇

1. 創業時のパートナー選択:「友人か仕事相手か」

2. 共同創業者との持分分割:「投資金額比例か、勤務時間比例か」

3. 遅れて参加した経営メンバーの処遇:「同一株価か、株価を上げるか」

4. 他の経営メンバーの処遇:「取締役か、執行役員か」

5. 他の経営メンバーの働きが悪かった場合:退職してもらうか / 株はどうするか

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他の役員を取締役にするか

共同で創業したCTO、そして遅れて参加したCOOを、取締役にするべきでしょうか?

それとも、取締役ではない執行役員のままに留めるべきでしょうか?

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他の経営メンバーとのコンフリクト

1. 創業時のパートナー選択:「友人か仕事相手か」

2. 共同創業者との持分分割:「投資金額比例か、勤務時間比例か」

3. 遅れて参加した経営メンバーの処遇:「同一株価か、株価を上げるか」

4. 他の経営メンバーの処遇:「取締役か、執行役員か」

5. 他の経営メンバーの働きが悪かった場合:退職してもらうか / 株はどうするか

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創業者間のコンフリクト(1/2)

共同創業者であるCTOのフットワークが重く、大企業的。書類ばかり作っていて、

自分で手を動かそうとしないと(CEOのあなたには)感じられる

率直に自分の考えは伝えたが、相手の行動は変わらない

このCTOをどうすればよいか

-16-

• 優秀なエンジニアを雇って、CTOの下につける

<オプションA> <オプションB>

• このCTOに「会社を辞めて欲しい」と伝える

• (それ以外の手段)

<オプションC>

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創業者間のコンフリクト(2/2)

あなたは、相手のCTOに解雇を言い渡せずに悶々としていた

そんな時、相手から「会社を辞めたい」と言ってきた

あなたは、CTOが保有する株式をどうしますか?

(直近の株価は、創業時の20倍になっていると仮定します)

-17-

<オプションA> <オプションB>

• (相手の希望に沿って)そのまま保有しておいてもらう

• 直近の株価で、自分

(または新たな社員) に譲渡させる

<オプションC>

• 創業時の株価で自分

(または新たな社員) に譲渡させる

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パネリストのご意見を伺います。

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パネル・ディスカッション

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1. 創業時のパートナー選択:「友人か仕事相手か」

2. 共同創業者との持分分割:「投資金額比例か、勤務時間比例か」

3. 遅れて参加した経営メンバーの処遇:「同一株価か、株価を上げるか」

4. 他の経営メンバーの処遇:「取締役か、執行役員か」

5. 他の経営メンバーの働きが悪かった場合:退職してもらうか / 株はどうするか

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山中的まとめ

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(これからお話することは、私の個人的な考え方です。

皆さんは、皆さんなりの判断軸で考えてみて下さい)

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総論

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起業の真の目的が、どこにあるかによって判断基準は変わってくる

快適な

ワークスタイル

金銭的

成功

社会的

インパクト

Relationships

(人的関係)

Roles

(役割分担)

Reward

(報酬)

• 自身の快適さ • 組織の有効性

• (自己持分最大化) • 組織の有効性

• 自身の快適さ • 組織の有効性

• (自己持分最大化) • 組織の有効性

• (しばしば) 人間的「公平」

• (人によっては) 個人報酬最大化

• 個人的報酬

の(長期的) 最大化

• (能力的) 公平

起業目的

最重要な判断軸(例)

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1)友人か仕事仲間か

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起業の目的

快適な

ワークスタイル

金銭的

成功

社会的

インパクト

• 気持ちの良い友人と一緒に楽しく働きたい

• 事業の成功のために、能力の高い仲間と創業したい

• 同上

典型的な判断基準

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創業期の株式配分

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二つの異なる考え方が存在する

米国的 アジア的

• 働いた時間に応じて、シェアを取るべき

• 汗水を流さない株主の持ち分は、大きく下げるべき

• 従って、友人 / エンジェルラウンドにおいては、創業者ラウンドよりも株価を上げるべき

• 資金提供額に応じて、シェアを取るのが自然である

• 資金を出してくれる友人やエンジェルに対して、高い株価をふっかけることはできない

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創業期の株式配分

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私は以下の原則をお勧めします。

投資額 保有すべき株式数

常勤CEO • 100万円 • 80%

非常勤株主 • 100万円 • 20%

投資金額が

イコールという

前提で…

常勤役員が

80%のシェアを取る

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創業期の株式配分

働かない人が自分と同程度のキャピタルゲインを得ることを、起業家が許せなく

なってくる

VCラウンドを2-3回やった後に、常勤役員陣が50%程度の株式を保有している

ことが理想的

● 株式市場は、「安定株主」が過半数を占めた状態でのIPOを好む

● 非常勤の株主やVCは、「安定株主」とはみなされない

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4:1の原則の理由は、下記の通りです。

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(参考)資本政策例

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創業 友人・知人 Seed-Ax VC1 VC2

創業者(常勤) 500 100% 500 83% 500 71% 500 59% 500 48%

創業者(非常勤) 100 17% 100 14% 100 12% 100 10%

Seed Accelerator 100 14% 100 12% 100 10%

VC 1 150 18% 150 14%

VC 2 200 19%

総計 500 600 700 850 1050

株価(円) 10,000 50,000 100,000 300,000 100,000

Pre-money (百万円) 25 60 210 85

資金調達額(百万円) 5 5 10 45 20

Post-money (百万円) 5 30 70 255 105

下記のケースでは、VCラウンド2回を経ても、常勤創業者陣が株式の5割程度を 保有している。

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(補足)

非常勤の創業時株主(友人・知人など)を入れる時には、人数を少なくすることをお

勧めします。理由は以下の通りです。

● 人数が多いと、将来重要な戦略的決定(増資、売却など)をする際に、株主の

了解を取る手間がかかる

● 個人株主の人数が多いと、将来投資家が投資をする際に、反社会勢力のチェ

ックをすることが困難になる

● 最悪の場合は…50人以上の投資家向けに投資勧誘を行うと、金融商品取引

法上「私募」ではなく「公募」と見なされ、投資家へのディスクロージャーのレベ

ルが一気に厳しくなる

何人が適切なのか…特に決まったルールはありませんが、上記の理由から創業

期の非常勤株主は、3人までに絞ることをお勧めします。

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株価を上げるか(社員の場合)

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創業期から参加した社員は、より大きなリスクを取っている。よりLater-stageに 参加した社員は、若干高い株価(またはストックオプションの行使価額)で 株主となるのがフェアと感じられる。 ただし、VCがつける株価と同一である必要はない。VCには優先株を購入させ、 社員には普通株を購入させる。株価が大きく違ったとしても、税務上問題はない。

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取締役か執行役員か

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二つの理由から、早期に取締役のポジションを与えるのは避けるのが得策です。 ①将来的に、より優秀な役員が参加する可能性がある。その時に、取締役を 「降格」させるのは痛みが大きい ②多くの役員を取締役に就任させれば、取締役会は健全な議論の場に ならない。(最大5人までに抑えて、議論しやすい環境を作るべき)

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退職してもらうか

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前述した通り、「起業目的」によって判断軸は変わってくる。 さらに言えば、「幸福」のレバーの所在が①良い友人関係にあるか、 ②金銭的 / 社会的成功にあるか、それによって変わってくる

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自己都合退職でもめないために

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退職者の保有株式が株主名簿に溜まってくるのは、望ましくありません。

①とっくにやめた退職者が

巨額のキャピタルゲインを得る

可能性がある→新しいメンバーの

モチベーションが下がる

②株主の数があまりに多いと、

VC投資時や上場時に障害になる。

(ロックアップをかけにくい)

以下の内容の「創業者間契約」 を結ぶことがお勧め

• 保有する株式は、一定の年数を経てVesting(処分可能)になっていく

• 自己都合で退職する場合には、Vesting前の株式を取得時価

格で、他の創業者に譲渡しなければならない

望ましくない理由

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サマリー

自分の「幸福」観、自分の「起業目的」に基づいて、自分なりの判断軸を持ちま

しょう

創業者間のコンフリクトは、しばしば発生します。皆さんが大望を持っているなら

ば、衝突を恐れるべきではありません

創業メンバーの退職が組織に悪影響を与えないように、互いに創業者間契約を

結ぶことをお勧めします

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End of Presentation

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山中礼二

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