hse方針 - jogmechse方針 hseマネジメントシステム(hsems) 2020年2月...

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JOGMECでは、推進する事業が労働安全衛生・環 境(Health Safety Environment)に関する著しいリ スクを内在していることを認識し、人身事故、健康障 害、環境汚染等の回避のため、直接業務のみならず、 出融資・債務保証先等の企業が実施する間接事業に ついても、企業と協働してリスク低減を図っています。 JOGMECは、環境の国際規格ISO14001と労働 安全衛生の国際規格 OHSA18001、それぞれの認証 を取得し、二つを統合したHSMSとして運用してい ます。環境物品調達の推進、電力や紙使用量の削減、 健康増進、職場環境改善等をはじめ、4 分野それぞれ の 探 鉱・開 発、備 蓄、鉱 害防止 支 援 事 業における HSEリスク低減に至るまで、役職員が一体となって 取り組んでいます。 〒105-0001 東京都港区虎ノ門 2 丁目 10 番 1 号 虎ノ門ツインビルディング TEL:03-6758-8000 FAX:03-6758-8008 http://www.jogmec.go.jp HSE 方針 HSE マネジメントシステム(HSEMS) 2020年2月

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Page 1: HSE方針 - JOGMECHSE方針 HSEマネジメントシステム(HSEMS) 2020年2月 資源・エネルギーの安定的な供給を この国のために、この地球のために

 JOGMECでは、推進する事業が労働安全衛生・環

境(Health Safety Environment)に関する著しいリ

スクを内在していることを認識し、人身事故、健康障

害、環境汚染等の回避のため、直接業務のみならず、

出融資・債務保証先等の企業が実施する間接事業に

ついても、企業と協働してリスク低減を図っています。

 JOGMECは、環境の国際規格ISO14001と労働

安全衛生の国際規格OHSA18001、それぞれの認証

を取得し、二つを統合したHSMSとして運用してい

ます。環境物品調達の推進、電力や紙使用量の削減、

健康増進、職場環境改善等をはじめ、4分野それぞれ

の探鉱・開発、備蓄、鉱害防止支援事業における

HSEリスク低減に至るまで、役職員が一体となって

取り組んでいます。

〒105-0001東京都港区虎ノ門2丁目10番1号 虎ノ門ツインビルディングTEL:03-6758-8000 FAX:03-6758-8008ht t p : //www.jogmec.go.jp

HSE方針

HSEマネジメントシステム(HSEMS)

2020年2月

Page 2: HSE方針 - JOGMECHSE方針 HSEマネジメントシステム(HSEMS) 2020年2月 資源・エネルギーの安定的な供給を この国のために、この地球のために

資源・エネルギーの安定的な供給をこの国のために、この地球のために

理事長メッセージ

 JOGMECは、石油・天然ガス、金属鉱物、石炭および

地熱の安定的かつ低廉な供給に資することなどを

目的に、資源全般をカバーする組織として業務を行って

います。

 石油・天然ガス分野では、主にわが国企業の行う

探鉱・開発プロジェクトへの支援のほか、メタンハイド

レート開発技術や原油回収率向上技術(CO2EOR)等

の技術開発を推し進めています。さらに2016年の法律

改正により支援機能を強化し、海外の資源会社の

買収や資本提携への支援および石油の探鉱段階から

開発段階へ移行した案件への追加支援も可能となり

ました。金属分野では、ベースメタルやレアメタルなど

の探鉱・開発への金融支援や技術支援および海底熱

水鉱床などの海底鉱物資源の調査を行うほか、過去

に閉山された国内鉱山の鉱害防止支援にも取り組ん

でいます。石炭分野では、探鉱・開発への金融支援や

技術支援のほか、国内石炭政策に関わる経過措置と

しての石炭経過業務も行っています。石油・天然ガス、

金属、石炭の探鉱活動においては、企業にとってリス

クの高い初期探鉱を直接JOGMECが行い、成功した

場合にはわが国企業に引き継ぐことも行っています。

 再生可能エネルギーの1つとして注目を集める地熱

分野では、金融支援や技術支援を通じて、わが国での

普及促進に取り組んでいます。また、供給途絶時等に

備える資源備蓄関連分野にも取り組んでおり、石油、

石油ガスおよびレアメタルについて国家備蓄を管理し、

緊急時における機動的な備蓄の放出を実行する体制

を整備しています。

 さて、世界を見渡すと、EV時代の到来やIT技術の

飛躍的な発展など、資源・エネルギーをめぐる情勢は

大きく変わりつつあり、さらに世界経済は地政学的な

不安定さや国際情勢の複雑化などの懸念材料を抱え

ています。このため、資源・エネルギーの太宗を輸入

に頼っているわが国にとって、その安定的かつ経済的

な確保は、欠かすことのできない要素となります。

 JOGMECは、2018年から新たな5年間の中期目標

期間(第4期)を迎えました。資源国との関係強化を

通じたわが国の資源外交の一翼を担いつつ、わが国

企業の資源権益獲得に向けたリスクマネー支援の

実施や資源・エネルギーに関する知識・情報センターと

しての機能の充実、技術開発と人材育成機能の強化を、

これまでにも増して、さらに推し進めていきます。

 日本への資源・エネルギーの安定供給確保という

JOGMECの使命はより一層その重要度を高めている

と感じています。幅広い取組を効率的に進めるため、

組織内の連携強化にとどまらず、わが国および資源国

の政府、政府関係機関ならびに国内外関係企業と積

極的に連携を図り、それぞれの取組に必要な機動的

な体制を創り上げてまいります。今後もより一層の努

力を続けてまいりますので、引き続き、皆さまのご理

解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

MESSAGE

理事長

2 3CORPORATE PROFILE CORPORATE PROFILE

Page 3: HSE方針 - JOGMECHSE方針 HSEマネジメントシステム(HSEMS) 2020年2月 資源・エネルギーの安定的な供給を この国のために、この地球のために

本部:〒105-0001東京都港区虎ノ門2丁目10番1号 虎ノ門ツインビルディングTEL.03-6758-8000 FAX.03-6758-8008

石油99.7%

銅鉱石100%

石炭99.3%

天然ガス97.5%

•タングステン•コバルト類

超硬工具

•レアアース•ネオジム•ジスプロシウム

希土類磁石小型モーター

•プラチナ•セリウム等

排気ガス浄化

•リチウム•コバルト等

小型二次電池リチウムイオン電池ニッケル水素電池

石油42.4%

石炭23.8%

新エネルギー・地熱等7.2%

水力3.3%原子力1.3%

天然ガス22% 出展:資源エネルギー庁

「総合エネルギー統計」

正式名

所在地

設立日 2004年2月29日

資本金 9,381億円(2019年5月)

支出予算

1兆8,997億円(2019年度)

職員数 615人(2019年7月1日現在)

組織概要

出典:国際石油開発帝石株式会社

一次エネルギー国内供給の割合(2017年度)

レアメタルの用途(自動車の例)

資源の海外依存度 資源は、その国の国民生活や経済の原動力となるもので

あり、その安定供給を確保することはすべての国にとって重

要な課題です。日本は、高い技術力を基盤とした先進工業

国であり、エネルギーを多く消費する生活を送っているにも

かかわらず、エネルギー資源や金属資源に乏しく、大宗を

輸入に頼っています。

 近年、資源国の政情不安や新興国の台頭により資源獲得

競争が激化しているため、輸入依存度の高い日本は、安定

的な資源の確保が将来的に大きく脅かされる可能性があり

ます。日々の暮らしの安寧や経済の発展のために資源を安

定して確保・供給することが、より一層重要性を増している

のです。

資源確保の重要性

 私たちの生活は、さまざまなエネルギー資源や金属資源

によって支えられています。電気やガスはもちろん、交通、

運輸、通信もエネルギーによって、また、自動車や電化製品

など生活に必要なあらゆる製品は金属資源が原材料となっ

ているのです。

 石油はガソリンとして自動車燃料に使用されるものが一

番多く、ほかには軽油やジェット燃料としての輸送燃料、灯

油として家庭等の暖房、重油として発電等、ナフサとしてプ

ラスチック等の原料に利用されています。また、熱量が高く

燃焼時のCO₂排出量が少ない天然ガスは、約60%が発電

用、約30%が都市ガスとして使われていますが、とりわけ東

日本大震災以降、発電源としての天然ガスの需要が急増し

ています。

 石炭は、約45%が発電用、約37%が鉄鋼製造用として使

われていますが、熱量当たりの単価が安い反面、CO₂排出

量が多いため、クリーンコールテクノロジーの開発が期待さ

れています。

 地熱は、安定的な再生可能エネルギーとして、今後開発

を促進し、ベース電源の一翼を担うことが期待されます。

 また金属資源は、工業製品に欠かせない重要な資源で

す。なかでもレアメタルは「産業のビタミン」と呼ばれ、自動

車、IT製品等の製造に不可欠な素材であり、日本の産業競

争力の要ともいえます。例えば高性能磁石にはレアアース、

液晶パネルの透明電極にはインジウムが使われています。

資源の用途

暮らし、産業、経済。私たちの毎日は資源・エネルギーと

強く結びついています。JOGMECは日本の資源・エネルギーの安定供給確保を使命とし、

関連するさまざまな業務に携わることで、日本の未来を支えていきます。

INDEXJOGMECについて

石油・天然ガス資源分野

金属資源分野

石炭資源分野

地熱資源分野

情報収集・提供

資源外交

沿革と組織

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6

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30

目 次

4 5CORPORATE PROFILE CORPORATE PROFILE

Page 4: HSE方針 - JOGMECHSE方針 HSEマネジメントシステム(HSEMS) 2020年2月 資源・エネルギーの安定的な供給を この国のために、この地球のために

資源の大部分を輸入に頼る日本では、諸外国での政情不安等により資源・エネルギーが供給不安定となり、生活や経済に大きな影響を及ぼす恐れがあります。JOGMECは不測の事態に備えて、石油・石油ガスおよびレアメタルの備蓄事業を推進しています。

資源備蓄

資源の開発は多くのメリットをもたらしますが、一方で周辺環境に与える影響も少なくありません。JOGMECは、休廃止鉱山に対して地方公共団体や企業等が行う鉱害防止事業への支援、そして地熱資源開発での環境調和支援により環境保全に努めています。

環境保全・鉱害防止

JOGMECは、さまざまな資源に関する情報収集、調査活動を継続的に行い、調査結果をデータベース化してホームページや報告会等で提供しています。最新情報をタイムリーに提供することで、日本企業の活動や国のエネルギー政策を支えていきます。

情報収集・提供

資源確保にあたっては、民間レベルのみならず政府レベルのネットワーク形成強化が必要不可欠です。JOGMECは国と連携しつつ資源国や国営企業等との協力関係の構築・強化を推進しています。

資源外交・国際協力

JOGMECの事業

JOGMECのミッション 世界的な資源獲得競争の激化など、資源・エネルギーを

めぐる国際情勢はますます厳しさを増しています。また、東

日本大震災以降、化石燃料の調達コストが増加し、日本の

経済を左右する課題となっています。こうした中、資源の大

宗を海外に依存している日本にとって、産業基盤の維持・強

JOGMECが担う3つの役割

資源開発の流れ

JOGMECが行う主なサービス

JOGMEC についてABOUT JOGMEC

1

JOGMECは、日本社会のために資源・エネルギーを安定的、経済的に供給していくという使命を持ち、国や地方公共団体、企業と連携して、日本の産業の発展と国民生活の向上に貢献する独立行政法人です。

経済産業省、資源エネルギー庁が立案した政策に沿った事業を実行

化、経済の繁栄、国民生活の安寧のために、資源の安定的

かつ低廉な供給の確保に向けた体制の構築や取り組みの

強化がより一層不可欠となっています。

 このため、JOGMECは以下の3つの役割を果たすことが

求められています。

資源・エネルギー開発の中心的機関としての役割

日本政府

 資源外交の積極的推進や、日本企業の海外資源開発に関する環境整備といった国の政策と連携し、企業のニーズを汲み取りながら、資源・エネルギー開発の中心的機関として、日本の自主開発に貢献します。

2セキュリティの最後の砦である備蓄を担う機関としての役割 安全かつ効率的な運営に十分留意しつつ、資源備蓄を着実に運営・実施するとともに、緊急時における機動的な備蓄の放出を実行する体制を整備します。

3環境保全の一翼を担う機関としての役割

 鉱害防止を支援する唯一の機関として、最新の鉱害防止技術の開発を続け、環境保全と効率的な運営の両立を図りつつ、鉱害防止支援業務を着実に実施します。

資源の新たな探査や開発が期待される国・地域を対象に、JOGMECは先行的な地質構造調査やJV調査等を実施。対象国との密接な協力関係を築くとともに、調査にかかるリスクを減少、日本企業による探査・開発の促進に貢献しています。

JOGMECのステークホルダー

資源の安定的で低廉な供給により、国民生活の安寧に寄与

日本国民

金融支援、技術支援、情報提供等を通じて 産業の発展に寄与

日本企業

協力関係の強化により、日本の資源権益獲得、

当該国の経済発展への貢献等、win-winの関係構築

外国政府 ・企業

 JOGMECの事業分野は大きく分けて「石油・天然ガス資

源分野」「金属資源分野」「石炭資源分野」「地熱資源分野」

の4つです。各分野における日本企業の活動を支援するた

め、調査・探鉱・開発・生産等の各フェーズにおいて、地質

構造調査、海洋資源開発、金融支援、技術開発・技術支援、

資源備蓄、環境保全・鉱害防止、情報収集・提供、資源外交・

国際協力等、さまざまなサービスを展開しています。JOGMEC

は、これら幅広いサービスの提供を総合的に担う唯一の機

関として、日本の資源・エネルギーの安定供給による国民

生活と経済の安定に貢献していきます。

調査 探 鉱 開発 生 産備 蓄

環境

地質構造調査

海洋資源は世界でも開発実績が少なく、実用化へのハードルは決して低くありません。JOGMECは、メタンハイドレートや海底熱水鉱床など、海洋資源の開発を促進するため、資源量調査や商業化に向けた技術開発を推進しています。

海洋資源開発

資源の探査・開発事業は莫大な投資が必要でリスクも高いものです。JOGMECは、探査・開発 等に必要な資金を出資等で提供するとともに、民間金融機関からの開発資金の借り入れに対して、債務保証を行っています。さらに、石油・天然ガス・金属部門では資産買収出資も行っています。

金融支援

資源は地上から見ることができないため、独自の技術が必要です。JOGMECは探査・開発をより効率的かつ環境に調和した形で行うための技術開発を進めています。また、技術支援として、操業現場や資源国等が抱える技術課題の解決、および資源国技術者への研修活動にも取り組んでいます。

技術開発・技術支援

6 7CORPORATE PROFILE CORPORATE PROFILE

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 外国政府や国営石油会社からの要請、またはJOGMEC

からの働きかけにより、地質調査・物理探査等の実施や既存

データの入手を行い、対象地域のポテンシャルを評価するの

が海外地質構造調査です。JOGMECは調査を通じ、対象

地域の技術的リスクを低減するとともに、日本企業に優先交

渉権等を引き継ぐことで、海外油・ガス田開発の促進を図っ

ています。2007年からは、公募により調査対象地域に知見

のある日本企業から案件を募集する知見活用型海外地質構

造調査制度を導入し、これまでに4件が形成されています。

海外地質構造調査は石油公団時代の1979年以降、28カ国

で合計64件実施されています。

 また、新規海外地質構造調査事業の発掘や対象地域の絞

り込み、日本企業への情報提供等を目的に、地質評価等事

前スタディも実施しています。

 国内石油・天然ガス基礎調査事業は、基礎的な地質情報

が不足している未探鉱地域等を主な対象として、先導的調査

活動を実施し、民間事業者による国内における探鉱・開発の

促進・活性化を図ることを目的としています。本事業は、石油・

天然ガスが胚胎する可能性のある地域や地質構造を特定・評

価するための基礎物理探査と、掘削作業により石油・天然ガ

スの賦存状況を確認するための基礎試錐からなります。

 令和元年度にJOGMEC保有の三次元物理探査船『たん

さ』が導入されたことを受け、「海洋エネルギー・鉱物資源開

発計画」に基づき、令和10年度までの10年間の中長期計画の

一部として、本邦周辺海域を対象とした基礎調査事業が展開

されています。

地質構造調査国内外での新たな探鉱や開発事業推進のため、先行的な地質構造調査に力を入れています。

海外地質構造調査

国内石油・天然ガス基礎調査

二次元地震探鉱調査(ケニア陸上) 物理探査船による調査(セーシェル海域)

総トン数13,782トン 全長102.2メートル 船幅40.0メートル 定員70名

令和元年度には三次元物理探査船『たんさ』が『資源』の後継として導

入されました。「たんさ」による三次元物理探査データの取得は、将来

的な日本周辺海域での石油・天然ガスの発見、開発に大きく貢献する

ものです。

資源探査で未来を拓く三次元物理探査船「たんさ」

9CORPORATE PROFILE

OIL and NATURAL GAS

JOGMECは、石油・天然ガスの安定供給確保を使命として、資源調査から探鉱、開発、生産、備蓄まで、幅広い分野で貢献しています。

石油・天然ガス資源分野

国内外で地質・物理探査データ等を取得・分析し、資源国政府や国営石油会社、日本企業に提供します。

石油・石油ガスの供給不足に備え、国の委託を受け備蓄基地の運営管理を行うほか、研究開発や国際協力など総合的な備蓄事業を推進します。

調査 探 鉱 開発 生 産備 蓄石

油・天然ガス

開発の流れ

日本の石油・天然ガス開発技術の中核機関として技術開発および活用を推進、新たな資源権益獲得に向けた幅広い活動を行います。

エネルギーに関する国内外の情報を収集・分析し、各種メディアやセミナーなどを通してタイムリーに提供します。

日本の民間企業による探鉱・開発事業等への出資や開発事業等への債務保証を行うことで円滑な事業推進を支援します。

地質構造調査 出資・債務保証 資源備蓄

情報収集・提供技術開発

石油・天然ガス開発の流れとJOGMECの事業

出典:国際石油開発帝石株式会社

出典:国際石油開発帝石株式会社

8 CORPORATE PROFILE

OIL ANDNATURAL GAS

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OIL ANDNATURAL GAS

JOGMECは原油回収率を向上させる技術開発を進めており、国内外でのパイロット実証テストを通じて、わが国の石油企業を支援するとともに技術基盤の整備に努めています。また、海外の石油開発会社、研究機関との共同研究を通じて、産油国における原油回収率向上技術の普及にも貢献しています。さらに、効率的な原油の生産を目指して、油ガス層の分布や性状を正確に把握するための油ガス層把握技術の開発にも取り組んでいます。

JOGMECでは在来型油ガス田開発で培ってきた技術を基礎に、シェール内の微細な孔隙を把握し流動を理解するコア分析技術や、岩石特性分析から導き出される水圧破砕の最適化、地震波データから岩石物性を読み取ることで生産性の良い地域(スイートスポット)を求める技術、マイクロサイスミックによる水圧破砕のモニタリングなどの技術開発を進めています。また、超重質油の輸送方法として、超臨界水を用いた重質油改質技術の開発を進めています。

 JOGMECは、石油・天然ガス開発における重点技術分野

として「原油回収率向上技術分野」、「海洋開発技術分野」、

「非在来型油ガス田開発技術分野」、「環境対策技術分野」

の4つを定め、各分野での技術力やサービスおよび制度の強

化、向上を図っています。

技術開発革新的な技術開発により、産油ガス国との関係強化、

国内フィールドへの操業技術支援、新規プロジェクト開拓への支援等に貢献しています。

重点技術分野 石油・天然ガスの探鉱・開発事業を行う場合、通常は個々

の事業を実施するためのプロジェクト会社が設立されます。

探鉱事業資金等はプロジェクト会社が新たに株式を発行し

て調達するので、JOGMECはこの新株発行の引き受けとい

う形で資金を供給します。なお、事業が成功し、商業的開発

決定後は順次JOGMEC保有株式を売却していく方針です。

2016年11月にはJOGMEC法が改正され、海外の資源会社

の買収や資本提携、また、開発事業に対する支援が追加され

ました。

出資・債務保証石油・天然ガスの安定供給に貢献する、

自主開発プロジェクトの資金調達を支援しています。

出資事業

 石油・天然ガスの開発事業資金や資産買収(油ガス田の

購入)等に関連する資金の借り入れに際して債務保証を行っ

ています。また、プロジェクトファイナンスによる資金調達に際

債務保証事業

※ 開発事業、天然ガスの液化および資産買収に必要な資金であって、 JOGMECが特 に必要と認める場合には債務の3/4を上限とする

事業資金を協調融資

債務保証スキーム(一例)

※探鉱事業および資産買収に必要な資金であって、JOGMECが特に必要と認める場合 には必要な資金の3/4を上限とする

JOGMEC

企業買収資産買収開発事業探鉱事業 天然ガスの液化事業

プロジェクト会社SPC:Special Purpose Company

出資 出資(上限は必要な資金の1/2※)

出資スキーム(一例)

しての完工保証や海外の資源会社の買収に対する支援も行

っています。

技術開発の重点分野

原油回収率向上技術分野 非在来型油ガス田開発技術分野

JOGMECでは、海洋開発技術(大水深、氷海含む)に関する研究開発を進めています。特に近年は、対象フィールドに適した開発コンセプトを構築するため、日本企業との共同スタディを積極的に実施しています。また、氷海域における探鉱開発に必要なセンサの開発、および氷況データを蓄積し、日本企業への情報提供等を実施しています。

海洋開発技術分野

JOGMECでは、老朽油田の増加に伴い、生産量が増大している随伴水に着目し、これを安価かつ有効利用するための技術開発を進めています。また、原油スラッジは原油タンクから排出後、産業廃棄物として処分されていますが、これに係る処分費用が甚大であることから、原油スラッジ削減技術の開発を進めています。

環境対策技術分野

金融機関

債務保証民間株主

債務保証(上限は債務の1/2※) JOGMEC

プロジェクト会社SPC:Special Purpose Company

企業買収※天然ガスの液化事業開発事業 資産買収

出典:JX石油開発株式会社

浮体式開発システムの挙動評価模型試験 原油スラッジ削減技術の概念図

CO₂-EORのパイロットテスト

3D FIB/SEM and Digital Image

民間株主

10 11CORPORATE PROFILE CORPORATE PROFILE

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OIL ANDNATURAL GAS

 日本の石油備蓄事業は、国の直轄事業として

実施している「国家備蓄」と、民間会社が法律に

より義務付けられて実施している「民間備蓄」、

産油国と連携して行っている「産油国共同備蓄」

の3本立て、石油ガス備蓄事業は、「国家備蓄」お

よび「民間備蓄」の体制で進められています。合

わせて約7,782万Kℓの石油※(国内消費量の約

208日分:2017年3月末現在)と、約286万tの石

油ガス※(国内消費量の約105日分:2017年3月末

現在)を備蓄しています。  ※製品換算

資源備蓄エネルギー資源のほとんどを輸入に頼る日本。

不測の事態に備えて、国家備蓄事業を推進しています。

石油・石油ガス備蓄

備蓄基地

技術ソリューション事業

 油ガス田の探鉱・開発・操業プロジェクトで遭遇する各種

の技術課題を、プロジェクトを実施する日本企業と

JOGMECとの共同スタディによって解決する事業が操業現

場技術支援事業です。この事業は毎年2回程度、提案公募形

式で募集しており、所要費用の50%を上限としてJOGMEC

が負担します。また、技術的な成果については可能な限り他

社にも開示し、同様の技術課題を抱える企業の問題解決に

向け、知見の共有化も図っています。

石油開発会社の操業課題解決への支援

 メタンハイドレートは永久凍土層や水深500m以深の海底

面下の地層等、低温高圧の環境で存在することが確認され

ており、資源として開発するための研究が進められています。

 JOGMECは、関連企業・大学・研究機関の協力を得て、

資源量評価分野の研究やフィールド試験、環境への影響の

調査などに取り組んでいます。2013年3月に実施した第1回

海洋産出試験のガス生産試験では、世界で初めて、約6日間

にわたり地層中のメタンハイドレートを分解することによる

ガス生産実験を実施しました。また、実験海域における短期

間のメタンハイドレートの生産挙動に係るデータを取得しま

した。さらに、将来の商業化に向けて、より長期間の生産挙

動を把握していくとともに、第1回試験で明らかとなったいく

つかの技術課題に対する解決策の検証を行うため、2017年

5月~6月にかけて第2回メタンハイドレート海洋産出試験の

ガス生産実験を実施しました。この実験では異なる出砂対

策を施した2本の生産用坑井を用いて、1本目の生産坑井で

12日間、2本目の生産坑井で24

日間のガス生産を確認しまし

た。

メタンハイドレート開発分野

テクノフォーラム展示会

第2回海洋産出試験の様子(2017年5月)出典:メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム

石油・石油ガス備蓄体系

産油国共同備蓄

国家石油備蓄

国家石油備蓄基地(10基地)

国家石油ガス備蓄基地(5基地)

民間タンク借り上げによる備蓄

国家石油ガス備蓄

産油国貸与タンクにおける在庫

民間石油備蓄 民間会社による備蓄

民間会社による備蓄

・ 日本産業界の新たなビジネスの創出に向け 産油国等向けプロモーションを実施

資源国企業等へのアプローチ―日本の技術を総結集し、資源国企業等のニーズに応える―

NOC/IOC

An Active Facilitator for Your Business Challenges

Seeds

JOGMEC

戦略企画(解決策立案)

↓技術開発プロセス↓

ソリューション(個別要素技術・技術パッケージ)

パートナー日本のハイエンド技術

コンピューター関連技術(ICT、ソフトウェア等)

機械関連技術(ロボット・精密・海洋)

エレクトロニクス関連技術(センサー、光ファイバー)

環境関連技術(水処理、有害物質除去)

ナノテクノロジー

バイオテクノロジー

材料・素材関連技術

操業問題(増油、増産)、環境問題(水、重金属、CO₂等)

ソリューション提供わが国との連携強化

Needs

Tech-solution

国家備蓄基地の概要

 JOGMECでは、培った技術力を武器に技術ソリューショ

ン事業を行っています。この事業を通じ、産油国等が抱える

技術的課題に対し、JOGMECと日本企業等が一体となって

解決策を提案していくことで、日本と産油国等との関係をさ

らに強化、日本のエネルギー安定供給確保に貢献していき

たいと考えています。

 この事業では、産油ガス国等資源国の技術ニーズを迅速

につかみ、従来からの技術に加え、日本企業が保有するハイ

エンド技術を使った課題解決のためのパッケージ提案を行

うほか、産油国等のニーズと日本のハイエンド技術のマッチ

ングを目的に、技術開発、ニーズ・シーズ分析、ソリューショ

ン研修/ワークショップ、テクノフォーラムを開催しています。

石油備蓄

石油ガス備蓄

民間株主

民間石油ガス備蓄

むつ小川原国家石油備蓄基地

12 13CORPORATE PROFILE CORPORATE PROFILE

※数字は施設容量

地上低温タンク方式

地下岩盤タンク方式

国家石油備蓄基地

地上・地中タンク方式

地下岩盤タンク方式

洋上タンク方式

国家石油ガス備蓄基地

苫小牧東部国家石油備蓄基地北海道苫小牧市および厚真町約640万kℓ

むつ小川原国家石油備蓄基地青森県上北郡六ヶ所村約570万kℓ

久慈国家石油備蓄基地岩手県久慈市約175万kℓ

神栖国家石油ガス備蓄基地茨城県神栖市約20万t

波方国家石油ガス備蓄基地愛媛県今治市波方町約45万t

志布志国家石油備蓄基地鹿児島県肝属郡東串良町および肝付町の地先約500万kℓ

福島国家石油ガス備蓄基地長崎県松浦市福島町約20万t

菊間国家石油備蓄基地愛媛県今治市菊間町約150万kℓ

秋田国家石油備蓄基地秋田県男鹿市船川約450万kℓ

七尾国家石油ガス備蓄基地石川県七尾市約25万t

福井国家石油備蓄基地福井県福井市および坂井市約340万kℓ

倉敷国家石油ガス備蓄基地岡山県倉敷市約40万t

白島国家石油備蓄基地福岡県北九州市若松区白島海域約560万kℓ

上五島国家石油備蓄基地長崎県南松浦郡新上五島町海域約440万kℓ

串木野国家石油備蓄基地鹿児島県いちき串木野市約175万kℓ

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 JOGMECは、世界各地で、海外の国営企業、非鉄メジャーやジュニアカンパニー等と共同で資源探査活動を積極的に展開しています。また、日本企業も共同探査の相手方としています。探査の結果、有望と確認されたプロジェクトについては、JOGMECの権益を日本企業に引き継ぐことで初期探査のリスクを軽減、日本企業の権益獲得を支援しています。プロジェクトの形成にあたっては、ベースメタル、レアメタル等を対象鉱種とし、地質ポテンシャル、鉱業投資環境および安全面、日本企業の関心度などを考慮し、戦略的に重点地域を選定しています。

・ JV(ジョイントベンチャー)調査

金属資源開発(陸上)の流れ

地質構造調査日本企業による探鉱・開発事業の促進を図り、

JOGMECは、世界各地の初期探鉱プロジェクトに参入し、鉱床賦存調査を実施しています。

権益確保支援

金属開発の流れとJOGMECの事業

リモートセンシング調査

地質調査 物理探査 ボーリング調査 鉱床の評価 開発準備

経過期間 3~6年 2~4年 2~4年

必要資金 1~10億円 10~50億円 200億円~

対象範囲 10万㎢程度 1,000㎢程度※空中物理探査は10万㎢程度

SADC諸国地質専門家への研修風景

 現在、JOGMECは、ボツワナをはじめとするSADC諸国でリモート

センシング技術を活用した鉱物資源探査事業と、SADC諸国の技術者

への資源探査技術研修を行っています。レアメタル等のポテンシャル

が高いSADC諸国におけるJV調査の実施を見据え、日本とSADC諸

国の鉱業分野における相互協力関係の構築・強化を推進しています。

※SADC:南部アフリカ開発共同体(南部アフリカの15カ国で構成される)

SADC※諸国とのJV調査を見据えてボツワナ・地質リモートセンシングセンター

METALS

海外において金属資源の初期探査活動を行う民間企業に対して、積極的な支援を実施します。

出典:JX金属株式会社出典:JX金属株式会社

レアメタルの短期的な供給途絶リスクへの対応を目的とした国家備蓄を行っています。

調査 探 鉱 開発 生 産備 蓄金

属開発の流れ

探査技術や金属回収技術、リサイクル技術の開発を行うとともに、操業現場ニーズに対する各種技術支援を実施します。

民間企業の金属資源開発への取り組みを補完・支援するために鉱業関連情報の収集・分析・提供を実施しています。

鉱害防止事業を行う地方公共団体・企業等への技術支援や金融支援を通じて環境保全に貢献します。

探鉱事業に対する出融資や開発資金に対する債務保証等を通じて、民間企業による金属資源分野の取り組みを支援します。

環境保護

地質構造調査 出融資・債務保証 資源備蓄

鉱害防止情報収集・提供技術開発・技術支援

JOGMECは、日本の産業界発展に欠かせない金属資源の安定供給確保を担い、調査、探鉱、開発、生産、備蓄、リサイクル、そして環境保全まで幅広い分野で貢献していきます。

金属資源分野

金属開発の流れとJOGMECの事業

10㎢程度

14 15CORPORATE PROFILE CORPORATE PROFILE14 CORPORATE PROFILE

南アフリカ・ボーリング(試錐)の様子

METALS

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 メキシコの亜鉛ー鉛案件への探鉱融資、米国の亜鉛ー銅案件への探鉱出資、ブラジルのニオブ案件への資産買収出資などを行っています。現在、資産買収出資により獲得した権利に基づき、ニオブ、クロム、レアアースといった金属資源が日本に供給されています。

・ 主な実績

 日本企業が100%の権益を保有するチリの銅案件や、日本企業が100%の生産物販売権を保有するアルゼンチンのリチウム案件などに対して、債務保証による支援を行っています。

・ 主な実績

出融資・債務保証探鉱・開発事業や鉱山権益獲得を資金面からサポート。日本企業のリスクを分担するとともに、

資金調達の円滑化を図ります。

探鉱資金出融資・資産買収出資

金属開発の流れとJOGMECの事業

①レアメタル※1・ウラン②ベースメタル※2・金・鉄・グラファイト・フッ素・マグネシウム・シリコン・リン・カリウム

区分

対象地域

対象企業

限度額

対象鉱種

対象事業

金属鉱物産出を目的とする鉱業権者等であって、資本金1億円を超え、かつ常時使用する従業員が1千人を超える会社

銅、鉛、亜鉛、マンガン、金、タングステン

金利減免

国内における探鉱事業 海外における探鉱事業

7年以内(うち据置2年以内)

本邦法人又は本邦人若しくは本邦法人が出資によりその経営を実質的に支配している外国法人(なお、出資の場合、資金提供先は本邦法人が出資により経営参加している法人に限る)

探 鉱 融 資 資 産 買 収 出 資探 鉱 出 資

日本国内 海外全地域

①の鉱種:所要資金の80%以内②の鉱種:所要資金の70%以内

所要資金の50%以内。ただし、機構が単独で最大株主又は最大出資者とならない範囲(対象案件によって異なる場合がある)

所要資金の70%以内

償還期間

探鉱失敗時等は、以降の金利を全額免除

①の鉱種の探鉱失敗時等は金利の全額を、 ②の鉱種の探鉱失敗時等は金利の半額を免除

カントリーリスク(低)カントリーリスク(高)

所要資金の50%以内。ただし、機構が単独で最大株主又は最大出資者とならない範囲(ただし、大規模共同プロジェクトの場合は、所要資金の50%以内)

海外における開発・生産段階の事業

15年以内(うち据置5年以内)

保証比率 ①の鉱種:所要資金の各金融機関別債務の90%以内     ②の鉱種:所要資金の各金融機関別債務の80%以内

限度額

(1)保証人有りの場合の保証料率は、一律0.1%(2)保証人無しの場合の保証料率は、0.4%にカントリーリスクおよび事業リスクを勘案して加算(0.4~1.55%)保証料率

①レアメタル※1・ウラン②ベースメタル※2・金・鉄・グラファイト・フッ素・マグネシウム・シリコン・リン・カリウム対象鉱種

対象地域 海外全地域

対象事業 海外における鉱山開発事業

対象企業 本邦法人又は本邦人若しくは本邦法人が出資によりその経営を実質的に支配している外国法人(なお、出資の場合、資金提供先は本邦法人が出資により経営参加している法人に限る)

※1 レアメタル:マンガン、ニッケル、クロム、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル、アンチモン、リチウム、ボロン、チタン、バナジウム、ストロンチウム、希土類、白金族など

※2 ベースメタル:銅、鉛、亜鉛、ボーキサイト、すず

 日本企業による金属資源の探鉱事業を促進するため、

JOGMECは出資または融資により探鉱資金を提供していま

す。2010年度からは、開発・生産段階の鉱山権益取得を支

援する資産買収出資制度も加わりました。

海外開発資金債務保証 一般に、鉱山開発には莫大な資金が必要になります。

JOGMECは、日本企業が参画するプロジェクトにおいて、開

発資金を民間金融機関から借り入れる際に債務保証を行う

ことで、資金調達の円滑化に貢献しています。

探鉱融資の貸付金利は、JOGMECホームページに最新情報を掲示しています。

 JOGMECは、探査からリサイクルま

で金属資源開発の各段階において、技

術開発事業を推進しています。

 リモートセンシングとは人工衛星や航空機等に搭載したセンサーを用いて、地表面のデータを広範囲かつ迅速に取得する手段で、金属鉱床が分布する可能性がある地域を抽出するために使われます。センサーは、太陽光の地表反射光を測定する「光学センサー」と、マイクロ波を放射して地表からの散乱波を受信する「合成開口レーダー」の2種に大きく分けられます。 JOGMECはこれまで、光学センサーのデータを用いて熱水変質帯を抽出するための技術開発を実施するとともに、合成開口レーダーのデータを利用し植生地域の地質判読を実現してきました。今後は、185の観測帯を持つ光学センサー(ハイパースペクトルセンサー)を用いて、レアアース鉱物の識別など高精度情報の取得に向けた技術開発を進めていきます。

・ 探査の最前線で活躍するリモートセンシング技術

 新規鉱床の深部化により、電磁気、重力等の物理現象を利用して地下の状況を可視化・解析する物理探査の重要性が増しています。この手法のひとつに電磁気の性質を利用する「TEM法(時間領域電磁探査法)」があり、現在、鉱床探査に広く用いられています。 JOGMECは、このTEM法に、高温SQUID(超電導量子干渉素子)という高感度の磁気センサーを用いることで、探査深度と精度が向上する新しいTEM装置「SQUITEM」の研究開発を進めてきました。現在、小型・軽量で性能が優れた3号機が完成、JOGMECの探鉱プロジェクトなどに活用されています。

・ 地下深い鉱床を探るSQUITEM

TEM法測定装置(SQUITEM)3号機

探査技術開発

海洋鉱物資源調査

開 発 生 産 リサイクル探 査

開発・生産技術開発 金属資源リサイクル技術開発

チリ・アルゼンチン国境付近のASTER画像解析事例

ASTER可視近赤外画像高分解能画像

ASTER短波長赤外画像変質岩がピンクや緑色で示される

ASTER比演算画像鉱物が各色で示される

探査技術開発1

技術開発・技術支援探査から開発、生産、リサイクルまで、多角的な技術開発・技術支援が

金属資源の安定供給を支えています。

金属資源開発フローと関連技術開発

14 CORPORATE PROFILE16 CORPORATE PROFILE 17CORPORATE PROFILE

METALS

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鉱害防止地方公共団体、企業等の鉱害防止事業を多方面から支援し、環境保全に貢献します。

鉱害防止事業実施者に対する支援

金属開発の流れとJOGMECの事業

 かつて有数の鉱山国であった日本には全国に5,000カ所

以上の休廃止鉱山が存在し、そのうちの約100カ所は現在も

鉱害防止対策が必要とされています。JOGMECはこれら鉱

害防止対策を実施する地方公共団体や企業等に対して、昭

和48年から技術面あるいは情報面、資金面など、さまざまな

方面から支援を実施し、国民の健康の保護および生活環境

の保全に貢献しています。

金属資源保有国への技術支援

 これまで日本が培ってきた鉱害防止の経験や技術を生かし、金属資源保有国の持続可

能な発展と、日本国との関係強化を目指して、海外でのセミナーや、専門家の派遣による現

地指導などの技術支援を実施しています。

JOGMEC鉱害防止の概要

 岩手県八幡平市にかつて東洋一の硫黄鉱山と称された旧松尾鉱山があります。JOGMECは岩手県から受託して、ここから大量に発生する坑廃水の中和処理施設を運営管理し、35年以上にわたって北上川の清流化に貢献しています。

・ 旧松尾鉱山新中和処理施設の運営管理 休廃止鉱山における鉱害防止対策の効率化・費用低減化等のための技術開発を行っています。 特に近年では植物や微生物の働きを利用した自然力活用型坑廃水処理技術の開発に力を入れており、近い将来の実用化に向けて着実に開発は進展しています。本技術が導入されることにより、坑廃水処理コストの削減が期待されます。

・ 鉱害防止のための技術開発

 二度にわたる石油危機の経験や度重なる資源国での内乱、労働争議などの供

給障害等により資源小国である日本の産業基盤の脆弱性が再認識され、短期的

な供給途絶リスクへの対応を目的として1983年度にレアメタルの国家備蓄制度

が創設されました。以来、JOGMECはレアメタル国家備蓄業務を担っています。

近年において、地政学的リスク、異常気象、資源ナショナリズムなどレアメタル

の供給障害リスクが顕在化しており、需給逼迫時の売却や緊急時の放出を必要

に応じて実施します。

 企業の操業現場における技術課題や大学等研究機関の新しい金属生産技術の研究に対して支援を行っています。近年、金属資源の開発環境は厳しくなってきており、操業の改善や新規技術の導入による生産の効率化や従来とは異なる発想の技術の開発が求められています。JOGMECではこのような求めに対して、技術的・資金的な支援を行っています。また、金属資源技術研究所では企業などの求めに応じて、各種試験を行っています。

生産技術支援3

 JOGMECが保有する海洋資源調査船「白嶺」は、わが国で初めて、海底・地質の状況に応じて選択できる2種類の海底掘削装置や無人探査機など最新機器を搭載し、わが国周辺海域に存在する海洋鉱物資源の探査を行っています。 海洋鉱物資源は、分布する場所、形成の仕方、形状、含まれる金属元素の違いなどから、海底熱水鉱床、マンガン団塊、コバルトリッチクラスト、レアアース泥に分けることができます。 日本は島嶼国であるが故に、自国の法律で海底の資源開発について主権的権利が確保できる広大な排他的経済水域(200海里以内)を有しています。加えて、200海里の外側の公海域の資源についても排他的な権益を確保する活動をしており、日本にとって金属鉱物資源の新たな供給源になる可能性を有しています。

海洋鉱物資源の探査・技術調査4

金属資源技術研究所

資源備蓄日本の産業に欠かせないレアメタルの国家備蓄事業を担い、安定供給の確保に貢献します。

海洋資源調査船「白嶺」

 近年、採掘が容易で高品位な金属鉱床が減り、鉱床の奥地化・深部化や金属品位の低下・不純物の増加など開発が困難な鉱床や開発に非常にコストがかかる鉱床が増加しつつあります。JOGMECではこのような鉱床を低コストで効率的に開発するための生産技術開発を行っています。特に金属資源技術研究所(秋田県小坂町)は、選鉱や製錬に関する試験設備を保有しており、リーチング技術や選鉱技術といった独自の研究や民間企業や大学等との共同研究を実施しています。 また、今後ますます金属原料として重要性が増すリサイクル原料に関しても、前処理技術や金属抽出技術の開発を行っています。

生産技術開発2

リーチング実証試験設備

レアメタル国家備蓄業務

旧松尾鉱山新中和処理施設の

運営管理

技術支援、技術開発、情報提供

鉱害防止積立金、鉱害防止事業基金の

運用・管理

地方公共団体

義務者不存在鉱山の鉱害防止事業を実施・鉱害防止工事・坑廃水処理

義務者企業

義務者存在鉱山の鉱害防止事業を実施・鉱害防止工事・坑廃水処理

※補助金の交付は、坑廃水処理のうち自然汚染分、他者汚染分が対象

金融支援(鉱害防止資金融資、鉱害負担金資金融資)

補助金交付

補助金交付

JOGMEC

旧松尾鉱山新中和処理施設 微生物を用いた坑廃水処理試験設備

ペルーにおけるOJT

19CORPORATE PROFILE CORPORATE PROFILECORPORATE PROFILE18

METALS

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探鉱費

鉱区所有者

オペレーター③入札

権益譲渡

権益オプション獲得ファームイン方式

①JV契約書締結JOGMEC

海外企業国営公社

海外JV相手

②JV調査

④JV継続日本企業

 JV調査とは、JOGMECが自ら海外企業や国営企業をJVパートナーとして行う共同探鉱です。JV調査では、JOGMECとJVパートナーが共同で地質調査、物理探査あるいはボーリング調査などを実施して、それらの結果の取りまとめ等を行います。そ

の上で有望な探査結果が得られ、日本企業の関心が高まった時点で入札を行い、落札した企業に対してJV契約におけるJOGMECの権益等を譲渡することで、石炭資源開発における探鉱リスクの軽減に貢献します。

・ JV(ジョイントベンチャー)調査

 共同調査は、産炭国政府と共同で行う調査であり、リスクが高く、民間企業のみでは進出が難しい地域において石炭資源の有無、広がり等を確認後、石炭賦存量や石炭層の地質構造を解明し、資源開発の可能性を把握することを目的としています。産炭国・地域における今後の石炭資源開発を促すとともに、産炭国政府機関等からの日本企業参入に関する優先交渉権の獲得を図ることで、日本における石炭の安定供給確保に貢献しています。東南アジア、アフリカ等の重点地域に加えて、企業ニーズの高い地域で調査を実施します。

・ 共同調査

カナダでのJV調査の様子

地質構造調査石炭開発促進のため、

産炭国との共同調査の実施や、日本企業が海外で実施する調査活動を支援します。

権益確保支援

環 境

JOGMEC

COAL

産炭国において産炭国政府等と共同で探査事業を実施、さらに石炭開発や関連技術の共同調査も行います。また日本企業が海外で実施する探鉱等の調査活動を支援します。

調査 探 鉱 開発 生 産

石炭開発の流れ

日本企業が関与する操業現場や石炭鉱山開発等における課題解決のための技術支援を行うとともに、アジア地域を中心とした産炭国への石炭採掘・保安技術移転を行います。

産炭国や資源開発企業の動向や世界のコールフロー等の情報を収集・分析し、提供します。

石炭採掘に係る旧保有鉱区における危害・鉱害の防止や発生した鉱害の復旧・賠償、過去の貸付金の回収、鉱害賠償積立金・預託金の管理等の業務を行っています。

日本企業による探鉱事業への出資、また開発資金を民間金融機関から借り入れる際の債務保証を行います。

地質構造調査 出資・債務保証

石炭経過業務情報収集・提供技術支援・技術移転

JOGMECは、石炭の安定供給確保の使命を担い、地質構造調査から金融支援、技術実証・技術移転、情報提供まで幅広い分野で貢献しています。

石炭開発の流れとJOGMECの事業

石炭資源分野

20 CORPORATE PROFILE 21CORPORATE PROFILE

事業イメージ(一例)

COAL

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出資 出資

(日本企業等が出資し実質的に経営を支配)

資金提供 要資本関係

JOGMEC 日本企業等

海外において石炭の探鉱を行う外国法人

探鉱当事者

海外において石炭の探鉱を行う外国法人

融資

(日本企業等が出資し実質的に経営を支配)

(日本企業等が出資し経営に参加)

債務保証

採掘等当事者

債務保証委託申請

海外において石炭の採掘等を行う外国法人

 リスクの高い石炭資源の探鉱事業の促進を目指

して、JOGMECは、日本企業等が海外において石

炭の探鉱を行う場合、事業費の最大50%を出資と

いう形で資金提供しています。

 出資は株式取得の方法により行い、探鉱の目的

が達成されたと認められた場合は、順次JOGMEC

保有株式を売却していく方針です。

出資・債務保証探鉱事業、開発事業を

資金面からも支援することで、リスク回避、事業の円滑化に貢献します。

海外探鉱資金出資

 海外で行う石炭の採掘、およびそれに付随する選

炭その他の事業に必要な資金について、民間金融

機関から借り入れる部分の80%を上限にJOGMEC

が債務保証を行います。

 対象となる資金は、設計費、仮設建屋建設費、開

発工事費、選炭場建設費、インフラ工事費、管理費、

権益取得費等です。

海外開発資金債務保証

 インドネシアに豊富に賦存する褐炭は、高水分、低発熱量、自然発熱性のため、安価な生産コストであっても輸出ができず、地場火力での小規模利用に留まっています。褐炭を経済的に輸出可能なエネルギーに転換する技術は、未だ商業化に至っていません。海外企業がライセンスを保有するコプロダクション型熱水触媒反応プロセス(Cat-HTR)は、1tの乾燥褐炭から約600kgのPCIグレ-ド炭と約1bblの合成油の製造が見込まれ、優れた経済性が期待でき

ます。 このCat-HTR技術のインドネシア褐炭への適合性を明らかにするため、実証実験を行っています。

・ インドネシアにおけるコプロダクション型褐炭改質技術の可能性の検討

技術支援・技術移転日本企業が関与する操業現場や石炭鉱山開発等における

課題解決のための技術支援を行うとともに、産炭国への技術移転を行うことにより、需給逼迫の緩和や生産性の向上、安定を図ります。

技術支援

坑内での実技指導(ベトナム)

 アジアの産炭国では、国内で石炭消費が大幅に伸びている国も多く、生産拡大と保安の両立が課題となっています。日本がこれまで蓄積してきた知見やネットワークを活用し、これらの国の炭鉱技術者に対し、生産・保安技術等を効果的に移転するのが、炭鉱技術移転事業です。 特に中国、ベトナム等の炭鉱では坑内掘りの採炭箇所の深部化・奥部化が進行しているため、技術者を日本に受け入れて、石炭採掘、保安技術の指導を行っています。また、日本の技術者を産炭国に派遣し、現場に即した形での技術指導も行っています。

・ 炭鉱技術移転事業

技術移転

バイオコールブリケット

産炭国共同支援事業では、日本政府とモザンビーク政府の間で署名交

換された「石炭産業発展5ヶ年プラン」に基づき、未利用低品位炭の

活用を図るバイオコールブリケット製造の事業化を推進し、また人材

育成事業として日本への招聘研修および専門家派遣研修を実施してい

ます。

日・モザンビーク間で進む産炭国共同支援事業

燃料油

化学原料

PCI炭水

触媒

水熱処理350℃240気圧

ガス

改質炭※収率%は乾燥炭基準

ガスは全量プロセス過熱液収率高16~25%※

16%※

60%※

褐炭水スラリー

分離 合成油

Cat-HTR

JOGMEC

日本企業等

外国法人

金融機関

褐炭

22 23CORPORATE PROFILE CORPORATE PROFILE

事業イメージ(一例)

事業イメージ(一例)

COAL

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調査

地質構造調査日本国内の豊富な地熱資源の有効活用を目指し、

地表調査、坑井掘削調査等に助成金を交付することで、地熱発電の普及に貢献します。

助成事業

 JOGMECは国内の地熱資源の賦存状況を把握するた

めに、ヘリコプターを使った空中物理探査やボーリング調

査※を行っています。これらの調査によって地質構造や地

下の温度を確認し、新たな地熱資源開発へ繋げていこうと

しています。平成25年から行われてきたJOGMEC調査の

結果が活用され、民間事業者による地熱資源調査が開始

されたところもあり、将来、地熱発電所が建設されること

が期待されています。※ボーリング調査は平成29年から開始しました

25CORPORATE PROFILE

①重力構造の解析例②比抵抗構造の解析例③ヘリコプターを使った空中物理探査の様子

JOGMECが行う地熱資源ポテンシャル調査

下賀茂地域51

東伊豆町熱川温泉地域50

赤城山地域80

川俣及び周辺地域41

指宿市東方地域68

指宿ヘルシーランド周辺地域67

野々湯温泉地域66

尾八重野地域65

えびの市長江川地域78

湯の谷地域64

南阿蘇村阿蘇山西部地域63

豊札の湯(小国地域)62

石松農園(小国地域)61

小国町西里・北里地域60

平治岳北部地域59

野矢堀田地域58

宝泉寺温泉地域57

野矢地域56

小平谷地域55

小国町北里南部地域75

由布市奥江地域79

開発調査事業費助成案件(地熱資源開発事業者)

開発調査事業費助成案件(地元の地熱関係法人等)

探査資金出資案件

開発資金債務保証案件

51

26

15

2019年11月末現在

支援実績 件数

有福温泉地域54

皆生温泉地域53

糸魚川焼山北部地域74

フスブリ山地域49

坂巻温泉周辺地域47

白山ろく地域46

立山山麓地域45

立山温泉地域44

宇奈月温泉地域43

糸魚川大野地域42

菅原バイナリー地熱発電事業

71

泉水山北東山麓地域73

涌蓋山東部地域70

山下池南部地域69

志賀高原地域48

田辺市本宮地域52

土湯温泉バイナリー地熱発電事業

39

鳴子温泉地域38

宮城県栗駒地域82

栗駒南麓地域81

大崎市高日向山地域72

つなぎ温泉地域34

網張地域32

大松倉山南部地域33

東八幡平地域31

磐梯地域40

山葵沢地熱発電所建設事業

37

木地山・下の岱地域36

小安地域35

岩木山地域27

岩木山嶽地域26

奥尻地域17

八雲町熊石地域16

八雲町鉛川地域15

長万部地域77

洞爺湖温泉地域14

壮瞥町蟠渓地域13

壮瞥町黄渓地域12

ニセコ地域11

阿女鱒岳地域10

松尾八幡平地域地熱資源探査事業

29

松尾八幡平地熱発電所建設事業

30

松尾八幡平地域28

安比地熱発電事業76

黒石市沖浦・青荷川地域25

八甲田北西地域24

八甲田西部城ヶ倉地域23

むつ市燧岳地域22

下風呂地域21

恵山地域20

南茅部地域19

鹿部地域18

武佐岳地域6

羅臼地域5

湯沼ーアトサヌプリ地域4

足寄町地域3

上川地域2

美瑛地域1

京極北部地域7余市岳北西部地域83

ルスツ地域9

豊羽地域8

GEOTHERMAL

JOGMECは、地熱発電の普及と発展をめざし、地質構造調査に係る助成支援から出資・債務保証、技術開発、情報収集・提供まで、幅広く貢献しています。

地熱資源分野

日本国内の豊富な地熱資源の有効活用をめざし、地表調査、坑井掘削調査等に助成金を交付することで、地熱開発の促進に貢献します。

調査探 査 建 設 操 業

地熱開発の流れ

地熱資源の探査リスクや操業リスクを低減させるため、地熱貯留層の探査技術や評価・管理技術等の技術開発を推進します。

地熱資源開発に有用な調査データや技術開発の成果などを収集し提供するほか、地熱理解に資するさまざまな取り組みを行います。

地熱資源探査への出資、および開発段階で必要な借入資金への債務保証を通じて、日本企業による地熱資源開発を支援します。

地質構造調査 出資・債務保証

情報収集・提供技術開発

地熱開発の流れとJOGMECの事業

 地質構造調査等に係る助成事

業は、JOGMECが国から補助

金を受け、地質構造調査等に取

り組む日本企業に助成金という

形で交付しています。交付対象

案件は、毎年度JOGMECのホー

ムページで公募し、JOGMECが

定めた審査基準に基づいて採択

します。

 地熱資源の存在が有望な地

域において行う地質調査、物理

探査、および坑井掘削調査と

いった、リスクの高い初期調査

に関する経費が助成金の対象と

なります。また、周囲の自然環境

や温泉との調和を目指した地熱

資源開発を進めるための環境事

前調査やモニタリング調査に関

しても助成金を交付し、環境と

調和した地熱資源開発への支援

を行っています。

環 境

平成24~令和元年度助成金交付および出資・債務保証実績

写真提供:湯沢地熱株式会社

24 CORPORATE PROFILE

GEOTHERMAL

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調査

技術開発地熱貯留層の探査や評価・管理に関する

新しい技術の開発により地熱資源開発の推進をバックアップ、さらに地熱発電所周囲の景観・環境保全への取り組みを支援します。

地熱貯留層探査技術

地熱貯留層掘削技術

地熱貯留層評価・管理技術

出資・債務保証地熱資源の探査、

および開発を資金面から支援することで、日本企業が進める地熱資源開発の

円滑化に貢献します。

事業の概要

27CORPORATE PROFILE

民間企業A社、B社…

民間企業C社、D社…

金融機関

出資

保証料

政府出資

①出資

②債務保証

出資

融資プロジェクト会社プロジェクト会社

地熱資源探査事業 地熱採取・発電設備設置事業

 金融機関だけでは困難な地熱資源開発のリスクを評価し、金融機関による地熱資源開発への資金供給を円滑にするため、地熱資源開発を行うプロジェクト会社が地熱発電所の建設に必要な資金の融資を金融機関から受ける場合、当該融資の80%を上限にJOGMECがプロジェクト会社の債務を保証します。

債務保証2

 民間企業だけでは負担できない地熱資源開発のリスクを低減し、民間企業による地熱資源開発を促進するため、地熱資源開発を行うプロジェクト会社に、地熱資源の探査に必要な資金を50%を上限に出資します※。※JOGMECが単独で最大株主または最大出資者とならない範囲内

出資1

涵養井

3次元弾性波探査の地質構造解釈

JOGMEC

秋田県湯沢市の山葵沢地熱発電所。平成26年度に債務保証採択を行った案件。令和元年5月に運転を開始

平成25年度に債務保証採択を行った大分県九重町の菅原バイナリ―地熱発電所

岩手県八幡平市の松尾八幡平地熱発電所。平成27年度にJOGMEC地熱部門で初めて出資を実施し、平成29年2月に債務保証採択。平成31年1月に運転を開始

 現在の地熱探査では、地熱貯留層などの地下構造を推定する手法

として、重力探査や電磁探査が一般的に用いられています。しかし、

これらの探査法では、分解能の限界から坑井掘削のターゲットとなる

地熱貯留層の位置を正確に把握できないケースもあります。

JOGMECでは、地熱貯留層の位置をより正確に把握するために、石

油探鉱の分野で著しい進歩を遂げた弾性波による探査手法の地熱へ

の応用を進めています。また、重力探査や電磁探査結果などを統合

した解析手法を確立することで、地熱貯留層構造の把握精度を高め、

地熱資源開発に伴う地下リスクを低減させていきます。

 JOGMECは、地熱井の掘削において、耐久性・掘進速度に優れた

PDCビットの研究開発を行っています。

 すでに石油開発分野ではPDCビットが実用化されており、従来の

ローラーコーンビットと比べ掘進速度も速く、長寿命であるという特

長があります。しかし、石油開発用PDCビットは、地熱井の掘削に

マッチしない場合があるため、地熱用PDCビットを開発することで、

作業期間の短縮と開発コストの削減が期待できます。

 国内の地熱発電所においては、蒸気生産量と自然涵養量のアンバランスに起

因する蒸気不足や、貯留層の過熱化等の問題が発生している事例が見受けられ

ます。JOGMECでは、地下における蒸気・熱水の流れの評価精度をさらに向上

させ、地下の熱源部への水の補給をより適切に行うことにより、蒸気・熱水の採

取量の最適化・安定化を実現する技術の開発を目指しています。

事業イメージ

24 CORPORATE PROFILE26 CORPORATE PROFILE

GEOTHERMAL

Page 15: HSE方針 - JOGMECHSE方針 HSEマネジメントシステム(HSEMS) 2020年2月 資源・エネルギーの安定的な供給を この国のために、この地球のために

資源外交資源確保にあたっては、民間レベルのみならず政府レベルのネットワーク形成強化が必要不可欠です。JOGMECは国と連携しつつ資源国や国営企業等との協力関係の構築・強化を推進しています。

情報収集・提供情報力で日本企業の資源開発をサポートします。

アブダビ国際石油展示会(ADIPEC)でのブース出展

資源国との合意文書締結

刊行物の発行 JOGMECが収集・分析した国内外の地下資源に関する情報

を、書籍やパンフレット、レポートとして提供しています。また、

最新の資源・エネルギー関連情報を掲載した広報誌「JOGMEC

NEWS」を年4回(3、6、9、12月)お届けしています

資源外交の内容資源国政府要人や国営石油・ガス会社、国営鉱山会社等と

のトップ会談により、探鉱開発支援、技術協力、人材育成等

の協力枠組みを構築します。

資源を保有する重要国の有力者を日本に招聘し、戦略的な

関係強化を図ります。

国際会議や国際展示会に積極的に参加することで、日本の

資源業界やJOGMECのプレゼンス強化に努めます。

資源国の技術者を研修生として受け入れ、研修修了生との

人的交流を継続し、資源国の重要ポストに就任した修了生

を通じ、堅密な資源外交を実施します。

地下資源を保有する国の技術者を

対象とした研修事業を通じ、日本が

培ってきた高度な技術の移転や人

材育成を行うとともに、資源国との

人的つながりを強化しています。

鉱害防止事業を紹介する鉱害防止

セミナー、ペルーへの鉱害政策アド

バイザーの派遣や現地でのOJT

(技術移転)等により、資源国との

関係強化に努めています。

主に南部アフリカ開発共同体

(SADC)諸国を対象とした人材育

成の拠点として2008年に設立した

「ボツワナ・地質リモートセンシング

センター」。現在、研修事業の強化

や探査プロジェクトの発掘に取り

組んでいます。

国際協力ウェブサイト JOGMECホームページ(http://www.jogmec.go.jp)

では、組織・事業紹介から最新ニュースまで幅広く情報発信

を行っています。さらに各分野独自のコンテンツも多数、公

開しています。

講演会・イベントの開催 情報分析や研究の成果を報告する場として、さまざまな

イベント、月例ブリーフィング、成果報告会等を開催し、一

般の方から専門家までを対象に幅広い情報提供に努めてい

ます。

研修事業 鉱害防止セミナー・専門家派遣

技術者研修対象国

ボツワナ・地質リモートセンシングセンター

28 29CORPORATE PROFILE CORPORATE PROFILE

Page 16: HSE方針 - JOGMECHSE方針 HSEマネジメントシステム(HSEMS) 2020年2月 資源・エネルギーの安定的な供給を この国のために、この地球のために

•ロンドン事務所(イギリス)Carrington House, 126-130 Regent Street, London W1B 5SE, U.K.TEL.+44-20-7287-7915(oil & gas), +44-20-7287-7916(metals)FAX.+44-20-7287-7917

ヨーロッパ

Level 23, BT Tower, 1 Market Street, Sydney NSW 2000, AUSTRALIATEL.+61-2-9264-9611 (oil&gas), +61-9264-2493 (metals)FAX.+61-2-9264-4914

•シドニー事務所(オーストラリア)オセアニア

•ボツワナ・地質リモート センシングセンター(ボツワナ)Plot 54353, 5th Floor Office B, Masa Centre,Gaborone, BOTSWANATEL:+267-390-2878 FAX:+267-390-2879

•中東事務所(アラブ首長国連邦)P.O.BOX 6270 Al-Masaood Tower #904 , Sheikh Hamdan Street, Abu Dhabi, U.A.E.TEL.+971-2-6330366, +971-2-6217704 FAX.+971-2-6330280

中東

•モスクワ事務所(ロシア)Room 748, HoTEL:Mezhdunarodnaya Krasnopresnenskaya Nab.12 Moscow 123610, RUSSIAN FEDERATIONTEL.+7-495-967-0405 FAX.+7-495-967-0407

ロシア

•北京事務所(中国) 中華人民共和国北京市朝陽区建国門外大街26号長富宮弁公楼3005号TEL.+86-10-6590-9520 FAX.+86-10-6590-8366

•ジャカルタ事務所(インドネシア)5th Floor, SUMMITMAS, Jl, Jend, Sudirman Kav,61-62, Jakarta 12190, INDONESIATEL.+62-21-522-6640 FAX.+62-21-522-6650

アジア

•リマ事務所(ペルー)Av. Camino Real 348, Torre El Pilar, Piso 7, Ofi cina 704, San Isidro Lima-27, PERUTEL.+51-1-221-5088 FAX.+51-1-221-1871

•サンティアゴ事務所(チリ)World Trade Center, Torre Norte 1005, Av. Nueva Tajamar 481, Las Condes, Santiago, CHILE TEL.+56-2-2203-6130 FAX.+56-2-2203-6121

南アメリカ

•メキシコ事務所(メキシコ)Emerson #304, Int. 801, Col. Polanco Ⅳ seccion,Del. Miguel Hidalgo, CDMX, C.P. 11550, MexicoTEL.+52-55-5280-1099 FAX.+52-55-5280-0214

•バンクーバー事務所(カナダ)(北中米金属事業本部)

(米州石油天然ガス事業本部)

1710-400 Burrard Street, Vancouver, B.C. V6C3A6, CANADATEL.+1-604-685-1282 FAX.+1-604-685-4123

•ワシントン事務所(アメリカ合衆国)1233 20th Street, N.W. Suite 206 Washington, D.C.20036, U.S.A. TEL.+1-202-775-0602 FAX.+1-202-775-0605

•ヒューストン事務所(アメリカ合衆国)One Riverway, Suite 450 Houston, Texas 77056, U.S.A.TEL.+1-713-622-0204 FAX.+1-713-622-1330

北アメリカ

国内事務所

海外事務所

石油備蓄基地事務所

•苫小牧東部国家石油備蓄基地事務所•むつ小川原国家石油備蓄基地事務所•久慈国家石油備蓄基地事務所•秋田国家石油備蓄基地事務所•福井国家石油備蓄基地事務所•菊間国家石油備蓄基地事務所•白島国家石油備蓄基地事務所•上五島国家石油備蓄基地事務所•串木野国家石油備蓄基地事務所•志布志国家石油備蓄基地事務所

石油ガス備蓄基地事務所

•神栖国家石油ガス備蓄基地事務所•七尾国家石油ガス備蓄基地事務所•倉敷国家石油ガス備蓄基地事務所•波方国家石油ガス備蓄基地事務所•福島国家石油ガス備蓄基地事務所

鉱害防止支援・地熱開発事務所

•北海道鉱害防止支援・地熱開発事務所•東北鉱害防止支援・地熱開発事務所•中国・近畿鉱害防止支援・地熱開発事務所•九州鉱害防止支援・地熱開発事務所•松尾管理事務所

その他

•金属資源技術研究所•柏崎テストフィールド•九州支部

沿革 2002年7月26日に公布された「独立行政法人石油天

然ガス・金属鉱物資源機構法」に基づき、2004年2月29

日、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構

(JOGMEC)が設立されました。石油・天然ガスの安定

供給確保の役割を担ってきた石油公団の機能と、非鉄

金属鉱物資源の安定供給確保の役割を担ってきた金属

鉱物事業団の機能が集約されました。

 また、災害時の石油・石油ガス(LPガス)の供給に関

する体制の構築および資源開発に係る支援機能の集約

化・整備等を行うため、2012年8月29日、同法の改正を

含む法律が成立、2012年9月15日、①災害時の石油・石

油ガス(LP)ガス供給計画の実施支援、②石炭・地熱資

源開発に係る支援 ③産投出資の資源開発への活用 ④

海洋での金属鉱物調査の深度制限の見直しの業務が追

加・変更されました。

沿革と組織HISTORY and ORGANIZATION

日本国内では、本部を拠点に、技術開発のための研究施設や専門図書館、 備蓄基地事務所、鉱害防止支援事務所などが全国に広がります。海外では、世界各地に駐在事務所が点在し、刻一刻と変化する現地の資源・エネルギー情勢や探鉱・開発に関する情報などがリアルタイムで届けられています。JOGMECは、その最新情報とネットワーク力を生かし、日本への資源の安定供給に貢献しています。

組織図

1967 石油開発公団(JPDC)設立 1963 金属鉱物探鉱融資事業団

(MEFAJ)設立

1978 石油公団(JNOC)に改名 1973 金属鉱業事業団

(MMAJ)に改名

2012 石炭・地熱資源開発に係る支援業務の追加等による機能強化

2004 石油公団(JNOC)と金属鉱業事業団(MMAJ)を統合し、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)設立

組織

〒261-0025千葉県千葉市美浜区浜田1丁目2番2号TEL.043-276-9212FAX.043-276-4061

技術センター(TRC)〒105-0001東京都港区虎ノ門2丁目10番1号虎ノ門ツインビルディングTEL.03-6758-8000FAX.03-6758-8008

本部

•ヨハネスブルグ事務所(南アフリカ)アフリカ

3rd⦆Floor West Tower of Nelson Mandela Square, Sandton City, Johannesburg, 2146, SOUTH AFRICATEL.+27-(0)10-226-9555

30 CORPORATE PROFILE 31CORPORATE PROFILE

理事長

理事

監事

監事室

副理事長 監査室

管理部門

総務部人事部経理部評価部

石油天然ガス開発推進本部

企画調整部事業推進部探査部調査部ロシアグループデジタル推進グループ

石油天然ガス開発技術本部

管理・研修部技術部国内探査部メタンハイドレート研究開発グループ

資源備蓄本部

備蓄企画部石油・石油ガス備蓄部環境安全・技術部希少金属備蓄部

金属・石炭事業支援本部

金属環境事業部金属ファイナンス部石炭開発部石炭資産管理部九州支部

地熱事業部地熱技術部

金属資源開発本部

金属企画部資源探査部金属資源技術部

地熱統括部