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126 II. 台湾編

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Page 1: II. 台湾編...129 機関の名称223、有機表示同意文書字号224を表示しなければならない。輸入有機農産品およ び加工品の表示には、中国語を主要な表記とするという前提で外国語および符号を使用す

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II. 台湾編

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第 1 章 商品の表示・外観に係る制度の概要

第 1 節 表示すべき事項および表示・外観を保護する制度の概要

台湾で販売する食品(輸入食品を含む)には、容器または食品の包装の上に、品名、内

容物名、重量、容量または数量、食品添加物の名称、販売企業(および輸入企業)の名称、

電話番号、住所、製造年月日、消費期限または保存期限、その他指定された事項を中国語

で表示しなければならない215。また、容器に入ったもしくは包装された食品について、原

産地を表示しなければならない216。

このほか、権利を保有する商標や意匠を表示することができる217。

図表 78 商品の表示・外観に係る規制

(括弧内が表示の規制に係る法律)

215 食品の表示については、「食品衛生管理法」によって規定されている。 216 原産地の表示について規定する法規には、「輸入貨物原産地認定基準」、「糧食表示方法」、「輸入有機農

産品および加工品管理規則」、「台湾行政院衛生署公告(2007 年 6 月 13 日)」がある。 217 商標、意匠については、「商標法」、「特許法」によって規定されている。

製造場所

(食品衛生管理法)

保存期限

(食品衛生管理法)

品名

(商標法)

賞味期限

(食品衛生管理法)

内容量

(食品衛生管理法)

品名

(食品衛生管理法)

主原料

(食品衛生管理法)

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商品のブランドを保護するために、商品名やロゴマーク、パッケージのデザイン等を商

標や意匠として登録することができ、その結果、他者はそれらのマーク等を権利者の許可

なく使用することが禁じられる。ブランドを保護するための権利には、商標権と意匠権が

ある。

(1)食品の包装

容器または包装された食品、食品添加物は、中国語及び一般符号によって下記の事項を

容器または包装に見やすく表示しなければならない218。

図表 79 食品の包装およびラベルに記載しなければならない事項

糧食(コメ、小麦、麺粉、雑穀および関連製品)を市場で販売する際には、品名、品質、

産地、重量、製造日、保存期間、製造あるいは輸入業者の名称、電話番号および住所につ

いて、表記しなくてはならない219。 (2)輸入製品のラベル

輸入有機農産品および加工品を販売する際には、品名220、原料名称221、原産地222、検査

218 「食品衛生管理法」第 17 条:容器または包装された食品、食品添加物は、中国語及び一般符号によっ

て下記の事項を容器または包装に見やすく表示しなければならない。(1)品名(2)内容物名及び重量、

容量または数量。2種以上の混合物の場合は、個別に表示(3)食品添加物名(4)メーカー名、電話番号

及び住所。輸入の場合は、国内の責任業者名、電話番号及び住所を明記しなければならない。(5)有

効期限。中央主管機関の公告指定によって、製造日、保存期限または保存条件を表示する必要がある

場合は、併せて標示しなければならない。(6)中央主管機関が公告指定したその他の標示事項。中央

主管機関が公告指定した食品は、中国語及び一般符号によって栄養成分及び含有量を見やすく表示し

なければならない。その表示方式及び内容は、中央主管機関の規定に合致しなければならない。 219 「糧食標示規則」第 2 条:行政院農業委員会によって 2002 年 1 月 31 日に発表され、その後 2004

年 5 月 31 日および 2006 年 6 月 2日に部分的に改正。 220 「有機」の語を付して表記すること。 221 品名と同一の場合は省略することが可能。二種類以上の原料が使用されている際は、分量の高い順に

イ) 品名

ロ)内容物名及び重量、容量または数量(2 種以上の混合物の場合は、個別

に表示)

ハ)食品添加物名

ニ) メーカー名、電話番号及び住所(輸入品の場合は、国内の責任業者名、

電話番号及び住所を明記)

ホ) 有効期限(中央主管機関の公告指定によって、製造日、保存期限また

は保存条件を表示する必要がある場合は、併せて表示しなければなら

ない)

へ)中央主管機関が公告指定したその他の表示事項

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機関の名称223、有機表示同意文書字号224を表示しなければならない。輸入有機農産品およ

び加工品の表示には、中国語を主要な表記とするという前提で外国語および符号を使用す

ることができる225。 ブランドを保護するための権利のほかに、義務としての原産地表示がある。台湾では、

容器入りもしくは包装された食品の原産地表示を義務付ける公告が 2007 年 6 月 13 日に発

せられており、2008 年 1 月 1 日より、施行されている。同広告では、容器又は包装された

食品に対し、中国語で原産地を見やすく表示しなければならないと定めており、縦幅と横

幅が 2 ミリメートル以上でなければならない等の表示方法についても規定されている226。

(3)商標権

商標は、個人や法人の権利として保護され、その権利を商標権といい、「商標法」に規定

されている。これはあくまで権利であるため、登録の義務は無い。商標の対象となる農林

水産物等は、第二十九類、第三十類、第三十一類である227。

(4)意匠権

意匠は、個人や法人の権利として保護され、その権利を意匠権といい、特許権の一形態

として「特許法」(中国語:専利法)によって規定されている。商標同様、これもあくまで

権利であるため、登録の義務は無い。意匠権として保護される意匠は、物品の形状、模様

もしくは色彩またはこれらの組み合わせである。

表示しなければならない。

222 輸入貨物原産地認定標準で認定された原産国を表示すること。表示字体は長さと幅ともに 0.6cm より

小さくてはならない。容器あるいは包装袋の正面中央よりやや下方の位置に明確に表示する。 223 表示字体は長さと幅ともに 0.6cm より小さくてはならない。容器あるいは包装袋の正面中央よりやや

下方の位置に明確に表示する。 224 バルク売りの場合は、有機表示同意文書のコピーとともに売り場に告示板を設置し、品名および原産

地を表示すること。なお、字体の長さおよび幅は 3cm より小さくてはならない。 225 「輸入有機農産品および加工品管理規則」農糧署・衛生署が 2007 年 7 月 27 日に発表し、同年 8 月 14

日に修正した規則 226 台湾行政院衛生署公告第 0960404142 号。なお原産地表示の詳細については、第 4章を参照のこと。 227 台湾においては、2002 年 3 月 1日、「標章の登録のための商品およびサービスの国際分類に関するニー

ス協定」の分類が適用されている。

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輸入貨物原産地認定基準進口貨物原產地認定標準

<関連法等>

・『関税法』「關稅法」・『海関輸入税』「海關進口稅」

ブランド保護のための制度

商標制度

<関連法等>・『商標法』「商標法條文」・『商標法施行細則』「商標法施行細則」・『類似商標審査基準』「商標近似審查基準」・『商標識別性審査要点修正条文対照表』「商標識別性審查要點修正條文對照表」・『商標法第23条第1項第12条著名商標保護審査基準』

「商標法第23條第1項第12款著名商標保護審查基準」・『証明商標、団体商標及び団体標章の審査基準』「證明標章、團體商標及團體標章審查基準」・『立体、色彩及び音声商標審査基準』「立體、顏色及聲音商標審查基準」・『誤認審査基準』「混淆誤認之虞審查基準」・『商標識別性審査要領』「商標識別性審查要點」・『小売サービス標章登録審査要領』「零售服務標章註冊審查要點」・『商標使用の注意事項』

「商標使用之注意事項」・『特許・商標コンサルサービス義務代理人補足規定』「專利商標諮詢服務義務代理人補充規定」

意匠制度デザインの保護が目的

<関連法等>・『特許法』「專利法」・『特許法実施細則』「專利法施行細則」・『特許費用基準』「專利規費收費基準」・『特許年会費減免規則』「專利年費減免辦法」・『特許権期間延長審査規則』「專利權期間延長核定辦法」・『発明創作奨励規則』「發明創造獎助辦法」・『特許審査作業要領』「專利閱卷作業要點」・『経済部知的財産局特許案件面談作業要領』「經濟部智慧財產局專利案面詢作業要點」・『経済部知的財産局特許案件検証作業要領』「經濟部智慧財產局專利案勘驗作業要點」・『特許代理人管理規則』「專利代理人管理規則」・『特許・商標コンサルサービス義務代理人補足規定』「專利商標諮詢服務義務代理人補充規定」

偽装表示をとりしまる法律

表示・外観に関する制度

表示に関する主な法律

糧食表示規則糧食標示辦法

輸入有機農産品および加工品管理規則進口有機農產品及有機農產加工品管理辦法

<関連法等>

・『糧食管理法』「糧食管理法」・『商品表示法』「商品標示法」・『食品衛生管理法』「食品衛生管理法」

<関連法等>

・『農産品生産および験証管理法』「農產品生產及驗證管理法」

食品衛生管理法食品衛生管理法

<関連法等>

・『食品衛生管理法実施細則』「食品衛生管理法施行細則」

・『行政院衛生署公告 第0960404142号』

「行政院衛生署公告 第0960404142號」

商標権及び消費者の利益を保護することによって、市場の公正な競争秩序を維持し、商工業界の企業の健全な発展を促進することが目的

・『商標法』

「商標法」・『特許法』

「專利法」

・『刑法』

「刑法」・『民事訴訟法』

「民事訴訟法」

・『不正競争防止法』

「公平交易法」

・『行政訴訟法』「行政訴訟法」

輸入貨物原産地認定基準進口貨物原產地認定標準

<関連法等>

・『関税法』「關稅法」・『海関輸入税』「海關進口稅」

ブランド保護のための制度

商標制度

<関連法等>・『商標法』「商標法條文」・『商標法施行細則』「商標法施行細則」・『類似商標審査基準』「商標近似審查基準」・『商標識別性審査要点修正条文対照表』「商標識別性審查要點修正條文對照表」・『商標法第23条第1項第12条著名商標保護審査基準』

「商標法第23條第1項第12款著名商標保護審查基準」・『証明商標、団体商標及び団体標章の審査基準』「證明標章、團體商標及團體標章審查基準」・『立体、色彩及び音声商標審査基準』「立體、顏色及聲音商標審查基準」・『誤認審査基準』「混淆誤認之虞審查基準」・『商標識別性審査要領』「商標識別性審查要點」・『小売サービス標章登録審査要領』「零售服務標章註冊審查要點」・『商標使用の注意事項』

「商標使用之注意事項」・『特許・商標コンサルサービス義務代理人補足規定』「專利商標諮詢服務義務代理人補充規定」

意匠制度デザインの保護が目的

<関連法等>・『特許法』「專利法」・『特許法実施細則』「專利法施行細則」・『特許費用基準』「專利規費收費基準」・『特許年会費減免規則』「專利年費減免辦法」・『特許権期間延長審査規則』「專利權期間延長核定辦法」・『発明創作奨励規則』「發明創造獎助辦法」・『特許審査作業要領』「專利閱卷作業要點」・『経済部知的財産局特許案件面談作業要領』「經濟部智慧財產局專利案面詢作業要點」・『経済部知的財産局特許案件検証作業要領』「經濟部智慧財產局專利案勘驗作業要點」・『特許代理人管理規則』「專利代理人管理規則」・『特許・商標コンサルサービス義務代理人補足規定』「專利商標諮詢服務義務代理人補充規定」

偽装表示をとりしまる法律

表示・外観に関する制度

表示に関する主な法律

糧食表示規則糧食標示辦法

輸入有機農産品および加工品管理規則進口有機農產品及有機農產加工品管理辦法

<関連法等>

・『糧食管理法』「糧食管理法」・『商品表示法』「商品標示法」・『食品衛生管理法』「食品衛生管理法」

<関連法等>

・『農産品生産および験証管理法』「農產品生產及驗證管理法」

食品衛生管理法食品衛生管理法

<関連法等>

・『食品衛生管理法実施細則』「食品衛生管理法施行細則」

・『行政院衛生署公告 第0960404142号』

「行政院衛生署公告 第0960404142號」

商標権及び消費者の利益を保護することによって、市場の公正な競争秩序を維持し、商工業界の企業の健全な発展を促進することが目的

・『商標法』

「商標法」・『特許法』

「專利法」

・『刑法』

「刑法」・『民事訴訟法』

「民事訴訟法」

・『不正競争防止法』

「公平交易法」

・『行政訴訟法』「行政訴訟法」

・『商標法』

「商標法」・『特許法』

「專利法」

・『刑法』

「刑法」・『民事訴訟法』

「民事訴訟法」

・『不正競争防止法』

「公平交易法」

・『行政訴訟法』「行政訴訟法」

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公平取引委員

新聞局

内政部 警政署(経済部)

各県市政府警

察局

財務部

法務部

各級法院

(行政裁判所

を含む)

関税総局

商業司

標準検査局

国際貿易局

知的財産局

投資審議委員会

高等法院検察署

各地方裁判所

検察署

知的財産権専門

グループ

調査局

刑事警察局

(偵九隊)

保安警察部隊

各地関税局

知的財産権侵害を取締る行動につ

いて協議、監査、指導に当る作業チ

ーム

知的財産権保

護警察大隊

コンピュータ犯罪

防止センター

経済部

図表 80 台湾における知的財産関係行政機関の組織図

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第2節 処罰の対象となる行為

(1)マーク等営業標識の偽装および商標権の侵害

他者の商品名や商品の容器や包装の外観を偽装することは、模倣行為として、不正競争

防止法に基づき処罰の対象となる。また、以下のような行為を行なった場合、商標権の侵

害として刑事罰を科せられる228。

図表 81 商標権の侵害に該当する行為

(2)意匠権の侵害

以下のような行為を行なった場合、意匠権の侵害となる。ただし、意匠権の侵害は刑事

罰の対象とならないことから、被害者は民事訴訟を起こし、侵害行為の差止め、権利侵害

品の廃棄および損害賠償を請求することになる229。

図表 82 意匠権の侵害に該当する行為

228 「商標法」第 81 条:商標権または団体商標権の所有者からの事前の同意を得ることなく次に掲げる行

為をした者は、3年以下の懲役、拘留及び、その追加または代わりとして、NT$200,000 以下の罰金に

処する。(1) 登録商標または登録団体商標と同一の標章を同一の商品またはサービスに使用すること

(2) 登録商標または登録団体商標と同一の標章を類似の商品またはサービスに使用し、そのために、

関係消費者に混同または誤認の虞を生じさせること (3) 登録商標または登録団体商標と類似の商標

を同一または類似の商品またはサービスに使用し、そのために、関係消費者に混同の虞を生じさせる

こと、第 82 条:前条において言及した商品を故意に販売し、販売のために展示し、輸出または輸入

をした者は、1年以下の懲役、拘留及び、その追加または代わりとして、NT$50,000 以下の罰金に処

する。 229 財団法人交流協会「模倣品対策マニュアル」2007 年 3 月。

イ)商標権者の同意を得ず、同一の商品またはサービスに、同一の登録商標または団体商標を

使用すること。

ロ)類似商品またはサービスに、同一の登録商標または団体商標を使用し、消費者に誤認を生じ

させること。

ハ)同一または類似の商品またはサービスに、その登録商標または団体商標と類似する商標を使

用し、消費者に誤認を生じさせること。

ニ)前条に該当する商品であることを明らかに知りながら、当該商品を販売したり、販売を意図

した展示、輸出または輸入をすること。

イ)意匠権者の許可を得ずに、当該物品を製造、販売、使用または輸入すること。

ロ)意匠権者の許可を得ずに、自ら当該物品を製造、販売、使用または輸入すること。また

は、違法に物品を製造、販売、使用または輸入することはしないが、意匠の侵害行為を

積極的に誘引すること。

ハ)特許権者の許可を得ずに、その物の重要な部品または専用設備を製造、販売すること。

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(3)原産地の偽装

事業者は商品もしくはその広告に、虚偽の原産地を表示してはならないと規定されてい

る。また、原産地を偽装した商品を販売、運送、輸出もしくは輸入することも禁止されて

いる230。これらの違反行為を行なう事業者に対しては、期限付きの改善命令が科せられる

が、期限内に違反行為が改善されない場合は、不正競争防止法に基づいて 10 万元以上、

5,000 万元以下の罰金が科される231。

また、税関において偽装表示が発見された際は、輸入関税の 2 倍から 5 倍の罰金、ある

いは当該貨物が没収される232

(4)産地の偽装

原産地を含む産地表示の内容に虚偽の表示が発見された場合には、違法行為を行なった

組織の名称、住所、商品名、責任者の氏名および違反に該当する事実が公表される。さら

に、表示の内容について改善が命じられた場合、その命令に従わないものには、15,000 台

湾ドル以上 60,000 台湾ドル以下の罰金が科され、3 回の処罰を経てもなお改善されない場

合には、営業登録が無効とされる233。

230 「不正競争防止法」第 21 条:虚偽の記載又は公告 事業者は、商品若しくはその広告に、若しくはそ

の他公衆に知らせる方法で、商品の価格、数量、品質、内容、製造方法、製造日期、使用期限(賞味

期限)、使用方法、用途、原産地、製造者、製造地、加工者、加工地等について、虚偽不実若しくは

錯誤を招く表示または表徴をしてはならない。 231 「不正競争防止法」第 41 条:違法行為の機嫌付き停止又は改善 公平取引委員会は本法規定に違反し

た事業者に対して、機嫌を定めてその行為の停止、改善またはその是正に必要な措置を命じ、並びに

新台湾ドル 5 万源以上、2500 万元以下の過料に処することができる。期限を超えても、なおその行

為を停止、改善せず、又はその是正に必要な措置を講じなかったときは、引き続きその行為の停止、

改善又はその是正に必要な措置を命じることができ、またその行為が停止若しくは改善され、又はそ

の是正に必要な措置が講じられるまで、回数に応じて連続して新台湾ドル 10 万元以上、5000 万元以

下の過料に処することができる。 232 「税関取締条例」第 37 条第 1項:貨物を輸入する際に、貨物の名称、品質、規格、表示等を偽装した

者に対し、輸入関税の 2倍~5倍の罰金を科するか、あるいは、当該貨物を没収する。 233「糧食管理法」第 16 条:市場に販売する食糧について、主管機関規定の表示に従わない者或は虚偽の

表示をする者に対して、第 18 条第 2項第 4 号に規定されている処罰以外に、主管機関はそれらの虚

偽表示を行なった製造業者の名前、住所、商品名称、責任者の姓名および虚偽表示の状況を公布する。

第18条 第10条第1項の規定に従わずに、穀物商を登録し、無断で食糧業務を経営する者に対して、

6万台湾ドル以上 24 万台湾ドル以下の罰金を処し、違反回数に応じて処罰する。下記の状況の一つ

に該当する穀物商に対して、主管機関は期限内の改善を命令する。違反者が、期限内に改善をしない

場合、1万 5千台湾ドル以上 6万台湾ドル以下の罰金を科し、違反回数に応じて処罰する。3回の処

罰の後も改善しない者に対しては、その穀物商の登録を廃止し、穀物商の登録証を取消す。

1. 第 10 条第 3項に規定されている穀物商管理規則の穀物商登録、変更登録或は他の守るべき事項

に違反する者。

2. 第 11 条第 1項の規定に違反する者。

3. 第 11 条第 2項の規定に違反し、主管機関の視察を回避、妨害あるいは拒絶する者。

4. 第 14 条第 1項、第 2項或は第 3項に違反する者。

5. 第 15 条第 1項の規定に違反し、視察を回避、妨害あるいは拒絶し、食糧の出所資料を提供しな

い者。

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(5)品質の偽装

関連事業者または消費者に一般的に認識されている他人の氏名、商号または会社の名称、

商標、商品容器、包装、外観、またはその他の標章と同一または類似するものを使用する

ことは、消費者に誤認を生じさせるおそれがあるため禁じられている。また、このような

表記を行った商品を販売、運送、輸出または輸入することも禁止されている234。これらに

違反した場合、侵害者は刑事罰(3年以下の懲役、拘留、または 1 億台湾ドル以下の罰金)

を科されることとなる235。

234 「不正競争防止法」第 20 条第 1項:事業者は、その営業において提供する商品またはサービスについ

て、次に掲げる行為をしてはならない。(1)関係事業者または消費者に通常認識されている他人の氏

名、商号もしくは社名、商標、商品の容器、包装の外観、またはその他の他人の商品と同一もしくは

類似の表示を使用し、誤認を生じさせること。また、当該表示を使用した商品を販売、運送、輸出も

しくは輸入すること。 235 「不正競争防止法」第 35 条第 1項:第 10 条、第 14 条、第 20 条第 1項に違反した際は、中央主管庁が

第 41 条の規定により期限を定めてその行為の停止、改善または必要な是正措置を命じる。その期限内

に違反行為の停止、改善をせず、または必要な是正措置を講じず、または停止した後に、再び同一も

しくは類似の違反工をしたときは、違反行為者に対して 3年以下の懲役、拘留に処し、または 1億台

湾ドル以下の罰金を科し、またはこれを併科する。

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第2章 商標

第 1 節 商標制度

(1)商標制度の概要

商標制度は、商品やサービスの品質を保証することを促すことによって、消費者、生産

者および経営者の利益を保護することを目的としている。

2003 年に商標法の改正が行われ、現在では、商品商標とサービス標章(サービスマーク)

が統合されて「商標」となり、商品・サービスにおける視覚表示(平面・立体)および聴

覚表示が保護の対象とされている。

台湾における商標制度では、登録主義が採用されている。登録主義とは、先使用ではな

く、先に知的財産局へ登録出願したものに商標権を付与するというものである。

また、先願主義(同日出願の場合には両者間の協議または抽選)が採用されている。例

外として、台湾と相互に優先権を承認する国で商標登録を行なった後 6 ヶ月以内に台湾で

登録を出願した場合、その商標は台湾においても優先権を認められる236。

(2)商標法の対象となる商標

商標とは、文字、図形、記号、色、音、立体形状などから構成され、それによって消費

者が当該商品またはサービスを他と区別して認識できる機能を有するもののことをいう237。

商品またはサービス以外にも、特殊な商標として、「証明標章」、「団体会員標章」、「団体

商標」がある。証明標章の出願人は、法人、団体または政府機関に限られ、これらの団体

が第三者の立場で特定の商品またはサービスの特性、品質、精密度、産地などを証明する

場合に出願するものである。

法人資格を有する法人、協会またはその他団体が組織を表すのに必要なマーク等の標章

については、「団体会員標章」(Collective Membership Marks)の登録出願をしなければ

ならない。

「団体商標」とは、法人資格を有する法人、協会またはその他団体が、団体メンバー組

織の商品またはサービスを表し、他の商品またはサービスと区別するため、別の表示を必

要とする場合に出願できるものである238。

236 「商標法」第 4条第 1項:台湾との間で相互に優先権を認めている国において出願され、当該国の国

内法令によって登録された商標の出願人が、台湾において当該商標の出願をするに際しては、当該外

国での 初の出願日の翌日から起算して 6月以内であれば優先権を主張することができる。 237 「商標法」第 5条第 1項:商標は、文字、標識、記号、色彩、音響、立体形状またはそれらの組合せ

によって構成することができる。 238 「商標法」第 77 条:団体商標の使用とは、団体の会員が提供する商品またはサービスを識別するため

に、その会員が商品またはサービスに団体商標を活用することである。

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(3)「商標権」の取得要件

商標権の取得要件には、

○ 他人の商品やサービスと区別する為の識別性があること

○ 他のものが先に取得した権利と衝突しないものであること

の 2 点がある。

識別性を有しているどうかの判断をするためには、その表示が独創的であるかが判断さ

れる(たとえば、テレビ、録音機器等に使用される「Panasonic」やフィルムに使用される

「Kodak」等)。単に商品やサービスの形状や品質、機能等をあらわしている言葉は、識別

性を有さない。ただし、商標を使用する商品やサービスの形状や品質、機能等とまったく

関係の無い随意的な表示(たとえば、コンピューターに「Apple」を使用すること)や、商

品やサービスの形状や品質、機能等を暗示的に示している表示は、識別性を有していると

判断される(たとえば、スキンケア商品に「Snow white」という表示をすること)239。

図表 83 識別力のある商標の例

商標の種類 商標例 商標を使用する製品またはサービス

独創的商標

バッグ、服飾など

随意的商標

ベッドシーツ、マットレスなど

暗示的商標

イス、テーブルなど

一方、以下のような場合には、識別力がないものとみなされる。ただし、出願人によっ

てすでに使用され、かつ事実上すでに周知の標識となっているとみなされる場合には、登

録されることがある240。

図表 84 識別力を持たないとみなされる商標

239 「商標識別性審査要点」 240 「商標法」第 23 条第 4項:本条第 1段落(2)または第 5条第 2段落の規定は、登録を求めている商標を

出願人が使用した結果、出願人が業として提供する商品またはサービスについて識別性を有する標識

となっている場合は適用しないものとする。

イ)商品またはサービスに一般的に使われる標章あるいは名称

ロ)商標そのものが特定の商品あるいはサービスの形状、品質、機能などを示す

もの

ハ)簡単な線、幾何図形、基本色彩またはデザイン性がなく且つ意味のないアラ

ビア数字

ニ)商品またはサービスの装飾に誤認されやすい図形

ホ)流行語、スローガン、広告用語または広告性質のある図形

ヘ)熟語やよく使われる用語

ト)国名、地理名称、書籍または書籍著作物の名称、周知の宗教標識

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137

図表 85 識別力がなく商標として認められない例

商標 使用する製品またはサービス

商品またはサービス

の装飾に誤認されや

すい図形

食器

広告性のある図形

衣類

周知の宗教標識

香炉

商品の種類を表すような名前や、知名度の高い地名などについては識別性がないと判断

される。例えば、1997 年に「越光」が米の商標として登録されていたが、2004 年に同商標

の排他権を撤廃するよう、知的財産局に商標権の取消請求があったところ、「越光」は米の

品種を表す名称であり、特定の個人に独占的な使用を認めるのは妥当ではなく、誰もが利

用することができるようにするべきであるとの判断がなされ、同商標権の登録が取り消さ

れることとなった。

消費者に誤認を与えるおそれがある場合にも、出願は拒絶される。例えば、「1881 葡萄

酒」という名称の商標が出願されたことがあったが、これは「1881 年に生産された葡萄酒」

という錯覚を消費者に与える可能性があるという理由によって拒絶されている。

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138

さらに、以下のものは商標登録ができない。

図表 86 商標登録ができないもの241

(4)地名の登録可否について

台湾の商標法は、中国と異なり、行政区画や外国の国名を商標として登録することを明

示的に禁止していないが、外国の国名や地名は識別力を有さないという理由から、商標権

を取得するための要件を満たさないと考えられている242。また、著名な地名については、

当該地名を商標として使用することで、消費者がその商標に記載されている地名を、商品

の産地やサービスの営業地として誤認するおそれがあるため、出願が却下される可能性が

高い。例えば、スイスの地名であるチューリッヒ(ZURICH)に類似している「SURICH」と

いう名称を時計の商標として使用することは、過去の判決から、商標権が付与されなかっ

たことが明らかになっている243。

台湾においては、商標に含まれる文字や記号等のうち、識別力を有さない文字や記号に

ついて、独占権を放棄すると出願時に明言すれば、識別性を有さない文字や記号について

も、商標としての登録が認められるという制度があることから、同制度を利用すれば、地

名の登録も認められる可能性がある244。

241「商標法」第 23 条第 1項から抜粋。 242「商標識別性審査要点」においては、国名及び地名を識別力の無いものとして取り上げている。 243 知的財産局行政訴訟判例第 2484 号 244「商標法」第 19 条:登録を求める商標が、説明的なまたは識別力のない文字、標識、記号、色彩また

は立体形状からなる特徴を含み、当該特徴を除去したときはその商標全体が不完全なものになる場合に

おいて、当該商標は、出願人が当該特徴を使用する排他的権利を放棄したときは、登録を受けることが

できる。

イ)台湾の国旗や軍旗または外国の国旗と同一または類似のもの。

ロ)国内外の政府機関または周知の組織の名称や標章と同一または類似のもの。

ハ)公序良俗に反するもの。

ニ)公衆の混同誤認を生じさせたり既登録済の他人の商標または周知の標章の識別

性または信用を損なったりするおそれがあるもの。

ホ)他人の肖像または周知の氏名、芸名、ペンネームと同一のもの。

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図表 87 外国地名をめぐる過去の判例245

判決字号 出願商標 指定商品 判決

結果 判決理由

72 判 310 亜洲[アジア] ― 商標権

は有効

相当な知名度に達し消費者が熟知して

いるといいがたく、公序良俗にも反しな

いため。

74 判 495 南美[南米]

コーヒー・コ

コア飲料用の

牛乳

商標権

は無効

コーヒー・ココアの産地で有名な南アメ

リカ州の略称で、生産者・生産地・品質

を誤認させるおそれがあるため。

76判 1723 長崎 ビスケット、

ケーキ類 無効

カステラで有名な長崎を使用すること

で、生産者・生産地・品質を誤認させる

おそれがあるため。

77 判 685 California 健康器具 無効 消費者に米国カリフォルニア産である

と連想させるおそれがあるため。

78 判 315 阿薩姆[アッ

サム]

茶、コーヒー、

ココア、紅茶

など

無効

紅茶の名産地であるインドアッサム省

の地名は、商品の一般的な名称として使

用されており、識別力を有さないため。

78 判 926 CALIFORNIA 煙草 無効 商標の重要部分に使用し、消費者に産地

を誤認させるおそれがあるため。

82判 2922 BOY LONDON アパレル 無効

流行の都であるロンドンを使用する

ことで、消費者に産地を誤認させるおそ

れがあるため。

注:[ ]内は日本語訳。

245 寛信聯合弁護士事務所 HP(http://www.sunnylaw.com.tw/thesis17.html)

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140

(5)著名商標

著名商標とは、客観的証拠をもって、当該商標がすでに関連業者または消費者に広く認

識されていると認められる商標のことをいう246。ここでいう関連業者には、商標を使用す

る商品またはサービスを販売している者、商標を使用するサービスを取扱う関係者等が含

まれる。

著名商標として認定されるには、広く社会一般に認識されていることが重要であり、知

的財産局が当該商標が広く社会に認識されているか否かを判定する際には、以下の点が考

慮される。

246 「商標法施行細則」第 16 条:法律に記載した「周知の」という用語は、関係する企業または消費者に

よって広く認識されており、それを証明する十分な証拠がある標章を指すものとする。

日本の地名が商標登録された事例

~「信州味噌」のケース~

今から 8~9 年前に「信州」というブランドを、ある台湾人が調味料の商標として登録した。当時の知

的財産局は外国地名の登録に関しての審査が比較的甘く、「信州」の台湾での知名度もそもそも低

かったため、この申請は簡単に認められ、商標権が付与された。

その後、2003 年ごろ、日本の「信州味噌」が台湾に進出し始めたが、台湾人の保有する商標権を

侵害したと地元メディアに指摘されて問題となったため、代理人を介して当該商標の取り消しを要求し

たが、結局知的財産局は「信州」が日本古来の地名であり、現在の地名ではないこと、台湾ではそれ

ほど知名度の高い場所でもないことなどを理由に当方の申請を却下した。

しかし、現在は知的財産局の外国地名に対する敏感度が以前より格段に高まり、外国地名を商標

として出願する際の審査が厳しくなっている。その背景には、日本など外国業者との地名関連の紛争

が多くなったという事情がある。また、近年、中国大陸における青森りんごの商標権争いが有名となり、

台湾の知的財産局や知的財産権法務業界に大きな影響を及ぼした。

本件について再度異議を申し立てようとするなら、日本における「信州」の知名度の高さを証明でき

る歴史的な資料や、マスコミが報じた信州関連の報道、「信州味噌」というブランドの知名度の高さを

証明するようなマスコミの報道や当該商品の日本全国における市場シェアなどの統計データなどの提

出が必要である。これらの資料が提出できれば、「信州味噌」が日本における知名度の高い著名商標

であることは証明できる。重要なのは、異議を一企業や個人ではなく、地元の組合組織の名義により

申し立てることである。これは後に団体商標としての再登録にも繋がる。

(台湾国際専利法律事務所ヒアリングより)

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141

図表 89 著名商標の例247

「AKAI」 「ASIMO」

「HONDA」

「DAIKIN」 「DOCOMO」 「ISUZU」 「JR」

「KAWASAKI」

「川崎」

「KOMATSU」

「小松」

「NISSAN」 「OLYMPUS」 「RICOH」

「理光」

「SEIBU」

「TATA」 「TOSHIBA」

「東芝」

「TOTO」 「不二家」 「元祖」 「宅急便」

247 聖島国際特許法律事務所

図表 88 著名商標の定義

• 商標の識別性の強弱

• 関連業者または消費者が商標を認識している程度

• 商標の試用期間、範囲および地域

• 商標の広報機関、範囲および地域

• 商標の出願および登録の期間、範囲および地域

• 商標の権利行使に成功した記録

• 商標の価値

著名商標として認められたケース

~「アンパンマン」訴訟~

「アンパンマン」の商標を無断で使用した台湾企業に対し、「アンパンマン」の作者

が日本テレビを通じて商標権の侵害を訴えた。弁護士は、「アンパンマン」は台湾

で商標として登録されていなくても、日本国内のみならず、台湾でも以前からかな

り人気が高く、著名商標として認定されるべきものと主張した。そして、このことを

証明するための手法として、日本と台湾両方におけるマスコミの報道を引用する

などし、台湾で商標登録がされていなくとも、著名商標に該当するということを証

明した。

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142

当該商標が著名商標であることを証明することができれば、その商標を台湾において登

録していなくても、知的財産局に対して同一名称の先行商標に対する無効審判を請求する

ことが可能である。

(6)地理標識(地理的表示)

地理的表示は特定地域から生産された商品の品質に関連する名称であり、品質に由来す

る商品の評判を保護するために、地名の表示を登録するものである248。

図表 90 地理的表示の要件

原産地表示と地理的表示は異なる概念である。原産地はあらゆる商品が輸入・販売され

るときの表示内容の一つであり、輸入商品には原産地の表示が義務付けられている249。原

産地名は通常国家の名称である。

一方、地理的表示は、登録制度の下で運用されており、政府から認証と監督を受ける必

要がある。原産地表示内容における「原産地」は国家名であるのに対して、地理的表示に

おける地名は通常国家名ではなく国家の中の一地方の名称であることが多い250。

248 「商標法」第72条 :他人の商品またはサービスに係わる特性、品質、精度、原産地その他の事項を証

明するために標章を排他的に使用しようとする者は、証明標章登録の出願をしなければならない。他人

の商品またはサービスを証明することができる法人、団体または政府機関に限り、証明標章登録の出願

をすることができる。 249 「商品表示法」第 9条 250 台湾国際専利法律事務所ヒアリング

イ)商品がある特定の地区を原産地とすることを識別する表示であること。

ロ)国・地域の領域またはその領域内のある特定の地区を表すものであること。

ハ)商品の品質、名声またはその他の特性と当該地理的原産地との間に関連性が

あること。

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143

図表 91 台湾における商標と意匠の違い

日本 香港

商標 意匠 商標 意匠

文字のみ

商標として登録可能

例)

デザインの一部としては登録が可能

商標として登録可能

例)

デザインの一部としては登録が可能

図形のみ

商標として登録可能

例)

デザインの一部としては登録が可能

商標として登録可能

例)

デザインの一部としては登録が可能

形状

立体商標として登録可能

例)

意匠として登録可能

例)

立体商標として登録可能

例)

意匠として登録可能

例)

食品の包装全体

包装の一部に商標を付すことが可

例)

包装のデザインを意匠として登録可能

例)

包装の一部に商標を付すことが可

例)

包装のデザインを意匠として登録可能

例)

出所:日本特許庁ホームページ、日本特許電子図書館商標検索および意匠検索サービス、IIPPF ホームページ、台湾知的財産局データベースより作成

日本特許庁ホームページ:http://www.jpo.go.jp/indexj.htm

日本特許電子図書館ホームページ:http://www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl

IIPPF ホームページ:http://www.iippf.jp/

台湾知的財産局商標検索データベース:http://203.69.69.28/TIPO_DR/index.jsp

台湾知的財産局特許検索データベース:http://free.twpat.com/Webpat/freeZone/pnQuery.aspx

検索方法については、台湾編を第 2章第 3節、第 3章第 3節を参照。

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144

第2節 出願手続きの流れと留意点

台湾と中国の制度は、共に WTO の枠組みに沿って作られたものであるため、大きな差異

はない。ただし、以前は台湾にも中国と同様に、出願商標が予備審査で許可された後、3 ヶ

月間の異議申立期間が設けられていたが、制度が改訂され、異議申立受付期間が撤廃され

た。現在では、出願商標に対して登録の許可が下りると、直ちに商標権が発生する仕組み

となっている。なお、台湾はマドリッド協定議定書の加盟国ではないことから、台湾への

出願を行う際はマドリッド協定議定書ではなく、直接台湾へ出願することなる。

(1)出願手続きの流れ(申請~登録)および費用

台湾における商標出願から登録までの一般的な流れは以下のとおりである。

イ) 規定の書式による願書、見本、および添付書類(委任状、優先権証明書等)を経済部知

的財産局へ提出する。願書での指定商品・指定役務の記入については、概括的な表現

が認められておらず、具体的な指定商品名を列挙しなければならない。

ロ)出願してから 6~8月以内に、知的財産局の審査官は商標登録出願書類、手続きの手順

に対し、法律で規定されたものを備えているかどうかの審査(方式審査)を行う。出

願書類または手続きに不備がある場合、審査官より出願人(代理人)に対して、期限

を定めて補正するよう書面または電話による通知がなされる。補正の期限を過ぎても

実行されない場合には、当該商標出願は受理されない251。

ハ)方式審査を経て、審査官による不登録事由の有無の審査(実体審査)が行われる。不

登録事由がある場合、この登録拒絶理由が出願人(代理人)に通知され、30 日間の期

間を定めた意見書の提出機会が与えられる。

ニ)不登録事由がない、または拒絶理由が克服された場合、登録査定および登録料納付書

が送達される。なお、登録料は 2,500 台湾ドルであり、一括払いまたは 2 回分割払い

のいずれかを選ぶことができる。一括払いの場合には、登録査定書到達の翌日から 2

ヶ月以内にこれを納付し、2 回分割払いの場合には、登録査定書到達の翌日から 2 ヶ月

以内に、まず 1 回目の登録料 1,000 台湾ドルを納付し、登録後、3 年目の期間満了前 3

ヶ月の間に 2 回目の登録料 1,500 台湾ドルを納付する。

251「商標法」第 9条第 1項:商標出願及びその他の手続に関し、申請人が法定期間を守らなかったか、法

定の様式に合致していないものを是正することができなかったか、または法定の様式に合致していない

ものを通告された期間内に是正しなかったときは、その申請は拒絶されるものとする。

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145

ホ)登録料納付後、商標公報に登録の公告がなされ、商標権の設定登録がなされると同時

に、登録証書が発行され商標権利者(代理人)に交付される。

なお、日本で商標を登録してから 6 ヶ月以内に台湾に出願すれば、当該商標の優先権を

取得することができ、この場合、日本国内で当該商標の登録がなされた日まで出願日を遡

ることができる。例えば、日本において 1 月 1 日に登録した商標を同年 10 月 1 日に台湾で

登録しようとしたところ、他者がすでに 9 月に類似の商標を登録していた場合、日本国内

での登録日まで遡る優先権が認められ、優先登録の権利を得ることとなる。

商標登録関連の各種費用の例は以下のとおり。

図表 92 商標登録関連の各種費用(例)

項目 行政費用

(台湾ドル)

代理費用

(US$)

費用総額

(US$)

申請 第 1~34 類の申請:

①20 品目未満の商品・サービス (1 類当たり)

②21~60 品目の商品・サービス (1 類当たり)

③61 品目以上の商品・サービス (1 類当たり)

第 35~45 類の申請(1類当たり)

優先権の要求

3,000

5,000

9,000

3,000

0

200

200

200

200

50

290

350

470

290

50

登録 商標の登録(1類当たり) 2,500 120 195

更新 既登録商標の存続期更新申請 4,000 200 315

変更 申請と登録後に行う権利者関連情報変更の書類記載 500 150 165

削減 登録後における登録品目の削減 500 150 165

ライセンス ライセンスとサブ・ライセンス関連契約の申請

ライセンスとサブ・ライセンス中止の申請

2,000

1,000

250

250

310

280

譲渡 商標権譲渡の書類記載 2,000 250 310

申請拒否 商標局からの拒否内容のレビュー

上訴請願書の作成

0

0

0

800

0

800

登録証明 登録証明の取得 500 150 165

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図表 93 商標登録プロセス フローチャート

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147

(2)審査機関

台湾における商標権等の設定の登録や権利行使に係る決定は、台湾経済部知的財産局に

よって行われる。

(3)出願資格

出願人に係る要件は特に定められていないが、外国人の所属する国が、台湾との間で商

標に関する相互保護条約や協定を締結していない場合、または当該国の法令により台湾国

民による商標登録出願が受理されない場合には、当該外国人の商標登録は不受理とされる

252。

(4)代理機関

台湾に営業住所を持たない外国人または外国の機関が商標権の出願を行う際は、代理人

を通さなければならない253。商標代理人は、台湾に住所を有していなければならず、公証商

標代理人のみが業務を行うことができる。

日本企業が台湾において商標を出願する際は、日本の弁護士事務所を経由して、台湾の

弁護士(弁理士)事務所に商標登録出願の代理を依頼するか、直接台湾の弁護士事務所に

依頼する。前者は大企業に多く、比較的小規模の企業は後者を選択することが多い。出願

から審査、登録許可(または不許可)までの所要期間は概ね 8~10 ヶ月である254。

(5)その他、留意点(特に日本語の商標で商標権が取得できるか否かについて)

①登録前の異議申立て期間廃止

2003 年に商標法が改正される以前は、審査後登録まで 3 ヶ月の異議申立て期間が設けら

れており、期間内であれば、誰でも異議を唱えることが可能であった。しかし、一部の悪

意の異議申立てが問題となり、現在では同制度は廃止されている。一度異議が提出される

と、その解決には 6 ヶ月~1 年以上、さらに長い場合には、2~3 年を要するケースもあり、

特にライフサイクルの短い製品のメーカーにとって、これは致命的である。例えば、食品

の場合、新製品のライフサイクルは 2 年にも満たないため、悪意の異議申立てによる損失

は大きい。上述した制度の改訂はこのような弊害への対策と考えられる255。

252 「商標法」第 3条:外国人による出願は、当該外国人が属する国が台湾との間で商標の保護に関する相

互主義に基づく条約若しくは協定を締結していないか、またはその国内法令を施行して台湾(以下「台

湾」という。) 国民がする商標登録を拒絶している場合は、拒絶することができる。 253 「商標法」第 8条第 1項:商標登録及びその関連業務は、選任された商標代理人がこれを実行し、管理

することができる。台湾の領域内に住所または営業所を有していない者は、商標関連業務を実行し、管

理する代理人を選任しなければならない。 254 台湾I事務所ヒアリング 255 台湾I事務所ヒアリング。同改訂により、商標審査委員会の委員の判断力および審査の客観性が、より

一層求められることとなった。「審査委員の判断力や審査の客観性が高ければ、異議を招きやすい商標

の出願は、簡単に許可されないはずである。この前提に立つと、今後異議申立が発生する可能性は、低

いと想定できる。」(台湾第一国際法律事務所)

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②日本語の商標で商標権が取得できるか否かについて

日本語の商標で商標登録を行う際の判断基準は基本的に中国と同様である。日本語の仮

名(ひらがなやカタカナ)を商標として登録することは可能であるが、申請時にその意味

を中国語の漢字に翻訳しなければならない。翻訳された中国語がすでに登録されている商

標名と同一である場合には、登録が許可されない。

③品種の登録について

台湾では 1997 年に「越光」がコメの商標として登録されているが、2004 年に商標の取消

請求があった。同請求に対し当局は、「越光」は米の品種を表す名称であり、特定の個人に

独占権を認めるものではなく、誰もが利用することができるようにするべきと判断し、同

商標の排他権の撤廃を決定した256。

すでに「越光」の商標権は撤廃されているが、「越光」を商標として使用するための方法

として、出願を行う際、商標を構成する文字のうち、「越光」の専用権を要求しないことを

明示することで登録が許可される可能性が高い。商標の一部の専用権を放棄することを「専

用権放棄(Disclaimer)」という。「専用権放棄」とは、商標登録の出願について、登録さ

れた文字のうち、当該通用名称や商品の種類などを表す文字の部分について、独占的権利

を主張しないというものである。例えば、有名な「UCC コーヒー」を商標として登録する場

合、「UCC」は専用権として登録することができるが、「コーヒー」は商品の通用名称である

ため、「専用権放棄」を明示しなければ使用が許可されない257。

「越光」を商標として登録する際には、「越光」以外の識別性のある言葉(生産者の名前

やブランド名等)を付けて商標として登録することが考えられる。例えば、2004 年に「越

光」の登録が撤廃された後、2005 年に宜蘭県農会が「夢田越光米」という商標の登録を申

請した。同農会が、登録書類に上記のとおり「専用権放棄」を明記したことから、商標登

録は受け入れられている258。

256 台湾行政院経済部知的財産局ヒアリング 257 台湾国際専利法律事務所ヒアリング 258 台湾行政院経済部知的財産局ヒアリング

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149

(6)類似の範囲

類似しているか否かは、外観、観念及び呼称がそれぞれ類似するか否かによって判断さ

れる。類似していると判断される例は以下の通り。

図表 94 類似していると判断される商標の例259

類似を判断する基準 例

外観が類似するもの 商標が漢字で構成され、その意味、発音が同一でないものの、その外

観について誤認混同を生じさせるおそれがあるもの

例)「北海」「比海」

商標の単一の漢字が同一であり、その配列が異なっているものの、そ

の外観について誤認混同を生じさせるおそれがあるもの

例)「利泰」「泰利」

商標を構成する漢字の主要な文字部分が同一であり、その外観につい

て誤認混同を生じさせるおそれがあるもの

例)「快樂多」「快樂」

商標を構成する漢字が異なるが、デザイン形状が近似しているもの

例) (大同) (大台北)

商標を構成する漢字または外国文字が完全に同一であるもの

例)「GOAL」「果好 GOAL」

商標を構成する外国文字が異なり、呼称や観念も互いに異なるが、デ

ザイン形状が近似しているもの

例)

商標を構成するアルファベットが同一であり、その配列がそれぞれ異

なり、または一部にアルファベットの違いがあるものの外観が類似し

ているもの

例)「瑞騎 CAANON」「CANNON」

259 「類似商標審査基準」

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150

商標を構成する外国文字の一部の単語と同一または主要な部分が同一

または類似しているもの

例)「NEW MASTER」「統師 MASTER」

商標を構成する図形が近似しており、誤認混同を生じさせるおそれの

あるもの

例)

商標を構成する記号が同一または類似しているもの

例)「九九 99」「999」

商標を構成する色彩が同一または類似しており,誤認混同を生じさせ

るおそれのあるもの

例)

商標を構成する図形の形状と文字の形状とが同一または類似している

もの

例) 「R」

観念が類似するもの 商標を構成する漢字の意味または、呼称が類似しているもの

例)「王子」「太子」

商標を構成する外国語の意味または呼称が同一または類似しているも

例)「Taiwan」」「Formosa」

商標を構成する漢字と外国語の意味が同一であるもの

例)「愛情」「LOVE」

商標を構成する漢字と図形の意味が同一であるもの

例)「黒豹」「(黒豹の図形)」

商標を構成する外国文字と図形との意味が同一であるもの

例)「(雄の獅子の図形)」と「LION」

商標を構成する漢字または外国文字と記号との意味が同一であるもの

例)「三九牌」「999」

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151

商標を構成する図形の意味が同一であるもの

例)

称呼が類似するもの 商標を構成する漢字は異なるが、呼称が同一または類似しているもの

例)「新新」「響響」

(共に「シンシン/xinxin」と発音する)

商標を構成する外国文字は異なるが、呼称が同一または類似している

もの

例)「POLYSET」「ポリセット」

商標を構成する漢字と外国文字の呼称が同一または類似しているもの

例)「吉利 GEILLY」「潔靈 GELLY」

商標を構成する漢字または外国文字と記号との呼称が同一または類似

しているもの

例)「巴陵巴」「808」

(共に「バーリンバー/balingba」と発音する)

以下に、同一もしくは類似と認められる団体会員標章の例を示す。

【事例 1】

右の団体会員標章は先行登録されていた塾事業に関するものであり、左は後発申請(暗

記教育)で却下されたものである。却下の理由は一見して商標構図が同一であること、業

種が近似していることから、消費者の誤認を生起しやすいことである。

拒絶された商標 既存の登録商標

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152

【事例 2】

左の団体会員標章「台湾省普門慈幼慈善会標章」のデザインは両手が心を捧げる図形で

あり、右の「中華民国愛心慈善協会標章」の団体標章のデザインに類似している。両者は

ともに慈善的性質の団体でもあることから、その全体構図は一般大衆に両者を誤認させや

すいと判断され、先願主義および登録主義の観点から、左の標章登録が禁じられた。

拒絶された商標 既存の登録商標

(7)他者がすでに同一または類似の商標について商標権を取得している時の対応策

これから商標出願しようとしていた商標が、すでに他者によって登録されていることが

判明した場合の対応策としては、知的財産局に対する登録商標への異議申立て、商標無効

審判の請求、他者に対する商標権の譲渡の申入れおよび別商標での出願が考えられる。

図表 95 同一・類似の商標を他者が既得済である時の対応策

①異議申立て

行政手段として知的財産局に対し異議申立てを行なうことが可能である。異議申立ては、

商標登録公告が発表された後に受け付けられているため、異議に関する答弁、審査を経て

判定が出るまでの 6 ヶ月~1 年の間、当該商標の排他権は権利者が有することとなる。

異議申立ての請求者は、弁護士事務所に対して異議申立ての代理を依頼することが一般

的であるが、弁護士事務所自らが知的財産局の発表した公告をチェックし逆提案するケー

10年間登録

期間満了

・ 異議申立て ・ 登録取消裁定請求 ・ 商標の譲渡 ・ 別商標での登録

対抗手段

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153

スもある。

弁護士事務所を通じた異議申立のプロセス、所要費用、事例を以下に示す。

図表 96 異議申立てプロセス

図表 97 異議申立ての所要費用(例)260

項目 行政費用

(台湾ドル)

代理費用

(US$)

費用総

額(US$)

異議

申立

異議申立書類の作成

異議申立への答弁

上述書類提出後の追加説明

4,000

0

0

1,000

1,000

200/hr

1,115

1,000

200/hr

260台湾I事務所ヒアリング

② 異議申立申請書の提出 弁護士事務所が請求者の依頼を受けて異議申立申請書を 2 部知的

財産局に提出し、知的財産局はそのうち 1 部を異議申立の相手側

(権利者)に渡す。申請書には異議申立の理由と証拠が盛り込ま

れる。

④ 知的財産局による判定の発表 知的財産局商標権組が上記の答弁内容を審査し、 終判定を発表

する。このプロセスにはさらに 4~6ヶ月を要する。

⑤ 高等行政訴訟

知的財産局の判定に対して、不服があれば、高等行政裁判所(高

等行政法院)に提出し、行政訴訟を起こすことが可能である。高

等行政裁判所の判定までには 8ヶ月~1年を要する。

③ 書面による答弁のやり取り 相手側が異議申立申請書を受けると、書面による答弁を 2 部知的

財産局に提出し、その中の 1 部が知的財産局から異議申立側の弁

護士事務所に送られる。このような書面による答弁のやり取りは

数回行われ、通常 6ヶ月を要する。

⑥ 最高行政訴訟 高等行政裁判所の判定に対して、さらに不服があれば、 高行政

裁判所に提出することが可能である。このプロセスにはさらに 6

ヶ月~10 ヶ月を要する。

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154

異議申立てが退けられた事例

千川日業股份有限公司が申し立てた「三才 SUNGERTAIN」の商標にめぐる判決。

<原告>

千川日業股份有限公司

<被告>

台湾経済部知的財産局

<事案の概要>

2000 年 6 月 17日、千川日業股份有限公司は「三才 SUNGERTAIN」を霊芝および霊芝カプセル等商品として商標登録申

請した。しかしながら、知的財産局は、「三才 SUNGERTAIN」は、すでに登録されている商標登録第 153368 号「三才堂」の中

文構成に似ており、また、登録品目も類似品であることを理由に登録を拒否した。これを受けて、千川日業股份有限公司は

2004 年 11 月 18 日に台北高等行政法院に台湾経済部知的財産局を提訴した。

<原告の主張>

原告は「三才 SUNGERTAIN」の商標は、「三才」の中文二文字と「SUNGERTAIN」英文文字で構成されているが、商標登

録第 153368 号「三才堂」の構成は中文のみであり、一般消費者に対する視覚の印象は明らかに異なることから、類似とは言え

ないと主張した。そして、知的財産局が明らかに客観的な立場で本案件を審査していないと批判した。

また、すでに商標として登録されているものの中には、中文二文字が同じ商標が多数存在すると主張。例としては、

・ 登録番号第 26829 号「一福」と登録番号第 126572 号「一福堂」

・ 登録番号第 842165 号「一福」と登録番号第 400788 号「一福堂」

(模様中に同じ「一福」がある。)

・ 登録番号第 113909 号「一心」と登録番号第 130865 号「一心堂」

(模様中に同じ「一心」がある)

・ 登録番号第 425133 号「一元」と登録番号第 643424 号「一元堂」

(模様中に同じ「一元」がある)

原告は、この様な商標は市場に併存しており、的財産局の本件に対する判断は一貫性を欠いていると主張、録拒否の決定

を取り消すよう、異議を申し立てたものである。

<判決理由>

イ)「三才 SUNGERTAIN」の中文は左から右の順に並んでおり、二つの商標図案を比べると、中文部分は明確であり、人に

与える印象も強いことから、商標の主要部分である。一文字「堂」のみに相違点があるとは言っても、一般消費者には同じ

製造元であると誤認を招きやすいため、類似商標と見なす。

ロ)被告人の品目は「霊芝」であり、霊芝は漢方薬に属する。すでに登録されていう「三才」は類似商品であり、係争商標登

録の申請は法令に適合する。

ハ)商標の中には、中文二文字が同じの登録が多数存在することも事実である。しかし、商標登録は個別の案件審査が原

則であり、商標登録の可否判断に不備はなかった。

<判決>

商標法第 37 条第 12 項の規定により、商標図案が同一あるいは他者の商品に類似する権利者の商標登録を拒絶する。原告

側の訴えを退け、知的財産局の登録拒否判断を合法とする。

原告の商標 登録済みの商標

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②商標無効審判請求

商標権侵害事案が発生すると、侵害を受けた被害者は知的財産局に救済を求めることが

できる。知的財産局では、商標権侵害事案の解決のための審判を実施しており、商標権の

侵害については、商標無効審判が行われる。商標の無効審判を希望する利害関係者もしく

は審査官は、審判請求書を作成し知的財産局へ提出する。知的財産局は、まず書類の不備

等がないかについて審査を行い、その後商標の権利者(被請求人)に無効審判が行われる

旨の通知を行う。

被請求人は、通知受領後 30 日以内に答弁を提出しなければならず、提出された答弁は請

求者にも送付される。この答弁に返答する形で請求者が答弁を提出する。このような答弁

のやり取りを踏まえ、知的財産局は商標を無効とするか否かの判断を行なう。当該商標の

無効が決定されると、商標権は抹消され、被請求人は保有していた権利を失う。

商標の取消が認められた例

~「泡盛酒」のケース~

2 年前、台湾の某企業が「泡盛」ブランドを酒の商標として登録出願し、認可を得た。

これにより、日本の沖縄産「泡盛酒」はこの名称のままでは売れないこととなった。そこで、

沖縄の農業組合は弁護士を通じて異議を申し立て、最終的に相手の商標を撤廃させ

ることに成功した。また、その後、沖縄の酒造業種組合が「泡盛酒」という商標を集団商

標として再登録することにも成功した。この例における勝利のポイントは、「泡盛酒」が沖

縄の地元特有の一つの酒の品種であること、すなわち、フランスのシャンパンのような産地

特有な名産品と同様であることの主張とその証明ができたことである。

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156

図表 98 無効審判の対象となる商標(商標法第 23 条)

• 商品またはサービスの形状、品質、機能またはその他の説明を表示しているもの

• 指定商品またはサービスに関して使用される一般的標識または用語

• 商品またはその包装の立体形状であって、機能を果たすために不可欠なもの

• 中華民国の国旗、国章、国印、軍旗、軍徽、官印、勲章または外国の国旗と同一または類似

のもの

• 故孫逸仙博士または国家元首の肖像または名称と同一のもの

• 中華民国政府の機関または博覧会が使用する標章、またはそれらが授与する徽章若しくは証

書と同一または類似のもの

• よく知られた国際組織、またはよく知られた国内若しくは外国機関の名称、紋章、徽章または

標章と同一または類似のもの

• CNS(Chinese National Standards,国家規格)標章、または同様の公認検査によるものである

ことを示す国内若しくは外国標章と同一または類似のもの

• 公共の秩序または善良の風俗に反するもの

• 指定商品またはサービスの性質、品質または原産地について公衆に誤認を生じさせる虞があ

るもの

• 他人の周知商標または周知標章と同一または類似のものであり、そのために、関係公衆に混

同を生じさせるかまたは当該周知商標または周知標章の識別性または名声を減殺する虞の

あるもの。(当該周知商標または周知標章の所有者の同意を得て行われた出願には適用さ

れない)

• 使用に係わる指定商品またはサービスが同一または類似する登録商標、または先の出願に

よって登録を求めている商標と同一または類似しており、そのために関係消費者に混同を生

じさせるおそれがあるもの。(両当事者の商標および使用に係わる指定商品およびサービス

が同一である場合を除き、登録商標または登録を求めている商標の所有者の同意を得て行

われた出願には適用されない)

• 同一または類似の商品またはサービスについて他人が先に使用している商標と同一または

類似のものであり、かつ出願人が当該他人との契約上、地理上若しくは事業上の関連または

それ以外の関係から、前記商標の存在を知っていること。(当該他人の同意を得て行われた

出願には適用されない)

• 他人の肖像または他人の著名な名称、芸名、筆名または別名を含んでいるもの。(当該他人

の同意を得て行われた出願には適用されない)

• 著名な法人、法主体その他の団体の名称を含んでおり、関係公衆に混同を生じさせるおそれ

があるもの

• 他人の意匠権等の権利を侵害しているものであり、当該侵害が判決によって確定している場

合。(当該他人の同意を得て行われた出願には適用されない)

• 中華民国との間で相互に商標を保護している国または地方のぶどう酒および蒸留酒に係わる

地理的表示と同一または類似のものであり、かつ使用に係わる指定商品が葡萄酒および蒸

留酒であるもの。

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図表 99 商標無効審判の所要費用(例)261

項目 行政費用

(台湾ドル)

代理費用

(US$)

費用総額

(US$)

商標委員会への商標撤廃請願書の作成

商標撤廃阻止の書類作成

商標撤廃請願書提出後の追加説明

7,000

0

0

1,000

1,000

200/hr

1,210

1,000

200/hr

③商標の譲渡

商標出願によって得られた権利は譲渡することが可能であり、商標の譲渡は知識産権局

によって登録される262。

すでに登録されている商標について、商標権者に対して権利を譲渡してくれるようはた

らきかける手法もある。譲渡してもらうことができた場合には譲渡契約を交わし、共同で、

商標局に対して「登録商標譲渡申請書」を提出する。商標局は商標の譲渡の可否について

審査し、許可すると、その商標が譲渡されたことを公告する。商標を譲り受けた側は、公

告の日から当該商標の独占的な使用権を有することとなる。

商標の譲渡を考える際には、中国同様、登録者による不当な金額の請求を避けるために

も、弁護士事務所等の代理組織を介して交渉を行うことが望ましい。また、当該商標が権

利者にとって重要か否かを見極めるために、権利者の当該商標の利用状況等についても調

査をおこなうこと有益であるとかんがえられる。

商標の譲渡に係る費用の一例は以下のとおりである。

図表 100 商標の譲渡の所要費用(例)263

項目 行政費用

(台湾ドル)

代理費用

(US$)

費用総額

(US$)

商標権譲渡の書類記載 2,000 250 310

④別商標での登録

異議申立てや、著名商標として認定されることが困難である場合は、新たに別の商標で

出願をすることが考えられる。別の商標を登録する際は、すでに登録されている商標と類

似していないかについて確認する必要がある。前述のとおり、仮名を使用した日本語での

登録も可能であるが、それらの商標を中国語に翻訳したときの意味が、既に登録されてい

る商標と類似しているかの判断基準となることに留意する必要がある。

なお、登録したい商標が他者によって先に登録されている場合に、当該商標を意匠とし

261台湾I事務所ヒアリング 262 「商標法」第22条:商標出願により生じた権利は,他人にすることができる。第32条:登録商標につい

ての変更は,登録庁が記載し,記録しなければならない。記録されていない事項は,第三者に対抗す

ることができない。商標が登録された場合は,登録商標及びその使用に係わる指定商品又はサービス

についての変更をしてはならない。ただし,前記の規定は,使用に係わる指定商品又はサービスの範

囲の減縮には適用されない。 263台湾I事務所ヒアリング

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て登録することはすすめられない。意匠の登録審査時には、商標権の登録状況との整合性

は厳密には審査されないが、仮に意匠としての登録が許可されたとしても、すでに登録さ

れている他者の商標名を使用することは、既登録の商標に対する権利侵害となり、商標権

者によって異議が申し立てられる可能性が高いためである264。

264 台湾行政院経済部知的財産局ヒアリング

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第3節 日本産農林水産物の商標検索

行政院経済部知的財産局の登録商標データベースを用いた商標の検索方法は以下のとお

り。

1)「商標」を選択 2)「図様文字尋調」を選択 3)ブランド名を入力

日本産農産物の名前を入力

例:あきたこまち(秋田小町)

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第4節 商標登録に関する対抗手段

(1)商標権侵害に当たる行為と対抗手段の概要

商標権の侵害のケースとして、以下のものがある265。

図表 101 商標権侵害のケース

しかしながら、以下のようなケースは、例外として商標権の侵害には当たらない。

図表 102 商標権の侵害に当たらないケース266

商標権の侵害行為に対しては、何人も知的財産局に通報することができ、知的財産局が

265 「商標法」第 62 条:次に掲げる事情の何れかにおいて商標権所有者の同意が得られていないときは、

商標権侵害が生じているものとみなす。 (1) ある者が、他人の登録周知商標と同一または類似の商標

を故意に使用しているか、または当該周知商標に含まれている語句を、その事業の主体または出所を

特定する会社名、商号、ドメインネームその他の表示として使用し、そのため、前記の周知商標の名

声または識別性を減殺している場合 (2) ある者が、他人の登録周知商標と同一または類似の商標を故

意に使用しているか、または当該周知商標に含まれている語句を、その事業の主体または出所を特定

する会社名、商号、ドメインネームその他の表示として使用し、そのため、その商品またはサービス

の関係消費者に混同を生じさせている場合 266 「商標法」第 30 条

イ)同一または類似の商品またはサービスに対し、登録商標と同一の商標を使用すること

ロ)同一または類似の商品またはサービスに対し、登録商標と類似の商標を使用すること

ハ)他人の著名商標であることや登録商標であることを明らかに知りながら、商標権者の同意を

得ずに、商標に含まれる文字を自己の会社の名称や商号名称、ドメインネーム、またはその

他の営業主体や配給元を表す標識として使用すること

イ)善意かつ合理的に使用する方法で、自己の氏名や名称、その商品やサービスの名称、恵贈、

品質、用途、産地等を表示するために使用し、商標としては使用しない場合。

ロ)商品または包装の立体形状が、その機能を確保するために必要である場合

ハ)他人の商標の登録出願以前に、善意で同一または類似の商標を、同一または類似の商品や

サービスに使用する場合(ただし、これは現在使用している商品やサービスに限られ、商

標権者は当該商標を使用するものに対して、登録商標と区別するために適当な表示を当該

商品やサービスに付すことを要求することが可能である。)

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権利侵害者を取り締まる「行政ルート」および裁判所が法的な対抗措置を講じる「司法ル

ート」のいずれかの手段によって権利侵害に対抗することとなる267。

このうち、一般的なのは「行政ルート」であり、権利侵害品の販売停止や罰金等による

行政処分が講じられる。「司法ルート」は、時間的・経済的負担が大きいことから「行政ル

ート」と比較すると敬遠される傾向にあるようである。中国同様、行政機関を動かすため

には、相応の証拠が必要であり、その証拠収集は、商標権侵害を受けた商標権者の責任と

負担によって行わなければならない。そのため、証拠収集を専門に行う調査会社に依頼し、

証拠の収集を行うことも可能である268。

また、行政機関や司法機関に頼らず、商標権侵害を受けた商標権者自らが講じる私的手

段としては、弁護士事務所を通じて、権利侵害者に対し警告を発する(一般的には、警告

状を送付する)ことも一案である。

(2)私的手段

自己の商標権が侵害されていることを知った際には、弁護士を通じて侵害側に対して警

告を発することが考えられる。ただし、この方法は侵害者を特定しているときにのみ有効

であり、侵害者が特定できていない段階においては、的確な警告を発することは難しい。

前述のとおり、商標権を侵害する商品を販売した場合も、商標権侵害行為として罰則の

対象となることから、権利の侵害品を販売している小売店等に警告を発し、販売を停止す

ることを求めることは有効である。警告を行っても侵害者が侵害行為を停止しない場合は、

行政機関や司法機関を巻き込んだ、公的手段での対応を検討する必要がある。

なお、警告状を送付するという行為は、相手側に対して、偽装品の製造・販売という事

実が露見したことを知らせることにもなるため、証拠隠滅等によって摘発活動の障害とな

る可能性があることを念頭におき、送付のタイミングを慎重に図る必要がある

267 「商標法」第 53 条:商標使用の排他権を侵害するような行為をなし、紛争となった際は、まず当事者

による協議を行うが、当事者が協議を避けたがるまたは協議が成立しないときは、商標登録者または関

係当事者は人民法院に提訴するか、工商行政管理局に処理を請求することができる。 268 聖島国際特許法律事務所ヒアリング

行政院経済部知的財産局

住所:台北市辛亥路 2 段 185 號 3 樓

電話:商標 886-2-2376-7570/ 886-2-2376-7500

知的財産局高雄服務處

住所:高雄市前金区成功 1 路 436 號 8 樓

電話: 886-07-271-1922/ 886-07-271-1923

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また、新聞広告やホームページ等を通じて、消費者に対し当該商標の偽装品が出回って

いることを知らせ、粗悪品を購入しないように訴えることが考えられる。その際、偽装品

の写真や販売場所等、偽装の状況、見分け方についてできる限り多くの情報を開示するこ

とで、消費者に対して注意喚起を行うことが重要である。また、可能であれば、販促のた

めのイベント会場等でも注意喚起を行うことが望ましい。

これらあまり費用がかからない対抗手段は、積極的に行うべきである。機会があるごとに

注意喚起を行うことによって、侵害者に対して譲歩しない姿勢を示すことができるととも

に、偽装品を購入した消費者からのクレームを防ぐ、あるいは減らすことが期待できるか

らである。また、将来、侵害者から逆に権利侵害で訴えられる等の予期しない事態が生じ

た場合にも、自分が正当に商標を使用し、かつ保護してきたことを証明する手段としても

利用することができるため、対抗手段を講じた場合には、その時期や手段について記録し

ておく必要がある。

(3)公的手段

①行政ルート

イ)行政院法務部調査局への調査依頼

商標権の侵害事案について、行政院法務部調査局に調査を依頼することが考えられる。

調査局は、1980 年 8 月 1 日にその前身の司法行政部調査局から再編成された組織であり、

法律に関する専門的な調査機関として活動している。同局は知財権侵害案件の調査におい

ては、検察・警察と協力し合って 前線で調査活動を行っているほか、知的財産権を保護

するための人材育成事業や、制度設計支援等を行なっている。法務部によると、2005 年の

1 月から 9 月までの間、検察院は 4,207 件の知的財産権侵害事案を取り扱っており、調査局

は 3,831 件について調査を実施している。このうち、509 件が立件され、623 人の被告人が

弁護士を通じた警告状の効果

「日本の工場から輸入している「P」の商標権侵害が発生した。相手は著名な調

味料メーカーであり、早速、弁護士を通じて警告状を送付した。しばらくして、先

方より「まったくの不可抗力であり、速やかにラベルを変更する」旨の謝罪があっ

た。当方としては、瓶やラベルそのものは異なるものの、メインとなる「ぽんしゃぶ」の

標記がフォント・サイズも含めて同一であったことから、悪意によるものと考えたが、

事を荒立てる必要も無いと判断し、矛を収めた。」

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起訴されている269。

調査を依頼するためには、自己の権利が侵害されたことを証明するための証拠収集を行

う必要があるが、権利者が自ら偽装を行なっている製造者を突き止め、権利侵害品を証拠

として押収することには限界がある。また、安全性の面からも、偽装品の製造元や流通ル

ートを突き止める際には、まず弁護士事務所や、専門の調査会社へ相談し、調査を委託す

ることが考えられる。調査会社を通じた証拠収集および行政摘発の流れは以下のとおり。

269 行政院法務部ホームページ

行政院法務部調査局

住所:10048 台北市重慶南路一段 130 號

電話:886-02-2314-6871

FAX: 886-02-2389-6274

図表 103 調査会社を活用した行政摘発のプロセス

⑤ 検察署・警察による摘発の実施 権利侵害の事実を把握すると、検察署は警察と共同で侵害者に

対する摘発を行う。

③ 権利者からの正式な調査依頼 権利者は自ら鑑定を行い、調査会社の入手した証拠品が確かに権

利を侵害していると確認した後、調査会社に正式な調査依頼を行

う。調査会社は、偽装品の流通ルートおよび製造元の確認等を行

う。

② 証拠品の購入 調査会社は、権利侵害者の依頼を受けると、市場に流通している

偽装品を証拠品として購入し、権利者へ報告する。

① 調査の依頼 自己の権利が侵害されているという情報を入手した際には、弁護

士事務所や調査会社に依頼し、権利侵害に関する具体的な調査に

着手する。

④ 摘発の依頼を検察署へ提出 偽装品の販売店や製造元を明らかにした後、調査会社は検察署に

対して権利者からの委任状および商標登録証を提出する。

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164

ロ)水際での模倣品の取締り

水際での取締りは、知的財産権侵害を取り締まる上で有効な対策といえる270。税関に自己

の商標や意匠を登録していると、税関においてそれらの偽装品が見つかった際、税関から

権利者へ通報があり、権利者とその代理人は書面で関税総局または輸出入地の地方関税局

へ模倣品の摘発を依頼することができる。その際提出しなければならない書類は以下の 3

点である。

• 侵害事実の説明および侵害物を識別できるような証拠と説明

• 権利侵害の容疑に関連する輸出入業者の名称、物品の名称、輸出入の場所および日時、

航空機又は船舶の便名、コンテナの番号、物品の置き場所など関連の具体的資料

• 商標登録の書類、著作権の証明又はその他明らかに著作権を認定できるに足る書類

これらの書類を弁護士等の代理人が提出する場合、上記の書類のほか、代理人であるこ

とを証明する証明書類の添付も必要となる。

270 台湾国際専利法律事務所ヒアリング

台北地方法院検察署

住所:台北市博愛路 131 號

電話:886-02-2314-6871

高雄地方法院検察署

住所:高雄市前金區河東路 188 號

電話:886-07-2161-468

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165

水際での模倣品取締り事例

~「コーセー(Kose)」化粧品のケース~

2006 年ごろ、ある台湾業者が香港から、コーセーの化粧品(洗面用乳液)が詰まれたコンテナを輸

入する際、台湾の税関当局が知財権侵害の容疑を理由に貨物を押収し、コーセー及びコーセーの

商標代理弁護士事務所へ連絡した。コーセーは貨物を鑑定した結果、当該貨物が偽物であるとの

結論を下した。税関にて、コーセー化粧品の偽装品が発見されたのは、コーセーが自社商標を台湾

税関に登録していたことがきっかけである。

税関は輸入業者が提供した情報と、コーセーが提供した登録情報との照合を行ったところ、輸入業

者がコーセーおよびコーセーの指定代理業者ではないことに疑いを持った。当初輸入会社は、貨物が

偽物であるということは知らなかったとし、輸入はあくまで平行輸入(メーカーの指定代理業者を経由し

ない別ルートからの輸入)であると主張し、貨物のインボイスなどの書類を提出した。しかし、通常価格

が NT$100 のコーセー製品を、輸入業者は NT$30 で申告しており、明らかに偽物であることを知りなが

ら輸入した可能性がたかい。輸入業者は最終的に容疑を認めている。

その後、輸入業者は自ら和解の意向を示し、コーセー側もこれを受け入れた。輸入業者は賠償金

を支払ったほか、新聞にお詫びの記事を掲載したほか、二度と権利侵害を行なわないという誓約書へ

の捺印で解決した。裁判所は、当事者間の和解にかかわらず輸入業者に対して判決を言い渡した

が、賠償などを伴う和解を申し出た輸入業者側の誠意を配慮し、懲役 2 年未満(執行猶予付)とい

う比較的軽い懲罰となった。

本件から得た示唆は、税関における知的財産権の登録が、偽装品摘発のために有効であるという

ことである。

(台湾国際法律事務所ヒアリング)

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ハ)公平交易委員会による救済措置

他者の名前、商号、商標、商品の容器もしくは梱包、形態、またはその他他人の商品・役

務等の表示の模倣行為(当該模倣行為の目的商品を「侵害物品」という)は禁じられてい

る。権利者は、自分の名前、商号、商標、商品の容器もしくは梱包、形態、または他人の

商品・役務等の表示が模倣された場合、公平交易委員会に対して告発状を提出し、侵害者

による侵害商品の販売・製造、運送、輸出または輸入行為を禁ずる行政措置を請求するこ

とができる271。公平交易委員会は、これらの表示の模倣行為があると認定した場合、期限を

定めて当該行為の停止、改正または必要な是正措置を採るよう命じるとともに、5 万台湾ド

ル以上 2,500 万台湾ドル以下の過料に処すことができることとなっている。

指定された期限を過ぎても、当該違反行為を停止、または改正せず、また必要な是正措置

を採らない場合には、引続き期限が定められ、当該行為の停止、改正または必要な是正措

置を採るよう命令が発出され、是正措置が採られるまで、回数に照らして 10 万台湾ドル以

上 5,000 万台湾ドル以下の過料が連続して科されることとなっている。

公平交易委員会による決定は、行政処分に該当するため、訴訟判決とは異なり、決定が下

されると、不服があっても即時に執行力が生じる。

②司法ルート

イ)民事手続き

商標権の侵害が行われた際、取り得る民事手続きには、侵害の差止め請求および損害賠

償の請求がある。

民事訴訟は原則として被告の居住地による土地管轄(法人の場合は所在地)となるため、

管轄地域の地方裁判所に提起する必要がある272が、侵害行為に関する損害賠償請求訴訟の場

合には、商標権侵害が行われた地域を管轄する裁判所も管轄権を有することとなっている273。

損害賠償額を決定する方法は、以下の 3 つであり、いずれかを選択して損害額を算定す

ることとなる。

271 「不正競争防止法」第 26 条:公平取引委員会は、本規定に違反し、公共利益に危害を与える事件に対し、

告発または職権により、これを調査し処理することができる。 272 「民事訴訟法」第 1 条第 1 項:訴訟は被告の住所の裁判所が管轄する。被告の住所の裁判所が職権を行

使することができない場合は、その居住地の裁判所が管轄する。訴訟の原因となる事実が発生した場

地域の裁判所も管轄権を有する。 273 「民事訴訟法」第 15 条第 1 項:権利侵害行為の訴訟については、その行為が発生した場所の裁判所が管

轄する。

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167

図表 104 損害賠償額を決定する要因

さらに、商標権の侵害によって、商標権者の業務上の信頼が損なわれた場合、商標権者

は侵害者に対し相当金額の賠償を別途請求することが可能である他、商標権侵害者の費用

負担で商標権侵害の事実に関する判例を新聞に掲載することが可能である274。

審理請求のプロセスは以下のとおり。

274 「商標法」第 64 条:商標権の所有者は、侵害者の費用負担により、商標侵害に関する判決内容の全部ま

たは一部を新聞広告するよう請求することができる。

イ)損害賠償は法律に他の規定あるいは契約時に他の約束あるとき以外を除き、債権人

がこうむった損失および逸失した利益を上限とする。(民法第 216 条)

ロ)商標権侵害者がその侵害行為によって得た利益とする。(商標権第 62 条(2))

ハ)押収した商標権侵害に係る商品の小売価格の500倍から1500倍までの金額とする。

ただし、押収した商品が 1500 個を超える場合は、その総額が損害賠償額となる。

(商標法第 62 条(3))

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図表 105 審理の請求プロセス

① 裁判請求書 裁判請求は、①無効審判の対象、②請求人および被請求人の氏

名、国籍および住所、③代理人の氏名、住所、④請求の理由の

記載のある裁判請求書を証拠資料と共に知的財産局に提出し

て行う。

③ 裁判請求書の受理 審理請求書が知的財産局に提出された後、その資料に関する方

式審査が行われる。資料の不備が補正できる場合、請求人に補

正を通知するが、所定期間内に補正をしない場合審理請求は却

下され、資料が完備している場合、審理が開始される。

④ 書面による審理

無効裁判は原則として書類をもって審理するため、無効裁判請

求書のほか、被請求人による答弁も書面により提出される。た

だし、意匠無効裁判の場合、当事者は面談、実験等を用いて説

明を補充、強化することができる。

② 裁判請求に必要な書類、

資料の補正

裁判請求に必要な書類、資料は法令の規定に違反し、その補正

が認められる場合、知的財産局は期限を定め、請求人に補正の

機会を与えなければならない。

⑤ 処分権主義 意匠裁判については、審判手続の開始、審判範囲の特定、審判

手続の終了については、請求人の自律的な判断に委ねられるた

め、原則として、審理の対象は申立てがなされた請求項に限ら

れる。

審判の終了

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ロ)刑事手続き

商標に係る犯罪としては、商標権侵害罪および模倣品販売罪がある275。商標権侵害罪には、

3 年以下の懲役、拘留、または 20 万台湾元以下の罰金が課されることとなっており、以下

の 3 点が商標権侵害罪に該当する。

図表 106 商標権侵害罪に該当する行為

また、商標権侵害罪については、被害者が告訴しなくとも、侵害行為があった場合には、

警察機関や検察機関が刑事訴訟を進めることが可能である。

模倣品販売罪は、違法に使用されている商標を付した商品を故意に販売、展示、輸出およ

び輸入したものに対する刑罰であり、侵害者には 1 年以下の懲役、拘留、または 5 万台湾

ドル以下の罰金が課される。

また、このような違法行為を犯したものが製造、販売、展示、輸出または輸入した商品や、

違法行為に関する物品や書類はすべて没収される。模倣品販売罪は、販売しているものが

模倣品であることを明らかに認識している場合に適用されるものであり、模倣品を正規の

登録商品であると誤認して販売していた場合には処罰の対象とならない。

さらに、関連事業または消費者に一般的に認識されている他人の氏名、商号、または会

社の名称、商標、商品容器包装等を使用し、消費者に誤認を生じさせること、および、そ

のような商品を販売、運送、輸出、輸入することは犯罪行為と認定される。このような犯

罪行為に対しては、3 年以下の懲役、拘留または 1 億台湾ドルの罰金が課される276。

275 「商標法」第 81 条:商標権または団体商標権の所有者からの事前の同意を得ることなく次に掲げる行為

をした者は、3 年以下の懲役、拘留及び、その追加または代わりとして、NT$200,000 以下の罰金に処す

る。(1) 登録商標または登録団体商標と同一の標章を同一の商品またはサービスに使用すること (2)

登録商標または登録団体商標と同一の標章を類似の商品またはサービスに使用し、そのために、関係消

費者に混同または誤認の虞を生じさせること (3) 登録商標または登録団体商標と類似の商標を同一ま

たは類似の商品またはサービスに使用し、そのために、関係消費者に混同の虞を生じさせること 第 82

条 前条において言及した商品を故意に販売し、販売のために展示し、輸出または輸入をした者は、1

年以下の懲役、拘留及び、その追加または代わりとして、NT$50,000 以下の罰金に処する。 276 「不正競争防止法」第 35 条:第 10 条、第 14 条、第 20 条第 1項に違反した際は、中央主管庁が第 41

条の規定により期限を定めてその行為の停止、改善または必要な是正措置を命じる。その期限内に違反

行為の停止、改善をせず、または必要な是正措置を講じず、または停止した後に、再び同一もしくは類

似の違反工をしたときは、違反行為者に対して 3年以下の懲役、拘留に処し、または 1億台湾ドル以下

の罰金を科し、またはこれを併科する。

商標権または団体商標権の所有者からの事前の同意を得ることなく、

イ) 登録商標または登録団体商標と同一の標章を同一の商品またはサービスに使用

すること

ロ) 登録商標または登録団体商標と同一の標章を類似の商品またはサービスに使用

し、そのために関係消費者に混同または誤認の虞を生じさせること

ハ) 登録商標または登録団体商標と類似の商標を同一または類似の商品またはサー

ビスに使用し、そのために関係消費者に誤認のおそれを生じさせること

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公的手段をとる場合の留意点として、代理人(弁護士や弁理士)、調査会社(証拠収集)

の選定には、とくに慎重を期す必要がある。代理人として有資格者を選任しなければなら

ないという現実があるものの、近年、悪質な調査会社等も増加しているとの指摘もあり、

従来より交流のある専門家(例えば顧問弁護士)に依頼するかまたは紹介を得ることが安

全である。

(4)行政当局の取締り状況

知的財産権を保護するため、知財権侵害事件の処理に当たるのは、「保護知的財産権警察

大隊」と呼ばれる行政院内政部の警察署に直属する部隊である277。2003 年に保安警察第二

総体の傘下に開設され、現在は 220 名編成で活動を行っている。大隊には、3 つの中隊があ

り、それぞれに、台北、台中、高雄といった主要都市を管轄する分隊が設置されているほ

か、サーバー犯罪捜査チーム、光ディスクチーム、新聞折り込み広告チーム等取締りの分

野ごとに細分化されたチームが取締りを行っている。これらの中隊は、製造業者や卸売り、

小売店等を対象に捜査を行っており、偽装品の取締りにおいて中心的な役割を果たしてい

る。

また、税関では、模倣品の水際での取締りを行なっている。商標を税関に登録しておく

と、税関職員が税関審査の際、当該貨物に偽装品が含まれていないかについてチェックを

行なう。当該商標と同様または類似する標識を使用した貨物が発見された場合には、税関

より直ちに知権者および代理人に対して通報がなされる。

(5)侵害を未然に防止する方法

まず、登録可能なものについては、即時に登録申請を行うことである。輸出に先立って

販促会や試食会等のキャンペーンを行い、消費者の様子を見守りつつ輸出量を決定、事業

が軌道に乗った後(立ち上げ時期の繁忙期が終了後)、登録申請を視野に入れ始めるという

ケースが多いようであるが、まずは登録ありきという方向へ思考の舵をきるべきである。

申請(承認・登録)によって、一定期間の権利を手にすることが可能であるとすれば、仮

に、事業の推進が停滞すること(または中止)となっても、コストの損失は限定的である。

また、上述の販促会やキャンペーンについて、未登録の商品に関してこれを実施するこ

とは、相当の注意を要する。これらの機会は、知財権ブローカーに対して格好の材料(先

願の機会)を提供することにもなりかねず、権利登録申請のタイミングを図りつつ実施さ

れることが賢明である。

277 台湾行政院経済部知的財産局ヒアリング

財政部税関総局

住所:10048 台北市大同區塔城街 13 號

電話:886-02-2550-5500

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171

図表 107 商標侵害に対する対抗手段

私的手段 公的手段

行政機関や司法機関に訴

えるに十分な証拠が入手で

きていない場合

権利侵害について証明する

十分な証拠が得られている

な場合

調査や審判にコスト・時間を

かけることが困難である場

調査会社や弁護士に係るコ

ストを負担することが可能な

場合

権利侵害者が中小企業で

あり、損害賠償を得られる

可能性が低い場合

損害賠償を請求したい場合

権利侵害者が和解や侵害

行為の停止に応じると考え

られる場合

悪質な権利侵害に遭ってお

り、侵害者に対し刑事罰を

科すことを希望する場合

私的手段と公的手段の使い分けの例

自己の商品の商標が不正に使用された場合

異議申立て(商標法第40条~第49条)

商標無効審判請求(商標法第50条~第60条)

弁護士事務所を通じた警告

権利を取得している場合

公平交易委員会への救済網申立て

知 的財産局へ の救済申立て

知 的 財 産 局による商標無効審判

行政処分

刑事手続

民事手続起

侵害者が侵害行為を止めない場合

司法ルート

公平交易委員会による調査

行政処分

刑事手続

権利を取得していない場合

行政ルート

弁護士事務所を通じた対応・商標の譲渡に向けた交渉・他の商標での商標出願

私的手段 ホームページでの警告、ビラの配布等

情報収集

情報収集

公的手段

私的手段

公的手段

公的手段

自己の商品の商標が不正に使用された場合

異議申立て(商標法第40条~第49条)

商標無効審判請求(商標法第50条~第60条)

弁護士事務所を通じた警告

権利を取得している場合

公平交易委員会への救済網申立て

知 的財産局へ の救済申立て

知 的 財 産 局による商標無効審判

行政処分

刑事手続

民事手続起

侵害者が侵害行為を止めない場合

司法ルート

公平交易委員会による調査

行政処分

刑事手続

権利を取得していない場合

行政ルート

弁護士事務所を通じた対応・商標の譲渡に向けた交渉・他の商標での商標出願

私的手段 ホームページでの警告、ビラの配布等

情報収集情報収集

情報収集情報収集

公的手段

私的手段

公的手段

公的手段

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第3章 意匠

第1節 意匠制度

(1)意匠制度の概要

意匠とは、部品の形状、模様、色彩またはこれらを結合したものであって、視覚に訴える

創作を指す278。意匠権の範囲は、図面に開示された全体のデザインを規準とし、図面や説明

書等の出願書類を統括して指定する物品をもって、その権利を主張するものであるので、

登録意匠の意匠権者は、図面に開示した物品の外観の形状および模様を引き裂いたりまた

は分解することはできず、形状または模様の一部をその他の部分から引き裂いたり分解し

たりして、その意匠権を主張することもできない。

意匠登録の出願では、出願者が願書、図面説明書を知的財産局に提出する。願書、図面説

明書が全て揃った日が出願日として記録される279。出願権者が雇用者、譲受人または相続人

であるときは、創作者の氏名を明記し、雇用、譲受または相続の証明書類を添付しなけれ

ばならない。

なお、台湾に住所を持たない外国人が意匠権を取得するためには、弁理士を代理人としな

ければならない。

(2)意匠権の対象となる意匠

特許法における意匠とは、物品の外観に施される形状、模様、色彩あるいはその中のいず

れかの二つまたは三つの組み合わせに限られ、「物品性」と「視覚性」を具備していなけれ

ばならない。「物品性」とは、「産業上の利用に供するように物品の外観における具体的デ

ザインに応用しなければならない」ことをいう。また、「視覚性」とは、「視覚により訴求

する具体的デザインでなければならない」ことを指している。

その他、以下の各項目に該当するものは、意匠登録を受けることができない280。

278「特許法」第 109 条第 1項:「意匠」とは、物品の形状、模様、色彩またはこれらの結合に関してされた、

視覚に訴える創作をいう。 279「特許法」第 116 条第 1項‐第 3項:意匠出願は、出願者が特許庁に明細書及び図面を添付して、願書

を提出することによって行わなければならない。 出願者が使用者、譲受人または相続人であるときは、

願書に創作者の名称を記載しなければならず、また、雇用、譲渡または相続を証明する書類を願書と共

に提出しなければならない。意匠特許出願に関しては、願書並びに添付の明細書及び図面が提出された

日をその出願日とみなす。 280「特許法」第 112 条:次に掲げるものは、意匠特許を受けることができない。(1) 単に物品の機能によ

って定まる形状の意匠。 (2) 純美術的創作物及び著作物。(3) 集積回路及び電子回路の回路配置。 (4)

公の秩序または善良の風俗または公衆の衛生に反する意匠。(5) 政党旗、国旗、台湾の国父の肖像、国

章、軍旗、国璽または政府が授与する勲章と同一または類似の形状を有する意匠。

知的財産局

住所:台北市辛亥路 2 段 185 號 3 樓

電話:特許 886-2-2376-7607/ 886-2-2376-7608

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図表 108 意匠登録ができないもの

(3)「意匠権」の取得要件

意匠権を取得するためには、当該意匠がすでに登録されたものと同一または類似ではな

いことが条件となり281、以下の要件を備えておくことが必要である。

①産業利用性

産業上利用することのできる意匠は全て登録を受けることができる。すなわち、意匠登録

に係る意匠は、産業上利用することができて、はじめて意匠登録の要件に合致するという

ことであり、これを産業上の利用性という。産業上の利用性は、意匠登録取得要件の一つ

であるとともに本質的な規定であり、先願者の検索を行うまでもなく即座に判断される基

準となっている。通常は、出願案が新奇性および進歩性を備えるか否かを審査する前に、

281「特許法」第 111 条:意匠登録出願に係る意匠が、出願がこれより先で、公告がこれより後の意匠登録

出願に添付された図面説明の内容と同一、又は類似であるときは、意匠登録を受けることができない。

ただし、その出願人と先に出願した意匠登録出願の出願人が同一人物であるときはこの限りでない。

意匠権を巡る最近の動向

○小型車の「Smart Car」が台湾に登場すると、「Smart Car」はその外観から多くの消費者に強烈な印象を与

え、好まれるようになった。ある自動車業者は「Smart Car」の外観設計そのものを立体商標として登録するた

め当局に出願申請を提出しており、現在審査中である。「Smart Car」は、識別性が高いことから、立体商

標として許可される可能性が高い。立体商標として許可されるということはすなわち、消費者がこの特徴的な

外観を見ただけで、容易に「Smart Car」であることを認識できるということを意味する。これはいわゆる「後天

的識別性」であり、英語では「secondary meaning」と呼ぶ。

○日本のサントリー株式会社は、数年前から特徴的な外観設計の瓶入りビールを販売しているが、その独特

の設計が消費者の間で人気を集めている為、同社はこの瓶を「立体商標」として出願し、2005 年に許可さ

れている。

(経済部知的財産局ヒアリング)

イ)単に機能上不可欠な設計からなる物品造形。

ロ)単なる芸術的創作または美術工芸品

ハ)集積回路の回路配置および電子回路の配置

ニ)公序良俗、または公衆衛生を害する物品

ホ)党旗、国旗、国父(孫文)の肖像、国の紋章、軍旗、印章、勲章と同一また

は類似のもの

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産業上の利用性に関する判断が行われる。

②新奇性

新奇性とは、登録出願に係る意匠と同一または類似する意匠が、従来技術の一部を構成し

ていないことを指している。新奇性は意匠登録取得要件の一つであり、登録出願に係る意

匠が新奇性を有するか否かは、通常、当該意匠が産業上の利用性を備えていることが確認

された後、はじめて審査される。

登録出願前に同一または類似の意匠が既に公開されており、一般消費者に周知の意匠、あ

るいは別の先出願案に既に開示されている意匠は、登録許可がなされない。したがって、

登録出願に係る意匠と同一または類似の意匠が出願前に既に刊行物に記載されたり、また

は既に公然使用(パンフレットの配布等)されたりする等して、一般消費者によく知られ

ている場合には、意匠登録を受けることができない。また、意匠登録出願に係る意匠が、

その出願より先に出願され、かつその出願後はじめて公告された意匠登録出願に添付され

ている図面説明書の内容と同一または類似である場合にも、意匠登録を受けることができ

ない。

③創作性

意匠制度は、出願人に専有かつ排他的な意匠権を付与するものであり、出願人が意匠を公

開することを奨励することによって、消費者が当該意匠を利用した商品等を活用すること

ができるようにする制度である。技術工芸に貢献できない先行意匠については、意匠権は

付与されない。したがって、登録出願に係る意匠について、当該意匠の属する技術分野の

通常常識を有する者が出願前の先行技術工芸によって容易に想起されるものであれば、当

該意匠は創作性がないとみなされ、意匠登録を受けることができない。創作性は、意匠権

を取得するための重要な要件の一つである。出願する意匠に創作性があるか否かは、通常、

当該意匠が新奇性を備えていることが確認された後、審査される。

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175

第2節 登録手続きの流れと留意点

(1)出願手続きの流れ(出願~登録)および費用

台湾に営業住所を有していない者が意匠の出願を行う為には、代理人に手続きを委託し

なければならず、代理人は特段の場合を除き弁理士でなければならない282。意匠登録を行う

ためには、必要書類を知的財産局に提出する必要がある。この際、提出する書類は、願書

及び図面説明書であり、発明特許や実用新案に出願する際に必要となる明細書は意匠出願

のためには必要ない。意匠の出願は意匠ごとに手続きを行わなければならず、出願の内容

は 1 物品に対し 1 デザインに限られている。図面に関する説明書は、中国語で記載しなけ

ればならない。意匠の保護期間は 12 年間である。

意匠登録の出願から登録までの一般的な流れは以下のとおりである。

イ)出願者が願書および必要な図面を準備して、知的財産局に提出する。

ロ)審査官は、出願受領後約 10~20 日以内に、出願書類、手続きの方法に対し、法律で規

定されたルールを満たしているかどうかの方式審査を行う。出願書類または手続きに

不備がある場合、出願人(代理人)に、4 ヶ月の期限を定めて補正するよう通知がされ、

期限を過ぎても補正されない場合には、当該出願は受理されない。

ハ)知的財産局が、意匠登録出願書類を受理した後、審査を行い、その結果、手続きに瑕

疵がなく、かつ公開すべきでない事情がないと認められた場合、出願日から 18 ヶ月後

には当該出願を公開しなければならないこととなっている。

ニ)誰でも、意匠登録出願日から 3 年以内に、知的財産局に対して、当該意匠登録出願に

ついての実体審査を請求することができる。審査請求の事実は、知的財産局によって

特許公報に掲載される。

ホ)審査官は、法律に規定された不登録事由の有無の再審査実体審査を行う。不登録事由

がある場合、出願人(代理人)に対して登録拒絶理由が通知され、60 日間の期間を定

めて意見書の提出機会が与えられる。

へ)出願審査終了後、査定書が作成され、意匠出願人またはその代理人に送達される。拒

絶査定となる場合には、査定書に理由が記される。意匠登録出願人は、拒絶査定に不

服がある場合、査定書送達の日から 60 日以内に理由書を備えて再審査(実体審査)を

282 「特許法」第 11 条

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請求することができる。ただし、出願手続きの不適法または出願人不適格の理由によ

り、出願が受理されなかった場合、あるいは却下された場合には、行政救済を提起す

ることができる。再審査の結果、拒絶理由があると認められた場合には、査定前に 60 日

間の期限を指定し、当該期限までに意見書を提出するよう出願人に通知がなされる。

ト)審査の結果、拒絶理由がない(拒絶理由があったが、解消されたことを含む)と認め

られた場合には、意匠登録が許可され、意匠登録請求の範囲および図面が公告される。

公告は、許可査定後、出願人が査定書送達後 3 ヶ月以内に証書料および 1 年目の意匠

登録料を納付した後はじめてなされる。期間が満了しても費用を納付しなかった場合、

公告は行われず、意匠権は 初から存在しなかったものとなる。意匠登録出願された

事案は、公告の日より権利が付与され、証書が交付される。

チ)許可査定を受けた意匠が、次のいずれかに該当する場合、知的財産局は、無効審判請

求により、または職権によって当該意匠権を取り消し、並びに期限を指定して意匠権

を返還させなければならず、返還することができない場合には、意匠登録の取消を公

告しなければならない。

図表 109 意匠が取り消されるケース

イ)意匠権を許可することのできない理由がある場合 ロ)意匠権者の属する国が中華民国国民の意匠登録出願を受理しない場合 ハ)意匠権者が意匠登録出願権者ではない場合 ニ)利害関係者に、意匠権の取消により回復できる法律上の利益がある場合

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図表 110 意匠登録プロセス フローチャート

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(2)審査機関

意匠権の設定の登録や権利行使に係る決定は、商標と同様に台湾経済部知的財産局によっ

て行われる。

図表 111 台湾の行政機構と知的財産局の位置づけ

総 統

公平取引委員

新聞局

内政部 警政署(経済部)

各県市政府警

察局

財務部

法務部

各級法院

(行政裁判所

を含む)

関税総局

商業司

標準検査局

国際貿易局

知的財産局

投資審議委員会

高等法院検察署

各地方裁判所

検察署

知的財産権専門

グループ

調査局

刑事警察局

(偵九隊)

保安警察部隊

各地関税局

知的財産権侵害を取締る行動につ

いて協議、監査、指導に当る作業チ

ーム

知的財産権保

護警察大隊

コンピュータ犯罪

防止センター

経済部

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(3)出願資格

出願資格を有するのは、発明者、考案者、またはその譲受人や相続人を指している。た

だし、外国人が申請する場合、外国人の属する国と台湾との間で、特許の保護に関する協

定または団体や機構間での特許保護に関する協議が行われていない場合、または当該外国

人の本国が台湾市民による意匠出願を受理しない場合は、当該外国人の意匠登録は受理さ

れない283。

(4)代理機関

台湾に営業住所を持たない外国機関が意匠権登録の出願を行う際には、代理人を通さな

ければならない284。意匠登録代理人は、台湾に住所を有していなければならず、弁理士でな

ければならない。

(5)その他、留意点(特に日本語の意匠で意匠権が取得できるか否か)

外国語による登録を排除する規定は無いが、消費者の理解を困難にさせるようなデザイ

ンでは許可されないこともあり得ることから、中国語による補助的な説明に相当するデザ

インを併用することが安全である。かつ、その中国語が、先願者の権利を侵していてはな

らないことは言うまでもない。

(6)類似の範囲

出願される意匠は、図面に開示される点、線、面から三次元空間における全体像によっ

て構成されるものと考えられている。意匠の相同、類似を判断する場合には、図面に開示

される形状、模様、色彩から構成される全体が観察される。各々の要素または細微の局部

差異に拘らないが、機能性に関する意匠は排除される。

以下に意匠に係る三つの行政法院判決の要旨を示す。意匠の相同、類似の判断において

は、全体的な意匠を対象とすべきである点が示されている。

283 「特許法」第 4条:在外出願人がした特許出願は、当該在外出願人の本国が、台湾も締約国である特許

権の保護に関する国際条約の締約国でない場合、または当該本国が台湾との間に特許権の相互保護に関

する条約若しくは協定を締結していない場合、または台湾及び当該外国に属する団体または協会の間で、

主務官庁が承認した特許保護協定が締結されていない場合、または当該外国の法律が台湾国民がする特

許出願を受理しない場合は、拒絶することができる。 284 「特許法」第 11 条第 2項‐第 3項:中華民国内に居所または営業所の何れも有していない者は、特許

出願及び特許関連事項に関して本人を代理して手続をする代理人を指名しなければならない。法律及び

規則に別段の定めがある場合を除き、代理人は公認特許弁護士に限定されるものとする。

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図表 112 意匠の類似の範囲に係る過去の判決

イ)意匠は新規的な創作でなければならない。すなわち、全体的な観察では、その主な特徴は、

既存の意匠と類似しないまたは異ならなければならない。(74 年判字第 520 号判決)

ロ)意匠の主な部位の造形の特徴は、引証の主な造形の特徴と相同で、両者の全体的な外観を

対比すると、全体的な隔離観察では、その間の差異を区別することができなく、既に類似に

構成する。(74 年判字第 456 号判決)

ハ)物品造形に一つの相異があれば、意匠を受けることができるとは限らない。(74 年判字第

113 号判決)

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(7)他者がすでに同一または類似の意匠について意匠権を取得しているときの対応策

これから出願したいと思っていた意匠が、すでに他者によって意匠登録されていた場合、

知的財産局に意匠の無効審判請求を行なうことができる。また、登録者に対し、意匠の譲

渡を申入れること及び別の意匠による登録が対応策として考えられる。

①無効審判請求

意匠権の無効審判を希望する利害関係者もしくは審査官は、審判請求書を作成し、知的

財産局へ提出する。知的財産局はまず書類の不備等がないかについて審査を行い、その後、

意匠権の登録者(被請求人)に対して無効審判請求が提出されたことを通達する。その後

被請求人は 30 日以内に答弁を請求しなければならない。答弁は請求者にも送付され、次い

で請求者が答弁を行う。これらのプロセスに従って審理が行われ、審決が決定する。当該

意匠権の無効が決定すると、意匠権は消去され、被請求人は権利を失う。

意匠権無効審判の流れは、以下のとおり。

図表 113 意匠権無効審判の流れ

① 審判申立申請書の提出 意匠権の利害関係者もしくは審査官が、審判申請書を 2部知的財産

局に提出し、知的財産局は書類に不備がないかを確認する。(方式

審査)不備が見つかった場合は請求人へ補正命令が下される。

④ 知的財産局による判定の発表 知的財産局意匠権組が上記の答弁内容を審査し、 終判定を発表す

る。このプロセスにはさらに 4~6ヶ月を要する。

⑤ 高等行政訴訟

知的財産局の判定に対して、不服があれば、高等行政裁判所(高等

行政法院)に提出し、行政訴訟を起こすことが可能である。高等行

政裁判所の判定までには 8 ヶ月~1年を要する。

③ 書面による答弁のやり取り 相手側が異議申立申請書を受けると、書面による答弁を 2部知的財

産局に提出し、その中の 1 部が知的財産局から異議申立側の弁護士

事務所に送られる。このような書面による答弁のやり取りは数回行

われ、通常 6 ヶ月を要する。

⑥ 最高行政訴訟 高等行政裁判所の判定に対して、さらに不服があれば、 高行政裁

判所に提出することが可能である。このプロセスにはさらに 6ヶ月

~10 ヶ月を要する。

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②意匠の譲渡

登録したい意匠は、他者に譲渡することが可能であることから、当該意匠の登録者に対

して意匠の譲渡を申入れることが考えられる285。意匠の譲渡を行う際は、知的財産局に対し、

意匠の譲渡に係る申請を行わなければならない。申請には、意匠権者および譲受人の申請

書及び意匠権譲渡契約書を提出しなければならない286。

意匠の譲渡を行う際は、商標の譲渡と同様に、弁護士事務所を通じて行なうことが円滑

な手続きのために有益と考えられる。

③別の意匠での登録

意匠登録者が譲渡に応じない等、意匠の譲渡が困難である場合は、別の意匠で出願を行

なうことも考えられる。新しく意匠を出願する際は、当該意匠が既に登録されているほか

の意匠と類似していないことを確認する必要があることから、弁護士に依頼して登録済み

の意匠の検索を行うこともできる。

285 「特許法」第 6 条第 1 項:第 6 条 特許出願権及び特許権の何れも、譲渡すること及び相続することが

できる。

286 「特許規則」第 40 条第 1項:特許権譲渡の登録及び新特許証の交付を申請するときは,原特許権者又

は譲受人は申請書,原特許証及び特許権譲渡契約書又は当該譲渡を証明するそれ以外の書類を提出しなけ

ればならない。

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第3節 日本産農林水産物の意匠検索

行政院経済部知的財産局の登録意匠データベースを用いた意匠の検索方法は以下のとお

り。

1)「専利」を選択 2)「専利資料検索」から、「中華民國專利資訊網」を選択 3)意匠名を入力

名前を入力

例:秋田小町

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第4節 意匠登録に関する対抗手段

(1)どのような行為が権利の侵害と認定されるか

意匠権の侵害とは、意匠権者の同意を得ずに、当該意匠に係る物品および類似した物品

を製造、販売の申し出をし、販売、使用、もしくはこれらの目的のために輸入する行為の

ことをいう。

権利侵害の種類としては以下のものがある。

図表 114 意匠権の侵害行為

(2)私的手段

自己の意匠権を侵害されていることが明らかになった際には、弁護士を通じて侵害側に

対して警告を発することが考えられる。その際、行為の中止のみを求めるのか、あるいは

和解金を請求するのか等について、弁護士との綿密な打合せが必要となる。警告を行って

も侵害者が侵害行為を停止しない場合は、行政機関や司法機関を巻き込んだ、公的手段で

の対応を検討する必要がある。

(3)公的手段

①行政ルート

イ)違法業者への警告の送付

2005 年、台北市第二果菜市場の業者が日本産の新高梨内側包装用紙を他所産梨の包装に

流用していることが発覚した。以来、政府が正式文書を発出し、各主管部門と業者側が頻

繁に模倣品の検査を実施した。事案が発覚した後、政府部門は違法行為のあった業者に対

し、再度模倣品を販売した場合はライセンスを取り上げるという警告を送付している287。こ

のように、警告状の発出は、行政部門経由でも行うことが可能である。ただし、公的機関

287 台湾農業委員会農糧署へのヒアリング

イ)第三者が意匠権所有者の同意を得ずに、当該物品を製造、販売、使用または輸入

すること。

ロ)第三者が自ら当該物品を製造、販売、使用または輸入すること。または当該方法

を持って直接製造した物品を製造、販売、使用または輸入することはしないが、

直接的侵害者を積極的に誘引すること。ただし、これは意匠直接侵害が成立する

ことを前提とする。

ハ)第三者が意匠権者の許可を得ずに、権利の部分的あるいは全体的な技術を使用し

て製造、販売すること。

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への申請に際しては、相応の根拠を求められることから、これを単一の被害機関において

負担することはコストの問題および証拠収集過程における危険性の問題からも負担が大き

い。台北および高雄に所在する財団法人交流協会に相談し、然るべきルートから、台湾行

政側の担当官同行のもと、現場への立入検査等を実施することが早期解決につながる。

②司法ルート

2003 年 3 月 31 日以降、すべての特許権の侵害案件は民事訴訟で扱われている288。意匠権

も特許権の一部であるため、刑事罰を適用することができないのである。意匠権等の侵害

行為に対する対応策は、民事手続きによる侵害行為の差止めおよび損害賠償請求のみとな

っている。

意匠権が侵害された際には、意匠権者は損害賠償、並びにその侵害を排除することを裁

判所に請求できる。また、侵害の恐れがあるときは、その防止を請求できる。

知的財産権に関する訴訟は管轄裁判所に提起しなければならないが、どの地方裁判所に

提起するかを定める土地管轄は、被告の所在地・法人の所在地ほか、特別審判籍として事

務所・営業所所在地、侵権行為地がある。また、被告が複数人である場合で、その住所が

同一裁判所の管轄区域にない時は、各住所地の裁判所がいずれも管轄権を有する。管轄権

に関する民事訴訟法の規定は以下のとおりである。

図表 115 管轄権に関する規定

288 2003 年 2 月 6 日に行われた改正によって、特許法から権利侵害に関する刑罰規定が削除された。

イ) 訴訟は、被告の住所地の裁判所が管轄する。被告の住所地の裁判所が職権を

行使することができないときは、その居所地の裁判所が管轄する。

ロ) 私法人その他訴訟当事者となることができる団体に対する訴訟は、その主た

る事務所または主たる営業所の所在地の裁判所が管轄する。

ハ) 外国法人その他訴訟当事者となることができる団体に対する訴訟は、その中

華民国にある主たる事務所、または主たる営業所の所在地の裁判所が管轄す

る。

ニ) 事務所または営業所を有する者に対して、その事務所または営業所に関して

訴訟するときは、その事務所または営業所の所在地の裁判所が管轄する。

ホ) 不法行為に関して訴訟を提起するときは、行為地の裁判所が管轄することが

できる。

へ) 共同訴訟の被告が複数人であり、その住所が同一裁判所の管轄区域内にない

ときは、各住所地の裁判所がいずれも管轄権を有する。

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侵害差止請求権や損害賠償請求権を行使する場合には、裁判所への提訴が必要であり、

それには訴状が必要となる(判決を請求する事項、主張および証拠を明記)。また、訴訟を

代理人に委任した場合には、委任状を提出しなければならない。委任状には、会社印と代

表者印を押捺、また、外国法人の場合、委任状に公証あるいは認証を受ける必要がある。

○侵害差止・防止請求

侵害があった場合、侵害差止請求権によって侵害者の侵害行為の停止を請求できる。ま

た、侵害のおそれがある場合でも、客観的な事実があれば、侵害防止請求権を主張するこ

とができ、また、侵害者の故意や過失を前提とせずに差止請求を行うことが可能である。

○損害賠償請求権の行使

損害賠償請求権の要件は、以下のとおり。

図表 116 損害賠償請求権の要件

損害賠償を請求するときは、次のいずれかを選択して、その損害を算定する289。

ⅰ)証拠方法を提供してその損害を証明できないときは、意匠権者はその意匠権を行使し

て通常得られる利益より、損害を受けた後に同一の意匠権を行使して得られる利益を

差し引いた差額をその受けた損害額とする。

ⅱ)侵害者が侵害行為によって得た利益による。侵害者がそのコスト、または必要な経費

にて立証できないときは、当該物品を販売して得た収入の全部をその所得利益とする。

ⅲ)意匠権者の業務上の信用が侵害行為により毀損されたときは、別途相当の金額の賠償

を請求することができる。

289 「特許法」第 85 条:前条の規定によって損害賠償を請求するときは、損害額の計算上、次に掲げる選

択肢の一方を採用することができる。 (1) 民法第 216 条の規定に従って請求すること。ただし、損害

額を正当化する証明方法の提示が不可能なときは、特許権者は通常、その発明の実施によって期待す

る利益から、侵害が生じた後に特許の実施によって得た利益を控除した後の差額を損害額とすること

ができる。(2) 侵害者が侵害の結果取得した利益を基にして請求すること。侵害者がその原価または

必要経費を正当化する証拠を提出することができない場合は、侵害物品の販売によって得た収入の総

額を侵害者の利益とみなす。前段落に記載した規定に加え、侵害の結果、特許権者の事業上の信用が

低下させられるかまたは損なわれたときは、特許権者は別途適切な金額で損害賠償の請求をすること

ができる。裁判所が侵害行為は故意によるものであると認定したときは、裁判所は、前 2段落の規定

に従うことを条件として、侵害の実体を斟酌して、推定損害金額より高額であるが、その 3倍を超え

ない金額での補償を決定することができる。

イ) 侵害行為

ロ) 行為の違法性

ハ) 違法な侵害による損害

二) 侵害行為と損害発生の因果関係

ホ) 侵害者の行故意・過失

へ) 侵害者の責任能力

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ⅳ)侵害行為が故意になされたときは、裁判所は侵害の状況を斟酌して損害額以上の賠償

額を決定することができる。ただし、三倍を超えることはできない。

損害賠償の当事者は、地方裁判所の判決に対して不服がある場合、高等裁判所に対して

控訴でき、控訴判決に不服の場合には 高裁判所に対して上告し、争うことができる290。控

訴と上告を行う場合には、判決の送達を受けてから 20 日以内291に上訴の提起を行わなけれ

ばならず、また、控訴審では、事実認定と法律判断の両者に関して争うことができるが、

上告はあくまで法律判断に関するものでなくてはならない。ただし、財産権については、

上告によって受ける利益が 150 万台湾元を超えないときは、上告できない。

なお、将来勝訴判決を得てもその執行ができなかったり著しく困難になるような事態を

避けるため、強制執行の対象としたい財産を、債務者が第三者に処分したり隠ぺいしない

ように債務者の手元に一時固定しておく制度を保全制度という。

<訴訟に要する費用>

第一審に要する費用は以下のとおりである。第二審、第三審については、第一審の計算

基準に基づき、これに裁判費用の 50%を追加徴収する。

請求する訴訟標的の金額が

• 10 万台湾ドル以下:1000 台湾ドル

• 10 万台湾ドル~100 万台湾元以下:訴訟標的の金額の 1%

• 100 万台湾元~1000 万台湾ドル以下:訴訟標的の金額の 0.9%

• 1000 万ドル~1 億台湾ドル以下:訴訟標的の金額の 0.8%

• 1 億台湾ドル~10 億台湾ドル以下:訴訟標的の金額の 0.7%

• 10 億台湾ドル~:0.6%となる。

(4)行政当局の取締り状況

商標と共通するところではあるが、市場における取締りについて、まず第一義的には市

場の管理者によって行われることとなっている。他方、地元政府の担当者は、不定期に市

場を巡察し、不正事案の取締りに従事している。さらに、知的財産権を保護する為の司法

制度整備も行われている。台湾では知的財産権に関する民事、刑事、行政訴訟案を専門に

審理する、知的財産裁判所の設置が 2006 年に決定した。同裁判所では、3 つの法廷に 15 名

の裁判官を配置し、ドイツの特許裁判所をモデルとして知的財産権分野や技術者を起用す

るなど、専門的な案件にも対応が可能となる体制となっている。

290 「民事訴訟法」第 437 条:第 1審の終局判決に対して、別の規定がある場合を除き、管轄する第 2審の

裁判所へ上訴する。第 464 条:第 2 審の終局判決に対して、別の規定がある場合を除き、管轄する第

3審の裁判所へ上訴する。 291 不変期間法定期間とは、法定期間のうち、裁判所が自由に期間の伸縮をすることができないものを指す。

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(5)侵害を未然に防止する方法

海外で製造され、台湾で販売されている偽装品を未然に防ぐ方法として税関に意匠を登

録する方法がある。税関に意匠を登録しておくことによって、通関貨物の中に意匠権の侵

害となるものが含まれている際、税関から登録者および代理人へ通報がなされるシステム

となっている。近年、台湾では中国からの偽タバコや輸入禁止の農林水産物の密輸が増加

していることから、台湾当局はこれらの偽装品の水際措置として、同制度を導入したもの

である。

また、インターネット上の商品取引サイトをモニタリングすることも有効であると考え

られている。偽装品の取引はインターネット上で行われることも多いことから、自分が意

匠権を保有している商品について定期的にインターネット上のサイトを巡回し、取引がな

されていないかをチェックすることが有効である。また、知的財産保護警察大隊も常にイ

ンターネットを監視しており、偽装品を発見した際には、被害者や代理人に連絡を行う体

制が整っている。とはいえ、無数の対象を監視することは物理的な困難がともなうことが

明らかであるため、何よりも自己防衛の意識を高め、モニタリングを行うことが奨励され

る。

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図表 117 意匠権侵害に対する対抗手段

私的手段 公的手段

行政機関や司法機関に訴え

るに十分な証拠が入手でき

ていない場合

権利侵害について証明する

十分な証拠が得られている

な場合

調査や審判にコスト・時間を

かけることが困難である場合

調査会社や弁護士に係るコ

ストを負担することが可能な

場合

権利侵害者が中小企業であ

り、損害賠償を得られる可能

性が低い場合

損害賠償を請求したい場合

権利侵害者が和解や侵害行

為の停止に応じると考えられ

る場合

悪質な権利侵害に遭ってお

り、侵害者に対し刑事罰を科

すことを希望する場合

私的手段と公的手段の使い分けの例

自己の商品の意匠が不正に使用された場合

弁護士事務所を通じた警告

権利を取得している場合 公平交易委員会への

救済申立て

知 的 財 産 局 への救済申立て

行政処分

知的財産局による意匠無効審判

行政処分

民事手続

侵害者が侵害行為を止めない場合

公平交易委員会による調査

私的手段

公的手段 専利無効審判請求(特許法第54条)

ホームページでの警告、ビラの配布等

弁護士事務所を通じた対応・意匠の譲渡に向けた交渉・他の意匠での意匠登録

権利を取得していない場合

私的手段

公的手段

行政ルート

司法ルート

情報収集

情報収集

自己の商品の意匠が不正に使用された場合

弁護士事務所を通じた警告

権利を取得している場合 公平交易委員会への

救済申立て

知 的 財 産 局 への救済申立て

行政処分

知的財産局による意匠無効審判

行政処分

民事手続

侵害者が侵害行為を止めない場合

公平交易委員会による調査

私的手段

公的手段 専利無効審判請求(特許法第54条)

ホームページでの警告、ビラの配布等

弁護士事務所を通じた対応・意匠の譲渡に向けた交渉・他の意匠での意匠登録

権利を取得していない場合

私的手段

公的手段

行政ルート

司法ルート

情報収集情報収集

情報収集情報収集

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第4章 産地表示制度

第1節 原産地表示の概要

(1)原産地の確定

①輸入農林水産物・食品の表示に係る条例・基準

容器に入ったもしくは包装された食品には、原産地の表示が義務付けられている292。

図表 118 原産地表示に係る規則

②原産地の認定基準293

輸入貨物は、「一般貨物」、「低度開発国家貨物」、「自由貿易協定締結国あるいは地域貨物」

の 3 種類に分類されている。

一般貨物294に関しては、完全に 1つの国(地域)で生産された場合には当該国(地域)が

原産地とされる。当該貨物の生産に 2 つ以上の国(地域)が関わっている場合には、当該

貨物が 終的に実質的な変化を完成した国(地域)が原産地となる。

低度開発国家からの貨物295に関しては、当該国で完全に生産された場合は当該国が原産地

となる。2 つ以上の国が生産に関わる場合は、付加価値率が 50%以上を占める当該国が原

292 「台湾行政院衛生署公告第 0960404142 号」

1.容器または包装を有する食品は、中国語で原産地または原産国を見やすく標示しなければならない。

ただし、中国語の標示により、製造者であること、またその所在住所から原産地を判明できるのであ

れば、この限りでない。

2.原産地標示の字体の縦幅と横幅は 2ミリメートル以上でならなければならない。

3.輸入食品の原産地は、財政部と経済部の発表した我国「輸入貨物原産地認定基準」(別添のとおり)に

より認められる。

4.本公告は 2008 年 1 月 1日から実施する。(製造日に基づく)

5.業者は、実施日までに在庫の包装資材を使い尽くさない場合は、2007 年 12 月 1 日までに組合を経由

し、在庫量及び予定の使用期限を所轄の衛生局に報告しなければならない。 293 1994 年 9 月 30 日に財政部・経済部によって発表され、その後 2002 年 1 月 8日、2004 年 3 月 29 日およ

び 2008 年 1 月 17 日に 3度にわたり改正されている。 294 税関輸入税則第二欄税率が適用されない 295 税関輸入税則第二欄税率が適用される

イ)08 年 1 月 1 日以降に製造される容器入りもしくは包装された食品には、原産地の

表示を義務付ける。

ロ)原産地は、中国語で見やすく表示しなければならない。ただし、中国語で表示さ

れた製造者およびその住所から原産地が明らかである場合は、この限りでない。

ハ)原産地を表示する文字の大きさは、縦幅と横幅が 2ミリメートル以上であること。

ニ)輸入食品の原産地については、「輸入貨物原産地認定基準」に基づいて判断する。

ホ)07 年 12 月 31 日までに在庫の包装材を使いきれない場合、2007 年 12 月 1 日まで

に組合を経由し、在庫量および予定の使用期限を所轄の衛生局に報告しなければ

ならない。

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191

産地となる。

自由貿易協定国(地域)からの輸入貨物については、それぞれの協定における原産地認定

基準に従う296。

輸入貨物の原産地認定は、輸入地の関税局において行われ、認定に異議がある場合には、

関税局の求めに応じ、期限内に産地証明文書297あるいはサンプルを提供する必要が生じる。

期限内に必要な資料を提供できなかった場合には、その他の機関(行政院農業委員会、経

済部およびその他関連機関)に対して期限付きで書面意見を求めることができる298。

輸入地の関税局は、貨物輸入申請日から 2 ヶ月以内に原産地認定を完了させなければな

らないが、必要に応じて 1 回に限り 2 ヶ月間順延できることとなっている。

第2節 原産地等表示違反に対抗する手段

(1)行政当局の取締り状況

警察は、偽装品発見後、24 時間以内に正確な真贋鑑定の結果をとりまとめる責任を負っ

ている299。時間内に証拠固めが完了しなければ、被疑者を釈放しなければならない。台湾で

活動している外資系企業の中で、24 時間以内に鑑定人が警察へ到着可能な体制をとってい

るのは、ルイヴィトンのみである300。警察としても、証拠不十分で釈放されることが明らか

なケースは事件化しない方向であり、対応の甘い企業が狙い撃ちされることになる301。

台湾が日本から輸入している農林水産物のうち、果物や加工品が偽装表示の被害に遭っ

ているケースが多いようである。例えば、農政局を通じたアンケート302にて確認した偽装表

示の事例をみると、梨やぶどう等その多くが市場において発見されていることが分かる。

アンケートの回答にあった偽装表示の事例は下表に示すとおりである。

296 「輸入貨物原産地認定基準」第 2条:本基準の低度開発国家は輸入税関税則第 2 項の税率に適用する特

定低度開発国家を指す。 297 取引文書、当該貨物の原材料あるいは加工材料などの関連資料。 298 原産地の認定過程において、納税義務人が関税法第 28 条第 1項に基づき貨物管轄機関あるいはその他

専門機関に認定の協力を求める場合は、まず輸入地関税局に知らせる必要がある。輸入地関税局は、サ

ンプルおよび関連資料を貨物管轄機関あるいはその他専門機関に送付し、その認定意見を聞いてから原

産地認定を行う。 299 実際には、警察の持ち時間は 16 時間、残り 8時間は検察の持ち時間。 300 台湾を南北の地域に分割し、それぞれ 1 名ずつの鑑定人を常駐させている。 301 財団法人台湾交流協会台北事務所ヒアリング 302 同アンケートは、2007 年 11 月、農林水産物の偽装表示の状況を把握するため農林水産省より全国の農

政局を通じて、各地の農政関係者に対して実施した。

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192

図表 119 アンケートに回答のあった偽装表示の事例

自治体・企業名 発見した偽造品 発見した場所

A県 梨 台北 第 2 果菜市場

B県 ピオーネ 台北 第 2 果菜市場

C県 ニューピオーネ 台北 第 2 果菜市場

D県 うどん 台北 新光三越信義店

E県 梨 台北 第 2 果菜市場

F県 梨 台北 第 1 果菜市場

第 2(濱江街)果菜市場

韓国産梨の包装紙と緩衝材の外を更に日田

梨の偽造包装紙と緩衝材でくるんでいる。 ※台北第 2果菜市場

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(2)偽装表示を発見した際の対抗手段

①市場管理会社への通報

偽装が発見される場面は、商品供給源である卸売市場から消費者に直結(対面)する商

店、スーパーまで多種多様である。台湾の市場は自主管理を主としており、概ね株式会社

形式で運営されている。例えば、台北第 1 果菜市場、同第 2 果菜市場は、台北農産運銷股

份有限公司のマネジメントによるものである。各地の卸売市場の管轄権は、市政府の市場

処が保有しているが303、各市場内部の秩序維持については、市場管理会社が自主的に行うこ

とが主流となっている。市場管理会社は、市場内の具体的な規則を定めており、卸売業者

の規則違反行為が発覚した場合には、一回目であれば市場管理会社が警告を発し、二回目

には業者からライセンスを剥奪する。市政府の市場処およびマスコミの監視の目もあるが、

市場管理会社は自ら管理している市場の信頼性確保の観点から、違反行為がないよう市場

参入業者に順法意識を植え付けることに努めている。したがって、偽装表示を発見した場

合には、まず、この市場管理会社に通報するという手段が考えられる。若干の懸念がある

とすれば、市場において営業している卸売業者は、市場管理会社にとっての顧客でもある

ということである。そのため、ケースによっては、市場管理会社が違法行為を働いた卸売

業者に対して指導を徹底させ難いということも想定される。この場合には、市場を管理す

る政府機関への働きかけを行うことも有効である。政府機関には、督導員とよばれる指導

員が在籍しており、定期・不定期に市場を巡回、監視の目を光らせている。

偽装表示に係る通報については、まず、証拠品の押収が必須であることから、私服の督

導員を帯同し、抜き打ち的に現場を押さえることが有効である。また、極めて悪質なケー

スについては、財団法人交流協会の経済部貿易相談室に通報し、場合によっては外交ルー

トによる解決の道を探ることも考えられる。ただし、この方法をとる場合には、単なる事

業者間の係争では終わらなくなる可能性があることを念頭に、慎重な対応が求められる。

②販売店への通報

市場のほかにも、百貨店やスーパー等の販売店において、農林水産物・食品の偽装表示

を発見した場合には、それらの販売店に対して改善を申入れることが考えられる。

台湾では日本産農林水産物・食品の人気が高く、また、日系のデパート等も多く出店し

ていることから、日本産農林水産物・食品の偽装品が出回りやすい環境にあるといえる。

偽装品を販売することは、販売店で取り扱っている農林水産物・食品の品質の信頼性を揺

るがすものであることから、販売店に対し偽装表示の実態を通告することは、警鐘を発す

る意味でも有効である。

303 例えば、台北市の場合には、台北市市場管理処。

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③公平交易委員会への通報

前述のとおり、商品の容器や梱包等を偽装することは、不正競争防止法によって禁止さ

れており、このような不正行為を発見した場合は、公平交易委員会に対して告発状を提出

し、そのような侵害行為の販売、製造、運送、輸出及び輸入を禁じる行政措置を請求する

ことが出来る304。公平交易委員会は、これらの表示の模倣行為があると認定した場合、期限

を定めて当該行為の停止、改正または必要な是正措置を採るよう命じるとともに、5 万台湾

ドル以上 2,500 万台湾ドル以下の過料に処すことができることとなっていることから、偽

装表示を発見した際は、公平交易委員会へ通報することが考えられる。

④行政院衛生署への通報

食品の安全管理全般を執り行うのが、行政院衛生署である。行政院衛生署では、食品の

安全を確保する為に、残留農薬の検査や食品の品質管理等を行なっているほか、公衆衛生

の改善に向けた教育や広報活動を行なっている。農林水産物・食品の偽装表示の是正は、

食品の安全性確保の観点からも重要な課題であることから、衛生署に対し原産地偽装等の

違法行為を通報し、市場関係者等に対して改善を依頼することも一案である。

⑤行政院農業委員会農糧署への通報

農林水産物の品質及び安全性については、農業委員会が担当している。

台湾では、生産の現場から卸売市場までは、行政院農業委員会農糧署が、卸売市場から小

売市場までは衛生署の管轄範囲となっている305。そのうち、農糧署は、生産現場における衛

生安全性検査を実施しており、収穫直前の農産物のサンプリング検査や収穫後から出荷ま

での段階において生物化学検査等を行なっている。また、卸売市場においては、農糧署の

卸売管理部門が抜き打ちで化学検査を行なう等、農林水産物の安全性の確保に向けた主要

な役割を果たしている。

市場で農林水産物の偽装表示を発見した際は、農糧署へ通報を行なうことで、これらの

不当行為に対して改善するよう、行政サイドからの働きかけが行なわれることが期待され

る。

⑥消費者保護協会への通報

台湾においても、中国と同様に、消費者保護協会に対して偽装表示に関する通報を行な

うことができる。消費者保護協会は、商品の品質や価格をめぐってトラブルが発生した際、

消費者が同協会に相談できるよう、専門の窓口を設置しており、電話や E メールを通じて

被害の状況を訴えることができる。消費者保護協会は年に 2、3 回市場において販売されて

いる商品を対象とした調査を行っており、商品の品質や消費期限、表示内容等について調

304 「不正競争防止法」第 26 条:公平取引委員会は、本規定に違反し、公共利益に危害を与える事件に対し、

告発または職権により、これを調査し処理することができる。 305 行政院農業委員会農糧署ヒアリング

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195

査を行っている306。

図表 120 台湾における関係機関の通報先

通報機関 台北市 高雄市

台北市羅斯福路 1 段 83 号 高雄市苓雅区福徳二路 77 号 台北市市場処

TEL: 886-2-2341-5241 TEL: 886-7-751-3151

台北市中正區濟南路 1段 2 之 2

號 12 樓 高雄市前金区成功一路 436 号 公平交易委員会

TEL:886-2-2351-7588 TEL:886-7-213-5265

台北市中正區愛國東路 100 號 ― 衛生署

TEL:886-2-2321-0151 ―

台北市南海路 37 号 ―

政府

機関

農業委員会農糧署

TEL:886-2-2381-2991 ―

― 高雄市松郷円山路 31 号 消費者

団体

消費者保護協会

― TEL:886-7-3706222

306 消費者保護協会ホームページ

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196

第5章 実際の権利侵害事案

事例1 シイタケの産地偽装事案307

2007 年 1 月~2 月、シイタケの産地偽装表示事案が発生した。事案発生の原因は、これ

まで行政院衛生署の衛生管理法に、農産物の産地表示に関する規定が存在しなかったとい

う法律上の欠陥にあった。農産物の流通にかかる法律は「食品衛生管理法」であるが、そ

の中には産地表示の規定が含まれていない。一方、経済部の「商品標示法」の関連規定の

適用範囲は工業製品に限られているため、農産物が抜け落ちているものである。

台湾のシイタケ市場は次のように階層化されている。

図表 121 シイタケの市場価格の階層化308

(単位)台湾ドル 産地 仕入価格 小売価格

日本産 1500~1630 2000~3000

台湾産 576 以上 700~1100

韓国産 280~419 500~700

中国産 150 以上 350~450

日本のシイタケは、基本的に贈答品として高所得者層向けに販売されているが、日本産

以外のシイタケとの価格差が極めて大きいことが産地偽装の背景となったと考えられてい

る。事案発生後、行政院経済部が中心となって、衛生署、農糧署などの関係者とともに対

策を検討し、次の 2 つの措置を決定した。

「道徳説教」(宣伝広報)の強化:経済部は各県・市において大規模な宣伝活動を

実施し、実施結果を報告するように命じた。

「食品衛生管理法」の改訂:「食品衛生管理法」の改訂を決定し、2008 年 1 月 1 日

より、食品の包装に原産地を明確に表示することを公告した。

台湾政府は、類似事件の発生を防止するための根本的な方法は、法律制度の整備と健全

化にあると認識している。2007 年 1 月に公布された「農産品生産および検証管理法」は、

このような法律制度の整備と健全化に向けた取り組みの一環である。同法の公布後、輸入

品に対しては、中央標準局がサンプリング検査を実施することとなり、監視体制が強化さ

れた。

307 台湾農業委員会農糧署へのヒアリング 308 台湾農業委員会農糧署へのヒアリング

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197

中国からの農産品は正規のルートで輸入することができないため、主に密輸ルートによ

って台湾に入荷されている。こうした密輸活動を阻止するため、水際での取締を強化する

と同時に、密輸品に対する摘発を行っていくことが重要である。そのため、偽物を見破る

技術も必要となる。

現状では、目視によってシイタケの原産地判定を行っているため、精度は低い。台湾か

らは日本の微量元素測定技術を習得する目的で、2005 年に鳥取県に台湾の技術者が派遣さ

れたが、学習した技術の定着には後 1~2 年は必要と思われる。現在この技術の運用試験が

行われており、各種シイタケの図譜も作成されている。今後技術が定着し、図譜の作成が

完了した際には、図譜の比較により偽物の発見が容易になることが期待されている。

なお、台湾で「日本産」として売られているシイタケのうち、何パーセントが中国産で

あるかについては確認できていない。「農産品の生産および認証管理法」を基本として、今

後各種関連法も作成する予定である。同法によって、初めて農産品の生産・販売履歴とい

う制度が導入されたが、これは日本から学んだものである。

事例2 日本産梨と昆布の産地偽装事案

台北では、鳥取県と大分県の梨が非常に有名であり、偽装品も多い。実際に、大分県の「日

田梨」の包装紙と箱のデザインを模倣したものが台北の青果市場に出回っている。

台湾当局も取締りに力を入れており、取締りが行われた直後は、市場からニセモノが消え

るが、しばらく経つとまた出てくるとのことである。

農糧署でのヒアリングによれば、2~3 年前(2005 年頃)には、台北市第二果菜市場の個

別業者が日本産の新高梨内側包装用紙を地元産梨の包装に流用する事件が発覚した。以来、

政府が正式文書を発表し、各主管部門と業者側が頻繁に模倣品の検査を実施した結果、こ

こ 2 年間は類似の事件は一度も発生しないとの言であるが、やや楽観的に過ぎる嫌いが無

いわけではない。事件が発生した後、政府部門は違法行為のあった業者に対し、再度模倣

品を販売した場合は、ライセンスを取り上げるという警告を送付している、と説明してい

る。

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図表 122 偽装された梨の包装紙とダンボール309

309 大分県提供

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199

○韓国産の梨を大分産梨の偽造包装紙で包んで販売しているケース 腐敗した台湾産の梨を緩衝材で幾重にもくるみ、大玉に見せかけている。

1 箱 350 台湾ドル。 ※台北第一果菜市場(2008 年 2 月)

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200

○北海道産昆布の偽装が疑われるもの 北海道の地図を使用しているが、生産者、輸入者等の表示無し。 販売者は、北海道が日本のどこに位置しているかの知識すら有していない。 袋の表示と中の昆布が一致しない可能性については「何であれ日本名産なら売れるから」

との回答。また「昆布については日本産であることを保証しない」とのこと。 ※台北迪化街(2008 年 2 月)

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201

事例3 ヤクルトの偽装問題

2005 年に発生したヤクルトの偽装事案は、中国大陸、香港、台湾 3 地域を巻き込んだ、

知財権の商標分野と意匠分野両方に関連する典型的な事案である。

知財権侵害者は台湾の業者であり、同業者は台湾で Yukudo という乳酸菌飲料会社を設立

して後、中国へ進出し、上海近郊に工場を設置、「Yukudo 養楽多」というブランドの商標を

中国大陸の商標局に登録すると同時に、ヤクルト乳酸菌製品と同様な形のボトルを意匠と

して登録した。2005 年頃、同社が大陸での生産拠点を拡大するために香港に上場企業を設

置し、株式発行により資金調達を行おうとしたところ、ヤクルトの香港子会社が新聞報道

によって事実を認識するに至った。

ヤクルトは香港 D 事務所へ相談を持ち掛け、調査を依頼した。当初弁護士事務所は事件

を単純に会社名の類似からできた紛糾と受け止めていたが、調査を進めるにつれて、権利

侵害の深刻性と影響を及ぼした範囲の大きさに対する認識を高めていった。

中国で登録された商標には、ローマ字と中国漢字が含まれていたが、いずれもヤクルト

の商標に類似している。ヤクルトの中国子会社が生産した製品の商標名は「Yakult 益力多」

であるため、ローマ字と漢字の両方において、いずれも台湾企業の商標には類似性がある

ものと考えられた。また、ボトルの形も同一であるため、消費者に両者の製品が同一のも

のであるという虚偽の印象を与える可能性が極めて高いと判断された。また、Yukudo が香

港での資金調達を通じて中国での生産能力をさらに拡大すれば、ヤクルトの利益に与える

損害がさらに拡大することが疑いの無いものと認識されるに至ったのである。

ヤクルトは香港、上海、台北の 3 地域で Yukudo 社を相手に訴訟を起こした。(香港 D 事

務所は上海と香港両地の訴訟代理を担当したが、台湾での訴訟代理は台湾の弁護士事務所

が担当)

結果として、3 地域でともにヤクルト側勝訴の判決が下り、Yukudo 側の工場はすべて閉

鎖が命じられ、賠償金も支払われた。

図表 123 ヤクルトの意匠権侵害事案

真製品

模倣品

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202

第6章

①日本語対応可能な弁護士・弁理士事務所

②参考文献

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203

①日本語対応可能な弁護士・弁理士事務所

会社名(中文) 会社名(英文) 住所 電話 FAX Email ホームページ

台湾国際専利法律事務所

Taiwan International Patent

& Law Office

台北市 南京東路 2 段 125 号 偉成大樓 7 階 886-2-2507-2811

886-2-2508-3711 /

886-2-2506-6971

[email protected] www.tiplo.com.tw

聖島国際特許法律事務所

Saint Island International

Patent & Law Offices

台北市南京東路 3 段 248 号 7 階 886-2-2775-1823 886-2-27316377 [email protected] http://www.saint-island.com.tw

萬國法律事務所

Formosa Transnational

Attonrney & Law

仁愛路3段 136 號 15F 886-2-2755-7366 886-2-2755-6486 [email protected] http://www.taiwanlaw.com/

理律法律事務所 Lee and Li Attonrney & Law 台北市 10508 松山区敦化北路 201 号 7 階 886-2-2715-3300 886-2-2713-3966 [email protected] http://www.leeandli.com/

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204

② 参考文献

農林水産分野知的財産研究会 編著「農林水産業の知的財産権」2008 年 1 月 株式会社

ぎょうせい

日本貿易振興機構他 著 「はじめての海外模倣対策ハンドブック」2006 年 7 月 ジェトロ

日本国際貿易促進協会編「中小企業のためのニセモノ対策入門編」2007 年 5 月 ジェトロ

http://www.jetro.go.jp/jetro/activities/overseas/pdf/imitation_measure.pdf

財団法人 交流協会 著「台湾模倣対策マニュアル」2007 年 3 月財団法人交流協会

http://www.koryu.or.jp/

経済産業省 特許庁「2004 年度在台湾日系企業 模倣品被害実態調査」

http://www.jpo.go.jp/torikumi/mohouhin/mohouhin2/jittai/pdf/2004_taiwan.pdf

財団法人 交流協会 「台湾特許商標関連判例集」2003 年 3 月

http://www.jpo.go.jp/torikumi/mohouhin/mohouhin2/jirei/pdf/h14_taiwan.pdf

財団法人 交流協会 「台湾実用新案無審査後の状況および権利行使に対する影響

台湾商標法における立体商標の運用状況および審査基準」2005 年 3 月

財団法人 交流協会

http://www.jpo.go.jp/torikumi/mohouhin/mohouhin2/jouhou/pdf/taiwan_eikyo_kizyun.pdf

財団法人 交流協会 「台湾における知的財産権調査報告書Ⅱ特許審査基準」2007 年 3 月

財団法人 交流協会

http://www.koryu.or.jp/tokyo/ez3_contents.nsf/1

財団法人 交流協会 著「台湾模倣対策マニュアル」2006 年 3 月財団法人交流協会

http://www.jpo.go.jp/torikumi/mohouhin/mohouhin2/manual/pdf/h17_taiwan.pdf

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205

添付資料 1 中国、香港、台湾における商標と意匠の比較

日本 中国 香港 台湾

商標 意匠 商標 意匠 商標 意匠 商標 意匠

文字のみ

商標として登録可能

例)

デザインの一部とし

ては登録が可能

商標として登録可能

例)

デザインの一部とし

ては登録が可能

商標として登録可能

例)

デザインの一部とし

ては登録が可能

商標として登録可能

例)

デザインの一部とし

ては登録が可能

図形のみ

商標として登録可能

例)

デザインの一部とし

ては登録が可能

商標として登録可能

例)

デザインの一部とし

ては登録が可能

商標として登録可能

例)

デザインの一部とし

ては登録が可能

商標として登録可能

例)

デザインの一部とし

ては登録が可能

形状

立体商標として

登録可能

例)

意匠として登録可能

例)

立体商標として

登録可能

例)

意匠として登録可能

例)

立体商標として

登録可能

例)

意匠として登録可能

例)

立体商標として

登録可能

例)

意匠として登録可能

例)

食品の

包装全体

包装の一部に商標を

付すことが可能

例)

包装のデザインを意

匠として登録可能

例)

包装の一部に商標を

付すことが可能

例)

包装のデザインを意

匠として登録可能

例)

包装の一部に商標を

付すことが可能

例)

包装のデザインを意

匠として登録可能

例)

包装の一部に商標を

付すことが可能

例)

包装のデザインを意

匠として登録可能

例)

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206

添付資料 2 チェックリスト チェックポイント 備考

登録したい商標や意匠が既に第三者

によって登録されていないかチェッ

クする

・調査会社に商標登録検索を依頼することが可能。調査会社に依頼する際は、守秘義

務契約を結び、どの商標を登録しようとしているかが外部へ漏れないように留意する。

(商標ブローカーの先取り防止) 登録プロセス

信頼できる代理機関を選定する ・商標登録・意匠登録のためには現地の代理機関を介する必要あり。(現地事務所がな

い場合)

・代理機関の中には悪質なところもあるので、代理機関を選定する際は、信頼できる

弁護士を介すること。弁護士に商標登録業務を委託する際は、代理機関の選定および

マネジメントも料金の中に含まれる。

2 ヶ月に 1 度、商標/意匠登録データ

ベースで、自己ブランドを検索する

(中国)

審査を通過した商標は、以下のホームページにて公開されている。

【商標】中国行政管理総局工商局商標局ホームページ

http://sbcx.saic.gov.cn/trade/index.jsp

【意匠】中国知的産権局ホームページ

http://www.sipo.gov.cn/sipo/zljs

商標出願後 2 ヶ月以内にホームページ上にアップデートされることから、2 ヶ月に 1

度はチェックすることが望ましい。審査を経て登録されるまでの 3 ヶ月以内であれば

異議申立てが可能。

1 ヶ月に 1 度、商標/意匠登録データ

ベースで、自己ブランドを検索する

(台湾)

登録された商標は以下のホームページに公開される。

【商標・意匠】台湾経済部知的財産局ホームページ

http://203.69.69.28/TIPO_DR/index.jsp

商標出願後 20 業務日以内にホームページ上にアップデートされることから、1 ヶ月に

1 度はチェックすることが望ましい。商標が登録されてから 3 ヶ月以内なら異議申立

てが可能。

市場監視

調査会社を活用し、市場調査を行う

1 組織で調査会社を雇うことがコスト的に困難であれば、複数の同業者が共同で調査

会社へ依頼をすることも可能。例えば、タバコメーカーは連盟を作り、共同で模倣品

の摘発を実施している。タバコ連盟は出来高報酬契約を結んでいる(摘発した分だけ

調査会社の利益が上がる)。

訴訟になった際、権利を侵害された

ことを証明するために、活動の記録

を保存しておく

【権利が侵害されたことを示す証拠の一例】

・ 当該商品の新聞、雑誌等の報道記事(日本での報道でも可)

・ 当該商品を紹介するインターネットのホームページ

・ 展示会への参加記録

・ 物産展の開催記録、広告資料

・ 商品の販売拠点、販売ルート、販売場所を示す資料

・ 商品の販売記録、輸出入書類

※必ず日付が付いていることを確認すること。日付が付いていないと、仮に証拠があ

っても、他者が商標登録する前から使用していたことを証明できず、効力を持たない。

自己ブランドの広報を行うことで、

自己ブランドを中国・台湾で使用し

ている、という既成事実を作る(商標

権)

・ 新聞、雑誌、TV 等を通じた商品の宣伝

・ 物産展の実施

広く一般に認知されたロゴや名称は、商標として登録されない可能性が高い。(著名商

標として認識される)保護したいロゴや名称を広報することで、それらが有名である

という既成事実を作る。

取締り機関と良好な関係を築く 摘発が実行されたら、大々的に感謝状を贈呈するなど、周囲に目立つ形で感謝の意を

表す。良好な関係を気づくことで、次回以降の摘発も円滑に行われるよう配慮する。

迅速に摘発行動を行うために、鑑定

人を配置する

台湾では、警察は、偽装品発見後、24 時間以内に正確な真贋鑑定の結果をとりまとめ

る責任を負っている。時間内に証拠固めが完了しなければ、被疑者は釈放される。

現地当局との連絡窓口となる担当者

を配置する

被害者側の担当者不在の為、摘発が遅れ、偽装品製造の犯人を取り逃がすことがある。

また、「連絡をしても対応しない」と当局が思うと、今後協力を得にくくなる。

スムーズに連絡を取る為に、現地事務所等に偽装表示対策を専門に行う担当者を設置

し、通報を受けやすい体制を構築する。

予防

緊急時に相談できる日本語対応可能

の弁護士、弁理士、調査会社のリス

トを準備しておく

現地の邦人コミュニティや JETRO、交流協会等と情報交換を行う。

対抗措置

当局へ被害の実態を報告すると共

に、取締りの強化を依頼する

偽装品の摘発を行う当局(工商局等)に偽装品の実態について報告し、情報提供を行

う。

2007 年 11 月、台北市日本工商会が台湾当局へ日系企業が抱える知財問題に関する要

望書を提出、これを受けて台湾当局も対応について検討すると回答した。政府レベル

への働きかけも、偽装品取締り強化のために重要。

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207

添付資料 3 担当機関連絡先一覧 名称 住所 電話

国家工商行政管理総局

商標局

北京市西城区三里河东路8号 86-10-68052266

86-10-68027820

86-10-68052266

国家知識産権局 北京市海淀区蓟門橋西土城路 6号 86-10-62083114

北京市工商行政管理局 北京市海淀区蘇州街 36 号 86-10-82691919

上海市工商行政管理局 上海市肇嘉浜路 301 号 86-21-64220000

農業局(北京) 北京市西城区裕民中路 6号 86-10-82078439

農業局(上海) 上海市延安西路 28 号 86-21-2482049

質量技術監督局(北京) 北京市朝阳区育慧南路3号 86-10-84611177

質量技術監督局(上海) 上海市宜山路 728 号 86-21-54266366

消費者協会(北京) 北京市宣武区莲花池东路 102 号 86-10-96315

消費者協会(上海) 上海市大木桥路 1号 86-21-12315

中国

JETRO 北京センター

知的財産権部

北京市建国門外街甲 26 号長富宮弁公楼 7003 室 86-10-6528-2781

知識産権署 香港灣仔皇后大道東 213 號胡忠大廈 24 樓知識産権署 852-2961-6901

税関総署 香港統一碼頭道 38 號海港政府大樓八樓 852-2815-7711

(24 時間ホットライン)

852-2542-3334(代表)

食品環境衛生署 香港金鐘道66號金鐘道政府合署44樓 食物環境衛生

署總部

852-2868-0000

(24 時間ホットライン)

食品安全センター 香港金鐘道 66 號金鐘道政府合署 43 樓 852-2868-0000

(24 時間ホットライン)

漁農自然保護署 九龍長沙灣道 303 號 長沙灣政府合署 5樓 852-2311-3731

消費者委員会 香港北角健康東街 39 號柯達大廈二期 14 樓 1410 室

消費者委員會

852-2929-2222

香港

JETRO 香港センター Suites807-811, One Pacific Place,88,Queensway,

HONG KONG, CHINA

852-2526-4067

行政院経済部知的財産

台北市辛亥路 2段 185 號 3 樓 (商標担当)

886-2-2376-7570

886-2-2376-7500

(特許担当)

886-2-2376-7607

886-2-2376-7608

行政院経済部知的財産

局高雄服務處

高雄市前金区成功 1路 436 號 8 樓 886-07-271-1922

886-07-271-1923

行政院法務部調査局 台北市重慶南路一段 130 號 886-02-2314-6871

台北市地方法院検察署 台北市博愛路 131 號 886-02-2314-6871

高雄地方法院検察署 高雄市前金區河東路 188 號 886-07-2161-468

台北市市場処(台北) 台北市羅斯福路 1段 83 号 886-2-2341-5241

台北市市場処(高雄) 高雄市苓雅区福徳二路 77 号 886-7-751-3151

公平交易委員会(台北) 台北市中正區濟南路 1段 2 之 2號 12 樓 886-2-2351-7588

公平交易委員会(高雄) 高雄市前金区成功一路 436 号 886-7-213-5265

衛生署 台北市中正區愛國東路 100 號 886-2-2321-0151

農業委員会農糧署 台北市南海路 37 号 886-2-2381-2991

消費者保護協会 高雄市松郷円山路 31 号 886-7-3706222

台湾

行政院財政部税関総局 台北市大同區塔城街 13 號 886-02-2550-5500

日本

国際知的財産保護フォ

ーラム事務局

東京都港区赤坂 1-12-32 アーク森ビル 6 階

独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)

知的財産課内

03-3582-5396

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添付資料 4 中国・香港・台湾における商標制度の比較

中国 香港 台湾

当局に支払う費用 1,000 元 1,300 香港ドル ■第 1~34 類:

①20 品目未満の商品・サービス

(1 類当たり) 3,000 台湾ドル

②21~60 品目の商品・サービス

(1 類当たり) 5,000 台湾ドル

③61 品目以上の商品・サービス

(1 類当たり) 9,000 台湾ドル

■第 35~45 類:(1類当たり)

3,000 台湾ドル

代理人・機関の費用 2,700 元~ 2,500 香港ドル~ 200 米ドル

出願から登録までの期間 商標代理機関経由 2~3年

マドリッド協定議定書経由

18 ヶ月

10 ヶ月~ 8~10 ヶ月

出願

国際出願の可否 可

(マドリッド協定議定書)

否 否

当局に支払う費用 1,000 元 800 香港ドル 4,000 台湾ドル

代理人・機関の費用 2,400 元~ 2,500 香港ドル~ 2,200 米ドル~

審査にかかる時間 3 年~ 2 年~ 2~3年

異議申立て

異議申立てができる期間 公告後 3ヶ月 公告後 3ヶ月 登録公告後 3 ヶ月

当局に支払う費用 1,500 元 0 0

代理人・機関の費用 3,200 元~ 3,500 香港ドル~ 800 米ドル

不服申立て 審査にかかる時間 通常 3年 3 年~ 2~3年

当局に支払う費用 1,500 元 0 0

代理人・機関の費用 3,200 元~ 5,000 香港ドル~ 6,000 台湾ドル~ 行政訴訟 審査にかかる時間 一審:6ヶ月

二審:3ヶ月

約 1年 6 ヶ月~

※北京 A 社、香港 B 社、台湾 C 社へのヒアリングによって得られた参考値。費用、期間、時間については、案件の複雑さと難易

度によってケースバイケースとなる。

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添付資料 5 中国・香港・台湾における意匠制度の比較

中国 香港 台湾

当局に支払う費用 900 元

50 元(印刷料)

150 香港ドル 3,000 台湾ドル

代理人・機関の費用 4,500 元~ 500 香港ドル 16,000 台湾ドル

出願から登録までの期間 6 ヶ月 6 ヶ月 12 ヶ月~

出願

国際出願の可否 不可 不可 不可

当局に支払う費用 1,500 元 456 香港ドル 8,000 台湾ドル

代理人・機関の費用 820 元 850 香港ドル/時 33,500 台湾ドル~

審査にかかる時間 1 年 6 ヶ月~ 2 ヶ月~

異議申立て

異議申立てができる期間 10 年間 25 年間 12 年間

当局に支払う費用 300 元 約 500 香港ドル 0

代理人・機関の費用 820 元/時 850 香港ドル/時 27,700 台湾ドル~

不服申立て 審査にかかる時間 6 ヶ月 6 ヶ月~ 2 ヶ月~

当局に支払う費用 300 元 約 500 香港ドル 0

代理人・機関の費用 820 元/時 850 香港ドル/時 32,800 台湾ドル~ 行政訴訟 審査にかかる時間 3 ヶ月 6 ヶ月~ 15 ヶ月~

※北京 A 社、香港 B 社、台湾 C 社へのヒアリングによって得られた参考値。費用、期間、時間については、案件の複雑さと難易

度によってケースバイケースとなる。

Page 85: II. 台湾編...129 機関の名称223、有機表示同意文書字号224を表示しなければならない。輸入有機農産品およ び加工品の表示には、中国語を主要な表記とするという前提で外国語および符号を使用す

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添付資料 6 中国・香港・台湾における知的財産権に係る民事訴訟制度 中国 香港 台湾

代理人・機関の利用義務の有無 有 有 有

裁判所に支払う費用

500~1,000 元

(その他、紛争の金額に応

じて裁判所が決定する費

用)

公判の 後に裁判所が費用

と負担割合を示す。

【第一審】

請求する金額が

• 10 万台湾ドル以下:1000

台湾ドル

• 10 万台湾ドル~100 万台

湾元以下:金額の 1%

• 100 万台湾元~1000 万台

湾ドル以下:金額の 0.9%

• 1000 万ドル~1 億台湾ド

ル以下:金額の 0.8%

• 1 億台湾ドル~10 億台湾

ドル以下:金額の 0.7%

• 10 億台湾ドル~:金額の

0.6%

【第二審、第三審】

第一審の費用に裁判費用の

50%を追加した金額

費用

代理人・機関に支払う

費用 2 万元~ 14,000 香港ドル~ 40,000 台湾ドル~

時効(起算点)

2 年間

(権利者が侵害行為を知っ

た日から起算)

6 年

(権利者が侵害行為を知っ

た日から起算される)

10 年

(権利者が侵害行為を知っ

た日から起算される)

平均訴訟期間 6 ヶ月~9ヶ月 1 年~ 1 年~

復審判 二審制

(第一審は中級裁判所) 三審制 三審制 裁

判制度

知的財産専門の法廷の

有無 有(知的財産法廷) 無

無(ただし、2006 年に知的

財産裁判所の設置が決定し

ている)

留意事項

地方保護主義的性格を有し

ており、提訴には慎重な判

断が必要。

中国語、英語、両方を操る

代理人がのぞましいといわ

れている。

一審→二審は 30 日以内、二

審→三審は 3 ヶ月以内に上

訴する。

※北京 A 社、香港B社、台湾C社へのヒアリングによって得られた参考値。費用、期間、時間については、案件の複雑さと

難易度によってケースバイケースとなる。

Page 86: II. 台湾編...129 機関の名称223、有機表示同意文書字号224を表示しなければならない。輸入有機農産品およ び加工品の表示には、中国語を主要な表記とするという前提で外国語および符号を使用す

211

添付資料 7

中国国内の代理機関を利用しなければならない手続き

注:「―」は代理機関を利用せずに直接外国人が行なってよい手続きを指す。 「○」は代理機関を利用しなければならない手続きを指す。

香港の代理機関を利用しなければならない手続き 出願 不服申立て 異議申立て 行政訴訟

※知識産権署に対し

て行う ※裁判所に対して行

う ※知識産権署に対し

て行う ※裁判所に対して行

う 商標制度 1 ― ― ― ―

※知識産権署に対し

て行う ※裁判所に対して行

う ※知識産権署に対し

て行う

※裁判所に対して行

う 意匠制度 2

― ― ― ― 注:「―」は代理機関を利用せずに直接外国人が行なってよい手続きを指す。 「○」は代理機関を利用しなければならない手続きを指す。 1. 香港に住所または駐在機関を持つ外国人が商標出願を行う場合。香港に住所も駐在機関も有さない

外国人あるいは外国機関について、制度上は代理人を介さなければならないという規定はないが、

知識産権署とのやり取りを円滑に行なう為、代理出願を依頼するケースが多い

2. 外国人や外国企業が代理人を使用しなければならないという規定はない。ただし、出願書には香港

の書類送付先を記載する必要があることから、実態としては、弁護士等の代理人に出願、登録業務

を依頼するケースが多い。

台湾の代理機関を利用しなければならない手続き

出願 不服申立て 異議申立て 行政訴訟 ※知的財産局に対し

て行う ※訴願審議委員会に

対して行う ※知的財産局に対し

て行う ※行政裁判所に対し

て行う 商標制度 1 ○ ○ ○ ○

※知識産権局に対し

て行う ※訴願審議委員会に

対して行う ※知識産権局に対し

て行う

※行政裁判所に対し

て行う 意匠制度 3

○ ○ ○ ○ 注:「―」は代理機関を利用せずに直接外国人が行なってより手続きを指す。 「○」は代理機関を利用しなければならない手続きを指す。 1. 台湾に営業住所を持たない外国人または外国の機関が商標権の出願を行う場合。台湾に営業住所を持

つ外国人または外国の機関が出願する場合代理人を介さなければならないという規定はないが、知識

産権局とのやり取りを円滑に行なう為、代理出願を依頼するケースが多い。

2. 台湾に営業住所を持たない外国人または外国の機関が意匠権(特許)の出願を行う場合。台湾に営業

住所を持つ外国人または外国の機関が出願する場合代理人を介さなければならないという規定はな

いが、知識産権局とのやり取りを円滑に行なう為、代理出願を依頼するケースが多い。

出願 不服申立て 異議申立て 行政訴訟 ※商標局に対して行

う ※商標評審委員会に

対して行う ※商標局に対して行

う ※人民法院に対して

行う 商標制度 ○ ○ ○ ○

※知識産権局に対し

て行う ※特許復審委員会に

対して行う ※知識産権局に対し

て行う

※人民法院に対して

行う 意匠制度

○ ○ ○ ○