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《竹田高校山岳部通信》シェルパ vol.29 新人登山大会まで、あと2週間。 コースの下見に秋のくじゅう山系へ。 男女8名で大会コースの1回目の下見を行 なった。中間考査が近いこともあり、身体への 負担を考えて今回はサブザック行動で実施。コ ースの概略を把握することと、読図ポイントを 確認することが主な目的。「読図」は登山を行 う上で身に付けるべき技術の1つ。NPO法人 M-nop のウエブサイト上の練習問題で説明し たい。 Q:写真に示されたA~C地点は下の地図上のどれ か? ん? (国土地理院 1:25,000 地形図「松崎」) 《解説》読図は「地図を読むこと」ですが、実際のナ ヴィゲーションに使う場合、地図だけを読んでいては、 その用をなしません。ナヴィゲーション時の読図の大 きな目的の1つが現在地を把握すること。そのために は、地図と風景を対比させる必要があります。風景か ら地図に描かれているはずのものを読み出し、それを 地図に対応させていく。これが実践的読図のポイント なのです。この問題では、まず尾根の形(プロフィー ル)と等高線表現を対応させるのが第1のポイントで す。写真をみると、この尾根は左が高く緩やかなピー ク(A の上あたり)、そこからいったん急斜面で下り きり(B 点)、その後しばらく緩やかで、右側に低い ピーク(C)となっています。等高線からこれらのピ ーク、斜面を読み取ることができますので、それを利 用して対応点を探します。BC 点はこれで自動的に求 まるでしょう。尾根線をはずれた点 A ですが、これは さらに写真を詳しく見ると、左のピークから手前に張 り出した尾根の左にある沢の中の少しでっぱったと ころだと読み取れます。つまり谷の中の尾根です。そ こで、地図上の位置だと判断できます。 《解答》 インターハイでは「初見で位置が特定できる 場所を出題する」となっているが、これがなか なかどうして!「下見をしていないとここは分 からないでしょ~(汗)」という場所が毎年の ように出題される。「尾根に乗る」「沢がせまっ ている」等々の場所を地図を片手に確認する作 業は、大切な下見作業の1つなのだ。(大会で は地図を手にして歩くことは禁じられている。) そこで今回は地図を持ちながら移動するにし たがって地図上に載せた親指(thumb)を移動さ せる、サムリーディング(thumb reading)をしな

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Page 1: きり(B - kou.oita-ed.jpkou.oita-ed.jp/taketa/竹田高校山岳部通信29号.pdf · 読図の基本は地理で学ぶ「等高線の読み方」 にある。(下図参照)慣れてくると山に登る前

《竹田高校山岳部通信》シェルパ vol.29

新人登山大会まで、あと2週間。

コースの下見に秋のくじゅう山系へ。

男女8名で大会コースの1回目の下見を行

なった。中間考査が近いこともあり、身体への

負担を考えて今回はサブザック行動で実施。コ

ースの概略を把握することと、読図ポイントを

確認することが主な目的。「読図」は登山を行

う上で身に付けるべき技術の1つ。NPO法人

M-nop のウエブサイト上の練習問題で説明し

たい。

Q:写真に示されたA~C地点は下の地図上のどれ

か?

ん?

(国土地理院 1:25,000 地形図「松崎」)

《解説》読図は「地図を読むこと」ですが、実際のナ

ヴィゲーションに使う場合、地図だけを読んでいては、

その用をなしません。ナヴィゲーション時の読図の大

きな目的の1つが現在地を把握すること。そのために

は、地図と風景を対比させる必要があります。風景か

ら地図に描かれているはずのものを読み出し、それを

地図に対応させていく。これが実践的読図のポイント

なのです。この問題では、まず尾根の形(プロフィー

ル)と等高線表現を対応させるのが第1のポイントで

す。写真をみると、この尾根は左が高く緩やかなピー

ク(Aの上あたり)、そこからいったん急斜面で下り

きり(B 点)、その後しばらく緩やかで、右側に低い

ピーク(C)となっています。等高線からこれらのピ

ーク、斜面を読み取ることができますので、それを利

用して対応点を探します。BC 点はこれで自動的に求

まるでしょう。尾根線をはずれた点 A ですが、これは

さらに写真を詳しく見ると、左のピークから手前に張

り出した尾根の左にある沢の中の少しでっぱったと

ころだと読み取れます。つまり谷の中の尾根です。そ

こで、地図上の位置だと判断できます。

《解答》

インターハイでは「初見で位置が特定できる

場所を出題する」となっているが、これがなか

なかどうして!「下見をしていないとここは分

からないでしょ~(汗)」という場所が毎年の

ように出題される。「尾根に乗る」「沢がせまっ

ている」等々の場所を地図を片手に確認する作

業は、大切な下見作業の1つなのだ。(大会で

は地図を手にして歩くことは禁じられている。)

そこで今回は地図を持ちながら移動するにし

たがって地図上に載せた親指(thumb)を移動さ

せる、サムリーディング(thumb reading)をしな

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がら登るのである。例えば下の地図はくじゅう

山系の地図であり、赤いルートがコースとする。

(合澤哲郎監督作成)

地図上の Pho とは写真を示すわけだが、次のよ

うな風景となる。(写真左 Pho1 地点、写真右

Pho4 地点)

読図の基本は地理で学ぶ「等高線の読み方」

にある。(下図参照)慣れてくると山に登る前

に地図を見るだけで3Dのように傾斜具合が

理解できるようになる。読図のテスト以外にも

NHK の気象情報を聞いて即座に天気図を作成

し、予報するテスト、応急処置知識を問うテス

トもある。こうした技術を高校時代に身に付け

ておくことは、豊かな社会生活をおくる上で、

極めて有効な技術を習得することに繋がるこ

とは間違いない。また、自然の中で活動するに

はそれだけの知識が必要ということでもある。

「登山競技は体力・知力が求められる」と言わ

れる所以だ。インターハイ出場校に各都道府県

有数の進学校が名を連ねるのも頷ける。そんな

強豪とあいまみえる、新進気鋭の竹田高校山岳

部のメンバーが彼らだ!

岳麓寺集落から歩き始め、ゲート前の駐車場

で彼らを待ち受けていたのは、多くの登山者の

車と…。

山羊だった。誰かのペット?妙に人慣れしてい

て合澤車に鼻先を突っ込むなどの行為を行っ

ていた。いつまでも見てはいられないので出発。

最初からハイスピ

ードの合澤先生。

前日も登山道修復

作業でくじゅう山

系に入っており、

連日の登山。

《本日出会った花々》

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ススキが揺れる牧野道を

行く。右はヤシャブシ。

登山道入り口に到着。 最初の休憩。

柳ヶ水分岐。「違うって、今ここにいるんだよ。」

板切との分岐。 入山公廟との分岐。

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合澤「地図上の入山公廟の位置と実際が違うんだよ。」

登山道を左に取り、

入山公廟へ進む。

大船山は7月の豪雨の被害はさほどない。入山公廟も

いつもと変わらない。木々が色づき始める。すっかり

秋。苔むした石段を登りつめた私たちを出迎えたのは、

見事な紅葉。

鳥居窪で2度目の休憩。大船山の山腹が色づいて

いる。

鳥居窪で取り出したる

はローソンの「ハムマヨ

パン」とサーモス。サー

モスには熱々のコーヒ

ーを入れてきた。至福の

瞬間。「ん、いけるわ。」

休憩後、一気に大船山山頂を目

指す。ガスが出てきた。山頂直

下で振り返ると、左の写真の景

色。山頂では晴れるといいが。

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大船山山頂手前。山頂にはすでに多くの登山者たち。

山頂に向け、最後のひと踏ん張り。(山頂より撮影。)

山頂到着。晴れて良かった!このまま段原を目指す。

山頂より

御池方面。

きれいで

す。ただし、

山頂はぶ

んぶん飛

び交うム

シが多い。

山頂より北大船山、平治岳、米窪を望む。

段原目指して下る。 正午頃、段原到着。

今日はおにぎり弁当。 段原より展望。

硫黄山、三俣山。 白口岳、中岳、天狗ヶ城。

20分間昼食休憩。 そして段原を下る。

立中山との分岐通過。 久しぶりの坊ヶつる着。

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坊ヶつるで10分間のトイレ休憩。先行していた大分

上野丘高校登山部13名をここまでで追い越す。

坊ヶつるを出て、法華院方面へ木道を行く。

法華院温泉。合澤氏、ビールを渇望するもここはスル

―して鉾立峠に向か

う。高橋は「コーラ、

コーラ」と呟きながら

のスル―。標高130

3mで九州では最も

高い所にある温泉。

鉾立峠

「天空の城ラピュタ」的風景。

鉾立て峠までは、最

初よく整備された

木道。そのうち黒土

の道。そして、最後

は赤茶けた火山岩。

白口岳が右手に見えてくると鉾立峠はもうすぐだ。

鉾立峠着。背後は白口岳。

鉾立峠では沢水から登っ

て来た大分上野丘高校の

堀先生と遭遇。思えば2008年度は合澤・堀・高橋・

田北と竹田高校山岳部には4人も顧問がいたのだ。堀

先生は高橋と竹田高校同級生。

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鉾立峠を下り終えた。 佐渡窪のススキ。

佐渡窪から鉾立峠を振り返る。

鉾立峠

佐渡窪を行く。鉾立峠か

ら佐渡窪までは豪雨被害

で巨石が登山道を塞いで

いたが佐渡窪は無事。

鍋割峠を目指す。 鍋割峠到着。

鍋割坂を下る。

うひゃあ!水害で沢から流れてきた巨石群。

木の土止めが浮いてしまった状態。沢という

沢は石だらけ。

朽網分かれ到着。ここまで巨石がゴロゴロ。

写真左に向かうと沢水へ。

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レゾネイト久住の駐車場に向けて丸木橋を渡る。

川の水音が心地よい。 小さな沢を渡り森へ。

か気持ちの良い遊歩道。 自然の造形美。

さて、ゴール地点のレゾネイト久住駐車場ま

であと少しというところでスズメバチ被害に

遭う。古嶋選手の左腕をチクリ、高橋は右腕、

おでこ、右側頭部の3か所をやられる。激痛

が走った。その後、竹田医師会病院で治療。

大きく腫れた右腕。右は医師会病院待合室にて。(涙

目である。)筋肉注射を打つ。頭の2か所が特に痛い!

「大丈夫?」と心配する合澤監督は、そのわず

か5分後に「なあ、長湯の温泉に行こうよ。ほ

ら、あの100円で入れるところ。」と誘って

くる。「あのね、3か所も刺されたの。今すぐ

病院に行きたいの!」と心の中で返す。

この看板を通過し…。 木橋を渡ると…。

この先が開けてきて…。 レゾネイト久住到着!

どんぐりころころ。 車回送中に出会った看板。

《ススメバチについて》8月から10月が最も被害が

大きい期間。竹田医師会病院によると、「最近多いで

すよ。今日も何件かありました。」とのこと。「オオス

ズメバチが他種のスズメバチの巣を集団で攻撃し,幼

虫や蛹を餌として持ち帰る。その前段階として偵察バ

チが飛来するようになると、キイロスズメバチやモン

スズメバチでは巣全体が神経質になり、人が巣から数

m~15m以内に近づくと攻撃して

くることがある。」のだそうだ。それ

にしても痛い!痛み止め、効かない

ぞ!皆さんもご注意を!