“international workshop, geology of rare metals” 会議出席報告

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2011.7 金属資源レポート 55 "International Workshop, Geology of Rare Metals" Ⅰ) . 対象元素 レア・アース(Rare Earth、略称 REE):元素周期 率表の Lanthanides 族の 15 元素と Y、及び Sc の 2元素を合わせた、計 17 元素の総称である。 Lanthanides は、 素(Light Rare Earth、 略 称 LREE) と 呼 ば れ る La、Ce、Pr、 Nd、Pm、Sm、Eu、Gd 等の元素と、重希土元素 (Heavey Rear Earth、 略 称 HREE) と 呼 ば れ る Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu 等の元素より成 る。そのうち Pm は、自然界で産出しない。 ―――REE の定義は、原子を構成する電子軌道の 内、最も外側に位置する O 殻軌道が完全に電子 充填されているが、其の内側の N 殻の 4f 軌道が 完全に充填されていない、という特徴の原子を 持つ元素である。 これらの元素を単離するのは至難であり、鉱 物として産出するのが稀な金属の酸化物である 故、稀土と名付けられ Rare Earth Oxides(略 称 REO)と称される。 レアメタル(Rare Metal) この名は厳密に定義付けられてはいない。ただ、 “産 出が稀な非鉄金属で使用が少量(< 15 万t / 年)、 又は地理的に限られた地域から採集されたメタル” に使われている。それらメタルの主だったものは、 下記の如し:Ta、Nb、Zr、Hf、Li、Be、Ga、Ge、 REE(16 元素- Pm 除く)その他。 ―――広義的に使えば、需要性が高く、大量に見 つかっているCu、Pb、Znを除く大方のメタルは、 量と地域次第でレアメタルとして混じって、使 われている。 例えば、Sn、Co、Se、Cs、Sr、…等。 Ⅱ) . 鉱床のタイプ REE を含む主要な鉱床のタイプは、G.J. Simandl が、 下記のようにまとめている。 REE は、レアメタルの一種で有り、良く互いに共存 するが、レアメタルを産する所に必ずしも、REE が常 に付随してはいなく、生成環境(とくに母岩の種類) の違いによって産出鉱種、鉱量が異なる。 1) “Carbonatite”に関連した鉱床、及び鉱山実例 (Bayan Obo 鉱床等) 2) IOCG に関連した鉱床、及び鉱山実例(Kiruna- Fe oxide(Cu-U-Au-REE)-Olympic Dam(Cu、 はじめに “レアメタルの地質”に関し、国際会議が、BC 州地質調査所主催、カナダ地質調査所、カナダ国内関連州地質調査 所及び Pacific Section of the Geological Association of Canada の協催で、2010 年 11 月9~ 10 日カナダ・British Columbia 州の Harbour Tower Hotel に於いて開催された。参加者は 100 人を越し、論文が 26 編発表された。又、ポ スターによるレアメタル・プロジェクトの展示が 10 か所行われた。 会議の目的は、レア・アース(ランタノイド、イットリウム、スカンジウム)及びレアメタル(主にニオブ、タン タル、リチウム、ベリリウム、ジルコニウム、ハフニウム)等元素を対象に、それらの地質学的環境を知る事により、 探鉱、採鉱に役立てることである。 講演内容は、鉱床の成因、時代、地質構造、鉱床のタイプ、鉱物学的検証、物理探査・地化学探査、鉱山実例、需 給状況等、及び関連事項が広範囲に渡って夫々論じられ、講演者は、大方 25 分内と限られた時間で、多くの説明を する為、聴衆には早口や、講演ビラのメモを取る時間不足が、感じられた。内容は、鉱床のタイプと成因の論文が主 体で、鉱物学的な説明が強調されていた。 従来から、レア・アース及びレアメタルは、その名のとおり、稀な元素であまり普遍的に産出しない元素である。 ただ、最近の需給異常と、政治絡みで、際立った注目を浴びてきている。この種の国際会議が持たれたのは、カナダ では初めてらしく、主催者側は、数名の高名な講演者を入れて、基本的な鉱床の分類や、成因の説明が有り、これら の元素の重要性が問われている折、このような基礎的な知識を織り込んだ講演が今後とも望まれる。 講演は、要旨に纏められているが、かなりの分量である。その上、内容が普段聞き慣れない金属で説明が長く、講 演内容の重複が起る。本報告では鉱床成因で分類し、判りやすく整理し、極力実例を講演外文献から補足し、まとめた。 難解と思う用語、鉱物名は、数多く、極力文献、辞書を用い、補足注釈した。 “International Workshop, Geology of Rare Metals” 会議出席報告 バンクーバー事務所 アドバイザー Kuang Ine Lu, 139

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2011.7 金属資源レポート 55

"International Workshop, G

eology of Rare M

etals"

会議出席報告

特集・連載

Ⅰ). 対象元素レア・アース(Rare Earth、略称 REE):元素周期

率表の Lanthanides 族の 15 元素と Y、及び Sc の

2元素を合わせた、計 17 元素の総称である。

 Lanthanides は、 軽 希 土 元 素(Light Rare

Earth、 略 称 LREE) と 呼 ば れ る La、Ce、Pr、

Nd、Pm、Sm、Eu、Gd 等の元素と、重希土元素

(Heavey Rear Earth、略称 HREE)と呼ばれる

Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu 等の元素より成

る。そのうち Pm は、自然界で産出しない。

―――REE の定義は、原子を構成する電子軌道の

内、最も外側に位置する O 殻軌道が完全に電子

充填されているが、其の内側の N 殻の 4f 軌道が

完全に充填されていない、という特徴の原子を

持つ元素である。

 これらの元素を単離するのは至難であり、鉱

物として産出するのが稀な金属の酸化物である

故、稀土と名付けられ Rare Earth Oxides(略

称 REO)と称される。

レアメタル(Rare Metal)

この名は厳密に定義付けられてはいない。ただ、“産

出が稀な非鉄金属で使用が少量(< 15 万t / 年)、

又は地理的に限られた地域から採集されたメタル”

に使われている。それらメタルの主だったものは、

下記の如し:Ta、Nb、Zr、Hf、Li、Be、Ga、Ge、

REE(16 元素- Pm 除く)その他。

―――広義的に使えば、需要性が高く、大量に見

つかっている Cu、Pb、Zn を除く大方のメタルは、

量と地域次第でレアメタルとして混じって、使

われている。

 例えば、Sn、Co、Se、Cs、Sr、…等。

Ⅱ). 鉱床のタイプREE を含む主要な鉱床のタイプは、G.J. Simandl が、

下記のようにまとめている。

REE は、レアメタルの一種で有り、良く互いに共存

するが、レアメタルを産する所に必ずしも、REE が常

に付随してはいなく、生成環境(とくに母岩の種類)

の違いによって産出鉱種、鉱量が異なる。

1) “Carbonatite”に関連した鉱床、及び鉱山実例

(Bayan Obo 鉱床等)

2) IOCG に関連した鉱床、及び鉱山実例(Kiruna-

Fe oxide(Cu-U-Au-REE)-Olympic Dam(Cu、

はじめに “レアメタルの地質”に関し、国際会議が、BC 州地質調査所主催、カナダ地質調査所、カナダ国内関連州地質調査

所及び Pacific Section of the Geological Association of Canada の協催で、2010 年 11 月9~ 10 日カナダ・British

Columbia 州の Harbour Tower Hotel に於いて開催された。参加者は 100 人を越し、論文が 26 編発表された。又、ポ

スターによるレアメタル・プロジェクトの展示が 10 か所行われた。

 会議の目的は、レア・アース(ランタノイド、イットリウム、スカンジウム)及びレアメタル(主にニオブ、タン

タル、リチウム、ベリリウム、ジルコニウム、ハフニウム)等元素を対象に、それらの地質学的環境を知る事により、

探鉱、採鉱に役立てることである。

 講演内容は、鉱床の成因、時代、地質構造、鉱床のタイプ、鉱物学的検証、物理探査・地化学探査、鉱山実例、需

給状況等、及び関連事項が広範囲に渡って夫々論じられ、講演者は、大方 25 分内と限られた時間で、多くの説明を

する為、聴衆には早口や、講演ビラのメモを取る時間不足が、感じられた。内容は、鉱床のタイプと成因の論文が主

体で、鉱物学的な説明が強調されていた。

 従来から、レア・アース及びレアメタルは、その名のとおり、稀な元素であまり普遍的に産出しない元素である。

ただ、最近の需給異常と、政治絡みで、際立った注目を浴びてきている。この種の国際会議が持たれたのは、カナダ

では初めてらしく、主催者側は、数名の高名な講演者を入れて、基本的な鉱床の分類や、成因の説明が有り、これら

の元素の重要性が問われている折、このような基礎的な知識を織り込んだ講演が今後とも望まれる。

 講演は、要旨に纏められているが、かなりの分量である。その上、内容が普段聞き慣れない金属で説明が長く、講

演内容の重複が起る。本報告では鉱床成因で分類し、判りやすく整理し、極力実例を講演外文献から補足し、まとめた。

難解と思う用語、鉱物名は、数多く、極力文献、辞書を用い、補足注釈した。

“International Workshop, Geology of Rare Metals”会議出席報告

バンクーバー事務所 アドバイザー Kuang Ine Lu,

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REE、Y、U、P)鉱床等

3) イオン吸着粘土鉱床-風化表土中の REE イオン

交換による鉱床

4) 含レアメタル砂鉱/重鉱物鉱床

5) 過アルカリ複合岩体(Complex)に関連した鉱床

6) 過アルミナ複合岩体に伴うペグマタイト鉱床

7) リン鉱床(副産物)

8) 接触交代鉱床

9) 交代鉱床(鉱脈)

10) ウラン産物の副産物(即ち、不整合と関連の鉱

床や Blind River 鉱床

本会議講演内容が、上記各鉱床タイプの各論の如き

であり、これらタイプの鉱床を説明する事で、講演内

容を包括的にまとめた。

1). “Carbonatite”に関連した鉱床、及び鉱山実例1-a). “Carbonatite”の定義について:(R.H. Mitchell)“Carbonatite“は火成岩に分類され、50%以上がマ

グマ本源である炭酸塩鉱物よりなる、と定義付けられ

ている。含有する炭酸塩鉱物の量で IUGS が名付け分

類 し た が、( 例 え ば、Calcite Carbonatite、Dolomite

Carbonatite…等)成因的意味を持たせてはいない。し

かし、全く成因的に関連無く、異なるマグマからでも、

似た鉱物構成の岩石が造られるので、現在は、一括し

た名前でなく、岩石学的な成因に誤解や、探鉱方針を

間違える事がないように分類した。

一方、鉱物学的成因分類では、広義の Carbonatite は、

人為的に、30%以上のマグマから結晶した炭酸塩鉱物

を含む全ての岩石を総称している。この広義的分類だ

と、Carbonatite マグマからの、遍在的な分化作用によ

る、組成鉱物分量の違いと、成因的に関連し形成され

た含 Silicate-、含 Apatite-、含 oxide-…等の岩石(炭

酸塩分量が、50%以下含む)の分類区分けが出来る。

広義の(sensu lato)Carbonatite は、更に鉱物成因

的 に、bona fide Carbonatite と carbohydrothermal

residua の二種に分けられる。前者は、Asthenopheric

Mantle で生成したマグマから、多様な物理化学的環境(部

分溶融、結晶分化等々)を経て分離生成した Carbonatites

であり、Melilitite、Nephlinite、Kimberlite 等を伴う。

後者は、炭酸塩に富む岩石で、K(カリ)、Na(ソーダ)

を含む過アルカリ性マグマからの岩石であり、成因未

確定の REE-Carbonate に富み、単なる Carbonatitie と

称するより、狭義で carbohydrothermal residua と名

付ける方が適している。尚、後者の岩石は、鉱物学的

に Asthenopheric マグマ由来の低圧 REE に富む bona

fide Carbonatite と対比出来る。

1-b). Carbonatiteの種類及び伴うレアメタル鉱床の特徴Carbonatite は、マントルから、部分溶融-マグマ生

成、上昇-結晶分化、を経て得た産物の一部で有る(図

1参照)。マグマ発生の場所、固化する迄に経る物理化

学的環境の違いにより、異なる産物や Carbonatite 等

が生成する。この結果 Carbonatite に伴う岩石に違い

が出たり、Carbonatite 自体も、構成鉱物に異なる種、

量があり、これらの色々な違いにより、それに伴って

出来たレアメタルの鉱床も、夫々異なる種、量ができる。

上述 Carbonatite の定義を図表で表すと、図1のよ

うになり、基本的に炭酸塩鉱物を含む火成岩からなる。

成因的に見て、マグマから派生して炭酸塩鉱物を含む

火成岩〈= Carbonatites〉を形成する過程を模式図に

示したのが図2である。

又、Carbonatite の 組 織 産 状 に よ る 分 類 が 有 り、

Carbonatite 貫入岩で、粗粒の場合は、Sovite と呼ばれ、

図1. Carbonatiteの種類

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細粒の場合は、Alvikite と呼ばれる。両者は、少量~

微量成分で区分けされ、Sovite は通常中~粗粒の方解

石 が 主 で、 角 閃 石、 黒 雲 母、Pyrochlore、Fluorite、

Pyrite を伴う。

Carbonatite に伴う岩石による図2のように、マグマから Carbonatite が分離形成

した際、生成環境に依り Carbonatite に伴って異なる

岩石が形成し、その際生成するレアメタル鉱種も違っ

てくる。主だった随伴岩石例として、---Melilitite 系(黄

長岩-主成分メリライト、斜長石を含まぬ超 Mg-Fe 火山

岩)、---Nephelinite 系(霞岩-主成分霞石、斜方輝石を

含まず、燐灰石、ジルコン等多い)と ---Kimberite 系

(CO2、H2O に富み、含 Sr-、REE- ペロフスキー石、Cr-

パイロープ等異種鉱物を含む超塩基性岩)が挙げられる

(P.-5)。

Carbonatite の成因の違いで、伴う岩石が異なると、

随伴して出来るレアメタルの鉱物も顕著に異なる。(図

3参照)

(141)

図2. Carbonatite生成模式図

図3. Carbonatiteに伴う岩石による、随伴するレアメタルの違い

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Carbonatite 自体の成分によるなお、既述のように、Carbonatite に含有する炭酸塩

鉱物の量に依り、Calcite Carbonatite または、Dolomite

Carbonatite と呼ばれている。Carbonatite 自身にレア

メタルを伴うので、Carbonatite の成分違いで、産する

レアメタル種類と分量が異なる。Aley Carbonatite

complex(カナダ BC 州北部)の実例を取って見ると、

岩石種:─Dolomite carbonatite:Dolomite(75 ~ 99 %)、

Apatite( 1 ~ 20 %)、Calcite( 0 ~ 5 %)、

Niobates(1~2%)

Calcite carbonatite:Calcite(65 ~ 95 %)、

Apatite(2~ 10%)、Magnetite(0~ 15%)、

Phlogopite(0~ 10%)、Na-amphibolite(0~

5%、ソーダ トレモロ石系)、Niobates(0~

2%)…及び

Magnetite-apatite Cumulate layers 層 状:

Magnetite(35 ~ 45%)、Apatite(25 ~ 35%)、

PhlogopiteA(0 ~ 15 %)、Niobates(0 ~ 15 %)、

Zircon(1.5%)…

レアメタル鉱物種:―Pyrochrhlor(NaCaNb2O6F):葉層状又は細粒緻

密層状 Calcite carbonatite に良く見られ、Ti、

Ta、Th、を取り込む。

Columbite((Fe、Mn)Nb2O6):細粒、Magnetite と

密接に伴い、Cumulate layer 岩に良く見られる。

 Mn の量が少ない(< 0.8% MnO)が、Ti、Ta

がかなりバラついて産する。

Fersmite(CaNb2O6):Dolomite carbonatite に 良

く産する。Ti(3.13 ~ 4.53% TiO2)や REE(1.53

~ 5.45 % REE2O3) の 取 り 込 み が 目 立 つ。

Monazite を良く伴う。

 この他にも多種あり、最も著名なのが、内蒙古

の Bayan Obo 鉱床が挙げられる(下記参照)。

Carbonatite dyke に伴う米国ワイオミング州のBlue Lodge Alkaline Complex

(BLAC)に於いて、Bull Hill 火山爆裂火口周縁の裂罅

帯で、Carbonatite 岩脈(網状脈含め)に伴う、熱水変

質作用に随伴した高品位の REE 鉱化作用が見られる。

探鉱試錐の結果、地表から深部へ、帯状に:酸化帯

(Fex-MnOx-REE);漸移帯;非酸化帯、と三つのゾー

ンが見られる。主なREE鉱物は、Parisite(CaREE2(CO3)

F2)、Synchysite(CaREE(CO3)2)、Ancyl ite-

Calcioancylite((SR, Ca)REE(CO3)2(OH)・H2O)

と Cerianite(CeO2)より成り、他の REE 鉱物として、

Bastnaesite(REE(CO3)、Mnazite(REE(PO3)、

Carbocernite((Ca, Na)3(Sr, REE, Ba(CO3)2)、

Burbankite((Na, Ca)3(Sr, REE, Ba(CO3)5) が 伴 わ

れる。それら鉱物の量は、夫々のゾーンにより異なり、

現在その成因を調査中である。

カナダ ケベック州 Oka 地方に、中生代の Carbonatite

岩脈に伴い、REE の産出があり、Britholite((Y, Ca)5

(SiO4,PO4)3(OH,F)が産出する。又同州の St.-Honore

Complex 中 の に も Bastnasite(6(Ce, La)(CO2)F)、

Monazite(4((Ce, La, Y, Th)(PO4))を含む REE が認

められ、80m のボーリングで、REO 3%を含むコアを

得ている。

(Oka 鉱 床:S.B.Caster & J.B. Hedrick(2004):Indutrial

Minerals & Rock;Bloomberg 等参照)

1-c). “Carbonatite”鉱山実例:(1-c-ⅰ):Bayan Obo(REE-Fe-Nb) 鉱 床、Inner

Mongolia、China.世界最大の REE-Fe-Nb 鉱床で、4,800 万tの REE(鉱

石平均品位=6wt% REE2O3)+ 100 万tの Nb(鉱石

平均品位= 0.19wt% Nb2O5)の鉱量を持ち、更に 1,5

兆t、Fe35wt%の鉄鉱石を含有している(1992 年頃資

料)(P.-15 参照)。(1億t REE 鉱+ 220 万t Nb 鉱量

があるといわれる。)本鉱山は、1927 年発見、1950 年

代採掘開始(初期は鉄)。2000 年頃から、低い生産コ

ストと環境保全コストにより、中国の輸出が増え(2002

年の Mt. Pass 閉山も影響)2009 年には、年間約5万t

輸出、2010 年には、世界の生産量の 97%を独占する。

(Wikipedia;Bloomberg 等参照)その他、微量元素と

して、W、Sb、Mo、Sn、In、Ge、Ta、Zr 等も産する。

因みに、USGS の数値によると、世界の REE 全埋蔵量

は 99Mt 有り、中国は其の内の 36Mt を保有して居り、

ほぼ世界の 37%にあたる REE 埋蔵量を保有する事に

成る。

Bayan Obo 鉱床の地質:(図4参照)鉱山は、中国北方、モンゴルとの国境から 80km 南

方に位置する。鉱床は、中期原生代の Bayan Obo group

と称する砂岩、粘板岩、石灰岩(Dolostone ~ Limeston

marble)等堆積岩より成る地層の石灰岩(Carbonatites)

中に産する。鉱体は、あまり長く延びないレンズ状で、

地層と整合的に産する。Bayan Obo group 岩層は、基

盤岩と共に無数の Carbonatite 岩脈に切られているが、

岩脈は、鉱体南北に見られる、膨大な量のアルカリ岩

系火成岩とは、成因的に関係は見られない。

鉱体の母岩は、Dolomite marble(H8 と称す)であり、

整合的な成層岩体を成し、岩体周辺は、明確な葉理層

状と Fenite アルカリ閃長岩)型変質を示す。母岩の

Dolomite mable 中には、Carbonatite の貫入した形跡

が見当たらず、今だ成因に疑問がもたれているが、組

織構造、古生物学、同位元素、微量元素等から、堆積型、

カーボナタイト型、又は火山性堆積型等と解釈され色々

な成因説がある。

鉱床は、190 種以上の鉱物を産し、鉱物の成因的共

生関係から、少なくとも 11 ステージの鉱化作用を経て

形成したと考えられている。なお、時代的にも、アル

カリ角閃岩中の 40Ar/39Ar 同位体年代測定から、本鉱

(142)

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床の変成、変質は、111)Proterozoic-ほぼ marble の

形成時代に近づき、222)Caledonian-主な鉱化作用の

出 来 事 と 関 連、333)Hercynian- 鉱 体 南 方 に あ る

Granitoids の貫入時期と一致、と、三時期に起きたと

考えられる。

Bayan Obo鉱化作用:(分布は図5参照)REE-、Nb-、Sc-、と Fe-Oxide 等、異なる鉱

化作用が顕著に見られる。

REE 鉱化作用は、鉱染状(含3~6% REO)、縞状(含

6~ 12% REO)、塊状(含<3% REO)のタイプに分

けられる。鉱染状鉱石は、変質の弱い mable の裂罅中

(143)

図4. Regional Geology of Bayan Obo Mine, Inner Mongolia, China.

図5. Local Geology of Bayan Obo Mine, Inner Mongolia, China.

2011.7 金属資源レポート60

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とその周縁に散在しモナズ-Ce 石(CePO4)、Fe-rich

Dolomite、Ankerite や少量の磁鉄鉱、Bastnasite 等を

含 む。 縞 状 鉱 石 は、 モ ナ ズ 石((Ce, La)PO4)、

Bastnasite((Ce, La, Y)CO3F)、Apatite 等に富んだバ

ンドで縞を構成し、酸化鉄(磁鉄鉱、赤鉄鉱)も含ん

だ鉱化作用が数回行われている。又、上記鉱染状鉱石

に重複する様に、縞状鉱化作用が見られる。その後、

Dolomite 層がアルカリ変質作用を受け、エジリン輝石

に成り、続く沸(F)化作用と更に REE、Fe の鉱化作

用を受け塊状鉱石となっている。最後の鉱化作用とし

て、Ca-REE と Ba-REE の含沸素炭酸塩鉱物(方解石、

重晶石、沸石等々)、が、脈状に縞、塊状鉱を切って産

する。

Nb- 鉱化作用は、主に西側鉱体群中に限って産し、

Nb に富む Rutile(金紅石 = ルチル)が、赤鉄鉱と Fe-

Columbite(Fe- コロンバイト(FeNb2O6))に伴い、鉱

染状の磁鉄鉱と産する。主鉱体及び東側鉱体群中に、

鉱 体 を 切 っ て、 ア ル カ リ 角 閃 岩 に 伴 い(Niobo-)

Aeschyhite((ニオボー)エスキン石─(REE・Th)(Ti,

Nb)2(O, OH)6)と Pyrochlore((Ca, Na)2Nb2O6(OH,

F))の鉱脈を産する。Pyrochlore は、二畳紀の花崗岩

貫入岩体によるスカルン中に産する事も報告されてい

る。その他、いくつかの Nb 系の鉱物:Fergusonite((Ce,

La, Y)NbO4)、Fersmanite(Ca, Ce, Na)(Nb, Ta, Ti)2

(O, OH, F))、Baotite(Ba4(Ti, Nb)8Si4O28Cl)が記載

されている。

Sc- 鉱化作用は、近年本鉱山で、含 Sc 鉱物が確認され、

Fe-REE-Nb 採掘において、重要な副産物となった。

Shimazaki(2008)によると、Sc は 各 種 鉱 石に 40 ~

169ppm 含み、REE 尾鉱では、250ppm に達するものも

ある。鉱物では、Sc を最も多く含むのは、Chevkinite-

Perrierite group((Ce, La, Ca, Th)4(Fe++, Mg)2(Ti,

Fe+++)3Si4O22)鉱物では、2.8 ~ 3.6% Sc2O3 も含み、

Ferrocolumbite(0.2~1.0%)、Rutile(< 1540ppm)と続く。

その他、鉱石鉱物(Magnetite、Hematite、Bastnasite)

に は 100 ~ 500ppmSc2O3 を 含 み、 珪 酸 塩 鉱 物 で、

Magbasite(KBa(Al, Sc)(Mg, Fe ++)(6Si6O20F2))

や、エジリン輝石等にそれぞれ 2.1%、3.5% Sc2O3 が含

まれている。

Fe-Oxide 鉱化作用は、磁鉄鉱、赤鉄鉱が主鉱物で、

初期は母岩 marble 中に自形を成す磁鉄鉱が、赤鉄鉱に

交代され、(Martitization と稱す)鉱染鉱石中に散在し、

その後粒状赤鉄鉱が鉱染鉱や、縞状鉱中に形成し、更

に磁鉄鉱に結晶し塊状(Massive)鉱石を形成する。

Bayan Obo鉱床成因:鉱床成因は、確定していない。鉱床生成のモデルを

見ると、同生堆積沈殿説、花崗岩火成活動に伴う変質

に依る説、噴火熱水溶液沈殿説、複数変質変成源説等

があり、又、鉱床構成鉱物を運行形成させる鉱液につ

いては、沈み込み帯(地殻プレートの)に関連・由来

するもの、造山運動と関連しない花崗岩の貫入に由来

するもの、Carbonatite、又は、アルカリマグマに由来

するもの等とある。尚、Carbonatite の貫入で、REE、

Sr、と Mn が H8 marble 層中に濃集する事、貫入岩体

周縁に見られる Fenite– 型変質(フェンナイトは主に

アルカリ長石と少量エジリン等より成る石英・長石質

岩で、Carbonatite 貫入岩と接触部にて、アルカリ変質

を受け Fenite に成る事を Fenitization という)の現象

等が到る所で見られる。Carbonatite のマグマ性活動や

鉱床の生成に関し、Bayan Obo 層群中で、marble と

Carbonatites 両者の同位元素や微量元素の類似性と、

流体包有物の成分の類似性、等々現象事実に対し、議

論が行われている。

現在いくつかの研究の内、最も一般的な本鉱床の岩

石 学 的 成 因 の シ ナ リ オ は、 多 分 に、 マ ン ト ル か、

Carbonatite 起源の正マグマ系マグマから、Cl と F に

富む流体が、複数回に渡り堆積性 marble に変質を及ぼ

し、その後、Caledonian 紀の大陸間の衝突による造構

造運動で、鉱床に変形を起し、それが、熱水溶液、低

温天水を生成し、現在の鉱床を形成した。

(1-c-ⅱ):Mountain Pass mine、REE鉱床、Mt. Pass、California、USA

本鉱山は、米国 California 州南南西部、Nevada 州境

から 24km に位置し、1849 年金を発見、小規模砂金採

取が始まり、1870 年代後期に金鉱ブームに銀が加わる。

その後不況を経て、1930 年代に金採掘再開、第二次大

戦中は鉄鉱山として採掘。1950 年代に REE 鉱山とし

て露天採掘、1965 ~ 1995 年間は、世界のレア・アー

ス鉱石の大方を供給した。その後、2002 年環境問題で

閉山する迄操業した。鉱床は、先カンブリア紀の変成

岩及び火成岩より成る基盤岩に、貫入した Carbonatite

complex(14 億年)中に産する、鉱脈(重晶石、方解石、

苦灰石等)に伴う REE 鉱床である。

2002 年閉山から今日迄、MolyCorp は、Mo の埋蔵

量確認や、周辺の金・銅探鉱を行い、一方、備蓄鉱石

から REE を採取してきた。2010 年、中国のレア・ア

ース輸出問題が発生し、対応として、新型のレア・ア

ース鉱物分離機を購入し、目下 2012 年に鉱山再開する

事を急いでいる。

本鉱山の Alkaline complex は、独特な特徴を持って

いる。成分として、“超カリ(K)質、珪酸塩、アルカ

リ火成岩類”であり、7箇(ないし8箇)の長さ 100

~ 2,000m の Shonkinite(ションキン石-アルカリ斑れ

い岩、主に正長石、輝石、橄欖石より成る)ないし

Syenite(閃長岩-主にアルカリ長石アルカリ苦鉄質鉱

物よりなる)のアルカリ貫入岩株が見られる。その他に、

成分的に、Shonkinite から、Syenite、更にアルカリに

富む花崗岩相当の岩脈が 200 以上散在している。後期

貫入岩体は、シル状(平板状)のいくつか成分の異な

る含 RE-Carbonatites(Sovite(中~粗粒 Calcite 岩、

角閃石、黒雲母、Pyrochlore、fluorite 等従属鉱物含む)

ないしeforesite)である。Fenitiztionは主な変質作用で、

(144)

2011.7 金属資源レポート 61

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常 に ア ル カ リ Carbonatite 貫 入 岩 に 伴 う。Alkaline

complex は、構造的に、基盤岩の先カンブリアン紀変

成岩の既存構造 -- 葉状構造(Foliation)、弱線帯等の影

響を受けている。また、この Alkaline complex は、貫

入後の後期断層により、三面を仕切られている。

本鉱山の残存埋蔵量は 2008 年の調査では、鉱石

2千万t(平均 REO8.9%、Cutoff Grade 5%)、と報

告されている。主な鉱石鉱物は Bastnasite で、主に含

まれる REO 組成は:

La 2O 3=33 . 2%、CeO 2=49 . 1%、Pr 6O 11=4 . 3%、

N d 2O 3= 1 2 . 0 %、 S m 2O 3= 0 . 8 %、 E u 2O 3= 0 . 1 %、

Gd2O3=0.2%、である。

(1-c-ⅲ):Araxa Nb-Carbonatite鉱床、Minas Gerais、Brazil(Nb-Ta主体の鉱床)

地 殻 に 於 け る 含 有 量 と し て は、Clark Value

(Appendix1 参照)で表記されているとおり、Nb は地

殻に 20g/t含み、Ta の~ 2.5g/tに比べ、かなり多

くの分量を含む。

既述の如く Carbonatite に関連して、レアメタル・

REE 鉱床が生成され、Ta-Nb 鉱物も含まれている(前

述 Aley Carbonatites、Bayan Obo 鉱床等々)。しかし

Ta-Nb 鉱物を最も多産する母岩は Carbonatite であり、

その際鉱山側は Nb、Ta を強調するあまりに、その他

のレアメタル、REE が目立たぬ場合、それらは、公表

されていない。

本講演でも、Nb、Ta Carbonatite 鉱床では、REE

にあまり言及していない。例えば、D.L.Trueman が述べ

る Brazil、Minas Gerais の Araxa Nb-Carbonatite 鉱床

等 は、 同 系 会 社 の Oka Niobium mine、Quebec、

Canada(Niocan 社報、2010)を含めると、世界の Nb

の約 85%ソースを産出すると言われる、が、REE に全

く触れていない。〔2010 年推定鉱量約 1,063 万t(0.68%

Nb2O3); 予 想 鉱 量 322 万 t(0.61 % Nb2O3)。 更 に

Ferroniobium 年産 4,370 t(Nb 換算 6,263,600lb)、山

命 17 年である。〕

従って REE との関係を知るために、本講演要旨で記

載されている Nb と Ta の鉱物と関連岩石を抽出した。

最も良く見られる鉱物種(名)は:

Niobite:(Fe, Mn)(Nb>Ta)2O6

31 ~ 79% Nb2O5

Tantalite:(Fe, Mn)(Ta>Nb)2O6

52 ~ 86% Ta2O5

Pyrochlore:(Na, Ca)2(Nb, Ti, Ta)2O6

     56 ~ 73%(Nb, Ta)2O5;

    3 ~ 6% REE-oxides(O, OH, F)

Microlite:(Na, Ca)2Ta2O6(O, OH, F)

     max80% Ta2O5 Pyrochlore series

Ta-rich end member

である。

自然界では、純粋な Niobite と Tantalite の産出はな

く、両者は固溶体を成し“Columbite”という。元々

Niobium は、1949 年迄“Columbium”と称され、以前

は、Nb に富むのが多く産出しているので、Columbite

で通用したが、現在は Ta に富むのも出回り、Nb/Ta

原子量比が、<1のものに対し Tantalite と称される事

になった。

成因的には、マグマの結晶分化がより進むに連れ、

マグマは花崗岩質ペグマタイト(Pegmatite)等に成り、

Li と F に富み、Columbite が形成され濃集する。此の際、

Columbite 中 の 元 素 置 換 が 進 み、Mg、Bi、Sn、W、

Ti、Sc、REE、Th、U 等微量成分を取り入れる。(言

い換えれば、Columbite は、マグマから生成するので

あり、熱水溶液からでは無い。)

一方、カナダ、ブラジルでは、従来 Nb、Ta の原料

として Pyrochlore((Na, Ca)2(Nb, Ti, Ta)2O6(O, OH,

F))を採掘していた。この鉱物も、Nb、Ta の量に依り、

鉱物種(名)が異なり、Nb を主とする物を Pyrochlore

と呼び、Ta を主とするものは、Microlite と呼ばれ、

両者は固溶体を成して産する。Pyrochlore は分子式

NaCaNb2O6F に 相 当 し、Na、Ca の 一 部 は Fe、Mn、

REE、U 等に置換えられ、Nb の一部が、Ti で置換え

られる事もある。(W.L. Pohl(2009):Economic Geology、

Nb、Ta)

一般に Carbonatite 中に産する含 Nb -酸化鉱物は、

下記のものがある。

Oxides

Bariopyrochrore

(Ba, Ca, Sr)2-x(Nb, Ti)2O6(OH, F)1-x・nH2O

Betafite

(Ca, Na, U)2-x(Ti, Nb, Ta)2O6(OH, F)・nH2O

Ceripyrochlore

(Ce, Ca)2-x(Nb, Ti)2O6(OH, F)1-x・nH2O

Fergusonite-(Ce) CeNbO4

Ferrocolumbite FeNbO4

Fersmite CaNb2O6

Ilmenorutile (Ti, Nb, Fe)O2

Latrappite (Ca, Na)(Nb, Ti, Fe)O3

Loparite (REE, Na, Ca)2(Ti, Nd)2O6

Lueshite NaNbO3

Perovskite (Ca, REE, Na)2(Ti, Nb)O3

Pyrochhlore

(Na<Ca, U, Th, Ba, Sr, Ln)2-x(Nb, Ti, Ta)2O6

(OH, F)1-x・nH2O

Uranopyrochlore

(U, Ca)2-X(NB, Ti)2O6(OH, F)1-x・nH2O

Zirconolite (Ca, REE)Zr(Ti, Nb, Fe)2O7

又、Perovskite(CaTiO3)は、アルカリ玄武岩、塩

基性ペグマタイト、変成岩中に副成分鉱物として産す

るが、Ca は Na、Ce、La、Sr と Ti は Nb と、夫々置

換 え ら れ る と Loparite(Ce, La, Na, Ca, Sr)(Ti,

NbO3)になる。

(145)

2011.7 金属資源レポート62

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2). IOCGに関連した鉱床、及び鉱山実例(Kiruna-Fe oxide(Cu-U-Au-REE)

 - Olympic Dam(Cu、REE、Y、U、P)鉱床等)2-a). IOCG鉱床の定義について

IOCG とは、Iron Oxide Copper Gold の略称である。

従来酸化鉄鉱物を多く含み、金や銅を随伴して、探鉱・

開発の対象鉱床となり、IOCG 鉱床との名で注目され

てきた。特に近年其の外に銀、レアメタル(REE)、ウ

ラン、燐等諸々な有価金属、工業用鉱物が鉱床中に伴

う事が明らかにされ、一層脚光を浴びている。この種

の鉱床の定義を、下記のようにまとめた。

“IOCG 鉱床とは、20%以上の低チタン磁鉄鉱ないし

赤鉄鉱が、硫黄に欠乏する金属鉱物と組み合わせ、単

~多金属鉱物の集合体(多種レアメタルを含み)で鉱

床を成し、産状は、緻密塊状、鉱染状、脈状、礫状等

を呈する。母岩は、マントルから部分溶融の深成岩起源、

又は、古大陸岩塊の衝突に依る造構造運動に起因する

ものから、地表浅所形成と、様々であり、更に、堆積

岩等と多様である。時代も始生代まで遡られ、変成を

受けて、片麻岩になっているのもある。鉱化作用は、

花崗岩質深成岩類から火山岩類、又は、アルカリ岩系

Carbonatite、或いはカルク・アルカリ岩系 Carbonatite

の貫入~噴出岩類と関連しており、更に酸化鉄鉱物の

集合体鉱床形成後も、金、銅その他金属含む後期熱水

鉱化作用が、重複したものもある。”

IOCG 鉱床には、三種類の顕著に主だった変質作用:

即ち、Na-Ca、Fe、と K-Fe 変質作用、が見られる特徴

が有る。Na-Ca 変質作用は、広域的に約幅>1km 以上

の広がりを見せる、主に強曹長石化(± 単斜輝石、楔

石─ Titanite)変質帯である。Fe 変質作用は、一般に

鉄分に富んだ磁鉄鉱 ± 黒雲母変質帯を形成する。この変

質帯には、多種の変質鉱物(Fe-oxide;Fe-carbonate;

Fe-silicate)が見られるが、硫化物の産出だけが見られ

ない特徴がある。鉱床は、鉄鉱石と燐灰石が主で、磁

鉄鉱は、より深部且つ高温に産出し変質帯を横切るの

が見られる。K-Fe 変質作用は、主鉱体に伴い、カリ長

石、絹雲母が普遍的に見られる。その他に緑泥石、方

解石等の変質鉱物が見られる。

IOCG 鉱床には、かなり多数の金属元素を産出する。

主要元素として Fe、Cu、Au、U、REE(LREE)、F

の産出が挙げられ、副産物として Ag、Nb、P、Bi、

Co、Ni、Se、Te、Zr 等が報じられる。また、As、B、

Ba、Cl、F、Mo、Mn、W、(Pb、Zn)等が含まれる

事も知られている。鉱床の規模が大きい故、これら元

素は、含有量が少量又は微量であるが、分離難易度、

元素の経済的価値に依って、稼行対象として取り上げ

られているが、各 IOCG 鉱山に於ける詳細産出量の把

握はできていない。

従って、上記の如く複雑な内容から、本鉱床の定義

を導くのは、至難の技である。誤解を招かぬ為、酸化

鉄鉱物の分量が一定量以上で有る事で規定し、次に幾

つか Sub-type に区分け説明し、そこから議論をするの

が、基本と思われる。

2-b). IOCG鉱床のタイプ及び伴うレアメタル鉱床の特徴(2-b-ⅰ):Kiruna-IOCG(Cu-U-Au-REE)鉱床:上述

の定義に最も近い IOCG の鉱床として挙げられるの

が、スウェーデン北方 Kiruna 地方に産する“銅や金

を無~微量で伴う、含低 Ti、V 磁鉄鉱─燐灰石の単

金属より成る緻密塊状鉱床”である。Kiruna 地方一

帯で約 350 以上も鉱床・鉱徴が認められる。その外、

イランの Bafq 地方や、南米アンデス山脈等にも産す

る。それら各鉱床帯は、一般に生成時期が同じで、

且つ母岩の火山岩又は深成岩と成因的関連を持って

いる。それらが、脈状、板状、筒状又は不規則形状

の産状で、Na や、Na-Ca 変質作用を伴う事象は、

Intracraton または Continental arc 中における、何

らかの顕著な Cu-Au 鉱化作用を示している。又、非

常に特徴的な曹長岩帯中に、巨大な Na 変質作用が

形成されている。

(2-b-ⅱ):Olympic Dam IOCG(Cu-Au-U-Ag-REE)鉱床:本鉱床は、南オーストラリアの Gawler Archean

Craton 東端に位置し、約7× 5km2 の範囲内で、漏

斗状で、花崗岩に伴い、赤鉄鉱‐石英礫岩を母岩

(Olympic Dam Breccia Complex と称す)とした Fe

oxide-rich Cu-Au-U-Ag-REE 鉱床である。

 鉱床周縁は、赤鉄鉱 - 花崗岩の礫岩より成り、更

に そ の 外 縁 は 弱 熱 水 変 質 を 受 け た 角 礫 花 崗 岩

(Hiltaba 貫入岩)より成る。潜頭鉱床であるが、探

鉱初期で、強磁性と強重力が重なった所で、鉱体が

発見された。

Western Mining Corp.(2004)の報告によると、

本鉱床は、総鉱量約 38 億tで、金属含有量はウラン=

140 万t;銅= 4,270 万t;金= 551 万 oz を有する。

なお、REE(La、Ce)を含み、品位が約5kg/ t(0.5%)

に達するものがある(類似鉱床約 75 例有り)。

(2-b-ⅲ):Cloncurry IOCG(Cu±Au)鉱床:本鉱床は、

オーストラリアのクインズランド州西北部 Cloncurry

地区に産する(55 例有り)。鉱床(Starra、Salobo

の例)は、既存の Iron formations(Ironstones とも

いわれる鉄鉱層)又は、明らかに早期の熱水性酸化

鉄集積層(Ernest Henry の例)に重なり、含 Cu±

Au 熱水性鉱化作用が、加わって出来たものである。

鉱石は母岩の性質に準じ、断層、破砕帯中に産する。

初期磁鉄鉱-燐灰石鉱化作用は、Na-Ca 変質作用を

伴い、続く破砕帯で角礫化を受け、そこへ Cu-Au 鉱

化作用が加わり形成された。

母岩には、先に貫入した花崗岩の影響もあり、顕

著な鉱化作用前の変形や、変成が有り、同時代鉱化-

(146)

2011.7 金属資源レポート 63

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変成と見間違えられていた。局所的に、母岩内で、

酸化鉄の再移動(Remobilization)又は外部からの加

入もあろう。K、と Ca-Na 変質作用は、普遍的に見

られ、多くは、顕著で、広範囲に見られる。

(2-b-ⅳ):Phalaborwa(Palabora)IOCG(REE)鉱床:alkaline-carbonatie 貫入岩体の周縁に、岩体と同時期

に磁鉄鉱に富む鉱床が生成した。これらは、燐灰石

の出現と強い Fenitization(フェン岩化作用;アルカ

リ閃長岩質化。既述 Bayan Obo 鉱床成因参照)が特

徴で有り、REE、F、と P の濃集と、LREE/HREE

の比が異常に高い。REE は燐灰石に多量に含まれる。

Zr の含有量が多く、Baddeleyite(ZrO2 又はジルコ

ニア。HfO を含む)が認められる。母岩の貫入岩体

の磁鉄鉱中の Ti 含有量は、<1~4%とばらつくが、

概して殆どのIOCG鉱床中の磁鉄鉱中のTiより高い。

これら alkaline-Carbonatite 貫入岩体である南ア

Phalabora Complex の岩体は、例外的に経済的価値

が 有 る 銅 品 位 を 含 有 す る 鉱 床 で あ る。Alkaline-

pyroxenite 貫入岩体中 Carbonatite 相中に磁鉄鉱に

富んだパイプ状鉱体より成り、鉱体の中心部は、銅

の硫化物(黄銅鉱、又は斑銅鉱と少量の輝銅鉱)よ

り成り、外縁では、後期生成の磁鉄鉱からなる分帯

を成す。Phalaborwa Complex については、造構造

運動の影響の説明が無いが、位置的に始生代古大陸

(Archean Craton)の縁辺にある事が、鉱床形成す

る基本要因の一つであろう。

(2-b-ⅴ):Bayan Obo sub-type IOCG(REE、-Nb)鉱床:本 鉱 床 は、 中 国 内 蒙 古 Archean Caton の 外 縁

Graben( 地 溝 ) 中 の Marble に 産 し、Alkaline-

Carbonatite 深成岩に伴い、周縁岩石に Fenitization

が 発 達 し て い る の が 見 ら れ る。 巨 大 で 複 雑 な

Carbonatite 貫 入 岩 に 伴 う 酸 化 鉄 鉱 床 ゆ え、

Carbonatite に関連した鉱床と分類しているが、基本

的には、IOCG 鉱床である。

(詳細既述 Bayan Obo(REE-Fe-Nb)鉱床項参照。)

(2-b-ⅵ):その他 Atypical(変形)IOCG とでも言う

べきタイプの鉱床が挙げられる。例えば、Ural南部や、

Peru の海岸山脈に見られる、Kiruna sub-type に類

似した特徴をもつ主要鉱床には、典型的な早期のス

カルン化変成作用とそれに伴う鉱化作用等による、

ザクロ石、輝石等無水変成鉱物が生成しており、

IOCG の同族と見做され、Atypical IOCG 鉱床とし

て取り扱われている。

3). イオン吸着粘土鉱床-風化表土中の REEイオン交換による鉱床

(3-a). REEイオン吸着粘土鉱床の定義温暖多湿の環境で、過アルカリ性(酸化ナトリウム

と酸化カリウムの合計分子比が酸化アルミニウムの分

子比よりも高い)火成岩が風化した粘土化土壌に、

HREE が多量にイオン吸着されている鉱床である。

(3-b). イオン吸着粘土鉱床に伴うレアメタル鉱床の実例及び特徴

(3-b-ⅰ):South China Ionic Clays レアメタル鉱床:中国中南部の江蘇省、安徽省に位置し、世界でも重

要 な HREE を 産 す る 鉱 床 で、Longnan 鉱 山 及 び

Xunfu が良く知られている。風化した玄武岩の

Attapulgite(針状~繊維状 Mg-Al 珪酸塩粘土鉱物)

中に産する REE 鉱床である。弱い風化作用では

REE の分離は進まないが、強い風化作用を受けた玄

武岩だと、HREE は分離して、Smectite(モンモリ

ロナイトやサポナイトを含む粘土鉱物)になり、ラ

テライト化のモンモリロナイトが形成され、顕著な

Ce(+) 異 常 値 を 示 し、MREE が 減 り LREE と

HREE 濃集が見られる。これは、地表に於ける特殊

な酸化環境及び、大陸内の盆地において粘土が形成

する際、湖水のコロイド液の吸着作用を示している。

内 陸 盆 地 で、 玄 武 岩 と 湖 水 が 反 応 を 起 し、

Attapulgite 粘土を形成することは、玄武岩の風化に

よる REE の形成と同じ特徴を持っている。即ち、

REE は化学的風化作用進行中においては、REE は激

しく移動しない。又堆積性 Attapulgite 粘土は REE

同様、玄武岩や風化玄武岩に対し、元素特性は類似

して居り、顕著な Eu(-)異常値と、大きな LREE/

HREE 値を見せている。これは堆積性粘土は、風化

玄武岩から由来することを示し、REE 分離傾向の特

徴は、風化玄武岩の残留物質に左右されているのが

判る。(稀土学 2003 年4期)

鉱量は、埋蔵量 450 億t(2010 年)といわれている。

当地域では、個人的な鉱山会社が、個々に採掘して

おり、非能率的であるといわれており、10 ~ 15 年

は採掘が続くといわれている。(以上定義、実例は、

Texas Rear Earth 社報 2010 より。)

本鉱床での REE イオン吸着粘土鉱石の採掘法:1、鉱石は丘の表土から採掘。地表は、植生を除き、

鉱石は、白っぽいバンドを選んで掘り出す。これは、

割れ目が、よりラテライト化した事にもよる。

2、Pit や掘り込みの底に、Plastic Linings を敷き、液

体流出を防ぐ。Pit に鉱石と水を入れ、満杯にする。

それを H2SO4 又は、(NH4)2SO4 にさらし浸出する。

3、後ほど液体は、サイホンして、坂下のコンクリート・

プールに集める。

4、プールに集めた液体に蓚酸を混ぜ、REE 蓚酸塩を

沈殿させる。

5、沈殿物を集め焙焼する。生成物を袋に入れる。

アンモニウム・サルフェート(NH4)2SO4 粘土から最

初に REE を抽出するのは、一般に先ず、粘土にイオン

吸着している REE を溶液に溶解させ、そこへ、アンモ

ニア陽イオンを粘土に吸着させ、REE と置き換え、

(147)

2011.7 金属資源レポート64

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REE は硫酸と錯塩となり溶液に溶ける。溶液は別の

Pit に流送し、そこで蓚酸(HOOCCOOH・2H2O)で

処理し REE(COOH)2 を沈殿させる。沈殿物は、炉に

入れ、800℃で焙焼、H2O、CO2 を飛ばし、REE2O3 を

生成。(G.J. Simandl、2010 年講演。)

(3-b-ⅱ):South Abarkouh 鉱 床: イ ラ ン Shahreza-

Abade- Hambast 粘土帯の South Abarkouh 地区に

15 個の粘土鉱床が見られる。粘土鉱物は、Kaolinite、

I l l i te、Quarz、等の外、Albi te、Paragoni te、

Natroalonite、Gypsum も若干含む。成分分析値から

Al2O3-(CaO+Na2O)-K2O と Fe2O3+MgO-

(CaO+Na2O+K2O)-Al2O3 の三成分系図で解析す

ると、これら母岩は、全部強い風化作用を受けてい

る事を示しており、また、此の地域の堆積岩は、時

期によりかなりの量のアルカリとアルカリ土類が、

流出した事を示している。又、微量成分から、全堆

積岩は、殆ど Y、Zr、Nb、Th と U に富んでおり、

これらの元素は、Zircon 等重鉱物(風化に強い鉱物)

に存在し、より Felsic な岩石に伴う。

研究者の多く(Nesbitt et al(1980)、BALning et

al(2004))も合意の如く、小さい陽イオン、例えば

Na、Ca、Sr 等は、風化帯から選択的に風化、溶脱

され、大きいイオン半径を持つ陽イオン、例えば、K、

Cs、Rb や Ba は、イオン交換又は吸着で粘土に固定

する。故に、一般に原生地では、堆積作用の前に、

より著しく風化を受けているのが見られる。(A.S.

Mahjoor、M. Kar imi and A . Ras tegar l ar i

“Mineralogical and Geochemical Characteristics of

Clay Deposits from South Abarkouh District of Clay

Deposit(Central Iran)and Their Applications”)

4). 含レアメタル砂鉱/重鉱物 鉱床歴史的に見て、REE は Brazil、India、Malaysia 等

の国で、モナズ石((Ce、La、Y、Th)(PO4))漂砂鉱

床から、採取されて来た。当時は、LREE 酸化鉱物の

み知られて、専ら LREE 酸化鉱物を対象にしており、

MREE や HREE は研究段階で、余り知られていなかっ

た。更に、モナズ石は Th を、30%位迄含み、Th が崩

壊して放射性元素 Ra に成る事や、外にウランを伴う

事で、環境問題から、鉱山として操業することが敬遠

されている。

この種の鉱床は、岩石が風化侵蝕、運搬濃集、堆積

等経て、内陸河川や海岸に漂砂/重鉱物鉱床を形成し

たものである。又、此の様な砂質堆積鉱床は、チタン

鉄鉱(Ilmenite)や、モナズ石など重金属が良く見られ、

Columbite やレア・アースもよく含む。

(成因的には、マグマの結晶分化がより進むに連れ、

マグマは花崗岩質ペグマタイト(Pegmatite)等となり、

Li と F に富み、Columbite が形成され濃集する。此の際、

Columbite 中 の 元 素 置 換 が 進 み、Mg、Bi、Sn、W、

Ti、Sc、REE、Th、U 等 微 量 成 分 を 取 り 入 れ る。

Columbite は地表では、化学的変質に強いが、漂砂的

運搬に弱く、急速に細粒化しやすい。微量元素に富む

砂質堆積鉱床として発見される。)

産地は、USA Florida 州、Carolina 州、Australia の

Mt. Weld 鉱山、南 Indo の Kerala 地区、ブラジル東海

岸や、南アの Richard Bay 等が挙げられる。

USA の Florida 州では、西海岸北側漂砂と、大西洋

側大陸棚堆積物中に、モナズ石砂鉱床がよく知られて

おり、Porken Mountain においてはレア・アース埋蔵

量が、6.8Mt(品位 0.264% REO 含み、その内の 33.3%

が Yttrium)が報告されている。Carolina 州は、Blue

Ridge 山脈東側に、数百マイルに渡り西南方向へ多数

のモナズ石砂鉱床の賦存が報じられている。チタン鉄

鉱を伴い金が主対象で、ThO2 の産出の記載も有る。

Australia は大量のモナズ石埋蔵量を有しており、近

年そのモナズ石鉱床中にレア・アース鉱床をいくつか

発見している。なかでも、Mt. Weld は、確定鉱量で

1.7Mt のレア・アースを保有している。Australia は全

国で、レア・アースを 5.2Mt の埋蔵量を有しており、

1800 年代に比べると、約 10 倍増えている。

インド Kerala 地区では、この種の鉱床で、計約

1.1Mt レア・アース埋蔵量(約世界の総量の 1%相当)

が有るといわれており、一方、政府公表値では、全イ

ンドにおける、モナズ石埋蔵量は、4.56Mt あると言う。

ブラジルの東海岸で、1884 年代から、Nuclemon 社が、

海岸のモナズ石砂鉱を採掘して、ドイツに輸出してい

た記録があり、他に近年では、品位が REO 4%の鉱床

を見つけていると報じている。

南ア東海岸 Richards Bay に重鉱物砂鉱が有り、レア・

アースを含むことが報告されている。

5). 過アルカリ複合岩体(Peralkaline Complex)に伴うレアメタル鉱床S.A. Shand の分類によると、火成岩が化学組成上で、

Al、Na、K、の分子の割合が、Al2O3 < Na2O + K2O

であると、アルカリの分量が、長石類や準長石類を形

成するに必要な量以上を含んでいることになる。余分

のアルカリは、苦鉄(Mg、Fe)質鉱物に取りこまれ、

Na 角閃石類や Na 輝石類等ソーダに富んだ鉱物を含む

のを特徴とする火成岩になる。また、苦鉄質鉱物の Al

の一部が、Fe3+、Zr、Ti で置換される様に成る。此れ

を過アルカリ火成岩(Peralkaline igneous rock)と稱し、

複合体の後期低温(500 ~ 600℃)の形成物であり、往々

にして、複合体の縁辺側に産する。

この種の花崗岩は特徴として、Na 角閃石と輝石類

(arvfedsonite、riebeckite、aegirine)が出現する事で、

又、過アルミナ岩のレアメタルの含有元素と比べ、Zr、

Hf、Y、REE、Nb、U と Th の元素に富む事である。

実例として挙げられるのは、西モンゴルの Kobdo か

ら 45km 北東に位置する、Khaldzan-Buregtey レアメ

タル(Nb、Zr、REE etc)鉱床で、デボン紀の過アル

(148)

2011.7 金属資源レポート 65

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(149)

カリ複合花崗岩体中に産する。花崗岩体は、K-Na 長石、

石英、曹長石、アルベゾンセン石(アルカリ角閃石類)、

エジリン石、蛍石とレア・アース(最高 25vol%も含む

所が有る)。レアメタルは、Zr(最高 5.3wt%)、Nb(最

高 0.8wt%)、REE(最高 0.4wt%)、Y(最高 0.3wt%)、

Be、Sn、Rb、と若干 Li、Pb、Zn、Hf、や Ta を含み、

Sr と Ba は殆ど無い。

カナダ東北 Quebec、Voisey' s Bay 鉱山 125km 西、

Strange Lake“B”Zone REE 鉱床(Quest 社)。

1979 年代の旧鉱山 Strange Lake“Main Zone”REE

鉱床から、約3km 北西に位置し、2008 年物理探査、

地化学探査によって発見された。地質は、カナダ楯状

地中のモンゾニ岩と片麻岩の間に貫入した後期過アル

カリ花崗岩複合岩体に、鉱床が賦存し、複合岩体は、

モンゾニ岩、花崗岩、花崗閃緑岩等よりなり、ほぼ同

心円状形態を見せ、母岩との境界ははっきりしている。

此の中粒過アルカリ花崗岩体ストック中に、ペグマタ

イト岩脈と、少量のアプライト(半花崗岩)が見られ、

そ こ に 顕 著 な REE 量 を 含 ん だ Strange Lake“B”

Zone 鉱化作用が存在する。鉱石鉱物となるレアメタル

鉱 物 は、kainosite(Ca-Y-Ce silica/carbonate)、

gerenite(Y-REE silicate)、gadolinite(Y-Be-REE

silicate)、zircon、pyrochlore 及び gittinsite が挙げら

れる。Quest 社発表の NI 43-101-complient によれば、

115Mt の予想鉱量に含品位 1.00% TREO(Total Rear

Earth Oxides)有り、外に相当量の Zr、Nb、Hf をも

含む。

探鉱指針:Richardson and Birkett(1996)による。

この種の鉱床の探鉱指針は下記のとおり:

*過アルカリ岩に伴う REE 鉱化作用には、ウランよ

りもトリウムを多く伴う。過アルカリ岩相はトリ

ウム放射線反応と良く一致し、又放射線異常値の

反応はよく磁性と一致する。

* REE に富む Carbonatite と過アルカリ岩は、円形

状岩体、風化帯、又は植性の分布形状等から、空

中写真で判断可能なものがある。

*元素で最も火成岩に伴う REE は、beryllium(Be)

gall ium(Ga)、lead(Pb)、niobium(Nb)、

tantalum(Ta)、uranium(U)、zinc(Zn)、

yttrium(Y)、と、外の全部の REE。Zirconium(Zr)、

thorium(Th)、fluorine(F)と二酸化炭素(CO2)

は、REE に富む過アルカリ岩中に良く含まれる特

徴が有り、これらの分析値は周辺珪長質貫入岩に

比べても高い。

6). 過アルミナ複合岩体(Peraluminous Complex)に伴うレアメタル鉱床

  ――(特に Nb、Taに関して)S.A.Shand の分類によると、火成岩が化学組成上で、

Al、Na、K、Ca の 分 子 の 割 合 が、Al2O3 > Na2O +

K2O + CaO の関係である。すると、Al2O3 の分量が、

長石類や準長石類を形成するに必要な量以上を含んで

おり、この余った Al2O3 は、白雲母、黒雲母、コラン

ダム、電気石、トパズ、アルマンディン、スペサルチ

ン等に入り、それらの鉱物を成長させる。此の様な化

学組成の岩石は、揮発成分に富んだ酸性のマグマから

比較的低温で形成される。従って、酸性の深成岩やペ

グマタイトは、石英や長石類の外に、上記の鉱物のい

ずれかを含む特徴を有している。これを過アルミナ火

成岩と称する。

過アルミナ岩で、花崗岩質ペグマタイト中に形成す

るレアメタル鉱床は、Ta、Li、Cs、(Be、Sn、Nb)が

含まれ、一方、酸性の深成岩(即ち花崗岩;Li-mica

albite granites、Li-F granites 又 は“apogranites” と

も知られている)のレアメタル鉱床では、Ta、Sn、(Be、

Li、Nb)を伴う。過アルミナ岩に於いては、Ta は、

レアメタル鉱床中では、主要元素で有るが、過アルカ

リ花崗岩や Carbonatite 中の鉱床では Zr-Nb-REE の副

産物として少量随伴する。(apogranite:原岩石は

granite で、二次的に変質しているもの)

過アルミナ花崗岩に於ける Ta 鉱床で、主対象鉱石

を Tantalite としているのは、Nb/Ta 比が割と低い(<

1~2)。一般のペグマタイトと比べると低品位だが鉱

量が大きい。又鉱染状で、延びた円形体(数百 m 径)

をなして、大きな露天掘り採掘を行う。但し鉱石鉱物

が細粒で有る。以前は、採鉱、選鉱に制限が有ったが、

技術の進歩で見直しできれば、Ta の重要資源となる。

過アルカリ花崗岩における Ta 鉱床では、上記過アル

ミナ花崗岩と比べより大きな体積の鉱量を産する。産

出する鉱石鉱物は、Ta-Nb 固溶体で Nb に富む鉱物

(Columbite 又は Pyrochlore)であり(Nb/Ta の比が>

10 ~ 20)、加えて Pyrochlore は、浮遊選鉱を必要とし、

特に高い放射性物質を持っている為、製煉等含め Ta

を精製するのに手間がかかる。Carbonatite に伴う Ta

鉱床も、過アルカリ花崗岩に於ける Ta 鉱床と似た問

題が有る。此等は今後の技術開発に依る事になろう。

―――((1-C-ⅲ)(Nb-Ta 主体の鉱床)の項参照)

実例として挙げられるのは、Australia、Greenbushes

鉱山:南 Australia に、分布する Balingup 変成帯を切

って Donny-brook-Bridgestone Shear zone(剪断帯;

N ~ NW 方向、15 ~ 20km 巾)がある。Greenbushes

ペグマタイトが此の Shear zone 形成の際、同時期に貫

入(25 億年前)(3km N ~ NW 延長、300m 幅、W ~

SW へ中~急傾斜)内部は細粒で、変形を受けている。

その後も変形の継続や、熱水作用の再結晶等を 11 億年

前頃迄受けてきた。ペグマタイトは、レンズ状に複雑

に交差したりする。主な鉱化作用は、1). Lithium(Li)

-Spodumene(LiAlSi2O6)ゾーン:含 Li-silicate 鉱物に富

む;2). Sodium(Na)又は Albite ゾーン(曹長石、電気石、

白 雲 母 が 特 徴 ):Tantalite((Fe, Mn)(Nb, Ta)Si2O6))

-Cassiterite(SnO2、 錫 石 )が 主 の 鉱 石;3). Potassium

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Feldspar ゾーン:Microcline(K- 長石 =)と三ゾーン

に区分けでき、更にコンタクトゾーン、Mixed ゾーンと、

鉱化帯を分けている。尚、ペグマタイトの中に、随伴

鉱物として、Apatite(燐灰石)のようなリン酸塩鉱物や、

少量の Beryl((Be3Al2(SiO3)6、緑柱石)、柘榴石が見

られる。

鉱床は 1886 年発見以来、錫(Sn)を殆ど絶え間無く

今日迄採掘し、1969 年には露天掘りを始めている。近

年 Ta と Li が主対象に変わり、Sn が副産物となる。一

方 1940 年代には、Ta の採掘が始まり、1992 年には、

年 80 万t鉱石を処理するまでに成った。1990 年後期

に Ta の需要が更に高まり、高品位の Conwall Pit の完

成と、坑内掘りを加え、鉱石処理を年 400 万t迄増産

を計画し、2001 年に拡張工事を始めたが、2002 年に市

場崩壊で、開発停止し、今日に至る。Li は、1983 年に

開発、1984-85 年には、年3万t処理。

1989 年に Son of Gwaliasha が Li の資産を買取り、

1997 年には年 15 万tを生産。その後幾多の所有主の

変遷を経て、2009 年 10 月に Talison Lithium(Australia)

Pty Ltd.(“TLA”)社が買取り、周辺も買収し、今日

に至った。

現在 Sn は副産物で回収;Ta は据え置き;Li を主対

象として操業。鉱量は、確定+推定 2,200 万t(品位

3.7 % Li2O)、 予 想 鉱 量 270 万 t( 品 位 3.5 % Li2O)、

(cut-off grade 2.8% Li2O)が計上されている。鉱石は、

鉄分含有量の違いにより、TG(Technical grade= 低

Fe)と CG(Chemical grade= 高)に区分けして異な

る選鉱処理を行う。2009 年において、TG 鉱石 17,1 万

t処理し、71,000 t精鉱を生産し、CG 鉱石 44 万t処

理し、13.8 万tの精鉱を生産した。粗鉱 61.1 万tで、

20.9 万t精鉱を生産した事に成る。

現在 Talison 社は、チリ、Atacama Desert、Salares 7

Project に も、Li-Project を 所 有 し て い る。 南 米 の

Bolivia 南部でチリとアルゼンチンの国境一帯に数多く

の塩湖 / 塩水湖が有るのが知られている。Talison は、

その内の“Salares 7”の地区(範囲 117,905ha)で、探

鉱ポテンシャルの有る 39,404ha を探鉱中。7つの湖共

に Li と K 含有量が高く、最高 Li 1,080ppm 得ている。

この外、塩湖 / 塩水湖の集まる地域が5か所周辺で見

られる。

南 Ethiopia、Oromia State、Kenticha 鉱山:白雲母

-石英-微斜長石-曹長石ペグマタイト、リシア輝石

(LiAlSi2O6)複合体、水平状貫入岩体で、内部に対象

的累帯構造を示す。地表露出巾 400 ~ 700m× 長さ2

km× 厚さ約 100 mである。中心~中間層のリシア輝

石岩と曹長石層に伴うスポット~鉱染状レアメタル鉱

化 作 用。 鉱 石 鉱 物 は、Tantalite((Fe, Mn)(Nb, Ta)

Si2O6)、ixiolite(Ta, Nb, Sn, Fe, Mn)4O8、spodumene

(LiAlSi2O6)、ameblygonite((Li, Na)AlPO4(F,

OH))、beryl(Be3Al2(SiO3)6。母岩は、新原生代(Neo

Proterozoic)低変成角閃岩相、蛇紋岩と滑石-透閃石

片岩より成る。

推定鉱量は 2,500tTa2O5(又は 1,700 万t鉱石、含

品位 150g/t Ta2O5)。年間約 120tチタン精鉱(50

~ 70% Ta2O5;Nb/Ta=0.15 ~ 0.35)を強風化ペグマ

タイトの表土から生産。

未採掘であるが、相当量の Li が残されている。

東 北 Somalia、Majayahan 鉱 山:Ad Group と 名 付

けられている低変成片岩に、貫入したペグマタイト岩

脈+石英脈に伴い、Ta、Nb、Sn 鉱化作用が見られる。

多くの岩脈は1m以下の厚みで急傾斜を成し、ペグマ

タイトは単純な石英―長石岩脈と見られるが、内部は

spodumene が、 わ り と 繁 雑 に ゾ ー ン を 成 し、

Columbite-Tantalite、Cassiterite を伴う鉱化作用が見

られる。ペグマタイト岩脈は、母岩の造構造運動によ

ってできた構造規制を受けている割れ目空間に充填し

た様に見られる。

Ta 予想鉱量は、約 280 t Ta2O5(又は~ 160 万t鉱石、

含品位 180g/t Ta2O5)と計上している。

7). その他の成因に依るレアメタル鉱床(特に REEについて)(R.Beauford, 2010より)レア・アース(REE)の成因は基本的に、マグマの

結晶分化、又は岩石の部分熔融から生成するか、又は

熱水溶液により溶かされイオン化し更に再沈殿して生

成するか、による。これら元素が濃集して鉱床を生成

するが、一方生成した元素や、鉱床は、更に風化運搬

等により物理的に元素を濃集したり、ラテライトなど

は、地表浅所の粘土化環境で、化学的にイオン移動、

濃集し、鉱床を造る。

火成作用で生成する際、REE はマグマの中に存在し、

取り込まれ濃集するよりも、押し出され集まった状態

である。即ち、通常鉱物は REE を含まず、マグマの冷

却による結晶化の際、多量の珪酸塩や外の鉱物等と

REE は一緒にならず、結果的に他の鉱物に含まれず、

最後に残留マグマに取り残される。そこで残存マグマ

が固化すると、REE は捕まるが、化学的に捕捉され濃

集すると言うより、減圧した隙間に散在する。

(2011.1.14)

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