現代文化学基礎演習i/哲学(演習) 2016 授業スライド(2)
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現代文化学基礎演習I/哲学(演習)
論理学 第2回
2016 年 4 月 12 日(火)16:30-17:45 @ 京都大学 総合研究2号館1階第9講義室
担当:矢田部俊介
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1.前回の復習2.準備:形式言語3.自然数の帰納的定義4.項の帰納的定義5.命題の帰納的定義
基礎現代文化学・基礎演習 I 論理学 担当:矢田部俊介2
1.前回の復習
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1.1 論理を理解する方法?• 人が何気なくする「論理的推論」を、「理解」できるか?
• 似た問い:
• 「歩く」とは何か、をどうすれば理解できるのか?
• (工学部的)答え:ロボットを作り、歩かせてみる
• 当授業では、
• 論理的推論、とくに「かつ (and)」「または (or)」「でない (not)」などの「論理結合子」に関する推論を
• コンピュータに真似させることを考える基礎現代文化学・基礎演習 I 論理学
担当:矢田部俊介4
1.2 二つのアプローチ
• 意味重視型
• 正しい前提から正しい結論を導き出す、
• 「真理表」、「モデル」
• ルール重視型
• 前提をルールに沿って変形していく
• 「証明」「推論規則」
基礎現代文化学・基礎演習 I 論理学 担当:矢田部俊介5
1.2 二つのアプローチ
• 意味重視型
• 正しい前提から正しい結論を導き出す、
• 「真理表」、「モデル」
• ルール重視型
• 前提をルールに沿って変形していく
• 「証明」「推論規則」
基礎現代文化学・基礎演習 I 論理学 担当:矢田部俊介6
こちらを採用
計算機と相性がよい
「証明」とは何かを理解する
1.3 メタと対象• 目標:計算機に推論を「教える」ための枠組み(二つのレベルが存在)
• メタ・レベル(人間のレベル)
• 対象レベルの枠組みを指定、対象レベルの枠組みを分析
• 対象レベル(計算機のレベル)
• メタ・レベルの推論をシミュレート
基礎現代文化学・基礎演習 I 論理学 担当:矢田部俊介716
メタレベル 対象レベル
1.4 統辞論と意味論• 目標:計算機に推論を「教える」
• そのためには以下が必要
• 統辞論(syntax):言語の文法
• 「5+4=7」は文法的に正しい文
• 意味論(semantics):言語の「意味」の解釈を与える装置
• 「5+4=7」は「正しくない」文
• 二つを混同しないように!基礎現代文化学・基礎演習 I 論理学
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2. 準備:形式言語
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2.1 形式言語の目的• 本日は対象レベルの枠組み・統辞論の話
• 計算機にわかるように人工的な形式言語を定める
• 自然言語は曖昧で多義的、自由度が高い
• 例「四角い風呂のふた」
• 一義的な解釈しか許さない、厳格な文法を持つ「形式言語」を定義し、計算機に使用させる
• 文を与えると、その文が文法通りの文かどうか機械的に判定できるようにする
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2.2 その満たすべき性質
• 形式言語の満たすべき性質
• 十分な表現力:無限個の文を生成できなくてはならない
• 単純さ:計算機が文法通りの文かどうか機械的に判定できる必要がある
基礎現代文化学・基礎演習 I 論理学 担当:矢田部俊介11
2.2.1 十分な表現力• 原理的には無限個の命題が、その定義に従って構成可能でなければならない。
• 例:任意の命題A と「かつ」を表現する論理結合子∧ があるだけで、それらを使って無限個の命題が生成できる
• A∧A, (A∧A)∧A, ((A∧A)∧A)∧A, ....• 最終的には算術をうまく展開できる(無限個の自然数をハンドリングできる)ぐらいの強い表現力を持つ必要がある
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2.2.2 単純さ• 計算機に有限の長さの文字列を入力したとき、それが文法通りの文かどうか機械的に判定できる必要がある
• 判定にかかる時間(処理時間、計算ステップ)は有限でなければならない
• ステップ:規則を一回適用して記号列を書き換える操作が1ステップ
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2.3 二律背反?• 形式言語の満たすべき性質
• 十分な表現力:無限個の文を生成しなくてはならない
• 単純さ:計算機が文法通りの文かどうか機械的に判定できる必要がある
• 二律背反?
• 無限個の文を有限的に処理する?
• よく使われる方法:帰納的定義基礎現代文化学・基礎演習 I 論理学
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3. 帰納的定義
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3.1 帰納的定義の例
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任意の自然数 n は、0 から出発し、後者を繰り返しとっていけば、いつか構成できる
自然数を次のように帰納的に定める。
• 0 は自然数 • x が自然数の時、x の次の数(後者)も自然数
3.2 帰納的定義の例
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• 最初のステップ(initial step)構成の出発点• 後続ステップ(successor step)以前のステップで構成したものを処理し新しいものを作るステップ
自然数を次のように帰納的に定める。
• 0 は自然数(最初のステップ)• x が自然数の時、x の次の数(後者)も自然数(後続ステップ)
3.3 帰納的定義の例
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•帰納的定義は二種類のステップから構成される•最初のステップ(initial step)•後続ステップ(successor step)
•以上の構成法を計算機上でシミュレートする!•対象レベルの対象(自然数もどき、項、命題、etc.)を帰納的に定義する•そのための枠組みをメタレベルでセットアップする
3.4.1 形式言語の定義
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•0 は、メタレベルの「0」の気持ちを対象レベルで表すための記号(個体記号)
•Suc(x) は、メタレベルの「x の次の数」の気持ちを対象レベルで表すための記号(関数記号)
自然数もどき N を定義する言語
• 個体記号:0• 関数記号: Suc(x)
数字をたくさん用意する代わりに2種類の記号で済ませる工夫
3.4.1 形式言語の定義
基礎現代文化学・基礎演習 I 論理学 担当:矢田部俊介20
•0 は、メタレベルの「0」の気持ちを対象レベルで表すための記号(個体記号)
•Suc(x) は、メタレベルの「x の次の数」の気持ちを対象レベルで表すための記号(関数記号)
自然数もどき N を定義する言語
• 個体記号:0• 関数記号: Suc(x)
注意:コンピュータ上の0と、メタの0を
区別!
3.4.2 自然数もどきの定義
基礎現代文化学・基礎演習 I 論理学 担当:矢田部俊介21
•x:N は「xはNの元」または「xはタイプN」•「x は対象レベルで自然数を真似するために作られた自然数もどきである」という意味
自然数もどき N を次のように帰納的に定める。
• 0:N • x:N のとき Suc(x) : N
上の手続きで定められたもののみがNの元である
3.4.2 自然数もどきの定義
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•メタの 0 を対象レベルの 0 でシミュレート•メタの 1 を対象レベルの suc(0) でシミュレート•メタの 2 を対象レベルの suc(suc(0)) でシミュレート…
自然数もどき N を次のように帰納的に定める。
• 0:N • x:N のとき Suc(x) : N
上の手続きで定められたもののみがNの元である
3.4.2 自然数もどきの定義
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•メタの 0 を対象レベルの 0 でシミュレート•メタの 1 を対象レベルの suc(0) でシミュレート•メタの 2 を対象レベルの suc(suc(0)) でシミュレート…
自然数もどき N を次のように帰納的に定める。
• 0:N • x:N のとき Suc(x) : N
上の手続きで定められたもののみがNの元である注意:面倒なので
2と記述
3.4.3 二律背反の解決• 原理的には無限個の命題を帰納的定義により構成可能
• 0, suc(0), suc(suc(0)), ...• 計算機が文法通りの文かどうか、を有限ステップで 機械的に判定できる!
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3.4.3 二律背反の解決• 原理的には無限個の命題を帰納的定義により構成可能
• 0, suc(0), suc(suc(0)), ...• 計算機が文法通りの文かどうか、を有限ステップで 機械的に判定できる!
基礎現代文化学・基礎演習 I 論理学 担当:矢田部俊介25
• suc(0)は2ステップでNの元である事が判定できる
• suc(suc(+))は3ステップでNの元で無いことが判定できる
4. 項の帰納的定義
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4.1 項数学の「項」(Term)の帰納的定義
• 単純なケース:
• 個体記号 0 は項
• 変数 xi は項(変数の集合 {xi: i∈N})
• 関数のケース:
a,b が項、関数 f(x),g(x,y)に対し
• f(a)は項、g(a,b)は項基礎現代文化学・基礎演習 I 論理学
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4.2 項• 例:自然数論
• 固体記号(constant symbol) 0
• 変数記号
• 関数記号(function symbol)
• 「後者関数」Suc(x)
• 1=Suc(0), 2=Suc(Suc(0)), …
• 足し算 +, かけ算×基礎現代文化学・基礎演習 I 論理学
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5. 命題の帰納的定義
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5.1 命題•命題を次のように帰納的に定める。
•a, b が項の時、「a=b」 は命題である•⊤、⊥は命題である。•P, Qが命題であれば、P∧Qも命題である。•P, Qが命題であれば、P∨Qも命題である。•P, Qが命題であれば、P⇒Qも命題である。•Pが命題であれば¬Pも命題である。•注意:¬ not(否定) ¬A は A⇒⊥ の略称
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以上の手続きで定められたもののみが命題である
5.1 命題
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•命題を次のように帰納的に定める。•a, b が項の時、「a=b」 は命題である•⊤、⊥は命題である。•P, Qが命題であれば、P∧Qも命題である。•P, Qが命題であれば、P∨Qも命題である。•P, Qが命題であれば、P⇒Qも命題である。•Pが命題であれば¬Pも命題である。•注意:¬ not(否定) ¬A は A⇒⊥ の略称
最初の ステップ
以上の手続きで定められたもののみが命題である
5.1 命題•命題を次のように帰納的に定める。
•a, b が項の時、「a=b」 は命題である•⊤、⊥は命題である。•P, Qが命題であれば、P∧Qも命題である。•P, Qが命題であれば、P∨Qも命題である。•P, Qが命題であれば、P⇒Qも命題である。•Pが命題であれば¬Pも命題である。•注意:¬ not(否定) ¬A は A⇒⊥ の略称
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後続 ステップ
以上の手続きで定められたもののみが命題である
5.1 命題•命題を次のように帰納的に定める。
•a, b が項の時、「a=b」 は命題である•⊤、⊥は命題である。•P, Qが命題であれば、P∧Qも命題である。•P, Qが命題であれば、P∨Qも命題である。•P, Qが命題であれば、P⇒Qも命題である。•Pが命題であれば¬Pも命題である。•注意:¬ not(否定) ¬A は A⇒⊥ の略称
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「論理結合子」と呼ぶ
5.2 論理結合子論理結合子:二つの命題を結びつけるもの
• ∧ and(かつ)
• ∨ or(または)
• ⇒ if then (ならば)
基礎現代文化学・基礎演習 I 論理学 担当:矢田部俊介34
注意:
• ∧, ∨ は⇒,¬よりも結合力強• A∧B⇒C は (A∧B)⇒C の省略
• ⇒ は右側が結合力強• A⇒B⇒C は A⇒(B⇒C) の省略
5.3 wff• 文法的に正しい文を wff (well-formed formula)と呼ぶ
• wffの例• 0=Suc(0)• 0=Suc(0) ⇒ 0 = 0• ¬ ((0=0) ∧ (0=Suc(0)))
基礎現代文化学・基礎演習 I 論理学 担当:矢田部俊介35
今後の予定
平常授業:4/26(火)
内容:⇒の導入規則・除去規則、
「きれいな証明」
休講:5月3日(火)
現時点で判明している他の休講:5月31日
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