functional dynamics of the hippcoamppus
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海馬神経回路の機能ダイナミクス
佐藤直行 公立はこだて未来大学
2014.4.22 第3回 全脳アーキテクチャ勉強会@新橋
目次
• 海馬とは? • ラット海馬とナビゲーション • ヒト海馬とエピソード記憶 • まとめ
脳における海馬の立ち位置
• 海馬傍回を介して大脳皮質と相互結合 • 評価系(側座核、扁桃体)と連携 • 視床前核を経て前頭葉(実行系)に出力 • “パペッツの情動回路”: 帯状回→海馬→視床下部→視床前核→
海馬損傷患者:H.M.
• 両側海馬の摘出 • 言語、運動など問題なし • 新しい記憶ができない • 古い記憶は大丈夫 • 短期記憶も大丈夫
http://ja.wikipedia.org/wiki/HM_(患者)
Scoville & Milner (1957)
海馬インデックス理論
• 海馬が新皮質の活動のインデックス(ポインタのようなもの)になる、という理論
• 主に、連合記憶を説明(記銘、保持、想起,、認識)
Fig 1A in Teyler & DiScenna (1986) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3008780
ラット海馬とナビゲーション
ラットのナビゲーション能力
• ショートカット、場所の学習、 “認知地図“ • ”刺激-反応学習”ではない
Fig. 16 in Tolman (1948); http://psychclassics.yorku.ca/Tolman/Maps/maps.htm
海馬破壊実験:ラット
• 海馬を損傷すると、場所を覚えられなくなる • 手続き型ナビゲーションの例(頭頂葉)
(Eichenbaum, 2001)
Morris water maze
図: Morris Water maze、 健常ラットは、すばやく視認できないプラットフォームの位置を学習するが、 海馬損傷ラットは、プラットフォームの位置を学習できない
海馬の構造
• 辺縁系(古い脳)、3層構造 • 秩序だった細胞構築 • 閉回路構造 • ヒトもラットも構造は大まかな構造は類似
Fig. 9 in O‘Keefe & Nadel (1978) The Hippocampus as a Cognitive Map, Oxford University Press. http://www.cognitivemap.net/
~300,000 cells
海馬閉回路(模式図)
海馬と新皮質の結合
• 海馬傍回を介して、新皮質の広い部位と相互に結合 http://www.cognitivemap.net/
場所細胞
• ラットの居る“場所”に選択的に活動する細胞
• 暗闇でも反応 • 視覚手がかりに影響される
http://en.wikipedia.org/wiki/Place_cell
O’Keefe and Dostrovsky (1971)
海馬認知地図仮説
• “海馬に地図が保持される“:他者中心座標 • 右:アトラクタ回路により、複数のマップを記憶するモデル
O‘Keefe & Nadel (1978) The Hippocampus as a Cognitive Map, Oxford University Press. http://www.cognitivemap.net/
Fig 4A in Samsonovich et al. 1997 http://www.jneurosci.org/content/17/15/5900.full
ヘッドディレクション細胞
• 場所によらず、ラットが向いた方向に選択的に活動する細胞 • 視覚手がかりに影響 • 暗闇でも反応
http://www.scholarpedia.org/article/Head_direction_cells
Taube et al. (1990)
Figure from McNaughton et al.(2006)
モデル
図: ヘッドディレクション細胞のリング状回路
グリッド細胞
• 六角格子上の位置に選択的に活動する細胞
• 空間の“距離”を計量的に表現
Figures from http://www.scholarpedia.org/article/Grid_cells
Hafting et al. (2005)
Solstad et al. (2006)
位相歳差現象
• 集団電位リズムに対する発火の位相が、遅れ→進みに連続的に変化する現象
• 場所細胞の通過順を、発火活動の順序に現れる。 • “時間圧縮”表現として、時系列の貯蔵に寄与する
http://www.scholarpedia.org/article/Hippocampus
O’Keefe & Recce (1993); Skaggs et al. (1996)
http://www.scholarpedia.org/article/Spike-timing_dependent_plasticity
時間非対称ヘブ側
位相歳差による時系列記憶
• 位相歳差によれば、秒~数十秒の時間スケールの時系列を記銘・想起できる.
Yamaguchi (2003); Sato & Yamaguchi (2003)
海馬閉回路(まとめ)
グリッド細胞 場所細胞
ヘッドディレクション細胞
位相歳差
ヒト海馬とエピソード記憶
記憶の分類
• 海馬は特にエピソード記憶に関わる • 例:幼児期の海馬損傷患者(Vargha-Khadem et al., 1997)
(Squire, 1992)
ヒト&サル、海馬関連課題
• 物の場所の記憶:エピソード記憶の実験モデル
King et al, 2003
Ekstrom et al., 2003
Malkova & Mishkin, 2003
Gaffan, 1996
図: 左に円筒、右にボール のような配置を覚える
図: イラスト様の背景の上に記号、背景と記号の組み合わせを覚える
図: バーチャル環境における物体の位置を覚える、想起テストは異なる視点から行う
図: バーチャル環境におけるナビゲーション課題
海馬傍回:物体視・空間視が収斂
• 物体視→周嗅野 • 空間視→海馬傍回皮質
• 海馬への皮質入力の2/3を担う
Squire & Zora-Morgan, 1991
object
space
Rolls et al., 2002
http://www.scholarpedia.org/article/Amnesia
図: 空間入力を連続的、物体入力を非連続的な入力とした連想記憶回路
海馬傍回場所領域
• 視覚シーンに選択的に反応する領域
• ランドマーク、風景などに反応
• 自己中心座標
Epstein & Kanwisher (1998)
図: いろいろな刺激図形に対する、海馬傍回場所領域の活動。
位相歳差による物場所記憶
• 位相歳差によれば、物場所記憶階層構造を記銘できる.この構造は選択的想起に役立つ.
Sato & Yamaguchi (2005)
“slow” to “fast”
海馬閉回路(まとめ)
グリッド細胞
場所細胞
ヘッドディレクション細胞
位相歳差
“物体”情報
“空間”情報