geb読書会 第3回「音程拡大によるカノン」
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前回までのあらすじ
形式システムと再帰
● 図と地○ 形式システムが到達できるところ・できないところ
○ 強力なシステムでは、両者の区別が曖昧になる。
● 無矛盾性と完全性○ 矛盾は、形式システムが解釈される時に発生する。
○ 真である定理がすべて作れるような形式システムは「完全」と言われる。
● 再帰的構造○ 自分自身を内部に含むような構造
○ どんな予定されたパターンも逃れ得る。
G
Gödel
E
Escher
B
Bach
ゲーデル, エッシャー, バッハ
あるいは不思議の環
Gödel, Escher, Bach: An Eternal Golden Braid
第3回
「音程拡大によるカノン」
[第6章] 意味の所在
DNAの例
● DNAと生物体は少しも似ていない。
○ 表現型を手に入れるのに、膨大な文脈が必要になる。
○ 細胞内の生化学的環境が丸ごと必要。
● 遺伝子型と表現型とをどう同型対応させれば良いのか不明。
○ 本書の段階から30年を経ているが、いまだ不明な部分が多いと思う ……。
(P172〜174)
メッセージの構造
● フレーム・メッセージ
○ メッセージがメッセージであることを伝える。
● 外部メッセージ
○ 内部メッセージがコード化されている。
○ 外部メッセージについてはメッセージ自身で記述できない。
● 内部メッセージ
○ メッセージの意味そのもの。
(P178)
知能は自然なものか?
● 普遍的な知能はあり得るのか?
● 「われわれは『知能』という言葉に値する一組の特性を、何か別の独立な方法で定
式化することを試みなければならない」(P185)
音楽とDNA● もし宇宙人がレコードを入手したら?
○ バッハの場合
○ ケージの場合
● もし宇宙人がDNAを入手したら?
○ DNAそのものの場合
○ DNAをデジタル化したものの場合
[第7章] 命題計算
命題計算とは?
● 「言葉の正しい使用法だけに基づく推論」(P194)
● 詳細はチートシート参照。
慎重居士と大胆信女
● 慎重居士
○ 命題計算で生成された定理は、解釈のもとでも真と言えるのだろうか?
● 大胆信女
○ すべての定理が正しくなることは明白です。
(P203)
証明と導出
● 「命題計算はある点で論証に近いが、その規則を人間の思考の法則と同一視して
はならない」(P207)
● 「ああ、こんな矛盾が生じたんだから、これからは何でも信じなくちゃならない」
(P208)
[第8章] 字形的数論
字形的数論とは
● Typographical Number Theory TNT
● 数論を表現できる形式システム。
○ 命題計算を中に含む。
(P214)
何かが欠けている
● 定理のピラミッド全体を要約して扱うことができない。(P229)○ ω-不完全、ω-矛盾(P231)
○ 矛盾とは異なる概念
○ ω-無矛盾であれば無矛盾
● 帰納規則でピラミッドを扱えるようになる。(P232)
ヒルベルトの計画
● 「もしわれわれがTNTの無矛盾性を、TNTより弱い推論のシステムによって何とか
論証できたのなら、われわれは循環論という非難を打ち破ったことになる!」
(P236)
● しかし……。
● 「『TNTの無矛盾性を証明できるほど十分強力なシステムは、少なくともTNT自身と
同じくらい強力でなければならない』したがって、循環論は避けられないのである」
(P237)
[第9章] 無門とゲーデル
禅とは何か?
● 「言葉と真理は両立できない、あるいは少なくとも言葉では真理はとらえられないと
いうのが禅の立場である」(P251)
● 参考文献
○ 鈴木大拙「禅」
○ 魚川祐司「仏教思想のゼロポイント」
二元論に対する禅の闘い
● 「二元論とは、世界をカテゴリーに概念的に分割することである」(P256)
● 「禅によれば、二元論の核心にあるのは言葉である」(P257)
● 「言葉では表現できないし、言葉なしでは表現できない」(P258)
ゲーデル数
● 形式システムを数字に写す。(P265)
● MIUシステムも算術化できる!(P266)
● 中心命題
○ 字形的規則は算術的規則で表現できる。 (P268)
● コードと陰伏的意味(P270)○ ゲーデル数は、数 (コード)であることと、内部の意味との 2つの捉え方がある。
TNT自身をゲーデル数で表す
● ゲーデル・コドン(P271〜273)
● TNTで生成できる定理か? という命題がTNTで表現できる。(P273)
● その否定の、TNTで生成できる定理ではないか? という命題も表現できる。
G● 「GはTNTの定理ではない」(P274)
● 「GはTNTの定理ではない」のゲーデル数 = G
● ゲーデル数GはTNTの定理か?○ 定理であるとしたら……。
■ ゲーデル数GはTNTの定理 → 「GはTNTの定理ではない」はTNTの定理
■ 矛盾
○ 定理ではないとしたら……。
■ ゲーデル数GはTNTの定理ではない → 「GはTNTの定理ではない」はTNTの定理ではな
い。
不完全性
● GはTNTの定理ではない。
● つまり、TNTではGが生成できない。
● にもかかわらず、Gは真である。
○ なぜなら、確かに「GはTNTの定理ではない」から!
● 真であるのに生成できない定理がある → TNTは不完全
次回予告
● 第4回 TNT実践編
○ 手を動かして色々証明してみよう!
○ コンピューターが使える人は、 CoqやAgdaを使ってみよう!
○ おすすめ参考文献
■ 結城浩「数学ガール /ゲーデルの不完全性定理」
■ 照井一成「コンピュータは数学者になれるのか?」
■ 前原昭二「記号論理入門」