h-sb工法設計・施工管理指針(同解説) cb工法協会...
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H-SB工法設計・施工管理指針 (同解説 )平成16年8月制定
平成19年9月改定
平成20年1月改定
平成22年3月改定
平成22年7月改定
CB工法協会〒 465-0043 愛 知県名古屋市名東区 宝が丘 289三 幸マンション 307
TEL 052-775-3673 FAX 052-778-2 099
愛 知 工業大学尾形素臣研究室〒 470-0392 愛 知県豊田市八草町八千草 1247
TEL 0565-48-8121 FAX 0565-48-0 030
BCJ評定-RC0204-02
H -SB工法設計・施工管理指針(同解説 )
平成22年7月
CB工法協会
目次
1 総則 ・・・ 1
2 材料および使用機器 ・・・ 3
3 管理体制 ・・・ 8
4 溶接作業と施工管理 ・・・ 9
5 溶接部の検査 ・・・ 15
6 継手の設計 ・・・ 23
付 則1 H-SB工法溶接技術検定試験 ・・・ 26
付 則2 鉄筋コンクリート用異形棒綱H-SB溶接部の
超音波探傷試験方法及び判定基準 (案 ) ・・・ 28
参 考文献 ・・・ 33
注 )本文中□枠内は解説
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1 総則
1.1 適用範囲
本指針は、鉄筋コンクリート構造物および鉄骨鉄筋コンクリート構造物における
JIS G 3112-201 0 「 鉄筋コンクリート用棒鋼」(以下鉄筋という)の熱間圧延異形
棒鋼 SD345お よび SD390の 呼び名 D19~ D51お よび SD490の D32~ D41を 鋼製の裏当てを
用いて半自動アーク溶接および全自動アーク溶接による狭開先溶接(以下H-SB
工法と呼ぶ)を行う場合に適用する。継手の範囲を表 -1.1に 示す。
本指針に記載なき事項は、日本建築学会「鉄筋コンクリート造配筋指針」および
日本建築学会「鉄骨工事技術指針」に準拠するものとする。
丸鋼 SR235を 使 用する場合は異形棒鋼に準ずる。 SD295は SD345に 準ずる。
全自動アーク溶接はCB工法協会「CBR-01」を使用する。
表 -1.1 H -SB工法の継手の範囲
種類 JIS G 3112-2010 「 鉄筋コンクリート用棒鋼」(鋼種) SD345 SD390 SD4 90
適 用鉄筋呼び名 D19 D22 D25 D29 D32 D35 D38 D41 (SD345)( 径種) D22 D25 D29 D32 D35 D38 D41 (SD390)
D32 D35 D38 D41 (SD490)
同 径継手の D19 D22 D25 D29 D32 D35 D38 D41 (SD345)範 囲 D22 D25 D29 D32 D35 D38 D41 (SD390)
D32 D35 D38 D41 (SD490)
異 径継手の 1サイズ D19+D22 D22+D25 D25+D29 D29 +D32範 囲 D32+D35 D35+D38 D38 +D41 (SD345)
D22+D25 D25+D29 D29 +D32D32+D35 D35+D38 D38 +D41 (SD390)D32+D35 D35+D38 D38 +D41 (SD490)
2 サイズ D19+D25 D22+D29 D25+D32 D29 +D35D32+D38 D35+D41 (SD345)D22+D29 D25+D32 D29 +D35D32+D38 D35+D41 (SD390)D32+D38 D35+D41 (SD490)
※ 異鋼種(異強度)の接合の場合は1サイズ違いまでとする。
ただし、 SD345と SD490は 含 まない。
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1 .2 用語
本指針の用語は JIS Z 3001-1 999( 2004) 「溶接用語」の用語の意味の他、次のご
とく定める。
①現場管理者(元請事業者等)
工事施工を総合的に管理する技術者。
②溶接管理技術者
H-SB工法の溶接施工を総合的に管理する技術者。
溶接管理技術者は、(社)日本溶接協会 WES 8103-200 8「 溶接管理技術者認証
基準」に基づいて認定する1級または2級の溶接管理技術者適格性証明書、また
は、 JIS Z 3841-1997( 2003) 「半自動溶接技術検定における試験方法及び判定基
準」に規定された技術検定試験に合格した技術証明書を有し、かつ、「H-SB
工法溶接管理技術者の検定試験」に合格した有資格者をいう。
溶接管理技術者は、溶接施工会社で該当する有資格者とする。CB工法協会で
は溶接管理技術者のための講習を随時行っている。
③品質管理者
溶接部の施工品質を検査する技術者。
H-SB工法の溶接作業者の証明書を有し、かつ、「H-SB工法品質管理者の
検定試験」に合格した有資格者をいう。
④超音波探傷検査技術者
日本非破壊検査協会 NDIS 0601-2000「 非 破壊検査技術者技量認定規程」による
有資格者をいう。
⑤溶接作業者
JIS Z 3841-1997( 2008) 「半自動溶接技術検定における試験方法およ判定基
準」に規定された技術検定試験に合格した技術証明書を有し、「H-SB工法技
量検定試験」に合格した有資格者をいう。
CB工法協会では随時溶接作業者の技量検定試験を行っている。H-SB工法
は特殊な溶接方法であり、溶接技術には鋼板の溶接技術を対象とした JISの 資
格は必ずしも適していない。しかし、溶接の基礎的知識は必要なので受験には
JIS取 得を条件とした。
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2 材料および溶接装置
2.1 鉄筋
鉄筋は JIS G 3112-2010「 鉄筋コンクリート用棒鋼」に規定されたもののうち SD3
45の 呼び名 D19~ D41、 SD390の 呼 び名 D22~ D41、 および、 SD490の D32~ D41と する。
鉄筋は使用前に、メーカーの発行する試験成績書または使用者の行う試験によって
JISの 規定を満足していることを確認するものとする。
SD490 は 極めて硬い鋼材なので、溶接継手の良好な曲げ延性は期待できない。
使用に当たっては鉄筋材料の十分な確認が必要である。
2.2 溶接装置
溶接装置は半自動アーク溶接機(溶接電源、ワイヤ送給装置、溶接トーチ)、全
自動アーク溶接機(溶接電源、ワイヤ送給装置、溶接トーチ、CBR-01)、溶
接治具、および付属用具であるケーブル類および電流計で構成される。
さらに炭酸ガスシールドアーク溶接であればガス供給装置(ボンベ、圧力調整器)
も必要となる。
溶接電源は ファジー制 御のものが適している。 鋼板の溶接と異なり、狭開先の中
に ワイヤを さし込まなければならないので、 ワイヤの エクステンション長 さが異なっても溶接
特性が変化しにくい ファジー制 御 は良好な溶接部を得ることができる。また、近
年ではデジタル制御の溶接機もあり、施工環境により溶接作業者が適宜選定を
して構わない。
2.3 溶接ワイヤ
溶接ワイヤは JIS Z 3312-200 9「 軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミ
グ溶接ソリッドワイヤ」に規定されたもののうち YGW11・ YGW12・ YGW13・ YGW18・ G5
5A4C3M1T・ G59JA1UC3M1T・ G69A2UCN2M4T・ G78JA2UCN4M4T、 および JIS Z 3313-200
9「 軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ」に規定された
もののうち T49J0T1-0CA-U・ T49J0T1-1CA-U・ T49J0T15-0CA- U・ T49J0T15- 1CA-U・ T5
50T15-0CA-U・ T59J1T1-1CA-N2M 1-U、 あるいは同等品とする。使用に当たっては鉄筋
強度との適合性を十分検討する。
JIS改 正に伴い高強度ワイヤ( 60~ 80kg級 )も JIS化 されたので追記した。
使用に当たっては溶接ワイヤ強度と鉄筋強度との適合性確認が必要である。
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表 -2.1 溶 接ワイヤ
ワ ワイヤ 溶着金属の機械的性質イ 記号ヤ 引張強さ 耐力 伸び 衝撃 シャルピー 備 考の MPa MPa % 試 験 吸収 エネ種 温度 ルギー規類 ℃ 定値 J
ソ YGW11 490~ 670 400以 上 18以 上 0 47以 上 50kg級リ YGW12 490~ 670 390以 上 18以 上 0 27以 上ッ YGW13 490~ 670 390以 上 18以 上 0 27以 上ドワ YGW18 550~ 740 460以 上 17以 上 0 70以 上 55kg級イ G55A4C3M1T 550~ 740 460以 上 17以 上 -40 27以 上ヤ
G59JA1UC3M1 T 590~ 790 490以 上 16以 上 -5 47以 上 60kg級
G69A2UCN2M4 T 690~ 890 600以 上 14以 上 -20 47以 上 70kg級
G78JA2UCN4M4T 780~ 980 680以 上 13以 上 -20 47以 上 80kg級
フ T49J0T1-0CA-U 490~ 670 400以 上 18以 上 0 27以 上 50kg級ラ T49J0T1-1CA-U 490~ 670 400以 上 18以 上 0 27以 上ッ T49J0T15-0CA -U 490~ 670 400以 上 18以 上 0 27以 上ク T49J0T15-1CA -U 490~ 670 400以 上 18以 上 0 27以 上スワ T550T15-0CA-U 550~ 740 460以 上 17以 上 0 27以 上 55kg級イヤ T59J1T1-1CA-N2 M1-U 590~ 790 500以 上 16以 上 -5 27以 上 60kg級
鉄筋の JIS規 格値強度に適合する溶接ワイヤは SD345に 対 して 50kg/mm 級 ワイヤ2
(神 戸製鋼 MG50な ど )、 SD390に 対して 60kg/mm 級 ワイヤ(神 戸 製鋼 MG60な ど )であ2
る。しかし、鉄筋は一般に JIS規 格値強度より高い強度を有しているので、こ
の様な組合せでは引張試験で溶接部破断となり易い。設計は規格値で行ってい
るので溶接部破断でも設計上の問題はないという考え方もあるが、溶接継手性
能判定基準で母材部分の破断とされているので、少なくとも溶着金属で破断し
ないことが好ましい。このため、鉄筋の JIS規 格強度よりワンランク上の強度
の ワイヤの 使用が求められる。 SD490に は 80kg/mm 級 ワイヤ(神 戸製鋼 MG80な ど )が2
使用されることになるが、溶接継手部の曲げ延性については実験結果で良好な
結果が得られなかった。
すなわち、
SD295- 60kg/mm 級 ワイヤ(神 戸 製鋼 MG60な ど )2
SD345- 60kg/mm 級 ワイヤ(神 戸 製鋼 MG60な ど )2
SD390- 60kg/mm 級 ワイヤあ る いは 70kg/mm 級 ワイヤ(神 戸製鋼 MG70な ど )2 2
SD490- 70kg/mm 級 ワイヤあ る いは 80kg/mm 級 ワイヤ(神 戸製鋼 MG80な ど )2 2
が 推奨される。
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2 .4 炭酸ガス
炭酸ガスシールドアーク溶接に使用する炭酸ガスは JIS K 1106-1990( 2006) 「液
化二酸化炭素(液化炭酸ガス)」の 2種または 3種の規格品とする。
表 -2.2 炭 酸ガス
シールドガス 成分
二酸化炭素 水分vol% vol%
炭酸ガス 3 種 99.9以 上 0.005以 下2 種 99.5以 上 0.012以 下
柱筋の溶接に 炭酸 ガス+ アルゴン混 合 ガスを 使用すると溶け落ちが少なく、良好な
溶接部が得られる。使用の際は適合する溶接ワイヤを選定する。
2.5 H-SB鋼裏当金
鉄筋径(呼び名)に適合した裏当て材としてH-SB鋼裏当金を使用する。ネジ
節鉄筋等一般鉄筋と形状が違う物は、適宜、溶接作業者が溶接施工に問題がないよ
う使用するH-SB鋼裏当金を選定する。使用するH-SB鋼裏当金はCB工法協
会が供給した物とする。
標準品での鉄筋径と適合H-SB鋼裏当金の関係を表 -2.3に 示す。形状寸法一覧
を表 -2.4に 示す。形状を図 -2.1に 示す。
2.6 標準H-SBホルダー(以下H-SBホルダーと呼ぶ)
鉄筋径(呼び名)に適合したH-SBホルダーを使用する。施工環境等で標準品
が使用できない場合は、適宜、溶接作業者がH-SB鋼裏当金が保持できるH-S
Bホルダーを選定または作成し使用する。
形状を図 -2.1に 示す。
2.7 標準H-SB鉄筋ホルダー(以下H-SB鉄筋ホルダーと呼ぶ)
溶接には適用鉄筋径に応じて、H-SB鉄筋ホルダーを使用する。施工環境等で
標準品が使用できない場合は、適宜、溶接作業者が鉄筋が保持できる鉄筋ホルダー
を選定し使用する。
形状を図 -2.2に 示す。
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表 -2.3 鉄 筋径と適合H-SB鋼裏当金
継手鉄筋径の組合せ H-SB鋼裏当金 マーキング呼び名 (刻印)
同 D19+D19 H-SB 19 SBD19径 D22+D22 H-SB 22 SBD22継 D25+D25 H-SB 25 SBD25手 D29+D29 H-SB 29 SBD29
D32+ D32 H-SB 32 SBD32D35+ D35 H-SB 35 SBD35D38+ D38 H-SB 38 SBD38D41+ D41 H-SB 41 SBD41
異 D19+D22 H-SB 22 SBD22径 D22+D25 D19+D25 H-SB 25 SBD25継 D25+D29 D22+D29 H-SB 29 SBD29手 D29+D32 D25+D32 H-SB 32 SBD32
D32+D35 D29+D35 H-SB 35 SBD35D35+D38 D32+D38 H-SB 38 SBD38D38+D41 D35+D41 H-SB 41 SBD41
注 :ネジ節鉄筋の接合においてはH-SB鋼裏当金も継手状態に合わせて選択して
良い。ネジ節面と平坦面では2サイズほど差がある。
表 -2.4 H -SB鋼裏当金形状寸法一覧表
注:H-SB鋼裏当金は表面に熱変化塗料が塗布されている。
この塗料は、溶接の熱に反応し塗料自体の色(シルバー)から黒色に変化する。
本工法では、この現象を用いて品質管理の補助手段とする。
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H -SB鋼裏当金 標準H-SBホルダー
図 -2.1 H -SB鋼裏当金および標準H-SBホルダー
注:H-SBホルダーは施工環境に応じてその性能を発揮する物を使用する。材質
・形状は問わない。
図 -2.2 標 準H-SB鉄筋ホルダー
注:鉄筋ホルダーはこの図に示す以外に各種用意されている。施工条件に応じて溶
接作業者が選定してよい。
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3 管理体制
3.1 管理内容
管理内容は次の分担による。
① 現場管理者 管理内容について溶接管理技術者と協議・決定
(元請け事業者等)
② 溶接管理技術者 品質管理者および溶接作業者の指導、管理
溶接施工品質全体の統括管理
検査結果の記録、保管
③ 品質管理者 溶接部の施工品質を検査
④ 溶接作業者 溶接条件の確認、溶接結果の確認
⑤ 超音波探傷検査技術者 溶接部の超音波探傷検査
⑥ 検査機関 大学または公的試験所
(破壊検査)
3.2 管理体制
溶接作業およびその管理は図 -3.1の フローチャートに基づいて行う。この場合の
管理の主体は建設会社である。
現場管理者
溶接管理技術者
鉄筋作業者 鉄筋組立
NG溶 接作業者 溶接前検査
OK
溶 接作業者 溶接作業
品質管理者 外観検査
NG超 音波探傷検査技術者 超音波探傷検査 鉄筋再加工
OK
検 査記録
作業終了
図 -3.1 管 理体制フローチャート
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4 溶接作業と施工管理
4.1 溶接管理技術者の施工管理
溶接管理技術者は鉄筋の組立・溶接等のそれぞれの作業工程において、常にその
状況を把握し、不適切な事項があった場合は、その作業に対し適切な指示をしなけ
ればならない。
4.2 溶接作業者の「H-SB工法溶接作業者資格証」の携帯
溶接作業者が溶接作業に従事するときは、「H-SB工法溶接作業者資格証」を
携帯しなければならない。表 -4.1に 技術資格と作業範囲を示す。
表 -4.1 技 術資格と作業範囲
資格区分 適用鉄筋 下向き(梁筋) 横向き (柱筋 )
鋼種/呼び名 D19~ D32 D35~ D41 D19~ D32 D35~ D41
F -2 SD345 SD390 SD490 ○ - - -
F-1 SD345 SD390 SD490 ○ ○ - -
H-2 SD345 SD390 SD490 - - ○ -
H-1 SD345 SD390 SD490 - - ○ ○
注:適用鉄筋の呼び名は鋼種により指定された範囲内で施工を行う。F-2は基本
級、F-2以外は専門級として扱い、F-1およびH-2は資格証に表示され
ている資格の範囲において施工が可能。
4.3 溶接作業用機材の管理
溶接作業用機材の管理は溶接作業者が行う。溶接作業用機材は常に十分整備され、
所定の状態に管理されなければならない。
4.4 継手設計の確認
□ 鉄筋の組立精度
鉄筋の組立は日本建築学会「鉄筋コンクリート造配筋指針」による。接合鉄筋
相互間の軸偏心量は 3mmか つ鉄筋径(呼び名)の 1/10以 下 とし、継手部の角折れ勾
配は 1/10以 下 とする。
□ 継手の位置
継手の溶接位置は設計図または施工図による。溶接位置または溶接個所を変更
する場合は現場管理者の承認を得る。
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P C コンクリート等 で、 コンクリート端 面 に極めて近い位置で溶接しなければならないこと
がある。この場合 コンクリート端 面 から少なくとも 10cmは 離れた位置で溶接する。こ
の程度の間隔で コンクリートへ の熱影響を少なくすることができる。
固定されていない鉄筋を溶接すると 0.5mm~ 1.0mm程 度の収縮が生ずる。固定さ
れている鉄筋は溶接後、収縮は少ないが、収縮応力が引張力として生ずる。こ
の値は最大 150N/mm 程 度である。2
工事現場での実測の結果ではPC コンクリート構 造で コンクリート面 か ら 45cm(接 合 される
鉄筋長さ合計で 90cm)露 出した鉄筋を溶接した場合収縮応力は 50N/mm 以 下と2
なった。この時、収縮変位が約 0.7mm程 度生じたが、PC コンクリート構 造の施工誤
差からみて許容される範囲であった。
実験室内で完全に拘束された鉄筋を溶接した場合、残留応力は2接合される鉄筋長さ合計 100cm 110N/mm2接 合される鉄筋長さ合計 75cm 170N/mm2接 合される鉄筋長さ合計 50cm 250N/mm
と なった。
溶接後には収縮変位か残留応力かのいずれかが発生するが完全に拘束するには
鉄筋降伏荷重以上の力が必要であり、実際の工事現場ではこのような拘束はお
きない。その代わり、前述のような収縮変位が発生する。これも最大で 1mm程
度であり、 コンクリート工 事の精度からみて許容範囲といえよう。
□ 継手部の曲げ加工の禁止
継手の位置は鉄筋の直線部とし、継手部の曲げ加工を行ってはならない。
4.5 溶接準備
□ 溶接作業空間
溶接作業に必要な空間を確保しなければならない。
□ 荒天時の溶接作業
暴風時、降雨時および降雪時は原則作業をしない。また、手元において 2m/sec
を 超える風の時は防風処置をする。室内作業等で作業の安全性、継手の品質に支
障が無いことが確認され、溶接技術者の承認を得た場合はこの限りでない。
□ 溶接部の清掃
溶接に先立ち、開先部の水分・ペイント・油脂・セメントペースト等の付着物
はウェス・ワイヤブラシ・グラインダ等で完全に除去する。
□ 溶接ワイヤの確認
溶接ワイヤは吸湿しないように、乾燥した場所に保管された物を使用し、錆の
発生した溶接ワイヤは使用しない。また指定の規格および銘柄であるかを確認し
なければならない。
□予熱
特に低温でない限り、予熱の必要はない。
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従 来、0℃以下では予熱を必要と規定していたが。溶接が鋼板と異なり、開先
内を連続して溶接するため急冷せず、日本国内の通常の建築工事が可能な気温
では予熱の必要はない。-10℃の溶接でも溶接部の異常な硬化は認められな
かった。結露や降霜による水分は溶接部に悪影響があるので除去する。
□ 防風用治具
5m/sec以 上 の風の時には、防風用フードを使用するかまたは作業スペースをシ
ートで覆う等の対策を行い手元において 3m/sec以 下となるようにする。
H-SB工法を使用するに当たって最も注意しなければならないのは、防風対
策である。防風 フード等 を使用し、開先内に風が吹き込まないようにしなければ
ならない。防風 フードは 現場の状況に合わせ適宜選択する。
図 -4.1 防 風用フードの例
注:施工時裏側は裏当金でおおよそ防風出来ているので、施工時表側の防風対策を
重点に行う。
4.6 開先加工
溶接作業に先立ち、鉄筋溶接部の開先が表 -4.2「 H-SB工法の標準開先形状と
標準ルート間隔」を満足していることを確認しなければならない。
鉄筋の開先は高速切断機等によって機械的に切断加工しなければならない。ガス
切断の場合は、開先面が平滑になるまでグラインダ等で研削しなければならない。
また、図 -4.2の ように逆開先にならないように鉄筋を保持する。適当な開先を確保
するために開先ゲージを使用する。
鉄筋切断を シア切 断とした場合、端面の曲がりが生ずる。曲がりの程度および曲
がりの方向によっては、 グラインダーに よる端面研削の必要が無い場合もある。 グ
ラインダー研 削は原則であり溶接作業者が品質を確保出来れば良い。
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表 -4.2 H -SB工法の標準開先形状と標準ルート間隔
継手鉄筋径の 溶接姿勢 開先形状 ルート間隔 開先角度組合せ R.G. 許 容誤差
同 D19+D19 0° ≦α≦ 5°径 D22+D22継 D25+D25手 D29+D29 下 向き、横向き I形 7~ 17mm
D32+D32D35+D35D38+D38D41+D41
異 D19+D22径 D22+D25継 D25+D29手 D29+D32 下 向き、横向き I形 7~ 17mm
D32+D35D35+D38D38+D41
D19+D25D22+D29D25+D32 下 向き、横向き I形 7~ 17mmD29+D35D32+D38D35+D41
注 :ルート間隔は標準値であり、溶接作業者の技量、作業条件で表の数値より狭
い場合や広い場合もあり得る。
図 -4.2 開 先の確認と開先ゲージ
R.G.
α α
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□ 鉄筋が拘束されている場合の開先の整合
PCコンクリートのように溶接しようとする鉄筋が両方固定されている場合は
以下の要領で開先の整合を行う。
A 組立鉄筋の場合
鉄筋を固定している結束線を解き鉄筋をずらす。
B PCコンクリートの鉄筋軸がずれている場合の処理
鉄筋を 150mmの 間隔で切断しグラインダー等で開先を処理した後、 所定の開先
寸法が得られる長さの鉄筋を使用し、両側を溶接する。
図 -4.3 P Cコンクリートの鉄筋軸がずれている場合の処理
PC コンクリート鉄 筋軸の整合は困難である。このため、予め精度良くPC部材の鉄
筋位置を作成しなければならない。
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4 .7 溶接治具の取り付け
□ H-SB鋼裏当金の確認
H-SB鋼裏当金は鉄筋径に適合していること、水分・ペイント・油脂等の汚
れがないこと、割れ等の損傷がないことを確認しなければならない。
□ 治具の取り付け
H-SB鋼裏当金は鉄筋径に応じたH-SBホルダー等によって確実に溶接部
に固定する。取り付け順序を図 -4.4に 示す。
① 開先の加工、開先の整合
② H-SB鉄筋ホルダーによる固定
③ H-SBホルダーによるH-SB鋼裏当金の固定
図 -4.4 治 具の取り付け
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5 溶接部の検査
検査とは溶接作業前と溶接作業後に行う継手部の外観検査、非破壊検査および破
壊検査をいう。
5.1 溶接作業前検査
溶接作業前検査は責任技術者もしくは溶接技術者が以下の項目について適当な治
具または目視によって行う。検査は全数検査とする。
① 鉄筋のルート間隔、開先角度、については規定の寸法、形状について検査する。
② 溶接端面に溶接に有害な異物の付着等の有無
5.2 溶接作業後検査
溶接作業後検査は責任技術者もしくは溶接技術者および超音波探傷検査技術者が
以下の項目について行う。
溶接作業後の継手の検査は「全数外観検査と抜取りによる超音波探傷検査」また
は、「全数外観検査と抜取りによる引張試験による破壊検査」を行うものとする。
□ 外観検査
外観検査は、溶接部のスラグ・スパッタを除去した後、責任技術者または溶接
技術者が目視によって行う。必要に応じノギス・スケール等を使用する。折れ曲
がりは目視により、また偏心については圧接用外観検査治具等を利用し、測定、
検査する。なお、本工法は熱変色塗料を用いた変色による検査を品質検査の補助
手段としている。
図 -5.1は 鉄 筋接合部の欠陥例であり、図 -5.2は 溶接表面欠陥の例である。
A 検査項目
① 有害と認められる欠陥の有無
② 溶接部の形状・寸法
③ 鉄筋中心軸の偏心・折れ曲がり
B 合否判定
不合格項目を次に示す。
① スラグの巻き込み・ピットおよびとけ込み不足のあるもの
② 余盛高さが鉄筋径より低いもの
③ 0.5mm 以 上の深さのアンダカットのあるもの
④ 割れのあるもの
⑤ 偏心が 3mmを 超え、かつ、鉄筋径(呼び名)の 1/10を こえるもの
⑥ 継手部の角折れ勾配が 1/10を 超えるもの
⑦ H-SB鋼裏当金の変色域が繋がっていないもの
H-SB工法は裏当金表面に熱変色塗料が塗布されており、溶接の熱により変
色が起き、溶接が適切に行われたか確認できるようになっている。
- 16 -
図 -5.1 鉄 筋の接合部の欠陥
図 -5.2 溶 接部表面の欠陥
図 -5-3 H -SB鋼裏当金の
塗料の変色域による欠
陥
注:⑤裏当金の溶け落ちは
超音波探傷検査で欠陥
が無ければ欠陥としな
い
偏心>3mm
または、
偏心>D/10
角折れ勾配>1/10
アンダーカ ッ ト ク レー タ ー
割れ
不溶接 ( 変色によ り確認 )
- 17 -
□ 超音波探傷検査
超音波探傷検査は超音波探傷検査技術者が行う。検査方法は抜取り検査とする。
特に指定のない場合は、1日1班が施工した数量(抜き取り率の関係から上限は
200箇 所程度)を 1検査ロットとし、 1検査ロットの 30%の 箇 所の継手を検査するも
のとする。
A 検査方法
超音波探傷検査は JIS Z 3062-2009 「 鉄 筋コンクリート用異形棒鋼ガス圧接部
の超音波探傷試験方法及び判定基準」による。
現在、 JISに 鉄筋溶接部の超音波探傷合否判定基準はない。このため、実験結
果の積み重ねにより、鉄筋溶接部の基準ができるまで、 ガス圧 接の基準を使用
することとした。検査基準案を付則2に示す。
B 合否判定
検査ロットより抜き取った箇所の全てが合格の場合にその検査ロットは合格と
する。そのロットの中の 1箇 所が不合格の場合は、さらに同検査ロットより倍数
の箇所を抜き取り、全ての箇所が合格の場合、その検査ロットを合格とする。抜
き取った箇所の 2箇所以上が不合格の場合には、その検査ロットを不合格とする。
□ 引張試験による破壊検査
破壊検査は抜取り検査とする。特に指定のない場合は、1日1班が施工した数
量(抜き取り率の関係から上限は 200箇 所程度)を 1検査ロットとし、検査ロット
あたり 3箇所の継手を検査するものとする。判定基準は表 -5.1「 鉄筋の種類と溶
接継手引張試験判定基準」による。
A 検査方法
JIS Z 2241-1998( 2008) 「 金属材料引張試験方法」に従って、引張試験を行う。
試験片は JIS Z 2201-1998( 2009) 「金属材料引張試験片」とする。
B 合否判定
全ての試験片が判定基準を満たした場合、その検査ロットは合格とする。 1本の
み不合格の場合はさらに 6本の継手を試験し、全数が判定基準を満たした場合に、
そのロットを合格とする。不合格が 2本以上の場合はそのロットを不合格とする。
表 -5.1 鉄 筋の種類と溶接継手引張試験判定基準
材料 判定基準
2SD345 引 張 強さの下限値 490N/mm
2SD390 引 張 強さの下限値 560N/mm
2SD490 引 張 強さの下限値 620N/mm
- 18 -
※ 判定基準の強度について
本指針による引張試験の判定基準は母材破断ではない。
(参考までに、 2007年 版建築物の構造関係技術基準解説書では「母材部分の破
断」としており、溶接部の影響を受けた母材部分(ボンド部及び熱影響部)の
破断を許容した表現となっている。)
規格値引張強度または規格値降伏点の 1.35倍 を SD345、 SD390、 SD490当 てはめ
ると
材料 規格値降伏点 判定基準 規格値引張強度 判定基準2 2 2 2N/mm N/mm N/mm N/mm
SD345 345 × 1.35=466 490 490
SD390 390 × 1.35=527 560 560
SD490 490 × 1.35=662 620 620
と なる。2つの判定基準で「または」となっているので、いずれか小さい方で
あり、鋼種ごとの判定基準は以下のとおりとなる。
材料 判定基準2N/mm
SD345 466
SD390 527
SD490 620
母 材破断を要求していないが、そのかわり使用場所には厳しい制限がある。
判定基準のうち規格値降伏点の1.35倍は降伏比75%を満足すれば、規格
値引張強度以下でも良い、ということである。規格値引張強度は、それ以上継
手強度は保証できなくても良い、ということである。
以上をもとにH-SB工法の判定基準を規格値引張強度と定めた。
H-SB工法引張試験判定基準
材料 判定基準2N/mm
SD345 490
SD390 560
SD490 620
- 19 -
引 張試験の判定基準は母材破断とすることが分かりやすい。
しかし、現在使用されている鉄筋はほとんど電炉鋼であり、鉄筋の JIS規 格値
を大幅に上回る引張強さを持っているものが多い。例えば 、SD345の 引張強さの2 2下 限値は 490N/mm で あるが、市販されている鉄筋の引張強さは 560~ 600N/mm
の ものが多い。 SD390で は 700N/mm 近 い引張強さを示す場合さえある。このた2
め、鉄筋規格値強度に該当する溶接 ワイヤを 使 用しても、相対的に溶接部強度が
低いことになり、溶接欠陥が無くても、引張試験で溶接部破断となってしまう
例がある。また、高強度の溶接 ワイヤを 使用しても、鉄筋が脆く ボンド部 破 断とな
ってしまう。この様な傾向は高炉材にはほとんど無く、不純物の多い電炉材の
やむえない性質である。電炉材で、 600N/mm ~ 650N/mm の 引張強さを持つ鉄筋2 2
の 溶接継手は溶接欠陥が無くても約 20%は ボンド部 破断となり、 650N/mm 以 上で2
は 50%近 く ボンド部 破断となる。 ボンド部 破断は溶着金属部破断とは異なるが、
一般的に溶接部破断と見なされる。このような鉄筋に溶接継手を母材破断を条
件に適用するには無理がある。
A級継手は必ずしも母材破断を要求していない。「溶接継手性能判定基準」に
おいて、「破断は母材部分とする」となっており母材破断と断定していない。
(成分的に母材である ボンド部 および熱影響部の破断を考慮している表現であ
る。)このため地震時に ヒンジと なる部分には使用制限がある。日本建築センタ
ーの「建築物の構造関係技術基準解説書」に定められている引張り強度の値は
母材規格値または降伏点の 1.35倍 以上である。判定にはこの基準を採用した。
5.3 不合格の場合の処置
□ 外観検査不合格
表 -5.2「 外 観検査不合格の場合の処置」に基づいて補修を行う。
□ 監理技術者との協議
不合格の場合の処置については、原則として監理技術者と協議の上決定する。
□ 検査不合格ロットの処置
検査不合格ロットは残り全数について超音波探傷検査を行い、不合格継手は全
て切除後、開先加工を行った後、再溶接する。再溶接された継手は、超音波探傷
検査によってその品質を確認する。
□ 補修溶接
A 溶接ワイヤ
補修溶接は、継手溶接に使用した溶接ワイヤと同種のものを使用する。
B 予熱
溶接部とその周辺を 200℃ 以 上に予熱し、ショートビード溶接にならないよう溶
接する。
- 20 -
表 -5.2 外 観検査不合格の場合の処置の一例
欠陥の種類 処置
スラグ巻き込み、ピット 欠陥を削除後、補修溶接を行う。溶け込み不足
余盛高さ不十分 鉄筋径を超えるまで補修溶接を行う。
深さ 0.5mm以 上 のアンダカット 補修溶接を行う。
割れ 溶接部を切除し、開先加工を行った後、再溶接を行う。
3mmあ るいは鉄筋径の 1/10を 超 溶接部を切除し、開先加工を行った後、再える偏心、勾配 1/10 以 上の角 溶接を行う。折れ
鉄筋溶接では、余盛が鉄筋の節による凹凸と重なり オーバーラップに なり易いこと
と、軽微な オーバーラップは 鉄筋強度に悪影響を及ぼさないこと、などから オーバーラッ
ップは 欠陥の対象からはずした。なお、溶接部は CBセラミックスに 覆われているので
大きな オーバーラップは 発生しにくい。また、異径継手においては オーバーラップ部 分の
ビードが 形成されていないと、初層不溶着になるおそれが高い。
5.4 検査記録と総合判定
□ 検査記録
検査の記録は次の事項について行い。その保管は責任技術者が行う。
① 年月日
② 工事名
③ 施工業者
④ 溶接作業者氏名
⑤ 検査員氏名
⑥ 鉄筋の種類および呼び名
⑦ 継手番号
⑧ 検査結果および補修内容
表 -5.3に 「検査一覧表」を、表 -5.4に 「CB工法検査記録表」を示す。
□ 総合判定
総合判定は提出された検査記録に基づいて責任技術者が判定する。
- 21 -
表 -5.3 検 査一覧表
検査 部位 項目 数 治具 検査員
溶接前 鉄筋端面 ルート間 隔 全数 ゲージ 責 任 技術者開先角度 目視 または異物の付着 溶接技術者
外観 溶接表面 アンダーカット 全 数余盛 目視割れ
溶接後 クレーター
鉄 筋の接 折れ曲がり ゲージ合 偏心 目視
非破壊検査 溶接部中央 ブローホール 抜 取り 超音波 超音波探傷スラグ巻 き 込 探傷検 検査技術者み 査
破壊検査 溶接部 強度 引張試 検査機関験機
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表 -5.4 H -SB工法検査記録表
H -SB工法検査記録表
工事名
溶接前検査 平成 年 月 日 溶接作業者名 JIS
外 観検査 平成 年 月 日 溶接技術者名 WES
非 破壊検査 平成 年 月 日 検査技術者名 NDIS
施 工場所 溶接前 外観検査 超音波 判定検査 探傷検査
溶接部 鉄筋接合部位 種類 番号 鉄筋径 表面
KEY PLAN
- 23 -
6 継手の設計
6.1 継手の性能
H-SB工法の継手の性能は(財)日本建築センター「 2007年 版 建築物の構造
関係技術基準解説書」の「 1の 2 溶接継手性能判定基準」に示された「A級継手」
基準を満足する継手として使用してよい。
鉄筋溶接継手はA級継手であり、設計の条件として「強度と剛性に関してはほ
ぼ母材並みであるが、その他に関しては母材よりやや劣る継手」と定義されて
いる。「その他に関して」は主に靱性であり、一般的には「伸び」で表現され
る。伸びが劣ると言うことは母材破断を要求していないと判断される。
6.2 継手の位置
継手の位置および集中度は「 2007年 版 建築物の構造関係技術基準解説書」の
「 2 鉄筋継手使用基準」に示された位置へ適用する。
6.3 かぶり厚さ
鉄筋継手部のかぶり厚さは、母材と同等としてよい。
- 24 -
表 -6.1 継 手使用個所および集中度( 2007年 版 建築物の構造関係技術基準解説書)
部材 集中度計 算 方 法 使 用 箇 所
種別 全数 半数
ルート1、 a 長期応力の大きい所 - ○ ○
ルート2-1、2-2 b 耐震上強度を要する所 - ○ ○
又は壁式構造 c その他 - ○ ○
ルート2-3 a 長期応力の大きい所 - ○ ○
b 耐震上強度を要する所 - × ○
c その他 - ○ ○
ルート3 a 長期応力の大きい所 - ○ ○
b 耐震設計上、降伏ヒンジ FA ↓ ↓
が形成される材端域の主 FB ↓ ○
筋及び1階の耐力壁脚部 FC ○ ○
の鉄筋 FD ○ ○
WA,WB ○ ○
WC,WD ○ ○
c 上記以外の材端域の主筋 FA ○ ○
FB ○ ○
FC ○ ○
FD ○ ○
WA,WB ○ ○
WC,WD ○ ○
d その他の鉄筋 FA ○ ○
FB ○ ○
FC ○ ○
FD ○ ○
WA,WB ○ ○
WC,WD ○ ○
表 -6.1「 継手使用個所および集中度」の用語と記号
① 全数、半数: 2007年 版 建築物の構造関係技術基準解説書による。
② ○:継手使用可
×:継手使用不可
△:鉄筋種別を特記事項により割り増すことにより使用可
↓:部材種別を○印の付いている部材種別と仮定し、構造特定係数を大きくと
って構造設計を行った継手使用可
③ 設計方法および部材種別は日本建築センター「構造設計指針・同解説」による。
注)「 2007年 版 建築物の構造関係技術基準解説書」の該当各項目を参照
- 25 -
ヒ ンジゾーンと継手位置
梁端部について、
柱面から梁せいの1 .5倍の領域をヒンジゾーンとし、
継手位置は、ヒンジゾーンを外れ継手に支障のない位置とする。
有効スパンが梁せいの3倍以下の場合は、継手を設けないか、
または、計算により検討し継手位置を決定する。
柱端部(柱脚部)について、
基礎梁(1階床)天端から柱せいの1 .5 倍の領域をヒンジゾーンとし、
継手位置は、ヒンジゾーンを外れ継手に支障のない位置とする。
有効階高が柱せいの1.5倍以下の場合は、継手を設けないか、
または、計算により検討し継手位置を決定する。
注:靭性設計の場合(参考文献 27) であり、学会論文では梁せい及び柱せいの
領域がヒンジゾーンとする考え方が多い。
実験等においては梁せいの0 .7倍および有効階高の1 /4倍の領域が
ヒンジゾーンとの結果が出ている。
いずれにしても、靭性を期待できない継手を設けるものとして
検討し、継手位置を決定する。
注:地中梁についての使用基準は無いが、ヒンジが発生する場合、上記を参考
に検討し、継手位置を決定する。
基礎梁
継ぎ手を設けてはいけない領域柱せいの1.5倍の高さまで
継ぎ手を設けてはいけない領域梁せいの1.5倍の長さまで
- 26 -
付 則1 H-SB工法溶接技術検定試験 H-160801制定
1 資格の区分
付表 -1.1に 資 格の区分を示す。
付表 -1.1 技 術 資格と作業範囲
資格区分 適用鉄筋 下向き(梁筋) 横向き (柱筋 )
鋼種/呼び名 D19~ D32 D35~ D41 D19~ D32 D35~ D41
F -2 SD345 SD390 SD490 ○ - - -
F-1 SD345 SD390 SD490 ○ ○ - -
H-2 SD345 SD390 SD490 - - ○ -
H-1 SD345 SD390 SD490 - - ○ ○
注:昇格の場合は下位資格の試験を免除する。
2 試験片の作成
試験用の鉄筋は SD345、 SD390ま たは SD490と し、試験片数は表 -付 1.1に 示す通りと
する。試験鉄筋の長さは 600mm以 上とする。
表 -付 1.2 試 験 片数
資格区分 溶接姿勢 試験鉄筋の種類 試験鉄筋の呼び径 数量
F-2 下向き SD345、 SD390ま たは SD490 D32 3
F-1 下向き SD345、 SD390ま たは SD490 D41 3
H-2 横向き SD345、 SD390ま たは SD490 D32 3
H-1 横向き SD345、 SD390ま たは SD490 D41 3
- 27 -
3 判定
引張試験の結果全て表 -付 1.2の 判定基準を満たした場合、合格とする。
表 -付 1.2 鉄 筋 の種類と溶接継手引張試験判定基準
材料 判定基準
2SD345 引 張 強さの下限値 490N/mm
2SD390 引 張 強さの下限値 560N/mm
2SD490 引 張 強さの下限値 620N/mm
4 資格証
試験の合格者にはCB工法溶接技術資格証を与える。資格の有効期限は資格取得
から3年間とする。
- 28 -
付 則2 鉄筋コンクリート用異形棒鋼H-SB溶接部の
超音波探傷試験方法及び判定基準 (案 ) H-071001
1.適用範囲
この規格は 、JIS G 3112-2010「 鉄筋 コンクリート用 棒鋼」に規定する棒鋼のうち異形棒
鋼(以下鉄筋という ) のH-SB溶接部の超音波探傷試験方法および試験結果の判
定基準について規定する。
2.用語の意味
この規格で使用する用語の意味は、 JIS G 3112-2010「 鉄 筋コンクリート用棒鋼」、
JIS Z 2344-199 3( 2008) 「金属材料の パルス反 射法による超音波探傷試験方法通則」
及び JIS Z 3060-2002( 2007) 「 鋼溶接部の超音波探傷試験方法及び試験結果の等級
分類方法」によるほか、次による。
(1) H -SB溶接 H-SB鋼裏当金を使用する鉄筋の炭酸 ガス狭 開先半自動溶接お
よび自動溶接。
(2) リブ間 距離 鉄筋の表面突起のうち、軸線方向の突起を リブと いい、この相
対する リブ外 面間の距離 (図 -1参 照 )。
(3) 透 過走査 相対する リブの 上に探触子を配置して、一方の探触子の超音波送
信 パルスを 他 方の探触子で受信する方法。
(4) 基 準 レベル 透 過走査で求められる透過 パルスの 最大値。
(5) 合 否判定 レベル 基 準 レベルに 基づいて、試験結果を判定するために定めた レベル。
(6) は ん (汎 )用 探傷器 基本表示の パルス反 射式超音波探傷器。
(7) 専 用探傷器 鉄筋CB溶接部の探傷のため簡易化した専用の パルス反 射式超音
波探傷器 (鉄 筋 ガス圧 接部用探傷機 )。
3.試験従事者
鉄筋H-SB溶接部の探傷試験に従事する者は、超音波探傷の原理および鉄筋H
-SB溶接部の知識をもち、かつ、その超音波探傷試験について十分な技量及び経
験をもつ者とする。
4.探傷器の機能及び性能
4.1 探 傷器の機能及び性能 探傷器は、次の機能および性能をもつものとする。
(1) は ん用探傷器の機能及び性能は、 JIS Z 3062-2009「 鉄 筋 コンクリート用 異 形棒鋼圧接
部の超音波探傷試験方法および判定基準」附属書Aによる。
(2) 専 用探傷器の機能及び性能は、 JIS Z 3062-2009 附 属書Bによる。
4.2 探 触子の性能 探触子の性能は、 JIS Z 3062-2009 附 属 書Cによる。
4.3 接 触媒質 接触媒質は、濃度 75%以 上の グリセリン水 溶液とする。
4.4 探 傷装置の点検 探傷装置は、次の点検を行い異常の有無を確認する。
(1) 点 検の種類及び時期
(1.1) 始 業時点検 始業時の点検は、探傷作業開始の5分前までに行う。
(1.2) 作 業中の点検 作業中の点検は、作業中1時間ごと、または1時間以内であ
っても少なくとも試験個所20箇所ごとに行う。
- 29 -
(1.3) 終 業時点検 終業時の点検は、探傷作業終了後速やかに行う。
(1.4) 定 期点検 定期点検は、1年に1回以上行う。
(1.5) 特 別点検 特別点検は、次の場合に行う。
(a) 探 傷装置の修理を行ったとき。
(b) 探 傷装置の一部を交換したとき。
(2) 点 検の方法
(2.1) 始 業時、作業中及び終業時の点検方法は、次による。
(a) 探 傷装置を正常に作動させる電圧であることを確認する。
(b) 透 過走査を行って基準 レベルが 設定できることを確認する。
(c) 基 準 レベルに 基ずいて合否判定 レベルを 設定した後、透過走査を行って透
過 パルスが 容易に受信できることを確認する。
(2.2) 定 期点検及び特別点検は、次による。
(a) は ん用探傷器の点検方法は、 JIS Z 2344-1993( 2008) による。
(b) 専 用探傷器定期点検方法は、 JIS Z 3062-2009 附 属書Dによる。
(3) 異 常の場合の処置 (1)及 び (2)の 点検で異常が発見された場合は次による。
(3.1) 点 検で異常が認められた探傷装置は、使用しない。
(3.2) 作 業中及び終業時点検で異常が認められた場合には、その点検の直前
の点検以降に実施した試験は無効とする。
5.探傷試験の準備
5.1 確 認事項 探傷試験を開始する前に、鉄筋の種類、呼び名及び リブ間 距離 (図 -1
参 照 )を確認する。
図 -1 鉄 筋の リブ間 距離
5.2 探 傷の時期 探傷試験は、溶接部の温度が常温になってから行う。
5.3 探 傷面の手入れ 探触子を接触させる リブ上 の探傷面に、 超音波の伝達を妨げ
るもの (浮 いた スケール、 コンクリート、 セメントペースト、 著しいさび、塗料など )が 存在する
場合には、これを除去する。
リ ブ
D
D : リ ブ間距離
リ ブ
- 30 -
6 .探傷装置の調整
6.1 測 定範囲の調整 測定範囲の調整は、次による。
(1) は ん用探傷器 はん用探傷器の場合には、探傷する鉄筋を用い、透過走査によ
って得られた透過 パルスを 表 示器の時間軸のほぼ中央に設定する。
(2) 専 用探傷器 専用探傷器の場合には、測定範囲のつまみを探傷する鉄筋の呼び
名に合わせる。
6.2 基 準 レベルの 設定 基準 レベルは 、探傷する鉄筋の製造業者、種類及び呼び名が異
なるごとに以下のように設定する。
(1) は ん用探傷器の場合には、透過走査によって求めた透過 パルスが 、最大になるよ
うに探触子の位置を調整する (図 -2参 照 )。 この透過 パルスの 高さを表示器目盛の
50%と なるように探傷器の ゲイン調 整器を調整し、この調度を基準 レベルと する。
図 -2 基 準 レベルを 得るための透過走査
(2) 専 用探傷器の場合には、探傷器の感度を最大とし、透過走査によって透過 パルス
を 求め、もっとも高い透過 パルスが 得られるように探触子の位置を調整する (図 -
2参 照 )。この透過 パルスの レベルで 探傷器の警報 ランプが 消え、次に 1dB感 度を高め
たとき警報 ランプが 点灯するように探傷器の ゲイン調 整器を調整して、この調度を
基準 レベルと する。
6.3 合 否判定 レベルの 設定 合否判定 レベルは 、基準 レベルよ り20dB感度を高めた レ
ベルと する。
圧接の合否判定 レベルと 異なるのは、欠陥の形成 メカニズムが 異 なるためである。
判定 レベルを 変え試験を行い、引張試験との整合が良かった レベルを 採用した。
送信探触子または受信探触子
送信探触子または受信探触子
鉄筋C B溶接部
- 31 -
7 .探傷試験
7.1 探 傷方法 鉄筋H-SB溶接部の超音波探傷は、 鉄筋の リブの 上で斜角2探触
子法によって行う (図 -3参 照 )。
図 -3 斜 角2探触子法
7.2 走 査方法および走査範囲 走査方法は、溶接部を挟む両側に探触子を置いて、
次のように行う (図 -4参 照 )。
(1) 最 初に、一方の探触子を溶接部に接近した位置①に置き、他方を溶接部に接近
する位置④と溶接部中心から約2Dの位置⑤の範囲で前後走査する。
(2) 次 に、一方の探触子を溶接部中心から1.4Dの位置②に置き、他方を溶接部
に接近する位置④と、溶接部中心から約2Dの位置⑤の範囲で前後走査する。
(3) 最 後に、一方の探触子を溶接部中心から約2Dの位置③に置き、他方を溶接部
に接近する位置④と、溶接部中心から約2Dの位置⑤の範囲で前後走査する。
図 -4 走 査方法
送信探触子または受信探触子
鉄筋H-S B溶接部
送信探触子または受信探触子
溶接欠陥リ ブリ ブ
探触子
探触子
探触子
鉄筋H-S B溶接部 探触子
溶接欠陥
リ ブ
約2D
約1.4D
約2D
固定① ② ③
④ ⑤
溶接部中心
D
- 32 -
7.3 走 査速度 走査速度は、 60mm/sec以 下とする。
8.合否判定 試験結果の判定は、次による。
(1) は ん用探傷器 溶接部の両側における探傷試験で、表示器の目盛りの 50%以 上
の エコーが いずれも検出されない場合は合格とする。
(2) 専 用探傷器 溶接部の両側における探傷試験で、警報 ランプが いずれも点灯しな
い場合は合格とする。
9.記録 探傷を行った後、次の事項を記録する。
(1) 工 事名
(2) H -SB溶接工事施工者名
(3) 溶 接方法
(4) 試 験年月日
(5) 試 験を実施した試験従事者の氏名
(6) 試 験個所
(7) 合 否判定結果
(8) 鉄 筋の製造業者名、種類及び呼び名
(9) 探 傷器の形式と製造番号
(10)探 触子の製造業者名及び製造番号
(11)そ の他参考となる事項 (指定事項、協議事項、抜取り方法など )
- 33 -
参 考 文献
1. 鋼材倶楽部「鉄筋のアーク溶接設計施工指針」昭和 47年 2月
2. ( 株)神戸製鋼所「KEN継手工法の設計施工要領書」昭和 62年 4月
3. 杉 田産業(株)「スギタエンクローズ半自動溶接施工法」平成 1年 6月
4. 日 本国土開発(株)「CB工法設計施工管理指針」平成 2年 9月
5. 日 本建築学会「建築工事標準仕様書 JASS6 鉄骨工事」昭和 63年 5月
6. 日 本建築センター「鉄筋継手判定基準 1982年 」
7. 日 本建築センター「構造設計指針・同解説」 1981年
8. 日 本建築学会「鉄筋コンクリート造配筋指針 1987年 」
9. 日 本建築学会「鉄骨工事技術指針 工場製作編 1987年 」
10. 日 本建築学会「鉄骨工事技術指針 工事場施工編 1987年 」
11. JIS G 311 2「 鉄筋コンクリート用棒鋼」
12. JIS Z 331 2「 軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッド
ワイヤ」
13. JIS Z 331 3「 軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイ
ヤ」
14. JIS K 110 6「 液化二酸化炭素(液化炭酸ガス)」
15. JIS Z 384 1「 半自動溶接技術検定における試験方法及びその判定基準」
16. WES 8103 「 溶接管理技術者認証基準」
17. NAKS-0001 「 鉄筋ガス圧接超音波探傷基準」
18. JIS Z 224 1「 金属材料引張試験方法」
19. JIS Z 220 1「 金属材料引張試験片」
20. 日 本建築学会「鉄筋コンクリート造配筋指針 2003年 」
21. 日 本建築学会「建築工事標準仕様書 JASS6 鉄骨工事」 2007年
22. 日 本建築学会「鉄骨工事技術指針 工場製作編 2007年 」
23. 日 本建築学会「鉄骨工事技術指針 現場施工編 2007年 」
24. 「 2007年 版 建築物の構造関係技術基準解説書」
25. 日 本建築学会「建築工事標準仕様書 JASS5 鉄筋コンクリート工事」 2009年
26. 日 本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算基準・同解説」 2010年
27. 日 本建築学会「鉄筋コンクリート造建物の靱性保証型耐震設計指針・同解説」
1999年
※基準類は新規に発行されたものを確認し順次追加する。
※規格類の年次は本文中で更新する。
(表示は「規格番号 -改正年(確認年)」とする)